平成11年9月定例会 第3回岩手県議会定例会会議録

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〇8番(川村農夫君) 私は、さきの統一地方選挙で初当選いたしました自由党の川村農夫でございます。
 6月の定例会を終え、議会の流れの一端を学び、一段と身の引き締まる思いと意欲みなぎる感を抱いております。このたびの定例会におきましては、先輩議員の皆様の御高配により、一般質問の機会を与えていただきましたことに対し、深く感謝申し上げる次第であります。
 さらに、これからの4年間、正副議長を初め、各議員の皆様方の御指導を賜りながら、県勢発展に向かって鋭意努力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、通告に従いまして質問をさせていただきます。
 あすから認定申請が始まる介護保険制度の導入に向けて、限られた時間の中で県当局及び市町村におきましては、連日連夜の厳しい諸準備が続いているのではないかと推測するものであります。これらの取り組みに対しまして敬意を表するとともに、円滑な導入に向けたさらなる取り組みを期待するものであります。
 私は、福祉施策の中から次の2点についてお伺いします。
 最初に、老人福祉施設建設についてお伺いします。
 今議会に提案されている補正予算の中でも、8カ所の老人福祉施設の建設が進められております。私が受ける福祉施設の印象は、小さいときに映画で見たうば捨て山の光景と重なってしまい、非常に心が沈んでしまいます。この家に嫁いで何十年もの間、子供を産み育て、野良に稼ぎ働き尽くしてきた母が、そして父が、働く体力を消耗し切って自分の自由がきかない体になった途端、なぜあの山すその施設へと追いやられるのか。もしもこの地域に、この集落に、母を、父を預かってもらえる施設があったならと、年老いた父母を抱える多くの県民が望んでいると思うのであります。また、何十年と働きづめに働き、隣の母さんとゆいっこしてきたこの地で季節の移り変わりを感じ、地域の人々の息吹を感じながら、学校帰りの孫たちが寄って遊んでいってくれる、そんな中で福祉の恩恵を受けることができたなら、老人にとってどんなに心が豊かに安らぐのだろうかと思うのであります。地域の公民館の隣でもいいと、60歳過ぎた年金を受ける元気な介護力のあるお母さん、お父さんは、地域にはたくさんおります。この力を生かした介護福祉、地域の福祉力が農村社会には潜在しております。私は、このような地域で支える高齢化社会の福祉、介護を夢見るものですが、地域社会の中に、地域の皆さんとともに生きる福祉施設の建設を目指していただきたいと思うものであります。
 知事はこの4年間、県下くまなく歩かれ、農村社会の実情にも触れられたことと存じますので、それらをも踏まえ、老人福祉施設建設の理念と今後の取り組みの基本方針について、知事の御所見をお伺いします。
 第2点目は、介護保険導入後における寝たきり老人等介護手当支給事業のあり方についてであります。
 現在、在宅重度障害者及び寝たきり老人等介護手当支給事業補助金交付要綱に基づき、寝たきり老人等と同居して常時その介護に従事している者に対し、介護手当を支給する事業があります。県の補助金は基準月額3、500円となっており、半数以上の市町村で上乗せして支給しているのが現状であります。介護保険制度の実施に伴い、この支給事業を継続して介護者を側面から支援する制度として存続を希望するものでありますが、御所見をお伺いいたします。
 次に、子育て支援について2点お伺いします。
 まず第1に、保育所の子育て支援についてでありますが、核家族化が進み、地域の交流が薄れ、本格的少子・高齢化社会を迎えようとする今、子育て支援は重要な課題であります。入園前の幼児を抱え、日々の育児に悩み戸惑う若き母親、父親への子育て支援センターの機能を、地域の身近にある保育所に具備されたならば、大きな効果を発揮できるものと期待しております。また、地域における交流の場として、地域の同世代に保育園を開放する施策が実施されてしかるべきであります。
 そこでお伺いしますが、地域子育て支援センター事業を県内22の保育所で実施していると聞いておりますが、この事業をどのように評価し、今後、この事業の拡充に向けてどう取り組まれるのかお伺いします。
 また、保育士の研究機会を充実させながら育児相談、保育相談に対応する施設機能の充実を図るべきだと考えますが、御所見をお伺いいたします。
 第2点目として、母子家庭、父子家庭への支援策についてお伺いいたします。
