平成10年2月定例会 第13回岩手県議会定例会会議録

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〇30番(藤原良信君) 自由公明友愛県民会議の藤原でございます。
 私は、会派を代表いたしまして、知事の県政運営の基本方針並びに当面する県政課題への取り組みにつきましてお伺いしたいと存じます。
 初めに、知事の時代認識と新しい総合計画についてお尋ねいたします。
 現在、我が国経済社会におきましては、バブル後遺症とも言うべき金融不安の増大など、経済構造そのものに起因する問題が多発しているほか、最近の中央省庁等の不祥事に見られるように、中央集権型の行財政システムの制度疲労が生じてきております。このように、現代は将来の方向が不透明な状況にあり、まさに時代の大きな転換期にあるとも言えますが、知事は、今の時代をどのように認識しておられるのか、御所見をお伺いしたいと存じます。
 また、このような転換期にあって、指導者は、しっかりとした時代認識を持ってリーダーシップを発揮することが必要でございます。しかしながら、それだけでは不十分であり、県民に夢を与えることができて初めて真の指導者たる資格があると私は考えるものでございます。きょうよりもあすはもっと幸せになれるという夢を県民に与える政策を果断に実行すること、それが知事が3年前にみんなでつくろうと呼びかけた夢県土づくりだったのではないでしょうか。県民一人一人があすに夢と希望を持って生き生きと暮らせる地域社会をこの岩手の大地に実現すること、すなわち知事の言うドリームランド岩手の実現こそがまさに今、期待されているのであります。現在、その夢を実現するため、21世紀の岩手を創造する計画となる新しい総合計画の策定に着手し、秋には中間報告を県民に示す予定とのことでございます。
 そこでお尋ねいたしますが、知事は、新しい総合計画の特色、すなわち県民にどのような夢を与える計画にしたいと考えておられるのかを含め、その進捗状況につきましてお伺いしたいと存じます。
 平成10年度当初予算についてお伺いいたします。
 我が国は、今や主要先進国中最悪と言われる膨大な公債残高を抱え、危機的な財政事情にございます。このため、平成12年度までに財政構造改革を集中的に進めることとしており、平成10年度の政府予算案は、一般歳出の対前年度伸び率がマイナス1・3%となっております。また、地方財政も国同様借金依存体質にあることから、その運営の指針となる平成10年度地方財政計画は一般歳出でマイナス1・6%の伸びと厳しい内容になっております。翻って本県財政について見ますと、今後、景気動向や国の財政構造改革の推進による影響などから、従来以上に厳しさが増すものと懸念されているところでございます。このため、県の行財政システムを変化の激しい経済社会情勢や新たな行政需要にも的確に対応できる地方分権時代にふさわしいものに改革していく必要があると思います。一方では、このような厳しいときにこそ、県民生活に密着した、県民に夢と希望を与える施策の展開が期待されているところでもございます。
 そこでお伺いいたしますが、国、地方を通ずる厳しく、極めてかじ取りの難しい行財政環境の中にありまして、当初予算の編成に当たっては大変御苦労が多かったと思うのでありますが、知事は、どのような基本的な考えのもとで平成10年度の予算編成を行ったのでありましょうか。また、特にどのような課題につきまして重点的に取り組もうとしておるのかお聞かせいただきたいと存じます。
 食糧費問題についてお伺いいたします。
 先般、発表されました食糧費の執行状況につきまして、全庁的な調査結果によりますと、平成4年度から8年度までの5年間で3万7、547件、約15億1、000万円を執行し、その約1割に当たる1億5、000万円余が不適正な支出であったとされております。私は、このような多額の不適正な支出があったことに対し驚きと失望を隠せないものであり、県政推進の一端を担う者として、まことに遺憾な結果であると言わざるを得ません。県では、外部委員による食糧費調査委員会を設置し、調査を行ったのでありますが、この調査委員会はどのような目的で設置され、どのような調査を行ったのでありましょうか、お示しいただきたいと存じます。
 また、適正、不適正の判断に至らなかったものが4、853件3億7、000万円余もあるようでございますが、この判断に至らなかった理由及び返還対象にしなかった理由についても御説明を願いたいと存じます。
 一方で、私は、いつまでもこの問題に対して時間を費やし、職員の県政推進に対する意欲がそがれ、県政が停滞するようなことがあってはならないと考えます。今回の不祥事につきましては十分に反省し、再発防止策を早急に確立することにより、失われた県民の信頼を一日も早く回復することが肝要であります。
