平成19年2月定例会 第23回岩手県議会定例会会議録 |
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〇40番(小原宣良君) 政和・社民クラブの小原宣良でございます。会派を代表して、増田知事にお伺いいたします。
初めに、県土の均衡ある発展の再構築についてお伺いいたします。 県行政は、従来、九つの広域圏ごとに、市町村との緊密な連携のもとに行われてきました。現在は市町村合併も大きく進展したこととも相まって、四つの広域振興圏となっております。この間の取り組みの中で特徴的なことは、県北・沿岸振興本部を立ち上げたことであり、また、県南広域振興局を設置し、具体的事業に着手していることであります。県は、新年度の県北・沿岸圏域の振興策として、各地方振興局に設置した地域産業戦略会議を通じて、圏域の産業振興に向けた連携体制を構築するとともに、質の高い地域資源を県内にPRする事業の展開や、公共施設の整備促進のため、市町村などに対して県単独資金の貸し付け事業を予定するなど、額そのものは必ずしも多くはありませんが、市町村や他の団体と共同して地域振興に取り組んでいこうとする姿勢は見てとれるところであります。 一方、県南広域振興局では、先ごろ、県南広域振興圏産業振興戦略を発表いたしました。この戦略の意義について、圏域の各産業を取り巻く外部環境は大きく変化しており、その変化に的確に対応していく戦略が必要であるとしております。この意味するところは、記述しているとおり、国内の開発拠点と海外の量産拠点という生産形態の中で、もはや、アジア経済なしに日本経済は存在できない状況になっていること。また、国内の製造業が回復基調にある中で、新たな大型設備投資を見据えた国内各地の誘致競争への戦略的な取り組みが重要であることを的確に把握している点に心強いものを感じます。 そこで、知事にお伺いいたします。 静と動とでも言うべき両極に位置する県北・沿岸圏域の産業振興と、本県経済の牽引役と位置づける県南広域振興圏の産業振興をどのようにリンクさせていくかであります。人と物、そして地域の文化までもが相互に交流し合う関係をどうつくり上げていくかは、まさに本県が抱える命題中の命題であろうかと存じます。前段触れました両広域圏の課題と取り組む方針を踏まえ、県土の均衡ある発展の再構築に向けた知事の御所見を賜わりたいと存じます。 次に、財政問題についてお伺いいたします。 今日、地方自治体の財政状況は、どの自治体も大変困難な事態に立ち至っております。こうした財政悪化の要因をつくり出したのは何なのか。そして、再生への道とはいかなるものか、お伺いしたいと存じます。 バブル経済が崩壊したのは1991年、平成3年ごろであります。ちょうど時期を同じくして、日米構造問題協議最終報告書が出されたのが1990年、平成2年6月28日です。これは、日米両国間の大幅な貿易不均衡の是正のために、日本がアメリカに対して大規模な社会資本整備を約束したものでありました。バブル経済崩壊後の日本経済立て直しとして登場した公共投資は、2000年度―平成12年度までの10年間で430兆円を投資するというものでした。当然のことながら、地方自治体も総動員され、県単独事業を初め公共事業の前倒しが図られると同時に、多額の県債発行によって、この原資が賄われてきたのであります。この間、本県における国の総合経済対策、あるいは緊急経済対策に呼応した補正予算額の合計額は、私の調べでは4、162億3、300万円となるものです。 知事にお伺いいたしますが、私は、やはりこの430兆円の公共投資に呼応した本県における経済対策のあり方が本当によかったかどうかを含めて、今、しっかりと検証してみる必要があると思いますが、いかがでしょうか。知事の御所見を賜わりたいと存じます。 次に、新年度予算編成にも関連いたしますが、ぜひ、その前に知事の見解を伺っておかなければならない点がございます。それは、昨年7月3日に出されました、竹中総務大臣の私的懇談会である地方分権21世紀ビジョン懇談会の報告書であります。内容は、新分権一括法を早期に制定して、自治事務の執行基準は原則として条例で定め、その上で国と地方の権限と責任を再整備すべきとする一方で、地方債の完全自由化、地方債に対する交付税措置の廃止、いわゆる再生型破綻法制の整備、交付税改革では新型交付税導入などが掲げられております。この提言は、現代をグローバル都市間競争の時代と定義し、自治体破産制度を含めた市場原理導入による自治体づくりを目指すとしています。前段申し述べましたとおり、国の都合による超大型公共事業に地方が動員され、残された借金の整理に追われる姿、そして市場原理導入による自治体づくりへの誘導という、今日の国の政策のあり方について、全国知事会実質ナンバーツーの立場にある増田知事の御見解を賜わりたいと存じます。 