平成14年2月定例会 第13回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇26番(上澤義主君) 政和会の上澤義主であります。
 質問に先立ち、去る2月10日に急逝されました故吉田秀議員に対し、篤実温厚なお人柄と、議員の数々の御功績を追懐して、ここに謹んで哀悼の意を表しますとともに、心より御冥福をお祈り申し上げます。
 3人目でありますので重複するものもありますが、誠意ある御答弁を期待し質問をいたします。
 さて、平成14年度当初予算は、13年度当初予算を約348億円も下回る、いまだかつてない緊縮予算として編成されております。最近の新聞報道などを見ても、13年度は県税の大幅な減収が報じられるなど厳しい財政状況が県民に知れ渡っているところであります。県民の側からしてみれば、一番頼りにしている増田県政が、この厳しさの中でどのような財政運営をするのか最も気にかかるところであります。
 そこで自信を持って予算編成をして実行してきた13年度財政運営で、こんなはずではなかったというような、大きく見込みの違っているものはないか。そうでなかったら、今回の予算編成はどうしてこうなったのか、だれもが知りたいことなのであります。健全財政を建前として議論を重ねてきた議会としても、地方交付税は、税制は、税収は、公債費は、今後の事業展開は、と気にかかるのであります。14年度当初予算編成に当たって、考慮されたであろう13年度における県の財政運営の結果としての決算見込みについて示していただきたいと思います。14年度は当初予算を見ると、歳入における県税と地方交付税の減少が顕著であります。県税は13年度当初予算との比較では、142億8、600万円もの減少となっております。これは県内の一つの市の年間予算にも該当する額でありますので、一つの市がなくなることになります。また、地方交付税も同様に46億1、300万円の減少となっておりますので、県が自由に使用できる一般財源が、この2つの歳入科目だけで200億円近く減ったことになるのであります。
 一方、歳出における公債費を見ますと、前年度との比較では120億5、900万円も増加しております。公債費には一般財源を充てる以外に財源の手だてがありませんので、単純に考えますと、歳入における一般財源の200億円プラス歳出での公債費の増120億円で、実に前年度に比較し、さらに320億円の一般財源がなくなったことになります。これで県内の1市1町1村がなくなったことになるのであります。これは国も悪い。
 このような厳しい財源不足の中での平成14年度の予算編成は大変な苦労が伴ったことと思いますが、一般財源の確保に向けてどのような対策を講じられたのでしょうか。また、県内産業が停滞する中での税収や国の構造改革によって見直される地方交付税など、一般財源の確保が今後とも難しい状況の中で、公債費、人件費なども含めて、歳出全般の抑制をどのように行っていくのかお伺いをいたします。
 さきより話しておりますが、平成14年度の一般会計当初予算規模は、県税収入の減少や地方交付税や国庫支出金が大きく削減された影響で3.9%の大幅な減となっており、公共事業についても16.5%、金額にして362億1、700万円の減少となっております。このような状況の中で、公共事業の新規地区の採択に当たっては、昨年度に引き続き費用便益比を基本に、地区ごとに評価をしたと聞いております。国、地方を通じて厳しい財政状況から判断して、このような評価による事業実施地区の選定は時代の流れであり、今後とも県民の理解を求めながら進めていかなければならないというその苦しみのあることは理解せざるを得ません。一方で、このような評価を行うことにより、過疎地域、特にも北上山地のような条件が不利な地域の整備地区が低い評価となり、その結果、県中央からますます置いていかれることがあってはと、寝ても覚めても懸念されるところなのであります。本県の社会資本整備の状況を見ると、まだまだ不足していると認識しており、特にも産業基盤の弱い過疎地域においては、地域の自立的な発展のために社会資本の整備は不可欠と考えております。秋田-釜石間の横断高速道もある、立丸トンネルもある、ほかにも整備されずに残されているものは山ほどあります。今、課題である道路特定財源の見直しについては、地方不在の論理であることはしかりであり、それを看過するものではなく、我々政和会も市町村の議会、首長、そして知事や行政マンの皆さんと一緒になって反対をしているところであり、今、同一歩調をとって粘り強い運動をしているところでもあります。これからも地域住民に理解を求めて頑張ります。
