平成10年9月定例会 第15回岩手県議会定例会会議録

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〇19番(渡辺幸貫君) 自由公明県民会議の渡辺幸貫でございます。
 岩手で生まれ、岩手で学び、岩手で暮らすことにしみじみとした幸せを感ずることができるようなふるさとづくりを目指し、慈愛に満ちた心にしみ入る工藤前知事の言葉がもう聞けないと思うと、深い寂しさを感じ、哀悼の誠をささげます。そして、そのバトンを受け、精力的にくまなく県土を歩き、お父様譲りの肩のリュックに県民の声を詰め込んで努力される増田知事に、大きな期待を寄せたいと存じます。
 それでは、通告に従い順次質問をいたしますので、よろしくお願いいたします。
 初めに過疎対策についてお尋ねします。
 現在の過疎対策は、過疎地域活性化特別措置法、いわゆる過疎法により推進されておりますが、これは人口の著しい減少に伴って地域社会の活力が低下し、生産機能、生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある地域について、その活性化を図り、地域住民の向上、雇用の増大、地域格差の是正を図ることを目的として平成2年に制定されたものであります。
 振り返ってみますと、高度経済成長に伴って深刻な問題となった過疎問題に対処するため、昭和45年制定の過疎地域対策緊急措置法を端緒に、昭和55年制定の過疎地域振興特別措置法を経て現行の過疎法に引き継がれ、この間約30年にわたり、国、県、市町村が一体となって各般の施策を展開してきたわけであります。これまでの過疎対策については、平成10年7月に国土庁が作成した過疎対策の現況によって、その成果及び現状等の過疎地域の実態が明らかにされております。それによりますと、過疎地域の人口動向でありますが、平成7年の国勢調査によれば、全国の過疎地域市町村の5年間の人口減少率は4・7%と人口の減少が続いています。これは、その前の平成2年国勢調査と比較すると、減少率は鈍化する傾向にありますけれども、過疎地域においては若年層の流出が引き続いていることから、地域の担い手ともいうべき青壮年層の割合が低く高齢者の割合が高いというゆがんだ人口構成となっているものであります。
 生活環境については、学校施設などの公共施設や市町村道の整備について相当程度改善されてきておりますが、水道の整備や下水道などの生活排水関係施設などについては、まだ格差が見られるところであります。同時にまた、これらの生活環境整備を推進する市町村の財政につきましても、全国市町村の平成8年度の財政力指数の平均が0・42であるのに対し、過疎市町村の平成8年度の財政力指数の平均は0・20と、半分の力もないという状況であります。本県におきましても、過疎地域の市町村長は、地域住民の生活の向上を目指して、産業の振興、教育、医療、福祉などの諸課題に懸命に取り組んでまいりました。しかしながら、これまでの努力にもかかわらず、本県の過疎地域の実情は、全国と同じような状況にあるのではないでしょうか。
 私は、本県の面積の40%を超える24の過疎市町村の将来を左右する過疎対策は、県土の均衡ある発展を図る県政推進上からも極めて重要な課題であると考えるものでありますが、現行の過疎法は、平成11年度、つまり来年度をもって期限切れになり、ポスト過疎法への取り組みがぜひとも必要であると考えております。
 そこでお伺いしますが、県では本県の過疎地域の現状をどのように認識しておられるのでしょうか。また、現行法の期限切れを間近に控え、ポスト過疎法に対する県の取り組みについてお尋ねいたします。
 次に、市町村財政の動向についてお伺いいたします。
 最近の地方財政は、景気対策や減税の実施などのために地方債の発行を増加させてきたことに伴って借入金残高が急増し、平成10年度末の地方全体の借入金残高の見込みは160兆円余という膨大な金額に上り、今後この元利償還金が大きな圧迫要因になるなど、極めて厳しい状況にあります。本県の市町村も同様な実情にありますが、県内市町村においては、これまで国の景気対策が実施された場合などは、その機会をとらえておくれている社会資本の一層の整備充実を図るべく、公共事業の拡大を積極的に行ってきたものと理解しております。しかしながら、一方では、自主財源に乏しい事情から、これらの事業の財源の多くを地方債に依存せざるを得なかったところであり、この結果、地方債残高は年々増加し、県内59市町村の地方債残高は、今年度末には、経済対策等の積み残しなどもあって7、000億円を超える見通しと伺っております。
