平成9年9月定例会 第11回岩手県議会定例会会議録

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〇11番(千葉伝君) 県民クラブの千葉伝でございます。
 質問の前に、故藤倉正巳議員に対しまして、改めて哀悼の意をささげ、心より御冥福をお祈り申し上げます。
 それでは、通告に従いまして順次お伺いしてまいります。
 まず、東北新幹線盛岡以北問題についてお伺いいたします。
 第1点は、東北新幹線盛岡-八戸間の整備促進についてであります。
 御案内のとおり盛岡-八戸間は、平成3年9月の沼宮内-八戸間の着工に続き、平成7年5月には盛岡-沼宮内間が本格着工されるに至っております。現在はトンネル区間を中心に建設工事が進められておりますが、着工時に完成目標とされた平成13年までにはあと4年しか残されていないことを考えますと、計画どおりの完成は危ぶまれる状況となっているのではないでしょうか。加えて、特に来年度以降は国の財政構造改革に伴う公共事業費の削減による影響も当然予想され、さらには、3線5区間に続く新規着工区間の取り扱いについて、今まさに政府・与党間で行われている検討の結果、新たな区間の着工が決定すれば、新たに着工される区間も含む多くの線区で総事業費を奪い合う状況になることが予想されるなど、盛岡-八戸間の建設を取り巻く環境は一層厳しさを増すことになると思われます。
 そこでお伺いいたしますが、県ではこのような状況下にあって、県民の悲願であります早期完成を実現するため、今後どのように取り組むお考えなのかお尋ねいたします。
 第2点は並行在来線対策についてでありますが、県では、開業時にJRから経営分離されることとなっている東北本線盛岡以北の将来見通しや経営のあり方等について、現在鋭意検討を進められておることと思います。この問題の検討に当たりましては、鉄道貨物がこのまま引き続き在来線上を走行するのか、あるいは新幹線の軌道上を走行するのかといった国政上の課題も抱えており、単に関係県のみの検討で結論が出るものではないことは承知しております。
 私は、平成7年6月定例会において、この並行在来線問題を取り上げ、知事に対しこの問題に対する決意と取り組み方向についてお尋ねいたしました。そのときから既に2年経過したわけでありますが、私は、在来線が沿線地域住民の重要な生活路線としての役割を果たしている現状に鑑み、早期に経営分離後の将来見通しを示す必要があると思うのであります。ここで改めて、この問題に対する現在の取り組み状況と今後の対応について知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、道路整備についてお伺いいたします。
 県北沿岸部と内陸を結ぶ国道281号の整備状況と今後の見通しについてお伺いしたいと思います。この問題につきましては、これまでも本議会においてお伺いいたしておりますが、県土の均衡ある発展を図る上からも重要な問題でありますので、改めてお尋ねいたします。
 県では、これまで県土の均衡ある発展を図ることを基本として岩手県総合発展計画を策定し、さまざまな施策を講じておりますが、県北地方や沿岸地方を見るとき、いまだ内陸部との格差是正が進んでいないように思われます。県北沿岸地方の振興を図るためには、基幹産業である農林水産業の基盤整備はもとより、地域の特性に合わせた新しい産業を創造するとともに、各地域の交流連携の強化を図ることが重要であると考えるものであります。このためには、何といいましても県都盛岡から久慈市を結び国道4号と一体となったネットワークを形成する国道281号の機能強化が緊急の課題であると認識しております。本路線は内陸部と沿岸部を直結するものであり、その整備は輸送コストの低減や産業経済の効率的な交流を促進し、地域の活性化をより一層推進する基盤を生み出すものと考えております。
 県では、従来から交流ネットワーク道路整備事業等において、久慈ルートとして交通隘路区間の解消等に努めてこられたところでありますが、さらに、平成8年度に創設した新交流ネットワーク道路整備事業においても、引き続きその整備に取り組まれ、これまでの整備により危険箇所の解消と時間距離の短縮が図られるなど、その成果は確実に上がってきていると認識しており、その取り組みに対し敬意を表する次第であります。しかしながら、本路線の状況を見るとき、冬期の交通の難所である大坊峠や平庭峠、そして交通の隘路となっている葛巻町内や、慢性的な交通渋滞を引き起こしている久慈市内の整備等、まだまだ大きな課題が残されていると考えるものであります。このような中、現在国では財政改革が論議され、公共事業、特にも地方の道路事業を取り巻く環境は非常に厳しいものがあると聞いているところであります。
 そこでお伺いいたしますが、国道281号の現在の整備状況はどうなっているのでしょうか。また、今後の見通しについてもお示し願います。
