平成13年9月定例会 第11回岩手県議会定例会会議録

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〇26番(上澤義主君) 政和会の上澤義主であります。
 去る9月11日の米国の同時多発テロ事件は、例のない残忍な暴挙であり、強い憤りを覚えるものであります。犠牲となられました日本人を初めとする多くの被害者の方々に対しまして、心より追悼の意を表しますとともに、残された方々が1日も早くこの深い悲しみから立ち直られますことを切に願うものであります。
 さて、同僚の激励もあって一般質問をさせていただきますことに、深く深く感謝しているものであります。
 ことしの夏は、特に寝苦しい熱帯夜が続いたわけでもなくて、気分よく眠ることができた年だったと思っております。とはいってみたものの、覚めてあたりを見回したり、テレビを見、新聞を読んで見たら、豊かになるはずだった村や町は過疎で寂しく、村は消えていくし、子供の声もだんだん小さくなって、クマやシカやタヌキが、昼であれ夜であれ、里に出て作物を食い荒らし、親は子を過保護だなどと言っていたと思ったら、子をせっかんして平気で捨てる。道行く者は懐に包丁を持って人を刺し、何かにおびえて歩いている。こんな忘れたはずの遠い昔に戻るのかと、錯覚するような社会現象が起きております。反面、食べ物は山ほどあるし、作物は捨てさせられるほどとれる。家や着るものも、生活に必要な道具もすぐ手に入る。教育だって、手取り足取りやる。残されている課題の国道340号立丸峠のような峠道さえ、改良されれば、至るところの道という道も大方歩きやすくなった。車でスイスイとどこへでも行ける。時速300キロで走る電車もある。宮澤賢治の里、花巻へ行けば飛行機も飛び、どんな遠くへも短時間で行けるようになった。家の中にいて世界の動きが一目でわかるし、話もできる。好きなものは何でも見ることができる。歌は歌える、踊りは踊れる。やりたい趣味は何でもできる。なのに、不満だ、不安だと人は言います。知事の言う夢県土へはもう一歩というところなのに、足踏み状態を続けているのだと思います。何が不満で、何が不安だと感じているのでしょうか。どこかでだれかが、不満や不安をあおり立てているとでもいうのでしょうか。それとも、行政みずからが政治力、権力を誇張する余り、住民に押しつけがましいことばかりしてきたとでも言うのでしょうか。現代社会における不満や不安の原因となるものには、いろんな要素があると思われます。経済の面では、賃金が上昇しないことから庶民のマイホームの夢が崩れ去る。年金の将来はどうなるとか、不況の長期化とともにリストラや倒産する企業がふえ始めて、失業や雇用へと不安が広がる。経済的要因は、個々の欲望と重なり合って切りがなくて、そこには、もはや少し前までのバブル時代のバラ色の未来はいささかも影をとどめていないようであります。社会的要因も多様であります。山や川やごみといった環境のこと、風や雨、火災、地震、噴火、極悪非道な犯罪の増加、頻繁に発生する交通事故、
 以上述べたような各種の不満、不安を取り除くのは、今日ではその役割が増大した政治の側の責任として期待されるところが大きいのであります。政治もまた硬直化した慣行に浸り、国民の期待にこたえて敏速な行動をとることができなくなっていること、特にも感ずることは、官僚の倫理観や節操のなさなど、目に余るものがあります。県などにおいては、事が起こると倫理規則などをつくって体裁を整えるが、これなどは将来、監督者の犠牲を多く見る羽目になると考えられなくもありません。人間の持っている自浄能力に期待する余裕などどこにも見当たらなくて、教条的になってしまっております。政策評価システムなどは、県民のささやかな希望や夢を一言で葬りかねないとも限らない、こういった政治状況が、市民の間に、政治に対し不信感や絶望感を強め、不満や不安の増幅を生み出していると言えるかもしれません。さらには、過日の台風に関する報道などを見ていても、台風の上陸から関東までは夜通し、ドラマチックに取材報道はするものの、それ以北の地域となるとほかの画面に変わってしまい、被害報告しか報道しなくなるなど、最も発達したマスメディアからの情報の不公平感なども、より一層不満を募らせる原因と言えそうであります。人間の欲望に際限がない限り、不満や不安の種は尽きません。でも、岩手県の持つ環境や条件は、人間の持つ欲望を平準化できる最もすばらしいところなのではないでしょうか。都会の生活に疲れ果てて、岩手県に新天地を求めてくる者もあります。