平成11年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(増田寛也君) 第17回県議会定例会が開催されるに当たり、所信の一端を申し上げます。
 私は、平成7年4月、知事に就任して以来、県民に開かれたわかりやすい県政の推進を基本姿勢として掲げ、県政をわかりやすく身近なものとするため、可能な限り県民の皆様の活動の場に出向き、また、さまざまな機会を通じて県政に対する御意見、御提言を直接お聞きしながら、新しい岩手づくりに向けて、全力を傾けてまいりました。
 この間、県議会並びに県民の皆様から賜りました数々の御厚情、御支援に対しまして、心から感謝申し上げる次第でございます。
 さて、この4年間を振り返りますと、国においては、この国のかたちを見詰め直し、21世紀に向けてその再構築を図るため、さまざまな構造改革に着手し、これらが今後本格的に実行に移されようとしております。
 このような時期にあって、日本経済は極めて厳しい状況が続いております。我が国の経済再生のためには、こうした構造改革が不可欠でありますが、当面、政府が昨年11月に取りまとめました緊急経済対策の成果が早急にあらわれることを期待しております。
 本県におきましても景気の回復は喫緊の課題であり、これまでも国の対策とも呼応し、その時々の経済情勢を踏まえながら、迅速かつ機動的に対応してきたところでございますが、今後とも、本県経済の活性化が図られるよう、全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
 こうした中で、私は、県立大学の開学や高速交通網の整備、環境施策の推進、試験研究機関や産業支援施設の拡充、少子・高齢化に対応した保健医療・福祉体制の充実など、県勢の発展に向け、鋭意取り組んでまいりました。
 また、全国豊かな海づくり大会、全国和牛能力共進会、国民体育大会冬季大会、全国菓子大博覧会などの全国的な大会が県民を挙げた取り組みにより成功裏に終わるとともに、賢治・啄木生誕祭を本県独自のイベントとして開催し、これを契機に本県の魅力を改めて県内外に発信することができました。
 21世紀を目前にした今日、温暖化等地球環境の悪化や国境を越えた企業間、地域間の競争など、地球規模での現象が個人の生活に直接影響を与えるようになってきております。また、自由な選択や自己責任の重視、環境問題への意識の高まりなど、国民の意識が大きく変わろうとしております。さらに、我が国の人口は、少子化を主因として急速に伸びが鈍化してきており、21世紀初頭には、いまだかつて私たちが経験したことのない本格的な人口減少局面に入ることがほぼ確実視され、高齢化の進行と相まって地域社会の姿が大きく変容するものと見込まれております。このほか、インターネットや携帯電話の普及など、情報通信社会の進展には目覚ましいものがあります。
 また、任期中に地方自治法施行50周年の節目の年を迎えるとともに、地方分権推進法が成立するなど、地方分権の動きが加速した時期でもありました。
 私は、このような時代の大きな潮流や生活者主権、地域主権の時代の到来に的確に対応し、これまでの社会の仕組みを見詰め直し、21世紀に向けて輝きのある岩手を創造していくため、そのシナリオとして新しい総合計画の策定に取り組み、昨年11月に中間報告を公表したところでございます。
 なお、岩手山の火山活動が昨年2月ごろから活発化しておりますが、引き続き監視を続ける必要があることから、関係市町村や関係機関との緊密な連携を図りながら、今後とも防災体制に万全を期してまいる所存であります。
 さて、私は、県民に開かれたわかりやすい県政を掲げ、県民と行政が相互に信頼を深め、手を携え地域づくりを進めていくため、情報公開の徹底による透明性の確保や審議会の全面公開など、県民と行政の情報の共有化を推進してまいりました。
 今後とも、県政に県民の意思が十分に反映されるよう、施策の立案や実施過程における県民の参画に努めるとともに、事業の内容や予算について、県民に対し、しっかりとした説明責任を果たしていく必要があると考えております。
 さらに、分権型地域社会の創造を掲げ、現場重視の地域経営の観点から、地域の課題に総合的かつ迅速に対応できるよう、大幅な権限委譲等による地方振興局の機能強化を図るなど、県行政の分社化に努めてまいりました。また、こうした取り組みとあわせ、県境を越えた交流により地域のさまざまな可能性を広げるため、北東北知事サミットの開催などを通じ、隣接県との共同事業を推進してきたほか、地方からの変革を意識しつつ、さまざまな地域課題について同様の取り組みを進めている県同士の交流を深めてまいりました。
 今後は、市町村との密接な連携を図りつつ、県民に身近な事務は地元で処理できるよう権限委譲を進めるとともに、広域行政への取り組みを積極的に支援するほか、市町村や広域生活圏、県の枠を越えた交流・連携を一層進めていく必要があると考えております。
