平成14年9月定例会 第15回岩手県議会定例会会議録

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〇14番(田村誠君) 政和会の田村誠でございます。
 多くの先輩議員により築き上げてまいりました、歴史と伝統ある岩手県議会に議席を賜り、早いもので3年6カ月の月日が過ぎ去り、この間、増田知事や当局の皆様、谷藤議長初め先輩、同僚議員の皆様の御指導を賜り、心より感謝申し上げます。
 9月定例会に当たり、機会を賜り皆様に感謝申し上げながら、通告に従い順次質問いたしますので、当局の積極的な答弁をお願いいたします。
 質問に入ります前に、全国でも本県が最大の被害となり、被害総額700億円余、死傷者10名の大変痛ましい大規模災害となりました本年7月末の台風6号の被災者の皆様に、心よりお見舞いを申し上げますとともに、知事みずから現地に出向き陣頭指揮をとるなど、県当局の迅速な対応に敬意を表します。
 今回の台風は雨台風と言われ、県内の河川はかつてない激流となり、気仙地域の河川では特にも流木などの多いことに驚きましたが、それらが湾内に流入し、除去には多くの漁民の方々に大変御苦労をおかけいたしました。いまだその処理に関係者は頭を痛めているところであります。国の激甚災害指定を受けたようですが、流木などの処理支援を含めて、一日も早い復旧対策をお願いするところであります。
 さて、澄み渡る秋空の下、黄金色の稲穂が雲のように風にたなびき、浜ではサンマの水揚げに活気づき、まさに実りの秋を迎え、県民の皆様は収穫に大いなる期待を持って一生懸命頑張っております。増田知事もみずからの手でつくり上げた新しい岩手・21世紀へのシナリオ岩手県総合計画において、みんなで創る夢県土いわてを基本目標に掲げ、先人の歩みに学び、環境、ひと、情報をキーワードに、岩手の未来を切り開いていこうとして、夢県土いわて実現のため、持ち前の若さと行動力で四国4県に匹敵する広い県土はもちろんのこと、全国を飛び回り、各界各層の方々と対話を重ね、あるときは現地で作業に参加、その苦労を体験し、県政に積極的に反映しようとする姿勢に県民は大いなる期待を寄せております。特にも現場主義の意向が反映をされ地方振興局の機能が強化されるなど、地域連携が図られるとともに、県民が身近に感じられる県政運営が図られてまいりましたことに、改めて敬意を表する次第であります。
 一方、財源不足を理由に地方を無視した公共事業の見直し、不況や構造改革による経済不安、介護も含めた老後の生活不安、リストラや倒産、あるいは若年層の就職難など雇用の不安、教育を初めとする子育て不安、食の安全性への不安など、激変と閉塞感の増幅に先行き大きな不安を抱いている県民の多いことも事実であり、あらゆる面での将来の不安を取り除き、140万県民のだれもが心豊かに安心して暮らせる夢県土いわての実現こそ、県政に課せられた最重要課題であろうと思います。
 そこで、お伺いいたしますが、増田知事は職員の先頭に立ち、県民の幸せを願い、日夜を分かたず積極果敢に県政運営に当たってこられましたが、みずから手がけた夢県土いわての創造を目指す県総合計画の具現化としての3年余りの成果をどのようにとらえているか、また、今後の取り組みについてお示しをお願いいたします。
 特にも、私は機会あるごとに、均衡ある県土の発展、つまりは内陸部と県北・沿岸部との地域格差解消について、ただしてまいりました。知事もこれにこたえ、道路を初めとする社会基盤の整備に、限られた予算を有効に活用しながら取り組んでいただき、着実にその成果があらわれ、時間的格差は確実に解消されてきております。しかし、後ほど詳しく述べますが、所得や高齢化、情報面などではむしろ拡大しており、職場が少ないことによる若者の圏外流出、水産業などの不振がこれに拍車をかけております。そこで、県北・沿岸地域の振興策について、現状認識と今後の取り組みについてお示し願います。
 次に、市町村合併についてお伺いいたします。
 平成16年度末を期限とする市町村合併特例法に関連して、県内でも連日その取り組みが報道されておりますが、昨年11月には大船渡市と三陸町との合併が県の支援により実現いたしました。今日のように厳しい財政状況の中で、多様化する住民ニーズにこたえ、行政サービスを維持向上させ、地方分権に対応するには、市町村の行政能力の向上はもちろんのこと、合併の推進も重要課題であると思います。
 そこで、お伺いいたしますが、県内の合併推進状況と今後の県の対応策についてお示しをお願いいたします。
 また、既に合併が実現をしている大船渡市の合併の成否が、今後の推進に大きく影響を与えるものと存じますが、国、県としての支援策についてお示しを願います。
 次に、水産振興についてお伺いいたします。
