平成13年9月定例会 第11回岩手県議会定例会会議録

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〇3番(樋下正信君) 自由民主クラブの樋下正信でございます。
 去る9月11日、米国における同時多発テロ事件により多くの方々が犠牲になられました。心から哀悼の意を表しますとともに、アメリカ合衆国の国民に対し衷心よりお見舞いを申し上げます。
 それでは、通告に従い順次質問いたしますので、知事並びに県当局の誠意ある御答弁をお願いします。
 まず、本年度、本格実施をした政策評価についてお伺いします。
 近年、各地方公共団体において行政活動に関する評価を行おうとする動きが活発化しております。これは、これまでの行政活動が予算獲得や事業執行などに力点を置き、事業執行によりどのような成果を得ることができたのかという評価の視点が不十分であったという反省に立って行われているものと思われます。申すまでもなく、納税者であり顧客である県民一人一人の暮らしの満足度を高めるために県行政は行われるものであり、限られた行政資源を最大限有効に活用しながら、経済社会情勢の変化や県民ニーズに的確に対応した行政運営が期待されております。
 県においては、平成11年8月に策定された岩手県総合計画において県行政を進める上での四つの方針を掲げており、その方針の一つである機動性と柔軟性を重視した県政の推進において、行政として何をしたかではなく、その結果として住民の豊かさや暮らしやすさが総体としてどのように向上したかという施策の成果や質をこれまで以上に重視していくとし、政策評価の徹底を図っていくこととしました。また、平成11年2月に策定された岩手県行政システム改革大綱においても、地方分権社会に的確に対応し、みずからの責任のもとで、限られた資源を最大限有効に活用しながら行政運営を行っていくためには、政策、施策の効果を常に点検し、不断に改善を加えていくことが重要であることから、合理的かつ的確に政策、施策を評価し、その結果を適切にその後の施策に反映させていく仕組みと体制の整備に努めていくこととしました。
 県においては、平成12年度から行政運営の改善と政策立案機能の向上を目指した政策評価を試験的に導入し、基本データの蓄積やシステムの問題点の洗い出しを行い、本年度から膨大な事業の政策評価を本格実施し、過日その結果を公表したところであります。
 そこで知事にお尋ねしますが、総合計画で定めた施策や主要事業、主要指標について行った政策評価の結果を平成14年度施策重点化方針に具体的にどのように反映されたのかお伺いします。また、今後検討していくべき政策評価の課題をどのようにとらえておられるのかお伺いします。
 次に、地熱熱水の利用についてお伺いします。
 地球温暖化の主要因と言われるCOの排出は、その多くが石油などのエネルギーに起因すると言われております。このため、環境に優しく、かつ地域に賦存しているエネルギーの有効利用を促進し、環境とエネルギーの調和を図ることが大きな課題であると認識いたしております。
 県においては、県営施設への太陽光発電設備の導入、さらに今月には浄法寺町で県営第1号の稲庭高原風力発電所が運転を開始するなど積極的な導入を進めております。また、バイオマス資源のエネルギー活用などについても調査、研究を進めていると聞いております。このように、新エネルギーの導入が着実に進んでいることに対し高く評価し、また、より一層の導入に期待するものでありますが、その中で、本県の地域資源を生かした地熱熱水の利用についてお尋ねしたいと思います。
 御案内のように、従来から地熱エネルギーは、発電としての利用形態に加え、その過程で生じる熱水などの利用について実用化あるいは研究がなされております。本県でも、雫石町の葛根田地熱発電所で発生する熱水を利用して温水を造成し、利用施設に供給する雫石地域地熱熱水供給事業実証調査が国からの委託調査という形で行われてまいりました。平成2年度からは実際に熱水を利用施設に供給する実用化実証試験を開始し、今年度から平成17年までは県独自で調査事業を継続するとのことであります。この熱水利用を広く実用化させることは、地球環境に優しいエネルギーの活用という観点でまことに効果的な方法ではないかと考えます。
 そこでお尋ねしますが、利用施設の現状はどのようになっているのでしょうか。また、このような熱水利用について、今後の展望や可能性をどのように考えておられるのかお示し願います。
 次に、クマによる人身被害についてお伺いします。
