平成13年12月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇1番(及川敦君) 政和会の及川敦であります。今回で3度目の登壇の機会を先輩、同僚議員の皆様の御配慮でちょうだいいたしましたが、今回は、今後の県政運営並びに平成14年度岩手県一般会計予算編成などに格段の配慮を求める立場から、他県の先進事例を紹介しつつ、政策提言中心に以下お伺いいたしますので、当局の皆様の前向きな検討と御答弁をまずお願いいたします。
 さて、今議会の焦点は、当面する県政課題が数多くある中で、多くの議員の皆様が御指摘のとおり、やはり私は、雇用対策が最も緊急かつ重大な案件であろうと認識いたしております。
 雇用とは、県民生活の基盤となる最も重要なものでありますが、その雇用情勢を見ますと、本日質問の中屋敷議員、阿部敏雄議員も指摘されたとおり、総務省発表の9月の全国の完全失業率は過去最悪の5.3%、完全失業者数も350万人、厚生労働省発表の有効求人倍率は0.57であります。そのほか、求職意欲喪失者が420万人以上いると見られております。また、欧米の雇用統計の手法で換算してみますと、現在の実質的失業率は何と10%近いとも言われております。
 また、東北地区の有効求人倍率は0.43で全国10地域の中で最低、本県に至りましては、全県平均で0.4で、地域によっては0.2台や0.3前半という数値も出ており、その危機的状況は目を覆うばかりであります。まさに今、緊急かつ有効な手段をとる時期であることは自明でございます。
 本県の対応は、平成14年度の施策重点化方針の最初に雇用の確保、複合産業や新産業の創出に向けた取り組みを上げ、また、10月30日に岩手県総合雇用対策を発表しましたが、その中で雇用の創出などについて取りまとめ、国、関係機関・団体との連携のもと総合的に取り組む予定と承知しておりますが、私は、この対策につきまして、以下詳細に伺うものでございます。
 まず、雇用創出の項で触れられております企業誘致活動の推進についてであります。
 対策では、電話やインターネット等を利用して情報提供のサービスを行うコールセンターの誘致に努めるとありますが、私は、この対策はまさに時宜を得た即効性のある対策であり、ぜひとも積極的に進めていただきたく、以下伺います。
 コールセンターとは、顧客が電話や電子メールで寄せる質問や苦情などを集中的に処理する企業のお客様窓口であり、通信販売の拡大や企業の顧客対応強化などの要因で90年代から目立ち始めました。現在、コールセンターを積極的にいち早く誘致し、雇用拡大と地域産業活性化に成功していると言われているのは、沖縄県と北海道札幌市であります。その成功から他の地域においても助成措置を導入し、現在誘致合戦が進行しております。
 各自治体の助成内容と誘致効果を見ますと、沖縄県では99年に通信費の8割補助、若年雇用者の人件費の5割負担などの積極支援策で、昨年末までに18社が進出、2、456人の新規雇用が創出されました。
 北海道では、札幌市と協調し、99年に人件費補助として1人の雇用に50万円、新築・改築費用、通信費補助などの助成制度を導入、本年8月の段階で対象となったのは12社、約2、000人の雇用が生まれました。現在、この種の助成制度を設けておりますのは、北海道、青森、宮城、三重、島根、長崎県などであり、誘致合戦が激化いたしております。
 また、コールセンターは現在速いテンポで進化しており、電話での対応に限られていた企業の顧客対応窓口が、電子メールやウェブの世界にまで広がり、いまやコンタクトセンターとしての営業最前線の戦略部門として高い成長性が見込まれております。沖縄県では、コールセンターに寄せられた情報を蓄積・加工して発信させるべく、コールセンターアイランドからデータアイランドへの脱皮の戦略を立て、施策を展開しつつあります。
 私は、本県においても、長期的産業振興の観点からも、コンタクトセンターのような企業を誘致することを起爆剤とし、人材と情報関連産業を育成していくことは非常に重要な施策であると認識しております。本県の示しました対策では、コールセンター誘致については、県単で平成14年度当初予算要求検討とありますが、現在どのような誘致に向けた具体の検討をされているのかお知らせ願います。
 次に、新事業の創出に関して伺います。
 バブル崩壊後のこの失われた10年の間、さまざまな日本経済再興の処方せんに関しての議論がございましたが、その方向は見えつつあるものの、一向に新しい時代の産業の起爆剤となるものが見えてこず、いらだちともあせりとも言える空気が、今この国では蔓延しております。
