平成11年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇3番(須藤敏昭君) 政和会の須藤敏昭であります。
 最終議会となりました本定例会に登壇の機会をいただき、政和会初め諸先生方に厚く感謝を申し上げます。
 さて、この4年間、悠久の営みの中で、日本も世界も激動と変革の歳月でございました。そして我が国は、この国のかたちを変えるべく六つの改革に着手し、また、増田知事も、新しい岩手をつくる施策の構築と基礎固めの4年間であったと受けとめております。例えて、昨年と本年の所信表明の言葉を引けば、時代の大きな潮流や生活者主権、地域主権の時代に的確に対応し、夢県土いわての創造を理念に掲げ、さらに、国の改革を待つのではなく、県みずからの主体によって新時代を切りひらく歴史的な好機であり、その帰趨を決する重要な時代との強い認識に立ち、決断と覚悟を示されておられるのであります。その理念に感銘いたし、時代認識まさに同感であります。そして県は、この1月、みんなで創る夢県土いわて、新しい岩手づくりのシナリオと題し、全世帯広報版をもって、これからの岩手の形、岩手の姿を示されました。つきましては、県土と県政の形や姿が、そして主役の県民をどこに導かれようとされておりますのか、以下、通告に従いましてお尋ねさせていただきます。
 まず、県財政の健全化と政策目標の評価制度についてお伺いいたします。
 これまでも諸先生方からさまざまの論があったところですが、一般論として、県民の視点からすれば、国であろうが地方自治体であろうが、私たちの家庭または個人にあっても借金のないことが健全であり、最も好ましい状態であることに異論がございましょうか。また、毎年言われております交付税で措置される優良な県債、優良な借金などありましょうか。当該負債のうち、交付税で措置されるのは総体の約50%であり、半分はみずからが負うべき借金であります。さらに、国も財源が逼迫し、地方への交付金のため既に20兆円の借金をしているのであります。このような状態がいつまで続き、その負債と利払いはだれが負担していくのでありましょうか。事業によっては、国、県、市町村とまたがり、すなわち二重、三重の借金の利払いとしているのではないでしょうか。県のシナリオでは、国などに依存したり他の地域を過度に意識するのではなく、みずからの選択と責任でと、高らかに掲げているのであります。
 いわく、県債依存度の目標10%、そうでありましょうか。
 平成9年度、県民が負担した県税約1、260億円に対し、県債は約1、630億円であり、県民が汗して働き納めた税を借金が上回っております。その結果、平成10年度末には県債残高が1兆円を超え、県の年間総予算額を上回っている状態となっているのは、御承知のとおりであります。
 ことし1年間の公債費を見ますと、利払いが340億円、元金返済が542億円と、1年間の利払いだけで当県は毎日約1億円ずつ支払っているのであります。私は、10%の目標そのものがあいまいであり、新たなルール、例えば県民経済である県税収入と県債残高をリンクさせるなど、県民にわかりやすい設定が望ましいと考えます。これらの国から県、市町村までの負債が何を意味するか、私どもの世代はもとより、次世代を担う若者が敏感に感じ取っているのではないでしょうか。世代間の負担は公平であるべきで、次世代に過大な負の資産を引き継ぐべきでないと考えます。
 我が国は世界一の債権国でありますが、同時に、公的長期債務残高は主要先進国中最悪の状況にあり、地方公共団体においても、神奈川県や大阪府など、既に財政危機に陥っております。総じて、入るを量りて出ずるを制するが原則だと思います。
 そこで、各世代にわたって納得のいく財政の健全化とは何かを再構築すべきと考えます。
 いわく、評価制度等を取り入れ、行政効果に着目した必要な事業。現行の評価制度は、各行政分野にわたって必要な目標が鮮明にできる制度でありましょうか。
 アメリカオレゴン州の取り組みなど、学ぶべきものが多いと考えます。例えば、政策目標、具体目標及びこれに対応する90を超える指標を定めて行政アクションを達成する手法は、知事の意思が体系的に明確にされるすぐれた参考例だと考えます。本県も、知事の言われます施策の徹底した重点化を図るため、政策評価制度を新たに構築すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 これら県財政の再建と政策評価制度をなせば、増田知事は、平成の名君、上杉鷹山と歴史に刻まれるでありましょう。その気概と方針やいかに、お伺いするものであります。
 次に、地方振興局の見直しについてお伺いいたします。
