平成9年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇41番(藤倉正巳君) 新進・公明の藤倉正巳でございます。
 昭和46年の初当選でありますが、空白がありまして、帰り新参でございます。同僚議員に伍し、真摯に勤める所存でございますので、何とか皆さん、よろしくお願いいたします。
 私は、全国最年少の増田知事が、若さと行動力を発揮しつつ、県政の推進に当たられ、ここ数年間を、21世紀の岩手の新しい時代を切り開くための準備の期間、大きくはばたく助走の期間と位置づけて奮闘されておりますことに、心から敬意を表するものであります。
 私もまた、岩手の自然、風土を愛し、岩手の未来が明るいものであってほしいとの観点に立って、以下、通告に従い、幾つか提言を含め質問をさせていただきます。
 まず、県政推進の柱となる構想についてお尋ねします。
 千田知事は、食糧難時代、大県構想を打ち出され、米の50万トン達成を目指しながら諸課題を進め、さらには北上山系開発を積極的に推し進めたのでございます。
 中村知事は、新幹線の到来、高速道の開通に伴って、あばら骨、横の線を考え、県単高速関連道8ルート12路線の整備など、高速交通体系の整備と、その効果の全県への波及に力を入れてまいった次第でございます。
 工藤前知事は、教育立県を提唱し、今日の岩手県立大学の整備への道を開かれました。
 増田知事は、岩手のあるべき姿について、ドリームランド岩手と述べられております。私は、知事の、岩手の明るい未来、新しい時代を切り開こうとする基本姿勢とその意気込みについて大いに評価するものでありますが、知事は就任3年目に入ろうとしており、新交通ネットワーク道路整備、県立大学整備など、前知事の構想を継承したものから、独自の増田カラーを打ち出し、県政を牽引していくべき時期にあるのではないかと考えます。
 知事は、3県総後期実施計画の7つの視点、演述の8つの重点施策と社会経済情勢の変化に適応した新たな課題の提起はなされておりますが、私が申し上げたいのは、21世紀を開く県政推進の柱となる構想、一口で増田県政のスローガンとなるべきものを打ち出すべきと考えます。ポスト3県総の策定に着手されるとのことですが、この点について知事の御所見を伺います。
 次に、県庁舎の移転問題についてお尋ねします。
 私は、今から17年前のことになりますが、昭和55年9月議会において、盛岡市内の交通問題の抜本的な解決のためには、交通の発生、集中の要因となっている施設を郊外に誘導する必要があるのではないかと訴え、多くの人が集合する公的施設については、郊外の交通の要所であるインターチェンジ付近に移転してはどうかと、当時の中村知事に提言したことがございます。今、再びモータリゼーション時代における官公庁の立地のあり方として、県庁の移転問題について提案したいと思います。
 インターチェンジ付近に広大な駐車場を有した森の中の役所と、そういう新しいイメージの官公庁を形成するには、県内各地から集合する人々の利便性が確保されるほか、市民が頻繁に訪れ、また、市内交通の隘路ともなっている盛岡市役所が県庁跡地に移転することにより、中心街の交通混雑は大幅に改善されることになろうかと思います。また、県庁舎や県議会棟の狭隘なスペースも改善されることになると存じます。
 高度情報化社会の到来は、県と市町村、民間団体等、仕事とのかかわり方が電子メール、テレビ会議等により大幅に変わってくるものと思われ、庁舎等の施設整備も新しい時代に対応したものが求められると思うからであります。こうした新時代の官庁街形成の先鞭として、県庁の移転を検討されてはどうでしょうか。これもポスト3県総の目玉の1つとして打ち出してほしいのでございますが、知事の雄大な構想と大胆な決断を期待したいと思います。当面、庁内に検討委員会を設置され、調査検討に着手されるよう御提案を申し上げます。いいですか、知事。
 次に、森林の持つ公益的機能の維持、増進について伺います。
 森林は、木材の供給を初めとして、国土の保全、水資源の涵養、砂防、空気の浄化、保健休養の場として多様な機能を発揮していることは御案内のとおりであります。森林資源は、人工林を中心に充実しつつあり、全国では1、000万ヘクタールが造成され、岩手県ではあわせて3、500ヘクタールがなされております。植樹の時代から今や育樹の時代に移っておると認識しておりますが、したがいまして、私は、今後は林業活動を通じての森林の適切な整備が課題となっているものでございます。
 訂正します。3、500ヘクタールは年間の伐採でございまして、植林は、岩手県の森林は115万ヘクタールありますが、国有林を除いて76万9ヘクタールございます。訂正します。
 そこで、森林保全と自然環境保全に関連して、市町村の国有林の取得について伺います。
 県内の市町村は、水資源確保や森林保護のために国有林を取得する動きが始まっております。田野畑村が平井賀川の上流に195ヘクタールを買うなど、それから、岩泉町は小本川の上流を、197ヘクタールを9年度から取得する予定と報じられております。森林の有する水資源の涵養、土砂流出の防止、大気浄化などの公益的機能の維持、増進のため、自治体が国有林を取得して保全に努めていることは歓迎すべきこととは思われますが、一方では、自治体の国有林購入は、国有林野事業の赤字縮小の手助けを行っているようにも思います。
 そこでお伺いしますが、県では、このような市町村の国有林購入の動向をどう評価されているのかお伺いします。
 一方、昨今の自然保護思想の普及により、すぐれた自然環境を有する地域について、自然環境保全の見地から市町村が当該土地を購入し、みずから管理していくケースがふえておりますが、県では、市町村が当該地域の土地等を購入する際、緑あふれる県土保全事業を適用し助成してきたと聞いておりますが、どのような場合にその制度が適用されるのか、これまでの実績とあわせて今後の方針についてお示しください。
 次に、本県における新エネルギー導入の取り組みについてお伺いします。