 次に、河川整備についてお伺いいたします。
 ことしはカスリン・アイオン台風から50年の節目の年に当たり、改めて、祖父千葉一からたびたび聞かされた、戦後間もない荒廃した県土にもたらされた悲惨な洪水被害について思い起こされます。このような災害を二度と繰り返さないためにも、一層の治水対策の促進が望まれるところであります。
 さて、北上川の四十四田ダム上流部は、松川や丹藤川を支流に抱え、豊かな自然環境に恵まれた河川であります。しかしながら、その大部分は未改修の状態であり、豪雨等の出水時にはその凶暴性をあらわにし、たびたび河岸決壊や浸水などを引き起こし、農作物等に大きな被害をもたらしており、住民から早急な治水対策が強く望まれているところであります。
 その一方で、河川はまた自然を構成する重要な要素であり、自然環境にも配慮した整備が求められております。玉山村渋民地区には、望郷の詩人石川啄木の有名な、やはらかに 柳あおめる 北上の 岸辺目に見ゆ 泣けとごとくにの歌碑があり、ここから眺める雄大な岩手山と北上川の姿は、本県の代表的な景観として多くの人々から愛されており、玉山村でも観光の拠点としてその周辺の整備に努めているところであります。
 県では、このような北上川と松川の合流点付近の治水対策にどのように取り組むお考えなのか、さらには、啄木の歌碑周辺の自然豊かな水辺環境をどのように生かして河川整備を進めていこうとしておられるのか、お伺いいたします。
 次に、県北地方の観光振興についてお伺いいたします。
 平成8年における本県への観光客の入り込み数は4、158万人・回となり、過去最高の入り込みを記録しております。これは、昨年が宮沢賢治生誕100年、石川啄木生誕110年に当たることから、これらを記念して官民挙げて行った各種の事業の成功によるところが大きいと考えられるのでありますが、この入り込み状況を地域別に見ると、残念ながら、県北地域の入り込み数は、逆に減少を見ていると認識しております。
 県北地域は、美しいシラカバ林の平庭高原を初めとする優れた自然景観が多数あり、また、独自の食文化を今に伝えるなど、素朴で温かい人情とあわせて、他の地域にまさるとも劣らない観光資源を持っております。観光の振興は地域の振興策としても重要な意義を持つものと考えるものでありますが、特にも県北地域においては、これらの優れた観光資源とともに、特色ある風土と文化を十分に活用した魅力的な観光地づくりを積極的に推進し、地域の活性化を図っていくことが緊要であると考えるものであります。
 東北新幹線盛岡以北における新幹線停車駅として、沼宮内駅と二戸駅が予定されており、それぞれの駅の所在市町においては、三陸沿岸と八幡平を含む内陸地域との結節点として、どのように乗客をおろし、また乗せていくかが課題となってくるものと考えられます。この10月29日には、北東北3県の知事が一堂に会し、観光をテーマとする知事サミットが開催されるとのことですが、北東北地域の広域的な観光振興を図る上で、本県の県北地域は北東北3県の結節拠点として重要な役割を担う中心的な地域であろうと考えられます。こうした観点からも、県北地域の観光振興を推進することは、単に県北地域の振興のみならず、ひいては本県全体の均衡ある発展、さらには、北東北3県の発展にもつながる重要なことと考えるのでありますが、県においては、県北地域の観光振興をどのように推進されようとしているのか、お伺いいたします。
 次に、高齢者の介護施設の整備についてお伺いいたします。
 平均寿命の伸長や少子化の進展等に伴い、我が国における人口の高齢化は、諸外国に例を見ない急速なスピードで進んでおります。本県においては国の平均をさらに上回って高齢化が進行しており、平成8年の高齢化率は18・7%、2025年には30%を超えるものと予測されております。このことは、県民の多くの人が長寿を約束される時代となり、まことに喜ばしいと思うわけでありますが、反面、人口の高齢化の進行、特に75歳以上の層の高齢者の増加によって、介護を必要とする高齢者数が大幅に増加するものと見込まれており、また個々の人生から見ても、介護の問題はだれにでも起こり得る可能性を有しております。介護人の声として地元岩手日報紙に紹介された内容を見ますと、いずれはだれしも老人になるのだが、老人が幸せな気持ちでいられるためには、世話する者も幸せな気持ちを持たなくてはならないと思うと述べ、さらに、絶望感もあるが、人は年を取ればこのようになるという現実を受けとめることができ、自分の将来を目覚めさせてくれ、感謝もしているとも言っております。