 今、県内には約8、700世帯の母子家庭があります。18歳未満の子供を抱え、母親1人の働いた収入が生計の中心となっているのが約7、200世帯あります。その就労収入の額は10万円前後が7割という状況にあり、児童扶養手当は月額4万円前後となっております。経済的に厳しい状況にあります。この、悲しみを乗り越え、けなげに生き抜く母と子の家庭に県はどのように応援していかれるのか、その取り組みについてお伺いします。
 また、父子家庭の現状も厳しいものがあります。育児時間をとれず子供を預ける場所、施設も限られ、育児環境が未整備な中、就労面での理解もまだ浅く、社会的にも家庭的にも苦労が絶えない状況にありますが、これら父子家庭への支援に向けた取り組みについてもあわせてお伺いいたします。
 次に、教育問題についてでありますが、教育は国づくり、人づくりの基本であります。知識の画一的な詰め込み、受験のみを目的とした偏差値教育の弊害は、いまや日本社会の随所にあらわれてきております。不登校やいじめ、学級崩壊など、さまざまな問題を抱えながら、家庭、地域社会、学校の3者が相互に連携して人づくりに取り組まなくてはなりません。その中でも早急に取り組まなくてはならないのが、完全学校週5日制への対応であります。
 そこで、完全学校週5日制に向けての地域の取り組みに対する支援についてお伺いいたします。
 平成14年度から実施される完全学校週5日制は、学校、家庭、地域社会での教育や生活全体で子供たちに生きる力をはぐくみ、健やかな成長を促すことを目的として定められました。土曜日や日曜日を利用して、家庭や地域社会で子供たちが生活体験や自然体験、社会体験、文化・スポーツ活動など、さまざまな活動や体験をすることが望まれております。
 文部省のアンケート調査によりますと、道徳観、正義感は生活体験、自然体験の豊富な子供の方がすぐれて身についていることが明らかになっております。そうした体験の場を充実するために、国においては、平成13年度までに地域での子供を育てる環境を整備し、親と子供たちのさまざまな活動を振興するため緊急3カ年戦略、いわゆる全国子どもプランを推進することとしております。
 私は、25年間、スポーツ少年団で地域の子供たちと一緒に活動してきましたが、私たちのような指導・育成に携わるリーダーがもっと多く必要になってまいります。しかしながら、長年のPTA活動や地域子供会活動を通して感じますことは、地域の子供会世話人の方々も、順番だからとか1年我慢すればいいからといった意識が多く見受けられ、少子化の背景にある意識に共通した、自分の時間と楽しみを優先する親が多い傾向にあります。岩手県子ども育成会連絡協議会への加入も、59市町村中17市町村と3分の1に満たない状況であり、活動の連携、振興がなかなか活性化しない傾向にあります。
 こうした状況下において、地域で子供たちの育成に取り組んでいく組織をどのように育て、土曜、日曜の学校外活動の受け皿となる組織をどう支援していかれるのか、教育長のお考えをお伺いいたします。また、本県の全国子どもプランへの取組状況についても、あわせてお伺いいたします。
 次に、このことに大きく関連して、土木部、農政部の所管事業の進め方についてお伺いいたします。
 地域の土木事業で、河川や道路の整備に際し、計画や事業実施の説明会に地権者のみが集められ、事業が進められる傾向があります。河川や小川は、子供たちが自然と取っ組み合う格好の場であり、地域体験教育の最高の教室であります。このような観点から、地域青少年の育成に携わる関係住民の声を組み入れられるような事業推進の方法をとっていただきたいと思いますが、御所見をお伺いいたします。
 また、農業農村整備事業における水路のコンクリート化についてでありますが、私の近所に、螢の群れ遊ぶ小さな小川がありました。メダカやドジョウ、ザリガニなど、子供たちが網を持って群れ遊ぶ昔ながらの小川でした。それが一冬過ぎたらコンクリートの深い水路と化し、その後、螢も小魚も見ることができません。子供が群れて遊ぶところには、お年寄りたちも日影に腰をおろし、よもやま話にふけるのでしたが、その光景さえも奪われてしまいました。子供たちは、就学前あるいは小学校3年生までと言われるギャングエイジの時期に、多くの仲間と群れて遊ぶ体験の中から喜びや感動、痛みや悲しみ、悔しさや達成感、そして自分の能力、自分らしさを発見したりして、思いやりのある明るく忍耐強い心がしっかりとはぐくまれていきます。これからの子供たちにとって、何よりも貴重な自然体験の場を、自然との触れ合いのポケットパークを随所に設けてくれるよう配慮をお願いしたいのでありますが、御所見をお伺いいたします。
 また、施設整備にこのような配慮をしていくためには技術職員の意識の持ち方が最も重要と考えますが、あわせて御所見をお伺いいたします。
   〔副議長退席、議長着席〕