 現在の我々の生活は、石油など化石燃料を中心としたエネルギー資源を消費することで成り立っていますが、いつかはなくなる有限な資源を使い続けるということのほか、化石燃料の燃焼に従って発生する二酸化炭素等による地球温暖化が重大な問題となっており、省エネルギーの推進と石油にかわるエネルギーの開発利用が求められております。本県では、これまでも全国に誇り得る自然環境に恵まれた地域性を活用して、水力や地熱エネルギーなど、クリーンエネルギーの開発を進めてきたところでございますが、地球環境問題への世界的規模の取り組みに積極的に対応していくという観点から、太陽光発電を公共施設へ先導的に導入するなど、本県の新エネルギーの導入促進に向け、早期に取り組んでいく必要があると存じます。
 そこでお伺いしますが、本県における新エネルギー導入の取り組みについてお尋ねします。
 次に、西暦2000年、世界地熱会議の開催準備状況と地熱の開発利用促進についてお伺いします。
 私は、本県の特性を生かした形で、全国に先駆けた行事や世界的規模の催しを誘致していくことは、県勢発展を図る上で今後とも必要であると考えるものでありますが、そういった中で5年に一度の、そしてまた日本で初めてのWGC世界地熱会議が千数百人規模と、本県最大級の国際会議と承知しておりますが、他県との厳しい競争を乗り越え、その誘致を実現したことはまことに喜ばしい限りであります。企画調整部長、いいですね。
 このことについて、昨年6月に本県と大分県との共同開催が決定したと承っておりますが、その後どのように進展しているのか、本県としての取り組みを含めお伺いします。
 また、この世界地熱会議の開催を単なる一過性のものに終わらせることなく、日本有数の地熱資源を有している本県の地熱開発利用促進につなげていくべきものと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、電力自給率の向上についてお伺いします。
 我が国において、電力エネルギーは国民生活や産業活動にとって、必要不可欠な基幹エネルギーとして重要な役割を果たしており、その安定的供給の確保はエネルギー政策の課題となっております。本県の電力需給も冷暖房機器などの普及拡大による家庭用の増大に加え、産業用も確実な伸びを示していることであります。しかし、本県の場合には、水力発電26万7、000キロワット、地熱発電10万3、500キロワットのみで大規模な電源がないことから、電力自給率が20%台と低迷している現状にあり、本県の電力自給率の向上を図り、電力エネルギーの安定的な供給を確保していくことは永年にわたる課題であります。こうした中、新日鉄釜石製鉄所が電力卸供給事業に参入し、また、県としても太陽光発電など、新エネルギーの導入促進に努めていくとのことでございますので、これらを含めて電力自給率の向上についてどのように取り組んでいくのか、お伺いをします。
 次に、世界の食糧事情と本県農業の振興についてお伺いします。
 昨年11月に、イタリアのローマで開かれました世界食糧サミットにおいて、世界の食糧安全保障の達成に向け、各般の努力を傾注すること、すべての国で飢餓撲滅のための努力を継続し、まず、2015年までに飢餓の半減を目指すこと等を内容とする政策声明、いわゆるローマ宣言を採択したところであります。この宣言は、食糧や農産物が経済原則を超えて飢餓の撲滅と食糧の安全保障など、広い視野から取り組むことの重要性と生命を守り育てる農業の大切さを全世界に向けて宣言したものであり、非常に意義深いものと思います。
 しかし、先般、私は隣の大国、中国の状況を知る機会がありましたが、中国の食糧事情は、人口増により消費の増大のみを考慮しても、33年後、つまり2030年には2億700万トンが不足するとされており、これは1994年、全世界の穀物の輸出量に匹敵する量であり、さらに経済成長による食生活の向上も考えますと、その不足量は3億6、900万トンにも達するとされております。また、これらの世界の食糧事情は、開発途上国を中心とする人口増加、食糧消費水準の高度化に伴う飼料穀物需要の増加、さらには砂漠化や工業化の振興による農地の減少など、需給が一層逼迫すると言われております。このような世界の食糧事情下にあって、我が国の状況を見ますと、このほど公表された食糧需給表によりますと、平成7年度の食料自給率は42%と、前年比を4ポイントも下回っております。日本はかなり前から、先進国の中でも異例の自給率の低さが指摘されておったところでございますが、申すまでもなく、農業は本県の基盤産業であります。県は、こうした国内外の状況を踏まえ、本県農業の振興をどう考えておられるのかお伺いします。
 次に、少子・高齢化の急速な進展に関連し、厚生省の人口問題研究所が公表した日本の将来人口によれば、女性1人が生涯に生む子供の平均数、いわゆる合計特殊出生率は、史上最低であった95年の1・42を下回り、今後1・38まで低下すると予測。今年中には、65歳以上の老年人口が15歳未満の年少人口を上回り、21世紀半ばには国民の3人に1人は65歳以上という超高齢社会が到来し、現在、1億2、500万人の日本の総人口が2051年には1億人を割り込むと予測されております。合計特殊出生率は、2・1がその民族や国民の人口の維持水準とされておりますが、我が国では1・38からその後緩やかに回復しますが、1・6の水準にとどまるものと見られます。少子・高齢化の加速は、若い世代が支える公的年金の財政に直接影響を与え、厚生年金の場合、94年の改正により、年金支給年齢と保険料率を段階的に引き上げることにしておりますが、早晩、見直しが必要となるかと思われます。税金や保険料をどこまで引き上げるのか、年金支給水準をどこまで下げるかという議論のほか、超高齢社会に備えて医療や福祉、介護を含めた社会保障制度全体の構造改革が求められてきております。もとより、子供を産む、産まない、あるいは子供を1人何人産むかということの問題はあくまで個人と夫婦の問題でありますが、個人の自由に任せた結果、子供をつくらない人がふえ、社会経済の活力が低下し衰退していくことでは大変な問題になります。この問題の背景には、出産、子育てにかなりの私的費用がかかる、子供1人が大学を卒業するまでには約2、000万円と言われております。子供2人以上持つと大変な経済的負担となり、貴重な時間も奪われ、体力も消耗するとして子育てを回避させ、出生率を低下し続けていくことが指摘されております。