なお、このような市場原理導入を基本とした地方自治のあり方を求める先に道州制の議論方向があるとすれば、私は、この道州制の議論を、ただ単に時代の流れとして推し進めるのではなく、いま一度立ちどまって冷静に考えるべきではないかと思うのですが、あわせて知事の御見解をお聞かせください。 次に、新年度予算編成にかかわって、幾つかお伺いいたします。 国の地方財政対策をめぐる総務省と財務省の争点は、地方の財源不足の大幅な減少に伴う地方交付税財源の余剰をどのように取り扱うかをめぐるものであったと言われております。財務省側は、地方税の増収見通しにより財源不足が解消し、地方交付税の法定率分に余剰が生じているとの認識に立ち、法定率、すなわち交付税の原資となる国税5税の一定割合を引き下げて国の赤字解消に充てることを主張したのに対して、総務省側は、交付税制度維持の立場から、社会保障費の増加傾向や公債費の高どまり、また、32兆円の交付税特別会計借り入れの地方返済分などが残っているとして、法定率引き下げに反対を主張しました。結局は、交付税の法定率を維持する一方で、引き続き地方歳出の圧縮を続け、同時に、繰り延べてきた交付税特別会計借り入れの償還の開始、高率の政府資金や地方債の繰り上げ償還を認めるなど、交付税制度堅持と地方財政健全化をセットにした地方財政計画になったものと承知をいたしております。 質問の第1は、国税、地方税ともに空前の増収となっていると言われている点についてであります。私には全くそうした実感はありませんが、もし、東京など大都市において、好景気、税収の大幅増が本当にあるなら、地方財政計画の規模を引き上げて、地方行政サービスの水準アップを図るべきであったと思われます。これは、大都市と地方との税の再配分にもつながるものであります。知事はいかがお考えでしょうか、お伺いいたします。 第2は、地方財政計画と自治体予算とのかかわりについてであります。地方財政計画の歳出で給与費や地方単独事業の削減が行われ、これらとの見合いで交付税総額や臨時財政対策債が決められているため、自治体の予算編成においても、これらの経費の削減に準じた措置を講じなければ、交付税、臨時財政対策債等の一般財源が財源不足となり、結果として、予算編成に支障を来すこととなると思われますが、いかがお考えでしょうか、お伺いいたします。 また、実際の地方公務員の削減状況でありますが、2004年の数字で見ますと、退職者数は約18万人に対して採用者は10万人足らずで、約8万人超の定数削減が行われているようでありますが、本県におけるここ数年の採用者と退職者数はどのような推移をたどってきたのでしょうか、市町村の実態とあわせてお伺いいたします。 第3は、一連の税制改正に伴う県民の税負担の実情についてお伺いをいたします。 来年度から、国が景気対策として導入した所得税・住民税の定率減税全面廃止の影響が出てきます。また、来年度から国税である所得税から地方税である個人住民税への税源移譲が行われるため、個人の負担が所得税で軽減し、個人住民税で増税となります。これに、2004年の年金改正で、厚生年金保険料、国民年金保険料とも負担増が決まっておりますので、家計負担への圧迫は、まさに庶民泣かせと言ってよい状況にあります。このように景気上昇による企業の業績向上の成果が、雇用者、労働者にほとんど還元されないという条件のもとで、本年6月以降における個人住民税額の増加による手取り賃金の減少は、個人消費の回復という政府経済見通しを狂わせる可能性が大きいとの指摘が多くあります。知事は、これら税制改正に伴う税負担のあり方をどう受けとめているのか。また、市町村とも共同して、課税内容等についてできるだけ丁寧な説明を行うなど、工夫した対応が求められていると思われますが、いかがお考えでしょうか、お伺いいたします。 次に、農政問題についてお伺いいたします。 政府は、新年度予算編成に合わせて、1、品目横断的な経営安定対策、2、米政策改革推進対策、3、農地・水・環境保全向上対策を3本柱と位置づけて、所要の予算措置を図ったとされております。しかし、品目横断的な経営安定対策は、対象を担い手だけに絞り込み、農家数の3割、農地の5割しか対象にならないというものであります。米政策改革推進対策は、ほとんど農協組織が取り組むものとなっており、農地・水・環境保全向上対策は、地域共同活動を必要前提条件として、共同活動のない地域での減農薬、減化学肥料農業・有機農業などは対象から外れました。 さて、こうした農業政策の新たな展開に当たって、県内各地域から要望が強く上がっているのが、当然のことながら、農地・水・環境保全向上対策であります。予算措置とのかかわりもあろうかとは存じますが、県には最大限の御努力をお願いしたいと存じます。