 行財政運営については、一層の健全化、効率化を図るため、行財政システム改革指針を策定し、これを着実に推進するとともに、事務事業評価制度の導入により、施策の課題と目標を明確にするよう努めてまいりました。また、必要性の高い施策について、その効果が早期にあらわれるよう優先的、重点的投資を進めるとともに、民間の経営管理の考え方を取り入れた外部診断を実施し、行政運営の改善に向けて、その課題を明らかにしてまいりました。
 今後は、このたび策定した行政システム改革大綱に基づき、行政機構の簡素・効率化と現場重視へのシフトや、緊急度と優先度を重視する行政執行、市町村との連携強化、民間との協力関係の構築と行政機能の効率化など八つの視点に立って、職員一人一人が従来の考え方や方法にとらわれない柔軟な発想と創意工夫で改革を推進していくこととしております。とりわけ、県行政は県民への最大のサービス提供者であり、いわば県庁株式会社として、顧客である県民の満足度の向上を目指し、質の高いサービスを提供する役割を担っているとの自覚を持って、これまでの行政運営の仕組みを抜本的に見直し、生活者や地域から始まる新しい行政システムの確立に取り組んでいくことが重要であります。
 こうした取り組みにより、一人一人の生活者が、生き生きと光り輝く生活者の視点に立った県政と、それぞれの地域の個性が生かされ、地域に活力がみなぎる地域の視点に立った県政を推し進めていく必要があるものと考えております。
 私は、平成8年3月に第三次岩手県総合発展計画後期実施計画を策定し、各般の施策の積極的な展開に努めてまいりました。
 以下、3県総に掲げる四つの領域に従って、県議会並びに県民の皆様とともに進めてまいりました県政を顧みるとともに、今後の課題について申し上げます。
 第1に、快適な県土づくりについて申し上げます。
 交通網の整備については、東北横断自動車道釜石秋田線の北上-秋田間が全線開通し、東和-花巻間が着工されたほか、三陸縦貫自動車道、八戸久慈自動車道などの整備を促進してまいりました。さらに、地域間の交流・連携を支えるため、地域高規格道路や新交流ネットワーク道路、新幹線関連道路などの整備を図ってまいりました。
 また、秋田新幹線の開業や東北新幹線盛岡以北の工事の促進などにより、高速鉄道の整備も進展してきております。
 花巻空港については、滑走路2、500メートル延長整備の事業化や新規路線の開設など、国際化の進展や地域間交流の拡充に対応した機能強化を図ってまいりました。さらに、花巻流通業務団地の造成事業が実施の運びとなったところであります。
 港湾については、津波対策や港湾の高度利用を図るため、釜石港及び久慈港の湾口防波堤を初め、大船渡港などの港湾整備の促進に努めてまいりました。
 今後とも、北東国土軸や、日本海側と太平洋側を結ぶ地域連携軸の形成等を図る観点から、高規格幹線道路や東北新幹線盛岡以北の整備、空港機能の強化など、高速交通幹線の整備を一層進めるとともに、県内外の地域間の交流・連携を促進するため、各地域を結ぶ交通網の整備充実をさらに進める必要があると考えております。
 活力ある地域の整備については、自然や歴史、文化等に配慮しながら、盛岡南地区や二戸駅周辺地区など各地域における都市機能の集積や計画的な市街地の形成を支援するとともに、すぐれた景観の創造を図り、生活関連道路や上下水道などの生活基盤の整備を促進してまいりました。
 また、県土の8割を占める中山間地域や県北・沿岸地域などについては、市町村との連携のもと、部局横断的プロジェクトに取り組んできたほか、地域活性化事業調整費の充実を図り、特色ある地域づくりを支援するなど、積極的にその振興に努めてまいりました。
 今後とも、質が高く快適な暮らしを実現できるよう、市町村との連携を一層深めながら、県内各地域における総合的な生活環境の整備を促進するとともに、住民の創意工夫を生かした個性豊かな地域づくりを積極的に支援していく必要があると考えております。
 情報通信網の整備については、地域の情報化を推進するための指針となるイーハトーブ情報の森構想を策定するとともに、全国マルチメディア祭を開催し、本県が目指す、地域の個性が輝く情報通信社会のあり方を全国に発信いたしました。
 今後は、県内どこでも同一条件で利用できるいわて情報ハイウェイを構築するほか、子供や高齢者、障害者を含むだれもが高度情報化の恩恵を受けられるように、学校や地域における情報学習の機会をふやすとともに、利用しやすい機器やシステムの地域への普及に努めていく必要があると考えております。
 また、適正な土地利用の促進や水資源の確保などに努めるとともに、治水、砂防、海岸保全など安全な県土づくりを進めてきたほか、良好な水辺環境の整備に努めてまいりました。
 環境については、平成10年を環境創造元年と位置づけ、環境の保全及び創造に関する基本条例や環境影響評価条例を制定するなど、豊かな環境と共生する地域社会の構築に積極的に取り組んでまいりました。また、ダイオキシン類やいわゆる環境ホルモンなどの化学物質による環境汚染の実態把握に努めるとともに、野生生物の保護対策を進めてまいりました。