 アメリカが不況であった当時の産業再生策に学べと喧伝され、国、地方自治体はこぞってこの数年間、ベンチャービジネス育成に取り組んでまいりました。しかし、その実績は、関係者の努力にもかかわらず、新しい時代の産業と企業は十分に育っていないのが実情でありますが、私は、ここは我慢して、何としても新しい時代の産業と企業の創出のために、これまでの対策をいま一度精査して、何が問題であったのかを振り返りつつ、新しい対策に一層取り組むべきときであると考えております。
 本県の新事業の創出に関してのこれまでの取り組みは、いわて起業家大学、インキュベータールームの創設や地域共同研究の推進、工業技術センターによる指導などがあり、また、今次の対策の中でも改めてさまざまなメニューが雇用創出等のための産業支援として打ち出されておりますが、これまでの対策の結果をまず示していただき、その率直な評価と今後の改善点と目標についてお示し願います。
 私は、新しい時代の産業と企業の創出の壁になってきたと言われるものには、基本的なシーズの発掘、つまり商売の種でありますが、無論ここに問題もありますが、ベンチャー企業の資金力の弱さがボトルネックになっていることは間違いのない事実であると認識いたしております。
 例えば、ベンチャー育成のための制度的なベンチャー融資枠が設定されているものの、中小企業創造活動促進法の認定が条件となり、手続面での繁雑さや認定過程での企業秘密の漏洩を恐れるなどして、ベンチャー融資制度はこれまで十分に活用されてまいりませんでした。また、既存の制度融資に頼ろうにも、変わりつつあるものの、いまだに担保第一主義から脱却できない銀行の窓口で融資案件が却下され、資金の壁から事業が飛躍できなかったという例も伺います。
 アメリカでは、80年代初頭の不況期に、インキュベーターと呼ばれる支援機関が各地に誕生、2000年までにその数は800を超え、その間2万社以上の企業を生み出し、全米で50万人の新規雇用を創出したと言われております。
 日本では現在、インキュベーターの数は203、このうち技術やマーケティング、資金繰りなどの会社経営に伴うソフト面での問題をアドバイスするマネジャーを配置しているのはわずか97カ所です。また、地方のベンチャー企業への公的資金供給手段として期待の高かったベンチャー財団投資も、誕生から5年を経過し、その活動の先細り傾向が強まっております。
 そのような中、石川県では、国、県、地元企業がベンチャー企業への投資、育成を目的としたファンド、石川県ベンチャー育成投資事業有限責任組合を本年2月に設立、独立系の民間ベンチャーキャピタルに投資先の発掘、審査、育成を委託するという全国初の試みが注目を浴びております。
 本県の今次の対策の中では、研究開発型企業の成長を促す株式公開を促進するため、地域密着型ベンチャーファンドの新たな育成に取り組むとありますが、これまでの資金供給体制の課題をどのようにとらえ、また、石川県の実例をどのように分析して、本県の地域密着型ベンチャーファンドの創出をお考えなのかお示し願います。
 次に、本日阿部敏雄議員も福祉的就労について言及がございましたが、私は、障害者雇用に関して具体にお伺いいたします。
 知事は、9月19日の記者会見において、障害者雇用について、経済情勢の逼迫する中で一番しわ寄せを受けやすいところとの見識を示し、対策の必要性について述べております。障害者の雇用状況は、全体の雇用状況も悪化している中、一段とその雇用環境は厳しさを増しております。
 働く場がなく、また、社会参加の道も限定されていることから、家に閉じこもり状態になっている障害者が数多くおります。福祉作業所や授産施設なども県内各地にはございますが、求職者のすべてを担うほどにはなく、また、それぞれの施設も生産物の販売先の確保に困難を極め、就業者の維持すら危ぶまれているところでございます。
 そこで、他県の先進事例を引用しつつ、早急かつ新たなる対策を求めるものでありますが、神奈川県においては、障害者の雇用の促進及びその職業の安定並びに福祉的就労の促進を図ることを目的に、地域作業所や障害者を多数雇用する事業者等に対する物品などの購入の優遇措置についての要綱を定め、平成11年7月から全国に先駆けてこの事業を実施しております。その内容は、随意契約制度を活用し、指定した対象物品について、障害者雇用企業や地域作業所から積極的に購入するとしております。
 また、宮城県の浅野知事も本年6月の本会議において、来年4月からの実現について言及をしました。続いて、障害者雇用企業を優先的に取り扱う制度を山口県が本年10月1日から実施、また、兵庫県では、競争入札参加資格の格付において優遇するなど、現在全国の5都県が独自の制度を導入しております。
 本県のこれまでの取り組みである福祉作業所連絡協議会の設置による生産物の需要先拡大対策などを多としつつも、他の県の先進事例を取り入れることも含め、さらなる障害者の就労の確保、雇用の促進を求めるものでありますが、知事の御所見を伺います。
 次に、建設産業就労者の雇用対策と建設産業振興策について伺います。
