平成10年12月定例会 第16回岩手県議会定例会会議録

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〇30番(村上恵三君) 自由公明県民会議の村上恵三であります。
 2期目を迎えた県議会生活も、早くも任期の最終年度の一般質問を迎えることになりました。私は、この機会に、改めてこれまでの発言を総括する意味で、あえてさきに答弁をいただいた事項にも触れながら、県政の諸課題について、以下、お尋ねしてまいります。
 まず、財政問題に関してであります。
 御承知のとおり、今、国、地方公共団体は、長引く不況や減税政策の影響を受けて、税収不足が深刻な問題となっております。国の見通しでは、国税が6兆円強、地方税で約3兆円の不足が見込まれ、国、地方あわせて過去最大の10兆円程度の不足となることが明らかになりました。この地方税のうち、都道府県分が2兆3、000億円程度、市町村分が7、000億円程度となると見通しております。このため、財政危機を宣言した東京、大阪、神奈川に加え、埼玉、静岡、愛知など10の都道府県では、税収不足額が財政再建団体に転落する限度額を超え、給与、賞与のカット、退職金の分割払い、減収補てん債の発行など、さまざまな方法で赤字幅を縮小しようと躍起になっていると報じられております。これら税収不足が深刻な団体は、大都市など、企業の集積地域を抱えている団体が中心であり、企業活動の低迷による法人関係税の落ち込みがいかに大きいかを示しております。
 こうした団体と比較して、法人関係税の総額が少ない、言いかえれば企業集積が進んでいない本県ではここまで深刻なものとなっていないように思われるのでありますが、今後じわじわと影響が押し寄せてくると考えられるのであります。この際、まず、今年度の本県の税収について、当局はどのように見通しを立てているのかお示しを願いたいと思います。
 また、こうした地方税の不足や恒久減税に伴う財源確保の手段として、赤字地方債の発行について論議がされているようであります。緊急避難的な措置として容認をすべきだ、あるいは恒久減税による不足財源措置として発行すべきだなど、さまざまな意見があるようです。本県では、これまでの国の経済対策に呼応して多額の公共投資を行い、その結果、県債残高も1兆円を超え、県債発行について慎重な姿勢が求められているのでありますが、このような中で、知事は、この赤字地方債の発行についてどのような御意見をお持ちかお伺いいたします。
 次に、新しい総合計画の策定についてであります。
 去る10月30日、岩手県総合計画審議会では、新しい総合計画の基本方向に関して中間答申をいたしました。県では、13日にはこの答申を受けて中間報告を行ったところであり、今後、ゴールに向けてさらに具体的な検討が進むものと思います。私は、計画は、その目標の達成に向けて最大限努力することはもちろん必要でありますが、これまで、その達成度合いの尺度が計画の事業量であったり進捗率であったりし、ともすれば事業をこなすことが目的となりがちではなかったかと思うのであります。このような低成長の時代にあっては、量より質、すなわち計画の事業が県民生活の向上にどのような効果をもたらしたかという点に達成度合いの尺度を求めていくことが重要ではないかと思います。新しい総合計画の中でもこのような視点を十分に取り入れ、事業実施に当たる職員すべてが目的、効果を意識しながら取り組んでいけるよう明確に掲げるべきと提案いたしますが、御所見をお聞かせください。
 次に、広域行政への取り組みについてお尋ねいたします。
 私は、初めて議席を得て以来、広域行政、特に盛岡圏域の広域合併に関して発言を続けてまいりました。昨年のこの時期にも振興局での取り組みの強化についてお伺いし、企画振興部長から積極的な答弁をいただきました。また、県では、この4月から早速広域行政を担当する組織をつくり、本格的な取り組みを開始いたしました。しかしながら、合併や広域連合などの広域行政に関する情報が必ずしも十分に市町村に伝わっていない。特に、住民や議員に対しては、まだまだ啓発していく余地があるとの声が聞こえてまいります。また、情報提供も制度の紹介が中心であり、県がどのように取り組んでいくのか、市町村が取り組んだ場合、県はどのようにして後押ししてくれるのかなどといった県の具体的なかかわりが一向に見えてこないのであります。さらに、これまでいただいた答弁では、地域住民の十分な論議の高まりが重要とか、市町村で住民に情報を提供し、十分な論議を尽くすことが大切といった、いわば市町村にげたを預けるようなお答えが返ってくるのであります。私は、地元での論議が深まることは当然なことと思っており、当局と認識を同じくするものでありますが、問題なのは、こうした論議が活発化しないという点なのであります。県では、専門組織を設けたことでもあります。この際、広域行政に対する県の方針や推進施策を明確にしながら、さらに踏み込んで市町村を指導すべきではないでしょうか。当局のお考えをお聞かせください。
