平成10年2月定例会 第13回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(船越賢太郎君) 県民クラブの船越賢太郎でございます。
 名誉ある県議会議員を拝命以来3回目の登壇でございますので、よろしくお願いいたします。
 まずもって質問の第1点は、間近に迫った21世紀を担うべき青少年の教育についてお伺いするものであります。
 今や日本国民は、半世紀、50年もの間、戦争のない平和な境遇に恵まれ、さらなる永続する平和を希求してやまないものでありますが、しかし、神戸の少年連続殺人事件を初め、栃木県の中学生による女教師惨殺事件、そして拳銃欲しさに大胆にも警察官を襲う等、凶悪事件もその極に達していると言わなければならない現状であります。かつて日本には、社会生活を律し家庭を指導したキリスト教の影響をも宿す教育勅語がありましたが、GHQにより廃止され、かわって昭和33年には道徳教育が創設されました。しかし、この道徳教育も、日教組等の反対などでその内容は形骸化されたのであります。
 その日教組大会が、1月末鹿児島市で開かれた教育研究集会で、荒れる学校の生々しい実態が相次いで報告されたと報道されておりました。その報道によりますと、授業放棄、喫煙などは序の口で、生徒や教師への暴力、窃盗、恐喝といった驚くべき現況は、まさに授業ができない学級崩壊の現状はもはや打つ手なしとも報じております。今、ちまたには連日その論説が報じられておりますが、モラルを失った社会、教育力の低下した家庭など、多くの問題点があることも指摘しております。子供の自主性の尊重と言えば聞こえはいいのでありますが、幼いころから最低限のしつけすらやらない、例えば、列車の中で走り回って大きな声を上げても、しかってたたいたりせず、軽くたしなめる程度で、周囲に迷惑をかけることは悪いことと教えるべき社会規範も教えないままの家庭教育から、学校に入れ、自分の子供のことしか考えない、子供の前で安易に教師を批判し、盲目的に我が子を信じ、すべて学校が悪い、友達が悪いと言う多くの親たちにそれを求めることは無理と思うのであります。
 フランスの教育者ルソーは、子供の欲しがるものをふんだんに与えれば、確実に不良少年になるとも教えております。また、貧乏は最良の教師であるとも言っております。今からでも決して遅くありません。過ちを改めるにはばかることなく、我が日本国は、倫理規範の教育を最優先で実施すべきときと思うのであります。
 そこで教育長にお尋ねいたしますが、家庭と学校における倫理規範の教育の必要性をどのように考えておられるのか。学校教育のみならず、生涯教育に携わる教育長に、その心意気をお聞かせ願うものであります。
 次に、少年の犯罪防止についてお尋ねいたします。
 前段で教育長に対する質問に関連するものでありますが、既に2月26日、下稲葉法務大臣は少年法の年齢引き下げを示唆いたしましたが、日教組の研究集会の模様を報じた新聞記事の中に、シンナー遊び、喫煙、暴力、器物破壊、いじめ等、暴れまくり、おれは13歳だから警察は怖くないなどと、ちゃんと刑事罰を受けないことも知っておるのであります。また、栃木県におけるライフルによる教師殺害事件を初め、殺人犯の少年がごく普通の子供であったと校長先生や担任が一様に言っているに至っては、そら恐ろしい限りであります。どこかが狂っているとしか思えないのであります。
 北上市で発生した高校生強盗事件にしても、遊ぶ金欲しさに大人を尾行して、暗がりの路地で金品を強奪するとか、全国的にもナイフでおどし取るという、大人と何ら変わらない犯罪行為が発生しております。刑罰は罪を憎んで人を憎まず、再犯を防ぎ、犯罪防止のため科するものであるならば、犯罪者が二度と罪を犯さないよう、矯正のため少年にも罪に対する償いがあってもよいのではないかと思うのであります。
 その国の将来を占うにはまず青少年の姿を見よと言われますが、21世紀を担うべき健全なる青少年を育成するために、人の命は地球よりも重いという原則により、殺人の罪は極刑に値することをまず教育によって教えるべきと思うのであります。私は、今こそ国を挙げての総意と大合唱により、甘やかしの教育を廃して罪と罰について基本から考えるべきときと思うのであります。
 そこで、本県においても少年による犯罪は増加しておりますが、少年犯罪に対する警察の基本的な姿勢について、県警本部長にお伺い申し上げます。
 また、警察では、少年の心の教育の一環として各種の社会参加活動を強力に推進されているようですが、その活動等についてもあわせてお伺いいたします。
 また、本日昼のテレビニュースで知ったのでございますが、宮古に寄港した外国船から拳銃5丁を発見したということでありますので、捜査上支障のない範囲で、その概要についてお尋ねしたいと思うのであります。
 次に、北東北3県知事サミットについてお伺いいたします。