 建設業は、平成11年で国内総生産の7.6%、平成12年度の就業者総数の10.1%を占める一大産業であります。また、バブル崩壊以降の景気調整過程において、政府、地方自治体の建設投資は、さまざまな効果についての議論はあるものの、平成2年から平成12年までの就業者総数増加分の約4割を建設業が吸収するなど、景気の下支えの役割を果たしたことも事実であります。
 本県においても、平成11年度で県内総生産の12.5%、平成12年度で雇用労働者の11.7%を占めるという主要産業の一つであります。しかしながら、不良債権処理の進展や公共投資の減少などにより、建設企業の倒産、リストラによる離職者の急増がかねてより懸念されておりましたが、いよいよその懸念は、残念ながら現実のものとなりつつあります。
 東京商工リサーチ盛岡支店調査の本年4月-9月の上半期の負債額1、000万円以上の県内企業倒産64件のうち25件を建設業が占め、建設産業の経営環境の厳しさが改めて浮き彫りになりました。建設企業の倒産、リストラによる離職者急増への対策は緊急的な課題であり、特定業種としては、今後最も憂慮される構造不況産業であります。
 国の動向としては、国土交通省や業界団体などがメンバーとなり、建設業雇用問題協議会を本年7月に設立し、官民挙げた当面の建設業雇用対策として9月に取りまとめを行いました。
   〔副議長退席、議長着席〕
 国土交通省の役割としては、建設業所管官庁、公共事業発注官庁としての立場から、建設業、建設業就業者の状況等の情報を広く収集・提供するとともに、新分野・新市場の育成・整備、熟練した技能等の継承・発展方策を講ずることを通して、建設業就業者のセーフティーネット構築に全力を注ぐといたしておりますが、本県の対策はどのようになっているのでしょうか。本県主要産業の一つの建設業に対する岩手県の役割を示し、雇用対策の観点から建設産業従事者の転職をどのように図るのかなど、かかる緊急的事態への対策、今後の本県における建設産業の振興についての取り組みについて、まずお示しを願います。
 次に、建設産業振興策に関して具体に伺いますのは、PFIの導入についてであります。
 建設産業振興策として、また公共事業のコスト縮減の観点からここ数年注目されているのが、周知のとおりPFI事業であります。これまでもPFIに関しては、議会においてさまざまな角度から議論がございましたが、これまでのそれぞれの答弁を踏まえ、改めてこの場で伺うものであります。
 PFI事業についての国の動向は、1999年9月にPFI法が施行以来、現行制度の使い勝手の悪さが指摘され、実際のプロジェクトは地方公共団体の34事業にとどまっております。しかし、報道によると、自民党がPFI法改正案を議員立法で本国会に提出し、PFI事業の対象となる公共施設とそれ以外の民間収益施設を同じ建物につくることを新たに認め、また、公共団体が保有する土地や建物を民間PFI事業者に貸し付けることも認める方向で、2002年度からの実施を目指しており、PFI事業の拡大が期待されております。
 他県の動向として注目されておりますのは、広島県などで病院経営やごみ処理などの公共事業に民間の資金や経営ノウハウなどを活用するPFIのガイドラインである基本指針を策定し、コスト削減や質の高い公共サービス提供を期待しており、広島県は積極的なPFI導入を進める方向であります。
 本県では、平成12年2月定例会本会議において、増田知事は、庁内関係部局から成るPFI研究会を設置し、導入可能な事業、官民の役割分担、リスク分担の明確化などを研究し、国の基本方針を踏まえて研究を深めたい旨、御答弁がございました。
 また、私の本年2月定例会予算特別委員会で、竹内当時の土木部長は、具体の事例などのケーススタディーをやるという方向で取り組んでいくことになると御答弁もございました。
 また、これまでの議会でのさまざまな質疑の答弁を検証すると、現在事業が検討されております第二クリーンセンター、バイオマス発電、そして、いわて銀河鉄道の新駅建設などに関して、PFIの導入について若干触れられた経緯もありますが、早急かつ具体の本県事業へのPFI導入の計画を、広島県のような基本指針を示すなどして対策を明らかにすべき時期であると存じますが、御所見を伺います。
 次に、私のライフワークであります産業廃棄物対策に関して伺います。
 岩手県循環型地域社会の形成に向けた制度的整備に関する研究会は、延べ7回の研究会を開催し、本県の直面する不法投棄対策に重点を置いた検討を優先し、報告書を作成いたしました。
 その報告書の中での施策の方向は、汚染関与者責任の原則に基づく制度化の試みなど、これまでの廃棄物行政には見られないものとなっており、また、今後の展望にはまことに重要な提言が数多く見られ、他県にも類を見ないその総合的かつ抜本的な提言をまとめられた関係者の努力に大いに敬意を表しつつ、私も議員としての今後の対応への重責を感じざるを得ないところでありますし、この報告書をもとにした施策が進められれば、知事の唱える環境首都の実現に、産業廃棄物の分野においては大きく近づくことは間違いないものと認識したところでございます。