 現在ある12地方振興局のそれぞれの状況を俯瞰しますと、市町村数や所管区域、事業実施部門の統合やすみ分けなど、改めてさまざまな状況にあることが認識せられるのであります。これらを踏まえ、県行政システム改革大綱では、地方振興局の強化と相互の役割、所管区域のあり方など、多岐にわたり検討するとされております。
 また、知事の岩手のデザインによれば、各種のゾーンを考慮した県土軸とネットワークを提案されております。知事の識見の高さに感銘いたすものであります。つきましては、その強化は既に一部進んでおりますが、報道でやゆされます中2階的な地方振興局の構造改革に着手すべきと考えますので、その検討状況についてお伺いいたします。
 次に、情報通信基盤の整備についてお伺いします。
 近年の情報通信ネットワークとマルチメディア技術の進展は、県民の生活行動に限りない広がり、そして社会構造を変貌させるものとして、この広大な県土を有する本県にとり非常に重要なキーワードと考えます。こうした本県の情報通信基盤の将来の中核となるいわて情報ハイウェイにつきましては、知事演述におきましても、今後、その整備に向けて本格的に検討すると表明されておられます。
 そこでお伺いしますが、この新しいネットワークは行政執行の強化向上とあわせ、特に県民がどのようにかかわることになるのかお示しをお願いいたします。
 次に、さきの菊池議員の質問にありましたが、本県の保健福祉施策の将来構想についてお伺いいたします。
 21世紀の本格的な少子・高齢社会の到来を目前に控えている現在、保健福祉の重要性とこれに対する県民の期待は高まるばかりであります。第1に、県民が生涯にわたって健康で生活するための施策を積極的に推進することが求められており、第2に、県民の老後の最大の不安は、何といっても、自分が寝たきりになったときあるいは痴呆になったとき、介護はどうなるだろうかとの問題であります。現在、国においては、増大、多様化する福祉需要に的確にこたえるため、社会福祉の基礎構造改革の議論をしているとお聞きいたしております。このような状況の中で、本県は、21世紀初頭の保健福祉施策の姿をどのように描き県民に提示しようとしておられるのか、将来構想についてお伺いいたします。
 次に、介護保険制度についてお伺いします。
 本県は、これまでも、また、これからも、第1次産業が基幹であります。このことは、都市部で核家族化が進む中、当県では3世代、4世代が一緒に住む大家族型が依然として多いことであろうと思います。総じて当県では、高齢者の方々が、家族の方々に介護を受けている現状にあり、また、多くの高齢者は、それを望んでいるものと推量されております。県が昨年5月に取りまとめた21世紀の岩手のアンケートにおきましても、県民の約半数が、自宅で家族による介護を望んでいるという結果にもあらわれております。
 さて、介護保険制度の一端を見ますと、家族の方々が介護をしても、それに対する経済的手当は、原則、支給されないとのことであります。本県のように、家族で介護をしている方々が多い実態では、保険料を支払っても、家族には経済手当が支給されないというのであるならば、家族は、保険料負担と介護の負担と、二重の苦労を強いられることになると私は考えます。こうした県民の切実な問題と現実に、どのようにお考えになっているのかお伺いいたします。
 次に、農業者に対する貸付制度等についてお伺いいたします。
 人類が社会を形成したのは食料によるものと考えられますが、自来、食料が人と国の形と世界の歴史を刻んだと言ってもよいと思います。我が国も同様であり、現在、食料・農業・農村基本問題調査会の答申のごとく抜本的改革に迫られています。すなわち、食料は安全保障政策であり国土保全、環境、都市と農村、これからの国際問題であり、総じて、暮らしと命のかかわりを再構築する重要かつ喫緊な国策と、経済産業と全く異なる次元であると結論づけております。食料供給県を標榜する我が県も同様であり、このたび農業計画中間答申におきまして、いわての大地に個性きらめく農業・農村の創造と題し、意欲ある活力と潤いに満ち開かれた農村と、岩手農業の形、姿を示されておられます。大きな希望と期待をいたすものであります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 我が県は、広大かつ変化に富む地勢であります。
