平成13年9月定例会 第11回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(斉藤信君) 日本共産党の斉藤信でございます。
 議案第17号気仙郡三陸町を大船渡市に編入する合併議案について質問いたします。
 大船渡市と三陸町の合併問題は、住民の予想を超える異常な速さで進められました。
 合併論議の発端は、昨年11月14日、大船渡市広域行政検討委員会が、三陸町との合併を推進することが望ましいとしたときからでありますが、それから8月31日の調印まで、わずか9カ月余であります。正式には、ことし1月18日、大船渡市長と三陸町長が合併推進の合意をしたときからでありますが、合併調印までわずか7カ月余であります。
 私は、9月13日、大船渡市と三陸町の住民から直接話を聞いてまいりましたが、町民不在、暴走特急の合併劇だったと、怒りを持って訴えておりました。
 地元の東海新報は、7月18日から長期にわたる合併の連載記事を載せていますが、「疾風合併、その底流と行方」と名づけています。
 合併合同検討会の設置が5月17日、任意の合併協議会の発足が6月6日、法定の合併協議会の発足は7月19日、合併調印が8月31日となっています。すべて1カ月前後のスピードであります。全国に、これだけ急いだ合併劇はあるのでしょうか。
 総務省が、ことし8月に公表した合併協議会の運営の手引では、過去の合併協議会設置期間の平均が3年弱になっていることを指摘し、合併協議会設置準備も含めれば22カ月、2年弱で可能だとマニュアルを示していますが、この手引と比べても異例なやり方ではなかったでしょうか。任意・法定の合併協議会には、県の幹部職員も参加していますが、どのような役割、助言を行ったのでしょうか。
 今回の合併問題の最大の問題は、住民不在で進められたことであります。
 合併問題とは、住民の生活にかかわる地方自治体のあり方、存続を決める問題であります。ですから、住民の間での十分な議論と合意形成を通じて決められるべき問題であります。とりわけ、編入合併される三陸町の住民にとっては重大な問題でありました。ところが、最後まで十分な説明と論議がなされず、住民投票を否定し、町長の任期満了直前に合併するという、二重三重に町民の選択の機会を奪うやり方を強行したのであります。
 増田知事はこれまで、議会の答弁や定例記者会見で、両市町は地域の将来ビジョン等について住民に説明し、さらに議論を深め、合意形成を図っていく必要があると述べていました。このような説明、議論、合意形成がなされたと認識しているかどうか伺います。
 また、三陸町の合併問題を考える会の方々は、8月1日、増田知事あてに、住民合意が正常なルールに従って確認、確保されるよう求める陳情をしております。この陳情には、2、929人の署名が添えられています。これは三陸町人口の35%、有権者の43%に及ぶものであります。増田知事は、この陳情をどう受けとめたのでしょうか。また、どう知事として対応されたのでしょうか、お聞きいたします。
 大船渡市と三陸町の合併問題を考える会は、合同で住民説明会後の7月末、合併問題アンケートを実施しました。1万3、000通を新聞に織り込み、2、318通、17.8%の回答が寄せられました。特に三陸町では、1、500通の配布に対して756通の回答が寄せられました。三陸町の回答率は50.4%に達します。その中身も、合併を決めるのは住民との回答が三陸町では86%、全体でも79.9%でした。合併の時期や進め方について、急いで合併すべきは三陸町でわずか4.9%、時期にこだわらず慎重に検討してから合併すべきが53%、合併するかしないかを慎重に検討すべきが27%、合併すべきではないが13.4%で、合併の賛否にかかわらず、慎重に検討すべきという声が94.2%を占めたのであります。また、住民との話し合いについて、余り十分ではない24.7%、不十分である62.2%、あわせて86.9%となっています。増田知事は、このアンケート結果をどのように受けとめているでしょうか。
 次に、大船渡市・三陸町合併建設計画書の、また、合併協定書の内容について質問いたします。
 1、合併の必要性の第2に、住民意識の高まりとありますが、行政主導、住民不在で進められたのが実態ではなかったでしょうか。
 2、住民福祉の一層の向上がうたわれているものの、建設計画では、福祉関係は632億円の計画のうち、わずか5億700万円、計画全体の0.8%であります。ことし5月末現在で、両市町で21名の特養ホーム在宅入所待機者がいますが、これで10年後の高齢化社会に対応できるのでしょうか。
 三陸町の診療所については、町民が一番心配している課題であります。約2億円の診療所改築事業とともに、現行のとおり存続するとされています。これは、10年間は現行のとおり継続、存続するものと理解してよろしいのでしょうか。三陸町は、これまで診療所に対し1億2、000万円余の財源措置をしていますが、建設計画の財政計画にもこれは位置づけられているのでしょうか。
 3、教育に関して、三陸町の学校給食と学区の取り扱いについては、当分の間、現行どおりとするとされていますが、当分の間とは3年なのか、何年なのか、それ以後は、学校と給食センターの統廃合を意味するのかどうか示していただきたい。