 さて、この報告書を受けての県の取り組みについては、同僚の田村正彦議員から昨日質問がありましたので、私からは、緊急を要する対策に関し、そして研究会の報告書で手薄になっている事項に関して、以下それぞれ伺います。
 まず、緊急を要する対策として、不適正処理・不法投棄防止のための監視体制の強化策についてでありますが、その状況は、不適正処理指導件数は、平成10年には43件であったものが、平成12年には83件とほぼ倍増の状況です。また、不法投棄は約700カ所確認されており、緊急かつ抜本的な対策が求められております。
 本県の対応としては、不法投棄通報ネットワークの整備や関係行政機関、市町村、民間による通報体制整備を鋭意進めておりますし、資源循環推進課への警察併任職員の配置や産廃Gメンを6人から9人に増員するなど、対策の強化に努められております。
 また、北東北3県で連携した監視指導は、本年6月、空中からの監視や県境地域における合同パトロールの実施も行っているものと承知しており、その対策には敬意と感謝を申し上げる次第ですが、来年12月から厳しくなるダイオキシン排出規制に既存の産業廃棄物処理施設が十分に対応できていない現状、また、厳しい経済情勢の中で、いわば後ろ向きのコストである廃棄物処理費用について、事業者が不適正処理の誘惑に駆られるおそれなどから、より一層の不適正処理・不法投棄防止強化対策が求められております。
 そこで伺いますのは、研究会・報告書にも一部触れられてはおりますが、市町村職員に立入検査権を付与し、対策を緊急に進めてはどうかということであります。
 他県の事例でございますが、千葉県の堂本暁子知事は、本年7月4日、市町村の意向を確認した上で、担当職員に県職員を併任させ、市町村職員に現場への立入検査権を付与する方針を明らかにしたと報道がございました。関東近県では、栃木県が28市町村に立入検査権を付与しております。併任となった市町村職員は、立入検査権とともに、県職員と同じ行政指導権限が付与され、監視指導体制の強化策として、発見段階で最も必要とされる素早い対応が可能となることが期待されております。
 不適正処理や不法投棄には初期対応が非常に大切であり、県と市町村、地域住民との連携が不可欠であります。本県の対策に市町村職員への立入検査権の付与を早急に検討してはいかがでしょうか、御所見を伺います。
 次に、研究会・報告書で対策の検討が手薄になっている廃棄物の抑制等についてであります。
 研究会・報告書では、当初、廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用に関する制度設計試案の作成をも視野において検討することとしていたが、当面、本県が直面する不法投棄対策に重点を置いた検討を優先させることにして、廃棄物の抑制等に関するテーマについては基本的な考え方を示すにとどめ、細部の検討は別の機会に譲ることとしたとございます。今回の研究会の中では、時間的な制約から細部の検討はできなかったのではないかと思いますが、不法投棄対策と廃棄物の抑制等はいわばコインの表と裏の関係であり、また、適正処理と本県の循環型産業の育成の観点からも、早急に総合的対策についても報告をまとめていただきたいと強く願うものでありますが、今後の予定と検討内容について伺います。
 次に、警察行政に関して、メール110番の設置と分離式信号の導入について以下伺います。
 まず、メール110番の設置についてでありますが、現在、全国の道府県警の先進事例にメール110番の設置があり、北海道、大阪府、また東北では秋田県、宮城県など10道府県警で導入済みでございます。
 これは、言葉や耳の不自由な人のための電子メールを使った緊急通報システムでありますが、従来の対策はファクスによる通信方法だけであったものを、電子メール機能を備えた携帯電話が普及したことから、通信手段の多様化に対応し、言葉や聴覚などに障害がある人たちが緊急通報する際の利便性を確保することを期待し各都道府県が導入しているものであり、本県においても導入を前向きに検討すべき課題であると私は認識しております。
 システムの概要は、通信指令室の110番受理台にパソコン端末を設置、緊急通報のメールが着信した場合、パトライト(灯火)が点滅し、ブザーが作動。職員は通報者に返信メールを送り、事案や発生現場など必要な事項を質問する仕組みであります。既に導入している道府県の稼働状況を見るとさまざまな課題も散見されますが、本県警察本部としては、この動向に関してどのように認識し、今後の施策展開をお考えであるのか、御所見を伺います。
 最後に、歩行者と車を分け、歩行者の安全を図る分離式信号の導入について伺います。