 今月24日の朝、花巻市郊外で4人の方々がクマに次々と襲われ、けがをするという被害が発生いたしました。場所は、自宅前や水田地帯の道路といった生活の場で起こっております。ことしはクマの目撃数が多く、人身被害も多いと聞いておりますが、大半が山間部での被害でありました。しかしながら、今回は小学校や住宅などの生活の場での被害であり、住民の安全確保が心配であります。
 そこでお伺いしますが、今年度のクマによる人身被害の状況はどうなっているのでしょうか。また、人里に出没している要因は何でしょうか。さらに、有害駆除の迅速な対応など住民が安心して生活できる対策はどのように講じられているのでしょうかお伺いします。
 次に、少子化対策についてお伺いします。
 最近、近隣を見ると子供の数が少なくなっていると感じております。私が子供のころは近所に大勢の子供がおり、みんなで暗くなるまで外で遊んだものですが、最近はほとんど見かけなくなったところであります。
 先般、平成12年の人口動態統計が発表されましたが、これによると、昨年1年間に県内で生まれた子供の数は1万2、410人で、過去最低となっております。私が生まれた昭和30年は3万4、712人の子供が生まれており、当時と比較するとおおよそ3分の1に減少しており、統計上からも少子化が明らかになっております。
 少子化が進んできた理由としては、女性の高学歴化、それに伴う積極的な社会進出に加え、核家族化が進み、身近に子育てについて相談する人がいないなど、子育てに不安を感じる若い人が多くなっていることなどが挙げられ、また、子供にかかる経済的な負担の重さもあるのではないかと思われます。経済的な支援として児童手当の充実も必要ではないかと考えておりますが、児童手当は国の施策であり、国の決定を待つ必要があると思います。私は、このような急速な少子化の進行は重大な問題と考えております。
 そこでお伺いしますが、県では、本年1月に少子化対策の総合的な計画としていわて子どもプランを策定しましたが、本県における少子化の要因をどのようにとらえ、どのような少子化対策を推進していくこととしているのかお伺いします。
 次に、スキー客の誘致についてお伺いします。
 長引く景気の低迷やレジャーの多様化、海外旅行の一般化などを背景として国内観光需要が伸び悩む中、本県の観光レクリエーションの客の入り込み数は、1999年には3、823万人回、2000年には3、907万人回と2年間連続増加しております。これは、県、市町村、関係団体が一体となり、観光施設・設備の充実、各種イベントの実施、修学旅行生や海外観光客の積極的な誘致などに努めた結果と高く評価をするものであります。
 しかしながら、冬の観光の柱であるスキー場を訪れるスキー客は、1993年から続く減少に歯どめがかからない状況となっております。本県のスキー場は豊かで上質の雪に恵まれ、施設・設備も充実された全国でも有数のスキー王国であります。各スキー場においては、チケットの低価格化、各種イベントの実施などそれぞれの特徴を生かした企画を展開してスキー客の誘致に取り組んでいるところでありますが、長引く不況などの世相が反映されやすいスポーツであり、また、スポーツの多様化によるスキー離れが進み、集客になかなか結びついていない状況であります。スキー客の減少は、大型スキー場の撤退などが検討されており、スキー場を取り巻く環境は極めて厳しい状況でありますが、スキー場は地域経済に大きな影響を及ぼすことから、関係者が一丸となったさらなる取り組みが必要と考えるものであります。
 そこでお伺いしますが、県内スキー客の一層の集客に取り組むことはもちろんでありますが、宿泊施設や交通機関に大きな影響を及ぼし、地域経済を活性化させる県外スキー客の誘致、拡大にどのように取り組んでいかれるのかお尋ねします。
 次に、農業生産基盤の整備についてお伺いします。
 今般の土地改良法の改正により、環境との調和への配慮が基本原則に位置づけられ、また、平成14年度概算要求においては、農業農村整備事業の内容を自然と共生する田園環境へと転換するという方針が出されているところでございます。豊かな自然に恵まれている本県は、里山を初め、農村地域においても多くの自然が残っており、県民の多くが農村の自然環境を守り、農村景観を後世に残すことを希望しているというアンケート調査結果も出されております。私も、本県の豊かな自然や美しい農村景観は貴重な財産であり、我々は、これを大切に守り、子々孫々に引き継ぐ責務を負っているとの認識に立つものであり、県の取り組みに期待するものであります。