 次に、中心市街地活性化事業についてお尋ねいたします。
 大型店の郊外への進出や人口の郊外への流出などによって、中心市街地の空洞化問題が全国的な課題となっております。このため、国では7月から中心市街地活性化法を施行させ、通産、建設など11省庁が連携して、土地区画整理や駐車場整備、商店街対策など150もの支援メニューを盛り込み、地盤沈下の続く中心市街地の再生に取り組み始めました。本県では、盛岡、遠野、北上、水沢、江刺、二戸の各市で基本計画の策定に向けた具体的な検討が進められているところであります。私は、各種公共事業を初めとする国の予算が厳しくなっていく中にあって、この事業は、中心市街地再生のラストチャンスであると考えております。また、従来の商店街活性化対策などと大きく異なり、総合的なまちづくりそのものであります。このため、商店街のリニューアルはもちろんのこと、地域全体として魅力が高まるよう、しっかりとしたデザインを描くことが何よりも重要であります。さらに、権利関係の調整など、まちづくりを進める組織の強化も必要であり、県行政の総合力を問われるプロジェクトであると思うのであります。
 今、この事業の成否が注目されておりますが、私が懸念するのは、商工部門と都市計画部門との縦割りの考え方が依然強いと報じられているように、県の組織の縦割りの弊害があらわれるのではないかという点であります。各省庁の数多いメニューを効率的に組み合わせ、関係部局が協力して取り組むことが求められるのであり、また、知事は、最近、県の縦割りの打破について事あるごとに指示しているようでもあります。
 この事業を所管する商工労働観光部長に伺いますが、県行政の総合力の発揮という観点から、このプロジェクトの取り組み体制についてどのように配慮しているのでしょうか。プロジェクトチームなどの活用はお考えでしょうか。また、各市での取り組み体制はどのようになっているのかお示し願いたいと存じます。
 次に、出資法人に関してお尋ねいたします。
 出資法人の問題につきましては、私は、これまでも県行政を補完する体制の整備という観点から、土地開発公社と観光開発公社の執行体制や公社等運営協議会について質問してまいりました。県当局は、昨年度から出資法人の見直しに取り組み、出資目的が達成された法人からの出資の引き揚げを検討し、順次実施していると聞いております。しかしながら、この出資の引き揚げについては一律に検討するのではなく、出資法人に対する例えば信用力の付与、公共性の度合いなど、県行政との役割分担に応じた出資の効果について個別に検討すべきものと思うのであります。現在、検討している出資法人についても、出資を引き揚げた場合、企業の信用度の低下を招きかねないケースもあると指摘されております。
 この際、出資引き揚げの基準というか、指針というか、こうした基本的な考え方についてお示し願いたいと思います。
 さて、出資法人をめぐっては、最近、特にその経営の行き詰まりが大きな問題となっております。隣の秋田県では、秋田木材住宅が135億円の負債を抱えて破産しましたし、畜産公社の負債の処理に35億円を超える県費が投入されようとしております。出資法人の経営上の問題点としては、その活動領域が行政の守備範囲と民間の活動領域との境界線上にあることからくる経営の困難性、設立当初からの時代の変化に伴って同様の事業が民間で行われるようになるなど、時々の事業の役割についての検討不足などを挙げることができるのであります。今後、出資法人の見直しを行うに当たりましては、このような経営上の問題点も検討し、問題がありそうならば早目に専門家による経営診断を行い、秋田県の事例のようにお客や県民に多大の迷惑をかけることのないよう、健全化に向けた措置をとるなど事前の対策を適切に講じていく必要があることを指摘したいと思うのであります。
 岩手開発解散の教訓を決して忘れてはならないのでありますが、当局は、出資法人のこのような問題に対してどのようにお考えかお示し願います。
