平成14年2月定例会 第13回岩手県議会定例会会議録

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〇48番(菊池雄光君) 菊池雄光でございます。
 質問に先立ちまして、社会民主党県議団を代表いたしまして、私の同期でありました吉田秀議員の御冥福をお祈りいたします。
 まず第1に、自立、公正、平等を目指す地方の時代におけるグローバリゼーションはどのようにあるべきかという問題について伺います。
 知事は昨年12月議会に、国のあり方と世界観について議員の質問に答え、経済や文化のボーダーレス化、グローバル化は避けることのできない時代の趨勢ではあるが、地球で共生しているという地球市民の意義に立って、国際協調のもと、対話と交流により世界平和に貢献することが最も肝要なことであるとして、アフガン問題などについても、関係国が対等な立場で発言し、行動することが大切であると述べております。私どももこの知事の考えに賛成でございます。
 しかし、残念ながら現在のグローバリゼーションのあり方は、知事が言うように対等に発言し、行動できる立場になっておりません。昨年9月11日に米国の世界貿易センタービルや国防総省等に同時多発テロが発生し、多数の犠牲者が出ました。私どもは、いかなる理由があろうとも、このような無差別テロは許されない、この行為を憎み、テロリズムの根絶を目指すものでありますが、米国のブッシュ大統領は、早速これは新しい戦争であると称してアフガンに無差別な爆撃を行い、子供や老人など無垢な国民を犠牲にしました。テロリズムは、国際的にも戦争ではなく犯罪であります。あくまでも犯罪を防ぐ枠組みの中で処理されるべきであります。そして、この戦争に、我が国は第二次大戦後初めて自衛隊を海外派遣することを国会で可決し、アフガン周辺に派遣しました。まことに遺憾であります。
 また、米国は、1997年の気候変動枠組み条約(京都議定書)に賛同しながら、昨年11月、この条約から離脱しました。地球温暖化の原因となっているCO、世界の先進国で約40%という最大量を排出している米国が離脱するということは大きい問題でございます。また、昨年末米国は、1972年、旧ソ連と結んだ弾道弾迎撃ミサイルABM制限条約から一方的に脱退することを関係国に通告いたしました。自国に都合がよくないからということで長年の努力によって築いた枠組みを一方的につぶすということは、大国の力を背景にした身勝手な行動と言わざるを得ません。とても対等な立場で物を言うとか行動するということにはなっておりません。
 このように、今、アメリカは、世界新秩序の中で唯一の主権国家として振る舞っております。このようなグローバリゼーションは、地方分権や地方の時代と逆行するあり方ではないでしょうか。知事の所見を伺います。
 次に、経済・雇用問題について伺います。
 私は、昨年の一般質問で、前世紀末の10年、1990年代は日本経済にとって失われた10年であると言いました。その以降においても経済の下降局面はより悪化し、銀行の不良債権処理も進まず、金融恐慌に発展するおそれがあります。そして、この不良債権の処理をめぐって、中小企業等のリストラ、倒産を増大させ、高失業の時代を迎えております。政府は、十分なセーフティーネットによって事業者の救済や失業者の仕事を創設すると言いますが、倒産や失業者は日増しに増大するだけであります。
 最近、財務省盛岡財務事務所などが県内の経済情勢を発表しておりますが、いずれも一層厳しさを増しているとなっております。まず、この国内、県内の経済情勢について県当局はどのような認識を持っているのか、また、このような厳しい経済情勢のもとで、生き残りをかける本県中小企業に対しどのような支援を行っていくのかあわせて伺います。
 次に、最大の課題である雇用問題について質問いたします。
 県も雇用問題を当面する最大の課題として取り組んでおりますが、率直に申し上げまして、意気込みの割に実質的な効果が上がっておりません。これは、県、市町村も限界であると思いますが、昨年12月県議会で成立した県単を含む緊急地域雇用創出特別基金の活用状況を見ましても、市町村事業や農林水産部の県単事業も、実人数、延べ人数ともばらまきの域を出ないと評価せざるを得ません。そして、ほとんど短期雇用でございます。しかし、これらのうち、教育委員会所管の非常勤職員や就職支援相談員配置事業は適切な雇用対策事業であると思いますので、来年度も実人員を増加させ、ぜひ継続して内容を充実していただきたいと思いますが、いかがですか。
 雇用対策を県や市町村で実効のあるものとするためには、医療とか福祉、環境、教育などの分野で、画一的な人減らしをしないで適切な要員を充実させることが第1の課題であります。例えば、環境、福祉の分野で、ここ数年間に廃棄物処理処分のためだけでも五つの個別法令が改正されております。いずれも要員を補充しなければなりません。健康危機管理機能の強化のため法律制度が改正され、ここでも専門職員や要員を増加しなければなりませんし、教育現場も、学校5日制の実現、小規模学級の増加や教育環境の悪化で教職員を増加させなければなりません。しかし、今までは、毎年のように行政改革とか適正化計画によって職員が画一的に削減されてきました。これを適正に補充するとなると、かなりの雇用を生み出すことができます。
 よく公務員の人件費はむだな経費であるようなことを言う人がおりますが、国民の健康や生活をよくするために必要な経費であります。先進国では、日本は最も低い水準にあります。1998年の総務省の統計によりますと、国民1、000人当たり我が国の公務員は36人で、米国は67人、英国が76人ですから、我が国は約2分の1です。フランスは87人ですから、約5分の2であります。失業者をどんどんふやすより、環境や福祉、教育をよくして失業者を少なくすることを実現するべきではないでしょうか。