 青信号で横断歩道を渡っていても、右左折する車に巻き込まれてはねられるという事故をなくすために、右左折車に我が子を奪われた遺族や交差点の改善を求めるPTAなどから、歩行者が安全に横断できるシステムを早く広めてほしいとの声が全国で相次いでおりました。
 これを受けて、警察庁の外郭団体、日本交通管理技術協会が昨年10月に発足させた横断歩行者の安全確保のための調査研究委員会が本年7月にまとめた調査報告書では、歩車分離式信号は、歩行者の安全確保のために有力な手段ではあるが、現在は車の円滑な流れへの影響などから例外的にしか採用されていないと指摘。導入には道路構造や交通量を考慮した基準の策定が必要といたしました。その上で、幅員が13メートル以上の道路で構成される大規模交差点と、それ未満の中小規模交差点に分け、設置の方法の具体策を示しました。
 また、警察庁は本年9月21日、分離式信号を車線分離方式7カ所、一部分離方式50カ所、スクランブル方式43カ所の3方式により、各都道府県に1から5カ所設置し、全国で100カ所を来年1月から半年間試験的に運用し、設置の効果を分析した上、2003年以降に今後の運用方針を決め本格展開することを決めました。
 一部の都道府県警察では、この方針が示される以前から、思いやり信号と名付けるなどした分離式信号を設置してきたところであると伺っておりますが、全国ではこれまで分離式信号は約1、500カ所程度であります。本県における既設の信号機のうち何基が分離式信号であるのか、その現状と警察庁の方針に従う本県での対策はどのようになるのかお知らせを願います。
 以上で私の質問を終わりますが、前向きな御答弁を期待いたします。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 及川敦議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新事業の創出についてですが、地域経済を活性化して、新たな雇用を創出していくためには、創造的な事業活動を目指す起業家を育成したり、独自の技術を有する競争力のあるベンチャー企業を創出していくことが重要であると考えております。
 このため、今まで県が行ってまいりました対策でございますけれども、創業支援ということで、平成7年にいわて起業家大学というものを開設いたしました。これは全国でも早いものでございましたが、この起業家大学を開設して、これまでに52名の創業者を育成してまいりました。さらに、延べ46社のインキュベータ入居企業に対しまして、研究開発から事業化までの一貫した支援を行ってきたところでございます。また、ベンチャー企業の研究開発支援ということでは、これは国の法律で中小企業創造活動促進法というものがございますが、これにのっとってこれまで延べ106件の研究開発等事業計画を認定して、それに対して助成を行ってまいりましたし、県内企業や岩手大学などとの連携によりまして、延べ99件の産学共同研究を支援してきたところでございます。特にINSのネットワークを使った支援は岩手大学中心に行ってまいりましたけれども、地方の国立大学としてはトップクラスの実績を上げてきたと、岩手大学の方でも本当に主体的に取り組んでいただいてきたと考えております。
 こうしたことの結果として、特定分野のソフト開発で──福祉の分野ですが──全国のトップシェアを誇る企業が出てまいりましたり、独創的な製品開発を行っている企業などが育ってきてはおりますけれども、一方で客観的に見ますと、やはりベンチャー企業の広がりや蓄積という点ではまだまだ不十分でございまして、今後は一つでも成功事例を多くつくっていくということ、一つ一つ、一つでも多くそうした成功事例を多くつくっていきまして、新事業の集積を高めていくことが重要であるというふうに思いますし、やはり企業を起こしても最終的には株式公開というところ、投資家に対して利益をしっかり配当するところまでそうしたベンチャー企業も育てていかなければならないと思っております。そこで、先ほど議員の方からは石川県での例などもお話しがあったわけでございますが、本県でも成長を目指す意欲的なベンチャー企業に対して、マーケティング支援や経営支援など、研究開発後のフォローアップを重視した施策を展開するとともに、公認会計士や投資家などアドバイザーによる株式公開の支援や、ベンチャー企業の育成に重点を置いた地元資本中心の地域密着型ベンチャーファンドの組成について、現在検討を進めているところでございます。