 今後は、環境に優しい新エネルギーの積極的な活用を初めとする地球温暖化防止対策を進めるとともに、廃棄物の適正処理、再生利用などを促進するほか、環境教育の一層の充実を図りつつ、県みずからも国際規格であるISO14001の認証を取得し、環境に配慮した行動を進めるなど、環境と共生する地域社会の構築に努めていく必要があると考えております。
 なお、一般県道雫石東八幡平線については、さまざまな経過を経て、最終的に工事の再開を断念したところでありますが、今後とも地域住民の期待にこたえるよう、関係地域の振興に向けて全力で取り組んでまいる所存であります。
 第2に、地域経済の新たな展開について申し上げます。
 科学技術については、農業研究センターの開設、超電導などの先端科学技術の研究開発拠点の新たな整備のほか、各種試験研究機関の連携強化、リモートセンシング技術の活用などを図ってまいりました。
 今後は、研究開発機能の拡充・強化を図り、国際的にも競争力のある地域独自の技術を確立するとともに、産学官連携の促進により、研究開発の成果を地域産業へ効果的に移転していく必要があると考えております。
 農業については、稲作と転作を組み合わせた水田営農を進めてきたほか、野菜や花卉などの園芸品目の生産拡大や優良牛の造成を図るとともに、次代を担う農業者の育成や大区画圃場など生産基盤の整備を進めてまいりました。
 林業については、間伐の推進や林道開設などにより、多様な森林の整備を図るとともに、木材利用推進方針の策定による需要の拡大や木材加工流通拠点の整備に努めてきたほか、シイタケなど特用林産物の生産振興に取り組んでまいりました。
 水産業については、ヒラメ、マツカワの魚類栽培の拡大に向けた種苗生産施設の整備に取り組むなど、つくり育てる漁業を推進するとともに、秋サケ等水産物の消費拡大に努めてきたほか、漁港や漁業集落環境の整備を図ってまいりました。
 今後とも、生産性の向上や経営の高度化、意欲ある担い手の育成・確保を図り、公益的機能の維持・増進や産業基盤の整備に努めるほか、ハセップ方式の導入などによる安全な食料の提供に加え、消費者ニーズを先取りしたマーケティングを展開するなど、本県の豊かな環境と調和した農林水産業の振興を図る必要があると考えております。
 商工業については、総合的なまちづくりの観点から、特色ある商店街の整備やにぎわいの創出などに努める一方、いわて新産業創造センターやいわてマルチメディアセンター等の産業支援施設、盛岡西リサーチパークやオフィスアルカディア北上、さらには、県北・沿岸地域における拠点工業団地の整備を進めるとともに、ものづくりを支える基盤的技術産業の集積を促進してきたほか、ベンチャー企業などへの支援の強化や企業の技術の高度化を図ってまいりました。
 さらに、中小企業対策として、現下の厳しい経済情勢に対応した融資制度を創設するなど、企業経営の安定化を図ってまいりました。
 今後は、中心市街地の活性化を促進する一方、企業誘致や新産業の創出を積極的に進めるとともに、地域みずからの産業展開力を強化するため、高い加工技術を持つ企業の一層の集積を図る必要があると考えております。
 また、魚彩王国など地域提案型の観光地形成や北東北3県の連携強化などにより、観光客の誘致拡大や県産品の販路拡大を図るとともに、盛岡駅西口のブランドiや東京銀座のいわて銀河プラザのほか、九州における北東北3県合同の情報発信拠点として、みちのく夢プラザの整備に取り組んでまいりました。
 今後とも、多様な地域資源を掘り起こすとともに、その観光的価値を高めながら、これらを県内外に発信するなど、地域の個性を生かした観光の振興を図る必要があると考えております。
 雇用の安定と促進については、中高年齢者や障害者の雇用促進に努めてきたほか、産業技術短期大学校の整備による高度技術者の養成などを図ってまいりました。
 今後は、個々人が持てる能力を十分に発揮し、生き生きと働ける就業環境の整備を進めるとともに、次代の産業を担う創造性とチャレンジ精神あふれる人材を育成していく必要があると考えております。
 第3に、安心できる暮らしについて申し上げます。
 県民の健康で安心できる暮らしを支える質の高い保健医療サービスを提供するため、胆沢病院や久慈病院などの県立病院の移転新築を進めるとともに、高度医療に対応した循環器医療センターの整備やがん・循環器疾患の診療に係る情報ネットワーク化を促進してきたほか、沿岸2カ所に救命救急センターを設置いたしました。また、高度不妊治療と障害者歯科診療を行うための施設を整備するとともに、県民の健康づくり施策を推進するなど、きめ細かな保健医療体制の充実や、これを支える人材の育成・確保に努めてきたところであります。
 今後とも、生涯を通じた健康づくりを支援するとともに、情報ネットワークの活用を図りながら、県内どこに住んでいても安心できる保健医療体制の整備を進めていく必要があると考えております。