 さきの知事演述において、増田知事は、新しい時代に対応したこれからの地域社会を再構築していくための手法として、連携・交流が重要な要素となると述べておられます。私も、世界全体が幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ないと言った宮沢賢治の言葉をかりるまでもなく、お互いに手を携えて交流することは真の相互理解につながり、地域づくりを進めるに当たって大変重要なことであると存じます。そのような意味で、岩手、青森、秋田の3県知事が昨年10月十和田湖畔に一堂に会し、北東北の観光振興をテーマとして知事サミットが開催されましたことは、大変意義深いものであったと高く評価しているものであります。このサミットの中で、3県が協同して観光振興に取り組むことや、情報発信拠点を北九州地区に設置することなどが合意され、また、平成10年度には環境をテーマに本県で開催されることが決定したと聞き及んでおります。このようなサミットが引き続き開催され、相互理解が深まることは、北東北3県のパートナーシップのきずなが一層強まるものであり、大いにその成果を期待するものであります。
 そこで知事にお伺いいたしますが、昨年のサミットにおける成果を来年度の施策にどのように反映されるのでしょうか。
 また、来年度本県で開催される環境サミットについては、どのようなものにしようと考えておられるのか、承りたいと存じます。
 次に、宮古港の港湾整備とアクセス道路についてお伺いいたします。
 海運業界の動向によりますと、日ごとに国際化が進む世界経済の潮流の中で、港湾貨物が急速に韓国に奪われている現状があります。その要因の一つは、荷さばき施設の不備によるものであり、すなわち、急速に普及してきたコンテナ輸送に対応する大型クレーンの設置や、これらの設備に対応できる岸壁の強化改良がおくれている点にあります。せっかく膨大な資金を投入してできた宮古港も、コンテナ主体の近代流通荷役に即応できる万全の設備とは言いがたく、早急なる当局の検討と対応を切に希望するものであります。
 そしてまた、何と申しましても長大なコンテナの積載車のスピーディーで安全な運行を実現させるためには、106号の高規格化が急務となっております。国道106号は、御承知のように余りにもカーブが多く幅員も狭いことから、せっかくの宮古港を十分に活用できない要因になっておりますことは自明の理なのであります。道路整備は確かに長い歳月を要する事業ではございますが、着工以来3カ年も経過しておりますのに、いまだ達曽部トンネルさえ開通しておらないのであります。政府は、行財政構造改革の名のもとに緊縮財政を進めようとしておりますが、均衡ある国土の発展のためには、我が地域にはどうしても早急なる高速交通体系の確立が必要なのであります。
 かつて宮古港湾の建設が県や国の施策として提示された当時、鶏が先か卵が先かの論争がわき起こり、まず港湾建設に着手し、それから道路づくりに取り組むとの決着を見たのであり、おかげで接岸岸壁10バースが完成いたしました。しかし、港湾は完成したものの、アクセス道である国道106号の高規格化は遅々として進まず、港湾機能が十分に活用されない現況にあります。県は、かつて明示した国道106号と港湾との一体整備を忘れ、他港湾に重点が移ったようにさえ思えるのでありますが、コンテナ貨物に対応する宮古港の整備とそのアクセス道路の整備についてどのように考えておられるのか、その抱負と見通しについてお伺いいたします。
 次に、リモートセンシングを活用した新たな水産情報の提供についてお尋ねいたします。
 本県の水産業は、サケ、マスの増殖を初め、ワカメ、ホタテ貝等の養殖、アワビ、ウニ等の資源増大など、つくり育てる漁業の積極的な取り組みがなされ、水産物の供給基地としての地位を確立するとともに、沿岸地域の中核産業として、生活、文化など、地域社会においても重要な役割を担っているところであります。一方、輸入水産物の自由化によって漁業経営は大変厳しい状況となっているほか、高齢化、後継者の確保など課題が山積しているところであります。また、昨年からスタートした漁獲可能量制度、いわゆるTAC制度の導入など、水産資源を適正に管理しながら水産業の振興を図ることが肝要であります。
 このような中にあって、本県水産業の取り組みの一つとして、先端技術の導入による新しい水産技術の開発と情報化への取り組みが急務であると思われますが、このたび整備が予定されております人工衛星によるリモートセンシングを活用した新しい水産情報の提供システムの概要と、漁業者にとってどのような効果が期待されるのか、この際お伺いいたします。
 次に、漁協の合併問題について御質問を申し上げます。
 ウルグァイ・ラウンド等、世界貿易問題の影響下にあって、米や魚の聖域さえあえなくついえまして、第1次産業が縦死の過程をたどっております現状は周知のとおりであり、また、金融大改革を背景といたしまして、水産業界もにわかにその対応を迫られているところでございます。
 昨年10月30日、県下の漁協大会が開催され、その折に漁協の合併問題も議題に上ったのでありますが、もちろん合併の推進については、世論の趨勢から総論は賛成ということで幕は閉じたのでありますが、それぞれが昭和24年来、ロッチデールの精神により、津々浦々に地域基幹産業の担い手として築き上げられてきた、血と汗のにじむ歴史と尊い努力の結晶である単協の合併については、漁業権の取り扱いなど、組合員による特別決議を要する諸問題や難事業が山積するのであります。ある組合は、既に30数年前、由緒ある大漁業家の漁業権の開放をなし遂げるなど、勇気ある決断をもって市町村1漁協への英知ある合併を果たして、健全なる組合経営に成功し、組合員へのサービス業務と地域行政への多大なる貢献も果たしているのであります。こうして、営々と築いてきた財産を伴っての合併は、よほどの信頼と信用がなければなし遂げられるものではないと思うのであります。それがためには、十分に時間をかけて根気よく説得を続け、合意を得なければならないと思うのであります。もちろん、民主主義社会にあっては多数決の原則というものがありますが、同時に、少数意見といえども十分尊重されなければならないものであります。