 そこで、知事の食糧費執行の適正化に向けた改善方策につきまして、そのお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
 エネルギー問題についてお伺いいたします。
 昨年12月に地球温暖化防止京都会議が開催され、我が国におきましては、二酸化炭素、メタンなど6種類の温室効果ガスを2008年から2012年までを目標年次といたしまして1990年レベルから6%削減することとされ、今後、抜本的な対策が求められておりますのは御承知のとおりでございます。中でも、地球温暖化の主な原因と言われる二酸化炭素は、その9割を占めていると言われているエネルギー消費の着実な伸びに伴い、年々排出量が増加する傾向にございます。このため、省エネルギーの一層の推進とあわせて、新エネルギーを積極的に導入することが重要な喫緊の課題となっております。時あたかも、本県におきましては、新エネルギーの導入を促進するための指針となる新エネルギービジョンを策定中でございます。地球環境問題の解決に貢献する意味からも、ぜひ本県の立地特性を生かした地熱、クリーンなエネルギーである太陽光や風力などを活用した発電について積極的に導入する方向で策定すべきと考えますが、いかがでしょうか。あわせて、平成10年度の具体的な取り組みについてもお伺いしたいと存じます。
 次に、広域行政の推進についてお伺いいたします。
 地方分権はいよいよ実行段階に入っております。中央省庁主導型の縦割り、画一的な行政システムから、自治体主導の個性的で総合的な行政システムへの転換が図られようとしておるのであります。新しい行政システムにおきましては、特に、住民に身近な市町村は、みずからの判断と責任のもとに、より高度の行政サービスを提供していかなければなりません。しかし、現在の市町村の行財政の状況では、例えば平成12年度から施行される介護保険など、高度化する行政需要に単独で十分対応できるかどうか不安を持っている市町村もあると言われており、また、交通、通信手段の発達に伴い、市町村の区域を越えて住民の日常生活圏が拡大してきてもおります。このような状況の中で、市町村におきましては、自主的合併や広域連合などの広域行政を視野に入れながら、住民、行政が一体となって新しい時代におけるまちづくりを真剣に考える必要があると存じます。最近、全国的に広域連合の設立が見られる中で、本県におきましても気仙地区の4市町が年度内に本県初の広域連合を設立する運びとなりました。私は、これを高く評価しているものであります。関係自治体の英断と県の指導に心から敬意を表するものでございます。同時に、この気仙広域連合が他の地区の模範となるよう、円滑な事業運営に向けた県の支援が必要であると思うものでもございます。
 そこで、この気仙広域連合の設立の意義をどのようにとらえておられるのでありましょうか。また、市町村合併や広域連合などの広域行政の推進に向け、市町村等へどのような支援をしていかれようとしておられるのか、知事の御所見をお伺いしたいと存じます。
 次に、介護保険制度の受け皿づくりについてお伺いいたします。
 県は、これまで高齢者福祉の一環として、ホームヘルプサービスの促進、老人デイサービスの拡充など、いわゆる在宅福祉サービスの充実や特別養護老人ホームの整備など施設福祉の充実に努めてこられたところでございます。一方、昨年12月に介護保険法が成立いたしました。あわせて医療法が改正されました。高齢者の福祉、医療を取り巻く環境は大きく変化しようとしているのであります。
 改正医療法によりますと、これまで病院だけに許可されていた長期療養を目的とした療養型病床群が診療所におきましても設置できることとなりました。このような点を含めて、本県における介護保険制度の受け皿としての療養型病床群の整備につきまして、どのようにお考えになっておられるのかお伺いしたいと存じます。
 次に、農業の振興方策と新たな基本法への対応についてお尋ねいたします。
 現行の農業基本法が制定された昭和36年は、高度経済成長が始まったときであります。いわゆる農業の発展と農業従事者の地位向上の実現を目指した当時と比較いたしますと、現在の農業を取り巻く環境は大きくさま変わりをしております。まさしく隔世の感を禁じ得ないところでございます。この間、経済の国際化の進展に伴い農産物の輸入がますます増加し、その結果、我が国の食糧自給率は、主要先進国中例のない最も低い状況にあります。加えて、中山間地域を中心に担い手や農業労働力が減少し、高齢化が進行するなど、さまざまな課題がまた山積しております。
