平成9年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇39番(那須川健一君) 新進・公明の那須川健一でございます。
 初めに、去る1月9日御逝去されました故飯澤忠雄議員に対しまして、謹んで哀悼の意を捧げ、心より御冥福をお祈り申し上げる次第でございます。
 私は、会派を代表いたしまして、知事の県政運営の基本方針並びに当面する課題に対しましてお伺いを申し上げるものでございますが、知事の力強い御答弁を期待するものでございます。
 さて、知事におかれましては、平成7年4月に就任して以来、間もなく2年を経過せんとしております。この間、県民に開かれた、わかりやすい県政を基本姿勢としながら、すべての市町村で県政懇談会を開催し、また、第三次岩手県総合発展計画後期実施計画を策定し、その着実な推進を図ってきたところであり、知事の県政に対する情熱と行動力、そして的確な判断力に、私は深く敬意を表する次第であります。間もなく、任期の後半を迎えるものでありますが、今後、地方振興局機能の強化を主眼とした県機構の再編整備の実施、また、岩手の21世紀を展望した新しい総合計画の策定に着手することなどを初め、山積する諸課題の解決に遺憾なくリーダーシップを発揮し、鋭意邁進されることを期待申し上げ、以下順次質問をさせていただきます。
 まず、財政問題についてお伺いいたします。
 円高、円安と為替市場が大幅に揺れ動き、株式市場も低迷を続ける中で、我が国の経済は金融不安を抱え、景気回復への道のりも厳しい状況となっております。
 このような状況のもとで、我が国財政は、バブル崩壊後の景気回復策への予算の支出に追われたこともあって、平成8年度時点では累積した公的債務残高が、国、地方をあわせて約442兆円に達し、主要先進国中最悪の水準に落ち込む見通しとなり、格段に悪化した状況に置かれております。
 このため、国においては、少子・高齢化の進展による財政需要の増大が経済全体の安定性や活力を損なわない、すなわち21世紀の早い時期に我が国の基盤となる健全な財政構造を構築するため、平成9年度を財政構造改革元年ととらえ、具体的には過大となっている公債残高を抑制するため、財政赤字の対国内総生産対比3%以下の姿を達成すべく、大幅な行財政改革に着手しているところであります。
 一方、本県の平成9年度当初予算を見ると、前年度当初対比で8・6%増と大幅な伸びを示しておりますが、このうち県立大学の整備など、投資的経費は11・9%の伸びを確保し、さらには、老人福祉施設の増設、24時間対応ホームヘルプサービス事業の県単補助制度の創設など、教育、福祉の向上に大きく配慮した予算であり、まさに21世紀を間近に控え、輝きのある岩手を創造していこうとする知事の積極的な姿勢がうかがわれるのであります。
 しかしながら、その財政構造を見ると、前年度に引き続き地方債依存度が地方財政計画を上回り15%を超えるとともに、地方債残高は、平成9年度末で過去最高の9、000億円を超える見通しとなっております。
 私は、このような状況を見るにつけ、果たしてこのような財政運営を続けるならば、将来の公債費等義務的経費の増高により、本県の財政は弾力性を失い、来るべき21世紀の高齢化社会において、活力を失う恐れはないかと危惧するものであります。
 本県においては、県税など自主財源に乏しく、また、社会資本整備のために地方債の導入はやむを得ない面があるにせよ、国と同様に地方債の発行等に留意し、財政運営を行っていく必要があると思います。知事はこのような、いわゆる借金に依存し、さらには、財政調整基金や公共施設等整備基金等の積立金を過去最高の556億円余も取り崩さざるを得ないような現在の財政状況をどのように認識しておられるのでしょうか。
 また、将来の財政運営に支障を来たすようなことはないのか、このため、今後どのような方向で財政運営を行っていくおつもりなのか、その基本的な考え方をお尋ねいたします。
 次に、新しい総合計画の策定についてお伺いいたします。
 我が国は、人々の価値観が多様化し、生活様式も大きく変化している中で、高齢化が急速に進行しつつあり、また、高度情報化が目覚ましく進展しております。さらに、国際化時代を迎え、特に、経済の面では国境を越えた大競争の時代に直面しているのであります。このような時代の大きな転換期にあって、国においては21世紀の文明にふさわしい人と国土のかかわりを描く国土政策のビジョンとして、新しい全国総合開発計画を検討中であり、ことしの夏前には策定されるものと聞いております。
