平成9年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇8番(中屋敷十君) 新進・公明の中屋敷十でございます。
 先輩、同僚議員の御高配により、本定例会におきまして一般質問の機会を与えていただきましたことに感謝申し上げ、通告に従いまして順次質問させていただきますが、一般質問も4日目でもあり、質問が一部重複する点があるかとは思いますが、御了承願います。
 まず、増田知事の県政運営方針についてであります。
 本年は、地方自治法が施行されてからちょうど50年という節目の年であり、県においても地方自治法施行50周年記念事業を計画しているようでありますが、我々地方自治に携わる者としては、ただ単に記念事業を行うということではなく、まさに地方自治のあり方そのものを県民とともに真剣に考え、具体的な行動を起こすスタートの年としなければならないものと強く認識するものであります。申すまでもなく、我が国の社会経済情勢は、急速な少子化、高齢化の進行、さらには産業構造の変化等により大きな変革を余儀なくされており、特にも、バブル経済の崩壊に伴う1990年からの複合不況により社会全体に閉塞感が漂い始め、これまでの社会経済構造を支える制度やシステムでは対応できない厳しい状況にあり、明治維新、戦後改革に次ぐ第3の改革という歴史的な転換に迫られております。
 このような時代背景の中にあって、増田知事には、県民の絶大なる支持を得て知事に就任して以来、県政推進の基本姿勢を県民に開かれたわかりやすい県政とし、若さと行動力をもって県内59市町村すべてでの県政懇談会等を通じて本県の21世紀に向けての課題を直接肌で感じ、岩手県第三次総合発展計画後期実施計画を策定し、この3県総後期実施計画の中で、地域連携と交流の促進や人と自然との望ましい共生など七つの留意すべき視点を掲げ、各般の施策を積極的に展開するとともに、県版行政改革や地方分権という地方自治体にとって避けて通れない難題に積極的に取り組まれていることに対して深く敬意を表するものであります。しかしながら、行政改革や地方分権を推進するためには、これまで綿々と続いた組織機構や国と地方との関係という、いわば複雑に絡み合い、かつ硬直化した体制にメスを入れることであり、多くの抵抗や困難が伴うのが過去の例から見ても否めない事実であり、知事の強いリーダーシップと不退転の決意が必要であります。
 そこで、まず、県版の行政改革についてお伺いいたします。
 平成6年10月の自治事務次官の通知により開始された今般の行政改革は、厳しい財政事情のもとで行財政の適正化を図るとともに、地方分権の受け皿としての市町村の自立性を高め、さらには年金制度の改革による定年制度の延長に対応しようとする趣旨であり、増田知事におかれましては、知事就任と同時に当該通知に基づき行財政改革に積極的に取り組まれ、行政改革推進懇談会の提言を受け、昨年1月に策定した行政改革大綱に基づき、大胆な行政機構の再編整備を進められたことは総体的には高く評価するものであります。
 しかしながら、今回の行政機構の再編整備は、あくまでも行政を実行する側が中心の機構改革であり、私には住民側という視点が欠落しているように思われるのであります。例えば、本庁においては観光部門の強化を掲げて商工労働観光部と改称しながら、地方振興局においてはこれまでの総務部企画商工労政課を企画振興課に改めるようでありますが、地域住民にとっては、企画振興課という名称は市町村の企画部門と同じ響きがあり、観光部門をどこのセクションが担当しているのかむしろわかりにくくしているように思われるのですが、知事は、行政機構の再編整備に当たり、住民側という視点をどのようにとらえて再編整備を進められたのか御見解をお示し願いたいと存じます。
 また、聞くところによりますと、旅券発給事務を統括するのはこれまでの経緯からして生活環境部文化国際課だと思うのでありますが、地方振興局においては総務部が所管することになるとのことであります。私は、組織の改廃の論理は一貫する必要があると思いますが、本庁において生活環境部が旅券発給事務を統括するのであれば、当然のごとく、地方振興局においては組織的一体性を考えると保健福祉環境部が所管するべきものと考えますが、どのような理由で振興局の総務部が所管することになるのかお示しいただきたいと存じます。いずれにいたしましても、業務量や定数等の関係で必ずしも理想的な形とはならないまでも、対地域住民へのサービスの提供を主体に考え、地方振興局のより充実した再編を強く要望するものであります。