 司馬遼太郎は、この奥羽の北の街道を行き、何と記したでありましょうか。本県農業は、その風土に加え、国内・国際競争、集約大規模化、高収益作物などなどの資本型農業に立ち向かわねばならないのであります。さらに数日前、デフレーションが深刻化するとの見通しで、世界じゅうで大豆や穀物等の先物が一斉に売られ、急激に下落いたしました。農業のもろさと悲哀を痛感するものであります。これらに対峙する我が県の農業者は、知事のおっしゃられるとおり、勤勉で意欲と能力に非常にすぐれておりますが、残念ながら、総じて体力が非常に弱いのであります。農業者は、さまざまな試練や変革に衰弱しており、これからさらに厳しい競争に立ち向かう体力など、まことに心もとないのであります。国策がいかに高い次元であっても、県のスローガンがバラ色であっても、農協中央会に52億円の無利子融資をして組織救済をしても--ここが大事であります--無利子融資をして組織救済をしても農業者個人が病んでいるのであり、体に負担のかからない、例えて、新鮮な血液の輸血を渇望しているのであります。汗を絞り取られない、負担のかからない輸血、すなわち利子負担のかからない融資が必要であると考えます。知事は、この農業を担われる方々とともに米をつくり、畑に出、その衰弱と荒廃を数多く体験されておられます。
 なお、知事が、輸血がいかに必要か、自身、身をもって県民と全国民に示されたのであります。例えば、農業を担う中心となる認定農業者の方々、現在約5、000名の方々であります。仮に、この方々に1、000万円ずつ一時お使いいただくとして、500億円であります。当県の財政調整積立金などの3基金の残高は、約1、100億円であります。何かと騒がしい金融機関の金庫に眠らせるより、この県民の財産を、真に県民自身のために役立てることこそ、私は県の正道と考えます。
 今回の経済対策において、中小企業者に対するさまざまな融資制度の拡充が図られましたが、全産業を支える最も脆弱な農業者に対しては見直しはありませんでした。また、現在の融資制度は実にさまざまであります、数もたくさんございます。が、しかし、真に農業者の立場に立った制度とは考えにくいのであります。
 そこで、農業に従事する方々がそれぞれの状況に応じて利用しやすい、そして負担のかからない新たな貸付制度の創設を図るべき、知事の言われる地方(ぢかた)学の岩手型農業をつくるべきと考えますがいかがでしょうか、お考えをお示しお願いいたします。
 次に、本県の農産物の販売対策についてお伺いします。
 米の販売促進と消費拡大、また、野菜等の園芸作物や水産物の販路拡大について、全国や外国にまで御努力いただいており感謝いたしております。しかしながら、まず隗より始めよのことわざのとおり、地元での販売戦略、消費努力が大切であると考えます。
 そこで伺いますが、例えば、学校や県立病院などへどのような販売促進活動がなされておられますか、その実態をお知らせ願います。
 地元農産物の消費、販売の第一線である農協系のスーパーでさえ、輸入反対、これ以上輸入量をふやすなと大きく叫んでおりますが、果物、大豆製品などなど、県産品と競合する輸入品の消費拡大に熱心であり、私は疑問を持つものであります。まず、地元での販売拡大とあわせ、県産品をみずから評価する姿勢が大切と思い、お伺いするものであります。
 また、一昨年12月の定例議会におきまして、農産物流通問題を御提示いたしましたところ、職員定数の厳しい中、早速昨年4月から、農産物流通課を新設され御努力されておられます。農業者は、大きな期待を寄せております。つきましては、農産物流通の課題や取り組みの状況についてお聞かせ願います。
 次に、農業を支える新規就農者についてお伺いします。
 新規就農者は、平成8年度の総数は全国では8、500人、当県では64人であります。この64人のうち、高等学校から各種学校、大学までのいわゆる学卒就農者は全国では2、000人であり、当県では32人となっております。
 なお、中高年新規就農者とは40歳以上の方々でありますが、平成9年に9人の方々が勇躍就農されております。
 そこで伺いますが、当県農業は、中山間ややませ、消費地である都市圏からの距離などのハンディキャップがあり、Iターン、Uターンなどの就農者の支援施策やフォローアップ体制などの課題が多々あるのではないかと思われます。これらの課題をどう認識され、今後どのように取り組まれるのかお示し願います。
 次に、県立農業高校の再編についてお伺いいたします。
 県立農業高校の卒業者は、これまでの減少傾向からこの数年横ばいで、全高校生の卒業者に占める割合は当県で約6%であります。全国は約3%前後で推移いたしております。数で申し上げますと、県内農業高校の卒業生はここ数年1、200名前後であり、この生徒は卒業後上級学校、専門学校、就職等それぞれ進まれるのでありますが、しかし、さきの数字のとおり、高卒者を含め全学卒者の就農者はわずか32名であります。全国の農業高校の取り組みを見ますと、例えば東京都立では施設の方々とともに福祉も学べる花づくり、一般の方に園芸技術専修制度を取り入れるなど、地域に根づき開かれた農業高校として好評であり、農業離れに歯どめがかかっていると報道されております。