 そこでお尋ねしますが、公共事業評価は過疎地域についてはどのような配慮をしているのかお伺いをいたします。
 昨年の9月に、我が国で初めてBSE──狂牛病ですが──BSE感染牛が確認されて以来、国、県においては、全頭BSE検査の実施、酪農家や肉牛生産農家に対する技術指導や飼料利用適正化指導、運転資金、各種助成など生産者対策を講じてきたところであります。流通についても製造業者、流通業者の指導、店頭におけるBSE検査シール貼付販売の促進などを実施して、知事みずから牛肉を食べたりして肉牛の安全をPRして、消費者離れを呼び戻そうと一生懸命やりましたが、なかなか功上がらず。考えてみれば、O-157でカイワレダイコンは食卓から消えました。ダイオキシン騒動で都市近郊の野菜産地も消えました。牛にとって最も危険と言われていた狂牛病──BSE、この実態は発達したマスメディアによってイギリスで起こったその状況を消費者は知っております。敏感であります。これで農業政策も落ちるところまで落ちたなと感じざるを得ないのであります。農家の実態を見ても三ちゃん農業、そして大型機械が友達の農業ではその不満すら外に出す力はないのではないでしょうか。こうした状況を乗り越え、農業県岩手、畜産県岩手の再生と、引き続き県産牛肉の安全性を確保し、消費者と一体となっていくためには、生産者対策第一に、行政はもちろん農業団体など、農業を語って生活している者のすべての人が身命を賭して対策に当たり、今まで受けた恩を農業に返すときなのだと思います。そして、BSEの発生原因と言われる飼料の検査体制の強化であります。飼料のすべては輸入しているものであり、その検査体制は、ただ手にとってみればいいというものではなく、科学的なことであること、農家の庭先まで二重、三重のチェック体制が必要だということであります。さらに、県産牛肉の独自の流通対策を確立することであります。今、日本の農産物にかかわる流通業界は、その実態をさらけ出しているところであります。米では、新潟産の魚沼産のこしひかりが生産量の数倍も出回る、輸入乳牛の肉が和牛に化ける、生産地が化ける、消費者の高級嗜好につけ込んで金もうけのためなら手当たり次第何でもやる。このような流通業界には、精魂込めてつくったものを預けていいかどうか全く迷う、というよりも預けたくないというのが本音だと思います。
 先ごろ県は、牛肉の信頼回復を目指し、スーパーの店頭や家庭のパソコンで県内牛肉の生産履歴情報を消費者に提供するなど、画期的な流通の仕組みを試行的に始めたと伺います。私は、これを大いに評価するものでありますが、これを試行に終わらせず、将来的には国内向け流通のすべてに広げていただきたい、これは大変な努力が必要でありますが、ぜひ継続して頑張っていただきたいと思います。県産牛肉の流通対策として、生産者と消費者を直接結ぶ流通形態の構築に本気で取り組むことが緊急課題と思いますが、今後の取り組み方針はいかがでしょうか。
 それから、BSEに関する情報を農林水産省が握りつぶし、その対策に当たらなかったので現在があるとされており、その間、BSE感染はあると指摘した有識者もあると言われております。我が県は情報社会を先取りし、職員にはそれなりの機材を準備し、情報を出すもの、入れるもの、その対策は万全であるべきはずが、後手に回った感を否めないのであります。ふだん言われている危機管理が浸透していないと言わざるを得ません。病原菌は国や農林水産省から伝染してくるものではなくて、あらゆる手段を使って侵入してくるのであり、細心の注意を払って情報を得、事に当たってほしいと思うものであります。御所見をお伺いいたします。
