平成14年9月定例会 第15回岩手県議会定例会会議録

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〇37番(長谷川忠久君) つい最近、「焼き鳥「門扇」一代限り」という本を読む機会を得ました。著者は岩本一宏さんで、野球殿堂入りした岩本義行さんの御子息だそうですが、焼き鳥というシンプルな料理を、フランス料理のフルコースを食したと同じ満足感を味わえるまで進化させたと言われる伝説的な人物で、最近、56歳で、一代限りで惜しまれて店を閉じたそうであります。この本で印象に残るのは、一世代を画した人物の身の引き方でございます。
 フランス料理界の帝王だったジョエル・ロプションが自分の店を畳むとき、やめるなら、料理人として最高の状態のときにこそ身を引きたい。レストランを開きながらいつも考えていたのは、そのことで、それが理想だったと言い、1996年、当時51歳で店を畳んだそうであります。
 著者の岩本一宏氏も、私は、店を始める前から、引退の時期を考えていたような気がする。自分は、職人として十分満足しています。やれることはすべてやりました。思い残すことはありませんと、惜しまれつつもさばさばと閉店したとのことでございます。
 私は、この本を読み、増田知事の来春実施される統一地方選挙についての談話、殊にも、平成13年12月定例会での佐々木俊夫議員とのやりとりや、その直前の記者会見を思い起こしたのでございます。
 知事の発言は、3期、最大でも4期がやはり節目ではないか。何度か任期を重ねることについて否定するものではございませんけれども、しかし、たとえこうした選挙という関門を経ていましても、やはり多選といいますと行政の硬直化、さらにはマンネリ化などの弊害を招くことになるのではないか。やはり、どんな場合でも5期以上はやるべきではないというものでした。
 知事の発言を聞いただれもが、3選への出馬表明とともに、身を挺して、県勢発展と県民福祉の向上に最大の努力をするとの宣言と解したと思うのでございます。
 人間、トップギアを入れてからの仕事の状態をそのまま持続できるのは、せいぜい10年から長くて30年ではないでしょうか。短命なのは力士などのスポーツ選手。長命なのは舞台人。一生が芸の修行ですと言いながらも、円熟するのと枯渇するのとは意味が違い、しかも、人気商売であるから、いかに芸が磨かれていようが、人々に愛される存在でなくてはならないとも、またこの本では述べております。
 政治家も舞台人と共通するところが多いのですが、芸人には、名人と言われるかなり高齢の方もおられますが、その地位を保持するためには、日々これ新たな心で精進されておられるわけで、政治家も精進次第で、あらかじめ3期とか4期とか決めるのはいかがかと、大きなお世話だと考える人もおられるでしょうし、強大な権限を有するアメリカ合衆国大統領は2期8年と決められており、知事も、アメリカ大統領と実際は役割と責任では大きな差異があるのでございますけれども、形の上では同じであり、2期でよいのではないかと思う人もいるのだと思います。
 日本人は、元来、他人の社会観や人生観に立ち入ることを避けてまいりましたが、知事のリーダーシップがその都道府県の消長を決めかねない現在、行動のエネルギー源である知事の社会観や人生観は、その地域に大きく関係するものと思います。できれば、出処進退のあり方とともに、知事の社会観、人生観をお伺いできればと思いますが、いかがでしょうか。
 さて、地方財政危機と地方分権への対応で、地方自治体においては、今、三つの新しい重要な動きが同時進行していると言われております。
 第1は、地方分権時代の本格的な実現に必要な地方自治体の行財政運営能力向上を目指した市町村合併の動きであり、第2は、過去から連綿と続く施策上の惰性としがらみを断ち切るために、政策効果の定量的な評価によって成果重視の観点からの公費を抑制し、自治体の政策メニューの効果的リストラを行おうとする事務事業評価システムの導入の動きでございます。そして第3は、近年のIT技術の進歩に触発されて進んでいる電子自治体の構築への動きであると言われております。
 今回の一般質問では、県の電子自治体への対応についてただしますが、その前に、それが現実になれば大きな混乱がもたらされるであろうと思われ、関心を寄せざるを得ない課題について2点質問をさせていただきます。
 まず1点目は、合併特例債についてでございます。
 去る5月に、仙台市で、北海道・東北6県議会議員研究交流大会が開催されました。その際の講演は、千葉大学法経学部教授の新藤宗幸氏であり、次のような講義があったのでございます。
 合併特例債70%はですね、その交付税措置をするということを本当に断言していないのだけれど、そういうことを言っていますね。しかしですね、本当によく考えていただきたいことは、日は沈みっ放しでありまして、交付税が減額されていく中で、この自治体が借金として背負ったものを、その70%もどうして交付税で措置すると思いますか。あり得ないですよ、こんなこと。ましてや、交付税全体で減らして、地方の財源を若干でもふやそうと、自治体間にアンバランスが出たって、そんなことはそれぞれの責任だと、こういう論調ですから、どうしてここで借金して、それがいずれ返ってくるということに、そういう話になるのか。
 私も、今後の地方交付税については大きな関心を持ち、不安を抱いておりました。委員会では、いわゆる交付税措置される良質な起債が、いつまで良質な起債であり続けることができるのかという趣旨の質問をさせていただきましたし、デフレ対策、景気回復のための減税が来月にも国会で議論されるのですが、法人税も俎上に上り、地方交付税の原資が減少する可能性がかなり高いと考えるのが、一般的ではないかと思うのでございます。そんなことはない、国は必ず約束を守る、交付税の原資が縮小したとしても、国庫負担の繰入率を上げるとか、消費税からの繰り入れをふやすとかして約束を守るはずだ。私は、地方の財政基盤向上は、地方分権確立のため必須の条件であり、そのため、合併は避けて通れないと考えていますので、私もそう思いたいのですが、市町村合併を推進する行政当局は私と同じ思いでしょうか、お伺いをいたします。
 2点目は、事務事業評価についてでございます。
 日本が太平洋戦争に突入せざるを得なかった大きな原因の一つに、強大な組織を誇った陸軍の組織防衛論があったと言われますが、改革を阻害し時代の転換をおくらせる要素に、当事者が意識しようがしまいが、組織防衛の考えがあります。