 次に、雇用といえば誘致企業、そのために工業団地の造成あるいはインフラストラクチャー、社会資本の整備が進められてきました。確かにそのことも必要ですが、最近、矢巾町のアイワの工場閉鎖問題、玉山村のアルプス電気の工場閉鎖問題などを見ますと、会社はまことに身勝手であります。
 私ども釜石地方では、1970年代後半から鉄鋼産業のいわゆる民族の大移動と言われる大合理化があって、釜石から何千人もの労働者が新製鉄所に移転させられた時代を経験しております。市民と労働組合などの反対運動によって、新日鉄は鉄鋼にかわる新規事業を誘致するという労使合意によって、不十分ではありましたが、今、釜鉄の跡地にいろいろな企業を誘致し、約4、000人の労働者が働いております。もちろん合理化以前から見ますと人口も激減しましたが、企業は一定の社会的責任は果たしていると思います。
 これからの企業誘致は、その企業の進出のため税金を使ったり減税をするのではなく、市民とともに対等、平等の立場に立って企業の社会的責任を全うする企業を誘致すべきであると思いますが、いかがですか。
 次に、地方分権と税財源移譲について伺います。
 地方分権は、昨年6月14日、地方分権推進委員会の最終報告が出され、国と地方の事務事業の見直しなどは整いましたが、重要な税財源移譲の問題は、昨年7月3日に発足した地方分権改革推進会議にゆだねられました。最近の情報によりますと、この会議は当初秋ごろをめどに国から地方への税財源移譲についての意見をまとめるとしておったものを、6月をめどに議論を前倒ししたということであります。その理由は、小泉総理が政府の各機関に抜本的な税制改革を指示したことで審議開始の時期を早めざるを得なくなったということで、あくまでも国の財政が重点で、先で、地方はこれに従えということであります。
 また、現在の地方分権改革推進会議の前身である地方分権推進委員会が昨年6月にまとめた最終報告では、国税である所得税の一部を地方税の個人住民税に移しかえたり、消費税のうち地方への配分額をふやしたり、地方税収を増額し地方交付税や補助金を削減し、地方の自立を促すと言っております。このような考え方をベースに税財源移譲を行いますと、人口の多い都市圏に税源が集中し、地方圏は減収いたします。
 私は、平成12年の2月議会の一般質問でも申し上げましたが、岩手県民が平成9年度に納めた国税は2、700億円、県市町村民税は2、800億円、合計5、500億円余であります。つまり、県民の担税力はこれくらいしかございません。これに対し、県及び県内市町村全部の投資的経費、経常経費に使われる金は約1兆5、600億余円でございます。この構造は今も変わっておりません。
 県と市町村は、国税と地方税の約3倍を行政経費として投入してきました。その不足の財源は、補助金もありますが、一定のルールで算定された税制調整財源である地方交付税であります。この制度の基となったシャウプ税制は、当初は地方財政平衡交付金と言いましたが、それが現在地方交付税として、地方自治体の共有の固有財源として、補助金のように使途を制約されることもなく、一般財源として、本県のような場合、大きいウエートを持つ財源として活用されてきました。この財源を削減して独立した新税を地方税としてふやすとしても、本県のような場合、それは微々たるものではないでしょうか。
   〔副議長退席、議長着席〕
 政府の経済閣僚も交付税の減額を示唆し、地方分権改革推進会議も交付税減額が主流となってきているようでありますし、東京都など人口、経済の集中している都府県も地方新税を主張しているようでありますが、知事は、岩手のような多くの地方圏の立場から、現実に歳入が保障され、財政運営の自主性と財政構造の弾力性が確保できる地方交付税制度を地方分権以降の主力税財源として充実させることを戦略としてその実現に努力すべきであると思いますが、いかがですか。
 次に、最近、財政金融の危機がさらに深まってきております。デフレスパイラル、トリプル安、国民の多くは、この横文字や内容に余り深い関心を持っておらないようであります。しかし、事によっては、郵便貯金も銀行預金も、生命保険、年金のように勤労の汗と油で積み立てられてきた給付金も吹っ飛んでしまうおそれがあります。
 私は、昨年2月議会で、膨大になってきている国債、地方債の残高はあわせて642兆円になりますが、これは支払うことができないのではないかと言いました。もちろんこれは県や知事の責任ではございませんが、為政者の意識、認識の問題でございます。小泉総理は、単年度30兆円以上は借金しないと公約しました。30兆円といえども我が国の国債としては大きいウエートを占めております。そして、この新規国債だけではなく、約70兆円の借換債の存在があります。何よりも今年度末の借金残高675兆円という膨大なものをどうするのか、こういう問題があります。
 我が国は、1990年代の初めまで先進国の中で財政が健全な国に数えられておりましたが、今は先進国で最悪の国となっております。現在、国際的に国の財政の健全性を判断する尺度として、マーストリヒト条約により、EU──ヨーロッパ連合──が通貨統合のためにつくった財政の条件があります。これによりますと、国と地方の財政赤字がGDP──国内総生産──の3%を超えないこと、累積債務はGDPの60%を超えないこととなっております。これらを超えていると国際的に不健全な財政と判断されます。2001年のベースで見ますと、先進国の中でイギリス、カナダが財政黒字国で、アメリカはGDP比マイナス1%、イタリアはマイナス1.4%、フランスはマイナス1.5%、ドイツはマイナス2.5%ですが、我が国はマイナス7%と先進国で断トツ最悪でございます。累積債務はGDPの60%を超えると不健全だと言われておりますが、我が国は実に134.8%、これも断トツであります。