 こうした状況から、老後生活における国民の最大の不安は、経済面よりもむしろ寝たきりや痴呆となったときの介護の問題にあり、総合的な介護政策を展開することによって高齢者介護に関する不安を解消していくことが、安心して生活できる福祉社会づくりの大きなポイントとなっております。このため、従来から国ではゴールドプラン、新ゴールドプランにより介護サービスの基盤整備が進められてきておりますが、さらに、国民だれもが身近に必要な介護サービスがスムーズに手に入れられるシステムの構築を目指して、介護保険法案が国会に提案され、現在継続審議となっているところであります。この介護保険制度の導入については、保険料負担に見合った適切な介護サービスが受けられるかどうかが課題となっており、介護サービス提供基盤の整備が急がれております。そして、総務庁の調査によれば、高齢者の55%は、介護を受ける場として自宅や子供らの家を希望するという結果になっております。
 しかしながら、市町村が運営主体となるこの介護保険制度は、市町村段階において保健・医療・福祉を連携させた地域ケアシステムが構築されていなければ制度が有効に機能しないものと考えます。市町村の現状を見ますと、財政基盤と人材確保などの条件が種々異なることから、整備の進捗状況など、市町村間で格差が生ずることとなるのではないでしょうか。この格差が大きくなりますと、病院へ行くなら〇〇病院がいいという考え方と同様に、介護を受けるならどこそこの市町村がいいということとなり、つまりは高齢者の大きな移動につながりかねないという懸念を持つものであります。
 私は、高齢者の立場に立って介護福祉サービスを考えるとき、施設利用と在宅介護の支援体制がより重要であり、市町村の意欲と住民の参加が必要不可欠と思うものであり、介護する人もされる人も幸せな気持ちになる体制づくりをしていかなければならないと思うのであります。
 そこでお伺いいたしますが、本県の特別養護老人ホームや老人保健施設など、介護施設の整備の状況は、さきに定めた岩手県高齢者保健福祉計画に対してどのような進捗状況となっているのでしょうか。
 また、県としては在宅介護と施設入所による介護を今後どのような方向で進めていこうとしているのか、お尋ねいたします。
 次に、農業問題についてお伺いいたします。
 初めに、第7回全国和牛能力共振会の成果と、今後の本県における黒毛和牛種の改良増殖対策についてお伺いいたします。
 去る9月11日から15日までの5日間、本県産業文化センターを主会場として開催された本共進会で、本県の南部牛育種組合の出品した第7区の若雌牛群が、種牛の部でグランドチャンピオンに輝いたほか、他の区分においてもそれぞれ優秀な成績をおさめたところであります。このことは、畜産県岩手にとってまさに快挙であり、これまで地道に改良に取り組んでこられた生産者の方々を初め、県当局、関係団体の御尽力に対し、ここに改めて満腔の敬意を表する次第であります。
 まず、本共進会の最大の特色は、産肉能力に係る育種価がすべてのジャンルに導入されたことであったかと思うのでありますが、本県がこの共進会に向けてどのような対策を講じて来られたのかお伺いいたします。
 また、本共進会では本県独自に、「ファームフェスタ'97 in いわて」と銘打った関連イベントがあわせて開催され大盛況を博した模様でありますが、その状況はどのようであったか、あわせてお伺いいたします。
 次に、今日の世界経済は、WTOの枠組みのもとでルール化され、自由貿易体制は今後とも拡大されることが予想されます。このような状況のもとで本県が今後国内外の産地間競争に勝ち抜くためには、高齢者も参加できる地域ぐるみの生産体制の再構築と、育種・改良等生産技術の高度化を図ることが絶対の条件であると確信するものであります。このことにより、収益性の高い安定した肉牛生産が可能になると思うのでありますが、このための基盤をなす今後の本県における黒毛和種の改良増殖対策について、このたびの全国和牛能力共進会の成果を踏まえ、その基本的な考え方について知事の御所見をお伺いいたします。
 さて、全国有数の畜産県である本県において、肉用牛と並んで重要な地位を占めているのが酪農であります。御承知のとおり、本県の酪農は乳用牛の飼育戸数、頭数ともに全国トップクラスにあり、県民の食生活の向上に貢献するとともに、中山間地域の活性化に大きな役割を果たしているところであります。しかしながら、労働力の減少や高齢化の進行に加え、環境問題等により、県内の乳用牛飼育戸数、頭数は年々減少しており、特に近年は、小規模農家のみならず中規模農家においても、後継者不足から規模の縮小や乳用牛の飼養を中止するなど、その減少の度合いが著しくなってきております。今後ともこのような状況が続いた場合は、中山間地域の農業生産活動や、県が農業再編の目標としている米、園芸、そして畜産を基幹とした総合産地化の推進に当たって深刻な影響が懸念されるところであります。
 こうしたことから私は、酪農を本県の土地利用型農業の基軸と位置づけ、安定的な規模拡大への支援策や後継者の確保策など、総合的な対策を早急に講ずる必要があると考えるのでありますが、県としては、今後酪農の生産振興についてどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