 次に、県職員の地域活動への参加状況についてお伺いいたします。
 地方の活性化、地域社会の活性化、地域の力が叫ばれ期待されている今日、役場職員の地域行事への参加の姿勢は、各自治体で住民の高い評価を得ているところであります。県職員についても、各地方振興局で地域に溶け込み、地域に密着した活動を展開するため、お祭り等の地域行事に積極的に参加しているところもあるやに聞いておりますが、その実態をどう把握し評価しておられるのかお伺いします。
 また、県職員の地域行事への参加を今後とも積極的に進めるべきと考えますが、職員への指導、呼びかけをどのようにしていかれるのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、県土岩手の地図情報のデジタル化の推進についてお伺いします。
 新しい総合計画のもと、各地域の土地利用計画や社会資本整備の計画が、現在進行中のものと相まって推進されることになります。地域の土地利用計画の情報は、国土地理院の地図に、色別、斜線別、くくり別など、さまざまな凡例を組み合わせて示されていますが、非常に判読しにくいのが現状であります。また、総合的な情報を得るためには、何枚もの地図を並べてみなくてはなりません。しかも、物によっては現況が判別しにくくなるまで計画が重ね塗りされているものもあり、各種検討の資料として適さないものとなっております。
 今、衛星からの地図情報やCADソフトの進展により、パソコン画面上で現況地図情報を非常に手軽に入手できるようになりました。土地利用規制や環境保全情報、事業計画情報などの各分野の情報を書き込んでおけば、必要な情報を組み合わせて表示、印刷することができるようになり、各事業分野の横の連携、情報の共有化が飛躍的に進むとともに、その情報を民間にも開放すれば事業や研究にも大きな効果が期待されますが、この地図情報の電子化に向けて、今後、どう取り組まれるのかお伺いいたします。
 次に、本年7月12日制定されました食料・農業・農村基本法は、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的な発展、農村の振興を基本理念としているところであります。日本の食料基地岩手の基幹産業である農業に関しまして、3点お伺いいたします。
 第1に、畜産問題についてお伺いいたします。
 畜産振興上の阻害要因にもなっている家畜ふん尿による悪臭や水質汚濁などの畜産環境対策についての県の取り組みについてでありますが、一部の大規模養豚施設で試みられているふん尿の臭気解消のための微生物応用による肥育に取り組んでいる事例を見ておりますが、もしこのような技術が確立するならば、養豚経営に画期的な道が開けるものと期待するところであります。畜産農家においても、家畜ふん尿の悪臭防止や堆肥化による有効利用など、環境対策への取り組みを強化していく必要がありますが、本県の畜産環境問題の現状を踏まえ、今後、環境保全対策にどのように取り組んでいくのか、あわせて畜産環境の改善に向けた微生物利用の研究への取り組みについて御所見をお伺いいたします。
 第2に、圃場整備とあわせて実施されている21世紀型水田農業モデル圃場整備促進事業についてお伺いいたします。
 我が国の農業・農村を取り巻く状況は、農業者の高齢化の進展と農業就労人口の減少、耕作放棄地の増大、食料自給率の低下、兼業化などの面で大きく変化しており、このような社会経済的変化に即して圃場整備事業が推進されてきました。中でも、農業者が激減する中で、食料自給率の向上のためには、担い手を育成・確保し、それらへ農地利用を集積し規模拡大を図ることを急務としてきました。21世紀型事業は、2ヘクタール以上の連担団地──農業生産集積率──が目標年度までに50%以上を達成できることを要件として、毎年度事業費の10%相当額以内の促進費の交付を受けている事業であります。この事業は、県内11地区で実施されていると伺っておりますが、これら地区の農業生産集積率の達成状況はどうなっているのか、補助事業の成果は十分に生かされているのかお伺いいたします。
 また、担い手農家の次の後継者育成についても現状よりさらに困難が予測されますが、御所見をお伺いいたします。
 第3に、農業水利施設の維持管理についてお伺いいたします。
 岩手の農村においては、水を蓄える農業用ダムやため池、川の水を堰上げて取水する堰、水を運ぶ用排水路等の農業水利施設が数多くあります。これらの施設は幾世代にもわたり構築、継承されてきたものであり、食料生産の基礎であるとともに、県土の環境保全、農村景観の形成などにおいても重要な施設であると思うところであります。農村は、農産物の生産の場であるとともに、農地やこれと一体的な農業水利施設の適正な維持、利活用を通じて、水田の雨水貯留や土砂流出防止機能、地下水涵養や遊水機能、親水機能などの多面的な公益的機能を発揮しているところであります。