 そこで、お伺いします。
 少子化防止のためには、社会全体で子育てを応援するような意識改革と育児支援策が必要と考えますが、県としてはどのような施策を展開されようとしているのか、お尋ねします。
 また、本県の大学進学率を見ますと、平成8年度は31・4%と青森県に次ぎ下から2番目で、全国平均の46・2%と比較し、かなり開きがある状況にあります。一方、先ほど申し上げましたとおり、子育てにとって教育費がかなりの負担となっておりますので、大学進学率の向上にとりましては少子化防止対策の意味も含め、本県として独自の大幅な大学奨学金制度を創設してはどうかと提案申し上げます。他県でも、県単独の奨学金制度を創設している例もあると聞いております。教育長の見解を求めます。
 次に、大学進学率の向上に関連しまして、県立大学の整備についてお伺いします。
 県立大学は、看護、社会福祉、情報、総合政策の4学部、定員440名の総合大学として整備が進められており、本県の子弟の大学進学の環境条件が大きく向上することで、県民ひとしく歓迎しているところでございます。また、21世紀の本県の飛躍的発展を支える有為な人材を育成する場として、本県の学術・文化振興の拠点として、県民は大きな期待を寄せているところであります。県当局及び関係者の御努力のもと、着々と開学のための諸準備が進められておりますことは、まことに喜びにたえないところでございます。
 昨年末には、半導体工学の世界的権威者である有名な西澤潤一前東北大学総長を初代学長としてお迎えすることが内定し、県立大学に寄せる県民の期待がさらに大きく膨らんだところであります。また、施設整備の面におきましても、大学施設の中心となる校舎等の本格的な建設工事も始まり、滝沢村の建設現場では、来年3月の完成に向けて、現在、急ピッチで工事が進められているところであります。文部省に対する大学設置認可申請につきましても、いよいよこの4月には申請の手続に入ろうということで、これまでの関係者の御努力に深く敬意を表するものであります。平成6年度から進めてまいりました県立大学整備事業も、残すところあと1年となり、まさに正念場を迎えたわけでございますが、平成10年4月の開学に向けて、なお一層の努力を願うものであります。
 そこでお伺いしますが、教授等のスタッフの確保に当たっては相当の御苦労がおありと存じますが、現在までの教授等のスタッフ確保の状況と今後の見通しについてお示し願いたいと思います。
 さて、県立大学は、地域の諸課題にグローバルな視点から果敢に取り組む気概を持った人材を育成するという使命を持つ一方で、地域社会の発展に貢献していくことも大きな使命の一つと思います。
 そこでお伺いしますが、今後の県立大学の運営に当たり、どのような形で地域に貢献されようとしているのか、現段階での構想をお示しください。
 次に、交通渋滞の緩和策についてお伺いします。
 交通網の整備については、県では県内外との連携交流の促進を図り、県土の均衡ある発展に資するため、高規格幹線道路や地域高規格道路、広域生活圏相互を連結する幹線道などの体系的な整備に積極的に取り組んでいるところでございます。年末に開かれた国土開発幹線自動車道建設審議会において、東北横断自動車道釜石秋田線の宮守村-東和町間の整備計画区間への昇格と釜石市-遠野市間の基本計画区間への格上げが決定したのに続き、今月には、三陸縦貫自動車道の釜石市-山田町間の整備計画区間への昇格と、三陸町-釜石市間、気仙沼市-陸前高田市間及び八戸久慈自動車道の階上町-久慈市間の基本計画区間の組み入れが決定するなど、東北縦貫自動車道と一体になって、本県の縦と横の高速交通ネットワークの骨格が着々と形成されてきていることは、まことに喜ばしいところでございます。また、3県総後期実施計画に掲げてあります県都圏と県内各都市を90分で結ぶ新交通ネットワーク道路整備事業により、16ルートの整備が計画的に進められているところであり、幹線道路は目に見えて整備されております。しかしながら、県内90分交通の実現のためには、交通渋滞地域の解消が不可欠であります。高速道路を利用して、あるいは整備した幹線道路を利用して、従前よりも早く目的の近郊まで到着したとしても、それから都市部に入ってからの交通渋滞で貴重な時間を費やすのでは何にもならないわけでございます。私が日ごろ利用しております国道4号と国道46号を結ぶ主要地方道盛岡環状線、国道4号茨島-分レ間と盛岡周辺にも渋滞のひどいところがございます。
 そこでお伺いしますが、県内の都市部の道路での渋滞の厳しいところについて調査しているでしょうか。渋滞地域のランクづけを行い、交差点の右折レーンの設置など、計画的に解消を図るべきと思いますが、県の取り組み状況と今後の対応についてお示しください。
 以上で私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございます。答弁よろしくお願いします。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 藤倉正巳議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、21世紀を開く県政推進の柱となります構想についてお尋ねがございましたけれども、まず、私の時代認識を申し上げますと、今日は高度情報通信の発達ですとか東西対立の終えんなどによりまして、世界の国々が急速に一体化をしている中で、日本は欧米諸国への経済面でのキャッチアップがもう既に達成をされ、その後、経済が成熟化をしていく一方で、物の豊かさよりも心の豊かさを大切にするといったような人々の価値観ですとか、趣味、余暇生活を重視するといったそれぞれのライフスタイルの大きな変化が見られておりまして、一人一人の個性や多様性をますます重視する、そういう時代に入ってきているというふうに考えております。このような大きな潮流の中にございまして、行政--我々が行っております行政みずからも、従来のサービスの内容や提供の仕方を漫然と従来どおり踏襲をすることではなくて、さまざまな面で大きく質的転換を図っていくことが求められているところでございまして、こうした時代の潮流、大きな流れを見ますと、県政推進の柱を一つの構想で的確に、短く、端的に表現をすることは大変難しい時代となってきているというふうに考えております。