現状をどう見ているのか、お伺いをいたします。 また、品目横断的な経営安定対策に見られるように、これら農業構造政策は選別型であります。それも、かつてない大選別であります。共生型の集落社会のあり方を真っ向から否定することで、この政策は遂行されようとしています。これは、環境型家族農業とは全く逆の姿と言わなければなりません。かつて、岩手型農業は、家族農業を支える農政でありました。 そこでお伺いいたしますが、述べましたような国の選別型の農業政策をどう受けとめ、さらには、岩手らしさが発揮できる農業展開をどう図ろうとお考えか、知事の基本認識をお伺いいたします。 〔副議長退席、議長着席〕 次に、米からのエタノール生産についてお伺いいたします。このテーマを取り上げたのは実に久しぶりでありまして、しかも、私にとりましては最後の機会となりました。ぜひお聞き取りいただきたいと存じます。 御承知のとおり、バイオ燃料は植物を原料とした燃料のことであります。燃やすと温暖化ガスの二酸化炭素が出ますが、植物自体が成長の過程でCO2を吸収しているために排出量はゼロとされ、環境にやさしいエネルギーと言われているものです。最近の新聞報道にはかなり積極的な記事が目立つようになってきました。これからバイオ燃料は世界の主流になる。リスクはあっても、今動き出さなければ、日本は世界から立ちおくれる。この発言は、農林水産省環境政策課長のものとして紹介されておりますし、さらに、同省は来年度、国産バイオ燃料の本格的な実用化に向け、全国3カ所にエタノール大型プラントを設けるため、バイオ燃料地域利用モデル実証事業に取り組むとしております。一方、実験用の小型プラントの設置など、バイオエタノールの生産に前向きな企業や自治体が多いと報じております。 さて、私が、米からエタノールを生産する必要性について質問し、県の対応を求めましたのは、私が県議会に参りました昭和62年6月定例会一般質問を初め、平成13年までの4回の一般質問等の場でありました。農業県岩手から、米からエタノールを生産する実験用の小型プラントを立ち上げてほしいと私なりに力説いたしましたが、県の部長以下の答弁は全く無気力なもので、やる気のかけらも見られないものでありました。以後、私はこの問題に触れてきませんでした。結局のところ、県は、当時、環境問題とリンクした考えを持つことができなかった。ただ単なるエタノール生産コストだけの範囲でしか物を考えることができなかったことを意味いたします。 私がこの問題を取り上げたきっかけは、昭和59年3月16日付官庁速報に、このほど米燃料エタノール等研究会が発足したとの記事に接したときからでした。改めて紹介しておきますが、米のエタノール化は、エタノール生産を主目的としますが、その生産過程で出てくるたんぱく質の濃厚な搾りかすと蒸留残液は家畜の飼料として有効でありますし、炭酸ガスも、ハウス利用やドライアイスなど、多くの用途開発の可能性のある夢多き事業であります。 現在、本県にあっては、奥州市胆沢区において、平成16年から米からのエタノール生産について調査・研究に取り組んでいるとお聞きをいたしますが、県としても、積極的に対応するため調査・研究チームのようなものを立ち上げて、JAや民間企業とも連携した取り組みを始めるべきと考えます。機まさに熟せりの感を強くするものでありますが、知事の御所見を賜わりたいと存じます。 次に、林業公社事業と県有林事業の一元化についてお伺いいたします。 御承知のとおり、林業公社は昭和39年2月定例県議会において、地域格差の是正、辺地対策として、積極的に造林を促進するよう建議がなされ、これを受けて県は、同年5月の庁議において林業公社設立の方針を決め、一方、関係市町村、林業団体等からも林業公社設立の請願がなされたことなどから、県は、農林大臣に設置を申請し、同年11月に大臣許可を得て発足して以来四十数年、地域に根差した造林事業を営み続け、今日に至っているものであります。 このように戦後の復興期にあって、木材需要の大きな高まりを背景に、地域産業振興の中心的役割を担ってきました。しかも、林業公社は、県有林事業を代行する役割を設立当初から予定されていたものでもありました。現に県は、県有林事業を県林業公社に業務委託してきたことでも明らかであり、また、農林漁業金融公庫資金の借り入れには、県の損失補償契約が必要であることから、毎年度、県議会の承認を得て、今日に至っているものであります。 さて、今般、林業公社事業と県有林事業を一元化し、関係条例等の整備を行うとのことであります。 質問の第1は、ただいま申し述べました損失補償契約については、林業公社廃止に伴って条例を廃止する条例が提案されておりますが、県は、これをどのような形で肩がわりすることになるのか、金額とあわせてお示しください。 