 また、出資法人については、税金を投入しているにもかかわらず経営情報が十分に公開されていないという問題も指摘されております。県では出資法人の情報公開にも積極的に取り組む方針と伺っており、この点は評価するものでありますが、これまでも議会に対して経営状況の報告がなされているのではありませんか。情報公開の前に、まず、この報告について、単に貸借対照表や損益計算書を記載するのみではなく、財産の評価方法、累積債務の状況、経営の見通しなど、企業が株主に対して行うのと同様にその内容を充実させるべきではないでしょうか。経営内容がより詳細に公表されることによって、法人みずからがこれまで以上に真剣に経営改善に自助努力すると思われるのでありますが、当局の御見解はいかがでしょうか。
 次に、出資法人の問題に関連して、グリーンピア田老についてお尋ねいたします。
 グリーンピア田老は、この施設の経営を年金福祉事業団から委託されており、各地の施設経営が赤字を生じている中にあって、経営努力によって黒字を維持しているものと承知いたしております。しかしながら、この施設を保有する年金福祉事業団は、国のリストラによって早ければ来年にも廃止されることになっており、これに伴って全国のグリーンピアを関係道県に売却する方針が打ち出されております。事業団では売却を拒否すれば民間へ公売するとも伝えられており、一方、関係道県では、厳しい財政事情のもと、買い取りは困難として、新潟県では早くもこれを拒否し、地元では大規模な署名活動を行って、あくまでも現行の運営を求める運動が展開されたと聞いております。
 この際お伺いしたいのでありますが、本県では事業団からどのような要請がなされているのでしょうか。価格や意思表示の期限など具体的内容についてお知らせください。
 私は、ますます厳しさが増す財政環境を考えるとき、事は重大であり、慎重に対処すべきと考えるのでありますが、この売却問題についてどのように対応する方針でしょうか、あわせてお答え願います。
 次に、教育問題についてお尋ねいたします。
 この9月、今後の地方教育行政のあり方を審議していた中央教育審議会は、地域住民が学校運営に積極的に参加する意義を強調するなど、教育行政の地方分権を求める答申をまとめたところであります。答申では、これまでの教育行政は、文部省、都道府県教育委員会、市町村教育委員会、学校という縦の系列が他の分野に比べて特に強く、瑣末な部分まで許可、承認、届出、さらには指導、助言など、この系列の関与が及んでいる側面があったと指摘しております。そして、今後、人事や学校運営の権限を文部省や都道府県教育委員会から市町村教育委員会、学校に移し、個々の学校の裁量を拡大すべきだとしております。さらに、具体策として、通学区域や学級編制の弾力的な運用、地域住民が学校運営に参加する学校評議員の新設、校長への民間人の登用、人事、予算についての校長の権限拡大が提言されるなど、画期的な内容が随所に盛り込まれております。
 特に、学校評議員は、町内会代表、青少年団体代表やPTA代表などが想定され、授業内容や生徒指導などについて校長に助言したり、地域の意見を学校や教育委員会に反映する役割が期待されているのであります。報道によりますと、この内容に対し、これまで画一的、閉鎖的と批判のあった現場からは戸惑いや反発も生じているようでありますが、私は、地方分権が進みつつある現在、また、行政の透明性の向上が要請されている現在では当然の流れと思うのであります。特に、住民の声を学校運営に反映できる方途を開くことは、ある高等学校で問題となった新任校長とPTAや同窓会とのトラブルなども防止できるものとして歓迎いたしたいのであります。
 教育委員会では、現在、新たな教育振興基本計画を策定中であります。この際、お伺いいたしますが、教育委員会では、この中教審の答申をどのように評価しているのでしょうか。また、新たな教育振興基本計画では、この答申をどのように取り扱うお考えかもあわせてお答え願います。
 次に、病院事業についてお尋ねいたします。
 病院事業会計につきましては、さきの議会で経営健全化を初めさまざま議論されたところであり、重複を避けるのでありますが、一般会計から総額で170億円にも上る繰り入れ、医業収益で見ると10%を超える繰り入れであり、一般会計が厳しさを増している中、独立した企業としては、やはり課題が多いと思うのであります。今後、さらに独立採算に向けた経営改善を図るには、特に経営者たる医療局長の強力なリーダーシップのもと、コスト意識の徹底、業務の改善合理化など、現場みずからが意思統一して強力に取り組んでいく必要があると思うのであります。
 しかしながら、このリーダーシップを発揮すべき医療局長は、ここのところわずか1年で交代が続いております。経営者が1年ごとに交代することなど、民間では到底考えられないことであります。まず、経営方針の一貫性の確保、現場の実態把握、従業員との意思疎通などが十分行われず、事業に取り組む職場の士気が低下いたします。また、経営手腕を十分発揮できません。その結果、業績が低下してまいります。