 そこで伺いますが、現在検討中の県立高等学校新整備計画において、農業と高校教育をどのように結びつけ形づくられるのか、教育長のお考えをお伺いいたします。
 以上をもって、私の一般質問を終わらせていただきますが、この際、壇上からまことに恐縮でございますが、お許しをいただき、一言感謝を申し上げさせていただきます。
 平成7年に皆様のお仲間に加えていただきまして、浅学非才、不肖不徳の身でありましたが、浅学非才は努力をもって、不肖不徳は誠実をもって、この4年間ひたすら努めさせていただきました。この間、無為徒食に終わったのではないかと、まことに汗顔の思いであります。
 この間、諸先生初め増田知事、数多くの執行部の皆様に御懇篤な御教示、御交誼を賜りました。改めて、伏して衷心より厚く感謝を申し上げます。
 私、思うところありまして、晴耕雨読に親しみたいと考えております。諸先生の皆様と増田知事におかれましては、志、高山に置かれ、さらに岩手のかけ橋、21世紀のかけ橋とならんと、この4月勇躍立たれるわけであります。諸先生方、知事が、このふるさと母なる岩手の大地に、必ずや夢県土を築かれますものと強く確信をいたし、御健勝いよいよ御多幸で活躍されますことを御祈念申し上げます。
 142万県民お一人お一人が、さらにまたお幸せになることを請い願い、感謝とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 須藤敏昭議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、財政の健全化についてでございますが、健全な財政は、まず、収支の均衡が図られていることが大事でございますが、それに加えまして、行政内容が最終的な経費負担者でございます住民の福祉のために適切な水準に保たれ、さらには社会の変化に対応した多様な行政需要にこたえ得る弾力性を有するとともに、世代間の負担の公平にも配慮されたものでなければならないことが重要であると、このように考えております。
 特にも、今日のように、国、地方を通じた極めて厳しい財政環境のもとで、少子・高齢化の急速な進展や環境に対する関心の高まりなど、社会経済情勢が大きく変化をする中にありまして、本県が時代の変化に柔軟かつ弾力的に対応できるような行財政運営を確保していくためには、従来の方式にとらわれない、新しい視点に立った取り組みが必要でございます。
 このようなことから、本県といたしましては、先般策定をした行政システム改革大綱に基づき、徹底した行政改革に取り組み、行財政運営の簡素効率化などを進めることにより、歳出規模の抑制や県債依存度の引き下げに努めながら、将来のさまざまな行政需要に適切に対処できる財政構造を確立してまいりたいと考えております。
 なお、例えば、県債残高がそれによって形成をした社会資本より過大に残存し、将来の世代に過大な財政負担をもたらしてはいないかなどを図るこの尺度として、企業会計方式を取り入れた財務分析手法の導入についても取り組んでいきたいと、このように考えております。
 次に、政策評価制度の構築についてでございますが、私は、厳しい財政環境が続く中で、行財政運営の一層の健全化、効率化を図るため、公共事業や事務事業の評価システムを導入して、重点的に取り組むべき施策の明確化に努めてきたところでございますが、今後は、分権型地域社会の到来を迎えて、みずからの判断と責任のもとで、重点的かつ総合的な施策を展開する必要性が今以上にさらに高まるものと、このように考えられるわけでございます。このような社会情勢の変化に的確に対応して、限られた資源を最大限に活用しながら、機動的、効率的で質の高い施策を推進するためにも、行政運営の評価システムを一層充実させていくことがますます重要になるものと考えております。こうしたことから、このたび策定をいたしました岩手県行政システム改革大綱においても、これまでの事務事業レベルでの評価につけ加えまして、新たに政策・施策レベルについての評価システムを確立することとしたところでございます。