 本県においては、厳しい財政環境の中にあって、財源の効率的・効果的な活用を図るため、平成9年度からは事務事業評価を、平成10年度からは公共事業評価を実施し、平成12年度には総合計画の着実な推進を図るため、主要事業の進捗状況を把握することを基本とした政策評価を試行的に導入したところでございます。また、平成13年度からはこれらの評価手法を統合し、政策評価システムとして、総合的・体系的な評価を行っているところでございます。さらに、評価の客観性や透明性などを確保するため、行政外部の委員で構成する政策評価委員会や公共事業評価委員会を設け、評価の客観性を高めているところであり、全国でも早い時期にこのような外部の意見を反映する仕組みを導入したことに対しましては評価するものでありますけれども、しかし、政策評価システムのうち、事務事業評価については外部の意見を反映する仕組みが取り入れられておらず、県の自己評価のみとなっているのではないでしょうか。組織防衛的な考え方を排し、客観性や透明性を確保するためにも、外部委員会を設置すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
 さて、電子自治体についてでございます。
 昨年9月に、横須賀市はインターネットを用いた電子入札を実施いたしました。今まで通常の指名競争入札で行われていた市の公共事業発注をウエブ化し、それと同時に、工事受注希望に基づく競争的入札制度を導入し、現在では業者の登録申請から入札、開札に至るまで、すべてがインターネット上で行われ、入札結果の情報は一般公開されているそうでございます。また、藤沢市や大和市など、一時的なものを含め、数十の市、町が電子会議室のシステムを導入し、成果を上げていると仄聞をいたしております。
   〔副議長退席、議長着席〕
 御案内のとおり、電子会議室は、行政が市民に政策上の課題を投げかけ、市民からの意見や政策提言を待つというものでございます。24時間稼働するわけですから、役所が開いている時間に働いている人でも、自治体に対する要望や意見を戦わす場が生まれるのですから、市民が政治に参加するチャンスが飛躍的に増加することは明白でございます。
 なお、横須賀市が電子入札を導入した結果、現場工事説明会や設計図面の受け取り時に、相互に顔を合わせることもないので応札する業者もわからない。入札参加資格は、要件を満たせばすべてオープンであるため、事前の談合は不可能となる。実際、横須賀市ではこうした制度、業務改革により、落札率は10ポイントほど下がり、全体では年間30億円以上の節約ができたと聞いております。これは、システム開発、運営費用を大きく上回るだけでなく、節約分だけ公共サービスを提供できるようになると言われております。
 電子自治体の実現によって、事務事業のすべてによい効果をもたらすかどうかについては、電子音痴の私にはわかりませんが、政府は電子政府への歩みを進めていますし、国全体の行政活動の約7割を処理する政策執行の最前線である地方自治体も、電子自治体への対応を急がなければならない、そのような気がいたしております。
 事務事業の評価制度導入、情報公開や建築物のバリアフリー施策、老人施設のサテライト方式、個人住宅を担保として生活資金を貸し付けるリバースモーゲージ制度など、地方自治体が先駆者となって中央政府の政策となったものは数多く、電子政府の考え方も、地方からの発信によるものだと言われております。
 電子自治体の推進は、間接民主主義から直接民主主義へと転換を促すものであり、私たち議員は、失業の憂き目に合う可能性もありますが、県土も広い我が県においてはメリットも大きいと思われますし、情報政策を積極的に掲げている増田知事好みの政策にも思えますので、岩手からも発信を試みてはいかがかと思います。しかしながら、残念なことに、我が岩手県は電子自治体への明確な指針を持ち合わせておりません。IT基本戦略や総務省の電子政府、電子自治体プログラムにのっとった岩手県高度情報化戦略の中に、行政情報化の推進のただ1項目があるだけでございます。
 また、岩手県における情報化の現状を見ると、情報流通では、地域別発信情報量は平成12年0.86%で、全国順位34位ですが、提供された情報量の合計を示す地域別選択可能情報量は、全国順位33位となっています。また、平成13年におけるパソコン世帯所有率は全国では45.1%に対し、岩手県は37%となっており、全国順位は37位であり、インターネット接続パソコン所有率は全国平均30.3%に対し、本県は21.2%となっており、全国順位は36位となっております。
 当局は、インターネット普及率を東北のトップクラスにするという目標を掲げ、IT講習会の実施、インターネットスクールの整備、情報キオスクの公共端末の整備、デジタルディバイドの解消などに鋭意努力されていることは認めますが、これらは他県も同様でありますし、農業、水産業、医療などの情報システムの構築はありますが、電子自治体となると道遠しの感がいたします。
 これら本県の情報化の現状や電子自治体の現状を見るとき、その実現へのハードルは高いような感じがいたします。早急に体制を整え、対応すべきではないかと思いますがいかがでしょうか、御所見をお伺いいたします。
 言うまでもなく、行政改革は手段であって、そのこと自体が目的ではないのでございます。改革の目的が不明確なまま組織機構改革などに取り組みますと、改革案はその検討過程で利害調整に直面して骨抜きになり、結果、実態は何も変わらないということが少なくございません。
 道路関係4公団改革の目的は、その中間整理に述べられているように、甘い交通需要の見通しと建設費の増加などによって膨らんだ約40兆円に達する道路関係4公団の債務について、国民負担をできる限り少なくなるよう返済していくことが目的でございます。一方、道路そのものも手段であって、道路建設そのものが目的ではございません。