 新聞報道を見ると、国営いさわ南部地区の農地再編事業を進めている胆沢町小山地区で、整備前に排水路に生息する水生生物を守ろうと引っ越し作業を行ったと報じていました。この事業を実施している東北農政局の建設事務所では、事業の生態系への影響を極力抑えようと、昨年から小学生や地域の住民などに参加していただき作業をしているとのことであります。また、農林水産省では、環境と調和した農業農村整備事業を進めるため、水田周辺の生態系の現状を把握する必要があるとして、全国200カ所で水路やため池に生息する魚や水生植物などを調べる田んぼの生き物調査を開始し、その結果をもとに、農業の多面的機能の一つである生態系の保全という機能を生かした整備を行っていくとのことであります。
 このような活動が行われている中で、時代の要請を受けた新しい土地改良法のもと、農業農村整備事業が田園環境の創造へ転換するということに対応して、農業生産基盤の整備における環境との調和への配慮について、本県としてどのように取り組んでいこうとしているのかお伺いします。
 次に、汚水処理施設の整備促進についてお伺いします。
 汚水処理施設の整備は、水洗化による生活環境の改善や河川及び海域などの公共用水域の水質保全、さらには、活力ある地域づくりや若者の定住促進などを進める上でその役割は重要になってきているところであり、その整備に対する県民の要請はますます強くなっていると認識しているものであります。しかしながら、本県の汚水処理施設の整備率は全国的に見ても非常に低い状況にあり、県の総合計画における平成22年度末における汚水処理施設の整備目標80%を達成するには相当の努力が必要であると感じております。もとより、目標を達成するためには主体となる市町村の実施計画が着実に推進されることが肝要でありますが、昨今の市町村財政が厳しい状況の折、目標の達成が懸念されるところであります。
 このような中で、下水道や農業及び漁業集落排水あるいは合併処理浄化槽など地域の実情に応じた総合的な事業手法の調整や、県と市町村間の連携をさらに緊密にしていくための体制の構築が不可欠であります。
 そこでお伺いします。県と市町村による地方振興局単位の地域汚水適正処理推進協議会には汚水処理施設整備の促進に大きな役割を期待するものでありますが、その整備促進について今後どのように取り組んでいかれるのかお伺いします。
 次に、宮古市から秋田市までの横軸の道路の整備についてお伺いします。
 県では、岩手県総合計画において、ネットワークが広がり、交流・連携が活発に行われる社会を岩手の将来像の一つに掲げ、県土づくりを進めております。また、宮古から盛岡を経て秋田に至る軸を4本の横断軸の中の1本として県土軸に位置づけ、広域的な交流・連携を進めようとしているところであります。
 私は、以前にも本会議において、盛岡市が北東北の拠点都市として発展していくためには、既に整備されている東北縦貫自動車道のほか、太平洋と日本海を結ぶ横軸の道路を強化する必要があることを訴えたところであり、国道106号と46号を高速道並みの規格の高い道路として整備する必要があると考えております。つきましては、国道106号と46号をどのような規格の道路として整備を進めるのかお伺いします。
 最近、宮古に向かう際、国道106号の簗川道路の橋脚がようやく現道からも見えるようになってきましたが、簗川道路の整備の状況と今後の見通しはどうなっているのでしょうか、都南川目道路の整備とあわせてお伺いします。
 次に、危機管理対策についてお伺いします。
 本県においては、岩手山について、平成10年6月の臨時火山情報の発表を受け、岩手県災害警戒本部を設置し、現在も24時間体制で警戒に当たっていると伺っております。そのほかにも、岩手山周辺6市町村、防災関係機関、学識者との密接な連携を図り、岩手山の監視、観測や情報の収集、伝達、住民の避難誘導などの体制整備、さらには、防災訓練やシンポジウムの開催などによる防災知識の普及、啓発など、火山対策を初めとした危機管理について積極的な取り組みがなされているものと感じているところであります。
 しかし、全国的に見ますと、地震、火山などの自然災害だけでなく、愛媛県の教育実習船と米軍潜水艦との衝突事故、大阪池田市の小学校児童殺傷事件、東京新宿のビル火災、福島県の陸上自衛隊演習場でのりゅう弾砲誤射事故など、さまざまな重大事件、事故が起こっております。そして、ごく最近ではアメリカで同時多発テロが発生し、邦人を含む数多くの人々が事件に巻き込まれており、今、世界は事件への対応をめぐり緊迫した情勢にあります。