 なぜこんなになったのか。それは、1993年、宮沢内閣以来、景気対策の名のもとに130兆円に及ぶ財政出動が行われたからでございます。これはもちろん県の責任ではありませんが、県民に対し、正しい国と地方の財政の現状を知らせる責務があると思いますので、そういう立場から所見を伺います。
 県は、公債費に対する交付税措置に対して、例えば平成13年度当初予算ベースで、公債費は1、221億余円あるけれども、これに対する交付税算入額、つまり後年度半分は交付税で国が見てやるという額は651億円余で53.4%あると言います。また、累積債務残高に対しても算入額は示されております。しかし、昭和50年代の後半、交付税特別会計からの借り入れに対し、国と地方がそれぞれに負担をするという方式が、国の事情で変更されたときがありました。ほごになったことがございます。つまり、県の地方債の約半分は国が支払うというのは、今のような国の経済情勢、財政事情が続く中で守られるのだろうかという心配があります。県の借金は、公営企業金融公庫資金とか、さらに縁故債などで県の責任で必ず支払わなければなりません。県の借金の元利は支払いのときに交付税に算入するというのは約束、予定額ではありますが、国の財政事情によって、あるいは制度の改正によって事実上ほごにされるおそれがあるのではないでしょうか。
 次に、農政の基本的な問題について知事にお伺いいたします。
 我が国の農政は、昭和36年に制定された農業基本法を中心に進められてきました。この基本法は、構造政策が戦略的な位置を占め、生産基盤整備とか規模拡大が進められてきました。しかし、結果的にはその主要指標はほとんど達成されず、2000年の農林業センサスの結果概要を見ますと、4ヘクタール以上層の伸び率は、1990年から95年で22%が95年から2000年で13%に半減いたしました。ビジネスサイズで見ますと、50万円以上の販売農家が軒並み減っております。そして、1、000万円以上の販売層が前5年に23%ふえたものが今回は10%の減となり、30アール以上耕作の販売なし農家が11%もふえました。本県もこのような趨勢はほとんど同じであります。このような販売農家から自給的農家への転出とビジネスサイズの縮小がWTO体制下の日本農業の変化の特徴ではないでしょうか。県では、平成11年度に農業・農村基本計画を策定していますが、こうした厳しい状況のもとでは主要指標の達成は困難ではないでしょうか。
 そこで、県では、この計画の目標の実現に向けてどのような取り組みをしようとしているのか伺います。このような今までの農業計画の結果を徹底的に総括をしないで美辞麗句を並べて指標を立てても、農家や農民はますます乖離するだけではないかと思いますが、いかがですか。
 次に、林業問題について伺います。
 県の包括外部監査人は、2月20日、知事に報告書を提出したようですが、この報告の中に、多額の債務を抱える県有林事業特別会計及び県の出資等法人である社団法人岩手県林業公社の経営をこのまま継続させると、県財政、ひいては県民の負担になるので、早急に何らかの対策を講ずるべきである、こういうふうに指摘があったと報じられております。私は、平成10年の予算特別委員会、そして昨年10月3日の農林水産委員会でもこの問題を取り上げましたが、平成12年度県有林特別会計の地方債残高は502億円もあります。これは、この会計の平成13年度当初予算が40億円ですから、単年度収支の約13倍に当たるわけでございます。そして、この年度の元利償還金は25億4、000万円余で、歳出総額の63%であり、この借金の支払いを含め、一般会計から約20億円繰り入れられております。また、林業公社の主たる財源である農林漁業金融公庫の借入金は、県の債務保証で借り入れられております。そして、平成11年度から特別会計の主たる業務である分収造林は、全面的に公社に業務を委託しております。
 私は、この林業振興のための事業は、森林の多面的な機能を拡大させるためにも、また、分収造林という相手方もありますから継続しなければならないと思いますが、しかし、そのために二つの組織は必要がないと思います。現在、38の都道府県に41の林業公社があるそうですが、つまり19県には公社はありません。なぜこのような組織をつくったのか私にはわかりません。役人の天下りのためだと言う人もおります。県はこの際、組織を一本化して合理的な運用を図るべきであると思いますが、いかがですか。
 第2に、現状の木材需給の状況から、針葉樹の造林は大幅に縮小すべきであると思います。広大な岩手の山林で、これから育てる樹種は広葉樹ではないでしょうか。撫育に余り金もかかりませんし、多面的な機能を充足します。岩手ではこの広葉樹を多面的に利活用する研究開発に力を入れるべきであると思いますが、いかがですか。
 最後に、早池峰国定公園計画の再検討について伺います。
 昭和48年に出された国立公園計画の再検討についてという国の通知があります。これによりますと、公園計画の再検討は、昭和48年度から5カ年間に全国立公園について再検討を終了することを目途とし、その後5年ごとに再点検を行うとあり、国定公園についても、本要領に準じて各公園ごとの関係府県と相互に協調して検討の上、環境庁と連絡を図りながら所要の事務を進めるようにとあります。
 早池峰国定公園の国定公園指定は昭和57年で、今日まで20年を経過しております。しかし、20年もの間、公園計画の再検討が行われていないようでありますが、その理由はどういうことなのでしょうか。
 また、この公園指定の際、附帯意見のようなものがあったと聞きますが、それは当然再検討の課題になっていいはずでありますが、いかがでしょうか。