 昨年12月にまとめられたこの計画の中間報告においては、東京を頂点とした、いわゆる一極集中の国土構造を多軸型の国土構造に転換し、国土の均衡ある発展を政策の基本方向とし、さらに行政主体のみならず、住民、そしてボランティア団体、教育機関、民間企業など、多様な主体の参加と地域連携を新しい計画の推進方式とするとの考え方を打ち出しているのであります。こうした中で知事は、今議会冒頭の知事演述において、経済社会の情勢を的確に見据え、21世紀初頭までを展望した岩手の新しい総合計画の策定に着手する旨表明されております。県では、平成7年度末に、平成8年度から5カ年を計画期間とする第三次岩手県総合発展計画後期実施計画を策定しており、私は、その着実な推進を念願しているものでありますが、同時に、時代の転換期にある今、新たな県総合計画の策定に取りかかることは、極めて時宜にかなったものと考えております。
 そこで知事にお伺いしますが、新たな総合計画の策定に着手する背景及び策定に取り組む決意についてお聞かせ願います。また、計画策定に向けてのスケジュールについてもお伺いいたします。
 さらに、知事は、計画の策定や推進に当たっては、県民とともに考え、つくり、実践していくこと、すなわち県民提案型、県民参加型の県政を推進すると述べておりますが、具体的にどのような形でこうした県政を推進していくのか、あわせてお伺いします。
 次に、北東北3県の連携・交流の促進についてお伺いします。
 国においては、先ほど申し上げた新しい全国総合開発計画の中間報告の中で、複数の地域が連携・交流しながら地域全体の発展を目指すという考え方、すなわち地域連携軸の展開を望ましい国土構造の基礎を築くための戦略的重要施策の1つに位置づけているところであります。
 本県においては、既に、第三次岩手県総合発展計画後期実施計画において、多様な地域連携・交流の促進を計画策定の際の視点の1つとして施策を展開しており、また、さきの知事の演述においても、今後の県政運営に当たっての重点施策の第一に連携・交流の促進を掲げており、知事のこの課題に対する並々ならぬ意欲を感じるものであります。県は、県都盛岡市と県内各都市間との90分交通を目指す新交流ネットワーク道路の整備を引き続き推進するなど、県内交通網の整備に積極的に取り組んでいることは申し上げるまでもないことでありますが、私は、東北新幹線の青森市までの延伸の方向性が示され、また、秋田新幹線が来月22日に開通することになったことから、北東北3県の地域連携の基盤がいよいよ整いつつあるものと考えております。
 この北東北3県の連携・交流は、新しい県の施策分野であり、北東北3県のように歴史的、文化的につながりの深い地域にあっては、全国に発信できるような連携・交流のモデル事業ができる可能性が高いと考えるのであります。私は、このため、観光や物流などソフトの面での取り組み、それらを支える交通・情報通信基盤の整備などのハード面での取り組みの両面から、今後、早急に検討していく必要があると思いますが、今後の北東北3県の連携・交流の促進について知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、高齢社会における地域福祉の推進についてお伺いします。
 近年、本県におきましても急速に高齢化が進行しており、これに伴い、これまで特別養護老人ホームの整備やホームヘルパーの増員等の介護基盤の整備が積極的に進められるとともに、介護を社会全体で支える仕組みをつくる公的介護保険制度の導入に向けた検討も進められております。一方、高齢化の進行と同時に、核家族化や家族の扶養意識の変化、さらには、地域に住む人々の連帯意識の希薄化も進行してきており、こうした地域社会の変化による介護サービスを必要とする方々に加え、高齢者のみの世帯やひとり暮らしの高齢者などの生活上のさまざまな支援を必要とする人々もまた急速に増加しております。私は、こうした中にあって、高齢になっても、また介護が必要になっても、住み慣れた家と地域で生活することが大方の人々の願いであると考えます。
 このような願いにこたえるためには、デイサービスやホームヘルパーの派遣などの在宅福祉サービスを中心とした公的な介護基盤の整備拡充はもちろんですが、地域に住む人々が地域の高齢者の介護や生活支援を身近なこととして考え、ともに力をあわせて相互に助け合う、いわゆる福祉コミュニティをつくっていくことも極めて重要となってきていると思います。私は、こうした福祉コミュニティをつくるためには、活動の主体となる民間組織の育成や、参加機会などの各種情報の提供、さらには、それぞれの地域における活動ネットワークのつくり方等、各種の方策をきめ細かく指導することが必要であると考えるものであります。
 そこでお伺いしますが、高齢社会に対応した福祉コミュニティづくりのため、県として今後どのような地域福祉施策を推進しようと考えておられるのか、知事の御所見をお尋ねします。