 また、地域に根差した福祉活動を支援するとともに、ひとにやさしいまちづくりを展開してまいりました。さらに、延長保育など保育所機能の拡充や医療費助成の充実等により、子供が健やかに育つ環境づくりを進めてきたほか、高齢者、障害者の生きがいと健康づくりや社会参加の促進とあわせ、各種の保健福祉サービスの充実に努めてまいりました。
 今後は、子育て支援対策の充実や、介護が必要になった場合に、どこで暮らしていても適切なサービスが受けられるような体制の整備を図るとともに、ボランティア活動を積極的に支援するなど、少子・高齢社会に適切に対応していく必要があると考えております。
 さらに、安全な県民生活を確保するため、交通安全対策を進めるとともに、銃器犯罪などの犯罪の防止を図ってまいりましたが、今後とも、防犯対策などを一層推進していく必要があると考えております。
 なお、昨年来、岩手山の火山活動が活発化するとともに、直下型地震、大雨・洪水、林野火災などが大きな被害をもたらしたことから、県民の安全な暮らしを確保するため、情報通信体制や災害の監視体制の充実・強化を図るなど、防災体制の総合的整備を進めてまいる所存であります。
 第4に、21世紀を担う人づくりについて申し上げます。
 生涯学習については、生涯学習推進センターを開設するとともに、市町村とのネットワークによる生涯学習情報提供システムを整備するなど、その環境の整備に努めてまいりました。
 学校教育については、インターネットの活用などによる情報教育や、高校生の海外研修等による国際理解教育に取り組むとともに、いじめや不登校などの問題に対応した指導・相談体制の充実に努めてまいりました。また、県立学校に社会の変化に対応した学科・コースを設置するとともに、盛岡高等養護学校を開校したほか、私立学校への助成の充実に努めてまいりました。
 文化やスポーツについては、青少年の芸術文化活動の支援や競技力の向上、生涯スポーツの推進に努めるとともに、柳之御所遺跡など文化財の調査・保存を進めてきたほか、日本文化デザイン会議の開催を契機として、県民と有識者の継続した交流による地域文化の振興を図ってまいりました。
 今後とも、個性を伸ばし主体的に学ぶ力を育てる教育の推進や、心豊かでたくましい人間の形成に向けて、学校教育の環境整備を図るほか、全国高等学校総合体育大会の成功に向けた準備を進めるとともに、県立美術館の整備や図書情報総合ネットワークの構築に取り組むなど、生涯にわたる学習や文化・スポーツ活動のための環境づくりに努める必要があると考えております。
 さらに、平成10年4月に、県民の期待を担う岩手県立大学を開学いたしましたが、今後とも、岩手の未来を担う人づくりと世界に開かれた教育・研究交流の拠点を目指し、大学院の設置など、その拡充整備に取り組んでいく必要があると考えております。
 青少年の健全育成については、青年海外セミナーを実施するなど、創造性と国際感覚に富んだ青少年の育成に努めてきたほか、女性の社会参加の促進については、女性洋上セミナーなどを実施し、人材育成や意識啓発を進めるとともに、審議会などへの女性委員の登用に積極的に取り組んでまいりました。
 今後とも、青少年の健全育成に努めるとともに、男女の固定的な役割分担意識の是正や女性の積極的な社会参画を支援するなど、男女共同参画社会の実現に向け、各種の条件整備を進めていく必要があると考えております。
 また、ボランティアやNPOの活動が地域社会において重要な役割を果たすことから、社会貢献活動の支援に関する条例を制定するとともに、支援拠点機能の整備を行うなど、活動の支援に積極的に取り組んでまいりました。
 今後は、県民一人一人の自主的、自発的な活動が一層活発化していくよう、ボランティア情報システムの構築やさまざまな活動の促進に携わる人材の養成など、活動の輪が広がり、社会に定着するような環境づくりを進めていくことが必要であると考えております。
 国際交流については、東南アジアや欧州、米国、南米など、世界各地との多様な交流に取り組んでまいりましたが、今後とも、国際性豊かな人づくりや、外国人が暮らしやすい環境の整備に努めるとともに、文化やスポーツ、産業などさまざまな国際交流や国際協力を進め、世界に開かれた岩手づくりを進めていく必要があると考えております。
 さて、私は、新しい時代に対応し、これからの地域社会を再構築していくためには、環境・ひと・情報の三つの視点に立った施策の展開と、交流・連携による地域づくりが重要と考え、これらに基づく取り組みを進めてきたところでございます。
 まず、環境については、私たちを取り巻く環境が、過去から現在につながる岩手の自然や暮らし、文化そのものであり、ふるさとを形づくり、美しい心をはぐくんできたものであることを強く認識し、環境の世紀とも言われる21世紀に向けて、このかけがえのない財産を守り育て、次の世代に大切に引き継いでいくことが必要であると考えております。