かつて、不況の受け皿となったのは、農村や漁村だったのであります。そこは人間が生きていくに足る、居住環境の大方を備えているからであります。昭和30年代から始まった高度経済成長の中で、大都会に大きな夢を求めて、そして、今日まで時計の振り子のように働きづくめできた世代にとっては、個人差はあれ、現在の社会現象は、満足と落胆と不安の連続そのものなのだと思います。このような人たちを受け入れることができる県、そこは夢県土、岩手だと声を大にして言っていいのではないでしょうか。私は、自称北上山地の主だと公言をして、ここは桃源郷に最も近い、いい場所だと、そしてあしたがある、あすがあると言ってきましたが、なかなか理解されていなかったようでもあります。
 そこで、教えてほしいと思います。県民が平たく、満足できるとすることの物差しはどこに置いてあるのでしょう。県民の満足度は、今、点数にしたならば何点ぐらいと自己採点をしているのでしょうか。あわせて、不満、不安の解消策を考えているならお伺いをしたいと思います。
 現在の閉塞状態を突き抜けていくためには、県民の心を高揚させることのできるものを考えなくてはなりません。私は、その一つに県民歌があるのではと思っています。現在の岩手県民の歌は、昭和39年に現在の新庁舎落成を記念して制定されたものであります。歌は、県主催の大きな行事にたまに聞くものの、県民が高らかに腹から声を出して歌うまでとなると、いまいちと受けとめざるを得ないのであります。当時の県民の願いであった後進県からの脱却、大県岩手の建設を歌い上げた現在の県民歌はすばらしいことは言うまでもありません。歌は世につれということもあります。子供らが学校の行き帰りに歌い、若者や老人が、一杯入ればすぐにでも出てくるような歌があって、岩手県民としての自信と誇りを持ち、そして満足感を味わえるならば、行政にとっては何ものにもかえがたい大ヒットとなること受け合いでございますが、第二県民歌なるものを考えてみてはどうでしょうか、お考えをいただきたいと思います。
 このごろ、北上山地で暮らしていて、受ける世論に腹の立つことがあります。今までの高度経済成長の波に乗って、自分は開発された都会に住んでその恩恵を100%受けつつ、田舎は記憶に刷り込まれている過去の景観をそのまま保存してほしいという要求であります。これは、まことに勝手な要求なのですが、本人がそれがあくまでも自然保護だ、環境保護であると思い込んで、これを大義名分にする。すると、マスコミの論調も同調する。中には、外人部隊として各地方を歩いて、あらゆる開発反対運動に挺身する者も出てきて、後進地域開発のおくれの一因ともなっているのであります。しかし、この開発反対運動は、単なる成長政策の裏返し的発想に過ぎず、また同時に、そこには既に開発され尽くしたところに住み、その恩恵は十分に受けつつ、開発されていない山野を自分が眺めるために、そのまま残してほしいという身勝手な願望がはっきりしているのであります。ところが、この願望どおりにしていれば過疎の地域がますますふえて、村は消えていくことになるのであります。いわば三全総で言ってきた生活圏が全くできてもいないところに、好き勝手なことを言われる、それを世論が真に受けることに腹が立つのであります。これから各自治体が今後生き延びるために、そして過疎から脱出するために、みずから政策を立案して実施していかなければならないものが多く出てくるだろうと思いますし、そうでなければなりません。こんなとき、県は、過疎対策に対してどんな姿勢で臨むつもりなのか。さらに、岩手県の政策評価システムなるものをつくってはみたものの、効率の悪い過疎地域にとって、門前払いの一つの口実となり、発展の足かせとならないのか、十分な配慮はしてあるのか、地方分権の時代にあって、過疎地域のそれぞれの自治体が立案する地域発展計画をしっかりと受けとめ、その地域が必要とする産業等を地域の立場で支援をする、そういう政策評価システムになっているのでしょうか。これは聞いておかなければなりません。
   〔副議長退席、議長着席〕