第2は、公社造林事業と県有林造成事業の一元化後の事業の改善計画が明らかでない点であります。確かに、徹底した施業の見直しによる事業費の削減、要員の縮減、組織の統合等により管理経費の削減を図るとしておりますが、どのような基準によって事業費の削減、管理経費の縮減を図ろうとしているのでしょうか。現状との対比で見るなら、県直営の方が公社営林よりコストが高くなると思われてなりませんが、いかがでしょうか、お伺いいたします。 第3は、県は、公社営林については、将来的に市町村との精算が求められるので、県有林事業と公社営林事業を区別して資金管理を行う必要があるとしている点は、一元化の方向に反するものではないでしょうか。いずれ、公社設立から40数年しか経過していない現状において、長伐期契約への変更等によって、まだまだ木材が現金化されていない中で、プロフェッショナル集団でもある林業公社職員を含め林業公社を廃止すること自体、早まった判断ではなかったかと思われてなりませんが、あわせて御見解を賜わりたいと存じます。 次に、県競馬組合の事業のあり方についてお伺いいたします。 県競馬組合は、昭和39年に地方自治法上の地方公共団体として設置されてから43年目を迎えました。この間、当該競馬組合の構成団体である岩手県、水沢市(現奥州市)、盛岡市に対し、35年間にわたって利益金の配分がなされてきました。岩手県には223億9、400万円、配当率55%、水沢市(現奥州市)には101億8、400万円、配当率25%、盛岡市には81億4、500万円、配当率20%でありました。しかし、今日にあっては、利益金を構成団体に配分し、構成団体の各行政分野の施策推進に直接貢献するという財政競馬としての役割を果たすことは、もはや不可能な状態にあります。 昨年11月20日、岩手県競馬組合が作成した新しい岩手県競馬組合改革計画によりますと、次の記述、すなわち、当面、発売の大幅な拡大は期待できず、起債等の償還は困難な見通しであり、現状のまま推移すれば、競馬事業を継続することは困難な状況になるものと見込まれます。本県の競馬組合は、県、奥州市、盛岡市が共同で運営する組織であり、その構成団体は、競馬組合から利益金の配分を受け取る一方、損失がある場合、競馬組合の規約上、構成団体の負担は免れず、損失は、競馬組合の設立母体である県、奥州市、盛岡市で負担しなければなりません。したがって、競馬事業を廃止した場合、資産処分状況などにより増減しますが、債務と廃止に伴う費用など372億円と試算される債務等の支払いが、構成団体にとって極めて大きな財政負担となりますとあり、この記述は、競馬事業存廃基準設定の背景の項にあるもので、極めて重要です。今日抱えている競馬問題の本質は、実はここにあるものです。 新しい改革計画の平成19年度損益見込みを見ますと、経常損益を2億1、600万円の黒字と見ていますが、この損益見込みは、平成18年度に構成団体から330億円の融資を受けることを前提とした試算ですから、この330億円の融資がなければ、今年度末をもって競馬事業は廃止、倒産ということになるものです。 そこで、県競馬組合管理者でもある知事にお伺いいたします。 第1に、述べましたように、予定されております330億円の融資がなければ、県競馬事業は廃止、倒産です。構成団体のいずれかの団体において、関係する条例、予算が否決となった場合、債務や廃止に伴う費用として試算されている372億円は、県競馬組合規約の定めるところにより、分賦割合で負担することになると受けとめてよろしいでしょうか。 なお、分賦の場合にあっても、融資スキームにあるように、県から奥州・盛岡両市に必要額を貸し付けることは可能なものなのでしょうか、お伺いをいたします。 第2に、単年度赤字分を繰り上げ充用とした平成12年度以降の早い時期において、構成団体に対して分賦による負担を求めなかったのはなぜでしょうか。もし、この時点で、県競馬組合規約の定めにより分賦の措置がとられていたなら、県競馬組合経営実態にかかわる情報開示がなされていたであろうことを思えば、県議会、両市議会や県民・市民の皆様の問題意識もまた格段に違っていたのではないかと思われるのであります。私は、この点は、増田知事3期12年の中にあって、痛恨の判断ミスであったと思われてなりませんが、いかがお考えでしょうか、お伺いをいたします。 最後に、改めてお伺いいたしますが、330億円の融資を、なぜ分賦としなかったのか、御説明ください。この問題はかつてなく重大な決断を求められる案件と心得ており、慎重な審議の上に、誤りなき結論を導き出したいと願っているものでございます。 質問を閉じるに当たり、この機会に増田知事に一言ねぎらいの言葉を申し述べます。 増田知事におかれては、多難な3期12年間、大変御苦労さまでした。