 今後の県政運営の基本方針といたしまして、分権型の地域社会の創造を掲げまして、これを積極的に推進をしていくこととしておりますけれども、この場合、地域の自主性、自立性を高めて、地域のことはみずからの責任で地域で考えていくということが基本となるものであるわけですが、それぞれの地域の目指す方向を県政において全体として一つの構想で表現することも、これまた難しいものがあるというふうに考えております。このように、従来と同じような観点からの県政推進の柱となる構想の確立は難しい面がございますが、県民の多様な価値観--それぞれの多様な価値観に応じた自己実現のさまざまな選択の可能性を広げて、一人一人が将来の夢、目標を抱きながら、すべての県民がそれにチャレンジをして達成できるような地域社会を築くことがこれからの県政において重要でございまして、その実現に向け全力を傾注するわけでありますけれども、21世紀初頭を展望いたしまして、県政がどういう方向を目指していくかということにつきましては、今後、新たな視点も含めまして、さまざまな角度から検討を加えて策定したいというふうにしておりますこの新しい総合計画の中において、そうした方向を目指すそのかぎとなるキーワードを入れていきたい、その中で明示をしていきたいと、こういうふうに考えております。
 次に、県庁舎の移転問題についてお尋ねがございましたが、この県庁舎、昭和40年4月に建設をされたものでございまして、建築後既に31年を経過しておりますけれども、建物の躯体には現在のところ損傷もなく、外壁の改修を行うなどによりまして、今後、相当の期間は使用に耐え得るものというふうに考えておりまして、今年度には空調設備の全面的な整備も実施をしたところでございます。このように県庁舎につきましては、県政推進の拠点にふさわしい施設として、その整備充実に逐年努めてきたところでございますけれども、近年、OA機器の導入や多様化する行政ニーズに伴いまして、事務室の狭隘化などが顕在化をしてくるなど、機能面において課題が見られることも議員御指摘のとおりでございます。
 このため、今後とも、建物、設備などの維持保全や改善に努めますとともに、盛岡地区の合同庁舎などの効率的利用も図りながら、行政サービスの低下を来すことのないように配意していく考えでございます。
 将来における県庁舎のあり方につきましては、設置場所、規模、機能などをどのようにするか、これは全県民にとっても、また、我々の県政運営の面からも重要な事柄でございまして、今後、ますます多様化、高度化するというふうに見込まれます行政需要に対応して、その機能が十分に発揮できるように、長期的な観点で広く基礎的な検討を加えていく考えでございます。
 次に、国内外の食糧需給などの状況を踏まえました本県農業の振興についてでございますけれども、国土資源に制約のあるという我が国におきまして、1億2、000万人を超える国民が享受している豊かな食生活を維持していくため、すべての食糧を生産することは困難な状況にありますので、国民生活にとって不可欠な食料については、可能な限り国内生産の維持拡大に努めると、こういうことが肝要であると考えております。殊にも我が国の総合食糧供給基地、これを標榜しております本県におきましては、安全、健康、そして新鮮思考など、多様化する消費者ニーズに的確に対応しながら、品質のすぐれた農産物を安定的に供給していかなければならないというふうに考えております。
 このため、まずもって農業に携わる方々の意欲の喚起に努めながら、農業が魅力ある産業として選択され、他の産業と遜色のない所得が得られるような経営体の育成や農業生産基盤の整備、革新技術の開発普及を推進いたしますとともに、各地域におきます農地、労働力などの農業資源を十分に活用した効率の高い、いわゆる地域ぐるみ農業を形成いたしまして、盤石の生産体制を構築していかなければならないというふうに考えております。
 さらに、これまで各地に形成をされてまいりました米や園芸、畜産のすぐれた産地の体制強化を重点としながら、本県が開発をいたしましたオリジナル品種でございますゆめさんさ、かけはしや果樹、花卉などのこうした品種の普及、拡大などによりまして、岩手ならではというこの独自性を強調した農業生産を展開してまいりたいと考えております。あわせまして、こうして生産された県産農産物のPRとイメージアップを図りまして、有利販売に結びつけていくことが重要でございまして、首都圏の消費者などを対象とした純情産地フェアやいわて花フェスタ、銀河系いわてブランドフェアなどのこうした各種イベントの開催などによる多彩な宣伝活動を行いますとともに、本県のこうした美しい自然や農村景観のほか、食にまつわる情報を丸ごと消費者の方々に発信をしてまいりたいと考えております。今後とも、このような取り組み、総体を通じまして、我が国における食糧供給力の向上に貢献をしてまいりたいと、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長に答弁をさせますので、御了承お願い申し上げます。
   〔林業水産部長中村陽兒君登壇〕
〇林業水産部長(中村陽兒君) 市町村による国有林の取得についてお答えいたします。