 我が国、そしてまた、本県の社会福祉も、行政や民間関係者の努力によって、今日その充実ぶりは目をみはるものがあります。高齢者の福祉を初めとし、各福祉分野の施設が県内各地へ整理され、また、かつてほとんど行政が主体となって整備されていたものが、近年は、むしろ民間が主導的な役割を担うようになり、さらに、常に施設に入所させるだけではなくて、在宅の方々への福祉も、在宅介護支援センターや老人デイサービス事業の伸びに見られるように格段に充実してきており、その担い手も一部専門家だけではなく、ボランティアや一般の地域住民も参加するなど、福祉活動は大きな広がりを見せるなど、かつては予想できなかった姿に発展してきております。加えて、行政の取り組み体制も、従来ほとんど県レベルにとまっていた権限や役割を市町村が担うようになって、身近なところで、よりきめ細やかなサービスができるようになるとともに、行政主体の一方的なサービスの提供が、サービスを利用する者の主体性の尊重という視点も確立されつつあるなど、さまざまな面で抜本的な改善が図られつつあることは大変喜ばしいことであり、関係者の御努力に敬意を表するものであります。しかしながら、社会経済情勢が目まぐるしく変化する中で、このような制度、施策の改革、充実にもかかわらず、新たな問題も派生し、顕在化し、さらに、これらへの対応にも迫られていることも事実であります。以下、そうした点についての現状と対応等について何点か質問をいたします。
 最近、連日のようにマスコミ等をにぎわしているのが、子供の虐待問題であります。つい先日も、若い親が自分の子供に、しつけと称して長期間にわたって暴力を加え、死に至らしめ、あげくの果てはビニール袋に詰め、ごみのように川に捨てたとされる報道がありました。このような、まことに悲惨な事件が頻発しております。私には到底耐えられない事態でありますが、現実には全国各地で発生しております。幸い本県では、少なくともこのような目や耳を疑うような事件は発生していないと承知しており、また、本県の県民性からしても今後もあり得ないと信じたいところであります。
 しかし、一方で、本県だけがこのような傾向から例外であり続けると言い切れるものかどうか。いずれにしても、このような事態が生じることのないよう、特に、命が失われるということがないように、事態の早期把握と効果的な支援のための体制を整えておく必要があります。
 そこでお伺いをいたしますが、本県での児童の虐待の事例、あるいはその動向をどのように把握しているのか。
 また、県は、今年度から中央児童相談所等の相談指導機関を改組し、岩手県福祉総合相談センターとして総合化することなどにより、その機能の強化を図ったところでありますが、こうした事態の早期把握と相談や支援について、どのように強化を図り、具体的にどのように取り組みを行っているのか。さらに、万が一、虐待を受けた場合など、児童養護施設での入所処遇も有効な手だての一つと聞いておりますが、これら施設での受け入れ体制は万全でしょうか、お伺いをいたします。
 あわせて、これらに関連して、里親制度も改めて注目され、国では新たに、虐待から保護するための専門里親──仮称ですが──制度の創設を検討中と聞いております。里親はどちらかというと、今日では昔の制度として一般には忘れられた存在となっているとも思えますが、本県の里親の現状と今後の同制度の運用についてどう考えているのかお伺いをします。
 我が国では、国全体として生まれる子供の数が減少する、いわゆる少子化の進行に依然として歯どめがかからず、大きな社会問題となっております。平成12年の人口動態統計によると、本県の合計特殊出生率は1.51であり、全国平均の1.35よりは高いとはいえ、その傾向は全国と同様であります。女性が子供を生まなくなった大きな要因の一つとして、女性の社会進出が進む中で、働く女性に対する子育て支援が極めて不十分であり、特に、その中心となる保育所の量的な不足や保育時間が限られていることなどが挙げられております。保育所に入所を希望するも、定員に空きがないため入所できないでいる、いわゆる待機児童は全国では約3万3、000人とも言われ、政府ではこれを解消するため、待機児童ゼロ作戦と銘打ち、早急に受け入れ体制の拡大を図る方針と報じられております。この待機児童については、その大半は東京など大都市であるとのことではありますが、本県の実態はどのようになっているのでしょうか。全県トータルでは対応できる数値となっていても、それでは問題の解決にはならないわけで、それぞれの地域地域で対応できるものでなくてはなりません。こうした点も含めて、本県の実態や対応方法についてお聞かせいただきたいと思います。
 また、保育所は地域によって異なるとは思いますが、おおむね朝は7時30分から8時、夕方は6時ごろまでの保育時間となっていると聞きますが、本県では、早朝や夕方に時間を延長して預かる延長保育や乳児の保育について──ゼロ歳などの乳児の保育についても希望者が増加しているのではないかと思いますが、その実態と対応についてもお聞かせをいただきたいと思います。