 次に、障害者雇用対策についてのお尋ねでございますが、まず障害者が住みなれた地域におきまして、自立して生活をしていくというためには、何としても就労の場を確保するということが重要でございます。しかし、近年、雇用情勢が厳しさを増す中で、特に障害者の就労の場の確保については、一段と厳しい状況に置かれているというのは、今の議員のお話のとおりでございまして、こうしたことについてはやはり行政の積極的な支援というものが不可欠であると認識をしています。県では、今まで授産施設や障害者福祉作業所などの福祉的就労の場の拡充に努めてまいりましたし、そうした場があってもその中の活動の活性化を図る必要がございますので、障害者作業所連絡協議会というものをつくって、そこを通じた販売ルートの開拓などの取り組みを支援してきたわけでございます。また、本年度からは授産施設についても、活性化に向けた指針の策定や販路の拡大を支援することとしたところでございます。また、障害者の一般雇用を促進する必要がございますので、そちらの方の点につきましては、障害者集団面接会の開催や職場適応訓練などの実施のほか、これは岩手労働局など関係する国の方の機関などもございますので、そうした関係機関、団体と連携して障害者雇用に関する広報、啓発などを行ってきたところでございます。
 さらに、障害者を実際に雇用している事業者などへの配慮が当然必要になりますので、そちらについては新しく来年度から物品購入等競争入札参加資格の審査に当たりまして、障害者の法定雇用率を達成している企業などに対しましては、例の等級別の格付があるわけでございますが、新たに等級別格付においてそれをプラスで評価をするということにしたところでございます。
 今後も、岩手県障害者プランなどに基づきまして、地域における生活から就労に至るまでの総合的な相談、コーディネート体制や職場定着に向けた支援体制の構築など、今お話しありました障害者の就労促進が図られるように、必要な施策を展開してまいりたいと考えております。
 それから、建設産業の振興についてのお尋ねでございますが、我が国の建設産業と言いますのは、今後、金融機関の不良債権処理の進展や、また、来年度公共事業の予算が10%カットと、こういうことが予定されてございます。公共投資の減少に伴う市場の縮小ということがございますので、やはり全体としては雇用過剰となることが想定をされるわけでございます。とりわけ、岩手などのような地域におきましては、建設産業が主要産業の一つでございますので、建設産業における雇用の確保、円滑な労働移動が行われるかどうかというのは、これはもう建設産業の分野のみならず地域経済に大きな影響を及ぼすものと考えております。また、こうした岩手などのような状況を有している地域というのは、実は全国にも非常に多くあるというふうに考えられます。こうしたことで、この問題というのはやはり国全体で取り組むべき問題であるということから国の方で健全な建設産業の発展のために、リフォーム・リニューアル、それから環境等の新分野、新市場に進出する建設企業や、進出のための環境整備を行う業界団体に対する支援方策の検討を行うことなどを、当面の建設業雇用対策として打ち出しているところでございます。これは国の方でこうした分野に新たに進出をしていく関係について支援をするということで先般打ち出したものでございます。
 また、それを実行するために、このたびの国の補正予算でも、建設業関連団体の行う中小建設業の経営基盤の強化や企業連携、新分野への進出等に関する研修事業、それから経営支援システム開発等のシステム構築事業、新分野、新事業調査事業などに国が補助する制度を創設してございます。建設業経営革新緊急促進事業というふうに呼んでいるようでございますが、これを実施することとしてございます。先般の国の補正予算にこういったことが盛り込まれております。
 県では、こうした国の施策の展開に呼応しながら、岩手県総合雇用対策に掲げた、建設業を含む中小企業に対する経営革新の支援や、雇用主に対する雇用助成金などの制度の周知徹底を図るなどセーフティーネットを充実するとともに、離転職者に対する職業訓練の実施、それから中山間地域における水源涵養機能の充実など、いわゆる最近、緑の公共事業というふうに呼ばれておりますが、こうした事業の展開を図っていく。それから、良質な社会資本をより有効に活用するための維持管理業務というものが今後増大をしていきますので、こうした維持管理部門の業務の拡充など、労働移動の円滑化を図っていきたいと、今こういうことを県では考えてございます。
 また、今後の建設産業の振興につきましては、県の方で新いわて建設業振興指針フォローアップ委員会というものをつくっておりまして、そこの場で現在、次の三つの重点事項について研究をしております。まず、1点目が技術と経営にすぐれた企業が伸びることのできる入札契約制度、それから二つ目が企業連携の推進方策、それから三つ目が高度情報化への対応と、この三つの重点事項について研究をしておりますので、その研究成果も今後の施策展開につなげていきたいと、そして労働移動をも視野に入れた建設業の構造改善や、新たな雇用機会の創出に資するなど、建設産業の一層の振興に努めてまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔商工労働観光部長鈴木清紀君登壇〕