 4、職員の身分と取り扱いについて70人の削減ということが言われていますが、これは財政計画の人件費にどう年次計画で位置づけられているのでしょうか。
 県の広域行政推進指針の資料によると、現状では、標準定員モデルとの比較では、10.9人の増ということになっていました。70人の削減とは、定員モデルより大幅に削減するということでしょうか。
 平成14年度の人件費は、11年度よりも減少する計画になっていますが、その根拠は何でしょうか。
 5、地方交付税について伺います。
 合併の支援策として10年間、これまでと同額の交付税が措置され、その後5年間で減少されるということであります。合併した場合、本来の地方交付税と比較すればどのくらいの減少額となるのでしょうか。地方交付税がもとに戻った場合、財政基盤が悪化するのではないでしょうか。
 6、632億円の建設計画のうち、合併特例債の対象となるのは104億円余、起債発行額は99億円、70%の地方交付税措置では70億円が後から措置される仕組みでありますが、これまでの実績を考えると、余り期待できないのではないでしょうか。
 地方交付税が全体として減少した場合、その補てん措置はあいまいになると思われますが、いかがでしょうか。結局、借金財政で建設計画を推し進めながら、結果的には十分な財政措置がなされず、地方交付税は10年以降は減少し、赤字体質が深刻化するのではないでしょうか。
 7、住民説明会等では、合併によって年間8億円の経費節減ができると言われていますが、これは県の類似団体類型による一般的試算ではないでしょうか。
 実際に、具体的に試算がなされた数字なのでしょうか。
 8、三陸町の町議会議員選挙が9月28日投票で行われます。もし、合併反対の議員が多数を占めた場合、この合併調印は覆されることがあり得るのでしょうか、お聞きいたします。
 最後に、こうした具体的なことを質問したのは、これまでの暴走特急の合併劇で十分な説明と論議が住民の間でなされてこなかったからであります。
 答弁によっては、再質問をしたいと思います。以上で質疑といたします。
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 斉藤信議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、住民の合意形成についてお尋ねがございましたが、これは結論から言えば、住民の代表である両議会において最終的な判断がなされたものであると、この事実を重く受けとめなければならないと、こういうふうに考えております。
 その過程において、住民の意見を聞き、その合意を図るために各地域で懇談会や説明会が開催され、また、広報紙などで意見を求めるなど、地域ごとに多少違いがございますが、それぞれの市、町でこうした合意形成を図るための取り組みがなされたというふうに承知をしてございますが、そうした手続を経た地域の議論の上で、両議会で最終的な判断がなされた、このことによって合意形成がなされたと、このように考えております。
 それから、三陸町の合併問題を考える会から私の方に陳情がございました。この陳情書は、9月の町議会議員の任期満了の前に合併実現を行いたいと、こういう動きがあって、それを前提とした陳情書となっているわけでありますが、こうした陳情に対しては、県では両市町に対して、これは従来からの基本線でありますけれども、こうした合併については住民の理解が必要であって、十分に建設計画等の内容も説明をして、その上で住民の皆さん方からの意見を反映したような、そういう取り組みを進めるべきであると助言をしてきたところであります。
 こうした会の皆さんや、あるいは両市町から市議会議員の方、町議会議員の方も直接私のところにも来られましたけれども、またそうした際に、9月の三陸町の任期の満了の前にぜひ合併を進めたいということで、その機を逃すと合併の機運が冷めるということで、そうしたことで来られた方もおりましたけれども、そうした皆様方にも、住民の説明をしっかりと行うことが前提であるということをその方々に申し上げたわけでございます。結果としては町議会議員の選挙が行われる手続になってございますけれども、いずれにしても、住民の皆様方への理解を求めるような、そういうことを両市町の方に助言をしてきたところでございます。
 それから、合併問題のアンケートもございまして、これはちょうど7月末という時点で実施をされたアンケートになっておりますけれども、このアンケートも9月の合併ということを前提で問いが立てられているわけでございますが、これの分析はいろいろあると思いますけれども、見ますと、回答者の過半数を超える方が、合併という方向について賛成の意向を示しているというふうに読み取れまして、そうした賛成の意向を示した上で、建設計画などについての住民に対する十分な説明を求めているというふうに考えております。
 この市町、それぞれでこうしたアンケートの結果も踏まえ、また、県からのそうした指導なども受けて住民に対する説明会や建設計画への県との間の意見照会などの手続を経て、11月15日の合併施行という結論を法定協議会において決定をして、両議会の議決というきちっとした手続を経て県に対して申請を行ったものと、このように認識をしております。
 その他のお尋ねにつきましては地域振興部長から答弁させますので、御了承願います。
   〔地域振興部長飛澤重嘉君登壇〕