 現在、浜ではサンマ漁が最盛期を迎え、秋サケも始まろうとしております。サンマの水揚げが始まると魚市場もまちも活気づき、また、仲買、運送、水産加工、製氷、冷凍冷蔵業者など、実にさまざまな人々が水産物で支えられていることを今さらながら実感させられます。私は県議会で、均衡ある県土の発展とともに、水産振興について機会があるたびに質問を繰り返してまいりました。それというのも、沿岸の地域経済における水産業の重要性を肌で実感しているからであります。本県の水産業は、秋サケの3年続きの不漁、ワカメの生産量の減少と価格の暴落と、明るい材料がなかなか見えないのが現状であります。これを裏づけるかのように漁業生産量は、平成7年から12年の5年間で23万5、000トンから19万9、000トンへ、生産金額は512億円が481億円へと減少し、さらに漁業経営体も6、815から5、847へと大幅に減少しております。
 一方で、沿岸地域の状況にも厳しいものがあります。私は平成11年の第2回定例会において、県北・沿岸地域は、県平均と比べて人口の減少、高齢化が進み、所得が低い現状を指摘いたしました。最新のデータで沿岸地域の状況を見ますと、沿岸地域の人口は、平成7年から12年の5年間で96%と県平均を上回る率で減少しております。また、65歳以上の人口比率は、県平均ではこの5年間で18%から22%と高齢化が進んでおりますが、沿岸地域では19%から24%と県平均以上に高齢化が進んでおります。一方で、沿岸地域の人口1人当たりの所得は、県平均の86%と大きな所得格差があります。このように沿岸地域は県平均を上回るペースで人口の減少、高齢化が進み所得格差も是正されておりません。このままで推移すると水産業の不振が沿岸地域の不振を加速させ、これが沿岸地域の活力低下、若者の労働力の流出と高齢化を招き、この結果、水産業の一層の不振につながるといった悪循環が起きるのではないかと不安になってまいります。このため県におきましては、沿岸地域の発展のためにも水産振興を重点課題として積極的に取り組んでいただきたいと考えますが、知事の決意のほどをまずお聞きかせいただきたいと思います。
 続きまして、水産振興の各課題についてお伺いいたします。
 まず、水産基盤の整備についてであります。
 近年、水産業を取り巻く環境につきましては、先ほど申し上げましたとおり極めて厳しい状況にあります。しかしながら、水産業は国民への良質なたんぱく質の供給源であるとともに、すぐれた栄養特性を有する水産物を供給する極めて重要な産業であります。今後とも国民に安全で安心できる水産物を安定的に供給していくためには、水産資源の適切な管理のもと、水産動植物の増殖から漁獲、陸揚げ、加工、流通まで一貫した水産物の供給体制づくり、意欲ある担い手の確保などが必要であり、今こそ漁業生産基盤である漁場や漁港、そして漁業者の定住促進につながる漁村の一体的、効率的な整備が求められているところであります。国においては、こういった情勢を踏まえ、平成14年度を初年度とする漁港漁場整備長期計画を策定し、ことし3月に公表しているところでありますが、この中で、水産動植物の増養殖推進の拠点や生産流通及び衛生管理強化の拠点の整備、藻場の保全・創造、漁村活性化のための整備を実施することとしております。本県においても、本県漁業の大きな特色である、つくり育てる漁業を推進するための漁港・漁場の整備や、安全な水産物を提供するための衛生管理の強化などを図るため、漁港漁場整備長期計画を積極的に推進していくことが必要であると考えております。
 そこで、お伺いいたします。国や地方の財政構造改革が進み、公共事業を取り巻く状況がますます厳しくなる中、本県の漁港・漁場などの水産基盤の整備について、今後どのように進めていくのか、県のお考えをお尋ねいたします。
 また、大船渡漁港の整備についてでありますが、本県沿岸南部における水産物流通加工の拠点である大船渡魚市場は、施設の老朽化と衛生管理の強化の必要性などから新築することとし、昨年2月に大船渡市が大船渡魚市場整備基本構想及び基本計画案を公表したところであります。この新しい魚市場は、現在の魚市場に隣接する北側海面を埋め立て造成し建設する計画となっており、市場建設を円滑に進める上で、まずもって大船渡漁港の重点整備が必要となっているところであります。県では、大船渡市の合併建設計画における重点事業である大船渡漁港の整備について、今後どのように進めていくお考えなのか、お伺いいたします。
 次に、漁業担い手対策についてであります。
 県内の漁業就業者数は、平成12年には1万1、660人でありますが、5年前の平成7年に比較して17%減少しております。この年齢構成を男子について見ますと、15歳から39歳までの区分では、平成12年には1万3、500人で5年前の32%も減少し、40歳から50歳までの区分では4、200人で22%減少しております。その一方、65歳以上の区分では4、120人で6%増加をしております。このように県内の漁業就業者数は、減少とともに高齢化が急速に進んでおります。この状況がこのまま続けば、今後漁業を産業として維持していくことが困難になるばかりではなく、漁業に依存する沿岸地域社会の活力を奪うゆゆしき事態であると思います。沿岸の各地域を見ますと、漁業による所得の高い地域は担い手が確保されているように思われますことから、担い手対策としては、所得の向上が極めて重要と考えます。県として、担い手の所得の向上に向けて、どのような取り組みをするお考えなのか、お伺いいたします。