 以上、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 菊池雄光議員の御質問にお答えいたします。
 まず、地方の時代とグローバリゼーションのあり方についてのお尋ねでございますが、グローバリゼーションが急速に進みまして、地球レベルでの相互連関が深まる中で、国家、文明間の衝突や市場の過度の不安定化、寡占化などが顕在化してきておりまして、こうしたグローバリゼーションのいわゆる負の側面があることは事実でございます。特にも、いわゆるCOの削減についての京都議定書からの離脱や弾道弾迎撃ミサイル制限条約の破棄、さらには、いわゆるCTBT──包括的核実験禁止条約の批准拒否など、近年のアメリカの自国中心主義への傾斜とともに、グローバリゼーションが世界のアメリカ化とでも言うべき方向に向かいつつある状況には、私も懸念を抱いているところでございます。
 私は、真のグローバリゼーションは、特定の価値観のみに基づいて地球規模の同質化を進めるものではなくて、それぞれの国や地域、さらには、一人一人が地球的視野に立って、お互いの多様性や文化的な差異を認め、世界の人々と共生をしていくという考え方に基づいて、個や地域を──個人の個ですが──基礎とした参画と連携が地球規模で広がっていくべきものであると、このように考えております。こうしたグローバリゼーションの進展を促して、その機会を最大限に生かしていくためには、我が国は、世界の多様性を肯定的にとらえ、国際協調を重視しつつ、特定の国の利益のみに追随をしない、健全な競争的共存を可能とする世界基準の形成に向けて主体的に取り組んでいくことが重要であると考えております。
 また、地方におきましては、一人一人が地球市民としての意識を持ちつつ、それぞれの地域が自立的な主体となって世界にネットワークを形成していくとともに、グローバリゼーションによって拡大するさまざまなフロンティアにおきまして、個性と知恵を発揮しながら果敢に挑戦していくことができるよう、個性豊かな人づくりと、魅力ある地域づくりを進めていくことが重要であると考えております。
 次に、地方税財源の充実についてでございますが、本格的な地方分権社会を構築していくためには、地方公共団体がみずからの発想によって地域の実態や現場に即した独自の施策を展開していくことが可能となるように、地方税財源を充実強化していくことが必要でございまして、私は、基本的には、地方の歳出規模と地方税収との乖離を縮小して、県民の受益と負担との対応関係を明確にしていくことが肝要であると考えております。このためには、まず、国から地方への税源の移譲を進めて、税源の地域による偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系を構築していくことが必要でございまして、具体的には、消費税の一部を地方消費税に組みかえることや、所得税の一部を個人住民税に振りかえることなどについて検討をするほか、自主課税の観点から、北東北3県共同による産業廃棄物税などの新税についても、導入を進める必要があると考えております。
 また、これとあわせて、国庫支出金については、真に必要なものに限定して整理合理化を進めて、一般財源への振りかえや、包括交付金化、統合補助金化を進めていくべきであると考えております。
 次に、地方交付税制度でございますが、税財源の移譲が進められた場合であっても、税源の偏在による財政力の地域格差はなおも生ずることが見込まれますので、財政調整と財源保障の機能を担っております地方交付税のようなシステムは、今後とも地方税財政の制度として必要なものというふうに思っておりまして、国の関与の少ない、より自立性の高い制度としての財政調整システムのあり方についても模索していく必要があるものと考えております。このような地方分権を担う、あるべき地方税財政制度を実現していくためには、国と地方が同じテーブルに着いて議論をしていくことが不可欠でございますので、今後の国の構造改革の動向を注視しながら、地方から積極的に提言をしてまいりたいと考えております。
 次に、農業・農村基本計画の目標実現に向けた取り組みについてでございますが、農業・農村基本計画は、本県の農業、農村の振興方策として、経営能力にすぐれた主業型農家の育成を第一に、作目再編による産地の形成、効率の高い地域営農の確立などの基本方向を示しておりまして、これに基づき、さまざまな施策を積極的に展開をしてきているところでございます。
 一方、本県農業を取り巻く環境は、以前にも増して農業従事者の減少や高齢化の進展、輸入農産物の急激な増大、これに伴う需給緩和と価格の低下、さらには米の生産調整の緊急拡大、加えまして長引く我が国経済の深刻な景気の低迷など、大変厳しい状況にございます。こうした厳しい環境の中にありまして、徐々にではございますが、生産基盤の整備や構造政策の推進が図られまして、作業の受委託や農地の流動化による経営規模の拡大、生産性を高めるための組織化や団地化、土地利用の高度化などが見られるようになりまして、計画が標榜している個性あるいわて農業の形成に向け、その基礎となる効率的な生産体制の構築が着実に進められてきていると認識をしております。このことは、地域地域でその特性を存分に生かした生産活動が県内各地で展開をされ、特色のある産地の形成となってあらわれてきているところでもございます。こうした地域の生産活動を一層力強く推進していくために、まず、プロ農家としての主業型農家を確実に育成をして、この主業型農家を中心として、地域が一体となって作目再編を進めながら、産地づくりに取り組む地域ぐるみ農業を積極的に推進することによりまして、産地間競争に打ち勝ついわて純情産地の形成を促進してまいります。