 政府においては、内閣官房を中心とした危機管理体制を構築しており、今回のアメリカ同時多発テロ事件では、事件発生とともに官邸危機管理センターにおいて情報収集を開始、事態の進展を受けて官邸対策室を設置し、政府として必要な対応に当たっております。本県でも、報道されたところによると、今回のアメリカでの事件は台風15号による災害警戒とも重なった中で、事件直後から総合防災室が中心となり、24時間体制で県関係者の安否確認などに対応したとのことであります。
 そこでお伺いしますが、今回のアメリカ同時多発テロ事件は、海外における重大な事件として極めて異例なものと思われますが、県として県人の安否確認などにどのように対応されたのでしょうか。
 また、今回の事件を契機として、内外における各種事案に迅速に対応するため、本県としても危機管理を強化する必要があると思いますが、どのように取り組んでいかれるのかお伺いします。
 次に、県営体育施設の整備についてお伺いします。
 間もなくことしの国民体育大会が隣の宮城県で開催されますが、県内の選手や県出身の選手が国体などの全国的な大会で活躍することは県民に大きな自信や勇気と希望を与え、それが県民意識の高揚に結びつくものと考えております。昨年の国体順位を見ますと、本県は36位という不本意な成績でありました。東北各県の状況を見ますと、青森18位、秋田28位、山形29位、福島19位、宮城6位であり、本県選手団の一層の活躍を期待するものであります。
 しかしながら、国体での成績を上げるためには、選手の活躍を期待するだけではなく、選手を具体的にサポートすることが必要であると思います。指導者の養成や確保、指導体制の整備、スポーツ団体の育成などさまざまな施策をこれまで以上に推進する必要があり、加えてスポーツ施設の整備、充実も重要であると考えます。特に本県にとって、季節や天候に左右されず1年じゅうコンスタントに活動できるドーム型多目的グラウンドは、スポーツに限らず、県民の屋外活動を活発にするために重要な施設であると思われます。このようなドームは秋田、青森両県には整備されており、岩手県においては未整備の状況であります。生涯スポーツの振興、競技力向上を図る観点からも必要な施設と考えますが、ドーム型多目的グラウンドの整備についてお考えをお示し願います。
 次に、県立美術館についてお尋ねします。
 21世紀という新たな世紀を迎え、県民待望の県立美術館が来る10月6日に開館を迎えることはまことに御同慶にたえないところであり、これまで美術館整備に御尽力されました方々に深く敬意を表するところであります。
 本県では、厳しい北国の風土の中で脈々と受け継がれてきたさまざまな文化の伝統を背景に、すぐれた芸術家が多く生まれております。美術の面においても、明治以降には萬鐡五郎、松本竣介といった岩手の風土に根差した地域性と世界に通ずる普遍性とを兼ね備えた傑出した芸術家を輩出しております。
 このような中で、県民が美術作品を鑑賞し、美術に触れ合う場として県民会館展示室や県立博物館近代美術部門などが整備されてきたところでありますが、美術文化の殿堂としての県立美術館の設置を望む声が次第に高まり、これを受けて平成3年度からその整備を進めてきたと承知しております。
 このたび開館します美術館は、本県の多様な美術文化を再評価、再発見するとともに、すぐれた美術作品を県民共有の財産として未来に伝え、さらには、世界に目を向けた多彩な活動を展開する21世紀の新しい文化創造の拠点施設と位置づけられるものであります。そこで、お伺いしますが、美術館は県民に安らぎと潤いを提供する場でなければならないものでありますが、広く県民の方々から親しまれる美術館とするために県はどのような運営をしていくのか、その取り組みについてお示しを願います。
 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 樋下正信議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、政策評価結果の平成14年度施策重点化方針への反映についてでございますが、特に反映した項目としては、農林水産業や卸小売業など、地域産業の振興に関連する主要な指標の達成度が厳しい状況にあると、そして県民意識調査においても、自分の能力を生かせる職場の確保の項目について満足度が低いと、優先度がまた高いと、こういう県民の皆さんの意識であるということを踏まえて、雇用の確保、新産業の創出に向けた産業の複合化や地域資源を活用した内発型産業の育成と、こうしたものが特にその結果を反映した項目でございます。そのほかに見てみますと、この政策評価をもとに、農林水産業における流通システムの見直しやオンリーワン技術の確立とブランドづくり、環境に優しい地域社会活動の活発化、生活習慣病の一次予防、ユニバーサルデザインの推進などを、早急に取り組むべきものとして選定をしてございます。