 次に、環境産業の育成についてお伺いいたします。
 さきに開催された第6回北海道・北東北知事サミットにおいて、産業廃棄物減量化・リサイクル促進税に係る制度の整備を北東北3県が連携し、平成14年度中に行うことが合意をされました。産業廃棄物に係る税制については、三重県が本年4月から実施しており、鳥取、岡山、広島の中国3県も条例が制定され、総務省と協議が進められております。三重県では、この税収を環境産業の支援に使用することとし、税条例の施行に先駆けて、昨年度から産業廃棄物を使用した製品開発、産業廃棄物の発生抑制・減量化のための施設整備、リサイクル技術の研究開発などへの支援を実施しているところであり、私は、このような三重県の取り組みを高く評価をしているところであります。一方、県では、循環型地域社会いわての形成に向け、総合的な産業廃棄物に関する条例の制定に取り組んでいるところですが、この条例制定の目的の第1として、産業廃棄物の減量化・リサイクルの促進による環境産業の育成を挙げているところであります。
 そこで、お伺いいたしますが、県では、税収の使途を含め、環境産業への育成にどのように取り組もうとしているのか、お示しをお願いいたします。
 次に、港湾整備に関し質問いたします。
 本県の経済情勢は厳しく、中でも沿岸地域の県民所得が内陸の8割しかないということは先ほど述べたとおりであり、沿岸地域の活性化を図ることが喫緊の課題であります。港湾は、内陸にはない沿岸固有の拠点施設であり、その利用や振興を図ることは、沿岸地域の活性化を図る上で最も重要なことであるとともに、大量輸送が可能な環境に優しい輸送手段であります。特にも県が強力に進めてまいりました、県産材を利用するプレカット施設などの木材製品のコンテナ輸送なども今後有望であると考えます。県は、さきに岩手県港湾ビジョンを策定しましたが、沿岸地域の活性化を図る上で大変意義深いものと考えます。
 そこで、お伺いいたしますが、まず、港湾を核とした沿岸地域の振興をどのように図っていこうと考えているのか、気仙地域に着目をして簡明にお示しを願います。
 また、ビジョンを定めるだけでは何も変わらないわけですが、その実現に向け今後どのように取り組むのか、あわせてお聞かせ願います。
 また、現在、国、県では内陸部との物流拠点港として大船渡港の永浜・山口地区の港湾整備を進めており、供用開始に向け着実にその姿をあらわし、市民も大いに期待をしております。そこで、ビジョン策定を受けて今後どのように整備していこうとしているのか、港湾の背後地周辺の整備も含めてお聞かせ願います。
 さらに、大船渡港の利活用のためには、内陸部とを結ぶ港湾関連道路の整備を促進する必要があることから、早期整備について地域を挙げて県に要望をしているところでございますが、今後の見通しをお示し願います。
 また、これに関連し、静脈物流拠点の整備についてお伺いいたします。
 前にも述べたとおり、沿岸地域の活性化のためには、港湾背後の広大な土地を有効活用して新しい産業を興すことが、さらに効果的であると思いますが、大船渡市には地元企業の高度なリサイクル技術と工業用地があります。国は本年5月にリサイクルポートの第一次指定を行ったようですが、本県での取組状況についてお示しを願います。
 次に、最近の雇用情勢と雇用対策についてお伺いいたします。
 我が国の経済状況は、企業の生産活動は持ち直しの動きが見られるなど、先行きについて景気が回復に向かうことが期待されるとのマスコミ報道もありますが、雇用情勢は、7月の完全失業率が5.4%と依然として高い水準にあり、厳しい状況が続いております。本県でも有効求人倍率が前年度を下回る極めて厳しい状況と認識しております。
 そこで、県は、最近の雇用情勢をどのようにとらえているものか、まずお示し願います。とりわけ、沿岸地域の雇用情勢は県内においても厳しいものがあると思われますが、このような厳しい雇用情勢に対する県としての対応策について、県全体と沿岸地域に分けてお示し願います。
 また、この厳しい雇用情勢に即対応するため設置されました、緊急地域雇用創出特別基金事業の推進状況と、今後の取り組みについてもお示し願います。
 次に、労使関係紛争のあっせん制度についてお伺いいたします。
 全国に先駆けて知事の英断により制定されました個別労働関係紛争の解決の促進に関する条例についてお伺いいたします。
 最近の社会経済情勢の変化に伴い、雇用関係に関し個々の労働者と使用者との紛争が増加している状況にあり、これに迅速かつ適正な解決を図るため、さきの6月県議会に成立した個別労働関係紛争の解決の促進に関する条例により、8月から地方労働委員会への委任によるあっせん制度が施行されました。