 また、ひとについては、次代を担う人材を岩手という可能性の大地から育てていくため、ふるさとに学び、世界や地域を舞台に、みずからの夢に向かってチャレンジできるような環境をつくり上げていくことが必要であると考えております。
 さらに、情報については、それぞれの地域において、そこにしかない文化や資源を最大限に生かし、情報通信ネットワークを使って交流し合うことにより、新しい文化や産業、価値が県内各地から生まれ、それが森のように育っていくような社会を構築していくことが必要であると考えております。
 そして、交流・連携については、それぞれの地域を相互に結ぶネットワークを形成し、互いの個性を磨き合うことで、各地域の一層の発展につなげていくことが必要であると考えております。
 これらの取り組みは、いまだ緒についたばかりであり、21世紀に向け、さらに積極的に取り組んでいく必要があると考え、新しい総合計画の中間報告に、これらの視点を盛り込んだところであります。
 私は、これらの取り組みを通じ、岩手というほかのどの地域でもない、私たちのふるさとを舞台にして営まれてきた文化や暮らしをもう一度見詰め直し、ふるさと岩手の豊かな土と水、風、そして光の中で大きく花開かせることにより、地域の個性が光り輝き、希望と活力にあふれる新しい岩手がつくられていくものと確信をしております。
 こうした考えに立ち、私は、中間報告において、みんなで創る夢県土いわてを基本目標に掲げたところでございます。県民一人一人が夢にチャレンジし、それを実現することにより、生きる喜びを実感することのできる社会、すなわち夢県土いわてを実現するためには、世代をつなぎ、地域をつなぐ取り組みを、県民総参加で息長く進めていくことが必要ですが、とりわけ、20世紀から21世紀へのかけ橋となるこれからの数年間は、変革と創造の時代とも位置づけられる極めて重要な時期と考えております。
 100年前を振り返ると、ふるさとの先人である新渡戸稲造や田中舘愛橘、原敬、後藤新平などが、世界や日本を舞台に20世紀という新しい時代を拓くため、それぞれの分野で果敢に挑戦をしておりました。また、岩手においても、厳しい気候や風土の中で、新たな岩手をつくるため、先人たちが懸命な努力を続けておりました。こうした中から、石川啄木や宮澤賢治を初めとする多くの岩手のひとがはぐくまれてまいりました。
 新渡戸稲造は、その著書農業本論の中で、地方学(ぢかたがく)というものを提唱しております。地方(ぢかた)とは、江戸時代に町方に対して田舎をあらわした言葉でございまして、地方(ちほう)東京地方とか地方分権の地方ですが--地方(ちほう)と標記をいたします。この地方学(ぢかたがく)は、地方の歴史、文化、風俗・習慣を研究し、都会にはない地方のすばらしさを発見することによって若者の定着を図り、地方の活力を高めることの必要性を説いたものと理解をしております。
 さきの中間報告において、暮らしや地域を見詰め直し、地域らしさを追求していく岩手地元学の実践を掲げるとともに、岩手を舞台としながらも、世界に通じる普遍的な価値観や基準を確立していく岩手スタンダードづくりを始めることを提唱しております。
 そして、この根底に流れる考え方を思うとき、改めて、新渡戸稲造の唱える地方学(ぢかたがく)に通じるものがあると実感をいたしたところでございます。
 いわて地元学の実践と岩手スタンダードづくりを進めることによって、岩手の21世紀は、新しい世界へ可能性の翼を広げ、誇りを持って光り輝く、飛躍の世紀になると確信をしております。
 100年前に多くの先人が困難を克服し、力を合わせ新しい時代を切り拓いたことを思い起こしつつ、来るべき新しい世界を見据えた今、私自身、自立・参画・創造による持続的な地域づくりを強く意識をしたいと思います。
 こうした新しい岩手づくりを進めるため、私は、県民一人一人と手を携え、ともに汗を流しながら、決断と実行の政治姿勢のもと、精いっぱいの努力をしていく覚悟でございます。
 今回提案した平成11年度予算案は、統一地方選挙を控えていることなどから、いわゆる骨格的予算といたしたところでございますが、現下の厳しい経済情勢を踏まえ、景気対策などに配慮しつつ編成をしたものであります。
 国、地方を通じ、行財政を取り巻く環境は、今後、一層厳しさを増していくことが見込まれます。このため、財政運営の健全化と行政システム改革の一層の推進を図り、機動的で、かつ、効率的な執行体制の整備に努めるとともに、新しい岩手づくりを目指し、多様化、高度化する行政需要に積極的に対応することが肝要であると考えております。
 以上をもちまして、私の所信表明を終わります。(拍手)
   
日程第4 議案第1号平成11年度岩手県一般会計予算から日程第74 報告第2号道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分の報告についてまで