 4全総では、多極分散型国土を形成するため、交流ネットワーク構築を推進する必要があるとして、高規格幹線道路網1万4、000キロの形成が閣議決定され、国が責任を持って整備することが国民に約束されたものであるように国土のグランドデザインがあって、それを実現するための手段として、道路がつくられるものであると私は理解をいたしております。確かに、これまでは道路建設が目的化し、その結果、需要予測や建設コストに甘さがあったり、民営化すれば経費は10分の1で済むと言わしめられるほど組織が肥大化したりで、その改革の必要性はだれの目にも明らかでございます。しかし、増田知事も参加されている6県知事で構成されるこれからの高速道路を考える地方委員会の緊急提言にもあるように、道路関係4公団民営化推進委員会は、高速道路の採算性を中心にして議論がなされています。中国、韓国は目覚ましい経済発展を遂げていますが、両国は国土のグランドデザインを持ち、国家的戦略で高速道路の整備を進めており、その建設スピードは目を見張るものがあります。
 一方、我が国においては、高速道路の採算性のみの議論に終始しており、将来、国際競争に勝ち残るための国家のグランドデザインを描くという観点が欠落していると指摘しているわけでございますが、この提言には、多くの都会に住む人たちも同意するのではないかと思いますし、私も、日本は何と志の低い国家になってしまったのかと、そういう感を深くするものでございます。また、全国から見れば、片隅にある小都市である釜石市にとっても、今回の道路関係4公団民営化推進委員会の中間整理には異を唱え、これからの審議を注視せざるを得ないのでございます。
 4全総の高規格幹線道路の路線の一つに、重要な空港、港湾と高規格幹線道路を連結し、自動車交通網と空路、海路の有機的結合に資するものとありますが、東北横断自動車道釜石秋田線は、それに合致するものでございます。そして現在、地球環境問題からモーダルシフトが叫ばれ、コンテナ船の巨大化が、水深15メートル以上の港湾を必要とさせているとき、釜石港は、東京から北ではハブ港湾としての役割を果たせる重要な港でもあるわけでございます。
 高速道路の新規路線の建設については、採算性を確保した上で取り組む、施行命令の全面執行について凍結、規格の見直しも含む再検討、全国料金プール制の廃止、さらには新規路線の地方負担など、到底のめるものではございません。また、三陸縦貫自動車道も、釜石市にとっては東北横断自動車道と同様の意味合いを持つものであり、さらに太平洋沿岸地域を縦走する高速交通ネットワークの形成に資するものでございます。同路線は1万4、000キロの高規格幹線道路計画のうちの一般国道の自動車専用道路として、岩手県内では三陸縦貫自動車道、八戸久慈自動車道が指定されております。
 前述したように、ハブ港湾など、全国の物流に貢献しようと将来像を設定するチャンスが到来している現在、釜石市ばかりでなく、沿岸地域全体の死命を制しかねないのが、今回の道路公団民営化推進委員会の中間整理であります。ついては、このような国の動きの中で、東北横断自動車道釜石秋田線・釜石東和間、三陸縦貫自動車道及び八戸久慈自動車道の整備の見通しと取り組みについてお伺いをいたします。
 本件に関する増田知事の数々の発言は、県民に勇気と希望を与えるものであり、建設省出身ということもあり、全国的にも注目を浴びることになるのですから、これからも先導的な役割を果たしていただけるよう、要望するものでございます。
 なお、推進委員会の議論がどうであれ、規格の見直しはあっても、東北横断自動車道の残された部分と三陸縦貫自動車道、八戸久慈自動車道は、どんなことをしても建設をするという力強い御答弁があれば幸いと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、土砂災害への対応についてであります。
 去る7月10日から11日にかけての台風6号及び梅雨前線に伴う大雨は、県内全域に大きな被害をもたらしました。釜石市に最も多い時間雨量で53ミリ、総雨量で376ミリを記録し、200年確率とも言われる近年にない記録的な大雨となったのでございます。この大雨により、市内の多くの家屋が浸水するとともに、土石流により2名のとうとい生命を失うことになったのでございます。県における土砂災害の危険個所調査によると、圧倒的に沿岸部に多く存在し、中でも釜石市は194カ所と群を抜く多さでございます。
 釜石市は、昭和30年代後半から一転して人口が減少する過疎のまちでもありますが、製鉄所の全盛のころには9万人余の人口を有し、その名残として、狭隘な平地の市街地では、今でも土砂災害のおそれのある地域でも生活しており、土地利用の面からは過密のまちでもあるのでございます。
 釜石市における急傾斜地対策などの進捗率は39%と、県内の進捗率32%よりは高いのでありますが、市街地は海に面している以外は、すべてが急傾斜地を背負っている状態であり、すべてが危険個所と言っても過言ではない状態にあることは御案内のとおりでございます。
 今回、犠牲者を出した松原地区や駒木地区など多くの地区において整備がおくれている状態にありますが、今回被害を受けた松原町や駒木町の対策はどのように講じられているのでしょうか、お伺いいたします。
 平成10年から第4次急傾斜地崩壊対策事業5カ年計画による整備が始まり、今年度末までに1兆1、900億円の事業が行われることになっております。目標値は、平成9年の整備率25%を本年末に33%に引き上げようというものでございます。しかし、政府は、長期計画の見直しを行政改革の一環として掲げており、来年度以降の治山や急傾斜地崩壊対策が不透明になるのではないかと危惧されるのでございます。また、岩手県地域防災計画によると、土砂災害対策として砂防ダムや急傾斜地崩壊対策を講ずることとしていますが、進捗状況と今後の整備に対する認識をお伺いいたします。
 最後に、国では土砂災害防止法を制定し、危険区域の周知などのソフト対策を進めると聞いていますが、土砂災害から人命を守るための国及び県におけるソフト面の今後の取組方針について、あわせてお答えいただきたいと思います。
 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 長谷川忠久議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、公職としての知事の出処進退のあり方ということでお尋ねがあったわけでございますが、この出処進退ということについては、いわゆる多選問題ともかかわってくるテーマであろうと思っております。この多選ということについて、先ほど議員が引用された答弁、以前私が本会議で述べた答弁がございまして、そのとおりの見解であるわけでございますが、やはり、有権者の審判あるいは有権者の判断を受けているからということで多選を積み重ねていくことはよくないのではないか。有権者に任せるという対処だけではなくて、やはりここでも自律――この場合の自律というのはみずからを律するということになろうかと思います――という考え方で、本人が主体的に判断をしていくことが正しい判断であろうということであのように述べたものでございます。