〇商工労働観光部長(鈴木清紀君) まず、コールセンターの誘致についてでありますが、コールセンターは、顧客からの問い合わせや注文などを電話や電子メールで受け付けるマーケティングビジネスとして、近年、保険、証券、銀行などにおきまして、その需要が拡大してきておりますが、一方において、首都圏での人材確保が難しくなってきていること、情報システムの高度化、さらには通信費の低減などを背景といたしまして、コールセンターの地方展開の動きが活発化しつつあります。
 このような中で、県におきましても、コールセンターの雇用吸収力が大きく、また、周辺への情報通信関連企業の集積も期待できますことから、その誘致に向けまして、必要とされるオフィスの形態やオペレーターの確保、他県への進出事例など企業のニーズの把握とともに、他県の優遇制度、本県への受け入れ環境などにつきまして情報収集、さらには、沖縄県の事例調査など、本県への展開可能性について、その動向把握に努めているところであります。現在、首都圏でコールセンターを運営する複数の企業からは、具体的な照会もありますことから、受け皿としてのオフィスの確保や人材確保の問題などにつきまして、企業のニーズにこたえられるよう検討を進めているところであり、また、関係市町村とも連携しながら、コールセンターの誘致に向けた支援策についても鋭意検討しているところであります。
 次に、ベンチャー企業についてでありますが、ベンチャー企業は、一般的に信用力や担保力が乏しく、融資制度だけでは十分に事業資金を調達できない、そのような状況にありますことから、県では、中小企業創造活動促進法に基づきまして、財団法人いわて産業振興センターに基金を造成する形でベンチャー企業に対する投資制度を創設いたしまして、これまで民間ベンチャーキャピタルを通じて、県内ベンチャー企業4社へ総額3億円余の投資を行ってきたところであります。しかしながら、多数の成長企業が集積する首都圏などと違いまして、本県におきましては、単に投資を行うだけではなく、その後の育成や支援をあわせて行うことが企業を成長させる上で不可欠と考えておりますが、一方で、現制度でのもとでの民間ベンチャーキャピタルは、首都圏に重点を置いた投資展開を行っておりますことから、地域ベンチャーに対する資金供給や株式公開に向けた経営支援機能を十分に果たし得ない状況になっていることも事実であります。
 このような中で、石川県におきましては、県初め地元の金融機関や企業などが約15億円を出資しまして石川県ベンチャー投資事業有限責任組合──投資ファンドですが、これを創設いたしまして、経験とノウハウを有する民間ベンチャーキャピタルが、ベンチャー企業への単なる資金供給にはとどまらないで、企業の育成に重点を置いたファンドの運用に当たっているところでありまして、先駆け的な取り組みと評価しているところであります。県におきましても、現在、石川県などの先進事例の調査なども行っておりますし、これら調査結果などをもとにいたしまして、大学教員あるいは投資家など専門家との意見交換をしながら、目下のところ本県の実情に合ったベンチャーファンドの組成のあり方など、種々検討を進めているところであります。
   〔県土整備部長竹内重徳君登壇〕

〇県土整備部長(竹内重徳君) PFIに対する取り組みについてでありますが、平成11年のいわゆるPFI法の施行後、これまで地方公共団体におきましては、全国でPFI事業として34のプロジェクトの実施方針が策定、公表されておりますが、このうちPFI事業として実施されているのは現在10件のプロジェクトにとどまっております。このようにその活用が円滑に進んでいない状況もありまして、政府・与党におきましては、公共施設と民営施設の合築などによる複合施設についても、PFI事業として認めるなどの制度の見直し案を取りまとめまして、景気対策としての都市再生事業にPFI事業を積極活用する方針を打ち出しておりますことは御案内のとおりであります。
 県におきましては、昨年、PFIの導入の可能性について研究するために、関係部局からなるPFI研究会を設置いたしまして、セミナーへの参加、先進県の視察等による事例研究、それから他県のPFI事業の導入事例の収集など、PFIに関係する資料の収集やその分析を進めてまいっております。
 本県におけるPFI事業の実施に向けた今後の取り組みについてでございますが、御指摘のように、まずPFI事業の推進体制や、導入に当たっての留意事項などを定める基本方針を策定することが必要であるというふうに考えております。今後、庁内各部局が連携して、この基本方針の策定に取り組む体制を整備いたしますとともに、PFI事業として可能な事業の選定やVFM評価、これは公共事業と民間事業のコストあるいはサービス効果の相対比較を評価、そういったことを行うものですが、これらの検討に入れるようにさらに検討を進めてまいりたいと考えております。