 近年、市町村が水源地の保全などのために森林を取得していることにつきましては、国土庁、自治省、林野庁が協力して、平成5年度から取り組んでおります森林・山村対策の中で、優良起債を活用できる地域環境保全林整備特別対策事業が創設され、環境保全や保健休養等のすぐれた価値を有する森林について公有化を進めることにより、適切な保全や森林公園等として積極的な活用を図ることとされたことによるものであると認識いたしております。この制度によりまして、本県におきましては、平成7年度までに一戸町などで3カ所、41ヘクタールの森林が取得されているところであり、岩泉町や田野畑村におきましても本制度を活用すると伺っております。
 本県は、県土の約8割が多種多様な樹種からなる森林となっておりますが、この豊かな森林を確実に21世紀に引き継ぐことが私たちの責務であると考えており、このためには、必要によって地方公共団体が地域振興等の観点から、みずから森林を取得し、適切に管理していくことも重要な課題であると考えております。一方、国有林は、そのほとんどが水源地域にありますことから、取得の対象が国有林になることはあり得ることであり、また、市町村がみずから水源地域の森林を取得して適切に管理しようとすることにつきましては、森林の有する多様な公益的機能に対する理解が高まってきていることによるものであると受けとめております。
 また、国有林経営につきましては、昨年11月、国の林政審議会に森林・林業基本問題部会を設置して、経営の健全化を図るための方策について、現在、調査、審議が進められているところであります。さらに、この中では国有林問題にとどまらず、今後の我が国の森林・林業のあり方まで含めて、さまざまな検討がなされているということでありますので、その推移に注目してまいりたいと考えております。
   〔環境保健部長緒方剛君登壇〕
〇環境保健部長(緒方剛君) 緑あふれる県土保全事業についてでありますが、この事業は貴重な野生生物が生息しているなど、すぐれた自然を有する地域や市町村のシンボルとなる名勝などのすぐれた自然景観を有する地域について、市町村がその自然環境を保全し、次代に引き継いでいくため土地などを買い取る場合に、県が学識経験者の意見を聞くなどの手続を経て、その経費の一部を補助するもので、環境保全基金の果実を財源として実施しております。
 これまで、平成4年度には沢内村の貴重なハッチョウトンボの生息地に、平成6年度には前沢町のすぐれた自然景観を有するアカマツ並木に、平成7年度には盛岡市のイヌワシ生息地について、その土地等の購入経費に対して補助してきておりまして、平成8年度には滝沢村の春子谷地湿原と川井村の区界高原について、土地などの購入に対して補助することとしております。
 自然環境を保全する手段といたしましては、法律や条例に基づき、その地域を指定することが考えられるわけですが、地権者の同意を得ることが困難な場合もあります。市町村が地域の土地などを直接買い取って保存していくことは、自然環境保全の見地から極めて有効かつ確実であると考えており、今後とも引き続き本事業を適切に運用して、市町村による環境保全の取り組みを支援してまいりたいと考えております。
   〔企画調整部長武居丈二君登壇〕
〇企画調整部長(武居丈二君) まず、本県における新エネルギー導入の取り組みについてでありますが、二酸化炭素排出に伴う地球温暖化など、地球環境問題への対応は極めて重要な問題であり、本県におきましても省エネルギーの推進や石油に代わるクリーンエネルギーの積極的な導入を図ることは重要な課題であると認識しております。国におきましては、平成6年に新エネルギー導入大綱を閣議決定し、さらに、この2月には、新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法を国会に提出するなど、新エネルギーの導入促進に向け、鋭意、施策を展開しているところであります。
 本県におきましては、これまで水力のほか、豊富に存する地熱資源を活用し、地熱エネルギーの先進的な利用に努めてきたところでありますが、今後、全国にも誇り得る岩手の豊富な自然を生かすとともに、人と自然との望ましい共生を図っていく観点からも、太陽エネルギーや風力などの新エネルギーの導入に向けた積極的な取り組みを進めていく必要があると考えております。このため、今年度と平成9年度の2カ年で新エネルギービジョンを策定し、これを指針といたしまして、本県における新エネルギーの導入についての総合的な施策を構築していくこととしておりまして、現在、本県の新エネルギーの賦存量や利用可能量、さらには、導入に当たっての課題や県内の地域特性にあわせた導入の可能性などについて、調査検討を進めているところであります。
 今後におきましては、公共施設等への太陽光発電の導入などを初め、本県の地域特性を生かしました個性的な施策を織り込みながらビジョンの策定作業を進めるとともに、県民に対しましても一層の普及啓発を図るなど、県、市町村、民間、さらには県民一丸となった取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 次に、西暦2000年世界地熱会議の開催準備状況についてでありますが、昨年6月に国内組織委員会で決定された、前半を大分県、後半を本県で開催するという基本方針が、その後11月にメキシコで開催されました国際地熱協会の評議員会において承認されたところであります。この2地域での共同開催は、世界各地からの参加者にとって、岩手、大分という日本有数の地熱開発地帯の双方を実地に見聞しながら会議を行うことができることから、国際地熱協会の関係者から期待を持って受けとめられていると聞いております。
 現在、国内組織委員会において基本計画案等を策定中でありますが、本県においては会議後半の3日間に、産業文化センター・アピオを会場としまして、地熱資源に係る世界最先端の技術開発の成果等について発表、討議がなされる専門分科会や全体会議があります。それから最後に、大分と岩手の会議を通じました総括的な取りまとめが行われることとなっております。県といたしましては、この会議の成功に向けまして、地元における支援行事や県民参加行事なども検討しながら、準備に万全を期してまいりたいと考えておりますが、あわせてこの世界地熱会議の開催決定を契機に、地熱開発促進調査などの成果を生かしまして、本県の地熱資源の開発利用が一層促進されるよう、国や関係機関等に働きかけてまいりたいと考えております。こうした取り組みを進めまして、西暦2000年には、この世界地熱会議をぜひとも成功させ、地熱いわてのイメージを高めるとともに、クリーンなエネルギーである地熱を通じまして、21世紀に向けて人と自然との望ましい共生を図ろうとする岩手の姿を内外に発信していきたいというふうに考えております。