 また、県政におきましても、合併等の促進のため、でき得る限りの財政支援も必要欠くべからざるものと思われますので、よろしくお願い申し上げる次第でございます。そしてまた、これらのことが増田知事の提唱する県北・沿岸地域と内陸地域との格差是正という政治的大命題にもつながるものと思うのであります。
 林業水産部長、あなたは平成8年8月本県に来られてはや1年7カ月にもなりますが、独特な本県の水産業界の水にもなれ、勘どころも掌握されたことと思われます。私は、まだ鮮明なる意思表示を控えている大方の組合長さん方の動向を見ましても、一挙に1県1漁協の実現は時期尚早かと思うのであります。まずもって広域、もしくは市町村を中心とした自立漁協樹立方式から始めるなら、あるいは可能と考えているところでございます。漁業協同組合の合併の推進について、林業水産部長の御所見を承りたいと存じます。
 次に、カキ、ホタテ等の貝殻処分方法について再度質問を申し上げます。
 本問題については、以前から予算特別委員会や常任委員会の席上でもお伺いしてまいりましたが、このたびは、漁民生活の向上に直接携わっている林業水産部に御理解ある解決策をお考えいただきたく、特に御質問申し上げるものであります。
 御承知のように、今や水産業は、とる漁業よりも、つくり育てる養殖漁業の比重がますます大きくなっており、そのために、カキやホタテ、ウニ等の貝殻が大量に発生するのであります。中身をむいた後の貝殻は、多少の貝殻やへたは残るものの、もともとが自然界の生き物ですから、一定の場所で二、三カ月も風雨にさらされるか、あるいは散水するなどの手を加え、その後粉砕するなら、100%自然な石灰分となるのであります。ダイオキシン、農薬や一般廃棄物とは比較にならない清潔な物質なのであります。現代科学製品の塊ともいうべき廃車は、至るところにうずたかく積まれているのが現状であります。また、公共処分場においては、電化製品やプラスチック等、あらゆる一般廃棄物が異臭を放ってうずたかく積まれているのを見るにつけ、むしろ石灰分100%の貝殻を混入しながら処分することが、最も理想にかなったことではないかと思えるのであります。
 そこで、カキ、ホタテ等の貝殻処分の方法について、水産行政を司る当局に解決策を見出していただくことを強く希望し、林業水産部長の御所見をお伺いいたします。
 次に、ポリテクセンター釜石分所の存続問題についてお伺いします。
 同センターは、行財政改革の一環として平成14年末廃止の方向で進んでいるようでありますが、私は、とんでもない間違いであると思うのであります。御承知のごとく、釜石地域は新日鉄の合理化により、人口が流出し、地域経済は低迷しております。まさに火の消えたような状況となっており、活性化のため、関係者は涙ぐましい努力をしているのであります。同センターを中心とした15市町村の人口は実に45万人で、県人口の3分の1に相当し、入校者も毎年180名を迎え、収容し切れずに翌年度への待機組も多いのであります。特に、同センターの特色である天井クレーンの養成部門は、大船渡、釜石、宮古、久慈などの港湾荷役作業に欠かすことのできない人材養成部門で、海洋県岩手として需要も多く、現実に卒業後の再就職の状況は77%の好成績を上げております。このような状況からも、同センターの存続は、離職者の再就職や技術者養成のために欠くことのできないものであると考えますが、県は、このセンターの存在をどのように考え、今後どのように対応していかれる考えなのか、御所見をお伺いいたします。
 次に、ツキノワグマの保護管理についてお伺いいたします。
 さまざまな生物が構成する多様な生態系は、人間の生存基盤をなす極めて重要なものと言われております。平成6年に策定された国の環境基本計画においても、生物の多様性は、人間の生存の基盤となっている自然の生態系を健全に保持し、生物資源の持続的な利用を図っていくための基本的要素であり、また、野生生物の保護は国際的な課題でり、国内外の絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に積極的に取り組んでいくことが国の果たすべき国際的な責務でもあるとうたわれているところであります。しかしながら、野生鳥獣の中には、人間生活に害を及ぼしているものもあり、中でも、ツキノワグマは我が国を代表する大型哺乳類でありますが、毎年人里近くに出没し、騒ぎになったり、時には農作物に被害を与えるなど、山村地域の住民にとりましては、平穏な生活を脅かす存在であることも事実であります。野生生物を保護し、生物多様性の確保を図っていくことは重要でありますが、そのためには、地域住民との共生の確保ということを前提とした適切な保護管理が大切であると考えられます。ツキノワグマについて、共生を図っていくため、本県では今後どのような対策を講じる考えなのかお伺いいたします。