知事は、地方分権改革の旗手として、全国知事会の中にあって、国との激しいやりとりの場に身を置いてこられました。また、県内にあっては、在県・在庁時間が少ないとの指摘もありましたが、そうした中で県内をくまなく歩き、実情把握に努められました。今後におきましても、本県をしっかり見つめられるポジションに位置し、御指導、御助言を賜れば幸いであります。 かく言う私も、今期限りで議員を辞することといたしました。知事初め、執行部各位、そして同僚・先輩議員の皆様には、5期20年間にわたり御指導を賜りましたことを心から感謝を申し上げます。 最後に、再選を目指す議員各位には、勇躍としてこの議場にお戻りいただくことを心から御祈念申し上げまして私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手) 〔知事増田寛也君登壇〕 〇知事(増田寛也君) 小原宣良議員の御質問にお答え申し上げます。 まず、県土の均衡ある発展の再構築についてでありますが、本県においては、今年度、新たに四つの広域振興圏を設定して、より広域的な視点で戦略的な産業振興の取り組みを推進しております。その取り組みに当たっては、地域の潜在的な可能性を生かすとともに、海外を含めた域外へ販路を拡大することこそが重要である、このように考えておりまして、4広域振興圏がそれぞれの産業構造や社会基盤を相互に活用し、強みを生かし弱点を補完し合い、圏域間で連携しながら産業振興を図っていくことが激化する地域間競争を勝ち抜く上で不可欠である、このように認識しております。 県北・沿岸圏域では、すぐれた品質の農林水産物や特色あるものづくり基盤などの地域資源、人材をより広域的に結集し、持続的かつ自立的な地域社会の構築を目指し、県北・沿岸圏域における産業振興の基本方向を策定して官民の総力を挙げた取り組みを展開しております。これに対し県南圏域では、自動車関連産業や半導体産業を核としたものづくり産業の集積によりさらなる産業基盤の強化を目指しているところであり、加えて、今後は平泉文化遺産の世界遺産登録を契機として国内のみならず国際的な観光誘客が見込まれることから、県南広域振興圏産業振興戦略を策定し、海外をもにらんだ取り組みを進めております。 こうした各圏域の取り組みを結びつけるため、県南・県央圏域に集積した企業の県北・沿岸圏域への二次展開、整備された港湾を活用した内陸と沿岸部の物流の促進、あるいは平泉を訪れた観光客を県内他地域に周遊させる仕組みづくりなどを推進し、県南・県央から県北・沿岸への人と物の循環を促進することにより経済効果を全県に波及させ、本県全域の持続的な発展を図ってまいります。 次に、財政問題についてであります。 まず、経済対策に関する御指摘でございます。この12年間の前半におきましては、国の経済対策に呼応し、社会資本整備を前倒しで進めてきたところであります。これは、県民生活の向上や将来の発展の基盤となるインフラの整備促進を図ることを優先すべきとの判断で行ったものでございますが、県債残高が大幅に増加するとともに、予測の範囲を超えた景気の低迷の長期化や当初の想定を超えた地方交付税の大幅減額の影響などもあり、財政状況が年々厳しさを増してきたところであります。このため、平成15年度から行財政構造改革プログラムに基づく取り組みを進めるとともに、平成18年度には県債残高が減少に転ずるなど、財政健全化の道筋をつけるように取り組んできたところであります。あわせて、これまでに整備してきた社会資本を有効に活用し、県内産業の振興や県民生活の向上を図ることに努めてきたところであり、私の任期中に行った社会資本整備の評価につきましては、そうした取り組みの成果も含めて、今後、中長期的に判断されていくもの、このように考えております。 次に、国の政策との関係につきましては、バブル経済の崩壊に伴う経済対策において、各地方自治体においても、それぞれの地域における社会資本の必要性を踏まえながら、国の動きと呼応して積極的に事業を行ったものでございますが、これまでに一定のインフラ整備が進んだことや、少子・高齢化の進行、地方分権の進展などの環境変化を踏まえれば、今後は、地方の主体的な判断による政策決定がより重視される方向になるべきであります。また、地方自治体に対する市場原理の導入につきましては、具体的な制度の行方は今後の議論によるところも大きいと思われますが、いずれにしても、これまで以上に各自治体の財政運営や経営責任が重視される方向で改革が進んでいくものと考えております。 ただし、地理的、歴史的な条件や経済活動の状況が多様な地域が存する中で、地方は教育や福祉、医療等の基本的な行政サービスを安定的に提供していく責任を負っていることから、これに必要な財源はしっかりと確保される必要があります。