〇議長(那須川健一君) この際、日程第4、議案第1号から日程第74、報告第2号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。吉田総務部長。
   〔総務部長吉田敏彦君登壇〕
〇総務部長(吉田敏彦君) 本日提案いたしました各案件について御説明いたします。
 議案第1号は、平成11年度岩手県一般会計予算であります。この予算編成に当たりましては、国、地方を通じて厳しい財政環境下にあることにかんがみ、国の予算編成方針や地方財政計画等に留意するとともに、行財政運営全般について徹底した見直しを行い、健全財政の確保に努めながら、諸施策の推進を図ることを基調としたところであります。
 特に、依然として厳しい現下の経済情勢を踏まえ、国のいわゆる15カ月予算との整合性を図り、景気対策予算については十分に配意することとし、また、平成12年度からスタートする介護保険制度への対応等、早期に取り組むべき課題についても、可能な限り当初予算に計上するよう配慮したものでありますが、原則的には、統一地方選挙を控えておりますことから、新規または政策的経費については計上を見合わせた、いわゆる骨格的予算として編成したところであります。
 以下、その概要について御説明いたします。
 第1条は、歳入歳出予算の総額を、それぞれ8、697億1、157万9、000円と定めるものであります。これを前年度当初予算に比較しますと、3・1%の増となっております。
 次に、歳入について御説明いたします。
 第1款県税につきましては1、183億6、000余万円を計上しており、前年度当初予算に比較しますと87億500余万円の減となっておりますが、この見積もりは、平成10年度の税収の最終見込みを基礎として、平成11年度の経済見通しによる経済指標、地方財政の収支見込みにおける税収の伸び及び県内経済の動向等を勘案するとともに、税制改正による恒久的な減税に伴う影響分などを見込んだものであります。
 第2款地方消費税清算金につきましては237億8、400余万円を計上しており、前年度に比較して28億200余万円の減となっております。
 第3款地方譲与税につきましては31億8、400余万円を計上しており、前年度に比較して5、300余万円の増となっております。
 第4款地方特例交付金につきましては9億6、400万円を計上しておりますが、これは、税制改正に伴う地方税の減収の一部を補てんするための財源として新たに創設されたもので、交付される金額を見積もったものであります。
 第5款地方交付税につきましては2、621億5、800余万円を計上しており、前年度当初予算に比較して196億6、100余万円の増となっております。
 第6款交通安全対策特別交付金につきましては6億9、800万円、第7款分担金及び負担金につきましては127億300余万円を計上しております。
 第8款使用料及び手数料は116億4、700余万円を計上しており、前年度当初予算に比較して3億4、100万円余の増となっております。
 第9款国庫支出金につきましては1、737億4、500余万円を計上しており、これを前年度当初予算に比較しますと37億2、600余万円の減となっております。
 第10款財産収入につきましては24億1、400余万円、第11款寄附金につきましては1、000万円をそれぞれ計上しております。
 第12款繰入金につきましては275億3、300余万円を計上しておりますが、これは、県債管理基金及び公共施設等整備基金等からの繰り入れを行うものであります。
 第14款諸収入につきましては1、153億6、800余万円を計上しておりますが、これは、公営企業等に対する貸付金の元利収入であります。
 第15款県債につきましては1、171億3、800万円を計上しており、前年度当初予算に比較して40億4、600余万円の減となっております。
 次に、歳出について御説明いたします。
 第1款議会費につきましては16億2、200余万円を計上しております。
 第2款総務費につきましては452億6、900余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、県庁舎有線電話設備整備事業費2億5、500余万円、東北新幹線建設促進対策事業費143億1、600余万円、オンラインシステム運営費14億3、500余万円、地域活性化事業調整費11億円、知事・県議会議員選挙執行費7億7、000余万円等であります。
 第3款民生費につきましては449億7、700余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、民間社会福祉施設整備等助成費3億8、000余万円、重度心身障害者(児)医療助成費17億400余万円、知的障害者更生援護費22億1、100余万円、老人保護措置費24億7、200余万円、老人福祉活動推進費32億2、800余万円、老人福祉施設整備費35億9、000余万円、国民健康保険事業安定化推進費9億1、200余万円、特別保育事業費8億6、400余万円、乳幼児、妊産婦医療助成費6億7、100余万円、児童保護措置費51億3、800余万円、児童扶養手当支給事業費33億100余万円、生活保護扶助費41億6、000余万円、被災者生活再建支援基金負担金3億7、400余万円等であります。