 あわせて、以上のように認可された保育所の量や機能が十分でないことから、都市部を中心に認可を受けないで保育時間や子供の年齢等にも弾力的に対応し、いわばすき間を埋めてそのニーズに対応して、いわゆる無認可保育所に依存している実態もあると聞きます。これらの保育施設の中には、施設内容や人的な面で、一部必ずしも十分な保育体制となっていないものもあるようで、残念なことに他県においては死亡事故の発生も報じられております。これらについて、本県の実態をどう把握して、どう対応しているのかお伺いいたします。
 去る平成12年6月7日、社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律が公布されました。この法律の主な内容の一つが、利用者主体の福祉サービスの提供、すなわち、利用者と事業者が対等な関係に立って、利用者が福祉サービスをみずから主体的に選択をして、利用できる仕組みを基本とする社会福祉制度の確立を図ろうとするものであります。具体的には、知的障害者についても、現在は施設に入所しようとする場合、いわゆる措置制度として、端的に言えば、利用者の意向は聞くものの、行政の権限として決定しているものを、平成15年4月1日からは、利用しようとする者がみずからの主体的意思によって利用する施設を選択し、当該施設を経営する事業者との対等な契約によって利用できるようにするというものであります。かつ、その費用については、現在、措置費として利用者本人とはかかわりなく、行政から事業者に支払われていたものが今度は支援費として本人に支給され、本人が事業者に支払う方式に改正されたものであり、また、支援費の支給事務を初め、現在、県が行っている町村部における各種の知的障害者の支援業務も、すべて市町村において一元的に実施されるものであります。このような改正の方向は、法律改正の趣旨にもうたわれているとおり、利用者個々が尊厳を持って、1人の人間としてその人らしい生活を送れるよう支援するものであり、また、その支援については、利用者の最も身近なそれぞれの市町村において、総合的に提供できる体制を構築しようとするものであって、まさに画期的な内容となっております。
 しかし、法律に規定されたからといって形式的にはともかく、最も大切な中身が、即、実現されるとは限らないのが世の常であります。すなわち、利用者が主体的に施設を選択せよといっても、特にも知的障害者の場合、これらについての情報の提供はもとより、利用者の主体性に十分配慮しつつ、適時適切なきめの細かいアドバイスなどのサポート体制がなければ、まさに絵にかいたもちになるのではないかと思われます。現在は、少なくとも行政が措置という形で、行政の責任のもとに入所施設を決定していたものが、利用者の責任で入所施設を選択するようになることは、行政の責任逃れにつながる危険性もなしとはせず、逆に利用者は路頭に迷い、混乱するような事態も引き起こしかねないと思われます。また、支援の主体となる市町村、特に町村にあっては、これまでほとんど経験のない業務を担うことになるわけであり、職員数も少ない中で、しかも、かなりの専門性が求められる知的障害者の支援体制が十分とれるのか懸念され、施行まであと1年半であり、準備のための時間的余裕もそうないと思われます。
 そこでお伺いしておきますが、まず、利用者やその家族等にこれら制度の改正趣旨や内容、各種の施設内容等々が十分理解されなければならないと思いますが、その取り組みについてお聞かせをしていただきたいと思います。
 そして、新しい制度が真に機能するようにするための、行政を中心としたサポート体制の整備、特に、町村における業務執行体制の確立にどのように取り組んでいくのか、利用者が安心できるよう具体的にお示しをお願いしたいと思います。
 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 上澤義主議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、夢県土いわての実現に向けて県民の満足度をどうとらえるかということでございます。一般的には、県民一人一人の価値観というのはさまざまに異なっておりまして、住む地域、生活様式それぞれ多様化してます。したがって、それを一律に測定するというのは至難のわざということになりますが、それを総合計画におきましては、ぜひそういった要素も加えなければならないということで、この県民の満足度をより客観的に把握するために、具体的に暮らしの指標など主要な指標を数値目標として設定をして、その進捗状況を把握しながら施策を推進すると、このような手法をとっているところでございます。