 次に、環境保全施策についてお伺いします。
 本県の雄大な景観を有する八幡平や三陸海岸などの豊かな自然は、潤いと安らぎのある県民の生活や農林漁業を初めとした生産活動を長年支えてきたことは御承知のとおりでございます。しかしながら、今日の環境問題を考えますと、所得水準の向上や余暇時間の増加、産業活動の拡大などにより開発が進み、近年、身近な山林や水辺等の自然が少なくなっている状況にあります。
 また、家庭雑排水による水質汚濁や使い捨て等による廃棄物の増大による生活環境への悪影響が懸念されるなど、新たな環境問題が顕在化してきているところであります。さらには、自動車や冷暖房のエネルギー消費の増大に伴い、地球温暖化等の地球規模の環境問題が国際的に取り上げられているところでもあります。
 私は、第三次岩手県総合発展計画後期計画にあるように、人と自然との共生の確保や環境保全と開発との調和を図り、環境に優しい地域社会を構築するとともに、将来とも良好な環境を次の世代へ引き継いでいく責務が我々にあると考えるものであります。そのためには、本県の良好な環境に安んじることなく、新たな環境問題に積極的に対処するとともに、県民が一丸となって環境を守る機運を盛り上げることに努めるべきであると思います。
 知事は、さきの演述の中におきまして、環境保全に関する基本施策の方向などを検討すると述べられましたが、21世紀を見据えた環境施策にどのように取り組むお考えなのか、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、商工業振興の基本方針についてお伺いします。
 足元の景気は緩やかな回復基調にあるとは言われておりますが、生産機能の海外移転など、我が国産業の空洞化への懸念は深刻化しているところであり、これに対応するため企業の自由な事業展開を促進する規制緩和など、急速に進められようとしております。
 このような中で、本県経済を見ますと、最近、誘致企業の生産工場の閉鎖の動きが伝えられるほか、規制緩和のもとでの大型店の出店増加を背景とした商店街の停滞についても指摘されているところであります。
 私は、本県の商工業がこのような厳しい状況に直面しつつも、その活力を遺憾なく発揮し、地域経済の発展に貢献していくことを大いに期待しているものであります。そのためには、県として、商工業が成長できる基盤づくりに全力を挙げる必要があると考えるのであります。
 そこで、知事にお伺いしますが、今後の本県商工業振興の基本方針と、9年度の重点的な施策についてお尋ねをいたすものでございます。
 最後に、観光振興の基本方向についてお伺いします。
 総理府の発表によれば、国内観光旅行者数は、平成4年の1億9、000万人に対し、平成7年は1億8、000万人と減少しているものでありますが、海外観光旅行者数は、平成4年の900万人に対し、平成7年は1、200万人と約30%の伸びを示しております。すなわち、国内観光は海外観光との競合の中で、いわゆる空洞化の危機を迎えているのではないかという懸念が指摘されるのであります。
 このような背景のもとで、本県の観光客の動向を見た場合、県外観光客の入り込み数は、平成4年の1、950万人回に対し、平成7年は1、840万人回と、近年の観光客数の停滞傾向は明らかであります。
 私は、観光産業は、宿泊業や飲食業などのサービス産業のみならず、地場産業などの幅広い分野を包含した複合的産業であり、地域経済の発展に大きく貢献していくものと考えております。また、本県の観光資源は、豊かな自然や歴史的遺産などの国内有数のものであることから、観光宣伝の強化など、積極的な方策を講じることによって観光客を増加させるとともに、観光産業の発展基盤をつくることができるものと考えております。
 県としては、平成9年度から従来の商工労働部を商工労働観光部として部の名称を改め、観光振興に力を入れていくこととしておりますが、今後の観光振興施策の基本方向はいかがでありましょうか、知事の御所見をお伺いいたします。
 以上をもって私の質問を終わります。御清聴大変ありがとうございます。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 那須川健一議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、本県の財政状況についてお尋ねがございましたが、国全体で見ますと、その財政は多額の公債残高を抱えておりまして、財政構造の改革が急務とされております。地方財政全体につきましても、財政の健全化と、そして、行財政改革の推進が最重要課題とされておりますなど、国、地方を通じて、まことに厳しい財政状況となっております。