 第4款衛生費につきましては214億1、700余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、母子保健対策費4億9、700余万円、特定疾患対策費5億9、500余万円、精神障害者入院等措置費6億5、900余万円、老人保健対策費77億6、000余万円、産業廃棄物処理モデル事業推進費11億5、300余万円、合併処理浄化槽整備費補助3億1、900余万円、ふれあいトレッキングロード整備事業費3億2、200万円、救急医療対策費7億9、700余万円等であります。
 第5款労働費につきましては34億9、500余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、職業能力開発推進事業費4億3、200余万円、産業技術短期大学校管理運営費3億余万円等であります。
 第6款農林水産業費につきましては1、363億8、900余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、地域農業基盤確立農業構造改善事業費13億2、000余万円、山村等振興対策事業費8億9、200余万円、新いわて農業再編総合対策事業費7億9、700余万円、いわて純情米生産体制強化総合推進対策事業費9億4、100余万円、農業協同組合経営改善特別対策資金貸付金52億6、000万円、畜産団体育成対策費8億7、000余万円、かんがい排水事業費31億2、000余万円、農道整備事業費45億2、900余万円、ほ場整備事業費124億8、000余万円、中山間地域総合整備事業費35億3、700余万円、農村総合整備事業費29億5、700余万円、農業集落排水事業費37億4、100余万円、国営土地改良事業費負担金48億8、900余万円、水土保全森林緊急間伐対策事業費5億600余万円、造林事業費24億6、200余万円、林道開設事業費33億1、800余万円、ふるさと林道緊急整備事業費59億7、500万円、治山事業費51億2、500余万円、沿岸漁場整備開発事業費12億7、700万円、魚類栽培推進事業費6億9、800余万円、漁業協同組合信用事業統合促進資金貸付金24億6、500余万円、漁港修築事業費53億9、400余万円、海岸保全施設整備事業費12億2、400余万円、漁業集落環境整備事業費8億2、000余万円等であります。
 第7款商工費につきましては854億3、000余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、商工業小規模事業対策費27億6、900余万円、商工観光振興資金貸付金176億8、100余万円、中小企業経営安定資金貸付金285億1、700余万円、いわて緊急経済対策資金貸付金156億円、工業立地促進資金貸付金53億1、500余万円、休廃止鉱山鉱害防止事業費8億3、700余万円等であります。
 第8款土木費につきましては1、415億7、800余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、空港整備費31億2、300余万円、交通安全施設整備事業費27億7、200万円、道路改築事業費116億500余万円、道路改良事業費40億1、000余万円、緊急地方道路整備事業費117億8、000余万円、新交流ネットワーク道路整備事業費75億8、900余万円、地方特定道路整備事業費100億2、300余万円、基幹河川改修事業費30億8、800万円、三陸高潮対策事業費19億500万円、砂防事業費24億8、600余万円、急傾斜地崩壊対策事業費15億5、500万円、早池峰ダム建設事業費38億2、300余万円、簗川ダム建設事業費33億3、500万円、港湾改修事業費21億8、000万円、土地区画整理事業費10億3、000万円、過疎地域公共下水道整備代行事業費23億600余万円、県営住宅ライフアップ事業費6億7、200余万円等であります。
 第9款警察費につきましては315億400余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、警察行政運営費238億2、500余万円、警察署庁舎整備事業費3億1、300余万円、交通安全施設整備費16億8、500余万円等であります。
 第10款教育費につきましては1、858億5、200余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、校舎建設事業費16億6、100余万円、校舎大規模改造事業費21億9、300余万円、文化財保護推進費3億1、900余万円、美術館整備事業費18億2、000余万円、全国高等学校総合体育大会推進事業費19億1、700余万円、県立大学運営費53億2、600余万円、私立学校運営費補助46億3、100余万円等であります。