こうした観点から、自主性、自立性の高い地方の財政運営の確立に向けて、さらに国に働きかけを行っていくとともに、各地域の経済産業基盤をより強固なものにしていくことがこれからの地方自治体にとってますます重要であります。 次に、道州制についてであります。 私は、道州制の議論のいかんにかかわらず、まずもって、今後の第2期地方分権改革において、国と地方の役割分担を根本的に見直した上で、国から地方への権限と税財源の移譲などを着実に進めていくことが重要である、このように考えます。その上に立って、道州制については中長期的な課題としてとらえ、国の都合による行財政改革や財政再建などの手段としてではなく、国と地方双方の政府を再構築し、真の分権型社会を実現するという視点で議論を深めていくことが必要と考えております。 次に、平成19年度予算に関連する御質問についてでございます。 まず、平成19年度の地方財政計画についてですが、その計画規模について一定の水準を確保し、地方交付税等の地方財源の所要額を確保することが今後とも不可欠であると考えておりますが、国、地方を通じた財政の健全化が大きな課題とされ、国民負担をできるだけ抑制しながら効率的な行政サービスを行うことが求められている現状を踏まえますと、税収の回復を理由として地方財政計画の規模を拡大することについては慎重でなければならないと認識しております。 なお、大都市と地方の間での税収や財政力の格差の問題については、地方交付税の適切な算定を行うことに加えまして、地域間の税源偏在の縮小につながるような地方税の改革も含め、今後の地方税財政制度改革の主要な論点として是正を図っていくべき課題であると考えております。 次に、地方財政計画と自治体予算のかかわりについてであります。 地方財政計画の策定を通じて、地方団体が法令や国の予算等に基づく標準的な行政水準を確保できるように地方財源が保障され、特にも、地方交付税制度の財源保障機能や財源調整機能により、地方財政全体はもとより、個々の地方団体の収支の適切な均衡が図られる仕組みとなっております。この意味で、地方財政計画は極めて大きな役割を果たしておりますが、その反面、地方の予算編成や行財政運営が地方財政計画の内容などに大きく左右されることは議員御指摘のとおりでございまして、ここ数年、財政健全化を進めるという国の基本方針のもとで地方交付税が抑制され、自主財源が乏しく、地方交付税への依存度が高い本県などにおいては財政運営に大きな影響を受けたところであります。 行政サービスの大半は地方が提供しておりまして、地方の事務には国が法令等でその実施を義務づけているものも多いことから、地方が果たしている役割の大きさに見合った国と地方の税源配分の見直しや、地方交付税の所要額の確保を通じて、分権時代にふさわしい地方の税財政基盤の構築を図っていかなければならないと考えております。また、国と地方は対等なパートナーとの観点から、地方財政計画の策定を初め、地方財政にかかわる重要な政策決定について地方の参画を求めていくべきと考えております。 次に、本県における地方公務員の採用者数と退職者数の推移についてでございますが、臨時的任用教職員を除いた地方公務員給与実態調査の数値で申し上げますと、まず、県の場合、平成15年度における一般職員、教育公務員、警察官を合わせた採用者数は875人で、退職者数は1、161人となっております。同様に、平成16年度は採用者数が766人、退職者数は1、085人、平成17年度は採用者数544人、退職者数は799人となっているところであり、単純な採用者数と退職者数の差し引きで申し上げますと、平成15年度は286人、平成16年度は319人、平成17年度は255人がそれぞれ減少しているという状況にございます。 次に、市町村の状況でございますが、平成15年度における一般職員、教育公務員を合わせた採用者数は353人で、退職者数は696人となっております。同様に、平成16年度は採用者数が258人、退職者数は662人、平成17年度は採用者数166人、退職者数は665人となっているところであり、単純な採用者数と退職者数の差し引きでは、平成15年度は343人、平成16年度は404人、平成17年度は499人がそれぞれ減少しているという状況にございます。 次に、税制改正に伴う税負担についてでございます。 定率減税につきましては、平成11年度税制改正において、当時の著しく停滞した経済状況に対応した特例措置として導入され、平成18年度税制改正で廃止が決定されたものでありますが、これは、経済状況が改善したことを踏まえた判断であった、このように受けとめております。 次に、税源移譲に伴う個人住民税の増加についてでございますが、この税源移譲は、国税である所得税の税率引き下げと地方の住民税の税率引き上げを一体的に行い地方税源の充実を図るものであり、三位一体改革の成果の一つと考えております。