 そこで、県民への周知方法及び現在までの取扱件数、岩手労働局との連携状況と今後の対応策についてお答えを願います。
 最後に、シカの食害の状況と対策についてお伺いいたします。
 気仙地域は典型的な中山間地域を形成し、農業センサスによると経営耕地面積は10年前の69%に減少し、耕作放棄面積は146%の577ヘクタールに増加しており、また、耕作放棄率については、地域全体で22%に達し、地域の3市町すべてが県内のワーストテンに入っている状況となっております。これらの主な原因の一つに、当地域におけるシカ被害が多大であることが考えられ、ただでさえ作業の大変な中山間地域において、シカによる農産物や林木の被害が急増した結果、農林業者の生産意欲が減退し、農林業離れにつながったものと推測しているところであります。
 御案内のとおり、北限のホンシュウジカとして知られる五葉山周辺に生息するシカ対策については、県、市町、関係機関が連携して、平成12年に五葉山地域のシカ保護管理計画を策定し、保護管理対策を実施してきたと承知しております。しかしながら、この計画の中で五葉山地域のシカの適正生息数を2、000頭として調整してきた結果、被害が減少してきたとの報告がありますが、地元農林業者の間では、今ではシカによる被害が当たり前のこととなり、あきらめて被害報告をしなくなっているとも聞いております。また、これまで五葉山周辺に生息していたシカは、海岸部や里近くまで移動し、シカの生息域が拡大してきているとの調査報告もあります。
 今、気仙地域の農林水産業にとって、五葉山地域におけるシカ対策も重要ではありますが、里や海岸近くまで拡大してきたシカの有害駆除が非常に重要と思います。私は、これまでのシカ対策を一歩進め、シカ対策の強化や今までの対策を見直す必要があると痛感しております。
 県は、シカ被害の状況をどのように把握し、対策を講じようとしているのかお尋ねをいたします。
 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 田村誠議員の御質問にお答え申し上げます。
 初めに、総合計画についてお尋ねがございましたが、現在の総合計画には五つの社会というものがございまして、その社会ごとに施策が体系づけられているわけですが、その中で、快適に安心して暮らせる社会、それから、ネットワークが広がり、交流・連携が活発に行われる社会、さらには、個性が生かされ、共に歩む社会、この三つの社会に属している事業などについては、主要な指標の進捗状況はおおむね順調であると見ております。それは、昨年度から本格導入を図った政策評価の結果で、県民満足度などさまざまな数値を見て政策評価をしているのですが、そうしたことから見ますと、今申し上げました三つについてはほぼ順調に推移している、このようにとらえております。
 しかし、創造性あふれ、活力みなぎる産業が展開する社会、そして、自然と共生し、循環を基調とする社会、この残り二つの社会については、例えば、商店街従業者1人当たりの販売額、それから、県民1人1日当たりごみ排出量など、これは一つの例示ですけれども、こうした指標がかなり厳しいものになっておりますし、今申し上げました残り二つの社会に属するものについては、かなり厳しい数値になっているものが多くございます。我が国あるいは我が県も含めて、経済も基調がかなり厳しいといったことなども、こうした分野に色濃く出てきているもの、このように思われるわけでございます。
 いずれにしても、私どもとしてはこうした指標の進捗状況が厳しくなっているという評価結果は、それはそれとして厳粛に重く受けとめておりまして、こうした分野への施策の重点化をこれからも一層徹底して図っていく必要がある、そして、改善すべきところは大いに改善して、県民の満足度を着実に高めるように努力していかなければならないと考えています。
 実は、この総合計画の策定以来、社会経済情勢もかなり大きく変化してきておりまして、この間、景気がさらに悪化するとか、失業率が上昇する、それから食の安全の問題、さらには産業廃棄物の不法投棄の問題など、県政については極めて困難な問題が山積しておりますし、それぞれ着地点の見えにくい、全体としても混沌とした時代に置かれてきている、このように実感するわけでございます。
 こうした時代であるからこそ、私どもとしては、不安感や焦燥感にいたずらに流されることのないようにして、柔軟な発想と創意工夫によって自分たちの暮らしを創造していくことが必要である、このように考えております。引き続き、私どもも政策評価結果やこうした社会経済基調の大きな流れなどを十分に踏まえて、あくまでも生活者の視点、それから地域の視点に立って、それぞれの施策の実効性を高め、総合計画全体の推進に全力を挙げて取り組んでいく考えでございます。