 農業を取り巻く情勢は、先ほどから申し上げてきました。しかし、これから切り開いていく道はきっとあると思います。21世紀の本県農業は、農村が持つ豊かな自然や美しい景観、温かみのあるもてなし、生活文化、そして食文化、伝統芸能、歴史、文化遺産など、多彩な地域資源の活用にも着目した総合的な施策の展開できる場所が営々としてあるからであります。すなわち、こうした多彩かつ変化に富んだ地域資源に着目をした新たな視点からの農業、農村の活性化に本気になって取り組むことこそが、農業県である本県がその特質を生かして生き残れる道であると確信するものであります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 こういうことからして、欧州を先進国とするグリーン・ツーリズムは有効な手段と考えるものであります。経済がグローバル化した大競争時代にあって、技術革新、情報化のスピード等変化はますます速く、24時間緊張を強いられる都市住民にとって、そこは砂漠であり、心の豊かさを実感できる本県はオアシスであり、その受け入れ態勢の人的な環境さえ整えれば産業として定着すると思うのであります。これは単なる農家宿泊の振興ではなく、それぞれの地域にふさわしい環境の保全や訪問者の体験や楽しみ、地域の文化と住民の暮らしをバランスよく満たしながら、農家の生活や農村の将来を見据えたトータルな地域づくりであり、持続可能な産業の育成であります。グリーン・ツーリズム、ここで行政が行わなければならない最低の条件は、本気で取り組む指導者を養成することであります。今までの例のように、先進事例の紹介に終わるようなことであっては、振興には何の役にも立たないということであります。地域の食材を原料にして郷土料理を調理し、加工し、開発し、商品化し、付加価値をつけるぐらい努力をする熱意ある指導者の養成であります。それから、保健所の全面的な協力であります。今までの体験などを聞いてみても、チェック機能ばかり耳に残ってとてもできないなど、推進に向けて協調した取り組みが必要であります。農山村の雇用の場を広げ、着実に、そして実直に生活できる環境づくりが大切と思いますが、本県のグリーン・ツーリズムの現状とその課題をどのように認識し、グリーン・ツーリズムの振興に向けてどう取り組んでいかれるのか御所見をお伺いいたします。
 本県は、北海道に次いで広い面積を有する森林県であり、その森林の果たす多面的な役割は大きなものであります。林産物の供給はもとより、国土の保全、水源の涵養、二酸化炭素の吸収・貯蔵など、人間生活に欠かすことのできない重要な役割を担っております。戦後、植林した人工造林を中心に本県の森林資源は充実しつつあるものの、間伐を行う必要がある森林が民有林の人工造林面積の半分はあり、しかも木材の輸入増加による価格の低迷と住宅着工戸数の減少に伴う需要の低下などにより、林業の採算性は大幅に低下をし、林業生産活動も停滞、このため間伐、保育など、森林を健全に維持するための施業や伐採後の植林が行われない森林が各地に見られるようになりました。
 そこで県民の多様な要請にこたえられるよう森林の整備及び保全を行い、森林の有する多面的機能を持続的に発揮させていく必要があります。このような背景のもとで、従来の林業基本法の制定から30有余年を経て、昨年7月に森林・林業基本法が制定されたところでありますが、この基本理念に沿った林業振興で21世紀を豊かに生き抜くためにどのような施策を展開するのか。そして、特にも岩手県のシンボルとなっております南部アカマツは、シンボルとはなったものの何の付加価値もつけられずにいるという感じを受けるのでありますが、利用の仕方などを研究すべきと思いますが、あわせてお伺いをいたします。