税源移譲は、個々の納税者の所得税と住民税の合計の税負担は増加しないように行われるものでございますが、定率減税の廃止による税負担の増加が同時に生じることから、それらの正確な情報を県民の皆様によく御説明することが必要だと考えておりまして、県では、昨年からテレビ、新聞等各種の媒体を利用してPRに努めてきており、市町村を通じてリーフレットの全戸配布も実施しております。また、市町村においてもそれぞれ工夫して広報を行っていただくこととしておりまして、県としては、今後とも県民の皆様への広報に努めていくこととしております。 次に、農地・水・環境保全向上対策についてでありますが、平成19年度におきましては、県内市町村から要望のあった約4万7、000ヘクタールすべてを対象に、4月から農地、農業用水等を保全する共同活動への支援を行うこととし、所要の経費を当初予算案に計上しております。 なお、環境保全に向けた先進的な営農活動への支援につきましては、新規・政策的な経費でありますので、市町村の要望を踏まえ、6月補正予算において検討することにしております。 県では、この対策を契機として、農地・水・環境の良好な保全と質的向上を図るとともに、安全・安心な岩手らしい産地づくりを促進してまいります。 次に、国の農業政策と岩手型農業についてでありますが、品目横断的経営安定対策は、農業従事者の減少、高齢化などにより農業生産構造が脆弱化する中で、兼業農家、高齢農家などを初めとする多様な構成員から成る地域農業を、担い手を中心として、地域の合意に基づき再編しようとするものであります。 この対策の導入に当たっては、小規模・兼業農家をどう取り込むか、園芸や畜産の経営安定対策の充実強化をどう図るかなどが課題であります。本県の農業は、家族経営を基本としながら、結いの精神に支えられ、専業農家と兼業農家が共生する地域ぐるみ農業として築かれてきたところであります。今般の対策で対象とされる集落営農は、本県がこれまで取り組んできた地域ぐるみ農業に通ずるものととらえておりまして、この対策を契機に、こうした岩手らしい特色を生かしながら、専業農家や兼業農家、さらには女性、高齢者を含め、そこに住まう人々それぞれの創意工夫により共存・発展していけるような集落営農を育成することが本県の農業・農村の活性化につながるものと考えております。 次に、米からのエタノール生産についてでありますが、本県では、豊富なバイオマス資源を有効に活用する循環型システムの構築を推進するため、昨年9月に県庁内に関係部局で構成するワーキンググループを組織し、先進事例の情報収集や経済性調査などを実施するとともに、東北大学やNPO法人いわて銀河系環境ネットワークと連携したバイオマス利活用モデルの調査研究、さらには、岩手生物工学研究センターにおける効率的なエタノール生産技術の開発などに取り組んでおります。 バイオエタノールの実用化や普及に向けましては、生産コストの低減が大きな課題でございますので、今後とも、産学官の連携を一層強化しながら、多収米の開発や低コスト生産技術の開発を推進し、バイオマス資源を活用した循環型社会の形成に努めてまいりたいと考えております。 次に、林業公社事業と県有林事業の一元化についてであります。 まず、損失補償条例の廃止に伴う林業公社の債務の肩がわりにつきましては、林業公社解散後の森林は県が分収造林事業として引継ぎ、経営を継続して行うこととしておりますことから、約214億円と見込まれる平成18年度末の農林漁業金融公庫の借入金につきましては、林業公社解散時に農林漁業金融公庫、林業公社及び県の3者間で債務引受契約を締結し、県がその債務を引き継ぎ、林業公社が農林漁業金融公庫と取り交わしている約定に沿って償還することとしております。 次に、管理費等の削減についてでありますが、平成16年度から18年度に実施した林業公社及び県有林の森林の現況調査によれば、自然災害で今後良好な成長が期待できない森林が2割程度ありますことから、これらの森林について、土地所有者の理解を得ながら計画的に解約してまいります。これによりまして、林業公社及び県が森林整備のために借り入れていた農林漁業金融公庫資金を繰り上げ償還し、約1割の利息の軽減を図ることとしております。 また、林業公社事業と県有林事業の過去5カ年間のヘクタール当たり管理コストはほぼ同程度となっておりますが、一元化によるスケールメリットを生かして、人件費などの管理費を現在の体制に比べ2割程度削減するなど、全体的な管理の効率化を進め、コストの削減を図ることとしております。 次に、県有林事業と公営林事業を区別した資金管理についてでございますが、林業公社事業と県有林事業との一元化後においては、県と土地所有者との分収造林契約によって事業を行っている県有林事業に加え、県と市町村が造林木を持ち分権で共有することになる公営林事業を、今後、契約期間が満了し、伐採時期が到来するまで70年以上にわたって管理していく必要がございます。