〇地域振興部長(飛澤重嘉君) まず、全国における急いだ合併劇の有無についてでありますけれども、全国における合併の事例のすべてを承知しているわけではございませんで、また、合併に向けた議論の起算点をどこに求めるか、あるいは合併をめぐるそれぞれの地域の議論の状況、過去からの経緯、合併の規模等によりましても、どの程度の期間が必要であるかというのは、一般的に画一的に決めることは非常に難しいというふうに考えておりまして、どの事例が議員御指摘の急いだ合併に当たるかということは一概に申し上げることはできないのではないかなと、そういうふうに思っております。
 ただ、事例を申し上げますと、最近の合併事例で、任意合併協議会を最短で申しますと2カ月という事例もございますし、法定合併協議会、最短で2カ月と、そういった事例もございます。
 それから次に、合併協議会の運営の手引と比較して異例なやり方ではないかというお尋ねでございますけれども、総務省の手引におきましては、合併協議会における協議のみならず、合併に向けた電算システムの見直し、条例・規則等の改正などの合併準備作業も含め、およその目安として22カ月の期間を設定しているものでございまして、この期間につきましては合併関係市町村の規模、地域の結びつき等の事情によりまして異なってくるものと考えております。
 大船渡市及び三陸町では、基本的に手引において示されている任意協議会や法定協議会における協議など、さまざまな手続を網羅したものと承知いたしておりまして、また、現在は合併準備推進室を設置いたしまして、合併に向けた協定書内容の具体化、条例・規則等の改正作業などを行っていると聞いておりまして、一つ一つの手順を踏みながら合併手続を進めているものと認識いたしております。
 次に、合併協議会における県職員の役割あるいは助言についてでありますけれども、任意及び法定の合併協議会における協議は、あくまでも両市町が主体となって行うべきものであるという観点から、協議事項について両市町が自主的・主体的に判断できるよう配慮いたしまして、学識経験者として法令解釈など、必要な技術的助言にとどめたところでございます。
 次に、住民の意識の高まりについてでありますけれども、先ほど知事からもお答え申し上げましたけれども、大船渡市及び三陸町におきましては、住民に対する懇談会や説明会の開催などのさまざまな取り組みを経まして、最終的には住民意思の決定機関であります議会におきまして、合併推進の方向が選択されたものであるというふうに考えております。
 次に、高齢化社会の対応についてでありますが、特別養護老人ホームなどの介護保険施設につきましては、3年ごとに見直すこととされている介護保険事業計画の中で適切に検討し策定されるものと考えておりまして、県といたしましても必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
 次に、三陸町の診療所についてでありますが、合併協定において、国民健康保険診療所は現行のとおりとするとされたことを踏まえまして、財政計画におきましては、その計画期間である平成23年度までの10年間にわたりまして、所要の繰出金を計上しているところでございます。
 次に、三陸町の学校給食と学区の取り扱いについてでありますが、これらは、合併協定において、当分の間、現行のとおりとするとされたところであると聞いておりまして、合併後におきましては、協定の趣旨に沿って適切に取り扱われるものと考えております。
 次に、財政計画に示された人件費についてでありますが、合併による事務の効率化などのスケールメリットを踏まえ、新市における組織や人員配置のあり方等について将来にわたる見込みを立て、各年次ごとに算出されたものと聞いております。
 また、定員モデルとの比較でございますけれども、定員モデルの対象は一般行政職員に限られておりまして、教育関係職員あるいは水道事業所などの公営企業職員等は除かれるものでありまして、議員御指摘の70人の削減数は建設計画に明示されたものではございませんで、詳細は私どもも把握しておりませんが、不明でございまして、どういう趣旨で、どういう根拠に基づいてそういう説明がなされているかということについては承知いたしておりませんけれども、仮に全職員を対象としたものであるとすれば、これと広域行政推進指針の資料に示した定員モデルを用いた試算値10.9人とは、単純に比較することはできないのではないかなというふうに思っております。
 また、財政計画におきまして、平成11年度と比較して、14年度の人件費は約5、700万円ほどの減となってございますけれども、その根拠につきましては、事務の効率化等に伴う職員の減などが主な要因というふうに聞いているところでございます。
 それから次に、合併に伴う地方交付税についてでありますが、今回の合併については、大船渡市に三陸町が編入して一つの市になることにより必要となる交付税額は毎年度6億円余の減少が見込まれるところでございますけれども、合併算定替えによりましてこの額についても保障されることになっております。
 なお、15年経過後につきましては、標準的な規模に応じた所要の交付税額が確保されるということになるものでございます。