 このような課題に対応するため、今まさに新時代における我が国農業のあり方が論議され、新たな基本法の制定に向けた検討が進められているものでございます。本県におきましても、昨年4月に新基本法に向けた岩手県農業・農村対策検討会議を設置し、国に対する意見、提言を取りまとめることとしております。私は、その成果を大いに期待しているものでございます。
 そこで、知事は、本県農業の振興方策についてどう認識されておりますか、新たな基本法の制定に向けてどのような要望を行おうとしておられますか、お伺いいたします。
 次に、林業の振興についてお伺いいたします。
 本県は、森林所有者に対する積極的な支援による造林の拡大とあわせ、県みずからも県行造林の推進に努めてまいりました。そして、先人の努力もございました。その結果、民有林の人工林面積は北海道に次ぐまさに34万ヘクタールに達しております。県行造林におきましては5万ヘクタールと、全国第1位の規模となっております。御承知のとおり、その昔、この県庁の建物は県有林の売却代金で建てられております。そして、今まで蓄積された我が県の県有林等々は年々着実に増加し、我が国の木材供給基地として大いに期待されているところでございます。しかしながら、本県の林業を取り巻く情勢は、木材価格の低迷に加え、労賃等経営コストの上昇、山村の過疎化や高齢化の進行により森林所有者の経営意欲が減退し、林業生産活動が停滞するとともに、管理が不十分な森林が増加するなど、極めて厳しい状況にございます。一方、先ほども触れましたが、昨年12月の地球温暖化防止京都会議におきましては、二酸化炭素削減のため、植林等による森林整備の重要性が世界的に確認されたところでございます。私は、今こそ快適な県民生活の維持向上を図る上で、これは県財政並びに県民所得の向上にもつながりますけれども、環境保全や治山、治水などの面で森林及び林業の果たしている役割や価値を評価し直すことにより、森林の整備充実を初め、林産業、そして特用林産物の生産を振興し、山村の活性化を図る必要があると考えるものであります。
 そこで知事は、今後、本県林業を振興するため、どのように取り組んでいこうとしておられるのか御所見をお伺いいたします。
 漁業の振興と漁協組織の強化についてお尋ねいたします。
 漁業は、国民の動物性たんぱく質の約半分を供給している重要な食糧産業であると同時に、水産加工など関連産業におきましても多くの雇用の場を提供し、まさに沿岸地域の基幹産業となっております。しかしながら、近年における漁業及び漁協経営は、秋サケに代表されるような魚価の低迷や漁業資源の悪化などにより、大変厳しい状況にございます。特に、漁協信用事業につきましては、早期是正措置の導入など、我が国金融改革の進展に適切に対応していくことが急務となっております。また、水産物の流通に関しては、市場外流通や産直販売など消費者ニーズの多様化に応じたさまざまな取り組みがまた求められているものでもあります。私は、こうした環境変化に的確に対応し、21世紀におきまして、漁業が今後とも十分にその社会的な役割を果たしていくためには、その担い手である漁業者やその後継者が夢と希望を持って取り組めるような足腰の強い漁業の振興を図ることが重要であり、また、漁協につきましては、地域の漁業生産の中核的な役割を担う組織として経営基盤を強化する必要があると考えるものであります。
 そこで、お伺いいたしますが、県では、今後、本県漁業の振興と漁協合併を含めた組織強化のため、どのように取り組んでいかれようとしておられるのかお示し願いたいと存じます。
 最後に、三陸縦貫自動車道の整備につきましてお伺いいたします。
 高速交通体系の確立、特に高規格幹線道路網の整備は、県土の有効利用と均衡ある発展を図る上で必要不可欠な条件でございます。特に、三陸沿岸地域の振興のためには、三陸縦貫自動車道の早期整備が肝要でございます。現在、建設省におきましては鋭意その整備が進められておりますが、全線開通にはなお相当な時間を要するものと予想されております。
 そこで、今後の見通しと県の取り組みについて、まずもってお伺いしたいと存じます。
 また、本自動車道の大船渡三陸道路のうち、新三陸トンネル約3・1キロメートルが平成5年3月に供用されております。続いて、仮称でございますけれども、大船渡インターチェンジまでの工事が完成間近と伺っているところであり、関係当局のこれまでの御努力に対し心から敬意を表したいと思います。つきましては、地元住民の一日も早い開通を願う声にこたえるために、三陸縦貫自動車道のネットワークが形成された暁には有料道路として供用されるとしても、当面の措置として、新三陸トンネル区間と同様に無料で早期に供用されるよう、県としても地元市町村と一体となって国に働きかける必要があると考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 以上をもちまして、私の質問を終わらせていただきます。