 また、この政策評価システムの今後の課題ですけれども、政策評価の過程やその結果について県民の皆さんに明らかにしながら、一層の信頼性を高めていくこと、このことが課題だと、透明性とそしてその信頼性の確保が課題であると、このように思っております。このようなことから、引き続き新たな評価指標の設定や外部意見の反映方法をより充実させるなど、県民の生活実感にも照らして、納得できる評価システムとなるよう、改善を図ってまいりたいと考えております。
 次に、少子化対策ですけれども、少子化の主な要因につきましては、教育や子育てについての経済的負担、仕事と子育ての両立支援の不十分さ、家事や子育てにおける女性の負担などが挙げられまして、少子化対策としては、こうした子育てなどでの女性の負担感をできるだけ軽減するとともに、家族の深いきずなのもとで、次代を担う子供たちが健やかに育っていけるように、出産や子育てを社会全体で支援していくと、こういうことが重要だと考えております。
 さきに県で策定をした、いわて子どもプランでは、こうした考え方にのっとりまして、基本方針は男女がともに家庭や子育てに夢を持ち、次代を担う子供たちが健やかに育つ環境づくりと、こういうものを基本方針に掲げまして、内容では全国で初めて、主要な少子化対策について各市町村で設定した目標値がございますが、この目標値を県のプランに盛り込みましてプランの実効性を高めております。そして、結の心・子育て環境日本一を目指して、子育てをしやすい環境づくりを市町村と一体となって推進をすると、こういうこととしております。
 このため、地域で生じた問題は、できるだけ地域で解決ができるように、出産前から思春期などにわたる少子化対策に関する総合的な支援体制づくり、これを市町村ごとにきめ細かく進めるということで、結の心・子育て支援コミュニティの形成を掲げております。各世代の子供とその家庭にふさわしい子育て支援が可能となるように、市町村における子育て支援の総合的なサービス・コーディネートを担う総合相談窓口担当者、この担当者の人たちの研修を県単独の取り組みで今、行っております。今後とも、子育てを地域で支える体制が構築されるように、市町村に対して積極的な支援を行っていきたいと考えております。
 次に、農業生産基盤の整備ですけれども、農村は農業生産の場と、そして生活空間の場であるというのが基本であるわけですが、また、あわせて交流の場や環境教育の場でありますとともに、県土や自然環境の保全、景観の形成など、多面的な機能もあわせ有していると、このように考えております。しかしながら、農業生産基盤の整備に当たっては、こうした多面的な幾つかの機能に配慮しながらも、従来はややもすれば生産性や効率性に重きを置いて進めてきたとの思いがございます。そうした中で過般、土地改良法の改正がなされて、その中で、環境との調和に配慮して事業を実施することを基本とする考え方がこの法律の中に盛り込まれました。これを踏まえて国では、今後の農業農村整備についてのすべての事業を、自然と共生する環境創造型事業と、このように明確に位置づけて実施をすることとしたところでございます。このいわば事業に対する国の方針の転換でございますが、これは環境首都を標榜する本県の姿勢と、まさに軌を一にするものと、こういうふうにとらえておりまして、これからの公共事業のあり方を考えた場合、これもまた、時代の要請であろうと、このように考えております。
 したがって、この基本的な考え方のもとに、今後、本県でもこれからの事業を進めるに当たっては、その地域の環境を十分に見きわめることがまず先決だと思っておりまして、そのためにも、その地域にどのような動植物が生息するかなどの生態をあらかじめ調査することが必要でございます。今般、これは国と連動してでございますけれども、田んぼの生きもの調査というものを実施したわけでございますが、そうしたところカジカやドジョウ、サワガニなど多くの生物が生息していることが認められました。改めて本県に豊かな自然環境が残されていることを確認できたところであります。