 それから、私の人生観ということで大変広い意味での御質問がございましたが、現在、多くの自治体あるいは国家が抱えている問題といいますと、先般もヨハネスブルクでの環境サミットなどがございましたが、ああした環境問題、あるいは、中東などは資源エネルギー問題が根っこにございましていろいろな紛争が起こっているわけでございますが、こうした資源エネルギー問題、あるいは、我が国も今その波に翻弄されております食料の問題など、いわば地球国家の中で、国境を越えて地球全体として考えていくべき問題というのは数多くございまして、こうした問題にどう対処していくのか、答えを出していくのかということが多くの自治体あるいは国家が抱えている悩みだろうと思うわけです。
 こうした地球国家ということを考えますと、その中で暮らす我々は地球市民ということになると思うんですが――地球市民という言葉があるわけですけれども――、私も、考えて見ますと、こうした人類数十億人――60億人とも言われておりますが――のうちの一人でございまして、大きな歴史の中で、社会に貢献できる私の人生というのは本当にごくわずかな歴史の一瞬、歴史の一こまにすぎないわけでございます。したがいまして、そうした中で、人生ただ一度という言葉もありますけれども、そうした一度の人生をどのように社会に貢献をしていけるのかということを肝に銘じて、やはり行動するときには失敗を恐れずに挑戦する。一方ではそうしたプレッシャーが出てくるわけですが、それも糧として進んでいくということを人生観としてこれからも取り組んでいきたいと考えております。
 次に、電子自治体への対応ということでお尋ねがございましたが、いわゆるITというのはインフォメーションテクノロジーということで、一つの手段にしかすぎないというのは、今、議員からお話ございましたとおりでございます。一方で、こうしたITという手段を活用することによりまして、行政の分野の中におきましても、県民の皆さんの利便性が確実に向上したり、県民と行政とのコミュニケーションあるいは相互のコラボレーションがさらに活性化する、そして、先ほど御指摘がございましたとおり、透明性の確保にも資する、さらには業務改革の推進によって行政の効率化がもたらされるということ、そういう意味では、こうしたITをあらゆる分野で活用していくことが大変重要である。今申し上げましたようなメリットを実現することを目的として、こうした自治体のIT化ということは積極的に進めていくべきものと考えております。
 今現在の県における取り組みとしては、庁内の、関係する課が多くございますが、そこで構成しております行政情報化・業務革新プロジェクトチームで庁内の行政の情報化に取り組んでいるわけでありますが、今年度は次のような計画を実施していこうと思っております。
 県民がインターネットを通じて、24時間いつでも申請や届出が可能となるシステムを幾つか動かしていきたい。そして実証実験をしたいと考えておりまして、例えば職業能力開発研修の参加申込手続など幾つか考えておりますが、これを今年度中に、24時間いつでもインターネットを通じて自宅から、あるいはありとあらゆるところから申請ができる、こういう体制づくりをして、この経験も踏まえて早急な電子自治体化に取り組んでいきたいと考えております。
 また、市町村の電子自治体化への取り組みについてもあわせてお尋ねがございましたが、先般、県と市町村で構成する岩手県市町村情報ネットワーク運営協議会というものをつくり上げました。そこの中でシステム運用の共同化に向けた基本的な確認がなされたところでございます。市町村の方のこうした取り組みについて、やはり人材がなかなか市町村の方にはいない、市町村間の差がかなり著しいというネックがございます。そうしたこともありますので、これからは、先般確認された基本方向を進めるということで、県でもできるだけ市町村相互の取り組みを支援する姿勢をさらに強く打ち出していきたいと思います。今後、市町村と密接な連携を図って、県民がひとしく電子自治体化のメリットを享受できる環境の整備に取り組んでいく考えでございます。
 それから、高速道路の整備についてお尋ねがあったんですが、この問題については、先ほどお話がございましたが、もう一度繰り返しますと、昨年来の国におきます特殊法人改革の流れの中で、道路関係4公団にかわる民営化を前提とした新たな組織をつくる、そして、その採算性の確保を図る、こういうことを調査・審議する機関として――これは法律に基づく委員会ですが――道路関係四公団民営化推進委員会、今井さんが委員長になっているこういう委員会を設置して、そして、これまで10数回にわたって委員会を開催してきたところでございます。こういう流れで委員会ができ上がってきたわけで、去る8月30日に中間整理というものが公表されたところでございます。
 この中間整理にはいろいろなことが盛り込まれていますが、施行命令区間の全面執行の凍結・規格の見直しを含む再検討といったようなことが盛り込まれておりまして、これから整備が本格化する本県の、特に東北横断自動車道釜石秋田線などに与える影響は極めて大きいと思っております。規格の見直しなどは私もこれから考え得ると思うんですが、特に凍結などといったようなことが入っておりますので、より影響は大きいだろうと思っています。
