平成10年9月定例会 第15回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(谷藤裕明君) 自由民主党・県民クラブの谷藤裕明でございます。
 請願陳情のうち、受理番号第5号消費税の減税を求めることについての請願並びに第8号消費税を3%に戻し、食料品非課税を求めることについての請願に関し、これを採択し、意見書を発議するとの吉田総務委員長の報告に対し、これは、請願内容について詳細に検討する必要があり、継続すべきとの立場から討論いたします。
 そもそも消費税の3%から5%への引き上げは、平成7年度から先行実施した所得税、個人住民税の制度減税におおむね見合うものとして、平成6年9月11日、村山内閣時に国会で法定され、平成9年4月から実施されたものであります。この増減税一体の税制改革は、少子・高齢化の進展など、我が国の構造変化に税制面から対応するものであり、我が国の将来を考えたとき、極めて重要な改革であったわけであります。このことについては、大方の同僚議員も御了知いただいているものと思います。
 ところで、第5号及び第8号について、請願者の願意を委員会として確認する時間的余裕を与えられなかったのは残念でありますが、私なりに要約すれば、今日の不況は消費不況であり、したがって、これを回復するために、消費税を3%に戻すこと及び食料品を非課税にすることとなりましょうか。確かに、現在の経済状況は国民に深刻な陰を落としており、この不況から一日も早く脱却すべきと考えておりますが、そのためには消費税率のみを云々するのではなく、日本全体の構造、例えば産業構造、金融構造、行財政構造など、我が国の構造全体を論及し整理していかなければならない問題であると認識するものであります。
 請願陳情第8号の請願の趣旨には、かつてない深刻な不況による経済的危機の最大の原因は消費税率の引き上げ等云々と述べておられますが、確かに消費税が5%に引き上げられた後の平成9年4月の消費動向に着目いたしますと、民間最終消費支出は、平成9年4月から6月期には、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動のため落ち込みましたが、7月から9月期には、前年同期と比べプラスに転じ消費は持ち直しておりました。したがって、昨年秋以降、民間消費が著しく低迷した原因は消費税率の引き上げとは別個のものであり、アジアの通貨金融不安、我が国の金融機関の相次ぐ経営破綻やいわゆる貸渋り問題など、国内外の悪条件が一斉に重なる中で、家計や企業の先行きに対する不安感が広がり、国民の消費意欲が減退しているとの指摘もあり、こうした意見に対し、請願者の方々のお考えを確かめたかったところでもあります。
 また、消費税5%のうち1%は地方消費税であり、残る4%分から地方交付税に回る分4%分のうち29・5%を加えると、消費税収全体の43・6%は地方の貴重な財源となっております。
 そもそも消費税は、物やサービスの価格の一部として日々の経済活動の中に溶け込んでおり、一時的な景気対策として短期間のうちに税率を上げ下げすることは、経理システム、自動販売機、プライスカードや商品カタログの再変更に伴うかなりの社会的経済コストを発生させ、これが価格にはね返り、健全な経済活動を阻害するといったような指摘もされておるところであります。
 また、消費税の税率を変更するとすれば、相当の周知期間、準備期間を設ける必要がありますが、税率引き下げ実施までの間に、自動車、住宅、家具、家電などの耐久消費財に相当の買い控えが発生することにより、急激に大きく消費が落ち込むといった予想がされております。
 また、食料品について、消費税を非課税とすることについては、消費一般に広く公平に負担を求める消費税の基本的性格に反することになり、どのような範囲の食料品を非課税にするとか、合理的に線引きを行うのが難しいだけではなく、食料品が非課税となっても、農機具や農薬などの仕入れにかかった消費税はなくならないため値段が十分に下がる保証はなく、逆に価格競争上、値段を相当下げざるを得ない場合には、農家が仕入れにかかった消費税額を負担することにもなりかねないとの論評もあります。この指摘が正しいとすれば、農家に対する打撃は大きなものと考えられます。また、国内産食料品については、仕入れに消費税がかかるのに対し、輸入品は全体が非課税になってしまうため、価格競争上、国内産品が輸入品よりも不利になってしまい、国内農家にこれまた深刻な打撃を与えかねないといったさまざまな問題が指摘されているところでもあり、これらの問題を内包する両請願については、慎重に審議検討されるべきであると考え、請願陳情受理番号第5号並びに第8号はこれを採択し、意見書を発議するとの委員長報告に対し、反対するものであります。
 議員各位の御理解と御賛同を賜りますよう、継続審査されますようお願いいたしまして、反対討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(那須川健一君) 次に、佐々木一榮君。
   〔5番佐々木一榮君登壇〕(拍手)

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