 次に、園芸の振興についてお伺いいたします。
 本県においては、古くから本県農業の中心となっていた米と畜産に加え、園芸部門の拡大によって3本の柱を立て、より収益性の高い、体質の強い農業を構築していくためその推進に努めておりますことは、農業関係者の等しく承知しているところであります。こうした状況の中で、本県の平成7年の農業総生産額とその中に占める米、畜産、園芸の割合を見ますと、総生産額3、217億円のうち、米が1、093億円で34%、畜産が1、362億円で42%、園芸が580億円、18%となっておりますが、これを5年前の平成2年と比較してみますと、総生産額約3、475億円のうち、米34%、畜産42%、そして園芸が18%となっております。この中間の年に当たる平成5年の大冷害の際には、米の作柄の大幅な落ち込み等を背景に、園芸部門が約24%というシェアを記録した以外は、それぞれの生産額のシェアに大きな変化は見られないのであります。
 私は、園芸部門を米、畜産に次ぐ本県農業の柱としていくためには、それにふさわしい実績を上げる必要があり、そのためには何としても平成5年並みのシェア25%程度は確保すべきであると考えておりますが、園芸部門の中においても、果樹は急速な生産拡大は望めない状況にあり、花についても順調に拡大してきているとはいえ、その生産額はいまだ100億円に達していない状況にあります。こうした実情から考えますと、園芸を本県農業の真の柱としていくためには、園芸生産額の約3分の2を占める野菜の生産拡大が急務であり、しかももっとも実現性が高いものと考えております。しかしながら、農業を取り巻く環境は、農業労働力の減少や高齢化などにより、米と違って労力を多く必要とする野菜生産にとりましては、極めて厳しい状況にあることも確かであります。
 このような情勢の中で、県当局は今年度からいわて純情野菜日本一産地育成事業など、新たな施策をスタートさせたことは承知しているところでありますが、野菜生産のための農地基盤整備なども含め、本年度の野菜を中心とした園芸振興の取り組み状況と今後の振興策についてお伺いいたします。
 次に、県立病院の事業運営と施設整備についてお伺いいたします。
 まず、県立病院の事業運営についてでありますが、県立病院事業は、平成7年度2億500余万円、平成8年度6億3、900余万円の2年連続の黒字決算となり、経営が安定することが期待されておりましたが、平成9年度については、この4月から消費税率が3%から5%に改定されたこともあって、当初予算ベースで7億5、300余万円の赤字を計上するなど、再び赤字経営とならざるを得ないことが懸念されております。
 ましてや、国においては国民医療費の増嵩が政府財政を圧迫することから、この9月1日からの患者の一部負担引き上げを皮切りに、大幅な医療保険制度の改革を検討しております。この医療保険制度の改革は、患者の負担をふやすことなどにより、平成7年度で約27兆円に達した国民医療費をできるだけ抑制しようとする政策と見受けられるところであります。これらの国の動向等から考えますと、病院の経営は今後ますます厳しくなるものと考えられます。
 医療局としては、今大きく変わろうとする医療制度の中で、安定した経営を続けていくためには、今後どのような事業運営を展開していくおつもりなのか、お伺いいたします。
 次に、県立病院の施設整備についてでありますが、先ほど述べましたように、ますます経営環境が厳しくなる中で、新築、改築していくことは経営上も大きな負担となるのではないかと思われます。しかしながら、私は県立病院が28病院あるということを考えるならば、年々計画的に病院の整備を行っていかなければ、老朽・狭隘化が進み、県民の医療の確保という県立病院の抱えている大きな命題を十分に果たせなくなるものと考えるものであります。
 そこで、医療局では今後の病院整備をどのように考え、どのように進めていくおつもりなのか、お伺いいたします。
 以上を申し上げ、私の一般質問を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 千葉伝議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、東北新幹線盛岡-八戸間の整備促進についてでございますけれども、これまで県におきましては、国などに対しまして、本州を縦貫する幹線となりますこの区間の早期完成が今後における国土の均衡ある発展に不可欠であることを訴えまして、事業費の重点配分を強く要望してきたところでございます。その結果、平成9年度の政府予算におきましては、前年度の約2・2倍に当たるわけですが、523億円の事業費が配分をされておりまして、総事業費に対する進捗率が、8年度末には15・3%でございましたが、今年度末にはこれから約11ポイント上昇いたしまして26・8%に達する見込みと、このようになっております。しかしながら、工事実施計画で定められましたおおむね平成13年の完成と、このように定められているわけでございますが、これを達成するためには、長野オリンピックを控えました北陸新幹線の高崎-長野間に対する措置と同様に、今後、盛岡-八戸間に対しても事業費が最大限優先的に配分されていくことが必要になるものと、このように考えております。