 この中間整理というものの性格も少しあいまいでございまして、あそこで取りまとめた基本的な骨格の部分が、きのうの議論の議事を見ていますと――報道される範囲ですけれども――、そこで一応決めたと言ったことをまたもう一回議論し直したりしていますので中間整理という形になるのかどうかという問題もあると思うんですが、いずれにしても、今、外に出ている文書としてはああいうものでございまして、あとは議事録ということになりますので、あれをベースに議論は進んでいくと考えておいた方がいいだろうと思います。この中間整理、あるいはそれに至るまでの委員会での議論の進め方というのを見ておりますと、高速道路整備のあり方について、一つはやっぱり中央で全部物事を決めていくということで、自治体の意見も、ほとんどというか、まず皆無に近いような形で、議事録をごらんいただければおわかりになりますが、自治体の意見というのは、特にみんなねだってばかりだから聞く必要はないとか、文書で紙切れだけもらっておけばいいだろうとか、知事会を反対に回してはつまらないから一回ぐらい聞いた方がいいんじゃないかとか、そんなことが議事録にいろいろ出ていますし、地方団体のとらえ方ということがよくそこで出てくると思うんですが、物事を進めるときもやめるときも中央で全部決めるのであって、そういうことがやっぱり一つの大きな問題としてあると思いますし、それからもう一つは、採算性のみと言っていいほど一面的にその部分での議論に終始してしまって、やっぱり視野が非常に狭いのではないかと思います。そういったところが非常に危惧されるところでございまして、特に地方の道路の置かれている事情もさまざま違うんですが、そういったことを十分把握しないまま議論が進められていくことに大変危機感を覚えるところでございます。
 私としては、こうした高速道路の整備の問題というのは、やはり国の将来を見据えた国家的な見地から議論すべきであって、整備すべき高速道路の問題はそういう大きな見地からとらえるということと、それから一方で、現実に非効率な経営によって膨大な債務が生じておりますが、そちらの方の債務の処理は、前段の高速道路の整備の問題とは明確に切り離してそれぞれ別個に考えていくべきではないか。後者の方の、今、道路公団を初め各公団が背負っております債務については組織の改革の問題として考えていくべき問題でありまして、これを将来の高速道路の整備の問題と絡めるということは非常に議論をおかしくしていくと思っています。その際に、やはり国民の英知を集めるということが大事なんですが、国だけで英知が集まるとは到底思えませんので、国にはもちろんしかるべき役割を果たしてもらわなければならないと思いますが、やはり地方自治体、あるいは地方にいる民間の声も含めて広く英知を集め、一緒になって議論をしていく、こういう姿勢が大事だろうと思います。
 本県の幾つかまだ未整備の高速道路についてですけれども、これについての見解は次のとおりでございまして、本県は、大変県土面積も広大であるということ、そして、そうした中での高速道路というのは、広域的な交流・連携、物流の円滑化、さらには救急医療体制の確立、災害時の対応など、社会の基本的な基盤として非常に多くの機能を果たしていくものだと思っております。
 例えば、横断道の釜石秋田線の花巻-釜石間ですが、これは、沿岸部の幾つかある重要港湾と内陸部、今もう既に分譲が始まっております空港のわきの花巻流通業務団地などと連絡をするものでございまして、海と陸の一体となった物流ネットワークの形成によって産業の振興に大きく貢献をするものでございます。また、沿線の企業の立地も、こうした高速道路の整備を前提として多く進められているといった事実がございます。さらには、県の救命救急センターに60分でアクセスするといったようなことも、やはりこうしたものの整備を前提に配置をされているわけでございますし、さらには、先般の6号台風でもございましたが、やはり横断道というのは災害時における緊急輸送道路としても重要な役割を担っておりますし、各民間の多くの団体が、今、秋田も含めた広域的な横軸連携ということをそれぞれの形で行っておりますが、そうしたことにも資する、非常に多くの機能や効果が期待されるものだと思っております。
 ですから、今言ったような効果も含めて幅広い議論をして、その上で整備のあり方というものを考えていくべきだろうと思っておりまして、今申し上げましたのは岩手県の道路の事情ということでございますが、幾つかの地方自治体の長とやはりこうしたことを国の方に強く主張、提言をしていく必要があるだろうと思いまして、こうしたことに賛同してもらった鳥取県や高知県など、私も含めて6県の知事で構成する「これからの高速道路を考える地方委員会」というものを設立しまして、これまで緊急提言や共同声明を発表してきたところでございます。今、この委員会の立場で、地方と政府とが直接協議できる場を設けるように求めているところでございまして、これはもちろん、そこの6県の知事あるいはその代表とやれということではなくて、地方団体、知事会でも結構ですし、そういった地方団体ともっと密接に政府が協議をしなければだめだと。この第三者の民営化推進委員会は、それはそれとしてこれからも意見をまとめていくんでしょうけれども、やっぱり最終的に責任を持って決めるのは政府でありますので、その政府が責任を持って直接協議できる場を設けるように、今、主張しているところでございます。
 県では、引き続き、今申し上げましたこの地方委員会を初め、近々全国知事会などもございますので、その全国知事会などの場でもいろいろ意見交換をしていきたいと思っておりますし、あらゆる機会を通じて今申し上げましたような高速道路のあり方や整備の必要性などを国に主張していきたい。そして県内的には、県内の市町村とも十分に連携を図った上で、花巻-釜石間を初めとして、残されている高速道路網の整備が推進されるように積極的に取り組んでいきたい、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承お願いいたします。
   〔地域振興部長飛澤重嘉君登壇〕

〇地域振興部長(飛澤重嘉君) 合併特例債についてでございますが、合併特例債は、合併市町村が市町村建設計画に基づく事業の経費の財源に充てるために発行する地方債として、平成11年7月の市町村の合併の特例に関する法律の一部改正に伴いまして創設されたものでございます。そしてまた、その元利償還金の70%を普通交付税で措置することが地方交付税法に定められているところでございます。
 地方交付税につきましては、ことし6月に閣議決定されました経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002――骨太の方針第2弾ということでございますが――の中で、国庫補助負担金、税源移譲を含む税源配分のあり方とあわせ三位一体として、今後1年以内をめどに、それらの望ましい姿とそこに至る具体的な改革工程を含む改革案を取りまとめることとされておりまして、現在、その検討が進められていると伺っております。その議論の動向に注目していきたいと思っておりますが、合併特例債に対する地方交付税措置につきましては、将来にわたりましてその所要額が確保されるものと考えているところでございます。