 今後の具体的な取り組みとしては、事業が計画されているすべての地区において、地域の皆さんから配慮すべき環境に対する意見や提言を積極的にいただきまして、例えば、ため池でのビオトープの保全や、クロメダカなど希少な動植物の保護、それから一方では県産木材などを活用した水路の整備など、それぞれの地域の違いがあるわけでございますが、そうした地域地域に合った事業計画を策定してまいります。このような取り組みを通じて、活力と魅力にあふれる豊かな田園の創造を目指す考えでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔環境生活部長時澤忠君登壇〕

〇環境生活部長(時澤忠君) 雫石地域の地熱熱水供給事業に係る利用施設の現状と今後の展望等についてでありますが、まず現在の利用施設といたしましては、熱水の全体利用量の7割以上を占める県営屋内温水プールのほか、ホテル、旅館、ペンションが6軒、農業用ハウスで8棟、上長山小学校の合わせまして16の施設が暖房、給湯等に利用しております。
 次に、今後の展望等についてでありますが、この熱水供給事業につきましては、昭和55年度から国の委託を受けまして、平成12年度まで県が実証調査を行ってきたところであり、その結果、熱水供給システムの信頼性、熱水送管等の耐久性が確認された一方、経済性の確保などの課題が明らかとなっております。平成13年度以降は平成17年度までの間、国から無償使用の承認を受けまして、県として熱水供給事業の実証調査を行うこととしております。この間、現有施設を前提とした事業化の可能性など課題に関する検討を行いますほか、将来の地熱熱供給システムの構築に向けたノウハウの蓄積、さらには地熱エネルギーの環境問題への貢献度などの実証研究を行い、成果を検証することといたしております。また、あわせまして地熱熱水の利用につきましては、現在、地元雫石町や雫石町地熱熱水利用推進協議会と意見交換を行っているところでありまして、有効活用の可能性についても検討してまいりたいと考えております。
 次に、クマによる人身被害についてでありますが、今年度は昨日9月27日現在で17件となっておりまして、昨年同期と比べ10件の増というふうになっております。人里に出没している要因といたしましては、昨年のブナの実などの豊作によりまして、ことしの出産がふえまして、春から夏にかけて子連れグマの活動が活発であったことや、ことしの秋のブナの実などの不作によりまして、えさを求めて行動圏が拡大しているというようなことが考えられます。
 また、迅速な有害駆除など住民が安心して生活できる対策につきましては、県のマニュアルに基づきまして、人身被害が発生した場合はもとより、被害が切迫しているような緊急を要するようなときには、地方振興局が口頭により駆除を許可しております。また、広報による注意の呼びかけなどにつきましても、市町村、警察、猟友会など関係機関が連携して取り組んでいるところであります。なお、今後さらに適切な対策を講じていくためには、クマの実態を把握する必要がありますが、生態状況調査を実施してから10年以上経過していることや、生息環境が変化していることを踏まえまして、本年度から2カ年で生息状況調査を実施いたしまして、捕獲目標の設定や被害防止対策、そして出没した場合の対応などを内容といたします鳥獣保護法に基づく特定鳥獣保護管理計画を策定することといたしております。この計画の策定過程におきまして、地域の関係者や専門家等各方面の意見を伺いながら、県民生活の安全確保と地域個体群の維持という両面からの十分な検討を行ってまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長鈴木清紀君登壇〕

〇商工労働観光部長(鈴木清紀君) 県外スキー客の誘致、拡大についてでありますが、近年のスキー客入り込み数は、平成4年の372万人回をピークにいたしまして年々減少し、平成13年はピーク時に比べ4割減の入り込みとなっております。このような厳しい状況を打破し、より多くのスキー客に訪れていただくためには、まず岩手の冬の魅力を広く認識してもらうことが重要と考えておりまして、この9月から他県に先駆けまして岩手の冬の観光キャンペーンを首都圏、関西、東海地方において展開しているところであります。このスキー客誘致キャンペーンは、主として若い世代を対象にして、首都圏、関西などのファーストフード店1、400店舗におきまして、トレーマット380万枚によるキャンペーンの展開、それからナゴヤドーム球場と大阪ドーム球場での映像放映とパンフレットの配布、それから東京新宿での街頭大画面ビジョン、関西、東海地方でのテレビコマーシャルの放映、インターネットによる情報の発信など、多様なメディアを活用いたしまして、雪質のよさ、施設の充実したスキー場、多彩な温泉、郷土料理など、岩手の冬のイメージを広く全国に浸透させているところであります。