 地方公営企業法では、企業管理者に独立した大幅な権限を与えるとともに、経営の最終責任は知事が負うこととされ、その任期は最大4年の特別職とされております。いわば知事と一体となって経営に専念する仕組みとなっているのであります。本県医療における県立病院の果たす役割の重要性については、だれしも異論がないところであります。5、000人を超える職員を擁し、1、000億円を超える経営規模であります。この際、医療局長を医療知事と位置づけ、すぐれた経営手腕を存分に発揮させ、経営改善に専念させるべく、その法定任期を全うさせるよう提案するものでありますが、知事の御所見はいかがでしょうか。
 最後に、地域課題についてお尋ねいたします。
 盛岡市と合併以来7年目を迎えた旧都南村地域は着実な発展を続けており、この間、都市化の進展に伴う治安対策、遊休県有地の活用など、県の御配慮をいただいたことに対し、地域を代表して御礼申し上げたいと存じます。
 ところで、まず、大ヶ生金山跡地の土砂流出の問題であります。去る8月の大雨の際、盛岡市乙部の同金山跡地に残っていた採掘後の土砂が大量に付近の沢に流入し、乙部川が汚濁いたしました。この川からは都南土地改良区の約300戸の農家の半数近くが農業用水を取水しており、この金山では精錬時に有害薬物を使用したことから、その安全性に不安の声が上がっております。このため、土地改良区では、盛岡地方振興局に対しその対策を要請いたしましたが、いまだ具体的な動きが見えないのであります。農家では、今年はこの流出前に取水を打ち切っていたから影響は免れましたが、来年の作付への水質の影響に不安感を募らせております。また、いつ流出が発生するかわからず、恒久的な対策が必要でもあります。この問題は、農政部、商工労働観光部、生活環境部いずれにもまたがるものでありますが、それぞれ今後どのように対応するお考えか明らかにすることを求めるものであります。
 また、県では水質の調査を行ったとも聞いておりますが、安全性についてはどのように把握されているのでしょうか、あわせてお答えを願います。
 次に、ふれあいランド岩手の用地問題についてお尋ねいたします。
 ノーマライゼーション、すなわち障害者と健常者、お年寄りと若者が協力し合いながら生きていく社会の実現という理念のもと、平成6年12月に完成したふれあいランド岩手は、既に70万人を超える利用者を数え、また、地域社会への貢献度などを審査基準とする公共建築百選に選ばれるなど、その運営は高く評価できるものであります。
 しかし、こうした評価の一方では、私は地元議員として用地取得の段階からできる限りの協力をしてまいりましたが、施設の用地についてはいまだに解決を見ていない重要な問題が潜んでおります。すなわち、代替地として事業用地を希望した地権者に対し、あたかも事業が可能となるような説明のもとに土地利用が規制されている代替地を提供し、いまだに地権者がその用地を利用できないでいる問題であります。私は、この間の経緯にかかわってきたこともあり、この問題を風化させ、地権者に泣き寝入りをさせないためにも特別委員会等で何度か質問し、誠意を持って解決に当たるという当局の答弁に期待をし続けて今日まで参りました。しかるに、この7月、保健福祉部長から地権者に、もうこれでおしまいにしてくれとでもいうような内容の回答が送られてきました。今、地権者は、県にだまされた、錯誤によって契約は無効だ、法廷で争うほかはないと怒りに燃えております。県は、この問題はもうおしまい、あとは訴訟なり何なり勝手にやってくれという方針でしょうか。前工藤知事にも嘆願書が出されていたはずであります。もう部長の答弁は不要であります。県民とともに歩み、県民との信頼関係の確立を目指す増田知事から、今後の県の対応について明快な答弁を求めるものであります。