 今後におきましては、政策評価の結果を踏まえながら、効率的、効果的な施策への重点化を図って、本計画の基本目標でございます個性きらめく農業・農村の創造に向け、鋭意取り組んでまいる考えでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔総合政策室長佐藤徳兵衛君登壇〕

〇総合政策室長(佐藤徳兵衛君) 国内及び県内の経済情勢についてでありますが、初めに、国内の経済情勢につきましては、内閣府が2月13日に公表した月例経済報告によりますと、個人消費が弱含むとともに、失業率はこれまでにない高さに上昇し、雇用情勢が厳しさを増していることなどから、景気は悪化を続けていると判断しているところであります。
 一方、県内の経済情勢についてでありますが、主要な経済指標を見ますと、大型小売店販売額、乗用車新車登録台数といった個人消費は、このところ前年水準を下回って推移しているほか、鉱工業生産指数については、本県製造業の中でウエートの高い電気機械が生産水準を大幅かつ急速に引き下げていることなどから、この1年余り前年水準を大きく下回って推移しております。また、有効求人倍率は、製造業を中心に新規求人が減少した反面、求職者が増加したことから、一昨年12月の0.63倍をピークに低下を続け、先週末公表になった1月の数値が0.37倍となるなど、全国でも下位に低迷いたしております。
 なお、財団法人いわて産業振興センターの調査による県内中小企業業況判断指数を見ますと──この指数は、業況が好転したとする企業割合から、悪化したとする企業割合を差し引いたものでありますけれども──1月はマイナス60.5となり、前年同月と比べて20ポイント近く落ち込むなど、県内中小企業の景況感には厳しさが見られるところであります。以上のことから、本県の経済は、低迷状態が長引き、一段と厳しい状況にあるものと認識いたしております。
   〔商工労働観光部長鈴木清紀君登壇〕

〇商工労働観光部長(鈴木清紀君) まず、本県中小企業に対する支援策についてでありますが、現下の厳しい経済情勢の中で、中小企業が生き残りを図っていくためには、その強みである機動性、柔軟性、創造性を発揮し、みずからの経営課題に果敢にチャレンジしながら、経営の革新に取り組んでいくことが重要であると考えております。このため、これまで新技術や新商品の開発など、経営の革新に取り組もうとする中小企業に対しまして、中小企業経営革新支援法等に基づく助成や低利融資、それから経営上、技術上の課題解決に対応した経営コンサルタントの派遣、共同研究や技術指導など、さまざまな支援を行いますとともに、商工会等の経営指導の実施や県単融資制度の拡充など、経営安定に向けた支援策も講じてきているところであります。今後は、経営環境が厳しさを増す中にあって、経営の革新を一層推進することが求められておりまして、平成14年度におきましては、これまでの支援に加え、商工会、商工会議所による経営革新講座の県内全域での開催、中小企業支援センターにおける経営革新計画の策定指導など、意識啓発から計画策定までの一貫した支援を行ってまいります。
 また、経営の革新を進めるためには技術力の向上が重要であり、工業技術センターにおける共同研究の充実や企業の巡回訪問の拡充などを行いまして、県内中小企業の技術開発を支援してまいります。このような支援策を通じて、環境の変化に対応できる活力ある中小企業の育成に努めてまいりたいと考えております。
 次に、企業の誘致につきましては、これまで成長が期待される分野における優良企業の誘致を前提として取り組んできたところでありますが、もとより企業においては、株主や取引先に対する経済的な責任のみならず、従業員や消費者あるいは地域に対する企業としての責任があるものと認識しているところであります。したがいまして、県といたしましては、これまでも誘致企業が経済の変動などにより、万やむを得ず工場の縮小、閉鎖などを余儀なくされるような場合でありましても、従業員の雇用問題については、企業が第一義的に責任を持って解決するよう要請してきましたし、地域内における取引先企業への影響や工場跡地への代替企業の導入による雇用の維持につきましても、企業みずからが責任を持って取り組み、地域経済に与える影響を最小限にとどめるよう強く要請してきているところであります。
 また、誘致企業に対しましては、雇用の維持、安定に努め、地域社会の一員として地域とともに歩む企業努力を払っていただくよう要請しておりますし、地元定着に向けて、岩手大学などの研究者の紹介や工業技術センターの技術の紹介を初め、取引のあっせんによる地元企業との連携を支援するなど、可能な限りのフォローアップの充実に努めてまいりたいと考えております。今後の企業の誘致に当たりましても、折衝する企業の地域に対する企業としての考え方にも十分配意しながら、成長が見込まれる分野の企業の誘致に努めてまいります。
   〔総務部長小原富彦君登壇〕

〇総務部長(小原富彦君) まず、雇用対策を実効あるものにするため、環境や福祉等の分野の職員を増員することについてでありますが、我が国を取り巻く財政環境が極めて厳しい中にあって、行政組織のスリム化や事務執行の効率化は、国・地方を挙げて取り組まなければならない課題であり、最小限の職員数で最大の効果を上げることができるよう、職員の採用は退職者数の範囲内にとどめるなど、職員総数については極力抑制に努めていく必要があると考えております。こうしたことから、職員の配置に当たっては、事務量に応じて適正に配置することを基本として、毎年度見直しを行い、業務の効率化等を図りながら、新たな行政需要や今後業務量の増大が見込まれる分野に配置しているところであります。平成14年度においては、深刻化する児童虐待問題等に対処するため、本庁及び児童福祉相談センターの職員を増員し、未然防止から相談、被害者のケアにわたる体制の強化を図ることとしたほか、廃棄物の不当投棄に係る監視・指導体制の強化や、特定化学物質対策、あるいは資源リサイクル推進などの環境関連業務に対応するため、本庁及び地方振興局の職員を増員するなど、福祉、環境分野に重点的に配置することとしております。