 次に、我が国の経済は、米国など対外経済環境の改善に一部期待が持たれるものの、景気の悪化は依然として深刻な状況にあります。県内においても世界的なIT不況の影響や公共投資の減少、企業の海外シフトなどにより、製造業を中心に工場の閉鎖、撤退、合理化などが相次ぎ、個人消費も低迷する中、12月の有効求人倍率は0.37倍と、景気のみならず県民の雇用環境もますます厳しい状況に追い込まれてきております。こうした中で県は、2月18日に雇用対策本部を開催し、岩手県総合雇用対策を取りまとめたところでありますが、私は緊急的な雇用確保対策もさることながら、このようなときだからこそ、中長期的な視点からの施策が一層重要になってくるのではないかと考えております。これまで本県産業は、高速交通体系の整備などを背景として、北上川流域地域を中心に電気機械、エレクトロニクス関連工場の誘致が進み、また、これらに関連した下請け企業が集積することにより大きな発展を遂げてまいりました。しかしながら、中国を初めとした東アジア地域の競争力の向上により、これまでと同じやり方では今後企業が生き残っていくことは容易なことではないと考えております。今後は生産拠点の一部を海外シフトさせる企業、独自の技術・技能に特化する企業、国内の市場開拓に専念し、少子・高齢化する国内市場の需要にこたえていく企業などに分化していくのではないか。特に、国内市場については、食、福祉医療、環境リサイクル、住生活等が有望分野ではないかとも言われております。
 そこで、私はこれからは、広く起業・創業の活発化を図りながら、これまで以上に地域の内部から新しい製品や商品、サービス、事業を生み出し、地域経済の活性化を図りつつ、有望な分野についてはこれを明確にして、新たな産業にまで育てていくことが求められていると考えるものですが、このような起業化から新しい産業育成の支援にどのような姿勢で取り組もうとしておられるのかお示しを願います。
 高齢者の介護を社会全体で支える仕組みとして創設された介護保険制度がスタートして、はや2年が経過しようとしております。県がこれまで行ってきた運営状況調査の結果などから、今後改善しなければならない課題が次第に明らかになってきたとはいえ、総体としては、サービス現場や市町村等関係者の方々の多大な御努力により、思いのほか順調に実施されてきたのではないかと感じております。しかしながら、在宅の待機者は、制度をスタート直後の平成12年5月末では448人であったものが、平成13年12月末現在では1、303人と約3倍に増加しており、現状に照らしてみますと、施設整備は大変重要であり、必要であります。制度施行2年が経過するこのとき、介護保険制度をさらに成熟したものに育てていくためにも、介護サービス基盤の整備とともにサービスの質の向上に向けた取り組みや高齢者ができる限り要介護状態になることがないように、また、自立した生活を尊厳を持って送ることができるよう、さらには健康で生きがいを持って人生を全とうすることができるようにするための、保健福祉政策の一層の充実に力を尽くしていく必要があるのではないかと考えるものでありますが、本県の今後の取り組みについて御所見をお伺いいたします。
 知事は、県政推進のキーワードとして、環境、情報とともにひとづくりを掲げ、積極的に施策を展開しておられますが、県民の生涯学習の振興を図っていくことは、本県のひとづくりはもとより、地域づくりを進める上でも大きな原動力になるものと考えるものであります。しかしながら、本県の現状を見ますと、地域の身近な公民館等ではさまざまな制約から、単独では高度化・多様化する県民の学習需要に的確に対応することが必ずしも十分とはいえず、また四国4県に匹敵する広大な面積を有する中、県民等しく学習機会を享受することが困難であることなど、幾つかの課題も指摘されているところであります。過日、知事が本部長である生涯学習推進本部において、岩手県生涯学習振興計画が決定されたと聞き及んでいるところでありますが、今般策定された同計画の生涯学習の振興に対する基本的な考え方と今後の取り組みについてお伺いをいたします。
 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 上澤義主議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、平成13年度の決算見込みについてでございますが、まず、平成13年度の当初予算は、21世紀の新たな発展基盤を構築するために、総合計画の着実な推進に向けて中期的な財政見通しのもとに、政策評価結果による施策重点化方針に配慮しながら、対前年度0.7%増という極めて低い伸び率の歳出抑制予算として編成したものでございます。