 以上で私の一般質問を終わりますが、答弁によっては再質問させていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 村上恵三議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、いわゆる赤字地方債の発行についてでございますが、地方財政法におきまして、地方債をもってその財源とすることができる場合を、公共施設等の建設事業費や災害復旧事業費等の用途に限定をしているところでありますが、景気の低迷による大幅な税収不足や政策減税等により地方財政に大幅な減収が発生する場合には、その運営上、支障が生じることのないよう、特例法を定めることによりまして、その減収額を緊急避難的に補てんするための地方債の発行を認める場合がございます。しかし、議員御指摘の昨今議論されております、国の恒久減税等に伴う財源補てん対策として発行される赤字国債に相当する、いわゆる赤字地方債の発行につきましては、現在既に118兆円を超える地方財政の公債残高をさらに増加をさせまして、地方団体の借入金依存体質を助長することになることもさることながら、地方団体におきましては、発行した場合の償還財源を税率を個別の判断で引き上げるなどして、確保する手だてを有しておりません。また、仮に後年度地方交付税措置がなされるといたしましても、実質的な赤字地方債とも言える交付税特別会計の借入金が現在16兆円にも上っていることなども考え合わせますと、こうしたものの発行は避けるべきものと現在考えているところでございます。私ども地方団体といたしましては、地方分権推進計画にも示されておりますが、地方団体が自主的、主体的な判断と責任のもとに行財政運営を行うことが可能となりますように、地方税財源の充実、確保について国に対して強く求めていくことが必要であると、このように考えております。
 次に、新しい総合計画の達成度合いの尺度についてでございますが、新しい総合計画の推進に当たりましては、行政として何をしたかではなくて、その結果として、県民の皆様方の豊かさや暮らしやすさが総体としてどのように向上をしたかという、その施策の効果や質を重視する行政の推進が極めて重要でございます。今回の中間報告におきましては、この点に関しまして職員一人一人がそれぞれの施策の目的や効果を常にしっかりと認識しながら、住民へのサービス提供者として、また地域づくりをともに進めるパートナーとしての自覚を持ち、柔軟な発想と創意工夫で施策を進めることを明らかにし、新しい時代に対応した県行政の基本姿勢として四つの方針を掲げたところでございます。
 また、この方針には、県民の視点に立った目標設定とも深く関連してくる内容といたしまして、縦割り行政の弊害を排除した総合行政の推進、事務事業の評価システムによる施策の進行管理、施策効果の早期発現を目指す優先的、重点的な投資、そしてソフト面での工夫による政策効果の発揮、民間活力の積極的な導入や活用、市町村との連携強化なども盛り込んでいるところでございます。新しい総合計画における具体の目標設定につきましては、このような基本姿勢を踏まえ、施策の実施によって私たちの暮らしがどのように変わるのか、県民生活の向上にどのような効果をもたらすのかをわかりやすく県民にお示しできるよう、その指標化に努めてまいりたいと考えております。
 次に、病院事業についてでございますが、医療局は昭和25年に設立をされ、昭和35年から専任の医療局長を置きまして、県立病院事業管理者としてその経営に当たらせてきているところでございます。県立病院は自治体病院として、県民の医療ニーズに適切にこたえ、良質で効率的な医療を供給するという経営方針のもとで、県立病院等長期経営計画などを策定して、高度医療や僻地医療などの幅広い県民医療を展開してきたところでございまして、その経営に当たっても、業務全般にわたる改善、職員のコスト意識の徹底に取り組んできたところでございます。今後、医療保険制度の抜本的改革などが予定されるなど、その経営環境は極めて厳しくなることが予想されることから、21世紀を展望した新しい経営計画の策定作業に着手し、安定した経営基盤の確立を図ることといたしております。
 今、議員から御提案のございました医療局長の在任期間につきましては、地方公営企業法の趣旨、企業管理者の規定が置かれているその趣旨、そして県立病院を取り巻く経営環境、さらには県幹部職員の人事を総合的に勘案しながら対処していく考えでございます。
 次に、ふれあいランド岩手整備に係る用地問題についてでございます。
 ふれあいランド岩手は、平成6年12月の開所以来、障害者や高齢者の方々を含むすべての県民の皆様のスポーツや文化活動などを通じた交流と相互理解の場として定着をし、平成10年10月末までに延べ71万1、000人余の皆様方に御利用いただいたところでございます。このように多くの方々に利用していただける施設ができましたのも、貴重な用地を提供していただいた30人にも及ぶ地権者お一人お一人の温かい御理解と御協力のたまものでございまして、改めてこうした地権者の皆様方に感謝を申し上げる次第でございます。しかしながら、結果として地権者の中でお一人につきましては、あっせんした代替地についてその御希望がいまだ実現されておらないことも事実でございます。県といたしましては、今日に至るまで当該地権者の意を体して、御希望の実現に向けて種々方策を検討してまいりましたが、今なお実現していないことにつきましては大変まことに残念でございます。今後におきましても、引き続き地権者の御理解、御納得をいただけますように誠意を持って最大限の努力をしてまいりたいと、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いいたします。