 それから次に、合併特例債に係る地方交付税措置についてでございますけれども、合併特例債の制度が認められましたのは平成11年度からでございまして、最近の合併事例でございます盛岡市あるいは北上市の際には、合併特例債の制度がなかったものでございまして、平成11年度以降の全国の合併につきましては、全体の地方交付税の増減にかかわらず、後年度にその元利償還金の70%が普通交付税で措置されることになっております。
 また、合併に伴う建設計画の策定に際しましては、公債費比率の増嵩等に十分留意しているところでございまして、新市において適切な財政運営がなされることを期待しているところでございます。
 それから次に、合併による経費節減についてでございますけれども、住民説明会におきまして年間8億円の経費節減ができるとの説明があったというふうに仄聞してございますけれども、その具体的内容、根拠については承知していないところでございます。
 なお、申し上げますと、県の広域行政推進指針におきまして、類似団体類型によりまして理論上の積算による経常経費の削減効果をお示ししているところでございまして、大船渡市と三陸町の合併の組み合わせにおきましても、理論上の額として8億2、000万円余を見込んでいるところでございます。
 次に、合併調印を覆すことについてでございますけれども、仮定の議論にお答えするのは余り適当ではないというふうに考えておりますけれども、両市町からは議会の議決を経た合併申請がなされたところでございまして、三陸町議会議員選挙の結果によって、影響を受けることはないものと承知いたしております。

〇23番(斉藤信君) 知事、三陸町の住民の合意形成がなされたという、そういう残念な、とんでもない答弁だったけれども、知事は記者会見の中でこう言っているんですね。
 生活レベルで具体的にその効果が見える、あるいは逆に合併しないことによって、これだけ今将来いろいろな支障が予測されるとか、何かそういうことが生活の中で見えてこないとなかなかこういった問題は進まない、生活レベルでの議論を進めるべきだと言っていました。
 また、6月4日の記者会見では、最後は住民主権、住民の判断ということで市町村で議論していただくと。住民のそういう説明、議論、住民の意思というのが図られたという、そういうものは何もないじゃないですか。
 それで私聞きたいけれども、町長選挙、この2日前に合併するということは、住民の最大の選択権を奪うものじゃないですか。4年前に、町長も議員も合併を公約した人は1人もいないんです。住民はそんな白紙委任をしていないんですよ。知事、公約していない重大な問題について、住民の意思、賛否を問わないで合併するということ、それも住民合意形成になりますか。
 二つ目に、新しい議会で反対の決議が上がったら、これ、合併が成り立ちますか。
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 今、議員からお尋ねがございましたけれども、住民の生活のそのレベルがどのようにこの問題によって向上するのかどうか、それを判断するのは大船渡市民であり三陸町民であり、そしてその市民、町民が選んだ議員から構成される議会がどう判断をしたのかと、この手続が大変重要であると。これは、県議会においても国会においても同じようなことが言えるのではないかと、私はこういうふうに思います。そしてこの問題について、さらに理解を深めるためにそれぞれが努力をすると、これは当然しかるべきであるというふうに思うわけでありますけれども、こうした正当な手続を経たこの両議会の議決というものの重みというものは、私どもしっかりと受けとめなければならない、このようなことを先ほど私が申し上げたものでございます。
 なお、三陸町の町議会選挙がこれから行われるわけであります。これについては、三陸町の町民がしっかりと判断する話でありますので、先ほどの部長のとおり、仮定の議論にお答えするのも適当ではないというふうに思いますけれども、しかし、この点については私どもはきょうのこの議会なりそうした手続を粛々とこれからも進めていかなければならないと、このように考えております。
   〔地域振興部長飛澤重嘉君登壇〕

〇地域振興部長(飛澤重嘉君) 先ほどもお答えを申し上げましたけれども、仮定の議論でございますので適当ではないと考えますけれども、いずれ、三陸町議会議員選挙の結果によって、この両市町の議会の議決を経た合併申請というものが影響を受けることはないというふうに思っております。

〇議長(谷藤裕明君) これをもって質疑を終結いたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております議案第17号気仙郡三陸町を大船渡市に編入することに関し議決を求めることについては、会議規則第34条第2項の規定により、委員会の付託を省略したいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(谷藤裕明君) 御異議なしと認めます。よって、議案第17号気仙郡三陸町を大船渡市に編入することに関し議決を求めることについては、委員会の付託を省略することに決定いたしました。
 これより討論に入ります。
 討論の通告がありますので、発言を許します。小原宣良君。
   〔36番小原宣良君登壇〕(拍手)


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