 また、財政指標なども年々厳しさを増しており、財政の健全性の観点から懸念を持つものであります。今、長引く景気低迷の中にあって国を挙げて対策に取り組んでおりますが、市町村によっては、国や県と呼応して景気浮揚のための経済対策を実施しようにも、財源措置の面で慎重にならざるを得ない団体もあるのではないかと思います。市町村は今後、介護保険などの新たな施策や地方分権に向けた整備など、重要課題への一層の取り組みが期待されており、財政需要がますます増大していくものと考えられます。国においては、財政構造改革を一時凍結して経済対策に全力を傾注しているところでありますが、財政力が弱く財源が乏しい本県市町村の場合は、地域経済のため積極的にこれに対応しながらも、一方では財政の健全化への努力も欠かせないものと考えます。県としては、現在の市町村の財政状況をどう認識しておられるのでしょうか。また、財政の健全化のために市町村に対してどのような助言・指導を行っていく考えであるのか、御所見をお伺いします。
 次に、介護保険制度についてお伺いします。
 介護保険の平成12年4月導入に向けた準備が本格化し始めております。今月20日には、要介護等高齢者一人一人の介護サービス計画をつくる専門家、介護支援専門員の認定試験が、また本日からは、高齢者にどの程度の介護が必要かを認定する事業の試行が全市町村で始まりました。介護サービスは十分に提供されるのか、保険料はどの程度かなど、いまだ不透明な部分も多く、制度が施行した暁には、利用者の急増により余分なところは削って必要なところに振り向けなければ、ホームヘルパーも足らず、費用がかさんで保険料が上がるのではないかと不安な気がいたします。
 県内のホームヘルパーの資格者は、県実施分の研修終了者が延べ1、150名、県内の各種団体が知事の指定を受けて実施した研修終了者が4、639名で、合計5、789名でありますが、県が平成6年2月に策定した老人保健福祉計画の進捗状況によれば、県内の平成9年度末のホームヘルパー数は、実人員ベースで1、280人、常勤換算ベースで848人となっており、平成11年度の目標1、200人に対し70・7%の進捗率となっています。今後、早朝、夜間などのホームヘルプサービスを効果的に実施するためのチーム運営方式の促進や、全国で現在122市町村しか実施していない24時間対応サービスを本県で実施するとすれば、未就業のホームヘルパーの活用を図る事業の実施が期待されます。特に、県内市町村によっては、人的に100%目標を達成した市町村と、30%台の充足率の市町村とかなりの格差がありますが、県は今後どのように市町村を指導されるか、お考えをお尋ねします。
 また、介護保険においては、介護サービスを提供する事業者は、市町村のほか、社会福祉協議会や福祉公社、民間事業者などさまざまですが、県では、どのようなサービス提供体制が望ましいものとして市町村を指導していかれるのか、その方向性をお示し願います。
 辣虱 馬の尿する 枕もと 松尾芭蕉の句で有名な山形県最上町では、ここ10数年、保健、医療、福祉に関する施設を充実して、ウェルネスタウンとしてPR、老後は最上町でと毎年200人もの転入者があるのは、福祉関連で雇用がふえたことと、介護を基準に自治体の優劣をはかり、その結果、評価の高い最上町に移る人が多くなったためとのことです。湿りがちな観光やグリーンツーリズムより、福祉関連で過疎の町の活性化というキャッチフレーズは、私たちにとって、高齢化の進む岩手にとって魅力的であります。本県でも幾つかの自治体がそのような町に育ってほしいと思いますがいかがでしょうか、御所見をお伺いします。
 さらに、介護保険制度の課題の一つとなっているのが、市町村における安定的な保険財政運営の確保の問題であります。市町村では、従来から国保財政の運営に大変苦労しております。その上に介護保険が加わることにより、市町村にとって過大な財政負担となることが心配されるところであります。しかも、本県は全国を上回って急速に高齢化が進展しており、とりわけ介護が必要な75歳以上の後期高齢者の増加により、今後とも介護費用の増嵩は避けられず、市町村負担も大幅にふえていくことが予測されております。
 一方、これを支える市町村財政は、先ほども申し述べたように、長引く景気低迷の中で、地方税収等の落ち込みや地方債残高の増大、これに伴う公債費負担比率の上昇による財政事情の硬直化など、極めて厳しい状況に置かれており、このような厳しい環境のもとで、市町村は平成12年4月の制度施行を迎えることになります。県では、市町村が保険財政を健全に運営できるよう、制度施行に向けてどのような指導・支援をしていこうとしているのかお尋ねいたします。
 次に、子育てをめぐる環境整備についてお伺いします。