 次に、県北・沿岸地域の振興策についてお尋ねございましたが、この県北・沿岸地域は、全体として気象条件が大変厳しい、また地理的・社会的条件に恵まれない状況であったという特徴がございますが、逆に、こうした地域には雄大な自然空間や豊かな農林水産資源が数多く存している、また、歴史的に見ても、縄文の遺跡や今に伝わる雑穀文化など、やはり我が国の中では特色ある、歴史・文化というものを有している、そして、これが21世紀においては新たな発展の可能性を秘めた地域となり得る、こういうふうに考えております。
 この地域の今後一層の振興を図るためには、まず、地域間の交流と連携を促進していくことが第一かと思っておりますし、それぞれの地域が魅力的な地域づくりを進めることによって、それぞれ個性や特性がさらに磨かれて地域の自立につながる、こういうふうに期待をしております。
 今申し上げましたようなことを実現していくためにこれまでに行ってきたのは、まず基盤整備をしっかりやるということで、東北新幹線の盛岡以北の整備、これはことしの12月で終わるわけですが、これがございますし、それから、東北横断自動車道の釜石秋田線と三陸縦貫自動車道などの高速交通ネットワークの形成、これも今いろいろな問題に直面していますが、全力を挙げてやっていきたいと思います。それから、沿岸部に展開する重要港湾を初めとする港湾の整備、それから、生活に関係するところでは、遠隔医療などの情報ネットワークの構築、そして生活基盤である下水道の整備、こういったもろもろのいわゆる社会インフラと称されるものの整備をさらにしっかりと進めていくということがまず基本であろうと。
 そして、こうしたインフラ整備のもとに、それぞれの地域にございます地域資源を活用した観光あるいはグリーンツーリズムの推進、そして農林水産物のブランド化などを行っていく。そして、それぞれ産業の振興につなげていくといったことが、これから必要なことだと思います。また、地元学の手法や地域活性化事業調整費の活用といったことも重要でございますし、地域の視点に立った個性あふれる、そして活力に満ちた地域づくりを、そうしたものを用いながらさらに推進していきたいと思っております。
 今後も、今申し上げましたような方向で、さらに県政の中でも、今までいろいろな不利な条件に置かれていた、特に県北・沿岸地域の振興をさらに図って、そうした地域を自立的な発展が可能となるような地域にしていきたいと考えております。
 それから、水産業の振興についてお尋ねがございましたが、やはりこの水産業というのは、沿岸地域経済の基盤をなしているものと考えておりまして、漁業はもとよりですが、水産加工・流通にわたる大変すそ野の広い産業でありますので、浜に活気がなければ沿岸地域全体が沈んでしまうということで、この水産業、漁業、それから加工・流通の面も含めてぜひこれを振興していきたい、このように考えております。
 今まで県で取り組んできたやり方というのは、やはり本県の海が清浄で資源豊かな漁場であったという特性を持っておりますので、ぜひこの特性を十二分に生かしていきたい、そして漁業の面では、つくり育てる漁業を推進する。それから、そうした漁業と両輪をなしている水産加工業については創意工夫をぜひ生かして、新しい加工形態というものをより多くつくり出していく、こういう方針で今まで取り組んできたわけでございます。
 今現在、200海里の体制というのが定着する中で、今後ともこうした水産業の維持・発展を図っていくためには、やはり漁船漁業においては適正な資源管理ということが必要でございますし、先ほど申し上げましたつくり育てる漁業を一層推進していくということが重要でございます。したがって、今申し上げましたことを支える上では、漁港や漁場などの水産基盤の整備というのを今まで以上に図っていかなければならないと思いますし、サケ、ヒラメなどの増殖体制を一層強化する、それから、カキやワカメなどの養殖にも力を入れていく、こうしたことが必要だろうと思います。
 今申し上げましたカキやワカメなどの養殖についてですが、こちらについては海外から安い値段の輸入物が随分入ってきているわけで、これについての競争力を高めるということが一層必要でございます。そのためには、協業化を志向していくということも必要ですし、それから、技術的には省力化を進めるといったことも必要だと思います。こうした技術開発なども今進めているところでございまして、こうしたことを行うことによって、担い手の意欲がさらに高まるような環境の整備を図っていきたいと思います。
 また、消費者の視点というのはこの分野でも大変重要でございまして、安全・安心な水産物の提供ということはこれからも至上命題ですので、SRSV(カキの食中毒ウイルス)対策や産地市場、それから水産加工場の衛生管理の強化、例のハセップなどの一層の徹底を図りまして、こうした衛生管理の強化を図るといったこと、それから、ワカメなどの前浜資源を活用した水産加工品の新たな開発といったようなことで、この岩手ならではのブランドづくりにも取り組んでいきたいと思っております。