 なお、雇用対策につきましては、目下、県政の最大課題として取り組む必要があることから、県といたしましても、6月をめどに80人から90人規模の未就労の若年者を非常勤職員として採用し、職員と業務をシェアすることによって、その体験を将来の就労に生かしてもらうよう、支援することとしております。
 次に、国と地方の財政状況に係る県民への周知についてでありますが、御指摘のありましたように、国の財政は多額の公債残高を抱え、主要先進国の中で危機的と言われる状況にあって、地方財政につきましても、膨大な地方債残高に加え、交付税特別会計の借入金が累増しているなど、極めて厳しい状況にあります。これは、最近の厳しい経済情勢を踏まえ、国において景気回復を最優先とした財政運営を行うとともに、地方においても、国とともに公経済を支える車の両輪として、国の施策に呼応した財政運営を行ってきた結果に基づくものであり、このようなことから、国及び地方の長期債務残高は13年度末で675兆円に上ると見込まれるなど、極めて厳しいものとなっております。このような、国、地方を通ずる財政の状況につきましては、国においては各種の白書等を通じて国民に周知されているところであり、県といたしましても、これまでホームページや広報紙、あるいはパンフレット等を通じて、県の財政状況の周知に努めてきたところでありますが、今後におきましては、こうした国と関連する地方財政全体の現状も含めて、より県民にわかりやすく説明していく必要があるものと考えております。
 次に、県債償還に係る地方交付税歳入についてでありますが、地方交付税法においては、地方の財源不足対策として発行した財源対策債や、公共事業に伴う地方債に係る元利償還金分に相当する額について、普通交付税の基準財政需要額に算入することを定めており、また、財源対策債等の元利償還金の算入に必要とする財源については、地方交付税法の附則において、国の一般会計から交付税特別会計に繰り入れる額に加算する額とその年度を明示しておりますことから、これらの規定に基づき、今後とも地方交付税に算入されるものと考えております。しかしながら、後年度において交付税に措置されるとはいえ、財源対策債などの地方債に依存した地方財政対策を続けていくことは、各地方公共団体の財政の硬直化を招き、地方財政の健全化には結びつかないことから、県といたしましては、地方交付税の総額の安定的確保と地方一般財源の充実強化が図られるよう、従前にも増して、国に対して要望していく必要があると考えております。
   〔農林水産部長佐藤勝君登壇〕

〇農林水産部長(佐藤勝君) 林業問題についてでありますが、県有林と林業公社の組織の一本化については、県有林事業特別会計いわゆる県有林と社団法人岩手県林業公社は、それぞれ公的機関として森林を造成する分収林事業を実施し、森林資源の質的な充実や公益的機能の確保のために大きな役割を果たしているところであります。県有林は、産業の振興、県有財産の造成などを主目的に明治41年に創設され、造林補助金、県債及び一般会計繰入金などを財源として、県内全域を対象に実施しているものであります。一方の林業公社は、造林補助金のほか、農林漁業金融公庫資金など、制度資金の導入などを図りながら、県内でも人工林率の低い県北地域を主な対象として、分収造林特別措置法に基づく分収造林を急速かつ強力に推進するため、昭和39年にその受け皿組織として設立されたものであります。このように県有林と林業公社は、おのおの対象地域、財源、設立の経緯などが異なっております。一方、それぞれ同様の業務であります現場業務については、業務の効率化と経費の節減を図るため、平成11年度からそれぞれ一体的な運営に努めてきております。しかしながら、総合的に見て現状では、組織の一本化についての判断は非常に難しいものと考えております。今般、包括外部監査結果報告において、県有林及び林業公社のあり方について、さまざまな御指摘をいただいておりますので、ただいま御提案の点も含めまして、外部有識者の御意見をもお聞きしながら、これらについても検討してまいりたいと考えております。
 次に、広葉樹の育成についてでありますが、現在、県内には約36万ヘクタールの天然広葉樹林があり、このうち、ケヤキ等の有用広葉樹につきましては、将来の建築用資材として用材生産を、また、ナラ等については、シイタケ原木としての活用を目指した育成天然林施業を積極的に推進するとともに、平成14年度からは、公益的機能の高度発揮を期待する森林について、針葉樹、広葉樹の混交林化などを推進する水土保全整備事業を実施し、広葉樹を活用した多様な森林の整備に努めてまいります。
 また、広葉樹の利活用に関する研究開発につきましては、これまで県林業技術センターを中心に、乾燥技術を初め、難燃化技術の開発などに取り組み、一定の成果が得られてきたところであり、今後におきましても他の研究機関や企業とも十分連携をとりながら、広葉樹の幅広い活用に向けて研究開発に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔環境生活部長時澤忠君登壇〕