 県議会の少子化・高齢社会対策特別委員会の県内調査をさせていただく中で、最近の少子化、核家族化の進行や女性の社会進出に伴って、果たして子供を産み、育てる環境は本当によくなっているのだろうかと考えさせられることが多くありました。核家族が子供を初めて持つ場合に、教本に書かれているマニュアルどおりに事が進まないと大層心配になるなど、育児経験がないことから来る不安や悩みを抱えながら、保育所では、乳幼児からの受け入れ環境が整っているか、保育所のスタッフにゆとりはあるか、保育料は高過ぎないか、少子化の中で保育所の経営は成り立っているのか、さらには、職場において子育てと仕事の両立について意識が進んでおらず、子供を持つと仕事をやめざるを得ない職場がいまだに多いのではないか、あるいは、離婚やシングルマザーの増加によるひとり親の子育て環境は整っているか、子育て支援グループやボランティア団体は育っているのか等々、子育て環境をめぐっては深刻な課題が数多く見受けられるのであり、出生率1・39という数値もうなずけるものがあります。
 そこでお伺いしますが、保育所の経営についてはほとんどが苦しいと聞いておりますが、県では保育所の運営状況をどのように把握されているのか、まずお尋ねします。
   〔副議長退席、議長着席〕
 また、夫婦ともに流通、サービス産業で働く人がふえているものの、日曜日や祝日に開所している認可保育所は県内でもないに等しく、実家など頼る先がない夫婦は、仕事の継続をあきらめるしかない状況です。平成10年4月現在で、東京都八王子市ほか33市では、子供を預かってくれる家庭を地域で探すファミリー・サポートセンターなどを中心に努力しており、これは労働省の助成により成り立っているそうであります。本県でも真剣に考える時期です。働く形態が多様化して、休日勤務が広がる中、仕事と育児の両立は大きな問題ですが、これについて県ではどのような対応をしているのかお示し願います。
 次に、最近の農業を初め社会経済情勢が大きく変化している状況において、圃場整備をどう進めようとしているのかお伺いします。
 御案内のとおり、県では、従来から稲作の低コスト生産と地域ぐるみ農業の確立のため、圃場整備とあわせ今後の地域農業の担い手に農地の利用集積を図り、その育成確保に努めておられるところであります。しかしながら、食生活をめぐる消費者ニーズの多様化や輸入農産物の増大に伴い、米需給が緩和してきているとともに、国内外を含めた産地間競争の一層の激化、そして転作率が増加してきております。大規模農家ほどこのような影響を強く受けやすく、地域の担い手農家が育ちにくい環境にあると危惧しているところであります。また、公共事業の見直しが行われている中で、社会構造の変革に資する情報通信の高度化や環境・エネルギー対策などの新社会資本づくりに重点が移されてきております。経済対策補正予算にありましても、圃場整備事業の景気対策効果について疑問視する意見も見受けられ、おくれている本県の基盤整備がますます進みにくい状況になるのではないかと懸念している次第であります。
 しかしながら一方、国ではこうした時代の変化に対応して、新しい農業基本法の策定に向けた検討がなされており、先般、食料・農業・農村基本問題調査会から出された報告では、世界の食糧需給が短期的な不安定さを増すとともに、中長期的には逼迫する可能性が懸念される。また、食糧自給率がカロリーベース42%の我が国は、国土資源に制約があるため大幅な自給率向上は困難であるが、国内生産を基本に位置づけ、可能な限り維持拡大を図り、これに備蓄と輸入を適切に組み合わせて食糧の安定体制を図る必要がある。このためには、農地や担い手等の生産基盤が確保され、有効に活用を図っていく必要があると報告されたところであります。
 我が国有数の総合食糧供給基地を標榜している本県にとりましては、今後、昭和1けた世代のリタイアに伴い、農業就業者が大幅に減少することが予想されております。地域農業農村の健全な発展と維持のためには、地域の担い手の確保と優良農地の整備による効率的な利用を図る圃場整備事業を着実に進めていく必要があると考えているものでありますが、県の事業推進に向けた取り組みについてお考えをお示し願います。
 次に、黒毛和種の改良対策についてであります。
 去る9月9日に農林水産委員会の県外調査で宮崎県家畜改良事業団を調査いたしました。宮崎牛は、皆様御承知のとおり、昨年9月本県で開催された第7回全国和牛能力共進会で11部門すべてにおいて優等を獲得、うち3部門では最も評価の高い首席に輝きました。平成9年度の宮崎県の和牛子牛の平均取引価格は41万9、000円で、現在も同水準にあり、飛騨牛で知られる岐阜県の45万4、000円に次いで全国第2位、但馬牛で有名な兵庫県を上回る全国トップクラスにあり、我が県の平均価格36万8、000円をはるかに上回る価格であります。