   〔総合政策室長佐藤勝君登壇〕

〇総合政策室長(佐藤勝君) 事務事業評価についてでありますが、事務事業評価は、公共事業評価とともに政策評価システムの一環をなすものであって、必要性や緊急性などの視点から事務事業を不断に見直すことにより、限られた財源の効率的、効果的な活用を図ることを目的として、すべての事務事業を対象に実施しているものであります。
 評価に当たりましては、企画、実施、評価という、いわゆるプラン・ドゥー・シーのマネジメントサイクルを意識しながら、みずから評価し改革していくことをねらいとして取り組んでいるところであります。また、その評価手法につきましては、大学教授や公認会計士など外部の有識者で構成する政策評価委員会で、政策評価とあわせて審議していただいているところであります。さらには、これら事務事業の評価につきましては、政策評価委員会での意見を踏まえるとともに、評価結果を積極的に県民に公表することにより、客観性や透明性を確保しているものと考えております。
 しかしながら、なお一層この事務事業評価の客観性や透明性を確保することについて、また、外部意見をより的確に反映させることについて、これらのその重要性にかんがみて、今後さらなる政策評価システム全体の充実・強化を図る中であわせて検討してまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長猪股純君登壇〕

〇県土整備部長(猪股純君) まず、東北横断自動車道釜石秋田線釜石-東和間、三陸縦貫自動車道及び八戸久慈自動車道の整備の見通しと取り組みについてでありますが、先ほど知事の方から答弁がありましたように、高速道路の整備の方向性がまだ定まっていないということから、その見通しをお答えすることは難しい状況にありますけれども、現在の状況も含めて申し上げたいと思います。
 まず、横断道の釜石-東和間につきましては、延長約68キロメートルのうち東和から宮守の間約24キロメートルは、平成10年に施行命令が出され、現在、事業実施に向けた調査設計が行われており、宮守から遠野の間約9キロメートルは、施行命令に向けた調査が進められております。
 また、遠野から釜石の間約35キロメートルのうち仙人峠道路約19キロメートルにつきましては、一般国道283号の改築事業として国と県によって整備が進められておりまして、この工区で最長となります仙人トンネルが本年秋には貫通する見通しと伺っておりまして、平成18年度の供用を目指して工事が進められているところであります。
 次に、三陸縦貫自動車道の整備についてでありますが、高田道路7.5キロメートルは、現在、大船渡市部分の用地買収を進めているところであり、今年度から一部工事に着手する予定であります。
 大船渡三陸道路17.6キロメートルは、既に約9キロメートルの間が一部供用され、現在、全部開通に向けて鋭意工事が進められております。
 釜石山田道路約23キロメートルは、平成13年度から南側の一部区間の用地買収に入っており、山田道路約8キロメートルは、本年8月に完成し、供用されたところであります。
 また、宮古道路は、新規事業着工に向けた準備として、各種調査や都市計画決定に向けた手続が進められているところであります。
 次に、八戸久慈自動車道についてでありますが、八戸南環状道路が平成3年度に、また、八戸南道路が平成7年度に事業着手され、現在、八戸市側から県境に向かって整備が進められております。本県側については、既に久慈市内の延長約3.2キロメートル間については供用されておりますが、残る久慈市から青森県階上町までの間約29キロメートルについては、平成9年に基本計画区間に組み込まれ、これまで概略設計や基礎的な環境調査など計画ルートの検討が行われてきたところであります。この区間の整備計画区間への格上げのためには地元の機運の高まりが重要であるということから、これまで地元関係機関と一緒になってフォーラムを開催するなどの取り組みを行ったところでありまして、今後とも、地元と連携を密にしながら、早期に整備計画区間に組み込まれますよう国に働きかけてまいりたいと考えております。
 県といたしましては、道路財源が極めて厳しい環境にはありますけれども、これら高速道路の整備は県勢発展の基盤として欠かすことのできない極めて重要な施設であるということでございますので、今後とも、その早期整備に向けて国に強く働きかけてまいりたいと考えております。
 次に、土砂災害への対応についてでありますが、釜石市における記録的な豪雨に伴って発生した土石流によりまして、松原町においては死者が2名、住家の全壊が2戸、半壊1戸などの被害を受けておりまして、駒木町においては住家の半壊1戸、市道の破損等の被害を受けたものであります。
 この両地区の沢の上流部にはいまだに不安定な土砂が残っておりまして、再び土石流が発生する危険があるということから、災害発生後直ちに国に対して災害報告を行うとともに、災害関連緊急砂防事業の申請を行ったところでございます。この結果、去る8月25日には両地区に砂防ダムを整備することが決まりまして、現在、用地などの調査を進めているところであり、今後、早期完成に向けて鋭意努力してまいりたいと考えております。
 次に、土砂災害対策としての砂防ダムや急傾斜地崩壊対策事業の進捗状況と今後の整備に対する認識についてでありますが、岩手県地域防災計画におきましては、土砂災害対策として、平成11年度から毎年10基の砂防ダムと10カ所の急傾斜地崩壊防止施設を整備する計画とし、現在までその整備に取り組んできたところであります。その結果、平成13年度までの3カ年において28基の砂防ダムと30カ所の急傾斜地崩壊対策施設を完了させ、ほぼ計画どおり進めてきたところであります。国、県ともに非常に厳しい財政状況になっておりますけれども、岩手県地域防災計画などの平成17年度目標値、これは砂防ダムが70基、急傾斜地崩壊対策施設71カ所でございますが、その整備に向けまして積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、土砂災害に対する国及び県におけるソフト面での取り組みについてでありますが、土砂災害への備えをハード面のみで対応するためには非常に多くの時間と経費を要することから、国におきましては、平成13年度に、いわゆる土砂災害防止法の施行によりまして、ハード対策の推進とあわせて土砂災害の警戒区域を明らかにして、住民への危険の周知や警戒避難体制の整備、宅地開発の規制などのソフト対策を進めることとしたところでございます。