〇環境生活部長(時澤忠君) 早池峰国定公園計画の再検討についてでありますが、自然公園法に基づきます国定公園に関する公園計画の変更等の事務は国の権限に属しておりまして、そのための見直しや公園指定の際に国に対してなされた附帯意見による再検討につきましては、一義的には国において対応すべきものと考えております。一方、県といたしましては、早池峰国定公園は希少種を含む数多くの高山植物の宝庫になっているなど、全国に誇り得る貴重な地域であり、この豊かな自然を良好に保全していく必要があると考えておりますことから、平成12年度に地形・地質、植生、野生動物、社会的環境等の総合的な自然環境調査を実施するなど、環境保全の状況把握に努めているところであります。この調査では、早池峰地域はすばらしい自然が荒らされないで良好に保たれていると評価されておりますが、今後も継続的に調査を行い、環境変化の把握に努めてまいりたいと考えております。
 また、保全対策につきましても、これまで自然公園保護管理員の増員や高山植物パトロールの実施などによりまして監視指導を充実しておりますが、早池峰地域保全対策懇談会を設置しておりまして、高山植物の監視体制の強化や登山者のマナー向上、利用施設のあり方など総合的に検討を行ってきたところでありまして、この懇談会の提言等を踏まえまして、民間と行政が連携をいたしまして、より一層の保全対策を講じることにより、早池峰地域のすぐれた自然を将来に引き継いでまいりたいと考えております。
   〔教育長合田武君登壇〕

〇教育長(合田武君) 緊急地域雇用創出特別基金の活用による雇用についてでありますが、平成13年度は小・中学校において、教科指導における教師の支援や障害を持つ児童生徒の介助の補助として76人の非常勤職員を配置し、高等学校においては、円滑な就職活動を支援するため34人の就職支援相談員を配置したところ、学校現場からよりきめの細かい指導が展開できた。あるいは新規の求人を開拓し内定者をふやすことができた等の成果が寄せられているところであります。したがいまして、来年度におきましては、配置する学校数、雇用人数をふやし、これらの事業を拡充するとともに、新たに小・中学校において少人数指導を行う教師の支援・補助に当たる職員や、高等学校における学校図書館支援のための職員及び盲・聾・養護学校における児童生徒の自立活動を支援するための職員を配置するなど、実人数で400人程度の雇用を見込んでおります。このことにより、雇用の促進を図るほか、児童生徒一人一人により指導の目が行き届いた教育を推進するなど、学校教育の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。

〇48番(菊池雄光君) 二、三再質問を行います。
 最初に、雇用等職業訓練の充実について伺いたいと思います。
 先ほど申し上げましたように、知事は、雇用対策を当面する県政の重要課題と位置づけ、先般の本会議の知事演述でも、国において実施する離転職者に対する職業訓練を補完するため、県においてもIT技術等にかかわる職業訓練を拡充し、職業能力開発の強化を図ることを強調しております。しかし、国において実施する本県の職業訓練施設は、現在、花巻市にあるポリテクセンター岩手と釜石市にあるその分所です。この他に委託施設もありますが、この二つが国の職業訓練施設でございます。平成9年6月23日、労働省はポリテクセンター釜石を平成14年度末をもって廃止する方向性を示し、これに対し、釜石市等は存続の要望を繰り返してまいりました。いろいろな経過があったようですが、平成12年12月28日、岩手県を通じ労働省から、この施設を地域職業訓練センター化するか国が行う事業とするかいずれかを選択するよう迫られ、市は、国が行う事業を選択したいことを県を通じて回答したようでございます。しかし、国の方は、技能訓練はやらないとか、施設の譲渡などまだ完全にこの施設の継続は決まっていないようです。
 雇用対策と離転職者の能力開発はもとより国の責任でもあり、三陸沿岸では国の職業訓練施設はポリテクセンターしかございませんので、市と県が一体となってこの雇用のための訓練施設を継続できるように努力していただきたいと思いますが、いかがですか。
 次に、地方分権と新税の検討について、今、知事、その他からもお話がございました。都道府県税の場合、法人事業税は最大税目であります。東京都の石原知事は、いち早く大手銀行の法人事業税に外形標準課税を導入しました。報道によりますと、この外形標準課税の税収額は2002年度で約1、035億円と試算されているようでございます。岩手の場合、一昨年12月議会の本会議の質疑で、当時の武居総務部長は、旧自治省案の外形標準課税を本県に導入した場合、地方財政計画の平準的な年度で約250億円の課税となり、平成11年度の法人事業税252億円とほとんど変わらないと答えております。東京都は大企業の本社が数多くありますから、外形標準課税のみならず、新税の導入による税収も他の道県とは比較にならないと思いますが、地方の道県はどうなるのでしょうか。
 県議会の資料に、各都道府県における課税自主権の検討状況が詳しく載っております。先ほど総務部長からもお話がございました。新たな国、地方の税財源の配分の見直しも検討されておるようでございます。
 そこで伺いますが、本県では新しい税についてどのような検討をされているのでしょうか。
 また、各都道府県でいろいろな税目が検討されているようであります。ホテル税とか炭素税とか水源涵養税とか数十種類の新税が検討されておるようですが、多いのは産業廃棄物税や環境税、これは目的税ですが、これは東北でもかなり検討されているようです。これをもし採択した場合、岩手県ではどの程度の税収が見込まれるんですか。
 次に、農業問題に関連して、農地法の一部改正についてお伺いいたします。
 一昨年11月29日、第150回臨時国会において農地法の一部を改正する法律が成立し、従来、農業生産法人の法人形態としては株式会社の参入が認められておりませんでしたが、農地の投機的取得や土地利用の混乱など懸念を払拭するに足りる措置を講ずることで、定款で株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨を定めた株式会社に限り農業生産法人として認めることになりました。株式会社の参入を容認しますと、農地が集落単位ではなく、株式会社ごとに再編成される可能性が出てきます。日本の伝統的な家族農業や地域の連帯が破壊され、農村の自主的な再生が不可能になるのではないでしょうか。