 また、目標となる指標が、それでは県民の視点から見て妥当かどうかということが大きな問題となってきますので、その妥当性を検証するために、定期的に県民意識調査というものを実施して、施策に対する県民の意向や意識というものを測りながら、その評価に取り組んでいるところでございまして、こうした手法をとると、それぞれの分野において着実な成果を上げる取り組みを進めると、そして具体的な数値目標の実現を図ると、このことが県民満足度の向上につながると、このように考えて総合計画をつくっているところでございます。
 昨年度実施をした県民意識調査では、安全で新鮮な農産物の生産とか快適な住まいなどのこうした項目では県民の満足度が高いと、こういう評価になっていますが、一方で、ひとにやさしいまちづくりや自分の能力を生かして働ける職場の確保、こういった項目では満足度が低くなっております。今後の経済状況から考えても、こうした職場の確保というのはかなり厳しいものがあるというふうに思われますし、県民の満足度を全体として具体的に何点と採点するのも、今言いましたような難しさというものがございますが、私としてはこうした県民の意識調査からも、今後ますますこうした部分、大変厳しい状況であると認識をしておりまして、そのために来年度の施策重点化方針などで具体的な対策を即刻とりたいと、このように考えているところでございます。
 次に、第二県民歌の制定ということでございます。
 まず、現在の県民歌でございますが、これは議員がただいま申されましたとおり、県民の融和と自覚を促して勤労意欲を高め、県勢発展の一助となるように昭和39年に県庁舎の竣工を記念して制定をされたと、こういういわれがございまして、この岩手県民歌は昭和45年の岩手国体を初め、これまで本県で開催されたさまざまなイベントがあるわけですが、そうしたところで繰り返し歌われておりまして、この岩手の大地に生きる誇りとそして自信を呼び起こす上で一定の役割を果たしてきたと、こういうふうに考えております。
 さらに、議員御提案のように、老若男女を問わず、県民のだれもが口ずさめるような第二県民歌と、こういうような御提案がございました。確かに今、県民生活それから音楽などの芸術・文化に対する県民意識が多様化をしている中で、私は県民の心を高揚させることのできるものをこの際県民が考えるということは重要であると、こういうふうに認識をしているわけですが、特定の歌を官が作成をするということにつきましては抵抗感がありまして、むしろさまざまな歌、それは北上夜曲であったり北国の春であり、さまざま広く歌い親しまれている多くの県民の心に残るようなものが既にありますし、これからも誕生することもあり得るわけですが、そうしたものが広く県民の心に残るような形で生み出されるということが望ましいのではないかと、このように考えております。
 次に、過疎対策についてでございますが、過疎地域というのは、農林水産業を初めとする地域産業の経営環境が一層厳しさを増していると。また、就職などに伴う若者の域外流出、少子・高齢化の急速な進行など、やはり多くの課題を抱えております。しかし、こうした過疎地域というのはいわゆる都市社会で失われつつある結びつき、結ということでありますが、こうした結だとか結びつきだとか、あるいはゆとりなどに恵まれた環境の中で地域固有の生活文化が継承されると、豊かな自然や特色ある農林水産資源を有しているということで、こうした地域こそが日本の原点であって、その特性を生かした地域づくりに積極的に取り組んでいくことが求められております。
 県では、いわゆる新過疎法による支援に加えまして、昨年度策定した過疎地域自立促進方針に基づいて、今、各種の国庫補助事業への県単かさ上げ補助ですとか、県道などの整備について市町村負担金の免除、そして地域活性化事業調整費の運用上の配慮といったようなことで応援をしておりますし、過疎地域に準ずる地域に対しては準過疎地域ということで、その地域指定を行って支援をしてきたということでございます。
 このような支援によって、地域資源を活用した産業の振興、連携と交流を促進する交通通信体系の整備、高齢者などに対する保健福祉サービスの向上などを図ってきたところでございますが、今後とも、過疎地域が個性豊かで自立的な地域社会を構築できるように、今、申し上げましたような対策にさらに積極的に取り組んでいきたいと考えております。