 今幾つかのことを申し上げましたけれども、そういったところに施策を重点化するといったようなことで進めていきたいと思っていまして、そのためには、県と市町村、それから関係団体との連携が一層必要だろうと思っております。その市町村、関係団体との十分な意思疎通、理解を得ながら、水産業の振興を図っていきたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承願います。
   〔地域振興部長飛澤重嘉君登壇〕

〇地域振興部長(飛澤重嘉君) 市町村合併についてでございますが、県内の状況は、盛岡地域におきまして、盛岡、矢巾、滝沢の3市町村の法定協議会設置に向けまして、盛岡青年会議所等が署名活動を実施いたしまして、来月の中旬には各首長に対しまして直接請求が行われる予定であるというふうに伺っているところでございます。
 また、両磐地域におきまして、一関市が10月に任意協議会の設置を目指しまして関係町村に対しまして呼びかけを行っておりますほか、その他の地域におきましてもさまざまな議論や動きが見られるところでございます。
 県といたしましては、平成17年3月の合併特例法の期限を念頭に置きまして、それぞれの市町村において住民の皆さんが一層議論を深めまして、本年度内には結論を見出していただきたいと考えております。
 今後におきましても、地域における市町村合併シンポジウムなどを年内に何カ所かで実施いたしまして、それとあわせて、8月に作成した県の市町村合併支援プランに盛られた支援策を積極的に実施してまいりたいと考えております。
 また、大船渡市につきましては、大船渡港湾整備事業などを含む建設計画の着実な推進ということとあわせまして、県及び国の合併支援プランの活用など、新しいまちづくりに向けた市の取り組みを積極的に支援してまいりたいと考えているところでございます。
   〔農林水産部長佐々木正勝君登壇〕

〇農林水産部長(佐々木正勝君) 水産基盤の整備についてでありますが、本年4月にスタートいたしました漁港漁場整備長期計画におきましては、水産業の健全な発展と漁村の振興を図るため、漁港・漁場・漁村の一体的・総合的な整備を基本目標としているところであります。
 この長期計画におきましては、荒天時にも安全に船を係留できる港の整備に加えまして、女性や高齢者にやさしい漁業就労環境の整備を図ることとしているところであります。
 また、海藻が育ちやすい漁港施設や防波堤背後の波の穏やかな水面を活用した漁場の整備、さらには、漁場の水質保全を図るための漁業集落排水施設などの整備を推進することとしております。
 その実施に当たりましては、厳しい財政環境ではありますが、重点化やコスト縮減を図りながら、計画の目標が達成されるよう努めてまいる考えであります。
 次に、大船渡漁港の整備についてでありますが、大船渡市においては、衛生管理の高度化に対応した地方卸売市場を新築するため、県に対しその用地造成や岸壁等の施設整備を要請してきているところであります。
 県といたしましては、大船渡市と連携をとりながら、大船渡漁港が合併建設計画に沿って整備されるように努めてまいりたいと考えております。
 次に、漁業担い手の所得向上についてでありますが、本県の漁業就労者は、青年漁業者が減少する一方で、高齢者が増加しており、漁業担い手が意欲を持って経営に励み、また後継者に新規参入していただくためにも、漁業によって他産業と遜色のない所得を確保することが重要と考えております。
 こうした観点から、県ではこれまで、サケ、ワカメなどつくり育てる漁業やカレイなどの資源管理による生産量の増大とあわせまして、水産物のブランド化や加工の促進による生産物の高付加価値化を図るとともに、こうした事業を推進する漁業協同組合への共同利用施設の整備を進めてきたところであります。
 今後、さらに漁業担い手の所得向上を図っていくためには、担い手を中心とした生産構造の改革が重要でありますので、本年度から実施しております中核的漁業者協業体育成事業により、ホタテガイ養殖の省力化機器、カキ養殖の衛生管理機器の導入などに支援するとともに、漁業士制度を活用し、漁業者の経営感覚と生産技術の向上に努めてまいります。
 こうした担い手に対する施策の重点化によりまして、所得の向上が図られるよう一層支援してまいりたいと考えております。
   〔環境生活部長時澤忠君登壇〕

〇環境生活部長(時澤忠君) まず、環境産業の育成についてでありますが、県では、環境基本計画や昨年3月に策定いたしました資源循環型廃棄物処理構想におきまして、廃棄物を資源として利用し、できる限りゼロに近づけるゼロエミッションの考え方を取り入れまして、リサイクル産業や環境保全型産業などの、いわゆる環境産業の育成を推進することとしております。