 県といたしましても、これを受けて約1万4、000カ所の危険な急傾斜地や渓流の抽出を行いました。そして、地形や地質、土地利用状況などの調査を進めているところであり、今後、市町村とも協議を行いまして、警戒区域などの早期指定に向けて努力してまいりたいと考えております。
 また、これらの地域の方々に対して、日ごろから土砂災害に備えていただくために、今年度、釜石などで危険箇所への標識の設置を緊急に行うとともに、市町村を通じて危険箇所の周知を図るなど、ハード対策とあわせて災害の発生時に人命を守るためのソフト対策についても今後強力に推し進めてまいりたいと考えております。

〇37番(長谷川忠久君) ただいまは大変御丁寧な答弁をいただきまして心より感謝申し上げるわけでございます。御丁寧な答弁をいただいたわけでありますから再質問はしない方がいいのかと思うわけでございますが、若干でございますが、二、三点質問させていただきたいと思うわけでございます。
 知事におかれましては、大変答弁のしにくい質問に対しまして適切な御答弁をいただいたと思っておるわけでございます。私の質問の真意でございますけれども、今、何とかスタンダードとか言われまして、日本全体がどうも西洋化されつつあるのかなと、こういう感じをいたしているわけでございます。特に、西洋でもドイツなどのゲルマン民族などは、他人の社会観や人生観、これを積極的に議論をする、こてんぱんに相手を打ちのめすまで議論をすると、こう言われておるわけでございまして、実際どうかについては私もよくわかりません。しかし、日本の場合といいますか、日本の美徳になるんでしょうけれども、相手をやっつけるというよりも、逃げ道をつくって相手の存在を認める、相手の社会観や人生観を許容する、こういうのが日本の美徳と、こう言われておりますし、私も今でもそうは思っておるわけでございます。
 武道を見ましても、先ほどトイレで議長にお会いしたんですが、議長は剣道の達人だそうでございまして、いろいろお話をお伺いいたしましたら、ヨーロッパではノックアウトするとかギブアップ寸前まで戦うわけでございますけれども、日本の場合は、まあ、絞めわざなどもあるわけでございますけれども、やはり空手の寸どめであるとかいろいろありまして、日本の美徳というものが武道の面にもあらわれているのではなかろうかと思っておるわけでございます。
 しかしながら、昨今の政治情勢といいますか、地方分権だ、独自性を発揮しなさい、あるいはまた自己主張をしなさい、こういうことでございまして、そういう独自性を発揮して自己主張をすることが、地方自治体では大変すばらしい業績をおさめるといいますか、もてはやされているということでございます。アメリカさんだとかヨーロッパさんだとかいろいろあるんでしょうけれども、もちろん国際化社会において、日本の考え方が、まあ、不景気でございますから反省をしていくということになるんでしょうけれども、こういうことが政治の世界に起きている。
 また、特に知事なんていう首長なんでございますけれども、知事のコンテストみたいなものがありまして、情報公開あるいは行政の説明責任なんていうのが言われるわけでございまして、どうしても特殊性といいますか、独自性といいますか、そういうものを考えていかなければならないのかなと、こう思っているわけでございます。そうしますと、大変孤独であって、その中で決断をしたり、あるいは一人で時代の流れを読みながら政治を執行していかなければならない、こういうことになるんでしょうけれども、そういう関係について、やはり知事の社会観とか人生観というものが大変重要になるのかなと思ったりいたしておるわけでございます。
 御答弁の中に、自律というお話があったわけでございます。自分を律するということだそうでございまして、私が勘違いをしていたんでございますが、私は、自分で立つ、こういう意味かなと思ったわけでございます。ただ、地方自治体が自立しろとか職員が自立しろとか、あるいは障害者も自立しなさいと言う場合は、多分自分が立つと、こういう字を書くんだと私は思うわけでございます。
 自立、自立の大合唱の中で、例えば子育てで自立ができない人がいると、そういう方は大変むごい事件を起こすということもあるのかなと実は思っておりまして、私などは、学校では社会性を涵養しろと、こういうことを言われてきたわけでございますけれども、果たして自立と社会性の涵養というものは両立するのかなと実は思ったりいたしているわけでございます。
 自立とはどういうことかということを聞いたことがあるわけでございますけれども、自立というのは、一つは自己決定であり、二つ目はその自己決定に基づいてみずからが行動することであり、三つ目はその行動に責任を持つことだと、こういうわけでございますけれども、そういうことですと、なかなか自立できない。私自身もなかなか自立できない。居酒屋へ行きたいと思っておりましても、相手が寿司屋に行くとなりますとどうしても寿司屋の方に従ってしまう、こういうことにもなるわけでございまして、自立ということが果たしてできるのかどうなのか、こういうことなわけでございます。
 そういう面における地方自治体の自立であるとか、自治体全般あるいは職員、あるいはそこの住民に全責任を負う首長さんの責任というものは果たしてどういうものなのかなと実は煩悶いたしたりしているところでございます。
 もう一つは、リーダーシップについてでございますけれども、私の習ったのでは、リーダーシップとアンダースタンディングは同意義語だと。理解とリーダーシップは同意義語だというように実は習ったことがあるわけでございます。やみくもに自分の人生観や社会観を押しつけるのがリーダーシップではない。相手の社会観や人生観を理解する、相手の立場に立つ、そしてリーダーシップを振るうということで、リーダーシップとアンダースタンディングというのが同意義語だというお話をお伺いしたわけでございますけれども、これらに関する自立という問題、あるいは今、ヨーロッパナイズといいますかアメリカナイズされようという社会の中で、まあ、禅問答みたいなものでございまして、全く必要がないといえばそうかもしれませんけれども、知事のお人柄の一端を我々が理解するため、何か御所見があればと実は思ったりいたしているところでございます。