 本県の農業・農村が持っている多面的機能について、県民がどのように認識しているかという県が行ったアンケート調査によれば、農業・農村の有する多面的機能を理解しているという回答は8割を超え、県民の多くがその重要性を認識し、次世代に残したいと回答しております。これらの機能を保全し、次世代へと継承していくために、何らかの施策を実施すべきだとする回答は8割に上っているという報告がなされておりました。
 また、農業・農村の有する多面的機能の経済的価値を定量化するための評価調査によれば、本県の広大な農地が持っている国土保全機能としての洪水防止、水資源涵養、土壤浸食防止の評価額は2、349億円となっております。また、安らぎの場の提供、情操教育の場の提供、生物や生態系の保全、伝統文化の保全の機能評価額は224億円となり、あわせて2、573億円となっております。農業水利施設の管理については、担い手農家の減少や高齢化が進展し、農業水利施設の適切な維持管理が困難となってきており、また、農業水利施設を管理している土地改良区のほとんどが小規模であり、財政基盤が脆弱であることから、今後の適正な施設管理が危惧されるところであります。
 県民の多くが、農業・農村の持つ多面的な機能の発揮の重要性を認識している中で、農業水利施設の持つ機能をより発揮させ維持するための積極的な施策の展開を図ることが重要と思いますが、農政部長の御所見をお伺いいたします。
 最後に、盛岡広域圏の交通網の整備についてお伺いします。
 県都盛岡市の次世代交通機能の整備を考えるとき、JR線の機能充実を第1に挙げたいと思います。
 自家用車への依存が著しい今日の通勤状況から、交通渋滞の解消や排気ガスによる大気汚染軽減など、公共交通機関を活用して改善できる点が多くあります。中でも、市中心部から同心円状に広がる新興住宅地は、近年、特にJR線沿いに延びていく傾向にありますが、東北線や田沢湖線、山田線でもまだまだ駅と駅の間の距離の長い区間が数多くあります。最近では、地元市町村の熱心な働きかけにより紫波中央駅が誕生しておりますが、新駅の設置の問題は地元市町村の問題としてではなく、盛岡広域圏の都市整備や交通網整備の問題として、県の積極的な対応が期待されるところであります。盛岡近郊の東北線の各駅の間や盛岡駅と上盛岡駅の間、あるいは盛岡駅と大釜駅の間などに新駅を設置すれば、これら新駅に至る交通の流れやこれら新駅から盛岡駅などに至る交通の流れができ、盛岡市内の交通渋滞の緩和に大きな効果が期待できるとともに、既存の交通施設が持っている潜在的特質を最大限に引き出すことができると考えますが、いかがでしょうか。盛岡広域圏の交通問題は、道路整備のみで解決するのは困難であり、これらの新駅の設置や、将来的には盛岡モノレール等の導入も視野に入れた複合型の交通網整備が必要不可欠と考えますが、北東北の拠点都市を唱える盛岡広域圏の交通網についてどのような将来構想をお持ちなのか、知事の御所見をお伺いいたします。
 以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 川村農夫議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、老人福祉施設建設の理念と今後の取り組みの基本方針についてでございますが、後期高齢者の増加や核家族化等に伴いまして、家庭や地域における介護機能の低下が予想されております。
 こうした中で、県では、住みなれた家庭や地域で生活をしたい、このような高齢者の願いにこたえて、健康で心豊かに暮らせる福祉社会の実現を目指して、岩手県高齢者保健福祉計画に基づいて、福祉施設など各種老人福祉サービスの提供体制の整備を進めてきたところでございます。
 特にも、来年4月から施行される介護保険制度を目前にしまして、地域における介護基盤の整備は緊要な課題でございまして、必要な福祉施設の整備を進めるとともに、公民館や学校の空き教室など既存施設の利用、ボランティアの参加など地域の社会資源を有効に活用しながら、住みなれた家庭や地域でその人にふさわしい介護サービスが受けられるよう、介護基盤の整備を積極的に促進してきたところでございます。
 今後におきましては、現在の高齢者保健福祉計画の見直しを行いまして、高齢者がより一層健康で心豊かに暮らせるよう、自助、公助に加えて──この公助というのは公的な助成という意味でございますが──、岩手が培ってまいりました結の精神を継承し、地域で支え合う共助の心を持った福祉社会を形成するために、総合的な高齢者保健福祉対策を積極的に進めてまいります。
