平成12年9月定例会 第7回岩手県議会定例会会議録

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〇42番(佐藤正春君) ただいまは、また樋下議員の内容の充実した核心をついた質問でございましてね、この先代の樋下正光議員を上回るんじゃないか、非常に今後に御期待をしたいところでございます。
 ところが、答弁の方は、知事とそれから警察本部長は大変よろしい。あとの部長は何言っているかわからん。はっきりこれから答弁してくださいよ。
 そこで私の方は、情報公開に対しての関連質問でございます。
 知事は、9月11日の定例記者会見において、公文書審査会に意見を聞いて、来年2月議会に警察本部を情報公開の実施対象機関に加える情報公開条例の改正案を提出したいとしておられます。今の答弁の中では警察の特殊性を考慮したいと、こう答弁しているわけでございまして、この警察本部の情報公開に関する問題点については、私はこれまでもたびたび質問をしてまいりました。県民の知る権利を保障するとともに、県民の静穏で安全な生活を送る権利を保障するということが、知事のいうところの夢県土いわてを実現する上で、最も重要かつ、その根幹となるべきものでございます。本県においては、幸いなことに地域共同社会としての相互扶助の精神が色濃く残っている地域が多くございます。このような地域で、さきの6月議会で述べましたような警察情報の公開に基づく風評被害が発生したらどうなるでしょう。このような地域で一たん風評が広がってしまうと、たとえ公には何もなくても、陰ではさまざまなことが起こりかねないのでございます。いわゆる村八分、村落共同体からの事実上の追放ということも十分に想定をされるのでございます。失業、子供の学校でのいじめ、静穏な生活を送るどころか、本当にその土地、生まれ故郷を捨てざるを得ない、いや、生まれ故郷に捨てられるというような悲劇が現実に存在しているのでございます。知事さんの周辺にはそういうことがないでしょうが、我々庶民の周辺ではいつもこういうことが起きているんです。もとより、県民の知る権利を保障することは大変大切なことでございます。しかしながら、その一方において、静穏な生活を送る権利、これも憲法で保障された生存権の重要な側面なのでございます。警察本部を情報公開条例の実施機関に加えようとする場合、これらの問題点を十分に検討、考慮し、万が一にもそのような悲劇の生じることのないようにしなければなりません。しかし、知事は、これから公文書審査会に意見を聞き、来年2月議会には改正を目指したいとしております。わずかあと半年もございません。そのような短期間に十分な検討ができるんでしょうか。警察情報には、ほかの行政情報とは性格を異にするものがあり、その特殊性を十分考慮するとともに、その公開基準の明確化、さらには実際の運用の際に生じるさまざまな問題に対する対応、警察庁との関係等幅広い検討が必要でございます。
 そこで知事にお伺いいたします。
 県民の治安対策も含め、今後どのようなスケジュールで条例改正作業を進め、また、どのような手段、方法によって、県民のプライバシー保護との両立を図っていかれようとしているのか、そのお考えをお聞かせ願います。
 念のために申し上げます。隣県宮城の浅野知事とは増田知事は親しい間柄にあり、政策的にも相通ずるものがあると、こう伺っております。残念ながら、浅野知事の今回の警察情報公開の取り上げ方は、彼一流のパフォーマンス、マスコミ受けをねらったパフォーマンスとしか私には映らないし、感じられないのでございます。去る22日、宮城県議会では激しい論戦があり、中川警察本部長は、非開示とすべき捜査情報が公になり治安が守れないと、申しております。既に、条例改正の議論が始まってからは捜査員に接触する提供者が少なくなって、これは犯罪捜査上ゆゆしき問題でございます。だれも教えてこなくなる、情報が入らない。田中警察庁長官も浅野知事の主張に反論し、警察の性格上、情報公開は全国統一であることが望ましいと言明しております。もとより、警察のスキャンダルを暴いて、それをたたいてみんなで拍手することは、これは一部の人は気分がいいかもしれない。しかし、そのことと我々県民の治安を守ることは別個の問題でございます。知る権利と治安の維持を並べるならば、治安の維持を優先させるべきは当然でございます。まず、我々県民の生命と財産、そして人権を守ることが、何をさておいても最大の政策であることは、知事はゆめゆめ忘れてはなりません。重ねて、知事の基本的な姿勢と警察本部長の見解を県民にお示しを願いたい。以上です。