 ただいまの議員御指摘のとおり、財政構造改革によりまして公共事業費全般にわたる削減が進められると、こういうことでございまして、整備新幹線を取り巻く環境もかつてないほど厳しさを増しているわけでございますが、県といたしましては、平成10年度の概算要求を見ますと、各省庁が公共事業費に対します要求総額を今年度予算から7%減少させていると、このような中にありまして、運輸省ではこの整備新幹線建設に係る公共事業関係費としてこの分については今年度と同額を計上したと、特別に手厚く措置をしていると、こういうことでございますが、こうしたことも踏まえまして、盛岡-八戸間は既存の新幹線と直結される唯一の区間でございまして、時間短縮などの効果がこれは最も大きいというふうに私ども考えておりまして、こういう利点を強調しながら、事業費の優先配分に向けた働きかけを強めてまいりたいと、このように考えております。
 次に、並行在来線問題についてでございますが、県におきましては、経営分離される区間において、将来にわたり健全な経営のもとで現在の輸送サービスの利便性が確保されること、これを最大の目標といたしまして、鉄道による輸送の継続を基本的な前提として、分離後の経営見通しの把握に向けました収支の試算作業を進めているところでございます。
 また、鉄道経営の健全性を確保するためには、国やJRからの支援措置が必要不可欠であると、このように考えておりまして、全国の関係道県とも連携を図りながら、国への要望活動を行っているところでございます。
 一方、鉄道貨物の問題についてでございますが、盛岡-八戸間が首都圏と北海道を結ぶ貨物輸送の大動脈と、このようになっておりまして、在来線を利用した貨物輸送が継続されるのかどうか、また、その場合の線路使用料の水準がどのように設定されるか、これが経営分離後の鉄道経営にも極めて重大な影響をもたらすものと、このように考えられるわけでございますが、この問題につきましては、昨年末の整備新幹線に関する政府・与党合意によりまして、今後、関係者間で協議をすることと、このようにされているところでございます。
 県といたしましては、経営分離後の並行在来線につきまして、輸送に係る利便性と健全な経営の確保を最優先すると、こういう観点から、こうした国の動向を注視しながら、引き続き支援措置のあり方に関する本県の考え方を強く訴えていくと、このようなこととしているわけですけれども、これと並行いたしまして、沿線市町村や青森県とも十分に意見の交換を行いながら経営見通しの試算作業を進めまして、新幹線建設工事の進捗状況、この進捗状況と経営分離までに必要となる準備期間、これはもう当然準備期間が一定期間必要になるわけですが、この双方に照らして時期を失することのないように、分離後の輸送と経営に関する県としての基本的な方針を取りまとめてまいりたいと、このように考えております。
 次に、本県における今後の黒毛和種の改良増殖対策についてでございますが、県におきましては、家畜の改良増殖を推進するために、ことしの3月に家畜及び鶏の改良増殖計画、こういう計画を策定いたしまして、これに基づきまして、黒毛和種につきましては、低コスト生産を推進するために、公共牧場をより積極的に活用して、強健で哺育能力にすぐれ、放牧適性が高く、かつ産肉能力にすぐれた牛群の改良増殖に努めると、このようにしているところでございます。
 また、改良増殖を効率的に進めるために、親から子に伝える産肉量や肉質に関する遺伝的能力を数値であらわす育種価--育種価を活用した計画交配を一層進めますとともに、分割卵移植や核移植の推進、さらには遺伝子の解析や超音波測定装置を駆使した生体測定などによりまして病気に対する抵抗性や産肉性のデータを収集分析し、優秀な種雄牛の造成など改良の加速化を図りますほか、優良雌牛の確保、増殖に努めていく考えでございます。このたびの第7回の全国和牛能力共進会に出品する牛を造成するために、優良な黒毛和種の計画交配により生産された多くの優秀な牛が、本県の次代を担う改良基礎牛として確保されまして、育種基盤が強化されたことは、今後の本県の産する子牛価格や枝肉価格に好影響をもたらして、本県が和牛主産地として21世紀に向けて大きく飛躍する契機となると、このように考えているところでございます。
 なお、今回の共進会において内閣総理大臣賞に輝いたという輝かしい成果がございます。これを来る10月10日から12日までの3日間、東京の代々木公園のイベント広場において開催されますいわて牛フェア、こうした催しなどを通じて大々的にPRするという考えでおりまして、今後におきます黒毛和種の振興に大いに寄与するものと、このように期待をしているところでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔土木部長藤本保君登壇〕