 この過疎対策ということと政策評価システムと、この関係になるわけですが、政策評価では総合計画に掲げてある主要な指標の動きというものを基本として、全県それから広域生活圏ごとに、ブロックごとにその動向を分析して、その県民意識調査の結果やそれからこれからの社会経済情勢、将来に向けての見通しをも検討に加えて評価を行ったところでございます。
 個々の具体の個別の事業については、今、来年度の予算編成に向けて事務事業評価ですとか公共事業評価を進めているんですが、まず、この事務事業評価をやるについては、事業の必要性の評価という、そこにおきまして地域格差の項目というのを具体的に設けております。そして今申し上げましたような、こうした過疎地域などへの振興への貢献ということも評価の中にプラスとして入れてそれで判断をすると、こういう仕組みをとっております。
 さらに、公共事業評価につきましては、これはB/C、費用便益比を基本にして判断をしているわけですが、この費用便益比の算定に当たっては、例えば道路事業があるとすれば、その道路事業において過疎地域を通る道路ということでは、過疎地域の算定に際して地域修正係数というものを設けて、そしてそこの地域のものについては割増補正をするといったようなこと、それから、さらに事業箇所ごとにそうしたことによって出た費用便益比に、さらに必要性だとか緊急性だとか熟度などを加味してそして総合評価を行うと、こういった仕組みをとっております。したがいまして、この政策評価システムにつきましては、これからもなお一層、この精度の向上に努めるということが必要になるわけでありますが、やはり今後とも、今申し上げましたようなさまざまな地域の実情というのを勘案すると。必ずしも効率性という市場原理だけによらない評価というものを進めていきたいと、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔総合政策室長佐藤徳兵衛君登壇〕

〇総合政策室長(佐藤徳兵衛君) 県民の不満、不安の解消策についてでありますが、先ほど知事から答弁したとおりに、それに尽きると思いますけれども、実際、県民意識調査をやってみますと、現状に対する県民の評価が低い、不満とする項目が見られるわけであります。このような意識、不満は、一つには時代の大きな転換期において、少子・高齢化の進行や経済のグローバル化など、社会的、経済的な環境変化から生じるさまざまな不安を反映したものと考えられるところでありますが、総合計画はまさにこうした時代の潮流・変化を踏まえながら策定したものでありますので、引き続き計画に掲げる五つの社会を実現するためのそれぞれの施策について、着実に取り組んでまいることが大切であると認識しております。
 さらに、現下の厳しい経済情勢や環境問題など、本県における緊急かつ重要な課題に特に対応するため、現状に対する県民の評価などを十分に勘案しながら、平成14年度の施策重点化方針を策定したところであります。この方針に基づき、来年度においては、雇用の確保対策やごみの減量化、地域で支える健やかで安心な暮らし、ひとづくりにおける心の教育などの施策を重点的に推進する中で、限られた資源を有効に活用しながら、行政への不満や県民の不安などにこたえる満足度の高い行政サービスの提供を図ってまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕

〇保健福祉部長(関山昌人君) まず、本県の児童虐待の現状についてでありますが、児童相談所の児童虐待相談の受付件数は平成12年度は111件で、そのうち児童福祉施設に入所措置した件数は21件であります。また、平成13年8月末現在における本年度の児童虐待相談件数は84件となっており、前年同期の45件に比べ大幅に増加しております。主たる虐待者は実母で、その大半が身体的虐待となっており、虐待の対象は3歳から小学生までの児童が最も多くなっています。
 次に、児童虐待の早期把握と相談や支援の強化についてでありますが、本年4月に開設した岩手県福祉総合相談センターについては、中央児童相談所や婦人相談所など5公所を統合し、市町村等地域に対する支援体制の整備を図るとともに、児童女性部の設置により、従前、別々に対応していた女性と子供の問題に対し、母と子をより一体的かつ総合的に指導できるよう、体制整備を図ったところであります。
 児童虐待相談についても、迅速かつ総合的な対応ができるように、平成12年度から児童虐待に対応する専門職員を配置しているほか、本年10月から一時保護所に心理専門職員を新たに配置し、本センターの機能の強化を図ることとしております。