御静聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 藤原良信議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、現在の時代認識についてでございますが、21世紀を目前にした今日、人々の価値観、生活様式が大きく変化するとともに、地球時代、人口減少・高齢化時代、高度情報化時代が本格的に到来しつつあり、こうした動きに対応した社会の新しい仕組みづくりが求められていると、私はこのように認識いたしております。一方、岩手には、先人が守り、はぐくんでまいりました多様な自然や風土などの、いわば日本の心とも言える良質な部分がしっかりと残されておりまして、21世紀の新たな価値観に対応した、品格のある地域社会を形成する無限の可能性を秘めているところでございます。
 私は、このような認識のもとに、新しい総合計画において、こうした岩手の可能性を最大限に引き出し、県民が将来に夢や希望を持てる明確なビジョンを示してまいりたいと考えております。
 計画策定の進捗状況につきましては、先般、総合計画審議会の第1回起草委員会を開催いたしまして答申の構成や岩手の可能性などについて検討を行ったところでありまして、今後の審議会における検討状況を踏まえながら、本年秋の中間報告に向け、鋭意、策定作業を進めてまいりたいと考えております。
 次に、平成10年度予算の編成についてでございますが、本県の財政を取り巻く環境は今後とも一層厳しさを増すことが見込まれる中にありまして、県の行財政システムを変化の極めて激しい現下の経済社会情勢や新たな行政課題にも的確に対応できるような機動的で効率的なものに改革していくことが肝要であると考えておりまして、平成10年度の当初予算は、その実行のための予算と、このように位置づけをいたしまして、前例にとらわれない新たな視点に立って編成作業を進めたところでございます。
 具体的には、あらかじめ県財政の今後の推移と平成10年度予算の適正規模をとらえるために本県財政の中期的な見通しを策定いたしましたほか、事務事業の評価制度の導入によりまして徹底した歳出の縮減と合理化を図る一方で、窓口事務の改善など県民サービスの向上にも配意しながら、医療費助成や保育施策の拡充など福祉施策の充実を図るとともに、国の公共事業費縮減の中にございましても、住宅、下水道などのいわば県民に身近な基盤の整備など、優先度と緊急度が高いと、このように判断いたしました施策については重点的な配分を行ったところでございます。
 また、時代の潮流を見据えた重点的課題であると考えております環境との調和と保全、次代を担う人材の育成、地域情報化の推進、地域産業の高度化の推進、この4点に関する施策につきましては特に優先的に措置いたしましたほか、複雑多様化する行政課題に総合的に対応するために、県庁の部局横断的な課題への全庁的な取り組みを行うなど、限られた財源の効果的な活用に努めたところでございます。
 次に、食糧費の調査委員会の設置目的と調査内容についてでございますが、この調査委員会は、県が行います食糧費の執行に係る調査に関して、第三者の立場から助言、提言をいただきたいと、このような趣旨で設置したものでございます。この調査委員会は延べ7回開催されまして、平成4年度から8年度までの5カ年度分の食糧費の執行状況について、県が行った調査に係るその方法や内容などを審議いたしたものでございます。この間、県の調査、取りまとめ内容を集中的かつ効率的に審査、点検をするために、複数の委員の出席によります審査会を委員会とは別に延べ12回開催いたしまして、調査担当職員からの聞き取りや個々の実施伺、そして、支出関係書類などの抽出調査などを通じまして、厳正な審査、点検を行っていただいたところでございます。
 次に、食糧費執行状況調査についてでございますが、この調査におきましては、可能な限りの調査を行うという考えのもとに、支出関係書類の保存期限でございます5年間にさかのぼって調査をすると、こういうことといたしまして、具体的には平成4年度から平成8年度までの食糧費について対象としたところでございます。しかしながら、懇談の日時、場所、出席者などが記載されております実施伺という書類の保存年限は文書取扱規程により各課長などが定めると、こういうこととなっておりまして、現実には2年から5年と、このようになっておりまして、その保存年限が経過したことによりまして、詳細不明のものが相当数ございました。これらを補完するために当時の関係者からの事情聴取や他の関係書類の確認を行うなど、可能な限りの調査を行ったところでございますが、支出の事実は確認できたものの、現実の出席者の特定ができずに具体的な確認の方途を講じ得なかったことから、適正、不適正の判断を行えなかったものが御指摘のとおり4、853件3億7、790万円余あったものでございます。これらにつきましては、まさに適正とも不適正とも判断し得なかったものでございまして、したがいまして、不適正なものと判断し得たものについては当然返還を行うこととしたところでありますが、これと同様の取り扱いを行うことは適当ではないと、このように考えたものでございます。