 最後に、中山間地域の振興に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 本県の中山間地域は、私から申し上げるまでもなく県土の大部分を占めており、農林水産物の生産などの上で重要な役割を担っておりますが、一方では、若者を中心とした都市部への人口流出が続き、高齢化が急速に進んできており、地域の活力を維持する上で厳しい状況に置かれております。若者は、何も好き好んで都会へ出ていくのではなく、地元に働く場がないから、やむなく行かざるを得ないという方々は、私の周りにも大勢おります。その結果、地元にはお年寄りが多くなるし、活力が低下するという図式であろうと思っております。こうした沈滞ムードを打破するには、地元の産業活動を活性化させる社会資本の思い切った充実が望まれるところでありますが、御案内のとおり、国においては、昨今の経済・社会情勢を反映し、公共投資の縮減方針を打ち出したところであります。特に、これまで都市部と比べて立ちおくれていた社会資本の整備が急がれる中山間地域では、例えば、ウルグァイ・ラウンド対策関連事業を活用するなどして、その格差の是正に鋭意取り組んできたところでありますが、今般の国の方向転換はまことに残念に思うところであります。
 こうした時代の流れは、早急に好転する素材も見当たらないことから、相当期間長く続くことも予測されております。もともと中山間地域は、産業の振興や企業立地の面では不利な条件下にあるだけでなく、公共事業に依存する度合いが高いことから、経済活動の面でもますます取り残されるのではないかと心配するわけでございます。このことは、単にこれら地域だけの問題としてだけではなく、県勢発展の上でも大きなマイナス要因として作用することも懸念されるのであります。中山間地域を振興し、活性化していくためには、そこに住む人たち、特に若者が、生きがいと誇りを持って安心して暮らしていける条件づくりを進めていくことが重要でありますが、地域の置かれている条件は、多様で不利な面が多々あることから、これまでの平場を中心としたものの考え方の延長ではなく、より地域の実情に踏み込んだ課題のとらえ方をしていく必要があろうと思うのであります。
 そこで、県では部局の枠を越えた横断的な課題の一つに中山間地域の活性化を掲げておりますが、地方財政を取り巻く環境が厳しい中で、中山間地域の振興に向けてどのように取り組んでいこうとしているのか、基本的な考えをお伺いいたします。
 以上で私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 船越賢太郎議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、北東北3県知事サミットについてでございますが、平成10年度は、昨年秋のサミットにおける合意に基づきまして、広域観光ルートの開発や、冬季観光・国際観光の振興などの観光施策を進めるほか、3県を結びます道路整備や北東北の広域連携構想調査などを実施していくこととしております。また、3県合同で設置をすることとしております九州地区の情報発信拠点につきましては、平成10年度のできるだけ早い時期の開設を目指して、今準備を進めているところでございます。
 本年10月には、環境をテーマに、またこの北東北3県で第2回のサミットを本県で開催いたしますけれども、国土面積の約1割を占めておりますこの北東北3県は、十和田・八幡平や陸中海岸国立公園、世界遺産でございます白神山地などの雄大で緑豊かな自然を有しておりまして、その中で、自然の恵みを受けた農林水産業などの産業活動や人々の暮らしが営々と培われてきたところでございます。また、青森県の三内丸山遺跡などの繩文文化や、本県の平泉文化などの多彩で創造力にあふれた文化が繰り広げられ、その風土は、今なお脈々と受け継がれているところでございます。
 このような北東北の自然、文化、風土は、かけがえのない貴重なものでございまして、私たちはこれを守りはぐくみ、後世に引き継いでいく責務がございますので、私はサミットの際には、北東北を環境の世紀である21世紀にふさわしい圏域として、今後、内外に発信をしていくために地球的な視点から環境問題について考え、環境と人々の暮らしとのかかわりや環境と文化、環境と産業など幅広い分野で、青森、秋田両県知事と話し合いたいと、このように考えております。
 県では、平成10年度は、環境を最も重点を置く分野の一つに位置づけをいたしまして、環境共生・循環型社会の実現に向けた取り組みをスタートさせることとしておりますが、環境問題は私ども行政のみならず、民間や住民一人一人の取り組みが大切であると考えますので、こうした人たちとしっかりとしたパートナーシップを築きながら、今申し上げましたサミットの開催を初め、環境基本計画や自然環境保全指針の策定、ゼロ・エミッション、新エネルギーへの取り組みなど、さまざまな環境施策を推進して環境創造元年にふさわしい年にしてまいりたいと、このように考えております。
 次に、中山間地域の振興に向けた取り組みについてでございますが、中山間地域の活性化を図るためには、基幹産業である農林水産業を初めとする地域の特色を生かした産業の振興とあわせまして、道路などのいわゆる生活環境整備、保健・医療・福祉の充実、教育・文化の振興など、各分野にわたって地域社会の活力を維持増進していくことが重要であると、このように考えております。私は、こうした認識のもとに、まず第1に、誇りの持てる地域づくり、第2に魅力ある雇用の場づくり、第3に住みよい環境づくり、この3点を基本に据えてさまざまな施策を積極的に展開をしていきたいと、このように考えております。