   〔総務部長吉田敏彦君登壇〕
〇総務部長(吉田敏彦君) まず、平成10年度の県税収入の見通しについてでありますが、主な税目の10月末現在における前年同期に対する課税実績を見ますと、個人県民税は特別減税等の影響により17・4%、法人二税は景気低迷の影響から8・5%とそれぞれ落ち込んでおりますが、地方消費税が平年度化によりまして大幅に伸びていることもあり、県税全体では3・6%増と、当初予算の前年度決算額に対する伸び率1・0%増を2・6ポイント上回っているところであります。しかしながら、個人消費は低調に推移し、かつ雇用情勢も悪化するなど景気は低迷状態が続き極めて厳しい状況にあり、今後の見通しについては、地方消費税は引き続き順調に推移すると見込まれますが、法人二税、自動車取得税、軽油引取税等については回復が期待できないことから、本年度の予算に計上しております県税収入の確保は楽観を許さない状況にあるところであります。県といたしましては、今後とも引き続き景気の動向等を注視しながら、税収の確保に最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
 次に、法人からの出資引き揚げに係る基本的な考え方についてでありますが、県では、平成8年1月に決定した行政改革大綱に基づき、出資目的が達成していると認められる法人に対する出資の引き揚げを進めているところであります。出資引き揚げに当たりましては、商法法人で5期連続で当期利益及び未処分利益を計上するなど経営が安定していると認められる法人や、関連企業の再編整備などにより出資時と状況が変化したと認められる法人、目的を達成して解散することとなる法人を検討対象としているところであります。しかしながら、法人個々に状況が異なり、また引き揚げることによる県行政への影響や法人の経営に対する影響などにも配慮する必要があることから、所管部局とともに法人ごとに個々に検討を行ったほか、出資等適正化調査委員会において引き揚げの是非について審議するなど、慎重に検討してまいったところであります。なお、出資の引き揚げに際しましては、法人との合意形成が不可欠でありますことから、今後とも対象となる法人に対し県の方針を十分説明し、御理解を得て実施してまいりたいと考えております。
 次に、出資法人の経営問題に対する方策についてでありますが、県におきましては、県出資等法人指導監督事務要綱に基づき、法人の所管部局におきまして、その事業や運営の状況などについて指導監督を行っているところであります。出資法人の事業内容の見直しや経営改善策の検討につきましては、法人が主体的に行うことが肝要ではありますが、県といたしましても、これを促進することが重要との認識から、現在、所管部局とともに、社会情勢の変化等により役割を終えた事業はないか、他法人と類似する事業はないか、簡素で効率的な運営など経営の健全化は図られているかなどの項目について、改めて法人ごとに検討を行っているところであります。
 また、出資法人の経営の効率化、健全化を図るためには、県においてもその運営状況を事前に把握し、適切な指導を行うことが重要でありますことから、今後必要に応じ、御提言の専門家による経営診断や法人事業の目的整合性、計画性、収益性などについての評価基準を策定するなど、法人の健全経営を期してまいりたいと考えております。
 次に、県出資法人の議会への報告の充実についてでありますが、国においては、特殊法人の財務内容の公開を促進する観点から、平成9年度に特殊法人の財務諸表等の作成及び公開の推進に関する法律を定め、損益計算書、貸借対照表、財産目録などに加え、主な財産及び負債の明細や、固定資産の取得及び処分並びに減価償却費の明細などを記録した附属明細書及び決算報告書などを一般の閲覧に供することとしているところであります。
 県といたしましても、したがいまして、このような国の動向や、御指摘のありました御趣旨を踏まえ、県出資法人の報告内容について経営状況がより明らかになるよう、検討を進めてまいりたいと考えております。
   〔企画振興部長武居丈二君登壇〕
〇企画振興部長(武居丈二君) 広域行政への取り組みについてであります。