 次に、食糧費執行の適正化に向けての取り組みについてでございますが、このたびの不適正な事務処理が行われておりました要因といたしましては、いわゆる公金は県民からお預かりいたしました貴重な税金に基づくものであるという意識に欠けるところがございまして、安易に前例を踏襲するなど、公費の支出に対する基本的な認識が欠如し、食糧費の執行に係る取扱方針及びチェック体制の不備、そして管理監督者の指導上の問題があったものと、このように考えているところでございます。このため、公務員倫理の確立と職員の意識改革を図りまして、チェック体制の充実強化を行いますとともに、情報公開の推進に努めまして、さらには、既に制定いたしました食糧費執行要領に基づき、より一層適正な食糧費の執行を行うなど、これらの改善方策を着実に推進して事務の公正な執行と透明性の確保を図り、一日も早く県民の皆様の信頼を回復するよう努めていく考えでございます。
 次に、太陽光発電や風力発電の導入の方向と平成10年度の取り組みについてでございますが、地球環境問題などへの対応といたしまして、新エネルギーの導入や省エネルギーの推進が求められているところでございます。このため、行政、事業者、県民がそれぞれの立場で積極的に取り組んでいく必要がございまして、この中で、県は先導的な役割を果たしていかなければならないと、このように私は考えております。
 新エネルギーにつきましては、現在、県におきましてそのビジョンを策定中でございますけれども、本県が日照や風況に恵まれた地域を数多く有していることから、これらの地域特性を生かし、太陽光発電や風力発電の積極的な導入を進めてまいる考えでございます。
 平成10年度は、工業技術センターの敷地内に建設中の先端科学技術研究施設に太陽光発電を導入いたしますとともに、環境との調和に配慮し、岩手山の8合目避難小屋に太陽光と風力を組み合わせた発電施設を設置することといたしておりまして、また、市町村や事業者によります風力発電の積極的な導入を促進するため、特に有望と思われる地域について、現地での風況調査を実施していく考えでございます。
 次に、広域行政の推進についてでございますが、市町村の区域を越えたさまざまな行政課題に対応するための有効な方策といたしまして、広域行政の推進はまさに今の時代の要請であると、このように考えております。また、それぞれの市町村が従来の行政単位の枠を越えてさまざまな連携・交流を展開し、各地域がその特性を発揮しながら総体として発展していくことが分権時代のあり方として望ましい姿ではないかと、私はこのように認識しているところでございます。
 このたび、気仙地区におきまして、この3月にも広域連合を設置する運びとなったことは、4市町がそれぞれの地域の特性を生かしながら、広域的な観点に立ち、地域振興や行政サービスの提供を行っていこうとする積極的な行政姿勢のあらわれということを考えておりまして、分権時代における地域づくりを進めるための先駆的な取り組みとして高く評価できるものと、このように考えております。
 県では、今回、広域連合を初め、市町村合併などの広域行政が市町村の自主的な取り組みとして一層促進されますように、ふるさと市町村圏基金の造成に対する補助を行いますとともに、新たに自治振興基金に広域行政推進事業分として無利子及び低利の長期貸付枠を設けることとしたところでございます。さらに、広域行政に関する本庁組織の充実を図るとともに、各地方振興局におきましても、広域行政相談コーナーを設置いたしまして地域の実情に即した情報提供や助言を行うなど、積極的な支援を行ってまいりたいと考えております。
 次に、療養型病床群の整備についてのお尋ねでございますが、長期療養患者を対象といたします療養型病床群は、昨年12月に成立いたしました介護保険法におきまして施設介護サービスの一つとして位置づけられるとともに、改正されました医療法により、診療所にも設置できることとされたところでございます。診療所の療養型病床群は病床規制の対象とされておりますけれども、病床過剰地域においても、一定の要件のもとに設置を認めるかどうかについて国の審議会において近く結論が出されることとなっているところでございます。
 県では、この3月、新しい保健医療計画の策定につきまして医療審議会の方に諮問し、国の政省令などを踏まえまして、平成11年2月までに保健医療圏ごとの療養型病床群の整備目標などを定めますとともに、介護保険事業支援計画にもこれを反映させることといたしておりまして、これらの計画に基づき、医療関係団体の理解を得ながら、積極的に病院や診療所における療養型病床群の整備、転換を進めていく考えでございます。