 一方におきまして、このようなレベルでの評価システムは、御指摘のオレゴン州を初めとするアメリカの地方政府やイギリスなどで導入の例があると、このように聞いているわけでございますが、我が国におきましては、明確な分析・評価手法などがいまだ確立されてはおらず、その研究が緒についた段階と承知をしているところでございます。このため、このシステムの確立に当たりましては、諸外国も含めた先進事例についての情報を収集するとともに、県民の皆様方にとりまして、できるだけわかりやすいものとなるように、県立大学の研究者などとも共同して研究開発を進めまして、試行を重ねながらも、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、農業者に対する新たな貸付制度の創設についてでございますが、農業制度資金につきましては、生産から流通加工、さらには販売に至るまでの広範な資金需要に対応して、農業者の創意と工夫を尊重しつつ、農業の規模拡大や経営安定を図るため、各種の資金がきめ細かく用意をされているところでございます。また、これら制度資金の貸付利率につきましては、農業改良資金が無利子であるほか、その他の資金についても、国・県などの利子補給に加えて、昨今の低金利情勢を反映し、極めて低い水準で推移をしているわけでございまして、殊にも認定農業者を対象とした資金については、さらに県・市町村で利子補給をかさ上げするなどの措置をとっておりますので、農家の負担を最大限に軽減するように努めているところでございます。しかしながら、御指摘のとおり、制度資金は種類が多岐にわたって、その内容が必ずしも十分理解されていないことや、借り入れ手続面、この手続が煩雑であるということなどもあって、これからさらに一層リーフレットなどによりまして周知徹底に努めなければいけないと、こういうふうに思ってますのと、申請様式の簡素化や承認事務の迅速化を図るなど、農業者の立場に立った制度の運営ということがぜひとも必要であると、またその制度の運営に努めなければならないと、こういうふうに考えております。
 今後におきましても、制度資金の有効活用を一層促進していくとともに、今御指摘のございましたような新たな貸付制度の創設につきましては、今後の農業情勢の変化や金利動向などを勘案しながら、十分に研究をさせていただきたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔総務部長吉田敏彦君登壇〕
〇総務部長(吉田敏彦君) 地方振興局の見直しについてでありますが、県では、これまで県民の利便性の向上や地域の課題への総合的かつ迅速な対応を図るため、地方振興局への大幅な権限委譲や執行体制の整備を行うなど、その機能強化を積極的に推進してきたところであります。このような取り組みにつきましては、昨年7月の行政改革に関する県民アンケートにおいて、回答者の51%から地方振興局で用事が済むようになったなどのプラスの評価をいただいたところでありますが、一方、二度手間であるなどのマイナスの評価が17%あり、また行政改革推進懇談会からも、議員御指摘のような御意見を受けたところであります。このため、このような御意見も踏まえまして、行政システム改革大綱におきましては、来年度から3年間の集中改革期間中に、より高度・専門的な事務事業や権限の委譲、市町村との連携交流の促進、市町村の県政への参画の推進、地域的政策形成機能の強化などを段階的に進め、総合性と自己完結性を一層高めることといたしております。
 また、広域的な課題への対応や、市町村への支援協力が効率的に図られるよう、広域生活圏を同じくする地方振興局間の役割分担の明確化や内部組織の見直しについても、平成12年度までにその方向性を取りまとめるほか、今後の市町村の広域行政の進展、県民生活の広域化など、時代の流れの変化に対応して、広域生活圏など広域ゾーンの見直しの進捗状況も踏まえながら、所管区域の望ましいあり方についても、来年度から継続的に検討を進めることといたしております。
   〔企画振興部長武居丈二君登壇〕
〇企画振興部長(武居丈二君) 情報通信基盤の整備についてでありますが、さきの新しい総合計画の中間報告におきましては、情報を環境、ひととともに三つの重要な視点として位置づけ、今後、積極的に推進していくこととしておりまして、この中間報告の中で、未来をひらく先導的プロジェクトとして、いわて情報ハイウェイの構築を突破口に、新しいネットワーク社会としての情報の森づくりを進めることとしているところであります。このいわて情報ハイウェイは、いわゆる一極集中型のネットワークではなく、県内各地を相互に結びつける水平型のネットワークを目指すものでありまして、地方振興局などにアクセスポイントを設けまして、県内各地を専用回線で結ぶことにより、県内どこでも同一の条件で、音声、データ、画像などを高速かつ大容量で伝送することが可能となるものであります。いわて情報ハイウェイの構築により、行政の効率化のみならず、医療、教育、防災などの公的サービスの向上や地域を越えたコミュニケーションの活発化、さらには産業の振興などを通じて県民生活の向上が図られるものと考えております。