 このため、現在、リサイクル製品の市場拡大を図るための認定制度や環境保全協力金、産業廃棄物の減量化・リサイクル促進のための税制度の創設など、総合的な廃棄物対策の制度化に取り組んでいるところでありまして、この中で、環境産業の育成などゼロエミッションを積極的に推進することといたしております。
 特に、税収などによる環境産業の育成のための具体的な方策としましては、廃棄物の発生抑制や減量化、リサイクルに必要な設備機器の整備への助成でありますとか、廃棄物の循環利用を目指した研究、技術開発などへの支援を考えているところでありまして、税条例の施行に先駆けての実施も含めまして、現在検討しているところであります。
 また、税制などにつきまして共同して取り組みを行っております北東北3県が、環境産業の育成施策についても共通認識のもとに取り進める必要があると考えておりまして、3県のワーキンググループにおいて、環境産業育成のためのビジョンの策定について提案を行っているところでありまして、今後、さらに具体化に向けての検討を行ってまいりたいと考えております。
 次に、シカ被害の状況と対策についてでありますが、県では、平成12年度に特定鳥獣保護管理計画を策定いたしまして、個体数調整や被害防除対策に取り組んでいるところであります。この結果、平成13年度の農林業被害額でありますが、農林水産部の調査によりますと、約3、800万円となっておりまして、平成5年度のピーク時と比較しまして約20分の1に減少しておりますが、農業被害額につきましては、平成10年度以降は約1、300万円から1、500万円の間で推移をしております。
 また、シカは計画対象地域では適正生息数に近づきつつあると推計されておりますが、一方では、北上高地においてもシカが目撃されておりまして、被害の拡大が懸念されているところであります。
 このため、今年度から平成18年度までの第2次保護管理計画を策定し、シカの生息域の拡大を阻止するため、これまでの計画区域を拡大するとともに、引き続きネットさく設置など、被害対策や有害駆除を実施してまいりたいと考えております。
 中でも、里などでの被害防止につきましては、特に農業被害を抑制するために重要でありますので、関係部局とも連携いたしまして、耕作地への防護ネットの設置や造林地への忌避剤散布など一層の推進に努めてまいることといたしております。
 また、有害駆除につきましては、作付時期や収穫時期など被害が発生しやすい時期に重点的に実施することや、銃器を使用できない場所ではわなを活用するなど、有害駆除を効果的に実施することとしておりまして、被害対策に努めながら、五葉山地域の北限のホンシュウジカ個体群の適切な保護管理を図ってまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長猪股純君登壇〕

〇県土整備部長(猪股純君) 港湾の整備についてでありますが、まず、港湾を核といたしました沿岸地域の振興につきましては、岩手県港湾ビジョンでは、県内各港湾のポテンシャルを生かして機能分担を図ることとしておりまして、物流拠点の形成、地域活性化拠点の形成、防災機能の強化、環境との共生、こういった四つの視点によりまして、沿岸各港湾の整備や利活用の促進を図ることとしております。
 その中で、大船渡港につきましては、石炭やセメントなどのばら貨物の県内最大の取扱拠点港としての施設の拡充や、中部や近畿方面との国内貨物の定期航路の開設を目指すこととしておりまして、今後の集荷によっては外国とのコンテナ定期航路の開設も期待されるとしております。
 また、リサイクル施設の立地など静脈物流拠点の形成や主要観光地・各種イベントと連携して大型旅客船の寄港を促進するとともに、防波堤や津波防災ステーションなどの整備を推進するほか、閉鎖水域でもあります大船渡湾内の水質回復に努めることとしております。
 これらの実現に向けて、県、大船渡市、商工団体や住民などが一体となって推進体制を築きまして、行動計画を策定し、組織的に取り組んでいくこととしております。
 次に、永浜・山口地区の港湾整備についてでありますが、物流拠点の形成に向けて、大型外国船やコンテナ船も係留可能な水深13メートル岸壁の整備が、平成18年度の完成を目指して国の直轄事業として進められておりまして、県においても、水深7.5メートル岸壁の整備を進めているところであります。
 また、これらにあわせまして、背後地における埠頭用地造成事業や企業誘致に対応する工業用地造成事業、さらには、主要地方道大船渡綾里三陸線赤崎地区の交通量の軽減などを図るための臨港道路整備事業など、港湾を核とした地域の活性化に鋭意取り組んでいるところであります。
 次に、大船渡港と県の内陸地域とを結ぶ港湾関連道路の整備についてでありますが、主要なアクセス道路となります国道397号につきましては、現在、住田町の小股・下大股地区、また住田町の高屋敷地区及び江刺市の赤金から分限城までの地区におきまして、重点的に改良・整備を進めておりまして、また津付ダムに関連する区間につきましては、ダム計画と調整を図りながら道路計画の策定を進めているところであります。