 また、本県の財政につきましても、歳入面では、国庫支出金と交付税の伸びを見込めないことに加えまして、自主財源の大宗をなす県税についても、現下の経済動向などから多くを期待できないと、こういう状況にございます。一方、歳出につきましては、今後とも公債費の増高が見込まれる中にありまして、県立大学の整備、東北新幹線盛岡以北の整備促進を初めといたします3県総の後期実施計画に掲げております施策を計画的に推進していく必要がございます。また、高度情報化の推進や地域の連携・交流の促進、国際的視野に立ちました地域経済の振興など、来るべき新たな時代の潮流を見据えた施策についても、的確に実施することが求められているなど、取り組むべき施策が数多く控えておりまして、本県の財政は厳しい状況にあると、このように認識をいたしております。
 今後の財政運営についてでございますけれども、国、地方を通じて、このように厳しい状況がこれからも一層進んでいくと、こういうふうに見込まれておりまして、したがいまして、本県の今後の財政運営に当たりましては、経常収支比率や公債費比率などの動向に十分留意しながら、財政の健全性の確保というものを基本といたしまして、公債費の増高などによりまして財政の硬直化を招き、次の時代を担う子供たちに過度な負担を引き継ぐことが決してないよう配慮をしながら、21世紀の輝きのある岩手を創造していくことが肝要であると、このように考えております。このために、特に県債の導入に当たりましては、健全財政の維持と世代間の負担の公平の確保、さらには現下の金利の情勢にも配慮しながら、その有効な活用を図りますとともに、この元利償還金に交付税措置のある優良な県債の導入に努めていく一方で、基金につきましても--各種基金ございますが--常に、将来の大規模プロジェクトなどの財政需要を見きわめながら、適正な運用を図っていく必要があると、このように考えております。
 また、地方分権の時代を展望した効率的、機動的な行財政運営の確保に向けまして、行財政改革には一層積極的に取り組むとともに、それぞれの施策の選択に当たりましては、行政の責任分野というものを明確にしながら、緊急度や優先度の高い事業の重点的かつ効率的な推進を図るとともに、常にこの事業の実施の効果を検証するなど、限られた財源の効果的な活用に努めてまいりたいと考えております。
 次に、新しい総合計画の策定についてでございますが、我が国が少子・高齢化、そして、高度情報化の急激な進展、国境を越えた地域間競争の一層の激化などの課題に対して、これまでの経済構造や社会構造、それを支えております制度や仕組みでは解決のできない事態に直面をし、国民的な関心のもとに行財政改革などが進められまして、また、地方分権が国、地方を通ずる現下の極めて重要な課題となるなど、時代は大きな転換期にございます。
 このような歴史的な転換期にありまして、21世紀において躍動感あふれ、心豊かな地域社会、すなわち私は--これはドリームランド岩手というふうに呼んでおりますが--このドリームランド岩手を築いていくためには、今まさにその歩むべき方向をしっかりと見定めまして、明確な戦略を持って船出すべき時期であると考えまして、21世紀初頭、すなわち2010年ごろまでを展望いたしました新たな総合計画の策定に取りかかることとしたものでございます。このため、ことしの夏ごろに予定されております新しい全国総合開発計画の策定動向も見きわめながら、国の総合計画審議会へ諮問を行いたいと考えておりますけれども、計画策定のプロセスを従来以上に重視をするという観点で、おおむね従来より少し長く2カ年程度をかけて計画を策定してまいりたいと、このように考えております。
 また、これからの計画づくりやその推進に当たりましては、県民とともに考え、つくり、実践していくことが何よりも大切であるとの観点に立ちまして、新しいこの総合計画の策定に当たりましても、各地域においてさまざまな県民の方々に参加いただきまして、地域デザイン会議を開催いたしますとともに、新聞などのマスメディアやインターネットを活用いたしまして、県民の皆様方からビジョンや夢の募集を行うほかに、県民の100人に1人、総数で1万5、000人程度というふうに考えておりますが、こうした方々を対象といたしまして、幅広くきめ細かなアンケート調査を実施するなど、従来にない手法を積極的に取り入れまして、いわゆる県民提案型、県民参加型による計画づくりを推進したいと考えております。
 次に、北東北3県の連携・交流の促進についてのお尋ねでございますけれども、人口減少、高齢化や国境を越えた地域間競争の中で、質の高い自立的な地域社会を形成していくためには、私は、従来の行政単位の枠を超えまして、県内外においてさまざまな分野、レベルでの連携・交流を促進して、各地域がそれぞれの特性に応じた役割を担い、そして、総体として地域の発展を図っていくということが重要であるというふうに認識しております。