 次に、地方分権についてお伺いいたします。
 去る1月29日に地方分権を進めるいわての集いが県内各界、各層の参加のもと、盛大に開催されました。平成7年7月に地方分権推進法が施行されて以来、地方分権推進委員会の御努力によって昨年の3月に中間報告が取りまとめられ、そして、昨年暮れの12月20日には同委員会により内閣総理大臣に第1次の勧告が行われたにもかかわらず、我々地方自治に携わる者として、地方分権に対する議論不足、PR不足に懸念を抱いておりましたが、地方分権推進委員会の委員である西尾勝東京大学教授をお招きしての集いは、まことに時宜を得たものであると感じたところであります。地方分権は、基本的には地域住民の自己決定権の拡充を図り、あらゆる階層の住民参加の拡大による民主主義の活性化を目指すものであり、今次の勧告では、中央集権型行政システムの象徴とも言われてきた機関委任事務制度の廃止と新しい事務の区分及び分権型社会にふさわしい国と地方の関係についての新たなルールの創設、及びこれらの考えに沿った主要な行政分野における改革のあり方について具体的な指針を示しております。申すまでもなく、地方分権の推進は行財政機構の変革につながり、抜本的な行財政改革の推進にも寄与するものであり、今次の勧告では、事務権限のあり方が主な内容となっておりますが、いずれは国庫補助負担金の整理合理化や地方税財源の確保、地方行政体制の整備といった課題についても具体的な指針が示されるものと期待しているところであります。さきの知事演述においても、知事は、今後の県政運営の基本方針として分権型地域社会の創造を掲げており、地方分権の実現に対する知事の並々ならぬ取り組み姿勢を見ることができるわけでありますが、中央集権型の行財政システムは根強くはびこっており、中央官庁の抵抗は依然として根強いものがあり、また、肝心の自治体側の自治権拡充を目指す関心や運動も、いまひとつ盛り上がりに欠けるとの指摘もあるわけでありますが、私からも、知事の地方分権に対する取り組みの決意のほどをお示しくださるようお願いいたします。
 次に、ポスト3県総についてお伺いいたします。
 新しい総合計画の策定の基本的な方向につきましては代表質問等で既に知事の見解が示されておりますので、私は視点を変えまして、現行の3県総で掲げている理想郷いわての創造の新しい総合計画への反映という点についてお伺いいたします。
 現行の3県総では、理想郷いわての創造を目指し、計画期間を超えて県土の均衡ある発展を柱に、水きよく緑ゆたかな県土構想を初め、9つの21世紀を開く主要構想を掲げているところであります。この9つの構想の展開については、各部局の緊密な連携のもとに調査検討が進められてきたものと認識しておりますが、その成果はどのようになっており、新しい総合計画にどのような形で反映するおつもりなのか、計画期間中でもあり答弁しにくい面もあるかと思いますが、現行での基本的な考え方をお示し願いたいと存じます。
 次に、自然保護と開発についてお伺いいたします。
 知事は、県政運営の重点施策の1つとして、人と自然との望ましい共生を掲げられております。生活水準の向上や地球環境問題を背景に、人々の自然志向や環境志向が急速に高まってきており、わけても、本県の豊かな自然は県内外から高く評価されており、単にあるがままの姿を誇るだけでなく、地球規模の環境問題にも県民一人一人が共通の理解と認識を持って取り組むことが責務であるとし、このため、環境保全の基本理念、行政、事業者、県民の役割と責務及び基本施策の検討、さらには、それぞれの主体が環境問題に率先して取り組むような条件整備に努め、全国をリードするような取り組みを進める旨の考えを示されております。また、国において策定作業が進められております新しい全国総合開発計画、いわゆるポスト4全総の計画部会調査検討報告におきましても、人と自然との共生が21世紀の国土づくりの一つのキーワードとなっているものと認識しているところであります。