 県では、本年度、専任組織を設置するとともに、さまざまな機会をとらえての情報の提供や地域活性化事業調整費の活用を通じて広域行政の機運の醸成に努めているところであり、さらに広域行政とも関連する介護保険や廃棄物処理の広域化などの市町村の重要課題について、関係部局とともに調査、検討を進めているところであります。今後は、これらの取り組みに加え、より具体の行政課題がある地域に対しては、課題の解決に向けて県が積極的な役割を果たしていくことが重要であると考えております。
 例えば、議員の御指摘のありました盛岡都市圏につきましては、北東北の交流拠点として、21世紀における北東北発展の先導的かつ中核的な役割を担うとともに、圏域発展の効果が県内外に広く波及するなど、県勢発展の牽引的役割を確実に果たす地域になるものと認識しております。したがいまして、盛岡都市圏の今後を考えるとき、何よりも21世紀のあるべき将来像をしっかりと描き、これを圏域住民に示し、このビジョンに基づきながら、北東北全体を視野に入れた高次都市機能の集積を促進するとともに、関係する市町村が連携し、一丸となってさまざまな課題に取り組んでいく必要があるものと考えております。これは盛岡都市圏の広域行政の推進とも大いに関係するものであり、一義的には、地元市町村において将来のビジョンづくりへの積極的な対応が望まれるものでありますが、県としても、関係市町村の求めに応じて全面的に協力するとともに、ビジョンづくりそのものへの参画を要請された場合にあっては、積極的にこれに対応するなどして、盛岡都市圏が着実に北東北の交流拠点として発展していくよう、県としての役割を果たしてまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長小野寺修君登壇〕
〇商工労働観光部長(小野寺修君) まず、中心市街地活性化事業についてでありますが、いわゆる中心市街地活性化法の活用に当たりましては、まずもって、市町村がみずからのまちづくりの全体像を描きながら、計画の位置や区域、整備、改善策などに関する活性化に関する基本計画を策定することが第一歩となりまして、この中身が極めて重要になってくるものであります。県といたしましては、市町村が策定する基本計画の実現について幅広い支援をしてまいりますが、そのためには従来の商業振興の枠組みを越えた各部横断的な取り組みが必要であるとの考え方から、本年5月に、当部を初め、土木部や企画振興部など庁内関係5部8課による中心市街地活性化連絡会議を設置し、現在、地元市町村の要望に応じた各部事業の連絡調整を行っているところであります。例えば、本年11月に基本計画を策定した遠野市につきましては、土木部所管の土地区画整理事業や街路事業、当部所管の店舗改装などのハード事業や空き店舗対策などのソフト事業、さらには企画振興部所管の情報ネットワーク整備事業など、各部の事業との調整をとりながら、計画の実現に向けて積極的に支援していくことを検討しているところであります。
 また、県内各市の取り組み体制についてでありますが、現在まで遠野市が関係課による中心市街地活性化推進会議を設置しているほか、盛岡市など10市におきましても、基本計画策定に向けて関係課による情報交換会を実施していると承知しております。
 今後、県といたしましても、庁内各関係各部の横断的な連携のもとに、市町村の取り組みに対し一体的な推進を図ってまいりたいと考えているところであります。
 次に、大ケ生金山跡地の土砂流出問題についてでありますが、このたび災害が発生した箇所は、かつて鉱山が操業された当時、金を製錬した際に生ずる選鉱鉱滓--製錬した際の残り物でございますけれども--、これを堆積した箇所でございまして、閉山後既に50年以上経過し、堆積場はほとんど地山化していたところでございました。災害発生以来、その対策については、関係各部との連携のもと鉱山行政を所管する通商産業省関東東北鉱山保安監督部、地元盛岡市との間で数次にわたり協議、検討をしてきているところであります。この事案のような義務者不存在の休廃止鉱山の公害対策といたしましては、国において休廃止鉱山公害防止等工事費補助金制度がございますので、この制度の活用について当該崩壊箇所の地主でもあります盛岡市を助言、指導してまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕
