平成13年9月定例会 第11回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(斉藤信君) 日本共産党の斉藤信でございます。
 発議案第9号に賛成の討論を行います。去る9月11日にアメリカで起こった同時多発テロは、いかなる政治的見解や宗教的信条によっても正当化できない、憎むべき蛮行であります。野蛮きわまるテロ行為を深い憤りを持って糾弾するとともに、テロの犠牲者、負傷者と、御家族、関係者の皆様に心から哀悼とお見舞いを申し上げるものであります。
 今、問われている大事な問題は、テロを根絶するために、どのような手段が有効で、法と道理にかなっているかということであります。日本共産党は、9月17日、不破哲三議長と志位和夫委員長の連名で、テロ根絶のためには、軍事力による報復でなく法に基づく裁きが必要であること、すなわち国連が中心になり、国連憲章と国際法に基づいて、テロ犯罪の容疑者、犯罪行為を組織し、支援した者を逮捕し、裁判にかけ、法に照らして厳正に処罰することを求める書簡を127カ国首脳あてに送りました。ところが、今アメリカは軍事力による大規模な報復の準備を進めています。これが実際に行われたらどうなるでしょうか。何よりも多くの罪なき人々に犠牲をもたらすことになります。今、アメリカによって攻撃対象とされているアフガニスタンは空前の干ばつのもとで100万人が餓死の危険にさらされ、その上、今回の事態で国際援助がなくなり、新たに数百万人が飢餓状態にあると言われています。FAO──国連食糧農業機関は、軍事攻撃があれば新たに600万人が飢餓に直面すると警告しています。ルベルス国連難民高等弁務官は、9月18日、アメリカ政府に対して、何百万人ものアフガン人の現在までの絶望的な苦境や一般市民への人道上の影響を配慮すべきで、罪のない難民や避難民をこれ以上ふやさないために、あらゆる尽力をしなければならないと強く要請しました。
 無差別に多くの市民を殺害したテロは絶対に許すことはできません。同時に、軍事力による報復は地球上に新しい戦争と巨大な惨害をもたらすとともに、テロと軍事報復の際限のない悪循環をもたらすことになることは、パレスチナとイスラエルの関係を見ても明らかであります。それはテロ根絶にとって、有害ではあっても決して有効ではありません。今、世界じゅうのほとんどの国からテロ批判の声が上がっています。これまで数々のテロがありました。しかし、西側とアラブ諸国の対立など、国際世論が今ほどテロ反対で一致することはかつてありませんでした。このときに報復戦争が行われればどうなるか。せっかくテロ反対で国際社会が一致しているときに、戦争に反対か賛成かという亀裂を生み、テロ勢力に有利な状況さえつくり出しかねないのであります。
 法に基づく裁判による犯罪の処断は、人類の生み出した英知の一つであります。武力行使を伴う復仇は、1970年の国連総会の宣言で明確に禁止されています。裁判を通じてこそ、事実に即して事件の真相を徹底的に究明することが可能となります。今回の事件の翌日、全会一致で採択された国連安保理決議も、すべての国に対し、これらのテロ攻撃の実行犯と組織者、後援者に法の裁きを受けさせるために緊急に協力を求めると述べ、9月28日に採択をされた決議も、テロの準備、計画、資金提供に加担するすべての人や組織を法のもとに処罰する。そのために協調することを求めました。国際社会がテロ反対で一致している今、性急に報復戦闘に訴えるのではなく、テロ犯罪の容疑者と支援者を事実と証拠によって明らかにし、それを国連と国際社会の共通の認識にし、容疑者を引き渡させるなど、事件解決とテロ根絶に有効な行動にこそ、日本政府のイニシアチブの発揮が求められています。こうした努力を尽くさず、国際法上の根拠を持たない軍事力による報復を行うなら、テロ根絶の大義を失わせ、テロ勢力の思うつぼの事態を招く危険があります。日本共産党は、無法者に対しては、法の根拠を持たない対応ではなく、法に基づく裁きこそ最も有効な対応だと確信をするものであります。
 小泉内閣は、武力行使の準備を進めているアメリカを強く支持し、自衛隊の参加を可能にする新規立法を制定する方針を明らかにしています。しかし、それは、テロ対策と言いながら、テロ根絶の具体策は何一つなく、あるのはアメリカの軍事報復を無条件に支持し、協力するために、いかにして自衛隊を出動させるかだけの報復戦争協力法案と言うべきものであります。日本国憲法第9条は、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。と明記しています。どのような形であれ、アメリカの報復戦争に参加、協力することが、国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇又は武力の行使に当たることは言うまでもなく、憲法の原則に違反することは明白であります。小泉首相は憲法の範囲内で米軍の武力行使と一体とならない支援を行うと言っています。しかし、輸送、補給などの米軍支援、兵たん活動は、どこで行われようと、戦争の不可分で不可欠の構成部分であります。兵たん活動なしに戦争遂行は不可能です。これは、国際法上も、軍事的にも常識であります。また、新法では、これまでは建前上は、日本周辺の公海とその上空としていた自衛隊の活動範囲についての一定の制約すら取り払い、報復戦争に協力、参加する自衛隊が、他国領域内や、事実上の戦闘状態にある地域まで乗り込み、米軍に医療や補給、輸送などの兵たん活動を行おうとすることを想定しています。これがどうして憲法の範囲内と言えるのでしょうか。憲法を踏みにじる報復戦争法案の中止を強く求めるものであります。
 国連憲章と憲法の平和原則に立った法と理性に基づく解決のために、日本が世界に率先して国連と国際社会に呼びかけてこそ、世界の諸国民の本当の信頼と尊敬を得ることができると私は確信するものであります。
 以上述べまして、発議案に対する賛成討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)

〇議長(谷藤裕明君) 以上で通告による討論は終わりました。これをもって討論を終結いたします。
 これより、発議案第9号米国における同時多発テロ事件に関連しての有事法制の推進反対についてを採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

〇議長(谷藤裕明君) 起立少数であります。よって、発議案第9号米国における同時多発テロ事件に関連しての有事法制の推進反対については、否決されました。
   
   閉 会

〇議長(谷藤裕明君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 これをもって本日の会議を閉じ、第11回県議会定例会を閉会いたします。(拍手)
   午後3時29分 閉 会


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