 具体的には、いわて情報ハイウェイの活用により、県と市町村との情報の共有による行政の効率化のほか、専門医が不足している地域への診療支援や学校間の交流促進、さらには映像による災害情報の市町村への提供などが可能となり、県民が日常生活の中で、県内どこでも格差なく公共サービスが受けられるような環境が整備されていくものと考えております。
 県といたしましては、こうしたいわて情報ハイウェイの平成13年度からの運用開始を目指し、今後、県民の皆様の御意見もいただきながら、地域や県民の視点に立って、提供するサービスの内容などの具体的な検討を進めてまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕
〇保健福祉部長(関山昌人君) まず、本県の保健福祉施策の将来構想についてでありますが、これからの保健福祉施策は、県民が地域社会において、自立して心豊かに安心して生活できるよう、予防や生活の質の向上に重点を置いた、生涯にわたる健康づくりを支援するとともに、生活者の立場に立って、その人にふさわしい保健・医療・福祉サービスを効率的に提供していくことが重要であります。このため、ノーマライゼーションの理念や、昔からはぐくまれた結いの精神を大切にしながら、岩手に生まれ、育ち、生活できることの喜びを実感できる福祉社会づくりを目指すこととしております。
 また、健康に生活できる人生の期間、いわゆる健康寿命の延長を目標として、県民一人一人のライフスタイルを確立していくとともに、介護や医療が必要となった場合には、家庭や地域において適切なサービスが選択できるよう、その体制整備を進めてまいりたいと考えております。
 さらに、子供を安心して産み、健やかに育てられる環境づくりを推進するとともに、リハビリテーション体制の整備などにより、障害者の方々が自立し参加できる地域づくりに取り組むなど、総合的に施策を展開してまいりたいと考えております。
 現在、新しい総合計画と並行して、保健医療計画や社会福祉計画などの策定に取り組んでおりますが、県民の方々の御意見、御提言を十分計画に反映させるとともに、各圏域別の目標を設定するなど、より地域に密着し県民の方々がわかりやすい計画として取りまとめる中において、さらに21世紀初頭における保健福祉施策の基本的方策を明らかにしてまいりたいと考えております。
 次に、介護保険制度についてでありますが、この制度は、介護が必要な高齢者の方々に専門的な介護サービスを提供することにより、家族の介護負担を軽減するとともに、住みなれた地域において、高齢者の方々が自立した質の高い生活ができるよう、社会全体で支援することを目指しております。このため、県といたしましては、介護が必要な高齢者の方々が、できる限り家族と暮らしながら、必要な専門的な介護サービスが受けられるよう、訪問介護やショートステイ等の介護サービス基盤の整備を進めるとともに、高齢者の方々がその状況に応じて適切なサービスが利用できるよう、ケアマネジメント体制の整備を進めていくことが重要であると考えております。
 なお、この制度においては、家族による介護を保険給付の対象とした場合、家族が介護に拘束され、身体的、精神的負担が過重となるおそれがあることなどから、御案内のとおり、家族介護に対する現金給付は行われないこととされております。しかしながら、過疎地域で、冬期間の積雪により、サービスが利用できない地域などについては、家族介護に依存せざを得ない状況にあることも十分想定されるところであります。このような一定条件下での地域において、家族介護の方々がホームヘルパーの養成研修を修了した場合に、保険給付の対象とするかどうか、その取り扱いについて国に検討の要請をしており、この問題については、国の医療保険福祉審議会において強い反対意見が出されるなど、なお継続して議論すると聞いております。
   〔農政部長佐藤徳兵衛君登壇〕
〇農政部長(佐藤徳兵衛君) まず、学校や県立病院に対する県産農産物の販売促進活動についてでありますが、これまで栄養士研修会などを通じ、地元農産物の利用促進を図ってきたところであり、特にも、米、牛乳は、小中学校の給食や県立病院において、すべて県内産が使用されているところであります。野菜、それから果実につきましても同様でありますけれども、その使用状況については大変恐縮ですが把握できておりません。ただ、ユニークな取り組み事例といたしまして、大東町や紫波町では、学校給食の食材として生産者のグループと学校給食センターが提携いたしまして供給するシステム、これを取り入れている事例もございます。また、短角牛肉については、岩泉町、山形村などの産地において地元農協とタイアップして同様の取り組みを行っております。こうした学校、病院のみならず、今後におきましても、御指摘のとおり、地場産品をもっと活用していただくために産地づくりの取り組みを強化し、地元での販売拡大を図ってまいりたいと考えております。