   〔環境生活部長時澤忠君登壇〕

〇環境生活部長(時澤忠君) 産業廃棄物対策についてでありますが、頻発している産業廃棄物の不法投棄事案に適切に対処し、未然防止を図るとともに、さらに、廃棄物の発生そのものを抑制し、限りある資源を有効に活用する循環型の地域社会を形成していくためには、これまでの規制的手法だけにとどまらず、経済的な市場原理を踏まえた手法の導入など、さまざまな政策手段を複合的に活用していくことが必要であると認識をしております。
 このような認識に立ちまして、まず御提言のありました市町村職員への産業廃棄物処理施設等に対する立入検査権の付与についてでありますが、県民に最も身近な行政主体であります市町村の職員が産業廃棄物に関する業務に関与することにより、県、市町村、県民がこれまで以上に監視の目を光らせることとなりまして、不適正処理に関する連絡通報体制の強化、初期における監視指導の徹底に寄与するものと考えております。また、一般廃棄物を所管する市町村の職員に産業廃棄物処理施設等への立ち入り権限を付与することによりまして、産業廃棄物と一般廃棄物の垣根を超えて、県と市町村が現場での連携を強化することにもなるわけでありますので、廃棄物行政上、極めて有効な方策であると考えております。このことから、県といたしましても、現在、その導入可能性を検討しているところでありまして、他県の例も踏まえまして、市町村職員の県職員への併任など、具体の方策について関係部局及び市町村と調整してまいりたいと考えております。
 また、廃棄物の発生抑制対策につきましては、研究会報告書におきまして、産業廃棄物の排出事業者が作成する処理計画の実効性を確保するための計画策定に当たっての県の指導、助言、一般廃棄物の発生抑制に関する計画策定への住民参加の促進、さらには、産業廃棄物の発生抑制、リサイクル促進のための税制度の活用など、計画策定的な手法、経済的手法などさまざまな手法を導入することが望ましいというふうな、基本的な方向性が提示されているわけであります。現在、この方向性に従いまして、10月に設置をいたしました循環型地域社会の形成に関する条例整備懇談会において検討が始められておりまして、今年度中に予定されております懇談会の答申において具体的検討結果が示されるものと考えております。県といたしましては、懇談会からの答申を得た上で、施策化に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔警察本部長出原健三君登壇〕

〇警察本部長(出原健三君) まず、メール110番に対する認識と今後の考え方についてお答えいたします。
 県警察では、言葉や耳の不自由な方からの緊急通報システムとして、現在、ファックス110番を開設しておりますが、ファクスが設置されていない場所では利用できないといった制約もありますので、どこからでも通報できるバリアフリーな緊急通報手段として、メール110番は有用であると認識しております。導入につきましては、メール110番通報の確実な受信と迅速な対応を図るためのシステムの構成や、いたずらメールの防止を含めたメールアドレス運用対策などの問題点を踏まえつつ、現在、平成15年11月の運用開始を目途に進めております新通信指令システム整備事業に合わせて整備する方向で検討してまいりたいと考えております。
 次に、歩車分離式信号についてお答えいたします。
 歩車分離式信号は、歩行者と車両の通行を時間的に分離するもので、車両の円滑性に影響を与える可能性はあるものの、歩行者の安全確保のための有力な手法の一つと認識しております。歩行者と車両の通行を時間的に分離する方式としましては、車線単位に車両通行権を与え完全に分離する車線分離方式、交差点の危険な横断歩道のみを一部分離する通行権分離方式や歩行者と車両を完全分離するいわゆるスクランブル方式があり、現在、県内では盛岡市の菜園交差点1カ所でいわゆるスクランブル方式による歩車分離の運用を行っております。このたび警察庁において、全国で100交差点を抽出して、先ほど申し上げました3方式の歩車分離式信号のモデル運用を行うこととしていることから、県警察におきましても、歩行者と右左折車両の事故が多く発生している、または通学路等が付近に存在するなどのため事故防止の観点から歩車分離の要望がある交差点や、歩行者数が多く歩車分離した方が交通の円滑に資すると考えられる交差点等の中から、より大きな効果の期待できる交差点を2カ所程度選定しモデル運用を行うこととしており、これに分析及び評価を加え、今後の交通安全施設等整備に生かしてまいりたいと考えております。
   

〇議長(谷藤裕明君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時34分 散 会


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