 また、本年8月には、大船渡市に児童家庭支援センターを整備、開設し、県南沿岸地域における要保護児童対策の強化を図ったところであります。さらに、広域的な視点に立って、地方振興局単位で管内市町村、学校、警察署等からなる児童虐待防止地域連絡会議を設置したほか、地域協力員689人の養成を図るなど、児童虐待の未然防止、早期発見、早期対応のための地域ネットワークづくりに努めてきたところであります。
 一方、市町村においても、地域の問題は地域でできる限り対応できることが望ましいことから、適切な児童虐待防止への取り組みが可能となる体制づくりが重要であります。このため、虐待者の多くが両親であることから、早期に子育ての悩み等が解消できるよう、常日ごろの子育ての悩み等を語り合える母親同士からなる子育てサークルへの支援や、子育てについて相談を行う地域子育て支援センターを本年度までに33市町村、40カ所の整備を行うこととし、今後、保育所を有している全市町村に整備することとしております。
 また、市町村において、子育てから思春期等まで全般的な相談に対応できるよう、本年7月から子育て支援総合相談窓口の担当者研修を県独自に実施しているところであります。さらに、市町村において適切な児童虐待防止のための地域ネットワークが確保され必要な対応が講じられるよう、学校、保育所、民生児童委員等からなる児童虐待防止協議会の設置を各市町村に働きかけてきたところ、本年度から宮古市において取り組むこととなっております。
 今後におきましては、関係機関等が連携して児童虐待に対してより適切かつ迅速な対応を図るため、全県組織との岩手県児童虐待防止連絡会議を10月を目途に開催し、地域の児童虐待防止活動を支援するなど、児童虐待の未然防止、早期発見、早期対応が可能となるよう、その体制の構築により一層努めてまいりたいと考えております。
 次に、虐待を受けた児童の児童養護施設での受け入れ体制についてでありますが、県内児童養護施設の定員に対する充足率は本年9月1日現在で93.9%となっており、また、虐待等による心的外傷のある児童等に適切にケアができるよう、心理療法を行う職員を平成11年度から児童養護施設みちのくみどり学園に、さらに本年10月からは県立和光学園に配置することとしております。
 今後とも、児童の適切な保護と自立が図られるよう、児童養護施設の体制整備に努めてまいります。
 次に、本県の里親についてでありますが、里親制度は、児童養護施設等にはない家庭的な雰囲気の中で児童を保護し健全に療育する制度であり、本年9月1日現在における登録された里親の数は155人、そのうち22組の里親の方々に27人の児童を委託しており、委託率は14.2%となっております。今後、措置機関である児童相談所が、児童にとって最もふさわしい処遇先を適切に判断し、里親制度を活用する場合は、里親の協力を得ながら、児童の健全な育成を図ってまいる考えであります。
 次に、保育所における待機児童についてでありますが、平成13年4月1日現在、14市町村で147名の待機児童があり、前年と比較し23名の減少となっておりますが、その多くは、特定の市町村で生じている傾向が見られております。このため、待機児童がある市町村に対しては、本年8月に個別にヒアリングを行い、施設整備の必要性や定員の見直しによる受け入れ拡大等について市町村の実態に即し、具体的な指導、助言を行ったところであり、現在、当該市町村において待機児童の解消に向けた計画について検討を行っているところであります。今後は、これらの計画を参考としながら、できる限り速やかに待機児童の解消が図られるよう、市町村に対し必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
 次に、延長保育についてでありますが、延長保育にかかる保護者の保育料の負担軽減を図るため、県単独の延長保育料軽減事業により助成措置を講じており、平成12年度の利用児童数は2、337名で、前年と比較し774名の増となっております。
 乳児の保育については、平成13年4月現在900名で、前年と比較し118名の増であり、延長保育、乳児の保育とも年々利用児童数が増加してきております。延長保育、乳児の保育等の推進については、本年1月に策定したいわて子どもプランに基づき、適切な保育サービスが提供できるよう、市町村に対し必要な支援を行ってまいります。