 また、盛岡エリアスキー協議会におきましても、11月に横浜駅、そして大宮駅でのJR駅頭キャラバン、そして東京池袋サンシャインビルでのパネル展示とパンフレット配布などを行うこととしております。
 さらに、県観光協会と連携いたしまして、大都市圏での旅行エージェントへの観光客誘致説明会、旅行雑誌記者などを対象とするマスコミ説明会などを実施いたしまして、冬の観光情報を積極的に提供いたしまして、県外からのスキー客の誘致拡大に努めてまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長竹内重徳君登壇〕

〇県土整備部長(竹内重徳君) まず、汚水処理施設の整備促進についてでありますが、昨年度、県内の全市町村がそれぞれに策定をいたしました市町村ごとの汚水処理施設の整備計画を、全県域汚水処理実施計画として取りまとめました結果、平成22年度末には目標整備率の80%に到達できる見込みとなっておりますことから、この計画に基づいて市町村の事業を主体として施設整備の促進に努めているところであります。しかしながら、御指摘のように地方自治体の財政環境は大変厳しい状況にありまして、整備目標を達成するためには県と市町村が一体となって汚水処理施設の整備を着実に進めていくことが必要となっております。こうしたことから、汚水処理施設整備実施計画の進行管理や事業手法の横断的連携などを目的といたしまして、各地方振興局単位の地域汚水適正処理推進協議会の設置を現在進めているところでございます。
 県におきましては、公共下水道事業や農業集落排水事業を一体的に整備することによりまして、建設コストや維持管理費の縮減を行うなど、自治体や利用者の負担の軽減を図るため、今年度、新規事業として花巻市と西根町をモデルに汚水処理連携モデル調査を実施いたしておるところでございます。今後は、地域汚水適正処理推進協議会の活動を中心としながら、漁業集落排水事業や合併処理浄化槽の整備なども組み合わせた、より効率的な整備方策の見直しを進めますとともに、県といたしましても目標整備率の達成に向けてさまざまな支援を行っていくなど、汚水処理施設整備のより一層の促進に努めるため、精いっぱいの努力をしてまいりたいと考えております。
 次に、宮古市から秋田市までの横軸の道路整備についてでありますが、国道106号と46号は、21世紀の国土のグランドデザインにおいて位置づけられた地域連携軸を形成する基盤の一つでありまして、地域間相互の交流促進や空港、港湾等の広域交流拠点との連絡などに資する道路として、平成6年及び平成10年に地域高規格道路の指定を受けております。この地域高規格道路は、自動車専用道路あるいは沿道からの出入りを制限する道路として、交通の状況に応じまして高い速度サービスを提供する道路であります。簗川道路につきましては設計速度80キロメートルで計画しておりまして、また都南川目道路につきましても同じく設計速度80キロメートルで、かつ自動車専用道路として計画をいたしております。
 これらの道路の整備状況と見通しについてでありますが、簗川道路につきましては、地域高規格道路として平成8年度事業採択をされておりまして、ダム建設に伴うつけかえ区間を含めて、平成11年度から106号本線の工事に着手をしておりまして、平成13年度末の進捗率は事業費ベースで約40%を見込んでおります。また、都南川目道路につきましては、平成9年度に国の直轄権限代行として事業採択されて以来、調査を進めてきたところでありますが、今年度、都市計画決定と環境影響評価の手続を行いまして、来年度から詳細な調査設計を進める予定となっております。今後は、簗川道路につきましては、平成19年度の供用を目指してその推進に努めますとともに、都南川目道路につきましても、早期の工事着手を国に強く働きかけてまいりたいと考えております。
   〔総務部長小原富彦君登壇〕

〇総務部長(小原富彦君) 危機管理対策についてでありますが、まず今回のアメリカ同時多発テロ事件に際しては、事件発生のテレビ報道の直後から、総合防災室危機管理監が中心となりまして、関係課と連携しながら、ニューヨーク岩手県人会を通じてニューヨーク在住県人やアメリカに出張中あるいは派遣している県職員の安否確認などに当たったところであります。また、事件発生の翌日には、国土交通省から空港の警備強化について通知があり、花巻空港の警備の強化にも当たってきたところでございます。