 次に、畜産の環境対策についてでございますが、さきの国会において、農業環境三法の一つであります家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律が成立しますなど、畜産由来の排せつ物を適正に処理することはもとより、有機質資源として最大限に有効活用させることが極めて重要な課題となっているところでございます。この課題に対処するためには、畜産部門、耕種部門ともそれぞれに低コストで省力的に活用できるシステムの構築が望まれているところでございます。
 具体的には、短期間に完熟堆肥が製造できる技術の導入を進めながら、営農集団や農協などが設置する堆肥センターを核として、堆肥散布機を活用した効率的な共同利用システムを普及するなど、堆肥のリサイクルネットワーク化が早期に確立されるよう積極的に支援してまいりたいと考えております。
 また、畜産環境の改善に向けた研究につきましては、現在、県の農業研究センター畜産研究所において、家畜ふん尿から発生いたしますアンモニアの脱臭技術の確立など多面的に取り組んでいるところでございますが、微生物を活用し、悪臭の発生を防止する技術についても調査研究してまいりたいと考えております。
 次に、盛岡広域圏における交通網の将来構想についてでございますが、盛岡広域圏における交通については、マイカーへの過度の依存に起因する交通渋滞や環境問題、交通事故問題など解決すべき多くの課題があるものと認識しております。こうした課題に対しましては、御指摘のように公共交通機関の活用が重要でございまして、各地域の事情に応じまして、例えば、盛岡市においてオムニバスタウン計画を策定してバスを中心とした交通の実現を目指したり、雫石町や紫波町においてパーク・アンド・ライドのための駐車場を整備するなど、公共交通機関へのシフトを図るための取り組みが積極的に進められているところでありまして、県としても、通学生やお年寄りなど交通弱者の日常生活に不可欠な足としての役割を担い、環境にも優しい鉄道、バスなどの公共交通機関の利便性の向上に努めてきたところでございます。
 今後におきましても、新しい総合計画において、各種の交通機関相互の連携を図りながら、それぞれの特性を生かした交通体系づくりを促進するとともに、環境への負荷の少ない公共交通機関の利用や時差出勤などの交通需要マネジメントを促進することなどを明確に位置づけたところでございまして、これらの施策に積極的に取り組んでいくこととしてございます。
 また、新駅設置やモノレールなどの導入も視野に入れた複合型の交通網の整備に関する御提言につきましては、今後、環境に優しい新交通システムの導入について調査検討を進めることとしておりまして、地域の物理的な条件、需要、採算性、事業主体等の諸条件を十分に考慮し、関係市町村等とも連携を図りながら、中長期的な視点に立って取り組んでまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁をさせますので、御了承お願いします。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕
〇保健福祉部長(関山昌人君) まず、在宅重度障害者及び寝たきり老人等介護手当支給事業についてでありますが、この事業は、在宅重度障害者、寝たきり老人等と同居して常時その介護に当たっている方の介護負担の軽減を図ることを目的として、昭和48年度から実施しております。一方、平成12年度から、寝たきり老人等の要介護者が、その有する能力に応じて自立した生活を営むことができるよう、必要な介護サービスの給付を目的とした介護保険制度が施行されることにより、介護に当たっている御家族等の介護負担の軽減、解消が図られるものであります。
 このため、寝たきり老人等介護手当支給事業においては、その事業目的に対応した介護保険制度が創設されたことから、本事業の取り扱いについては、介護保険制度における給付内容などに留意しつつ、検討を加えることも考慮しておくべき事柄と考えております。
 次に、地域子育て支援センターについてでありますが、今日、核家族化の進行、出生率の低下等に対応して、地域全体で子育てを支援する基盤を形成していくことは極めて重要な課題となっております。中でも、育児不安に悩む母親がふえている中で、保育所の持つ子育て機能を活用し、育児についての相談指導や子育てサークルの育成、支援、保育所の園庭の地域開放等を通じて幅広く地域の子育て家庭に対する育児支援を行っている地域子育て支援センター事業は重要な施策であると考えており、保育所を設置している全市町村にできる限り同センターが置かれるよう、設置を積極的に促進してまいります。