 まず、誇りの持てる地域づくりにつきましては、すぐれた人材を確保することが大事でございまして、地域おこしマイスターの各地域への派遣や、生活改善グループの活動などを通じていわゆるリーダーを養成するとともに、高齢者ならではの知識と技能を生かした社会参加活動や、自然や伝統行事などを守り後世に引き継ぐ活動を助長するなど、地域住民の主体性を持った取り組みを支援してまいる考えでございます。また、地域の多彩な気象条件など、この平場にはない立地特性を生かした農林水産業の生産振興はもとより、消費者との交流を視野に入れた産直、企業等と連携した商品開発などによる地域資源の高付加価値化、女性の感性と技術を生かした起業家などを助長するとともに、都市住民などを対象とした滞在型のグリーン・ツーリズムの拠点づくりや、レクリエーション施設などの整備を進めるなど、地域の方々にとって魅力のある多様な雇用の場づくりを促進してまいりたいと考えております。さらに、周辺都市へのアクセス道路や高度な情報通信基盤、上下水道などの整備を進めるとともに、食生活の改善指導などのいわゆる健康づくり活動や診療所への医師派遣などによる保健・医療サービスの充実、家庭、学校、地域が連携した生涯学習環境の整備を図るなど、住みよい生活環境づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
 こうした施策の推進に当たりましては、一口に中山間地域と言っても、地域地域の置かれている条件や抱えている課題がそれぞれ異なっておりますので、地域の実情に応じたきめ細やかな対応が重要であると、このように考えております。したがいまして、県では、これらの施策を推進する指針として、新年度早々に岩手県中山間地域活性化対策推進プラン、仮称でございますけれども、このような推進プランを策定することとしておりますので、これに基づきまして全庁的な視点に立って、本庁とそして特に地方振興局が一体となりまして、広域的な連携や地域での取り組みにきめ細やかに対応しながら、中山間地域活性化対策を重点的にかつ効率的に推進をしてまいる考えでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長に答弁させますので御了承をお願い申し上げます。
   〔土木部長藤本保君登壇〕
〇土木部長(藤本保君) 宮古港とアクセス道路の整備についてでありますが、宮古港は昭和43年に藤原地区の岸壁整備に着手し、平成2年には現在の公共埠頭が完成しております。一方、国道106号は、昭和41年から昭和53年まで、現在に換算して約570億円の巨費を投じた大規模な改築工事を行い、県管理道路としては現在においても車両の平均走行速度が上位にあるなど、一定のサービス水準は確保されているものと考えており、沿岸部と内陸部の大幅な時間距離の短縮が図られているところであります。宮古港につきましては、これまで、港湾計画に基づき大型公共岸壁10バースが整備され、県内最大規模の港湾となっております。取り扱い貨物は、主に原木や鉱産品等のバラ貨物でありますが、最近の動向を見ますと、貨物の形態がコンテナに移行してきている中で、宮古港においても不定期ながらコンテナ船の寄港を見ているところであり、本県の新しい港湾物流の先駆けとして期待が寄せられているところであります。しかし、コンテナに対応した荷役設備の整備には多額な投資が必要であるとともに、その事業の導入には安定的な相当量のコンテナ貨物の確保と、そのための定期航路の誘致を図ることが必要であると考えております。したがいまして、まず、コンテナ貨物の確保が喫緊の課題であることから、地元宮古市の積極的な取り組みをいただくとともに、県といたしましても、市との密接な連携のもと、より一層広範なポートセールスに努めてまいりたいと考えております。
 また、国道106号については、これまでの整備により交流圏の拡大が図られたところでありますが、コンテナ輸送等の車両の大型化に対応するための橋梁の補強工事等を行い、現況の道路機能の向上を図っているところであります。本路線は、高規格幹線道路間を連結する広域的な肋骨道路であることから、現在、地域高規格道路として県及び国により3カ所で事業を実施しており、厳しい財政事情の中でも国の重点化施策として積極的に取り組んでおります。
 御指摘の達曽部道路につきましては、一部用地の協力が得られず、図らずも完成に時間を要しているものであります。本路線の抜本的な整備に当たりましては、膨大な事業費と相当な期間が必要となることから、港湾物流などの交通需要も踏まえ、順次、交通隘路区間の解消を図っていく考えであり、骨格となる高規格幹線道路とのネットワークが形成されるよう計画的に整備を進めてまいります。
   〔林業水産部長中村陽兒君登壇〕