 昨年の全共で優秀な成績をおさめた結果、平成9年度下期以降は取引価格66万円以上の優良雌子牛は85%が宮崎県外に流出しているそうです。私の地元江刺市農協も、宮崎県から初めて雌子牛導入を決め、実は1月と3月に63頭まとめて購入いたしました。10年前まで全共で優秀な成績を誇っていた島根県では、優良雌子牛の流出防止対策を講じなかったため、種牛をつくる優良な雌牛が枯渇していった前例もあります。我が江刺市農協のまとめ買いが刺激となり、宮崎県では、宮崎牛ブランドを守ろうと、本年度の9月補正予算に4、880万円を計上して、10月から優良雌子牛保留緊急対策事業に乗り出すそうであります。具体的には、優良な雌子牛を競り落とした農家に5年間養うことを義務づけ、1頭につきその飼養費約60万の半分の30万円を助成し、初年度は160頭、来年度以降は年間約300頭の補助金を支出する計画であります。そうなると、本県のような産地では購入はますます難題となりますし、宮崎県の取り組み姿勢、まことにうらやましく思います。
 一方、宮崎牛の基本である種雄牛を飼養管理しているのは、50%出資している宮崎県を初め、農協など19の会員で構成されている社団法人宮崎県家畜改良事業団であります。家畜改良事業団が保有する種牛は65頭であり、宮崎県が誇る名牛安平の精液でさえ、1本わずか4、000円で供給されております。つまり、肉質重視の種雄牛から増体重視のものまで、時代の趨勢に応じて対応できる幅があります。我が胆江地方の和牛改良組合所有のたった5頭の種牛は、肉質重視の小さな牛だったことから、価格低迷の最近は、全国平均を下回る販売価格のため、子牛生産農家のほとんどが従来の価格を大きく下回り、江刺市では、数年前まで約7、000頭あった飼養頭数も現在では5、700頭になりました。全県的にも同様であり、畜産岩手は風前のともしびと言っても決して過言ではない状況と思います。
 県の種山畜産研究室の施設は充実いたしましたが、冬は極寒のマイナス20度にもなる地であり、また県職員ですから転勤はつきものです。牛の取引には人間関係が極めて重要で、少なくとも10年以上のつき合いがなければよい情報は入らない。したがって、よい牛は手に入らない世界です。
 宮崎県でも、20年前は各地に種雄牛生産組合があったそうですが、さきに述べた家畜改良事業団に一本化したのです。社団法人なので、人的にも専門化しています。そして、農家に対してはすべての牛をコンピューターで管理して、肥育マニュアルまでつけて指導しているのです。本県においても、県の施設を初め、関係団体の関連施設を統廃合して、新しく家畜改良事業団をつくり、我が胆江和牛改良組合なども吸収して一本化すべきと思いますし、それを望む農家の声は既に大きくなっています。10年先の種雄牛を目指すぐらいの意気込みで、現在ある施設を官民問わずすべて生かして早急に設立すべきと考えていますがいかがでしょうか。
 また、宮崎県同様に、優良種雄牛や雌牛を県内、県外を問わず幅広い牛群を購入すべきですが、その際、飼養する農家へ手を差し伸べるような補助制度を創設されることを望むものですが、その対策についてお伺いします。
 最後に、県道玉里水沢線の復旧の見通しについてお伺いします。
 江刺市玉里と水沢市佐倉河を結ぶ県道玉里水沢線は、全線が開通してまだ2年足らずでありますが、地元の人々は大いに喜んで利用していた矢先、8月からの長雨の影響もあってのことでしょうか、今月13日の未明、市内田原地内で道路東側山肌とのり面が崩壊し大量の土砂で道路がふさがれてしまいました。水沢地方振興局によりますと、のり面が幅約130メートル、奥行き約200メートルにわたって地すべりを生じ、土砂の量は20万立方メートル、トラック5万台に及ぶと推定されております。山肌が200メートルも奥から、文字どおり山の一部が移動したという感じであり、山の樹木は道路に10メートルほど積もった土砂の表面にそのまま横たわっております。想像を絶する崩壊で、素人目にはとても土砂を取り除いて復旧するなど望めない状態ではないか、路線そのものの変更も視野に入れなければならないのではないかと危惧されます。しかし、交通の要衝の路線であり、一刻も早い復旧が望まれるところでありますが、復旧に当たって現在までの検討状況をお聞かせ願います。
 以上で私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 渡辺幸貫議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、過疎地域の現状認識とポスト過疎法に対する取り組みについてでございますが、過疎地域の活性化を図るためには、各市町村が地域の特性を生かしながら主体的に取り組んでいくことが重要でございまして、このような取り組みを支援するため、いわゆる過疎法に基づく過疎対策事業債の積極的な活用に加えまして、県独自の施策として、県道などの整備に対する市町村負担金の免除、自治振興基金の貸付条件の特別措置等を行いながら、過疎地域の振興に努めてきたところでございます。その結果、逐次、産業基盤や生活環境施設などの整備水準が向上をいたしますとともに、特色ある地域づくりが促進されるなど、着実にその成果が上がってきているというふうに考えております。