 私は、昨年2月の定例県議会の一般質問におきまして、私の地元であります雫石町の国見スキー場の開発問題に関連いたしまして、県が、今後、人と自然との望ましい共生の実現を目指して、自然環境の保全と調和のとれた地域開発整備を進めようとするならば、現行のゴルフ場等大規模開発行為指導要綱や同要綱に基づく環境影響評価実施要領の見直しを行い、環境保全に対する強化策を講ずるべき旨を提言し、県からも前向きの御答弁があったところであります。国においても、新しい環境影響評価制度のあり方を検討していた中央環境審議会が法制化を求める答申を取りまとめ、去る2月10日に内閣総理大臣に提出し、まさに環境庁が設置されて以来の悲願であった環境アセス法が成立するのは確実という状況にもありますが、県においては、これまでに環境影響評価制度についてどのような取り組みを行ってきたのかお示し願いたいと思います。
 また、平成9年度において、環境影響評価制度推進事業を創設し、本県における環境影響評価制度のあり方について検討委員会を設けて調査検討を行うようでありますが、どのような手順で取り進めてまいるお考えなのかあわせてお伺いいたします。
 次に、環境保健センター(仮称)の整備についてお伺いいたします。
 昭和60年に自治省がまとめた地方行革大綱に基づき、県においても行革大綱を取りまとめ、その中で試験研究機関の再編が打ち出され、時代のニーズに即した形で工業技術センター、林業技術センター、水産技術センターが既に整備され、新たな施設体制のもとで研究に取り組んでいるところであり、また、農業研究センターについても着々と整備が進められ、この4月にはセンター本部が北上市に移転新築され、地域課題等への適切な対応と試験研究の効率的な推進が期待されているところであります。そして、このような中で唯一残されているのが、衛生研究所と公害センターを再編整備する環境保健センター(仮称)であります。高齢化の進展や慢性疾患の増加等による疾病構造の変化、保健ニーズに対する県民の高度化、多様化などにより、地域保健を取り巻く状況は著しく変化しており、平成6年6月には、地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律が成立し、わけても、保健所については地域保健の広域的、専門的、技術的拠点として機能が強化され、設置箇所については県議会でもいろいろと議論が交わされたところでありますが、平成9年度から新たな保健所としてスタートする運びであり、また、環境の保全に関する強化策が強く打ち出されている状況下の中で、環境保健部門における試験研究機関である環境保健センターは、早急に整備が進められなければならないものと認識しているところであります。幸い、平成8年度において調査費が計上されまして、再編整備に向けて具体的に整備する機能やハード面での整備スケジュールが固まってきた時期と思いますので、現段階における調査、検討状況をお示し願いたいと思います。
 次に、本県の起業家及びベンチャー企業支援についてお伺いいたします。
 知事は、今後の重点施策の一つに地域経済の活性化を掲げられ、起業家精神に富み、創造的な事業活動を行う意欲的な人材の育成、支援に努める旨を明言されておりますが、まさにあと数年で21世紀を迎える日本の目下の課題は、行き詰まりを見せているこれまでの経済構造をどのように変革していくのか、国際的にも通用する新たな企業群をどう輩出していくのかということであろうと思います。つまり、これまでの規制に守られてきた保護主義的産業政策をどう転換するのかということであります。私は、本来の意味で地方の時代ということを考えれば、本県が現在の国境のない大競争という環境のもとで、世界に通用する企業をどれだけ育成できるかと思っているところであり、そのような起業家やベンチャー企業がまさに世界から本県を選んで、自分は岩手で創業したい、あるいは企業成長を果たしたいと思ってもらえる環境やインフラを本県がどう整備できるのかということだと思うのであります。本県は、全国に先駆けていわて起業家大学という起業家の育成事業をスタートさせており、また、起業家の資金調達を支援するため、いわてテクノポリス財団を通じた投資事業を始めておりそれなりの支援環境は整備されつつありますが、例えば、県を挙げて起業家支援、ベンチャー企業支援を標榜しているかと言えば必ずしもそうではなく、先日、知事と岩手の若手起業家が懇談した際にも、創業にとって最も必要な資金的なインフラは、いまだもって未整備との声が多かったと聞いております。さらに、融資する側の金融機関とすれば、相手側の預金を元手に貸し付けしなければならないという性格上、どうしても担保や保証人をとることになり、担保能力に乏しい起業家にとって融資環境は極めて厳しい状況にあると思います。
 そこでお伺いいたしますが、県は、トータル的なシステムとしての起業家、ベンチャー支援施策をどう展開しようとしているのか。特に、創業に係る最大のネックである資金的な支援についてどのような策を講じていくおつもりなのか御所見をお伺いいたします。