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐藤正春議員の御質問にお答え申し上げます。
 今、警察の情報公開につきましてお尋ねがあったわけでございますが、平成10年度に公文書の公開条例の改正に際しまして、公文書の公開審査会の方からこの警察情報の関係についても意見をいただいております。そのいただいた意見を国や他の都道府県の動向などを見ながら、継続して事務的な検討を進めてきたところでございます。そして、国の情報公開法の施行が来年の4月ということでございますし、本年7月には国の警察刷新会議の方から都道府県警察の情報公開の推進ということを含む緊急提言も出されたところでございまして、また他の都道府県におきましても、やはりそれぞれの都道府県警察、公安委員会について、本年度に入りましてからこの関係の条例の改正を今行っているところもございまして、本県におきましても条例改正に向けて具体の動きをとるようにしたものでございます。
 今後、条例改正の検討に当たりましては、先ほど申し上げました平成10年度に審査会からいただいた意見がございますが、そうした意見をいただいて以降、多くの具体の情報公開事例が積み重ねられてきております。そのことやその後、今申し上げました他の13都県において既に条例が改正され、それからこの9月定例会においても、宮城を初め5府県で条例改正案が提案されるといったようなこと、平成10年当時と比べましても、警察の情報公開をめぐる状況が大きく変化をしてきておりますので、こうした状況の変化について審査会の委員の皆さん方に改めて私どもの方から説明をして、その上で警察の情報公開のあり方について審査会の意見を取りまとめていただくことを考えておりまして、これをおおむね12月末までにはこうした作業を終えて、12月末を目途に改正の大要を私どもの方で取りまとめたいと考えております。そして、来年の2月の定例会に条例改正案を提出したいと、今このようなスケジュールで考えているところでございます。
 なお、今回の条例改正に当たりましては、原則公開を旨とする情報公開制度におきましても、特にプライバシーの権利は、憲法が保障する基本的人権の一つとして最大限の保障が求められておりますので、個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう、条例の趣旨を踏まえて最大限の配慮をしたいと考えております。
 また、県民の知る権利と治安の維持についてもお尋ねがあったわけでございますが、この県民の知る権利は地方自治の本旨に根差すものでございまして、これを最大限尊重する必要があることは、これはもう論を待たないところでございますが、その前提として、個人の尊厳や基本的人権を尊重すること、さらには一歩進んで公共の安全と秩序を維持することは、県民全体の基本的な利益を擁護するために県に課せられた重要な責務でございまして、情報公開制度におきましても、こうした権利や秩序の維持などは十分に保護する必要があると、このように考えているところでございます。
   〔警察本部長出原健三君登壇〕
〇警察本部長(出原健三君) 警察の情報公開についてお答えいたします。
 公安委員会及び警察の情報公開につきましては、これまでの県議会においても答弁いたしておりますとおり、適切かつ積極的に取り組んでまいる考えであります。一方、警察業務の特殊性から情報公開の仕組みなどにつきましては、全国的に斉一性を図る必要があると考えているところであります。とりわけ、警察の保有する情報のうち、犯罪の予防や捜査等に支障を生じる恐れがある情報につきましては、人権や捜査の実効上秘密の保持が強く求められるものが多くあります。これらの情報が公開された場合に及ぼす事態の重大性を考えますと、より慎重な取り扱いが必要であると考えております。もとより情報公開制度は、行政に対する県民の理解と信頼を深め、県政への参加を促す有意義な制度でありますが、同時に、この情報公開制度が治安の維持という警察活動に支障を生じさせるようなことがあってはならないと考えております。
 今後の情報公開条例の改正に当たりましては、知事並びに県議会議員の先生方の一層の御理解と御支援をいただきながら、適切なシステムを構築すべきものと考えているところでありますので、何とぞよろしくお願いいたします。
〇議長(山内隆文君) 次に工藤大輔君。
   〔8番工藤大輔君登壇〕(拍手)

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