しかしながら、ただいま議員御指摘のように、過疎地域におきましては、若者の流出、高齢化の進行により地域の活力が低下するなど、今なお厳しい状況にございますし、さらに、こうした過疎地域は、我が国が直面をしております少子・高齢化、人と自然の共生、産業構造の転換などといった課題への先駆的な取り組みが必要とされる地域であるという観点や、森林、農地などの公益的機能の確保や多自然居住地域としての場の提供などといった点にも留意をしながら、その活性化を促進していくことが重要であると、このように認識をしております。したがいまして、今後の過疎問題は、単に過疎地域のみの問題としてとらえるのではなくて、非過疎地域を含めた国土全体の問題としてとらえる必要があるとの視点から、現行過疎法が失効した後におきましても、引き続き過疎地域の活性化のための総合的な対策を推進していくことが必要であると考えております。
 県といたしましては、本年7月に新たな法律の制定について国に対して要望を行ったところでございますが、今後とも、全国知事会や全国過疎地域活性化連盟などの関係団体、関係市町村と一体となりまして、新たな法律の制定に向けて、国に対し、あらゆる機会をとらえて強力に運動を展開してまいりたいと考えております。
 次に、介護保険制度への対応についてでございますが、この制度におきましては、経営主体の種別を問わず、一定の要件を満たした事業者が、在宅サービス事業者として参入できることとされております。このような多様な事業主体によるサービスの提供は、介護サービスの供給量の拡大や、適切な競争による効率的かつ良質なサービスの確保につながるものと期待をされているところでございます。このため、県といたしましては、従来からのサービス提供主体に加えまして、民間事業者、さらには農業協同組合や生活協同組合、住民参加型非営利組織などの地域に根ざした民間活力の積極的な活用によりまして、地域の実情に応じた介護サービスの提供体制が構築されるよう、今後、市町村介護保険事業計画の策定等を通じて市町村を支援してまいりたいと考えております。
 また、福祉関連で過疎の町の活性化をとの御提言についてでございますけれども、山形県の最上町におきましては、保健・医療・福祉サービスの一体化をまちづくりの基本として位置づけをして、子供からお年寄りまでを視野に入れた包括的な地域ケアシステムの整備を進めたことが町全体の活性化につながったものと、このように承知しております。
 21世紀の本格的な高齢社会に向けまして、高齢者が生きがいを持ち、健康で安らかな生活を営むことができる地域社会を形成するためには、市町村がそれぞれの地域特性に応じて公・民の協力のもとに、地域住民の健康や福祉を初めとする高齢化に対応するさまざまな機能の総合的、計画的な整備を図ることが重要でございまして、また、地域の活性化にも貢献するものと考えております。したがって、県では、今後とも最上町や本県におきます遠野市、水沢市、岩泉町などでも活用されましたふるさと21健康長寿のまちづくり事業などによりまして、生涯を通じた健康づくりや介護サービスの充実など、保健・医療・福祉の一体的推進を初め社会参加の促進など、高齢者の能力や創造性を十分発揮できる環境の整備や、ひとにやさしいまちづくりの推進など、高齢者が生き生きと安心して過ごすことができる地域社会の形成に向けて、積極的に市町村を支援してまいりたいと考えております。
 次に、圃場整備の推進についてでございますが、御指摘のとおり、担い手の減少や高齢化、米の需給緩和による米価の低落、産地間競争の激化など、農業を取り巻く環境は一段と厳しさを増しておりまして、一方では、今日の国、地方の財政状況のもとで公共事業の重点化、効率化、透明化が求められてきているところでございます。このような状況下におきまして、農地の利用集積を積極的に進め担い手を育成確保するとともに、大区画化による米の低コスト生産、転作面積の拡大に対応した水田の汎用化による団地的な土地利用型作目の導入拡大など、生産性の高い水田営農の確立を図ることが極めて重要な課題となっております。
 こうした認識のもとに、圃場整備の推進に当たりましては、ウルグアイ・ラウンド対策関連予算などを活用しながら、加速的な事業推進に現在取り組んでいるところでございます。さらに、農地利用集積の程度に応じて補助率のかさ上げが行われる事業ですとか、利子軽減制度の活用、事業コストの縮減を図るなど、農家負担の軽減にも配慮しているところでございます。
 申し上げるまでもなく、水田は本県農地の大宗をなしておりまして、将来にわたって安定的に農産物の生産を図る上で基盤となるものでございますので、重点的な予算配分を国に要望しながら、地域特性に応じた圃場整備をさらに推進をして、我が国有数の主産地としての地位を築いてまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので御了承をお願いいたします。