〇林業水産部長(中村陽兒君) まず、リモートセンシングを活用した新たな水産情報システムについてでありますが、御承知のとおり、水産技術センターでは新しい水産技術の開発・研究を進めますとともに、漁業者の操業や養殖漁場の管理に役立つ水産情報の提供を行っております。例えば、魚の群れは潮境の近くに集まることが知られておりますので、水産技術センターでは、大船渡湾など6カ所に設置された自動観測ブイや調査船により、水温、塩分濃度、プランクトンの観測を行い、潮境がどこに形成され今後どのように変化するかなどを知るためのデータ処理を行っておりますが、現在のシステムでは、観測点が少ないことや漁業者への情報提供までの時間がかかることなどから、より広範囲で迅速な対応が求められております。このため、県といたしましては、平成8年度から先端技術の導入による水産情報の高度化を図ることを目的として、岩手大学の指導を得ながら、宇宙開発事業団と共同で人工衛星データ利用の技術開発に関するプロジェクト研究を行い、人工衛星による海面に係る種々の情報収集と漁業者への提供を行う新たなシステムの構築に取り組んでいるものであります。このシステムは、気象衛星ノアが観測した水温データを水産技術センターに設置する予定のパラボラアンテナで受信し解析した上で、本県沿岸沖合域の水温分布を沿岸地形や水深とともに、色の差や等温線によって一目でわかる画像情報として迅速に漁業関係者に提供するものであります。平成10年度は、パラボラアンテナを設置するなどの機器整備を行い試験運用を経て、平成13年度から本格的な運用を開始する予定となっておりますので、今後、漁業者はこれらの情報を漁協や漁業無線局を通じてファクシミリにより入手できるほか、インターネットにより直接画像情報を受信することも可能でありますし、また、地方振興局におきましても、水産業改良普及員を通じて情報の提供に努めてまいりたいと考えております。このシステムの導入により、漁船漁業におきましては、潮流の方向、潮境、冷水塊や暖水塊の配置等を読み取ることによって漁場探索が容易となり、また、回遊魚の来遊時期や漁況の推移などを予測することにより、効率的で計画的な操業や労働時間の短縮、燃料の節減など、生産性の向上が図られるものと考えております。また、養殖業におきましても、ホタテガイなどの天然採苗や種苗の育成、ワカメの病虫害の発生予測、収穫時期の判断など適切な養殖管理が行われることにより、品質のよい水産物の生産が可能となるものと考えております。
 次に、漁協漁業協同組合の合併の推進についてでありますが、漁協は、漁業者の協同組織として幅広い事業の実施を通じて漁業の振興や組合員の福祉の向上に寄与しているほか、漁業権の管理を中心とした資源や漁場の管理など広範な役割を果たし、地域の活性化に大きく貢献しているところであります。しかしながら、近年における漁協経営は、魚価の低迷等によります漁業全般の不振を背景に厳しい状況に置かれており、中でも信用事業につきましては、我が国金融改革の進展の中でこれに適切に対応することが急務となっております。また、漁協事業の中で、大きな割合を占めております販売事業につきましても、消費者における健康・安全志向、高鮮度志向など、食に対する価値観の多様化や流通経路の短縮化による低位価格供給を目指している量販店等大口需要者の動向に適切に対応するため、生産から加工、流通、消費までの各段階を総合的に視野に入れた新たな観点からの事業展開が求められておりますなど、漁協経営を取り巻く環境は大きく変化してきております。こうした大きな環境変化に適切に対応し、今後とも組合員の信頼と負託にこたえながら、水産物の安定供給を図るという、漁協が持っております社会的使命を十分に発揮していくためには、本県漁協組織の経営基盤の強化に向け、系統組織を挙げて事業統合や漁協合併の実現に取り組まれることが急務と認識しているところであります。このため、県といたしましては、まず信用事業の基盤強化のため、系統組織みずからが取り組んでいる漁協信用事業統合を積極的に支援してまいりたいと考えております。
 また、系統組織において検討が開始されております本県漁協合併構想の具体案の策定につきましても、漁業協同組合は、漁業者一人一人からなる協同組織であるとの基本認識のもとに、系統内部において合併による効果や合併後の漁協組織のあり方とその運営方法等につきましてオープンな議論を展開し、組合員及び各漁協の十分な理解のもとに意見の集約が図られますように積極的に指導してまいりたいと考えております。
 次に、養殖漁業に伴って発生するカキ、ホタテガイなどの貝殻の処理についてでありますが、これらは廃棄物の処理及び清掃に関する法律によって事業系一般廃棄物とされており、その処分は排出者である漁業者みずからが適正に処理すべきものとされております。しかしながら、現在、本県では年間7、000トンに及ぶ大量のカキ、ホタテ貝殻が発生しており、その大半は粉砕した後もしくはそのまま漁協の所有地等に野積みされているのが現状であります。この状態では、気象条件などによっては貝殻の付着物からにおいが発生するなど、周辺環境に与える影響が懸念されているところであります。貝類養殖に当たっては、常に一定量の貝殻が発生しますので、今後、カキ、ホタテガイの養殖振興を図っていく上で、これを適切に処理することが重要な課題と認識いたしております。このため、県といたしましては、漁業振興の観点から、平成10年度予算案に漁業系廃棄物再資源化システム開発促進事業を計上し、この新規事業におきましては岩手県漁業協同組合連合会が実施主体となり、行政と漁業関係団体の参画のもと、漁業系廃棄物の再資源化や処理方法等の検討を行うこととしており、この事業の実施によって地域に適したカキ、ホタテガイなどの貝殻等の処理システムの開発や体制づくりが図られるよう、指導してまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長佐藤孝司君登壇〕