 その後の補正予算におきましては、凍上災害の発生に対応する災害復旧事業や、先ほどお話がございましたように、BSEの発生に対応した各種対策、悪化する雇用情勢に対応した国と県単独の基金の設置と活用による雇用対策を実施することとしたほか、地域経済の活性化を図るため、国の補正予算にこうした公共事業を中心とする補正予算を今議会に提案するなど、厳しい財政環境にあって、現下の行政課題に的確に対応してきたものと考えております。追加提案を予定している2月補正を含めた最終の予算額は9、250億円程度と前年度最終予算額を76億円程度下回るものと見込んでおりまして、年間を通じて歳出規模の抑制基調が維持されるものと考えております。
 一方、歳入につきましては、地方交付税は、公債費算入分の増加などにより当初予算を120億円ほど上回るものと見込まれるわけでございますが、県税は景気低迷の影響を受け、当初予算計上額から約40億円下回る見込みであるほか、県債につきましては、新たな地方財源不足対策としての臨時財政対策債を130億円余発行せざるを得なくなった結果、県債残高が平成13年度末で約1兆2、960億円に及ぶなど、厳しい財政状況となることが見込まれております。
 平成14年度当初予算は、このような事情を考慮しながら、さらに抑制した予算として編成したところであります。
 次に、この平成14年度当初予算編成における一般財源の確保と今後の歳出抑制についてでございますが、この平成14年度当初予算は、景気の低迷や国の構造改革によりまして、県税収入の大幅な減収に加え、公共事業関係費の縮減や地方交付税の減額が見込まれるなど、財源の確保を図ることが極めて厳しい中での編成となったものでございます。このため、財源の確保に当たりましては、法人県民税の超過課税の継続実施や使用料・手数料の見直し、未利用県有地等の売却を行うこととしたほか、財源調整等を目的として積み立ててきた基金を有効活用することとし、それぞれの設置目的に沿いまして財政調整基金など主要3基金280億円の取り崩しを行うとともに、地域振興基金や産業振興基金の活用を図るなど、さまざまな努力を行ったところでございます。
 一般財源を初めとする財源の確保が難しい状況は、厳しい経済情勢や危機的と言われる国の財政状況を踏まえると、今後とも続くものと見込まれますので、今後の財政運営に当たりましては、将来を見据えた財政の健全化を基本としながら、歳入に見合った規模となるよう歳出の抑制を図っていく必要があるものと考えております。具体的には、義務的な経費である人件費につきましては、従来にも増して定員管理の徹底を図りながらその抑制に努めますとともに、公債費の増嵩については、世代間の負担の公平化を考慮しながら、起債の対象となる事業の厳選により、県債発行額の抑制を図っていく考えであります。
 また、限られた財源の一層の重点的・効率的な活用を図ることとして、政策評価システムを通じて、既存の事務事業の徹底した見直しや縮減を行うとともに、重要度の高い事業を重点化施策・事業として選定して優先的に実施するほか、大規模事業の整備期間の調整や外部委託の推進、PFIを初めとする民間活力の導入などにも努めていく必要があると考えております。
 次に、公共事業評価における過疎地域への配慮についてでございますが、公共事業評価は、厳しい財政環境の中にあって客観的な評価を行うことにより、公共事業の一層の透明性の確保を図ることを目的としておりまして、評価に当たっては、費用便益比を基本としながら、事業地区ごとにその必要性、緊急性、熟度なども考慮して評価を実施しております。
 過疎地域等条件不利地域の評価に際しましては、本年度は第三者機関であります岩手県公共事業評価委員会の意見を踏まえまして、地域の生活・産業支援に資する事業について、必要性の評価の中で過疎地域、それから準過疎地域、振興山村地域等を対象として地域修正を統一的に行うことに改善いたしましたし、人口や経済の影響を受ける交通量を便益算定の基本とする道路事業におきましては、過疎地域の費用便益比の算定に際して、地域修正係数による割り増し補正をよりきめ細かく行うなど、地域の実情を勘案した評価となるよう精度の向上を図ったところでございます。