   〔企画振興部長武居丈二君登壇〕
〇企画振興部長(武居丈二君) 市町村財政の状況についてでありますが、平成6年度以降、地方財政の大幅な財源不足の状況下にあって、数次にわたる国の経済対策等に呼応して、本県市町村においても、優良な起債を中心に地方債を積極的に導入して各種事業を実施してきた結果、生活環境や産業基盤等の整備が推進されてきたものの、平成9年度末の地方債残高は6、800億円余となり、本年度末には7、000億円余となると見込まれております。この結果、財政構造の弾力性をあらわす指標は、平成9年度末の見込みで経常収支比率が79%台に、公債費負担比率も17%台後半へと徐々に悪化するなど、市町村財政の状況は厳しさを増してきており、今後の財政運営には十分な配慮が必要であると認識しております。
 県といたしましては、市町村が地方分権の推進や総合的な地域福祉施策の充実など、今後ますます増大する財政需要に的確に対応するため、みずから徹底した行政改革に取り組むとともに、財源の確保とその計画的・重点的な配分や経費支出の効率化を図り、機動的・弾力的な財政運営に努めるよう、助言・指導を行ってきているところであります。
 市町村においては、現在経済対策の要請にこたえて、個々の実情に即し、住民生活に密着した事業の実施に鋭意取り組んでいるところであり、県としては、今後とも、市町村が節度ある財政運営を基本としつつ事業の適切な選択に努めるとともに、財政構造の十分な分析と的確な把握を行い、中長期的な財政見通しのもとに健全な財政運営に努めるよう、必要な助言・指導をしてまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕
〇保健福祉部長(関山昌人君) まず、ホームヘルパーの確保についてでありますが、県におきましては、保健福祉サービスの整備目標等を定めた県高齢者保健福祉計画に基づいて、市町村における在宅介護の主要な担い手であるホームヘルパーの確保を図ってきており、これまで延べ5、789名のホームヘルパー養成研修を実施してきたほか、在宅における多様な介護ニーズへの適切な対応に努め、サービスを効率的、効果的に提供するためのチーム運営方式については34市町村、24時間対応のホームヘルプサービスについては、県単独の財政支援によるものも含め13市町村に普及しているところでありますが、ただ、計画目標に対する進捗状況には、市町村間で格差が見受けられる状況にあります。このため、本年度、全市町村について、ホームヘルプサービスの現状や課題を把握し、24時間対応ホームヘルプサービスや身体介護中心業務の一層の拡大等必要な助言等に努めているほか、これまでのホームヘルパー養成研修事業の実施に加え、本年度、新たに未就業のホームヘルパー資格者などの活用を図るため、これらの方々を対象として再研修等を行う地域介護マンパワー養成強化事業を実施するなど、ホームヘルパーの増員に向け、市町村支援を強化しているところであります。
 県といたしましては、これら必要な対策を講じつつ、今後とも市町村との連携を図りながら、適切な在宅介護サービス基盤の整備に努めてまいりたいと考えております。
 次に、市町村の介護保険財政についてでありますが、この制度が将来にわたって安定的かつ継続的に運営されるためには、市町村における保険財政が健全に運営されていくことが何よりも重要と考えております。このため、この制度におきましては、市町村における介護給付費の約7割を国、県の負担金と医療保険者からの交付金で賄うことにより、財源の安定的な確保を図るとともに、残る介護給付費については、市町村の負担金及び65歳以上の被保険者の保険料によって賄うこととされております。また、国において、要介護者となる可能性の高い後期高齢者の多い地域や高齢者の所得の低い地域の状況に配慮して財政調整を行い、市町村の財政力の不均衡を是正する仕組みも設けております。さらに、県に設置する財政安定化基金の運用により、見込みを超えた給付費の増加分や保険料未納などによって生じた財政不足について、市町村が一般会計で補てんすることがないよう、資金を貸し付けまたは交付する制度を設けることとしております。
 県といたしましては、今後、制度の施行に向けて、市町村が的確な収支見通しのもとに保険財政を円滑に運営できるよう、介護給付費の見込みや保険料率の設定について、市町村に対するきめ細やかな助言等を行ってまいりたいと考えております。
 また、安定的な保険財政の確保等の観点から、介護保険事業の広域化が有効な方策と考えておりますことから、市町村の意向を十分に踏まえながら、広域化のための環境が整うよう、必要な支援をしてまいりたいと考えております。