 第2に、政府は、株式会社の参入は担い手不足を解消し、すぐれた農業経営者を育成するために必要だと言っておりますが、株式会社の参入がなぜ担い手育成になるのかはっきりしません。担い手育成はこれからの農業の最大の課題ですが、戦後一貫して農業就業人口が減少してきた我が国農政を総括することなく、株式会社が参入すれば担い手が確保できるということは余りにも短絡的な発想ではないでしょうか。
 株式会社の参入によって懸念されることはいろいろありますが、その一つは、農薬漬け農業、遺伝子組換え作物の生産拡大であります。消費者にとって大きな不安であります。県、市町村は、当面、これは株式会社であればどこでも参入できるというわけではないのでありますから、株式の譲渡制限を初め、農業委員会の審査、勧告、立入調査などの機能を強化し、農地所有の耕作者主義が守られるように、市町村、特に農業委員会に対する適切な県の指導が必要であると思いますが、いかがですか。

〇商工労働観光部長(鈴木清紀君) お尋ねのポリテクセンター釜石についてお答えいたします。
 このポリテクセンター釜石を平成14年度末で閉鎖するという方針は、雇用・能力開発機構が平成9年の特殊法人等の整理合理化についての閣議決定を受けて廃止という方向を示してきたものでありますが、県としては、地元釜石市の意向もありまして、引き続き雇用・能力開発機構の施設として活用されるよう、国等に働きかけてきた経過がございます。しかしながら、特殊法人改革が進む現況のもとでは、ポリテクセンター釜石の施設を現状のままで存続していくことは難しいものがあると考えております。
 こうした中で、このたび──最近ですが──雇用・能力開発機構が本館など一部の施設に縮小して引き続き運営し、職業能力開発に関する相談、援助、それから離転職者の委託訓練などの支援事業を行う方向を示してきたところでございます。また、地元釜石市におきましても、現在の施設の一部を譲り受けまして、地域の職業能力開発のために活用することを現在検討しております。
 県としても、ポリテクセンター釜石の施設が今後も可能な限り有効に活用されまして、地域の職業能力開発ニーズに対応できるよう、釜石市の意向をも勘案しながら支援してまいりたいと考えております。

〇総務部長(小原富彦君) 新税検討の状況についてのお尋ねでございますが、地方分権を推進し、地方の自立性を高めるためには、税源移譲等による税財源の充実に加えまして、課税自主権を活用し、みずからの判断と責任において財源確保あるいは政策目的の実現を図ることも重要になってくると考えております。
 自主課税として本県が検討を進めているのは産業廃棄物税でありますが、この税の検討に当たっては、首都圏等からの産業廃棄物の広域移動などについて同じような課題を抱える北東北3県が連携することが効果的であると考えられますことから、3県共同でワーキンググループをつくり、課税対象、納税義務者、税率など税制の具体的な仕組みについて鋭意検討をしているところでございます。
 本県にこの産業廃棄物税を導入した場合に見込まれる税収については、納税義務者や税率などについて本年4月から実施する三重県を例にして試算すれば、粗い数字ではありますけれども、おおむね3から4億円程度が見込まれるところでございます。
 このほか、昨年の北海道・北東北知事サミットにおきまして、森や川、海などの環境保全への諸施策の取り組みに必要な財源として新税創設の可能性を共同で検討することが合意されたところであり、昨年11月から研究を始めております。
 これら新税の導入に当たりましては、受益と負担の関係を明確にし、県民の皆さんの御理解を得ることが必要でございますので、各界各層の御意見をいただきながら取り組んでまいりたいと考えております。

〇農林水産部長(佐藤勝君) 農地法の改正についてでありますが、この法改正に当たりましては、当時、株式会社の農地取得について、投機的取得や土地利用の混乱を招くことがないかということなどさまざまな問題が懸念されておりまして、このため、本県を初め、多くの団体、機関から、法人が農業関係者以外の者に支配されないための措置が十分に講じられるよう、国に対しまして要望してきた経緯があります。このような経緯を経て、法改正においては、株式会社の農地取得において株式譲渡制限の規定が設けられ、農業関係者以外の構成員の議決権総数は全体で4分の1以下に制限されているほか、不正な手段により許可を受けた者に対する罰則も規定化されております。さらに、農業生産法人には、毎年事業の状況などを農業委員会に報告することが義務づけられておりますし、また、農業委員会には、勧告や事務所等への立入調査の権限が付与されております。
 県といたしましては、今回の法改正は、農業者、農事組合法人あるいは有限会社などから成っております農業生産法人が経営の発展のために活動する場合の新たな選択肢が加えられたものと考えておりますけれども、その大前提としては、株式の譲渡制限を初めとした要件が完全に満たされ、農業関係者が中心となっている組織であるかどうか厳正にこれが審査されるとともに、勧告、立入調査の権限を適切に行使し得るように、その権限を持っている農業委員会を適切に指導するなどいたしまして適正な運用に努めてまいります。

〇議長(谷藤裕明君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時 散 会


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