 この北東北は、古くは繩文の昔からさまざまな交流が行われてきておりまして、特色ある文化圏が形成されてきた地域でございますけれども、こうした歴史的、文化的背景や地理的条件を踏まえまして21世紀を展望するとき、まず、北東北3県の地域連携を促進することが私は重要であるというふうに考えておりまして、このような観点から、青森、秋田両県と一体となりまして、秋田新幹線、東北新幹線の盛岡以北、さらには東北横断自動車道の釜石秋田線など、こうした両隣の2県との連携・交流を支える基盤の整備を進めてまいりましたし、広域観光キャンペーンや高校生ボランティア体験交流などの事業を実施しているところでございます。
 また、国が平成8年度から秋田・岩手中南部地域や十和田湖を囲みます都市群を対象地域といたしまして実施をいたしております地域連携調査につきましても、その促進を通じて国などの事業の優先導入を図ることといたしております。
 今後におきましても、北東北において、人、物、情報の広域的な交流が拡大をいたしまして、行政単位の枠を超えた物産展やイベントの共同開催など、市町村や民間による主体的な連携がより一層活発に展開されるよう、平成9年度において3県共同の地域連携フォーラムを開催したり、県境を越えた広域的な連携・交流のあり方についての調査などを実施するほか、八戸・久慈自動車道の建設や国道46号の高規格化など、連携・交流を支える交通基盤や情報通信基盤の整備を促進するなど、こうした連携・交流のための諸条件の整備に努めまして、北東北が全国のこうした地域連携のモデルとなるような取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 次に、高齢化社会における地域福祉の推進についてでございますけれども、本県におきましては、全国を上回って急速に高齢化が進行しておりまして、これに伴い福祉ニーズは一層増大し、かつ多様化をしてきております。これらの福祉ニーズに的確に対応して、県民の福祉の一層の向上を期するためには、公的な福祉サービスの拡充や地域住民、ボランティアの方々の参加による福祉活動を促進して、基本的な生活の場であります家庭やこの地域社会において、公私の福祉サービスを総合的に提供するとともに、地域の人々の理解と積極的な参加によりまして、地域の福祉課題をともに考え、ともに支え合い、そしてともに生活を営む、いわゆる福祉コミュニティの形成を促進することが重要であると、このように考えております。
 このため、県におきまして、在宅福祉サービスを中心とした公的な福祉施策の充実を図りながら、ボランティア活動の基盤整備のための市町村ボランティアセンター活動事業、そして地域住民の参加による福祉活動と、交流の促進を目的としたふれあいのまちづくり事業を拡充いたしますとともに、地域におけるボランティア活動の展開方法を示したハンドブックを作成し、県内全域でリーダー研修会を開催する地域ボランティア活動推進事業を創設いたしましたし、さらには、地域福祉活動の拠点となる地域福祉センターの整備を進めるなど、こうした福祉意識の高揚と地域の人々がボランティア活動に参加するための諸条件の整備充実に努めてきたところであります。
 平成9年度におきましては、これまでの施策の成果を踏まえまして、新たに福祉コミュニテイ形成促進事業というものを創設いたしまして、市町村の社会福祉協議会へのボランティアコーディネーターの配置とともに、小地域ごとにそこに住む人々がグループを編成して、要援護者の見守りや生活支援活動を行う小地域ネットワークの形成を促進いたしまして、さらには、災害時を想定した日常的な防災活動を行う福祉救援ボランティアの活動を支援するなど、今申し上げましたこうした福祉コミュニテイの形成を一層推進いたしまして、県民が安心して暮らせる参加と思いやりの福祉社会の実現に努めてまいりたいと考えております。
 次に、21世紀を見据えた環境施策の取り組みについてでございますが、私たちは緑豊かな大地から多くの恵みを受けておりまして、本県特有の歴史や風土に根ざした地域文化を築き、自然との豊かな交流を保ちつつ、安らぎと潤いに満ちた生活を営んできたところでございます。このように、極めてすぐれた本県の環境を県民共有の財産として将来の世代に継承するために、人と自然との共生を図り、貴重な自然を保全することはもちろんのこと、地球規模での地球環境にも配慮した快適な環境を創造することが私たちの責務であると、このように認識をしております。このため、まず岩手の目指す環境保全についてその基本理念を明らかにして、県民一人一人がこれを共有する必要があると考えております。また、今日の環境をめぐる状況は、地球環境、自然環境、生活環境いずれにおいても、複雑かつ多様化をしておりますし、また相互に関連もしております。
