平成13年9月定例会 第11回岩手県議会定例会会議録

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〇36番(小原宣良君) 社会民主党の小原宣良でございます。
 議案第17号に反対の立場で討論いたします。
 この案件は、三陸町を大船渡市に編入することに関し議決を求めることについてであり、大船渡市が三陸町を吸収する形で合併しようとするものであります。
 私は、問題点を3点に絞って申し述べたいと思います。
 第1点は、大船渡市と三陸町との合併の議論、すなわち、住民合意に向けた議論に不足があったのではないかという点であります。
 一連の経過を見ますと、平成4年2月に、大船渡市議会広域合併調査委員会は、気仙広域の合併推進が望ましいとの調査結果を取りまとめております。この時点で、大船渡市は気仙広域2市2町の大同合併を念頭に置いていたものと思われます。大船渡市が第1回広域行政検討委員会を開催したのは、昨年8月であります。昨年11月開催の第3回同委員会は、将来的には2市2町の合併を念頭に置きながらも、交流が活発に行われている三陸町との合併を推進することが望ましいとしました。その後、大船渡市長と三陸町長が法定の合併協議会設置を確認したのは、本年7月であります。この経過を見ますと、気仙広域2市2町合併構想から大船渡市と三陸町に特定した合併構想ができ上がったのは昨年11月であり、この間、1年に満たない期間での合併合意となります。これは、幾ら何でも早い。住民の間から拙速を避けよとの声が上がったのは当然であります。
 私は、北上市、和賀町、江釣子村の3市町村合併を、北上市の内と外から、かかわりを持ってきました。およそ20年の長い年月を要しました。対等合併と吸収合併、あるいは規模によって年月の差はあるかもしれませんが、私にとっては信じがたい超スピードであります。この1市1町合併のプロセスに、急ぐ余りの不足はなかったのか。とりわけ、三陸町の住民の中に、しっかりとした合意形成がなされたであろうか、拙速に過ぎたのではないかと心配でなりません。そして、大船渡市・三陸町合併建設計画が住民の意見反映のもとにしっかりとつくり上げられ、さらにはその着実な推進が担保されているであろうかとも思いをめぐらすのであります。私はあえて反対の意思表示を持って、指導に当たった県に対し、私と思いを同じくする県民とともに、その拙速さを強く指摘するものであります。
 次に、市町村合併にかかわる県の役割についてであります。
 国は、市町村合併を推進するため、市町村の合併の推進についての指針を平成11年8月、さらに本年3月に新たな指針を示しました。特にも、本年3月に示された新たな指針においては、合併重点支援地域指定が盛り込まれたところであります。これらの指針の特徴は、国の強いイニシアチブにより、都道府県を主体として合併を推進しようとするところにあります。この指針を受けて県は、岩手県広域行政推進指針を平成12年5月に策定し、広域圏ごとに幾つかの合併パターンを提示いたしました。気仙広域圏にあっては、2市2町の合併パターンと、大船渡市・三陸町の合併パターンの2例であります。これらは、国と地方、都道府県と市町村の対等・協力関係の構築という、地方分権の理念からすれば、合併パターンの作成を都道府県に求めることは、市町村の自主性・主体性の尊重、地域の自己決定の原則と明らかに矛盾するものであることを指摘しなければなりません。
 市町村合併をこうした図式で見るならば、市町村はあくまで合併に向けた説得の対象でしかないということになります。この合併パターンは、自主的合併機運の醸成としているようでありますが、国が都道府県に対し、合併パターンを含む要綱作成を求めた期限は平成12年中のできるだけ早い時期としたことにも見られるように、県が策定した広域行政推進指針に、市町村が前段でどうかかわってきたのかも疑問視せざるを得ません。
 市町村の主体性を確かなものとしつつ、広域行政を考えていくことの重要性を強く指摘したいと思います。
 また、広域連合や一部事務組合などの広域行政制度に対し、市町村合併を優位に位置づけることがあるとすれば、市町村の自主性・主体性を失わせることにしかならないものであります。
 このように、県が示した合併パターンの持つ意味と県の役割は極めて重要であり、何のための、だれのための合併であるかを、いま一度問い返してみる必要があると考えます。
 これからも続くであろう市町村合併に際し、県は真に市町村の自主的・主体的取り組みを支援する立場に立っていただきたいと願うものであります。
 最後に、議案提出のあり方について申し上げます。
 本案のように、新たな自治体をつくり上げるような県民生活に深くかかわる案件については、知事は議会に対し、事前に十分な説明をすべきであります。また、議会においても、過去の例にこだわらず、十分な審議の場を持つことも重要と考えます。今後の課題として、議員各位御検討賜れば幸いであります。
 以上をもって私の反対討論を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔39番吉田洋治君登壇〕(拍手)


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