 次に、本県における電力自給率の向上についてでありますが、もとより電力供給は、電気事業者によって広域的に行われるものでありますが、電力自給率の向上を図り、必要な電力の安定的な供給を確保していくことは、県といたしましても重要な課題の1つであると認識しているところであります。このため、本県でも、これまでも地域特性を生かしまして、水力発電でありますとか、あるいは地熱発電の開発利用を促進してきているところでありまして、最近におきましては、昨年3月に葛根田地熱発電所2号機、また、10月には県営松川発電所が運転を開始したところであります。さらに、電気事業法などの改正によりまして、電力卸供給事業に民間企業が参画できることになったことに伴いまして、今年度の東北電力株式会社による電力卸供給事業の募集におきまして、主に日中の電力需要が多い時間帯に向けた、いわゆるピーク対応電源と申しますが、新日本製鉄株式会社釜石製鉄所が13万6、000キロワットの規模の石炭火力発電による電力卸供給を行うことになったところでありまして、本県における電力自給率の向上に資するものと期待しているところであります。
 また、太陽光発電や風力発電など、新エネルギーについてはいまだ普及の途上にあり、供給電力量は少量でございますが、環境面への配慮と電力エネルギーの安定的な供給の確保の観点から、一層の導入の促進を図る必要があるものと考えております。今後におきましても、本県の地域特性を踏まえ、長期的な観点に立ちまして多様な電源開発を促進しながら、本県の電力自給率の向上に努めてまいりたいと考えております。
   〔生活福祉部長佐々木孝太郎君登壇〕
〇生活福祉部長(佐々木孝太郎君) 子育てについての意識改革と育児支援策についてでありますが、近年、本県におきましても少子化が進行しており、次代を担う子供を安心して生み、健やかに育てる環境を整備することが重要な課題となっております。このため、県におきましては、平成7年に策定しました岩手県子育てにやさしい環境づくり対策指針において、子育てのための相談指導の充実や親の経済的負担の軽減、育児休業の普及や特別保育の充実など、子育てと仕事の両立支援、母子保健、医療サービスの充実、遊び場や住宅などの生活環境の整備、ゆとりある教育や地域ぐるみの健全育成活動といった子育て支援の取り組みの基本的方向を明らかにし、庁内関係部局の相互の緊密な連携のもとに、幅広い分野にわたるさまざまな施策を総合的、計画的に推進しているところであります。
 また、子供と家庭の問題について多くの人々に関心を持っていただくとともに、社会全体で子育てを支援することの重要性について意識啓発を図るため、子供や子育てについてのシンポジウムやセミナー、さらには健全育成に関する各種イベントを開催しているところであります。
 県といたしましては、今後ともこれらの施策の一層の充実を図るとともに、福祉や保健医療、労働、産業、教育など、幅広い分野の代表者で構成しております岩手県子育てにやさしい環境づくり推進協議会の活動を通じて、行政と民間が一体となった子育てにやさしい環境づくりを積極的に推進してまいりたいと考えております。
   〔総務部長大隅英喜君登壇〕
〇総務部長(大隅英喜君) まず、県立大学の教員の確保の状況と今後の見通しについてでありますが、御案内のとおり、学長には西澤潤一先生を、副学長には東北大学名誉教授の塚本哲人先生をお迎えすることとし、既に公表したところでありますが、学部長等の主要教員につきましても、高い識見を持ち、それぞれの分野ですぐれた業績のある先生方から就任の内諾を得ているところであります。
 また、主要教員以外の教員につきましては、新たに200人程度の専任教員を確保することが必要でありますが、これまで就任の内諾を得た方が約半数を超えており、折衝中の有力な方を含めますと約7割を超える状況となっております。県立大学を新たな時代の創造のため、広く内外に発信する力を持った大学として整備するためには、優秀な教授陣の確保が最大の課題と存じております。このため、すぐれた教育研究実績はもとより、教育研究に対する情熱と人間性を重視して、広く人材を招聘してきたところでありますが、本年7月までには、文部省に対して全教員を申請しなければならないことから厳しい状況下ではありますが、引き続き優秀な教授陣の確保に全力を傾注してまいりたいと考えております。
 次に、県立大学の地域への貢献についてでありますが、県立大学は次代を担うすぐれた人材を育成する場としてのみならず、本県の学術、文化振興の拠点として、地域社会の発展に貢献していくこともその重要な使命の1つであると認識しております。建学の理念においても地域社会への貢献を掲げ、地域に開かれた大学を目指しているところであり、地域社会との連携に軸足を置いた教育研究を積極的に推進することとしております。県立大学は、社会的要請の高い4つの学部で構成されるという特徴を十分に生かし、社会経済情勢の急速な変貌に伴って一層複雑多様化している地域の諸課題に対応するため、学部間の連携のもとに、従来の学問的枠組みを超えた学際的、総合的な教育研究を推進することとしております。
 また、市町村、医療福祉機関、企業等と連携しながら、地域をフィールドとした調査研究を推進するなど、地域に根差した実学、実践的教育研究活動を積極的に展開することとしております。このような大学における教育研究の成果を踏まえ、さらには大学の持つ人的、物的資源を最大限に活用し、産業界や他の大学、研究機関との人的交流や受託研究、共同研究等を通じて、県立大学における教育研究活動の成果を広く地域に還元していきたいと考えております。