〇保健福祉部長(関山昌人君) グリーンピア田老に係る年金福祉事業団からの要請についてでありますが、国においては、平成9年6月の閣議決定において、年金制度の改革にあわせ、年金福祉事業団を早ければ平成12年3月をもって廃止し、大規模年金保養基地の運営事業から撤退するとしております。このため、年金福祉事業団から県に対し、グリーンピア田老資産の譲渡について検討の要請があり、土地、建物の簿価約80億円の2分の1程度での取得について、本年4月までに回答するよう求められたところであります。これに対して県では、行財政改革を推進しているところであり、提示された価格での取得は極めて難しい状況にあることから、譲渡受け入れの回答を保留したところであります。これとあわせ、年金受給者などの福利厚生を図る趣旨から、今後とも国の責任において、現行の運営形態で存続することを要望したところであります。
 今後の対応方針についてでありますが、年金福祉事業団の廃止に伴う大規模年金保養基地からの撤退は、グリーンピア田老だけの問題でなく、地域経済に与える影響や従業員対策など全国的に共通する課題も多いことから、本年6月に大規模年金保養基地が所在する13の道県で、国及び年金福祉事業団に対し保養基地の存続について要請を行ったところであります。以上のような状況を踏まえて、今後とも引き続き他の大規模年金保養基地所在の道県と連携を図り、国の責任において存続するよう要望してまいりたいと考えております。
   〔生活環境部長村上勝治君登壇〕
〇生活環境部長(村上勝治君) 大ケ生金山跡地の土砂流出による公共用水域の水質汚濁問題につきましては、水質汚濁防止法に基づき盛岡市において対応してきているところであり、県といたしましては、これまで市に対して必要な助言、指導を行ってきたところであります。市からは、土砂流出後の緊急対策措置が終了後、9月下旬に実施した金山跡地の下流域の水質調査の結果、いずれの項目についても環境基準を超過していないとの報告を受けております。したがいまして、現状では特に利水上の問題はないものと考えられますが、今後とも当該河川の水質保全について、市に対する技術的支援や協力を行い、関係部局と連携を図りながら、万全を期してまいりたいと考えております。
   〔農政部長佐藤徳兵衛君登壇〕
〇農政部長(佐藤徳兵衛君) 大ケ生金山跡地の土砂流出に係る農業用水についてであります。
 来年の作付準備を控えておりますが、現状では農業用水としての水質に問題はないと報告を受けており、また河川に堆積している水質汚濁原因の崩落土砂については、河川監理者である盛岡市が河川災害復旧事業により本年度内に土砂の撤去や護岸工事等を行う予定であると伺っております。さらに、盛岡市は継続して当該河川の水質検査を行う予定と聞いておりますので、その結果、水質が基準値を上回るおそれがある場合には国庫補助事業を導入し、農業用水の取水位置の変更等を含む恒久的な対策について、市及び土地改良区と協議の上、対応してまいりたいと考えております。
   〔教育長大隅英喜君登壇〕
〇教育長(大隅英喜君) まず、中央教育審議会の答申の評価についてでありますが、このたびの答申が教育委員会制度を中核として、地方教育行政が今まで果たしてきた役割を評価しつつ、地方分権と教育改革推進の流れの中で、より総合的、積極的な教育行政の展開を可能とするシステムづくりを目指して、住民に身近な教育委員会や学校に、より一層の権限と責任を与えることを提言するなど、地域の特色や実情に応じた教育が行えるような趣旨となっていることは、評価できるものと考えているところであります。
 なお、学級編制の弾力化に伴う教職員定数の改善や必要とされる財源の確保方策等については、今後、国において十分な配慮がなされることが必要であると考えております。
 次に、新たな教育振興基本計画での中教審答申の取り扱いについてでありますが、県教育委員会におきましては、新しい時代にふさわしい教育行政の方向や基本施策について、岩手県教育振興基本対策審議会に審議をお願いしているところであり、去る11月11日にその中間答申をいただいたところであります。中間答申においては、地方分権の時代を迎え、中教審の答申をも踏まえて、学校の自主性、自律性の確立のための着実かつ適切な対応が必要である旨記載、提言されております。最終答申に向けてさらに審議が行われるものと考えております。
 県教育委員会といたしましては、中教審の答申等、国の教育改革への取り組み、県教育振興基本対策審議会の最終答申などを踏まえながら、本県教育の一層の振興を図るため、新しい教育振興基本計画を策定したいと考えております。
〇議長(那須川健一君) 次に、船越賢太郎君。
   〔21番船越賢太郎君登壇〕(拍手)

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