 次に、農産物流通対策の課題と取組状況についてでありますが、食料消費の質的変化や農産物流通の多様化、取引単位の大型化などに対応した県産農産物の評価の向上と有利販売を促進するため、消費者ニーズを先取りしたマーケティング活動の一層の充実、多様な流通チャンネルへの対応を強化するとともに、高付加価値化のための農産加工の振興や各種フェア、キャンペーン等による効果的な普及宣伝活動などを積極的に展開しなければならないものと考えております。このため、産地情報や市場情報の迅速な提供に努めているほか、限定純情米、リンゴのみつ姫、キャベツのいわて春みどりなど、独自ブランドによる販路拡大と有利販売に取り組んでおります。さらには、昨年10月に東京で開催した銀河系いわてフェスティバルでのいわてまるごと市場など、関係機関・団体が一体となって宣伝活動に取り組んでいるところであり、今後におきましても、いわて銀河プラザなど、情報発信拠点での販売促進活動の充実に加え、食の匠の起業化支援によるいわての食文化発信を行うなど、総合的な流通対策の強化に努めてまいる考えであります。
 なお、物流施設の関係について申し上げますと、盛岡市中央卸売市場の新設が現在進められているところであり、岩手畜産流通センターにおいては、ハセップ方式による衛生管理基準を満たすための屠畜施設の整備を進めているところであります。
 次に、新規就農者の確保についてでありますが、農業従事者は、高齢化の進展などにより、今後急速に減少することが見込まれており、本県農業の持続的な発展を図るためには、意欲ある新規就農者の確保が極めて重要であると認識してりおります。御案内のとおり、本県は交通ネットワークが着実に整備されてきており、また緑豊かな自然環境や多彩な資源を有しておりますことから、インターネットや全国情報誌、首都圏等における就農相談会等を通じ、このような本県の特性を広く発信してきたところであります。こうした取り組みにより、近年、農業以外からの新規参入者が、まだわずかずつではありますけれども着実にふえる傾向にあります。新規就農者が新たに営農を開始するためには、栽培技術・経営管理方法の習得や資金の手当て、農地の確保などが隘路となっておりますことから、参入時における適切な情報提供を初め、無利子研修資金の貸し付け、農業大学校における就農研修、農業改良普及員による現地指導などの受け入れ体制を用意し、幅広い支援を行っているところであります。
 今後におきましても、市町村等が策定している農業担い手育成プランに基づき、関係機関・団体と一体となって、より具体的、かつきめ細かな対策を講じ、新規就農者の確保に努めてまいる考えであります。
   〔教育長大隅英喜君登壇〕
〇教育長(大隅英喜君) 県立農業高校の再編についてでありますが、現在、農業に関する学科は12の高校に設置されており、各高校とも農業の担い手や農業関連産業部門への従事者の育成を図るため、教育内容や施設・設備の充実に努めてまいったところであります。また、生徒が郷土の伝統芸能の継承に意欲的に取り組み、地域の各種行事に積極的に参加をしたり、小学校や特殊教育諸学校との交流学習を行うなど、地域の方々の理解を得ながら農業高校としての役割も果たしてまいりました。しかしながら、議員御指摘のとおり、近年の産業構造の変化や生徒の進路希望の多様化等により、卒業後、多くの生徒が、学習した専門分野以外の道に進むことや、中学生の入学希望者が少ない状況にあることなど、課題もあるところでございます。このためバイオテクノロジーを初め、先端技術を取り入れた農業教育の成果を地域の農業振興に生かす取り組みを積極的に行うなど、地域と密着した魅力ある農業教育を推進することはもちろんのこと、県立高等学校新整備計画の策定に当たりましては、農業と環境、福祉、情報、流通、経営、工学などの部門とが相互に学ぶことのできる学科構成にすることや、生物工学、造園・園芸インテリア、馬学等について学ぶ学科、コースの一層の充実を図り、時代の変化や生徒の興味、関心の多様化に対応した特色ある学校づくりに努めてまいりたいと考えております。
   
〇議長(那須川健一君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時44分 散 会

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