 これらの道路整備については、港湾整備事業と十分連携を図りながら、今後ともその推進に努めてまいりたいと考えております。
 次に、静脈物流拠点の整備についてでありますが、本年の5月30日に国によるリサイクルポートの第1次指定がございまして、特定重要港湾であります室蘭港・苫小牧港、東京港、神戸港及び北九州港が指定されたところであります。
本県におきましては、リサイクルポートの2次以降の指定に向けまして、エコタウンプランと調整を図りながら、具体的な事業内容の明確化など計画の熟度を高めていくよう、地元とともに取り組んでいく考えであります。
   〔商工労働観光部長照井崇君登壇〕

〇商工労働観光部長(照井崇君) まず、最近の雇用情勢についてでありますが、岩手労働局によりますと、6月の有効求人倍率が昭和41年5月以降で最も低い0.36倍となった後、7月は0.40倍と0.04ポイント上昇したところでありますが、月間有効求人数は6月まで前年同月を下回って推移し、月間有効求職者数も依然として前年同月比10%以上の増加を示すなど、雇用情勢は引き続き厳しい状況にあるものと認識しております。
 このような厳しい雇用情勢にきめ細かく対応するため、県では、県内各地域の雇用情勢等の把握に努めながら、今般、岩手県総合雇用対策を改訂したところであります。施策の基本方向といたしましては、緊急地域雇用創出特別基金等を活用した市町村事業の大幅な拡大を図り、より地域に密着した即効性の高い雇用や就業機会の創出を図るほか、雇用のマッチング支援として、公共職業安定所等との緊密な連携のもとに、求人開拓を推進し、求人情報の提供に努めるとともに、離転職者に対する委託訓練の拡充を図るほか、雇用のミスマッチを解消しながら就職を支援するため、各地方振興局に、仮称でありますが就職支援センターを設置することとしております。
 さらに、セーフティネットの充実については、国等が行う各種助成金制度等の周知を図るとともに、雇用創出等のための産業支援を積極的に行ってまいりたいと考えております。
 また、沿岸地域の釜石、宮古、久慈地区については、地域雇用開発促進法による雇用機会増大促進地域に指定され、国から事業主に支給される地域雇用開発促進助成金等を活用した雇用開発が推進されているところであります。
 さらに、大船渡地区を含む沿岸地域における離転職者の職業訓練についても、現在、OAビジネス科や建設機械運転科などの委託訓練を実施しておりますが、年度後半に向けて定員を80人から150人にふやすこととしております。
 緊急地域雇用創出特別基金事業の進捗状況につきましては、平成14年度当初予算において、230事業、新規雇用2、184人を計画し、8月末日現在で152事業が着手され、新規に雇用された人員は1、198人となっております。今後の取り組みといたしましては、より地域に密着した効果的な事業に積極的な対応ができるよう、市町村事業へのシフトを進めることとし、9月補正予算において市町村に対する補助事業として127事業、4億8、600万円余を計上したところであります。
 次に、労使関係紛争のあっせん制度についてでありますが、個別労働関係紛争の解決の促進に関する条例の県民への周知方法といたしましては、制度の概要を記載したパンフレットを作成し、労働者団体及び使用者団体を通じて傘下の組合及び事業所に配布するとともに、各地方振興局において労働相談等の際に相談者に配布しているところであります。また、新聞、ラジオ、全世帯配布のいわてグラフ、県のホームページなど県の広報媒体を活用するとともに、市町村の広報等を通じて県民の皆様に広くお知らせしております。8月1日の施行日以降現在までの取扱件数につきましては、地方労働委員会が受理したあっせん申請は3件であり、そのすべてが解決しております。また、あっせんに関する相談は9件となっております。
 岩手労働局との連携につきましては、岩手労働局と県の関係機関で構成する個別労働紛争解決制度関係機関連絡協議会を7月29日に開催し、それぞれが持つあっせん制度の仕組みについて理解を深めるとともに、今後も運用状況等について情報交換を行いながら、各関係機関が個別労働関係紛争の迅速かつ適正な解決を図るよう努めていくこととしたところであります。
 県といたしましては、今後におきましても、このあっせん制度について引き続き周知に努め、また、労働相談窓口において相談者に対する適切な情報提供及び助言を行うとともに、あっせんの申請があった場合には、あっせんを行う地方労働委員会に速やかに取り次ぎ、紛争の迅速な解決が図られるよう対応してまいりたいと考えております。

〇議長(谷藤裕明君) 次に、工藤篤君。
   〔40番工藤篤君登壇〕(拍手)


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