〇土木部長(藤本保君) まず、国道281号の整備状況と今後の見通しについてでありますが、本路線は、県都盛岡市を起点といたしまして、国道4号を経由し、岩手町より北上山地を横断し、葛巻町、山形村を経て、県北の拠点都市である久慈市に至る総延長約116キロメートルの幹線道路であります。これまで国庫補助の改築事業や、交流ネットワーク道路整備事業の久慈ルートとして、久慈溪流沿いの危険箇所の解消や山形村川井地区等の交通隘路区間の整備を推進してまいりました。
 さらに、昨年度スタートした新交流ネットワーク道路整備事業の中で、冬期の交通の安全確保が課題となっている岩手町大坊地区については、平成12年度の完成を目指し、また、久慈市の山口地区につきましても、大型車のすれ違いができなかった岩井橋の前後区間を第1期工事として整備を行っており、本年度末には完成供用を図ることとしております。
 また、国庫補助事業につきましても、交通の隘路となっている葛巻町の繋地区について来年度の完成を目指すとともに、山形村の下川井地区につきましても、昨年度より事業化を図ったところであります。
 また、これらの箇所とともに、地域住民を初め関係機関から、冬期間の安全で円滑な通行の確保が強く望まれている平庭峠や、大型車の交通量が多く交通安全上課題の多い久慈市内や葛巻町内などの整備についても、ルート検討等の調査を行うこととしておりますが、事業化に当たっては大規模な事業費が必要と予想されることから、国庫補助事業の導入が不可欠と考えております。
 御案内のとおり、道路整備等公共事業のあり方につきましては、公共事業7%削減等を内容とする財政構造改革の推進について閣議決定がなされ、また、中央においては、地方の道路に対する見直し論が盛んに論ぜられるなど、新規事業はもとより継続事業にとっても極めて厳しい状況にあると認識しております。このような状況下でありますが、県といたしましては、県北沿岸地域の振興と、本路線の重要性にかんがみ、関係市町村と密接な連携のもと、計画的な整備が図られるよう努力してまいりたいと考えております。
 次に、河川整備についてでありますが、本県における治水対策は、カスリン、アイオン両台風による大水害を契機として本格的に進められ、県土の保全と安全で快適な生活環境の創造を目指して、河川整備に努めてまいり、それぞれの地域の発展に寄与してきたものと考えております。また、最近では、河川整備を進めていく上で、洪水から地域住民の生命や財産を守ることはもとより、その河川が本来持つ多様な自然環境や生態系に配慮した多自然型川づくりを進め、個性豊かな川づくりに努めているところであります。
 御質問の北上川と松川の合流点付近につきましては、洪水防御のための抜本的な河川整備を図るためには、河川沿いの多くの農地が必要となることから、当面は四斗沢地区ほか2地区において、県単独事業や災害復旧事業により小規模な築堤や護岸工事を行うなど、最小限の用地で、できるだけ治水効果を上げるよう、暫定的な改修を進めてきているところであります。
 一方、啄木の歌碑周辺につきましては、本県が誇る詩情豊かな北上川の自然景観を生かすよう、周辺の公園整備事業と一体となった河川整備を進めるため、水に親しむことができる階段護岸や散策路などの施設設計に本年度から着手したところであります。
 今後とも、洪水の状況や土地利用など、地域の実態に応じ、さらには豊かな自然環境や生態系にも配慮した河川の整備を、地域の皆様方の御理解と御協力を得ながら、積極的に進めてまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長佐藤孝司君登壇〕

〇商工労働観光部長(佐藤孝司君) 県北地域の観光振興についてでありますが、近年の観光は、景勝地等をめぐる周遊型の観光から、地域の自然や文化などに触れ人々と交流する観光へ、また、観光行動も団体型から小グループや家族単位へと大きく変化してきているところであります。このようなこともあり、本年度から県内を、沿岸部の魚彩王国、県南部の黄金王国、県西部の湯雪王国、そして県北部の穀彩王国の、それぞれの特性に基づいた四つの広域的な地域に区分し、市町村や地元関係者と一体となって、新たな観光素材の掘り起こしを初め、受け入れ態勢の整備や宣伝活動に取り組むなど、観光による地域づくりを推進しているところであります。