 次に、保育所の運営状況についてでありますが、子供を取り巻く環境は、少子化、核家族化、女性の社会進出などにより大きく変化し、保育所においても、乳児保育や休日保育の実施、地域における保育相談、子育てサークルへの支援など、新たな課題への対応が求められております。保育所の入所児童数は全県では少子化にありますが、女性の社会進出等もありここ数年わずかずつふえており、8月現在で2万942人と前年より545人の増となっております。ただし、過疎地域などでは入所児童の減少が続いており、保育所数も全県で333カ所と前年比3カ所の減となっております。
 保育所の運営については、入所児童数等に応じて交付される保育所運営費によって必要経費が賄われることになっており、また、小規模な保育所への特別な保育単価の設定や民間保育所への給与改善費の支給など、個別事情への配慮もなされていることから、基本的に運営の安定が確保されているものと考えております。さらに、延長保育、一時保育等の新たな事業に取り組んでいる保育所に対しては、特別保育事業費補助金が交付されているところであります。
 今後は、保育所においても福祉施設経営指導事業といった経営相談などの活用を図るなど、運営安定への自主的取り組みが必要ですが、県といたしましても、地域ニーズに即した特別保育事業の積極的な導入あるいは適切な定員の見直しや統合などといった点も含め、市町村を通じ相談によく当たり、適切な保育所運営の確保に努めてまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長小野寺修君登壇〕
〇商工労働観光部長(小野寺修君) 仕事と育児の両立のための対応についてでありますが、女性の職場進出が増大する中、その持てる能力を十分に発揮し、職業生活と家庭生活との両立ができるような環境の整備を図ることが重要な課題と考えているところであります。国においては、育児・介護休業制度の法制化を図るなど、仕事と家庭の両立を支援するための施策を推進しているところでありますが、本県の育児休業制度の普及及び利用状況を見ますと、まだ十分とは言えない状況にあります。そのため、県といたしましては、平成7年に創設した育児休業取得者に対する生活資金融資制度の利用促進に努めているほか、仕事と育児の両立支援セミナーを開催するなどして、育児休業制度の定着を図るための普及啓発に努めているところであります。
 議員からお話しのありましたファミリー・サポート・センターにつきましては、本県ではまだ設立はされておりませんが、これは保育所の補完的役割を担うものとして、育児の援助を行いたい人と援助を受けたい人からなる会員組織で、地域での相互援助活動により運営することとなっているものであり、国及び県では、このセンターを設立する市町村に対し運営費の助成措置を講じておりますことから、設立基準であります人口5万人以上の市に対し説明会を開催するなどして、その設置促進に努めているところであります。
 今後とも、労働省岩手女性少年室を初め関係機関と連携を密にし、労働者が仕事を続けながら育児を両立できる環境の整備を図ってまいる考えであります。
   〔農政部長佐藤徳兵衛君登壇〕
〇農政部長(佐藤徳兵衛君) 黒毛和種の改良対策についてでありますが、黒毛和種の産地力を強化するために、本県におきましては昭和62年度から県産種雄牛の造成に取り組んでおり、現在、検定待機牛を含め39頭の県有種雄牛を係養し、これら種雄牛の凍結精液をこれまでに約10万本供給しております。このほか、県内農業団体や家畜改良事業団所有の優良種雄牛の精液についても、岩手県畜産会を通じ県内に供給されております。さらに、現在、宮崎県と優良種雄牛の安平の精液を譲り受ける方向で協議を進めております。
 また、優良種雄牛選抜のための産肉能力検定につきましては、県の所有牛、農業団体の所有牛とも、県、関係団体等で構成する協議会において選定し、計画的に種山で実施しております。
 なお、これらの事業を効果的に実施するため、種山研究室に新たに種雄牛舎や凍結精液の製造施設を設置するなど、供給体制の整備を行ったところであります。
 一方、増体や肉質を兼ね備え産肉性にすぐれた優良雌牛の確保につきましては、県内保留事業や家畜導入事業などにより助成を行っているところであります。これらの取り組みの結果、昨年、本県で開催されました第7回全国和牛能力共進会では、県有種雄牛第5夏藤を父とする牛群が内閣総理大臣賞を受賞するなど、大きな成果をおさめたところであります。
 このようなことから、本県の黒毛和種の改良は、関係団体連携のもと順調に推進されてきているものと考えておりますが、産地力の確立と和牛生産農家の経営安定を図るためには、なお一層の取り組みが必要でありますので、その方策として、宮崎県が実施している種雄牛の集中管理方式をモデル・参考にしながら、今後、関係団体とも協議し検討してまいりたいと考えております。
 なお、黒毛和種を含めた岩手牛の産地の再構築に向けて全体的な見直しも急務と認識しており、最善を尽くして取り組んでまいりたいと考えております。
   〔土木部長大石幸君登壇〕