 また、保育に従事する職員の研修につきましては、子育て環境の変化に対応した育児支援のあり方などについて研修を重ね、その資質の向上を図ることが重要と考えており、県におきましては、新任職員、中堅職員、主任保育士への研修のほか、育児担当職員や障害児担当職員の研修、さらには給食担当職員研修など10コースに及ぶ県立社会福祉研修所での研修機会を提供しているほか、関係各団体が主催する研修会への参加の促進を図るなど、積極的に研修の充実に努めているところであり、これらの研修を通じて保育所職員の資質の向上を図り、地域住民からの育児相談等に適切に対応できるよう努めてまいります。
 次に、母子・父子家庭に対する支援策についてでありますが、母子・父子家庭の方々の多くは経済的、社会的に不安定な状況にあり、母子・父子家庭の自立支援と生活の安定を図ることは極めて重要であると考えているところであります。
 平成10年度に実施いたしました調査の結果によれば、母子家庭の抱える課題としましては、やはり経済的な問題が圧倒的に多く、次に養育、教育の問題を挙げており、また、父子家庭におきましては、経済的問題ばかりではなく、養育、教育の問題も多く挙げられております。
 そのため、県におきましては、これら母子・父子家庭の自立支援と生活安定を図るために、各種の相談事業や、介護や育児等が必要となった場合の介護人派遣事業、親子でリフレッシュするための母子家庭等休養ホーム事業の実施のほか、本年度は、地域でボランティアによる助け合い・支え合い活動を推進する地域福祉のゆいづくり事業を行うこととしております。
 また、特に経済的な面での支援を必要とする母子家庭に対しましては、母子福祉資金の貸し付けなどの事業を行ってきたところであります。
 今後とも、関係機関、団体等とのより緊密な連携のもとに、これら施策の充実を図るとともに、母子・父子家庭に対し適切に対応できる相談体制の確保を初め、保育対策の拡充、子育て支援短期利用事業の促進など、母子・父子家庭の自立支援にさらに努めてまいります。
   〔土木部長大石幸君登壇〕
〇土木部長(大石幸君) 地域青少年の育成に携わる関係住民の声を組み入れた河川事業の進め方についてでありますが、河川は、地域の人々の憩いの場として親しまれているとともに、子供たちが自然を体験しながら学ぶこともできる水と緑の貴重な環境空間であります。したがって、河川整備に当たりましては、洪水対策はもとより、平常時の川の利用も考えた、地域にふさわしい川づくりを目指していくため、用地関係者ばかりでなく、地域住民や各界の有識者の意見をお聞きする河川懇談会や川を語る会などをこれまで江刺市の人首川など28河川に設置し、取り組んできているところであります。
 具体的な例といたしましては、現在、陸前高田市と住田町を流れる気仙川におきまして、地域の有識者の方々を初め、青少年の育成に携わる関係者をも含めた河川懇談会の中で今後の河川整備について検討中であり、可能な限り地域の声を取り入れた計画の策定を目指しております。
 また、新たな試みとして、昨年度から宮守村を流れる宮守川では川のワークショップを開催し、小学生から大人まで、各世代の方々に身近にある川とのかかわり方や利用しやすい整備の手法などを話し合っていただき、川におりて水辺で遊べる傾斜の緩い護岸をつくるなどの御意見を河川整備にできるだけ反映していくよう取り組んでいるところであります。
 このように、河川懇談会やワークショップを設けて事業を進めていくことは、地域にふさわしい川づくりを進めていく上で大変大切なことであると考えており、今後とも、青少年育成に携わる方々など地域の声を幅広くお聞きする場を積極的に設けながら河川事業を進めてまいりたいと考えております。
   〔農政部長佐藤徳兵衛君登壇〕
〇農政部長(佐藤徳兵衛君) まず、農業農村整備事業の実施に当たってのポケットパーク等の設置についてでありますが、これまでも、生産基盤や生活環境施設の整備に当たっては、できるだけ自然環境に配慮した工法の採用や自然との触れ合いの場となる施設の設置に努めてきたところであります。しかし、農家負担や維持管理上の問題から、県全体で見るとまだ十分とは言えない状況にあることは御指摘のとおりであります。
 一方、環境に対する国民の関心が高まる中、今般、制定された食料・農業・農村基本法に農業・農村の持つ多面的機能の一層の発揮が明示されたところであります。農業農村整備事業においても環境に配慮した整備が強く求められ、公的負担の拡大がなされるなど制度の充実が図られてきており、紫波町の長岡小学校に隣接し、圃場整備の実施とあわせて設置された親水施設や、水路の改修とあわせて実施された水沢市の乙女川地区等において整備が進められているところであります。