 次に、本県特産品の販路拡大についてお伺いいたします。
 全国各地における特産品の開発や販路拡大に対する取り組みは、経済社会や消費者ニーズの動向を反映し、新たな局面を迎えているものと認識しております。すなわち、かつての大分県に端を発した一村一品運動や村おこし事業など、地域の原材料資源を活用した特産品開発や物産展の開催による販路拡大といった取り組みから、マーケットを強く意識した売れる物づくりへの発想の転換や地域文化、観光など、特産品生産の背景情報を一体的に発信するイベントの開催など、新たな取り組みが展開されていると聞いております。本県においても、これまで全国各地での物産と観光展の開催、全国に先駆けて設立された産地問屋である岩手県産株式会社を通じての販路開拓など、いわゆるいわてブランドの販路拡大のための各般の施策が展開され、本県地場産業の振興に貢献してきたものと承知しております。しかしながら、最近の経済社会の潮流や消費者ニーズの変化は著しいものがあり、これら変化に対応した新たな販路拡大施策の積極的な展開により、激化する産地間競争に打ち勝つ必要があると思われます。
 そこでお伺いいたしますが、全国的に新たな特産品開発が活発化し、限られたマーケットの中で産地間競争がますます激化すると思われますが、今後、本県の特産品の販路拡大にどう取り組まれるのか、その基本方向についてお示し願いたいと思います。
 最後に、農協をめぐる諸課題についてお伺いいたします。
 農業、農村をめぐる状況は、新食糧法の施行や金融の自由化などに伴い大きく変化し、農協の経営環境は一層厳しさが増してきております。特に、信用事業部門においては超低金利時代を反映し、他の金融機関との競争が激化していると伺っております。一方、昨年12月の臨時国会では、農協の経営の健全化を進めるための農協法等の改正法が成立いたしました。その内容は、農協の業務執行体制を強化するための常勤役員等の兼職、兼業の制限や、経営管理委員会制度の選択的な導入、あるいは監査体制を強化するために一定規模以上の農協に対する員外監事や常勤監事を置くことが盛り込まれるなど、農協の経営体質の改善を求めるものであります。私は、農協の経営基盤を確固たるものにするためには、自己資本の充実を最も急がなければならないものと思うのであります。それは、昨年6月に成立し平成10年4月から導入されるいわゆる金融健全化法により、農協は他の金融機関と同様に、自己資本比率が一定の基準に達しなければ早期是正措置が発動され、経営改善計画や増資計画を策定しなければならないこと、また、債務が超過した場合には、信用事業部門の業務停止もあり得るという非常に厳しいものでありますので、農協の経営に重大な影響が及ぶことが予想されるからであります。さらに、農協系統組織においては、経営基盤の強化を目的として、21世紀を展望する合併構想に基づく農協の広域合併を鋭意進めているところであり、現にこの3月1日には、岩手郡内と安代町の9農協が合併し新岩手農業協同組合が発足するなど、農協の広域化が加速的に進んでおります。このように、農協をめぐる課題は非常に多岐にわたっておりますが、県はこれらのことをどのように認識され、どのような指導をされるお考えなのかをお伺いいたします。
 特にも、米の生産調整については、農協の業務と深くかかわっておりますことからこの際お伺いいたしますが、昨日の東和町の農政審議会において、自主的転作の方針を決定したことについて大きく報道されておりますが、知事はこのことをどのように受けとめられておられるのか、御所見をお伺いいたします。
 以上をもちまして、私の一般質問を終了させていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 中屋敷十議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、行政機構の再編整備についてでございますけれども、今般の機構再編に当たりましては、急速な高齢化、少子化など、社会経済情勢の変化に伴う新たな行政課題に適切に対応しながら、多様化しております県民の皆様方の行政ニーズに即応して、良質できめの細かいサービスを効果的に提供するために、本庁、出先機関を通じて機動的かつ効率的な行政機構の整備に努めたところでございます。