 これらの環境問題に的確に対応するために、地球温暖化防止のためのエネルギーの有効利用対策、オゾン層破壊防止のためのフロンの排出抑制、そして森林や水辺などにおきます多様な自然環境の保全、生物の多様性の確保、開発との調整、生活雑排水による河川の水質汚濁防止、廃棄物の減量化など、こうしたものの基本施策の方向を定めることが必要と、このように考えております。さらに、行政においては、このような方向に沿いまして、環境保全の施策を総合的かつ計画的に推進することはもとより、事業者も環境に配慮した事業活動を行い、県民の皆様方は日常生活において環境への負荷の低減に自主的に取り組むことなど、それぞれの主体が環境保全に果たす役割を明確化するとともに、また、それぞれがしっかりとしたパートナーシップを築き、これらの責務を果たすことができるようにしていきたいと、このように考えております。
 また、これまで申し上げてきたことを確実に推進していくためには、環境に対するこうした基本理念やそれぞれの主体の役割と責務、基本施策の方向などを内容とした環境基本条例を制定するなど、良好な環境に恵まれた本県にふさわしい、全国に誇り得る環境の保全と創造を目指していく考えであります。
 次に、今後の本県商工業振興の基本方針と、平成9年度の重点的な施策についてお尋ねがございましたが、第五次の岩手県商工業振興計画--これは、平成8年度から12年度までの5カ年間の計画でございますが--ここにおきましては、本県工業の高度化を図るために、本県の資源を活用した独創的、先端的な研究開発の推進、研究開発力や基盤技術を有する中堅中小企業群の育成、そしてベンチャー企業などの新規創業の促進など、内発型の工業振興を展開することとしております。
 また、商業の振興を図るために、消費者ニーズの多様化や郊外への大型店の増加などの環境変化による中心商店街の停滞に対応いたしまして、意欲ある商業者の積極的な事業展開を支援するとともに、商店街の情報化、共同店舗化を進めまして、その活性化を図ることとしております。
 こうした基本方針に基づきまして、これまでいろいろ施策の推進に努めてきたところですが、平成9年度におきましては、先端科学技術の研究施設の整備などによりまして、産学官の研究開発の促進を初め、新規創業や交流支援のための新産業創造拠点の整備など、いわゆるベンチャー企業の育成ですとか、マルチメディア創造センターの整備による情報関連産業の振興などに努めていきたいと考えております。
 また、県単独の事業による長期・低利の融資制度、最長15年のものなどの創設や若手経営者の育成による意欲的な中小小売業の育成、さらには、空き店舗対策に取り組むモデル商店街の育成などを通じまして、商店街の活性化に重点的に取り組んでいきたいと考えております。
 次に、観光振興施策の基本的な方向についてでございますけれども、この観光は幅広い分野に関連をする産業でありますとともに、交流人口の増大と地域の活性化を促す産業でありまして、本県振興の重要な柱に位置づけ、県民総参加による観光の振興を図っていく必要があると、このように考えております。したがいまして、本県の豊かな自然、四季折々の風土、地域固有の歴史や文化、祭りなどの観光資源を活用しますとともに、すぐれた景観の形成、多様な観光施設の整備、さらには、県民の方々が温かく観光客を迎えるもてなしの心の醸成に努めながら、魅力ある観光地づくりを推進していきたいと、このように考えております。
 また、観光宣伝におきましては、多彩な風土や新鮮な農林水産物など、岩手のこの魅力を丸ごと売り込むために、首都圏における銀河系いわてブランドフェアを開催しましたり、航空路の就航先などにおきますキャンペーンの実施やインターネットの活用、あるいは北東北3県と連携した宣伝活動を展開してまいりたいと考えております。特にも、平成9年度は、新たに県内をそれぞれのテーマ性によりまして広域に区分をして、地方振興局や市町村、観光関係者との主体的な取り組みによります新しい観光素材の発掘、提案型商品の開発や既存観光地の活性化を促しますとともに、本県ならではの観光体験を盛り込んだきめ細かな旅行情報を全国に向けて発信をしてまいりたいと、このように考えております。また、自然との共生にも配慮しながら、本県の特徴を生かしたニューレジャーの導入可能性について調査をするなど、この新鮮味のある観光の振興に積極的に取り組んでいきたいと、このように考えております。
 以上でございます。
〇議長(堀口治五右衛門君) 次に、菅原温士君。
   〔34番菅原温士君登壇〕(拍手)

前へ 次へ