 次に、本県の危機管理についてでありますが、まさに今回のテロ事件のように予測し得ない形で発生するのが今日の危機であります。こうした危機への対応において、まずもって肝要なことは、できる限り初期の段階で、何が発生したかを察知し、迅速に情報を収集し、庁内関係部局あるいは関係機関等へ伝達し、情報を共有しながら、被害や社会的影響を予測し、県として必要な応急対策を迅速かつ的確に実施することにあると考えております。このため本県としては、全庁的な対応を基本に、24時間体制で対応している総合防災室を中心として、関係部局が一体となって災害や危機に当たることとしており、事案の態様によっては、知事を本部長とする対策本部を速やかに設置することとしております。今回のテロ事件につきましても、事件の教訓を踏まえるべく、速やかに庁内関係課との連絡会議を開催し、情報交換を行ったところであり、国内外での事案発生時における県関係者の安否確認などの情報収集、県民への情報提供の一層の強化を図ることなどを改めて確認し合ったところでございます。
 これまで、航空機事故、列車事故等のさまざまな事案を想定した対応マニュアルを策定してきております。しかしながら、マニュアルによる対応を超えるのが危機管理でもあり、危機への柔軟な対応能力の向上を図るため、全職員を対象とした危機管理セミナーを随時開催してまいりました。また、今年度からは地図などを用いましてさまざまな災害を想定して、時間の経過とともに変化する事態をどのように状況判断し、どう対応するかなどをシミュレーション訓練する、いわゆる図上訓練を実施することとしております。今後におきましても、予測しがたい危機事案に対して可能な限り迅速かつ的確な対応をなし得るよう、鋭意取り組んでまいります。
   〔教育長合田武君登壇〕

〇教育長(合田武君) まず、県営体育施設の整備についてでありますが、県教育委員会では、豊かなスポーツライフの実現を目指して、だれもが親しめる生涯スポーツの振興、夢と感動の競技スポーツの推進に取り組んでおります。このようなスポーツライフを支える環境整備のため、第8次岩手県教育振興基本計画において、総合的スポーツ施設整備事業として、全国的規模の各種大会等の開催が可能で、県全域にわたる多様なスポーツ活動を総合的に支援する中核的なスポーツ施設の整備推進を図ることとしております。
 お尋ねのありましたドーム型多目的グラウンドは、雨天時や冬期間でもスポーツ・レクリエーションの活動ができ、生涯スポーツの振興、競技力の向上を図る上でも効果的な施設であると考えております。このドーム型多目的グラウンドにつきましては、総合的スポーツ施設整備事業の中で一体的に検討することとしており、現在、各方面の有識者からなるスポーツ施設のあり方に関する懇談会を設置して、岩手総体のために各市・町で整備した高規格の体育施設との整合性にも留意しながら、どのようなスポーツ施設を、どのように整備するかなどについて議論をしていただいているところであります。今後この懇談会の御提言を受けて、それを踏まえながら検討してまいりたいと考えております。
 次に、県立美術館についてでありますが、県民が生涯を通じてすぐれた美術に親しみ、心豊かな人間性をはぐくむことのできる環境を創造していくことが、県立美術館の果たすべき重要な役割であると認識しております。したがいまして、その運営に当たりましては、県民の多様なニーズにこたえながら、利用しやすく、また、気軽に美術と触れ合うことができる開かれた美術館を目指してまいりたいと考えております。このため、アンケートなどにより県民の意見、要望を把握し、美術館運営に反映させるとともに、ホームページ等によりまして、美術館の活動に関する各種の情報を広く県民に提供してまいります。
 また、県民参加型の運営を図るため、美術館の活動を支援していただく美術館友の会の組織化を進めるとともに、友の会を母体としたボランティア活動の受け入れなどを通じて、県民がより積極的に美術館とかかわることができる機会を設けてまいりたいと考えております。そのほか、県民の美術への関心の高まりにこたえるため、作品解説会やさまざまなテーマによる美術講演会の開催、創作教室の開設、学校との連携による児童生徒への美術学習の場の提供などを進めてまいります。このような取り組みを通じ、県民と美術館を結ぶ多彩なチャンネルを設定して、県民に愛され、親しまれる美術館運営に努めてまいりたいと考えております。

〇議長(谷藤裕明君) 次に、佐藤力男君。
   〔11番佐藤力男君登壇〕(拍手)


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