このため、林木を伐採することにより生ずる販売収入や今後の事業経費などの資金管理を明らかにし、県有林事業と公営林事業との経営内容を県民へ明確に説明できるようにするとともに、公営林事業に係る市町村との精算を適切に行うため、資金管理を区分して行おうとするものでございます。 次に、林業公社廃止の判断についてでございますが、林業公社については、伐採収入を得るまでの間、森林整備に係る資金を農林漁業金融公庫や県、市町村からの借入金で賄っておりますが、植栽当初見込んでいた間伐収入がほとんどない中で、農林漁業金融公庫からの借入金が多額となり、償還のための県及び市町村からの借入額が年々増加しておりますことなどから、平成14年2月の包括外部監査や15年2月の有識者で構成された森林整備のあり方に関する検討委員会におきまして、県有林事業との一元化を含む抜本的な経営改善をすべきとの提言がなされたところでございます。また、林業公社の社員である市町村からは、これ以上の事業資金の負担は困難であるとして、県有林事業への一元化の強い要請があったところでございます。このようなことから、県としては、速やかに県有林事業と林業公社事業との一元化を図り、公庫借入金の繰り上げ償還による利息負担の軽減や、県有林と一体的に管理することによる管理費の節減などにより将来的な県民の負担を軽減する必要があると考えまして、今般、一元化を実施することとしたものでございます。 次に、県競馬組合事業のあり方についてでありますが、まず、議案否決の場合の構成団体負担につきましては、仮に競馬組合への構成団体融資に係る条例案、予算案が否決され、構成団体融資が実行できなくなった場合、競馬事業の継続は極めて困難な状況になるものと考えております。この場合は、直ちに競馬組合を構成する奥州市、盛岡市と競馬事業の存廃について協議し、競馬事業を廃止する場合は、競馬事業廃止の処理の進め方や資産処分のあり方なども含めて検討し、構成団体全体の負担が最小限となるように取り組んだ上で、なお損失が生じたときの負担は、競馬組合規約にのっとり、各構成団体間の協議を経て適切に決定されるものと考えております。 また、その結果として分賦することになった場合の、県から奥州市、盛岡市への必要額の貸し付け可能性についてでございますが、分賦された負担額は構成団体の確定した負担となり、通常の収支不足や財政難に対する貸し付けと同様な性格となってしまうことから、両市が賄い切れない部分があったとしても、それを県が貸し付けることについては、現時点では難しい、このように考えております。 次に、平成12年度以降の早い時機におきまして分賦による負担を求めなかったことについてでございますが、組合は収益を上げることを事業目的としていることから、民間企業で赤字が発生した場合の対応と同様に、まず、発売の拡大やコストの削減等によって収益性の改善を図ることとし、直ちに構成団体に支援を求めるのではなく、自助努力で赤字の解消を目指したものであります。そのため、構成団体の分賦によらず、繰り上げ充用の方法をとったものでありますが、結果として赤字が拡大することとなったことは、十分反省をしなければならないものと考えております。今後は、昨年11月に策定した新しい岩手県競馬組合改革計画に沿って、岩手競馬の再生に向けた道筋をつけられるよう全力を尽くしてまいる考えであります。 最後に、今回330億円を構成団体融資とし、分賦としないことについてでございます。 分賦は、構成団体の財源で対応するという点では構成団体融資と似た手法と考えられるわけでありますが、今回、全体を構成団体融資という形の仕組みとしたのは、一つには、分賦した場合は競馬組合は債務を返済する義務がなくなり、自助努力を促すという面が出てこないと考えられますこと。また二つ目として、仮に今年度末の債務330億円を競馬組合規約に定める割合に単純に当てはめて分賦した場合、奥州市82.5億円、盛岡市66億円の負担となり、両市にとっては財政運営に大きな支障が生じること。このようなことから、競馬組合の自助努力により利益を計上できる構造への転換を促し、融資として将来償還させることが県民の負担を最小限とし、御理解を得やすい手法である、このように判断をして構成団体融資として提案しているものでございます。 〇議長(伊藤勢至君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。 本日はこれをもって散会いたします。 午後4時14分 散会 |
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