 次に、認可外保育施設についてでありますが、平成12年10月1日現在では、119カ所、2、701名の児童が利用しており、保育所及び認可外保育施設に入所している児童総数2万5、902名のうち、約10%を占めております。このため、認可外保育施設において適正な施設運営が確保されるように、国の認可外保育施設監督の指針では、おおむね1日当たり10人以上利用している施設を対象に、毎年、報告徴取及び立入検査を実施することとされておりますが、本県では5人以上利用している施設まで対象を拡大して、まず、施設の運営状況の報告を徴取し、その後、事業所内保育施設以外の認可外保育施設を対象として立入調査を実施しているところであります。この報告徴取に基づき、昨年度実施した67施設に対する立入調査において、39施設で非常災害に対する訓練や給食従事者の検便の未実施等を指摘し、児童の安全確保や衛生管理の向上等について指導を行ったところであります。また、より一層の適正な施設運営の確保を図る観点で、今年度からすべての認可外保育施設に対して報告徴取を実施し、さらに事業所内保育施設を加え、5人以上利用しているすべての施設を立入調査の対象とすることとしております。
 さらに県では、認可外保育施設立入調査において指摘される施設の多さにかんがみ、今年度、新たに認可外保育施設におけるサービスの質の向上を図ることを目的として、保育従事者の各種研修の受講の際にその代替要員の確保に経費を要した場合、それを助成する認可外保育施設支援事業を県独自の事業として創設したところであります。
 今後とも、利用者が安心して適切なサービスが得られるよう、認可外保育施設の育成に努めてまいります。
 次に、障害者福祉制度の改正内容等の利用者やその家族への周知についてでありますが、今回の制度改正の趣旨は、福祉サービスの利用制度への移行、利用者の利益を保護する仕組みの導入、福祉サービスの質の向上など、利用者の立場に立った社会福祉制度の実現を図ろうとするものであります。サービスの利用者が主体的に必要なサービスを選択して利用するためには、利用の仕組みやサービスの内容等について十分理解していただく必要があります。このため、県といたしましては、本年3月に策定した岩手県障害者プランの説明会等々を通じて、制度改正の趣旨や内容、適切なサービス利用がなされるための地域福祉権利擁護事業等について、利用者や関係者の方々への周知に努めてきたところであります。
 今後とも、障害者の方々が適切にサービスを利用できるよう、障害者福祉施策推進の主体となる市町村と連携し、広報や説明会の開催など、多様な手段を通じて制度改正の趣旨や提供されるサービスの内容等について一層の周知を図り、円滑な制度の施行に努めてまいります。
 次に、利用者に対する行政を中心としたサポート体制の整備についてでありますが、利用者みずからが必要なサービスを主体的に選択することとなる新しい制度においては、特にも利用者に対する相談支援体制の整備が大切であると考えております。このため、県におきましては、障害者にとって最も身近な市町村において、適切に相談を受けられる体制の整備を図るとともに、市町村と協力・連携しながら、専門的な相談等の支援が可能となるよう、障害者地域生活支援事業を障害保健福祉圏域ごとに拡充して、各圏域でのさまざまな相談に適切に対応できるように、相談・コーディネート体制の整備を進めているところであります。
 また、これらの相談・コーディネート活動を支援するため、従来の身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所等を統合した岩手県福祉総合センターを本年4月に設置し、専門的かつ総合的な相談機能と市町村等、地域への支援機能の充実を図ったところであります。また、先般、市町村における制度施行準備作業を支援するため、現時点で考えられる必要な準備事項や業務スケジュールについて、県独自に取りまとめた作業工程表を市町村に対しお示ししたところであります。
 今後におきましても、国からの情報については速やかに市町村へ伝えつつ、市町村において適切なサービス提供体制が確保されるよう、市町村における広域的な取り組みにも留意しながら、市町村障害者プランの策定等を通じて必要な助言を行うとともに、市町村職員を対象とした研修会を開催するなど、平成15年度の施行に向けて、市町村と一体となって準備を進めてまいりたいと考えております。
   

〇議長(谷藤裕明君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時25分 散 会


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