 なお、評価の実施過程やその結果について、今後とも県民の皆さんにわかりやすい形で公表して、また、御意見もいただきながら、より透明性、客観性の高い評価制度を確立してまいりたいと考えております。
 次に、BSE対策についてお答え申し上げます。
 まず、飼料検査体制の強化についてでございますが、BSEは感染牛に由来する肉骨粉の給与が原因と考えられておりますので、我が国におけるBSEの清浄化と牛肉に対する消費者の信頼回復のためには、この肉骨粉と牛とのつながりを完全に遮断しなければならないと考えているところでございます。
 既に、国におきましては牛への肉骨粉の給与を法的に禁止する措置を講じたところでございますが、こうした措置が確実に遵守されていることを確認するため、県では、飼料工場や販売店における立入検査を強化するとともに、新たに肉骨粉の混入の有無について高度な科学的検査を実施するほか、牛飼養農家に対しましても、飼料の適正使用に係る濃密指導を徹底していく考えでございます。
 また、家畜伝染病に係る情報の収集についてでございますが、国際化の進展に伴いまして、海外からの悪性伝染病の侵入機会が増加しております。このような中で、一昨年は国内で92年ぶりに牛の口蹄疫が発生し、そしてまた昨年9月には、御承知のとおりBSEが初めて確認されたところでございます。
 こうした伝染病の発生は生産者に大きな打撃を与えますので、その情報をいち早く入手し、迅速かつ的確な防疫対策を実施することが肝要であります。このため、今後におきましては、国からの情報に加えて、岩手大学や動物衛生研究所などの教育研究機関との連携を密にしながら、国内外の専門機関とのインターネットを活用した情報の交換など、あらゆるルートからの積極的な情報の収集に努めてまいりたいと考えております。
 次に、生産者と消費者を直接結ぶ県産牛肉の流通対策についてでございますが、私は、生産者と消費者両者の間に顔の見える関係を構築することが極めて重要であると考えております。このため、消費者の支持を得て拡大してきている産直活動への支援に加えまして、今月22日から、県産牛肉を取り扱っている県内一部の量販店・49のモデル店舗の協力をいただきながら、県独自の飼料給与情報を含めた生産履歴をホームページ等を通じて消費者の皆様に明らかにするトレーサビリティーをスタートさせたところでございます。
 今後、その効果やシステムへの反応を見きわめながら、県外向け流通をも視野に入れて、当面は県内に広く普及させることによりまして、本県独自の流通システムを確立する考えでございます。
 次に、グリーン・ツーリズムの推進についてでございますが、農業・農村は、農産物の供給はもとより、国土保全、水源涵養、良好な景観の形成、文化の伝承など多面的な機能を有しておりまして、産業としての面だけではとらえ切れない重要な役割も担っていると考えております。
 グリーン・ツーリズムは、この多面的機能を広く都市の人々に開放し、憩い、安らぎを提供するものであり、受け入れる農村にとっても、経済的なメリットだけにとどまらず、みずからの地域のよさの再認識、女性・高齢者の活躍の場の創出など、さまざまな効果が期待されるものでございます。
 幸いにも本県は、全国農村アメニティ・コンクールにおきまして2年連続最優秀賞を受賞するなど、全国へ誇れる農村環境を県内各地に有しております。また一方、都市におきましても、憩い、安らぎを求める人々の増加、平成14年度からの学校週5日制の完全実施など、両者の交流が促進される環境がこれまでになく整ってきていると感じております。
 今後は、この農村と都市を円滑に結びつけていく努力こそが重要であると考えております。そのためにはまず、受け入れ体制の整備と人材の育成が重要でございまして、県と関係機関・団体が組織する岩手県グリーン・ツーリズム推進協議会を主体として、地域の推進組織の育成とそのネットワーク化や体験インストラクターの育成などを推進してまいりたいと考えております。