 一方、県民の多様な学習ニーズにこたえるため、大学内に設置する社会人学習センターを中心に、各分野にわたる多彩な公開講座の開催やメディアセンター、運動施設の開放等により、広く学習の機会を県民に提供するなど、地域社会への貢献に積極的に対応してまいりたいと考えております。
   〔土木部長藤本保君登壇〕
〇土木部長(藤本保君) 都市部における交通渋滞の緩和策についてでありますが、盛岡市を初め都市部におきましては、市街地近郊への都市化の進展やモータリゼーションによる交通量の増加により、市街地への流入部において交通渋滞が発生しており、特にもラッシュ時に主要な交差点等でその傾向が顕在化している状況にあります。この交通渋滞の抜本的解消には、都市部の骨格となる環状線やバイパス等の幹線道路の整備が不可欠でありますが、これらの道路整備には長い時間と膨大な費用を要しますことから、長期的視野に立ち、国、県及び関係市の適正な役割分担のもと、整備に努めているところであります。
 都市部の渋滞解消につきましては、国、県及び市の各道路管理者と交通管理者である公安委員会が連携のもと、平成5年度に主要都市において交通実態を調査し、交差点での渋滞の長さが1キロメートル以上、または通過時間が10分以上の9地点を主要渋滞ポイントとして抽出し、新渋滞対策プログラムを策定し、重点的に整備を進めているところであります。このプログラムは、道路管理者による対策と交通管理者による対策からなっておりまして、9地点の渋滞の緩和を図るため、20工区において環状道路やバイパスなど、体系的な道路ネットワークの整備や交差点改良等の整備を進めてきており、平成8年度末で8工区が完了し、残る工区につきましても、鋭意、事業の推進に努めているところであります。特に、盛岡市におきましては、国道4号南大橋たもと交差点での信号サイクルの見直しや、国道46号館坂橋交差点での右折レーンの整備等により交差点での交通の流れがスムーズになるなど、効果があらわれてきているものと考えております。また、平成9年度早々には、盛岡駅と盛岡南地区の新市街地を結ぶ盛南大橋の供用が予定され、明治橋南たもと交差点の渋滞緩和に大きく貢献することが期待されております。県といたしましては、この9地点のほか、緊急を要する箇所につきましても、県単独による緊急渋滞対策街路事業により、県道盛岡滝沢線青山地区等で右折レーン整備等の交差点改良やバス停車帯の設置等を進めているところであります。
 今後とも、計画的な道路整備の推進に努めるとともに、国、関係市及び交通管理者と緊密な連携を図り、交通渋滞の解消に向け積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔教育長細屋正勝君登壇〕
〇教育長(細屋正勝君) 大学奨学金制度の創設についてでありますが、大学進学率の向上のためには、まず、学力の向上を図り進学希望者の増加、いわゆる志願率の向上を図っていくことが最も重要であると認識しておりますことから、教育振興基本計画に基づいて学校教育を充実させ、学力の向上に努めているところであります。また、大学進学率の向上には、地元や近県に大学があるということも大きな要素と考えられておりますが、県民待望の県立大学が平成10年4月に開学が予定されておりますし、さらに近県においても大学新設の予定を聞いているところであり、これらにより、本県の大学進学率も一層高まるものと期待しているところであります。
 奨学金と大学進学率との関連につきましては、大学奨学金制度を持っている他県の事例を見ましても必ずしも一致しないところもありますので、今後、公的資金による融資制度、民間の学資ローン等の整備との関係も踏まえながら、大学奨学金制度のあり方についてなお調査してまいりたいと考えております。
〇41番(藤倉正巳君) 再質問をいたします。
 誠実にしてきめ細かな御答弁、ありがとうございました。
 久々ぶりに登壇して、はつらつたる知事と相対しまして、感慨無量なるものを禁じ得ません。
 私の初当選は、千田正知事3選と重なっておりまして、顧みますれば、その千田知事がデビューしたのは昭和38年、千田知事と争った対立候補は、現知事の父君たる増田盛氏であったわけであります。当時、自由民主党でありました私どもは、増田氏のために奮闘努力したことは言うまでもありません。時に利あらず、僅差で敗れたわけでございます。当時、農林省の振興局長、50歳で農林事務次官が約束されておりました増田盛氏においては、郷土を愛し、その一心で知事選に出たわけでございます。農村部で得票を伸ばしながらも僅差でございました。投票率は82%という、すばらしい結果になった次第でございます。当選した千田知事は、社会党系や一部共産党まで同調した当時の千田知事でありますので、官僚経験がなく野武士然たる風格でありましたことから、当時の保守系議員からかなり手厳しく追及され、与党少数のため大変苦労したようであります。これは現在の県政とは同一には論じられませんが、対政府との関係となりますと、知事におかれましてもそれなりの御所感があろうかと思います。
 千田県政から中村知事。中村知事は庁内出身でございますから、職員一同目配りをしながら、すべての職員を県政執行に奮い立たせたと感じております。
 さて、増田知事は、千田、中村、工藤、三先哲に絶対負けないものをお持ちです。それは健康に裏づけられた若々しさと進取の気性であります。知事におかれましては、一たんこれと決したる上は、断固堂々、県民とともに前進されるよう、心を込めて申し上げる次第でございます。
 次に、県庁移転問題でございますが、今から10年ほど前のことでございましたから、一関市長が、県に用があって南インターまで40分で来た。ところが、インターをおりてからまた県庁まで40分かかったという過去の例もたくさんあります。
 そこで、先ほど交通問題で申し上げましたが、せっかく90分構想が完成されても、市内に入るのにまた30分、40分たったのでは意味がないのではないか。
 一方、庁舎もまだ使える、33年しかたっていないと、こう申され、全くそのとおりでございますが、計画を立てて実行までは10年やそこらかかる。ですから、私はすぐ移せと言っているんじゃない。検討委員会をつくって検討してはどうかと、こう申し上げております。