 県北地域については、穀彩王国として、北山崎に代表される豪壮な海岸美、牧歌的な自然景観を有する平庭等の高原、ソバ、アワなどを中心とする郷土色豊かな食文化、漆器、陶器、こはく等の伝統工芸など、個性的な観光資源を生かした地域提案型の旅行商品の開発などにより、参加体験型の観光振興を推進しているところでありますが、今後においても、多様な観光ニーズに対応した観光振興計画の策定について指導するなど、地域の主体性を尊重しつつ、県北地域の観光振興に一層努めてまいりたいと考えております。特にも、観光の広域化に対応するため、青森、秋田の両県と共同して、十和田八幡平地域等の観光資源を取り込んだ、より広域的な観光ルートの開発や観光宣伝活動などの観光事業を積極的に推進してまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長緒方剛君登壇〕

〇保健福祉部長(緒方剛君) 高齢者の介護施設の整備状況についてでありますが、特別老人ホームや老人保健施設などの施設は、これまで高齢者保健福祉計画に基づき整備を進めてきたところであります。平成9年度現在の整備状況は、着工ベースで、特別養護老人ホームは、73施設、定員4、300人、目標に対する進捗率は101・7%であり、老人保健施設は、45施設、定員3、906人、進捗率は88・8%となっております。なお、特別養護老人ホームは県内全市町村に設置されることとなります。
 次に、在宅及び施設における今後の介護の進め方についてでありますが、今後75歳以上の、いわゆる後期高齢者が増加することや、核家族化の進行、介護者の高齢化などにより家族介護機能が低下することに伴い、寝たきり老人や痴呆性老人などに対する介護基盤整備のニーズは、一層増大かつ多様化することが見込まれております。
 一方、高齢者の多くは、介護を必要とする状態になったとしても、できる限り住みなれた地域や家庭において、家族などとの触れ合いを保ちながら生活したいという希望を抱いており、そのような希望を実現するために、在宅介護サービスの拡充を重点的に進める必要があると考えております。こうしたことから、高齢者の個々のニーズに対応するため、24時間対応ホームヘルプサービス、いわゆる訪問介護や休日や時間外のデイサービス、訪問看護など多様な在宅介護サービスの拡充を図っております。
 他方、在宅での介護が困難な痴呆性疾患や重度の要介護高齢者につきましては、入所施設における介護サービスの提供が必要であり、このような入所介護の施設についてもさらに整備を進めてまいる考えであります。
   〔農政部長中村盛一君登壇〕

〇農政部長(中村盛一君) まず、全国和牛能力共進会の成果についてでありますが、本県は全出品区11部門中、実に七つの部門におきまして優秀な成績をおさめるとともに、特に第7区において県有種雄牛第5夏藤を父とする南部牛育種組合の繁殖雌牛群が種雄牛の種牛の部の最高位であります名誉賞、すなわち内閣総理大臣賞を獲得したところであります。このような成果がもたらされたのは、出品牛造成のため設立いたしました、岩手県出品対策委員会のもとで、県内7地区の和牛改良組織におきまして、育種価が明らかで、かつ優秀な雌牛2、570頭を選抜し、これに第5夏藤などの種雄牛を計画交配し、産子調査や管理指導を繰り返し、本年7月の最終選抜会において県代表として種牛の部23頭、肉牛の部9頭、計32頭を選抜するとともに、本共進会に向けて技術指導を行い、出品牛のコンディションづくりに努めるなど、万全の態勢で臨んだことによるものと考えております。
 また、この成果は計画交配に着手して以来3年余りにわたり地道に取り組まれました生産者を初め、和牛改良組織等関係各位の努力のたまものと考えております。
 また、本共進会では、関連イベントとしていわてふれあい市場や、ジャパンミートピア館、牛の科学館などを併催するとともに、隣接会場ではいわて花メッセも開催されるなど、多彩なイベントを通じて、岩手県産品をPRすることができたことや、また、天候にも恵まれまして、40万人もの方々の御来場をいただき、共進会ともども盛会裏に終了することができましたことは、多くの皆様の御支援、御協力の結果によるものと考えております。
 次に、酪農の振興方策についてでありますが、本県における酪農は、広大な県土と豊富な草資源に支えられて、全国第2位の乳用牛の飼養戸数、頭数を占めるなど、我が国における主要酪農生産県としての地位を確保している一方、中山間地域の活性化や、堆肥の活用を通じた環境保全型農業の推進を図る上で大きな役割を担っております。しかしながら、近年、農家の高齢化や急速な国際化の進展の中で、飼養戸数、頭数が減少傾向にあり、こうした状況を踏まえまして県といたしましては、昨年度、岩手県酪農・肉用牛生産近代化計画を策定し、酪農を土地利用型農業の基軸として位置づけ、その振興を図っていくこととしたところであります。
 具体的には、第1に、土地基盤に立脚した経営体の育成を図るため、良質粗飼料の安定生産や、公共牧場の活用などによる飼料生産、利用の効率化を進めるとともに、第2に、経営の合理化、高度化を図るため、フリーストール牛舎などの省力化のための飼養管理方式の導入促進や牛群検定の拡充などによる産乳能力の向上、酪農ヘルパーなど経営支援組織の育成を進め、第3に、環境問題への適切な対応を図るため、堆肥化など家畜ふん尿の適正な処理のための施設整備などを進めているところであります。