 また、地域の魅力アップのため、地域の食材を利用した加工品の開発・商品化も重要でございまして、農村女性等の起業化に向けた研修会を実施するとともに、アグリビジネス支援のために、各専門分野のアドバイザーを登録して、要請に応じて派遣する体制を構築することとしております。
 また、受け入れに当たっての法規制の対応も重要でございまして、一般に小規模で季節的にグリーン・ツーリズムに取り組む農家の特性を踏まえて、旅館業法や建築基準法の規制緩和について国に働きかけるとともに、保健所においても、食品衛生のみならず、健康増進の面から必要な連携を図っていきたいと考えております。
 さらに、観光分野との結びつきを一層強め、また、情報発信についても、北東北3県共同で行うなど取り組みを強化してまいりたいと考えており、こうした取り組みを通じて、今後ともグリーン・ツーリズムを積極的に推進してまいります。
 次に、林業振興施策とナンブアカマツの利用についてでございますが、御案内のとおり、国におきましては森林・林業をめぐる社会情勢の変化を踏まえて、昨年7月に、森林の公益性など多面的な機能の発揮に向けた森林整備の推進と林業の健全な振興を基本理念とする森林・林業基本法を制定したところでございまして、これに即した新たな施策を展開しようとしております。
 県でも、こうした理念を踏まえて、森林の重視すべき機能に応じた間伐の促進や公益保全林の造成、治山事業の推進、林道網の整備などの施策をよりきめ細かく展開するとともに、新たに森林整備地域活動支援交付金制度によりまして、森林所有者が行う森林の適切な整備に対する支援を行うこととしております。
 もとより、こうした森林整備を循環的に進めていくためには、県産材の利用が確保されることが重要でありますので、一般住宅や公共材への利用促進、川上から川下までの一体的取り組みによる生産・加工・流通体制の整備など、総合的な林産物の供給体制の確立に努めるとともに、環境に負荷の少ないエネルギーとして注目されている木質バイオマス資源の活用に向けて、平成14年度には県林業技術センターへのチップボイラーの導入や、鋳物を活用した岩手型のペレットストーブの研究開発などを進めながら、幅広く県産材の利用の促進を図ってまいります。
 また、ナンブアカマツにつきましては、これまで主に住宅のはり材などの構造材やパルプ原料として利用されてきたところでございますが、ベイマツなどの外材輸入の増加により需要が落ち込んできているところであります。このため、今後におきましては、ナンブアカマツの特性を生かして、内装材やテーブル天板などの家具材への利用を進めるほか、合板原料としての活用など、より幅広い用途への利用拡大を積極的に進めてまいりたいと考えております。
 こうしたさまざまな施策を広く県民の理解を得ながら展開して、21世紀が森林とそれを支える林業、木材産業の世紀となるよう一層の努力を傾注してまいりたいと考えております。
 次に、産業の振興についてでございますが、本県産業は、経済のグローバル化の急速な進展や雇用情勢の悪化など厳しい環境に直面しておりまして、まさに大きな転換点を迎えております。このような中で、地域経済を活性化し雇用を安定的に確保していくためには、社会ニーズに対応した競争力のある新しい産業を創出し、育成していくことが重要と考えております。
 このため、まず、創業段階の支援といたしまして、いわて起業家フォーラムや創業・経営革新講座を県内各地で開催して、地域の意識の醸成を図りますとともに、創業を志す皆さん方に起業家としての経営ノウハウを身につけていただくため、いわて起業家大学の拡充や、新たにいわて起業家大学院を開設するほか、インキュベートマネジャーを増員して、インキュベート入居企業へのきめ細かな支援により、円滑な創業と早期の自立を促進してまいります。
 また、研究開発支援としては、財団法人いわて産業振興センターなどにおきまして、産と学を結ぶコーディネート機能を強化しながら、本県に蓄積された基盤的技術分野や今後の成長が期待される環境や医療福祉、情報サービス分野などにおける産学共同の研究開発プロジェクトなどを推進してまいります。