 県といたしましては、現在策定中である新しい農業農村整備計画に「いわての大地に創る“水とみどり・そして未来"」を基本目標として掲げ、環境への配慮を明確に位置づけることとしております。農業農村整備に当たっては、事業に携わる職員が、この計画に沿って、事業計画段階から環境保全への取り組みや施設の維持管理方法について、地域住民との話し合いの中で合意形成を促し、次代を担う子供たちの情操教育の場として活用できる自然との触れ合いの場を積極的に整備してまいりたいと考えております。
 次に、21世紀型水田農業モデルほ場整備促進事業についてでありますが、本事業は、連担した農地をその地区の担い手である生産組合や主業型農家に集積し、生産性の高い水田農業の確立を図ることを目的に、平成3年度から11地区で実施しております。このうち、前沢町の大桜地区初め8地区が本年度までに事業要件である集積率50%以上を達成し、残る3地区につきましても集積率が順調にアップしており、目標年次までには達成できる見込みであります。
 県といたしましては、担い手の育成と体質の強い農業の確立が農政推進の重点課題であることから、県、市町村、JA、土地改良区のほか、県農地管理開発公社の市町村駐在員で構成する農地流動化推進支援チームにより、事業要件達成に向けた支援、指導活動を行ってきたところであります。これらの地区では、整備された圃場で大型機械による低コスト稲作や麦、大豆の集団転作が行われるなど、生産性の高い水田農業の確立に向けた取り組みが着実に行われております。
 また、担い手農家の後継者育成についてでありますが、農業従事者の減少や高齢化が進む中で、新規就農者の確保が極めて重要な課題でありますことから、関係機関、団体と密接に連携しながら、就農条件等の整備を一層促進し、後継者の確保、育成に努めてまいる考えであります。
 次に、農業水利施設の維持管理についてでありますが、水利施設が果たしている多面的機能の重要性が広く県民に理解されてきている一方、施設を管理する土地改良区のほとんどが小規模であり、財政基盤が脆弱な中で、施設の維持管理に要する経費が年々増加する傾向にあります。また、農村の混住化や高齢化等の進行も相まって、適正な維持管理が危惧されているところでもあります。
 このようなことから、施設の維持管理費の軽減を図るため、老朽化した施設の更新を進めるとともに、ふるさと水と土・保全基金制度を活用し、施設の保全活動を支援してきたところであります。さらには、平成8年度に創設されたダム等の施設を対象とした基幹水利施設管理事業等の維持管理費助成制度を導入し、積極的に公的支援を行っているところでありますが、本年度からは幹線用排水路等についても助成対象となるなど、年々制度の拡充が図られているところであります。
 今後とも、助成対象施設の範囲拡大など、制度の充実強化に向けて強力に国へ要請してまいりたいと考えているところであります。
   〔総務部長武居丈二君登壇〕
〇総務部長(武居丈二君) 県職員の地域活動などへの参加状況についてでありますが、平成10年度の状況を見ますと、盛岡地方振興局の盛岡さんさ踊りへの参加や釜石地方振興局の釜石よいさへの参加など、全地方振興局で28の祭りなどに延べ1、900人が参加しております。
 また、社会貢献活動への参加につきましては、この8月に開催されました岩手総体の成功に向けた名勝地の清掃活動など、全地方振興局で30の活動に延べ1、100人が参加したほか、個人といたしましても、お年寄りの家の雪おろしを手伝うスノーバスターズを初め、社会福祉や環境保全などのボランティア活動への参加など、それぞれの地域において熱心な取り組み事例が見られるものと承知しております。
 職員の地域活動への取り組みは、職員一人一人の自発的意思に基づいて行われるものでありますが、今後の県政の推進に当たりましては、この8月に策定いたしました岩手県総合計画の新しい時代に対応した県行政の基本姿勢におきまして、県職員一人一人が地域の皆様と地域づくりをともに進めるパートナーとしての自覚を持ち、県民の皆様の信頼にこたえる行政を推進することとしております。
 今後の対応につきましては、本年策定いたしました行政システム改革大綱や人材育成ビジョンにおいて職員の社会貢献活動や地域活動に対する参加意識の高揚を図ることとしておりまして、具体的には、職員広報誌や職場研修の場などを活用しながら、地域社会との連帯感を醸成する社会貢献活動、地域活動に対する意識啓発を図り、その参加を一層促進してまいりたいと考えております。
   〔企画振興部長渡辺勲君登壇〕