 次に、山の公益性の問題でございます。
 世界的に、環境問題その他がいろいろ論議されております。そこで、今は木材が安いんだと。しかしながら、公益性が大変すばらしく高いのである。また、古いことになって申しわけございませんが、昭和48年の3月議会に、私は、当時、光本農地林務部長に、岩手県は山林王国です。酸素の供給、水保全、その他公益性が金に換算して幾らぐらいあるかと48年に質問したときに、早速答えて6、400億円だと、こう答えました。当時の当初予算が1、300億と記憶しております。
 そこで、今の計算はどうなりますかということが1つ。
 山が安くなった。植林、木が1キロ太るために吸収する炭酸ガスは、1・6キロ吸収して1・2キロの酸素を出していると。すばらしい同化作用によっての公益性が多いのであると。
 一方、岩手県では、間伐が必要な山林は21万ヘクタールある。今々すぐ間伐しなければならないというのは7万ヘクタール余。なかなか手がつかない。私が今申し上げたとおり、同化作用によって1キロ木が太るためにという話をしました。間伐できないために、全く伸びがなくなってとまっている、これは大変なことだ。そこで間伐対策をやるべきですが、今の制度だけではなかなかだめだ。各家庭で、わずか家庭能力で間伐しても、それなりの助成ができるような形になればいいものだと。
 それから、間伐材の使用がなかなかままならない。そこで私が提言したのは、山の奥なら木炭をつくったらどうだと。今のいろんな形の窯ができるだろう。木炭をつくってその木炭の粉が--今、同僚県議も家を建築するのに床下に木炭を敷く。ゴルフ場に木炭の粉をまくと殺菌になる。畑もよし。それから考えたいのは、海岸の漁民の方々は、山は恋人だと漁業の方々は言っている。そこで、栽培漁業にも間伐丸太を使ってほしい。みんなで頑張らなければならないと、このように考えます。
 最近は、国有林赤字のために町村が買ったんじゃないか、制度化したと、こう言います。しかしながら、昭和20年代は、各町村が営林局にお願いをして国の山を払い下げて、それで木を売りそして地方の自治体が学校をつくったり、予算、いろいろ面倒を見てもらった。時変わり星変われば、現在のようでございます。
 この間、大志田の県有林に行ってまいりました。昨年の夏。すばらしい複層林が見えましたが、この大志田県有林も今赤字だが、昔は昭和40年に県庁舎を建てるとき大変貢献したと、こう言われておりました。ひとつ、山林国である岩手県、国有林を除いて76万9、000ヘクタールの山について、十分検討してほしいと思います。
 以上。
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 多年にわたりまして、議会とともに歩んでこられました藤倉議員の御見識を拝聴させていただいた次第でございます。
 今日のこの岩手県、着実に発展してまいりましたのは、県民の皆様方のたゆまぬ御努力、そして県議会議員各位の皆様方の県政に対しましての御支援、御協力、そしてまた、先ほどお話がございました歴代知事の皆さん方の積極果敢な県政の執行と、こういったことにあるものと、このように考えるところでございます。
 私は私といたしまして、この大いなる可能性を秘めております本県の県土づくりのために全力を挙げていきたいと、そして皆様方の御指導を賜りたいと、このように存ずるところでございます。
 それから、県庁舎の問題でございますが、議員の問題のとらえ方、十分承知をいたしているところでございまして、先ほど御答弁を申し上げましたとおり、この点につきまして私どもも長期的な観点から検討していきたいと、こういうふうに考えております。
 以上でございます。
   〔林業水産部長中村陽兒君登壇〕
〇林業水産部長(中村陽兒君) 森林の機能などについてのお尋ねでございますが、まず、森林の公益的機能の評価についてでありますけれども、これを明確に計量化することは難しい面もあります。本県では、昭和47年に国が試算しました手法と同じ手法をとりまして試算したところ、年間約6、400億円と、先ほど議員御指摘のとおりでございます。その後、国におきましては、平成3年時点に換算して全国で年間約39兆2、000億円と評価しておりますが、これを単純に本県に当てはめてみますと、年間約1兆9、000億円程度の公益的機能が発揮されているというふうに推定されます。
 次に、間伐の促進対策でございますが、本県の間伐につきましてはおくれている状況にあります。このため、県といたしましては、従来の助成制度に加えまして、9年度から始まります新しい国庫補助事業として機能保全緊急間伐実施事業というものが始まるわけでございますが、これを積極的に導入いたしますとともに、県単独事業といたしましても、水源涵養や山地災害防止などの機能の高い森林につきまして、今般、間伐総合特別促進対策事業を新たに創設してまいりたいというふうに考えているところでございます。
 また、間伐材の木炭利用を大いに進めていくべきではないかということでございますが、県内の未利用間伐材を有効に活用するために、これまでにも低コストかつ効率的に生産できる簡易炭火炉や粉炭製造機の開発を行ってきたところでございます。また、それを活用したアカマツの間伐材を木炭化する実証事業もやってきたところでございます。今後とも、低コストで効率的に間伐材を炭化できる生産方法の改善とか、その需要の開拓について真剣に研究してまいりたいと考えております。
 最後に、県産材の利用促進についてでございますが、これまで学校等の木造化や内装材への利用促進を初め、農業、土木用資材等への活用など、庁内の関係部局等の協力を得ながら木材の利用促進に取り組んできたところでございます。今後とも、公共施設等への県産材への利用促進に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
〇議長(堀口治五右衛門君) 次に、藤原泰次郎君。
   〔13番藤原泰次郎君登壇〕(拍手)

前へ 次へ