特に、県民の利便性の向上を図る観点から、県民生活に密着した事務につきましては、本庁から地方振興局に対して積極的に権限委譲を行うこととしておりますけれども、このことに対応する執行体制の整備を図ったものでございます。また、現行の地方振興局総務部の企画商工労政課につきましては、地域振興施策や広聴広報、商工、労働、観光などの事務を現在担当しているところでございますけれども、今般の組織整備におきましては、青少年女性施策や消費者保護対策など、県民生活部門についても一元的に担当することによりましてより県民サービスの向上を図りますとともに、企画部門や総合案内機能の充実を図ることとしているところでございます。こうした行政機構の再編整備によりまして、高齢化などに対応いたしました保健医療、福祉の総合的なサービスの提供、環境、生活文化などへの関心の高まりに対応した施策の推進、あるいは地域の課題に的確に対応した総合的な地域振興施策の推進など、県民一人一人がゆとりと豊かさを実感できる生活の実現を図っていく考えでございます。
 次に、地方分権に対する取り組みについてでございますけれども、地方分権の推進は、当面する県政の課題の中でも最も重要なものの一つであると、このように考えております。このため、県政運営の基本方針といたしまして、国と地方の役割分担を明確にしまして、地方の自主性、自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会を実現することを基本といたします分権型の地域社会の創造を掲げているものでございまして、今後とも積極的に地方分権の推進に努力をしていく考えでございます。こうした観点から、これまで以上に地域を重視いたしまして、市町村や県民一人一人との間にしっかりとしたパートナーシップを築きまして、相互に連携を図りながらさまざまな施策を展開してまいりたいと、このように考えております。
 なお、国の地方分権推進委員会の第2次勧告につきまして、本年の前半にもこの勧告がなされることが予想されているわけでございますけれども、同委員会におきまして補助金、税財源の見直しや必置規制の整理合理化など、地方分権の実効性を確保する形で勧告の取りまとめを行っていただきまして、また、政府におきましては、その勧告を受けて速やかに地方分権推進計画を作成いたしまして、地方に対する十分な財政措置を講じた上でその実施に着手するように、全国知事会や政府への予算統一要望、あるいは個別要望などの場を通じまして強く働きかけていく考えでございます。
 それから、3県総の21世紀をひらく主要構想についてのお尋ねがございましたが、3県総において理想郷いわてを創造するため、21世紀を展望いたしまして計画期間、すなわち3県総の場合には西暦2000年でございますが、この西暦2000年を超えて展開すべきものといたしまして9つの主要な構想を設定いたしまして、これらの実現に向けて、鋭意、現在取り組んでいるところでございます。幾つかの構想について事業の一例を申し上げますと、広域交通ネットワーク・交流拠点構想というものがございますが、これは東北新幹線盛岡以北や秋田新幹線の建設を促進してきたところでございますけれども、3県総策定時以降、県内90分交通を目指す新交流ネットワーク道路整備事業を創設いたしましてその推進に努めておりますほか、花巻空港滑走路の2、500メートル化を目指しているところでございます。また、北上川の流域高度技術産業集積圏構想というものがございまして、これは3県総策定当初から、北上川の流域テクノポリス開発計画に基づきまして、工業技術センターやテクノポリスサポート・コアの整備などを進めてきたところでございますけれども、その後オフィスアルカディア構想や頭脳立地構想を新たに策定いたしまして、関連する諸事業を現在積極的に推進をしているところでございます。さらに、水きよく緑ゆたかな県土構想につきましては、下水道や農業集落排水施設などの整備を積極的に進めますとともに、3県総策定時以降、新たに県の景観条例を制定するなど、豊かな自然や景観の保全と創造、良好な生活環境の整備などに取り組んでいるところでございます。このように、それぞれの構想の中には、3県総策定時におきまして既に事業が具体化されていたもの、あるいは調査検討段階にあったものなど、中にさまざまな事業が含まれているわけでございますけれども、これらの事業につきましては、現在、3県総後期実施計画の中におきまして、連携、交流の促進など七つの視点に留意をしつつ、積極的に推進をいたしまして一定の成果を上げているところでございます。新しい総合計画におきまして、21世紀初頭を展望して、県政がどのような方向を目指していくかにつきましては、これらの成果を十分に踏まえまして、少子・高齢化や高度情報化の急激な進展などのこうした経済社会情勢の変化に対応した新たな視点も含めまして、広範な角度から検討をしていく考えでございます。