〇企画振興部長(渡辺勲君) まず、地図情報の電子化についてでございますが、電子化した地図上に道路や建築物等に関する情報を蓄積し、そして視覚的に表示する地理情報システムは、高度な分析、そして迅速な判断を可能とし、行政分野におきましても、質の高いサービスの提供や簡素で効率的な行政システムを確立するための有効な手段として、その重要性が高まっております。
 本県におきましても、既に森林資源の管理や一部地域の土地利用規制の検索にこのシステムを導入し業務の効率化を図っておりますが、今年度はさらに県土全域の各種土地利用規制図の電子化を推進し、データの共有化と有効活用などに努めることとしているところでございます。
 また、国におきましては、個々の業務ごとの地理情報システムのデータを一元的に整備、管理し、相互利用を図ることを目指した統合型地理情報システムの研究が進められておりまして、先般、このシステムの構築に必要となる統一的な仕様書が取りまとめられたところでございます。
 県といたしましては、国等の動向を十分見きわめながら、関係各部局間で共有可能なデータの調査やデータベースの整備等を推進し、各事業分野で統一的に利用でき、かつ市町村や民間もその情報を活用できるような統合型の地理情報システムの構築に向けて、今後とも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、盛岡近郊のJR線への新駅設置についてでございます。
 御提言の新駅の設置は、鉄道の利便性を高め、鉄道利用の増加や交通渋滞の緩和に資するとともに、沿線地域の活性化を図る観点からも有効な対策の一つであると認識してございます。
 盛岡市内の東北本線盛岡-厨川間や仙北町-岩手飯岡間、そして田沢湖線盛岡-大釜間につきましては、地元盛岡市からJR東日本盛岡支社に対し、新駅を設置するよう要請が行われているところでございますが、JRにおきましては、土地の勾配や軌道の曲線半径、駅間隔などの技術上の問題のほか、輸送上の費用の問題をあわせて経営判断を行うこととしてございまして、さらに、新駅設置に伴う駅舎建設や駅周辺の駐車場及び駐輪場等の整備に要する費用は全額地元負担を条件としておりますことなどから、具体的には進展していないと伺っているところでございます。
 盛岡市におきましては、通勤、通学など旅客の流動の度合いが高く、利用が見込まれる地域の新駅設置につきましてさらに調査、検討を進めるとのことでございますが、県といたしましては、今後とも地元市町村の主体的な取り組みを基本としつつ、新駅設置による具体的な効果を十分考慮しながら、関係市町村と連携して新駅の設置について対応してまいりたいと考えております。
   〔教育長大隅英喜君登壇〕
〇教育長(大隅英喜君) 完全学校週5日制に向けての地域の取り組みに対する支援についてでありますが、今日、核家族化や少子化等、社会の変化に伴い、子供たちの社会性の不足や正義感の欠如など、豊かな人間性をはぐくむべき時期の教育にさまざまな課題が生じており、地域における多様な自然体験や社会体験の充実が求められております。
 このような中、県教育委員会におきましては、完全学校週5日制に対応するため、地域に根差した活動を実践する各団体に対し、青少年活動指導者研修会や社会参加活動指導者研修会などの研修の機会を提供し、指導者の養成を図っております。
 さらに、青少年の学校外活動を支えるボランティアや家庭教育を支援するアドバイザーを養成するなど、新たな人材の発掘と指導者層の拡大に努めております。
 また、地域ぐるみで子供を育てる環境を醸成するため、教育振興運動推進大会や家庭教育振興の集い等を開催するとともに、テレビ放映や学習資料の作成などにより、健やかな子供を育てるための意識啓発に広く努めているところであります。
 次に、全国子どもプランの本県における取り組みについてでありますが、子供たちのさまざまな体験活動を支援する子ども地域活動促進事業、遊びや学びの情報を発信する子どもセンター事業などを県内各地で展開しております。さらに、子育てに関する親の悩みに対応するため、すこやかダイヤル24時間電話相談を開設して、いつでも相談に応ずることのできる体制を整備し、本年6月1日にスタートしたところであります。
 今後におきましても、市町村や青少年関係団体との連携を深めながら、あすの岩手を担う、心豊かでたくましい子供を地域ぐるみで育てる環境づくりに一層努めてまいりたいと存じます。
   
〇議長(山内隆文君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時26分 散 会   

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