〇商工労働観光部長(佐藤孝司君) ポリテクセンター釜石分所の存続問題についてでありますが、同センターは、昭和47年に雇用促進事業団が設置した職業能力開発施設で、平成5年に釜石職業能力開発促進センター、通称ポリテクセンター釜石と名称を変更し、平成9年7月1日に花巻市にあります岩手職業能力開発促進センターの釜石分所となったものであります。現在は、沿岸地域の離・転職者や在職者の中核的な職業能力開発施設として、地域に密着した港湾荷揚げや建設に用いる機械の操作員を養成する訓練等を行い、安定した雇用確保に貢献しているところであります。国におきましては、新たな時代に向けた行政の変化への対応を図るため行政改革を進めており、その柱の一つである特殊法人の整理合理化に関して雇用促進事業団の廃止、ポリテクセンターの合理的再配置等が平成9年6月6日に閣議決定され、センターの廃止はこれに基づくものであり、現状においてこれを覆すことは大変難しいものと理解しております。現在、センターの廃止後のあり方について雇用促進事業団、県、釜石市で構成する協議の場を設け相談するよう労働省の指導を受けているところでありますが、県といたしましては、センターの果たしてきた教育訓練の役割を評価しつつ、沿岸地域における職業能力開発機能の維持継続ができる方策について、関係者ともども連携をしてまいりたいと考えております。
   〔生活環境部長吉田敏彦君登壇〕
〇生活環境部長(吉田敏彦君) ツキノワグマの保護についてでありますが、ツキノワグマは我が国の代表的な大型哺乳類であり、平成元年度の調査では、本県には約1、000頭が生息すると推定されておりますが、全国的には生息環境の悪化などから生息数の減少が懸念され、西日本においては絶滅のおそれがあるとして環境庁の日本の絶滅のおそれのある野生生物、いわゆるレッドデータブックに地域固体群として掲載されております。また、国際的にも絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約により国際取引が規制されるなど、生物多様性確保の観点からの種々の保護対策が講じられているところであります。しかし、本県におきましては、近年、特に人間の生活域に出没し人的被害や農作物等に被害を与えるなどの問題も発生していることから、種の保護を図りつつ被害を防止し、地域住民との共生を期する必要があります。このため、従来実施している有害駆除に加え、明年度から学識経験者等で構成する検討会を設置の上、人間の生活域へのツキノワグマの出没防止を目的とした放獣技術の試験調査や、生息調査の一環として捕獲したクマに電波発信器を装着しての行動圏等の調査を行うほか、関係部と連携し、電気さく等により農作物被害防止システム確立のための実証事業を行うなど、適切な保護管理対策を進めてまいりたいと考えております。
 なお、人的被害を未然に防止するため関係者等と協議を進め、山林作業や山菜とり等の入山者に対し相応の対策を講ずるよう、注意を促すなどの普及啓発にも努めてまいりたいと考えております。
   〔教育長細屋正勝君登壇〕
〇教育長(細屋正勝君) 21世紀を担う青少年の教育についてでありますが、御指摘のように、最近、青少年の問題行動が続発していることはまことに憂慮すべきことと認識しております。これらの要因としては、大人社会のモラルの低下や有害情報のはんらんなど、子供を取り巻く社会環境の変化や少子化、核家族化が進行する中で、親の過保護や放任、子育てに対する親の自覚の不足など、家庭の教育力の低下等によるところも大であると考えております。家庭は、すべての教育の出発点であり、生涯にわたる人間形成の基礎を培う重要な役割を担っており、親子の信頼関係を築きながら親自身が確固たる信念を持ち、人間としての基本的な生活習慣や規範意識を身につけさせることが重要であると考えております。また、学校の課題としましても、時代が進むにつれてかつての教員が地域と一緒になって子供を育てるという意識から、今では学校で働くという意識に陥りがちになっているという点があります。学校においては、道徳の授業や各教科などあらゆる教育活動等を通して、生命の尊重、社会規範やモラル意識の体得、集団での人間関係形成など、倫理観の育成に努めることが大切でありますが、あわせて、指導する教員にも学校という制度の枠にとらわれず、今の子供をしっかりと見詰めて地域の教育を担うという広い視野を持たせながら、学校がより一層地域に開かれた学校となるよう指導してまいります。
 教育委員会としましては、今後とも、子供たちが人間として調和のとれた成長を遂げることができるよう、みずからを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性の育成を目指し、学校、家庭、地域の緊密な連携のもとに、心の教育を積極的に推進してまいりたいと考えております。
   〔警察本部長池田克彦君登壇〕
〇警察本部長(池田克彦君) まず、少年犯罪対策についてお答えいたします。