 さらに、これらの事業化支援としては、地域の産業支援機関などに新たにプロジェクト推進員を配置して、事業化に向けたフォローアップを強化するとともに、市場調査や販売戦略の確立、販路開拓の実践など、研究開発段階からの一貫したマーケティングの支援を強化してまいります。
 また、ベンチャー企業の成長を支援して本県のリーディング企業として育成するために、企業の成長に欠かせない投資と投資後の経営支援に重点を置いた、地域密着型のいわてインキュベーションファンドを組成してまいります。
 このように、本県のひと、技術・知的資源、資金を効果的に結びつけながら、創業から研究開発、事業化、企業の成長までの総合的な支援を強力に推進してまいりたいと考えております。
 次に、高齢者の保健福祉施策の今後の取り組みについてでございますが、高齢者の皆さん方が生きがいを持って自立した生活が送れるように社会全体で支援し、岩手に生まれ生活できる喜びを実感できる健康安心・福祉社会の実現を目指し、平成12年3月にいわていきいきプラン2005を策定して、市町村と一体となって各種の高齢者保健福祉施策を推進してきているところでございます。
 介護サービス基盤の整備につきましては、今後は、単に量的な体制の整備にとどまることなく、サービスの質の向上を図る観点から、全室個室・ユニットケア型の特別養護老人ホームの整備や身体拘束の廃止に向けた取り組みなどを推進いたしますとともに、できる限り住みなれた地域や家庭で自立した生活が継続できるように、より一層在宅サービスの整備に努めてまいります。
 また、できる限り要介護状態とならないように、地域リハビリテーション等の介護予防施策を積極的に推進するとともに、健康で活動的な高齢者の皆さん方が、社会の重要な一員として各種ボランティア活動を初めとするさまざまな社会貢献活動に参加するよう積極的に支援して、心豊かで活力に満ちた長寿社会が実現されるよう、これまでにも増して高齢者の保健福祉施策の充実に努めてまいりたいと考えております。
 次に、生涯学習の振興に対する基本的な考え方と今後の取り組みについてでございますが、生涯学習は、県民一人一人の個性を豊かに開花させるとともに、それぞれの学習への取り組みが、人と人との交流を深め、地域のさまざまな活動に発展することによりまして、地域文化の高まりや個性的なまちづくりにつながることなどが期待されますことから、その振興は極めて重要であると考えております。
 このような考え方に立ちまして、県民の生涯にわたる学習活動を総合的に支援するため、昨年12月に岩手県生涯学習振興計画を策定して、県民一人一人がいつでも、どこでも、自己実現を目指して学習し、ともに歩むことのできる学びの里いわての創造を計画の目標として掲げたところでございます。この目標の実現に向けさまざまな学習情報の提供や指導者の養成など、県民の学習活動を支援する環境の整備・充実を図りますとともに、市町村や大学などの高等教育機関、さらには民間カルチャーなどと緊密な連携をとりながら、多様な学習機会のより一層の充実を図っていくこととしております。
 また、岩手の豊かな自然や歴史・文化など地域資源を再発見し、それを育てながら、地域らしさを追求していくいわて地元学の推進や、地域の人々の参加を得ながらさまざまな学習活動を展開する21世紀の寺子屋づくりなど、本県の特色を生かした施策を進めてまいります。
 さらに、広大な県土を有する本県の地域特性を踏まえ、距離の壁を乗り越えるため、通信衛星を活用した学習講座を県内各地で実施するほか、県民の高度で多様な学習ニーズにこたえるために、複数の市町村の連携・協力による広域的な学習講座の開設を促進するなど、県民がふるさとに学び、地域を舞台に、みずからの夢に向かってチャレンジできるような学びの里づくりを目指し、計画に掲げましたさまざまな施策を積極的に展開してまいりたいと考えております。

〇議長(谷藤裕明君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時24分 散 会


前へ 次へ