〇土木部長(大石幸君) 県道玉里水沢線の復旧見通しについてのお尋ねでございますが、御案内のとおり、9月13日午前3時ころ、江刺市田原字山舘地内におきまして山林の斜面が地すべりを起こし、同路線が被災するとともに、平行して流下している1級河川伊手川が川幅30メートルのうち約20メートルを閉塞する災害が発生したものであります。地すべりが大規模だったこと及び河川の閉塞により、下流部への2次災害が懸念されることから、直ちに建設省土木研究所に専門職員の派遣を要請して、9月15日、県と合同で現地調査を実施したところであります。その結果、崩壊した土砂は比較的安定した状態にあることが判明し、出水対策上、必要最小限度の土砂を除去する応急措置を講じたところであります。
 本路線の復旧に当たりましては、恒久的な対策を講ずるために、地すべりの移動観測やボーリングによる地質調査等を実施しているところでありますが、地すべりの規模が道路敷から広く山林に及んでいることから、山林所有者の御理解をいただきながら、治山事業との調整を図り災害復旧工法を検討し、12月に予定されている国の災害査定を受けた上で、早期に被災箇所の復旧に向け努力してまいる考えであります。
   
日程第2 議案第39号教育委員会の委員の任命に関し同意を求めることについてから日程第4 議案第41号土地利用審査会の委員の任命に関し同意を求めることについてまで
〇議長(那須川健一君) 次に、日程第2、議案第39号から日程第4、議案第41号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。千葉副知事。
   〔副知事千葉浩一君登壇〕
〇副知事(千葉浩一君) 本日提案いたしました人事案件について御説明いたします。
 議案第39号は、教育委員会の委員であります久慈浩氏の任期が9月30日で満了となりますので、同氏を再任するため、議会の同意を求めようとするものであります。
 議案第40号は、公害審査会の委員9人全員の任期が10月31日で満了となりますので、山崎正敏、生田弘子の両氏を新たに任命し、小野寺正孝、八木橋伸之、石川精子、高橋健、中屋重直、鷹觜紅子、松坂尚典の各氏を再任するため、議会の同意を求めようとするものであります。
 議案第41号は、土地利用審査会の委員7人全員の任期が10月31日で満了となりますので、野村弘、岸根ハナの両氏を新たに任命し、小野寺金彦、菅原亀悦、鈴木正、三田義三、三田地宣子の各氏を再任するため、議会の同意を求めようとするものであります。
 以上のとおりでありますので、よろしく御審議の上、原案に御同意くださるようお願いいたします。
〇議長(那須川健一君) お諮りいたします。ただいま議題となっております議案は人事案件でありますので、会議規則第34条第2項の規定及び先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(那須川健一君) 御異議なしと認めます。よって、これより議案第39号教育委員会の委員の任命に関し同意を求めることについてを採決いたします。
 ただいま議題となっております議案第39号教育委員会の委員の任命に関し同意を求めることについては、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(那須川健一君) 起立多数であります。よって、議案第39号教育委員会の委員の任命に関し同意を求めることについては、これに同意することに決定いたしました。
 次に、議案第40号公害審査会の委員の任命に関し同意を求めることについてを採決いたします。
 ただいま議題となっております議案第40号公害審査会の委員の任命に関し同意を求めることについては、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(那須川健一君) 起立全員であります。よって、議案第40号公害審査会の委員の任命に関し同意を求めることについては、これに同意することに決定いたしました。
 次に、議案第41号土地利用審査会の委員の任命に関し同意を求めることについてを採決いたします。
 ただいま議題となっております議案第41号土地利用審査会の委員の任命に関し同意を求めることについては、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(那須川健一君) 起立全員であります。よって、議案第41号土地利用審査会の委員の任命に関し同意を求めることについては、これに同意することに決定いたしました。
   
〇議長(那須川健一君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時50分 散 会

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