 次に、昨日、東和町の農政審議会におきまして自主的転作の方針を答申されたことについてのお尋ねでございますけれども、このことは町としての生産調整の取り組み方針であると、このように受けとめているところでございます。この問題につきましては、現実に米の需給が大幅に緩和しているという状況のもとで、生産調整の実施によりまして価格の安定に努めてきたという経過がございます。結局、農家が損をするということにならないためには、生産者の方々の御理解によりまして生産調整の実効性を確保していかなければならないものと考えておりまして、今回の件につきましては、時期を見まして町の真意をお伺いしながら、こうした考え方について御理解を得ていきたいと考えているところでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので御了承をお願いいたします。
   〔総務部長大隅英喜君登壇〕
〇総務部長(大隅英喜君) 旅券発給事務についてのお尋ねでありますが、今般の行政機構の再編整備に当たりましては、本庁機構につきましては、文化や環境に配意した潤いのある県民生活の実現に向けた施策の展開を図るため、県民生活部門と環境部門を再編しまして、新たに生活環境部を設置することとしたところであります。また、地方振興局につきましては、現行の総務部の自然環境保全地域の保全等の事務、林務部等の鳥獣保護の事務及び保健所の公害等の事務など環境部門の事務を一元化しまして、新たに設置する保健福祉環境部の所管とし、さらに、生活福祉部の消費者保護対策等の事務、総務部の青少年女性施策の事務、県民運動、旅券発給事務など、県民生活部門の事務を一括総務部の所管とすることとしております。
 お尋ねの旅券発給事務につきましては、現行の地方振興局の総務部においては、県民からの施策提言などの広聴広報活動、公文書公開などの県政情報の提供や総合案内など県民に身近な事務を担っていることから、これらの事務と一体的に総務部で所管し、窓口を一本化することによりまして県民の利便性の向上に資することとしたものであります。
   〔環境保健部長緒方剛君登壇〕
〇環境保健部長(緒方剛君) まず、環境影響評価制度についての取り組みについてでありますが、近年、環境保全に対する関心が高まっており、環境保全と開発との調整に関する透明性のある手続を明示する必要があること等から、先般、本県における環境影響評価制度のあり方について検討を開始したところであります。これまでの取り組みといたしましては、国の法制化の動向を見定めつつ、他県における制度の実態を調査するとともに、また、全庁的な検討を行うため、岩手県環境対策推進連絡会議において、関係各課に対し協力を要請したところでございます。
 一方、国の法制化の動向につきましては、御指摘がありましたとおり、さきに中央環境審議会におきまして今後の環境影響評価制度のあり方についての答申が出されたところであります。答申におきましては、評価対象事業は、規模が大きく、環境に著しい影響を及ぼすおそれがあり、かつ国が関与する事業であること、評価に係る調査予測に先立って地方公共団体から意見を聴取する手続を導入すること、地方公共団体においても実質的に審査を行い、関係都道府県知事の意見が事業者に伝えられること等が示されているところであります。
 本県における環境影響評価制度については、今後、答申において指摘された我が国における環境影響評価制度の問題点等をも踏まえつつ、事業主体と対象事業の範囲、評価の実施時期、審査方法、評価後の調査等について検討することといたしております。検討手順としては、有識者からの意見聴取、関係機関との協議、環境審議会における審議を行うこととし、国の法案の審議状況を注視しつつ、本県にとって最も望ましい環境影響評価制度を制定してまいりたいと考えております。