 さらに、規模別に見ますと、御指摘のとおり飼養頭数30頭未満の中小規模階層において、飼養戸数、頭数の減少が進んでいるところでありますが、この階層は、本県生乳の52%を生産するなど極めて重要であり、酪農後継者の育成確保の観点からも、経営、生産技術の改善等を通じた経営基盤の強化策や、後継者の研修体制の充実などの方策について検討してまいりたいと考えております。これら各般にわたる施策の展開に努め、畜産農家、関係団体とも連携を図りながら、今後とも国内外の競争に打ち勝つ足腰の強い、活力ある酪農振興に鋭意取り組んでまいる考えであります。
 次に、園芸振興の取り組み状況と今後の振興策についてでありますが、本県におきましては野菜、果樹及び花卉の園芸部門を収益性の高い農業再編への戦略作目として位置づけ、全県的にその振興を図っておりますが、特にその中心となる野菜につきましては、地域に適した重点品目を設定するとともに、気象変動に対応するためのビニールハウスや生産拡大を図る広域育苗施設、集出荷施設など、生産、流通基盤の整備を総合的に進めてきたところであり、今日では、夏秋季の産地として市場などから高い評価を得ているところであります。しかしながら、近年、高齢化などにより生産が計画どおり伸びていないことから、県といたしましては、播種から収穫、調整までの機械化一貫体系の普及推進や、労働力調整を図るためのミニ予冷庫の導入促進など省力化対策を進め、労働力事情に対応した活力ある産地づくりの推進に力を入れてきたところであります。
 また、こうした対策に加え、本年度から新たに創設したいわて純情野菜日本一産地育成対策事業により、キャベツを牽引役として、それぞれの地域ですぐれた産地づくりを目指して積極的に取り組んでいるところであります。こうした取り組みの結果、キャベツは本年の目標面積500ヘクタールを達成し、その品質のよさと継続出荷によって安定した価格で取引されており、なお一層の生産拡大を期待されております。本年は春先の低温による生育のおくれが心配されましたが、幸い、その後の天候にも恵まれましたことから作柄は良好で、販売も順調に推移しております。
 今後におきましても、本県野菜の一層の振興を図るため、こうした取り組みの成果を踏まえ、県北、高標高地域では作業効率や作柄の安定を図るための基盤整備を進めながら、レタス、キャベツなど土地利用型野菜の作付拡大、県中、県南地域ではキュウリ、ピーマンなど果菜類の転作田への団地的導入、また、沿岸地域では気象条件を生かしたホウレンソウやナバナの生産拡大など、重点品目を柱とした各地域の特性を生かし、特色ある産地づくりに向けて生産者、団体などとの密接な連携のもとに取り組んでまいりたいと考えております。
   〔医療局長渡辺勲君登壇〕

〇医療局長(渡辺勲君) 県立病院事業の事業運営の今後の展開と施設整備についてでありますが、国におきましては、御案内のとおり、現在21世紀の本格的な長寿社会に耐え得る新たなシステムを確立するため、医療法を初め診療報酬体系や医療保険制度など、国民医療全般にわたる改革が進められております。
 一方、急激な人口の高齢化や医学医術の進歩、疾病構造の変化、医療の高度化に加え行政環境の変化など、医療を取り巻く環境が大きく変わりつつある中にあって、県立病院が真に県民医療の担い手としてその役割を果たしていくためには、このような環境の変化と県民の医療ニーズを十分に踏まえながら、それぞれの地域の医療事情に即した効率的な医療供給体制と、これを支える安定した経営基盤の確立になお一層の努力をすることが肝要であると考えてございます。
 こうしたことから医療局といたしましては、その運営の基本としておりますヒューマニティ21計画を着実に推進し、良質で満足度の高い医療サービスの提供を目指す一方、経営の健全化に向けましても職員の経営意識、参加意識の醸成や組織の活性化を図るとともに、経費の節減、業務の効率化等を推進し、また、限りある医療資源を効果的、効率的に活用するため、28病院のスケールメリットを生かした連携ネットワークなど、県営医療システムの整備充実を図り、県立病院全組織を挙げて環境の変化に適応する生産性の高い効率的な事業運営を推進してまいる考えでございます。
 また、今後の施設整備についてでありますが、建物の老朽化、狭隘化の進行度合いのほか、医療ニーズの動向や投資効果等を総合的に検討するとともに、さらには、財政状況等を勘案し、計画において予定しております沼宮内病院を初め5病院の新築、整備を所在市町村とも十分な連携を図りながら計画的に進めてまいりたいと考えているところでございます。

〇議長(那須川健一君) 次に、黄川田徹君。
   〔5番黄川田徹君登壇〕(拍手)


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