 御指摘のとおり、刑罰には応報的要素と教育的要素がございまして、可塑性に富む少年につきましては、その教育的な部分を重視するというのが現行の法制の考え方と思われます。しかしながら、そのような考え方が生かされずに、犯罪を誘発したりあるいは真実が究明されないということであれば、これはまことに遺憾だというふうに存ずる次第でございます。県警察といたしましては、厳しい少年犯罪情勢に適切に対処し、少年の健全育成を図っていくためにも、悪質な非行事案には厳しくという姿勢を少年警察運営の基本としております。
 その具体的中身でございますけれども、徹底した事案解明を行うこと。二つには、非行少年の更生のためカウンセリングを行うなど心のケアにも十分配意すること。保護者、学校及び関係機関と連携し、継続支援をすることなどでございます。
 議員御指摘のとおり、少年自身に悪いことは悪いということを認識させることは極めて重要でございますので、そのような点にも十分配意しながら適切に対応してまいりたいと考えております。
 次に、少年の社会参加活動についてでありますけれども、今申し上げました少年の心のケアに資するため、昭和30年代後半から柔剣道等のスポーツを中心に積極的に推進してまいりましたけれども、さらに地域における奉仕、あるいは文化・生産体験活動まで枠を広げまして、現在、県下全警察署で取り組んでおります。
 その内容は、各種施設での奉仕活動あるいは伝統芸能や地場産業の伝承活動などでございますが、この結果としまして、その後ボランティア活動に従事する者が出るなど、いい意味で少年たちを触発する結果となっていると承知しております。
 なお、少年の柔剣道大会につきましては、県大会さらには全国大会も開催されるようになっておりまして、柔剣道に励む子供たちにとりまして大きな目標になっているところでございます。
 最後に、宮古港におきますけん銃の摘発についてでございますが、これは昨日、宮古港に寄港いたしましたカンボジア船籍の船を宮古警察署と宮古税関支所が合同で立ち入りいたしましたところ、ガムテープ等に巻かれました隠匿されておる自動式けん銃3丁、回転式けん銃2丁、それからけん銃の実包81発を発見、押収したものでございます。
 なお、カンボジア船籍でございますけれども、乗組員は韓国人及びフィリピン人でございまして、現在だれがこのけん銃に関与したか、鋭意捜査をしているところでございます。日本の治安を根底から脅かす銃器及び薬物は、そのほとんどが海外からひそかに持ち込まれるものでございまして、最近の国際化の進展がその傾向に拍車をかけているというところでございます。県警察では、これに対処するため、関係機関と岩手県銃器薬物取締連絡協議会を結成いたしまして、水際での押収に努めているところでございます。
〇23番(船越賢太郎君) 1点だけに絞り教育長に再質問を申し上げます。
 経済再建問題に始まりあらゆる問題が山積みしておりますけれども、私は、すべての解決の根源は人間の教育にあると思うのであります。オウム真理教に集まった有名大学の秀才たち、大蔵官僚たちを初め、偏差値の高い階層たちの陸続とした汚職事件が後を絶たない世相に、大いなる日本国の前途に不安を感じるものであります。
 我々少年時代は、7尺下がって師の影を踏まずの教えでありました。恩師に馬乗りになってめった刺しにするなど、仰げば尊し我が師の恩と育てられた我々には、想像だにできないのであります。ある母親は、うちの子だけはと言い切れなくなったと述懐しております。また、若い世代の教員は、生徒が教師の言うことを聞くという前提が大きく崩れて授業にならないとも言っております。加害者の少年は、いまだ事件の重大さや深刻さを十分に理解していない、そして善悪の判断が不十分であると言われております。橋本首相も国会答弁で申しておりましたが、人権だとか自主性とか言う以前に、私は善悪の理非をまずもって幼児時代から教えるべきものと思うのであります。
 我が岩手県の風土は、薩長藩閥を是正した原家あり、第二次大戦の開戦に抵抗し、そして戦争終結に身を挺した米内光政あり、そして、太平洋のかけ橋たらんとする新渡戸稲造先生ありでございます。細屋正勝教育長、誇り高き岩手県人として、どうか大勇猛心を振起して、教育者としての総仕上げとも言うべき日本国再興のための道徳教育作興の大号令を全国に発信していただきたいのでありますが、もう一度、力強く頼もしい御答弁をお願いいたします。
   〔教育長細屋正勝君登壇〕
〇教育長(細屋正勝君) 道徳教育の振興についての再度の御質問でありますが、御案内のように、昨今の事件以来、国におきましては、中教審の中でも心の教育についてさまざまな角度から審議されておりますし、議員お話のような幼児期からの教育も強調されております。私は、岩手の将来を担う子供たちが健やかに育つ環境づくりというのは、やはり、学校・家庭・地域が一体となって知恵を結集し、今こそ議員お話のような善悪の理非など、倫理感や規範意識を徹底していかなければならないというふうに考えるものであります。
 今後、このような認識に立ちまして、学校・家庭・地域が連携し、それぞれ積極的にその役割を果たしながら、確かな実践を着実に重ねていくよう、道徳教育の振興を図ってまいりたいというふうに考えております。
〇議長(那須川健一君) 次に、斉藤信君。
   〔1番斉藤信君登壇〕(拍手)

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