 第11款災害復旧費につきましては155億5、400余万円を計上しております。
 第12款公債費につきましては982億5、300余万円を計上しております。
 第13款諸支出金につきましては580億6、500余万円を計上しており、その主な内容は、公営企業貸付金78億円、公営企業負担金192億8、600余万円、地方消費税清算金138億2、100余万円、地方消費税交付金119億6、300余万円、自動車取得税交付金31億7、100余万円等であります。
 第14款予備費につきましては3億円を計上いたしております。
 以上をもって、第1条の説明を終わりますが、歳出に充当した一般財源の額は、県税、地方交付税等で4、552億7、400余万円となっており、その割合は52・3%になっております。
 第2条債務負担行為は、地区合同庁舎管理費に係る機械設備改修工事等51件について、債務負担行為をしようとするものであります。
 第3条地方債は、地区合同庁舎建設事業等52件について、起債の限度額、起債の方法、利率及び償還の方法を定めようとするものであります。
 第4条一時借入金及び第5条歳出予算の流用は、それぞれ所要の措置を講じようとするものであります。
 議案第2号から議案第12号までは、平成11年度の母子寡婦福祉資金特別会計予算、農業改良資金特別会計予算、県有林事業特別会計予算、林業改善資金特別会計予算、沿岸漁業改善資金特別会計予算、中小企業振興資金特別会計予算、土地先行取得事業特別会計予算、証紙収入整理特別会計予算、流域下水道事業特別会計予算、港湾整備事業特別会計予算、県民ゴルフ場事業特別会計予算でありますが、これは、それぞれの事業計画等に基づき、その所要額を計上したものであります。
 議案第13号から議案第15号までは、平成11年度の県立病院等事業会計予算、電気事業会計予算、工業用水道事業会計予算でありますが、これは、それぞれの事業計画に基づき、収益収支及び資本収支等の所要額を計上したものであります。
 議案第16号から議案第21号までの6件は、建設事業等に要する経費の一部を受益市町村に負担させることに関し、それぞれ議決を求めようとするものであります。
 議案第22号から議案第65号までの44件は条例議案でありますが、これは、外部監査契約に基づく監査に関する条例、感染症診査協議会条例、オートキャンプ場条例及び海岸休養施設条例を新たに制定するとともに、一般職の職員の特殊勤務手当に関する条例などの一部を改正しようとするものであります。
 議案第66号及び議案第67号は、全国及び関東・中部・東北自治宝くじ協議会規約の一部を変更することの協議に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第68号は、包括外部監査契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第69号は、被災者生活再建支援金の支給に関する事務の委託に関し議決を求めようとするものであります。
 次に、報告第1号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 報告第2号は、道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 以上のとおりでありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださるようお願いいたします。
   
日程第75 発議案第1号米軍機の飛行訓練の中止を求めることについて
〇議長(那須川健一君) 次に、日程第75、発議案第1号米軍機の飛行訓練の中止を求めることについてを議題といたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております案件は各派共同提案でありますので、会議規則第34条第2項の規定及び先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(那須川健一君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 これより、発議案第1号米軍機の飛行訓練の中止を求めることについてを採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(那須川健一君) 起立全員であります。よって、発議案第1号米軍機の飛行訓練の中止を求めることについては、原案のとおり可決されました。
   
〇議長(那須川健一君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後2時5分 散 会

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