 次に、環境保健センター、これは仮称でございますが、このセンターの整備に係る調査、検討状況についてでありますが、当該センターは、21世紀に向けて県民の健康を保持、増進するとともに、本県のすぐれた環境を保全する等の増大かつ複雑多様化する環境保健行政ニーズに対応するため、現在の衛生研究所と公害センターを統合し、また、新たな機能を付加し、環境保健行政の科学的、技術的中核機関として設置することとするものであります。平成6年度以降、庁内において本格的に検討を進め、さらに、本年度においては、公衆衛生、環境保全、自然保護分野などの専門家の方々による検討会を設けて意見を交換していただいております。
 検討会における議論においては、整備の基本的方向としては、現時点では次の4点であります。
 まず1点目は、試験検査、調査研究の充実でありまして、従来から実施してきている分野につきましては、例えばO-157などの新しい感染症やサルモネラ菌などの食中毒などについての充実強化であります。また、新たな研究分野といたしましては、地域に特有な健康事象に関する疫学的調査研究などの地域保健に関する調査研究や野生動植物の分布、生態の調査などの自然環境の保全を図るための調査研究への取り組みであります。
 2点目は、さまざまなニーズに的確にこたえることができる人材を効果的に養成するため、保健所職員のみならず、住民サービスに直接携わる市町村職員等をも含めた専門的、技術的な研修の実施であります。
 3点目は、環境保健情報の体系的な収集、解析の実施や関係機関及び県民への情報の提供を行う新たなネットワークの構築であり、現在、本県の実情に合った環境保健情報を一元的に提供するシステムのあり方について、専門的な調査機関とともに検討を進めているところであります。
 4点目といたしましては、県民に開かれた施設として、健康や環境に関して学習するための体験型の施設や体制の整備等であります。
 今後におきましては、これらの方向を踏まえて、さらに具体的内容について早急に整理してまいりたいと考えております。
 なお、施設整備のスケジュールについては、平成9年度には盛岡市などの関係機関の協力を得ながら建設用地の確保及び地質調査を進める予定であり、平成12年度の開所に向けて事業の一層の推進を図ることといたしております。
   〔商工労働部長佐藤孝司君登壇〕
〇商工労働部長(佐藤孝司君) まず、起業家及びベンチャー企業の支援についてでありますが、県におきましては、内発的な地域産業を創出するため、若くて成長性の高いベンチャー企業の育成や既存企業の新規事業分野への進出などへの起業活動の支援策が必要と考えており、平成7年度から新たに創業しようとする者、創業間もない者などを対象として個別指導を行ういわて起業家大学を開催するとともに、経営と技術の専門家で構成するイーハトーブエンジェルを組織化して、実際に事業を起こす場合の支援体制の充実を図ってきたところであります。
 また、新規創業者に事業化シーズとなる技術を提供するため、岩手県工業技術センター、岩手大学地域共同研究センター等との連携を図り、本県の特性を生かした独創的、先端的な研究開発を推進してきたほか、企業みずからが行う新製品、新技術開発に対しては、中小企業技術改善費補助金等の助成により、技術開発力を持った企業や意欲的な新規創業者の育成に努めてきたところであります。特に、ベンチャー企業の支援につきましては、研究開発投資や急速な成長に伴って生ずる旺盛な資金需要に対する供給体制の整備が課題となっていたところでありますが、平成8年度にはこの課題に対応するため、新規性を有する研究開発及びその事業化を支援するための法律、いわゆる中小企業創造法の認定企業を対象に、無担保、無保証人の融資制度として創造的中小企業支援資金及び投資制度としては新産業創造支援事業を創設したところであります。平成9年度におきましては、現在、建設されている盛岡地域交流センタービル内に創業支援機能を備えた起業家育成のための拠点施設を整備することとしているほか、金融対策につきましても、新たに首都圏等からのUターン開業やのれん分けによる独立開業などの場合にも利用できるいわて起業家育成資金を創設し、新規事業の開始に必要な資金の貸し付けを行うこととしております。
 なお、この資金は、設備資金として2、000万円、運転資金として1、000万円をおのおの15年以内、10年以内の長期低利で貸し付けるものであります。平成9年度当初予算で2億円の融資枠を見込んでいるところであります。今後におきましても、意欲的な起業家がその潜在的な力を十分に発揮し、技術革新と新たな雇用の担い手として成長発展を遂げるよう、総合的な支援策を講じてまいりたいと考えております。