 次に、農業の振興方向と新たな基本法への対応についてでございますが、本県農業は県経済の基幹をなす重要な産業でありまして、今後とも一層の振興を図っていくためには、経営感覚にすぐれた農業者の育成確保や革新技術の開発普及、さらには、農業生産基盤の整備などにより体質の強い農業を確立するとともに、消費者の視点も踏まえた総合的なマーケティング戦略を展開していくことが肝要であると、このように私は考えております。
 こうした認識のもとに、県では、新たな基本法の制定に向け、農業経営体の安定化の支援や消費者に信頼される食糧の安定供給、農業・農村の総合的整備、さらには、農村地域の活性化などに視点を当てながら、農業政策の全般につきまして検討、見直しを進めてきているところでございまして、本県農業が将来にわたって発展していけますように、国内農業生産の位置づけの明確化や条件の不利な中山間地域に対する直接所得補償措置の導入などについて国に要望していく考えでございます。
 次に、林業の振興についてでございますが、本県は北海道に次いで全国第2の広大な森林を有しておりまして、その蓄積量も着実に増加してきており、21世紀における我が国の主要な木材供給基地としての地位を確立するための基盤づくりが今日における本県林政の基本的課題であると、このように認識しております。このため、いまだ育成途上にございます本県の森林資源を適正に整備するためには間伐対策を推進することが重要でありますことから、平成10年度、すなわち来年度、新たに水土保全森林緊急間伐対策事業という新しい事業を導入いたしますとともに、林道など路網の整備による林業生産基盤の整備並びに公共施設の木造化などによる県産材の需要拡大策に引き続き取り組みますほか、本県の豊かな広葉樹資源を活用したシイタケ生産の主産地化や日本一の炭の里づくりを積極的に推進していくこととしております。
 県では、今後とも全国に誇る無限の可能性を秘めました本県の森林資源を最大限に生かし、林業の振興と山村地域の活性化を図っていく考えでございます。
 次に、本県漁業の振興と漁協組織の強化についてでございますが、本県漁業は、県民に対する豊かな魚食文化の提供と沿岸地域の活性化を図る上で重要な役割を担ってきているところでございます。
 このため、県におきましては、ワカメ、ホタテガイなどのつくり育てる漁業の一層の推進に努めますほか、新たにマツカワ、ヒラメなどの魚類栽培事業に着手することとしております。また、他県産水産物との差別化を図りまして、新鮮で安全な三陸岩手の水産物を安定的に供給していくために、他県に先んじまして水産業への新しい衛生・品質管理方式いわゆるハセップ方式と、このように呼んでおりますが、このハセップ方式の導入に取り組むなど、多様な施策を積極的に展開していく考えでございます。
 さらに、漁協組織の強化につきましては、金融環境の大きな変化に対応して、金融面から漁業を支えている系統信用事業の基盤強化のために、系統団体みずからが取り組んでいる信用事業統合を支援いたしますとともに、系統組織において検討が開始されました本県漁協合併構想の具体案の策定につきましても、系統内部での十分な議論を踏まえ、意見集約が図られるよう積極的に指導してまいりたいと、このように考えております。
 次に、三陸縦貫自動車道の整備についてでございますが、本県では現在4区間が事業化されておりまして、そのうち、大船渡三陸道路及び山田道路においては本格的な工事が行われており、その進捗率はそれぞれ約60%となっております。県全体の整備延長が約102キロメートルと膨大でございますことから、より一層の整備促進と、部分供用によりまして早期に効果が発揮されるよう、現在、国に強く働きかけているところでございます。
 なお、大船渡三陸道路は、およそ1年後の平成10年度末には、既に供用されております区間に続きまして、仮称でございますが、大船渡インターチェンジまでの間約6キロメートルの完成が見込まれているところでございます。この道路は、県といたしましては、三陸縦貫自動車道のネットワークが形成された際には有料道路として供用されるものと現時点では認識しておりますが、この道路の果たす役割から、現在供用しております新三陸トンネル区間と同様に、当面の措置といたしまして無料で早期に供用されるように、地元市町村とともに引き続き要望活動を進めてまいりたいと、このように考えております。
〇議長(那須川健一君) 次に、谷藤裕明君。
   〔21番谷藤裕明君登壇〕(拍手)

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