 次に、本県の特産品の販路拡大についてでありますが、近年、地域興し等の一環として全国的に商品開発が活発化し、産地間の競合が激しくなる中で、魅力のある商品が少なくなってきていることなどから特産品の売り上げが伸び悩んでおり、加えて、流通経路の多角化や消費者ニーズの多様化が進展し、その環境は厳しさを増している状況にあります。このような中で、特産品の販路を拡大するためには、まずもって資源の豊かさ、品質の確かさ、そして秘められた素朴さなどをコンセプトとした岩手らしい独創的な商品開発を促進するとともに、2次産品のみならず、1次産品までを含めた総合的な販売促進、量販店や通信販売等を活用した新たな販路の拡大、さらには、特産品のイメージを高めるためのきめ細かな情報発信など、産地間競争に打ち勝つための戦略的なマーケティングを展開することが重要であると考えております。このため、県といたしましては、地場産業の商品開発や販売促進の取り組みに対して支援するとともに、岩手県産株式会社等を通じた国内主要都市及び香港、シンガポールでの物産展や全国の流通業者約60社を招聘した商談会の開催、首都圏へのアンテナショップの設置、さらには、インターネットを活用した商品情報の提供等により、特産品の販路拡大を推進してきたところであります。
 また、こうした施策に加え、平成9年度におきましては、新たに関係各部の連携を強化し、原料生産から加工流通にわたる関連施策の集中的な実施により、21世紀の本県を代表する特産品、いわゆるいわてブランドを育成するための計画づくりに着手するとともに、豊富で新鮮な農林水産物や観光資源など、岩手の魅力を首都圏に丸ごと売り込むための銀河系いわてブランドフェアの開催、本県特産品や観光情報を全国に広く発信するため、盛岡駅西口の地域交流センタービルに設置する物産観光施設--仮称でございますが--いわてブランドプラザの整備等を推進することとしているところであります。今後ともこれらの施策の積極的な展開により、独自性や話題性のある特産品の販路拡大に努めてまいりたいと考えております。
   〔農政部長中村盛一君登壇〕
〇農政部長(中村盛一君) 農協をめぐる課題の認識と今後の農協指導についてでありますが、議員御指摘のとおり、農業を取り巻く情勢の変化に伴い、農協の経営環境は信用事業部門の事業収益が減少の傾向にあるなど、極めて厳しい状況にあるものと存じております。
 まず、以前からの不良債権を抱え、経営の改善を要する農協につきましては、事業全体の収益の伸び悩みが見られるなど、早急な経営の立て直しが迫られている状況であります。このため、県といたしましては、本年度当初から、従来の本庁主体の指導体制に新たに地方振興局を加えた農協運営強化指導班を設置し、自己資本の充実、経営改善の徹底、そのための高収益作目の導入等につきまして、本庁、地方振興局が一体となって指導に当たってきているところであります。
 次に、農協法の改正に伴う業務執行体制や監査体制の強化についてでありますが、農協の経営基盤を確立するためには、財務の改善、営農指導体制の充実はもとより、役員体制の強化が不可欠でありますことから、農協法改正の趣旨を踏まえ、経営管理委員会制度の導入や組合員以外からの理事、監事の選任などについても積極的に取り組むよう、農協中央会とともに指導してまいりたいと考えております。
 また、いわゆる金融機関の健全化法にかかわる課題でありますが、自己資本比率の早期是正を要する農協がありますことから、現在、当該農協に対し、改善計画の策定を求めている段階であります。今後は、その改善計画の達成に向けて県といたしましてはこれまで以上に指導を強化してまいりますが、農協系統におきましても、組織を挙げて経営改善に取り組むことが肝要であると考えているところであります。
 農協の広域合併につきましては、現在、系統組織において鋭意進められており、3月1日には新たに新岩手農協を初め、3農協の発足を見たところであります。広域合併により経営基盤が強化され、広域的営農体制が確立されるとともに、多様化する組合員のニーズに的確にこたえることができる農協の早期実現が期待されておりますことから、今後におきましても、広域合併が推進されるよう、県といたしましても積極的に支援してまいる考えであります。
   
〇議長(堀口治五右衛門君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後3時22分 散 会

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