 もう一つ、道路なんですが、部長でも結構なんですが、道路がこういう状態になっておりまして、開き直って考えれば、採算性の合う道路をつくればいいわけですね、これは開き直って考えれば、ですよ。どうすれば採算性が合うかということになりますと、これは、沿岸部を振興すればいいんですよ。考えれば、沿岸部を振興すれば道路は採算性が合うわけですね。先ほど私はハブ港湾の話しかしませんでしたけれども、例えばハブ港湾をつくるとか、今の県政を見てみますと、数百億円の事業というのは、例えば盛岡西口開発に伴うビルが200億円ですか。100億円になりませんけれどもすこやか子どもランドとか、内陸部に大規模なプロジェクトが集中している。なぜ沿岸部にそういう大規模なプロジェクトを張りつけることができないのか、こういうことを考えるときがあるわけでございまして、沿岸部を振興させるという考え方の中で、大きなプロジェクトを張りつけていく。財政の問題もありまして、多分知事等はそんなことはできないということになるかもしれませんけれども、その辺、もしかしたら沿岸部振興のためにいい考え方を持っている市町村あるいは青少年もいるのではなかろうかと考えておりまして、もう一度旧来にとらわれない沿岸部の振興策というものを考えてもらえないのかなと。それが道路建設につながるのではなかろうか、こう思ったりいたしておりますので、愚痴のような話をいたしたわけでございますが、できれば私の愚痴にお答えをいただければと、こう思っておるわけでございます。

〇知事(増田寛也君) いろいろ議員の御見識の披瀝がございましたが、「ジリツ」ということですが、自治体が自立をするということ、これはもちろんみずから立つということだと思います。今まで余りにも多くの事柄が地方自治の現場におきましては国の規制のもとで行われてまいりまして、ほとんど各自治体、47都道府県、そして3、200幾つかの市町村は、横並びで同じような行政を展開せざるを得なかったということがあろうかと思います。それが、国の方の財政的な縛りも大分窮屈になってきて、国からの呪縛から解き放たれたという時代の影響もあると思いますし、それから、むしろ地方の個性をより発揮することが国全体としての勢いをつけることにつながる、こういう考え方もあると思うんですが、そんな両方のことからだと思いますけれども、地方の自治体の自立ということが特に強調されるようになってきた。これは大変いいことであって、そういうことで、みずから自立できるような自治体となるべく努力をする。場合によっては合併の選択肢も考慮に入れながら、とにかく自立に向けて努力をする。これは、これからもさらにその方向性を強めていかなければならないと思います。
 そのときに、そういう各自治体の首長として、より権限が大きくなるわけでありまして、これはもちろん都道府県、市町村の議会も同じだと思うんですが、特に首長――知事あるいは市町村長――は、そうしたより多くの、一方で権限も多くなりますし、またさらに責任も当然大きく重いものがあるということでありますので、それぞれの自治体がみずから立つ自立をするということと同時に、知事、市町村長のあり方としては、みずから厳しく自身を律するという意味での自律をしていくということをあわせて考えていかなければいけない。これは、多選ということで多くの弊害が出ている、こういう客観的な事実もございますので、自律――みずからを律する――ということを深く胸に刻んでおく必要があるだろうと。
 その上で、今、リーダーシップということもあわせてありましたが、世の中が変わっていく上で、組織が変わるということについてはリーダーシップということが大変重要になってくると思います。右肩上がりの時代であれば、組織のそれぞれの構成員がいろいろ判断することを、かなりそれをなぞった形でやっていてもいい結果が出てきたと思いますけれども、今はそういう時代ではありませんから、長野県の例ではありませんが、今までの構造を変えていくときは当然あつれき――フリクション――なども起こりますけれども、そういうことを乗り越えていく部分はやはりリーダーシップということが必要になってくるので、それが専制政治とか独裁政治、恐怖政治のような形につながるかどうかというのは、幸い我が国は選挙という民主主義が機能していますので、やり過ぎであれば当然その関門によって身を引くだとか、あるいは先ほど言いましたみずから律することによって身を引く。責任を常に県民の皆さんに明らかにしながら、やはりそういうリーダーシップを一方でこういう時代こそ発揮していくべき、このように思っております。
 それから、道路のお話がございましたが、この道路については、議員も釜石におられるということで大変やきもきしている部分もあろうかと思います。先ほどの本質問の最後の方で私も少し簡略に申し上げましたが、どんな民営化推進委員会の結論になろうとも、とにかくあの道路をつくるということも含めて言明をしてほしいというお話もあったんですが、私自身も気持ちは議員と全く同じ気持ちだというふうに思います。ただ、言い方として、どんな民営化推進委員会の結論になろうとも道路をつくると言うと、じゃあ、それでつくりなさいという、極めて今国もずる賢くなっていますから、そんなことも言いかねない時代でありますから、むしろそれは、つくるには、今のやり方、あるいはそれに類するようなやり方で、地方負担が多くなったらこれはつくれないということをはっきりと主張する。つくる必要があっても、あるいは先ほど言ったように沿岸部の振興ということからも非常に重要な機能を持っているんだけれども、それをいたずらに中央の視点で自分のところの庭先を掃くようなつもりで、国の債務だけをきれいにしようという観点からやっていればこれは到底できないわけでありますので、そういう意味からいうと、国の考えている、あるいは推進委員会の考えているような議論に対しては、やはり主張すべきは主張すべき、こんなふうに思っております。
 先ほど議員からも話がありましたように、あくまでも道路は我々の社会をよくしていくための手段でありますので、それをどう使うか、あるいはどう使われるかという観点が大変大事で、地域振興を図る上で、順番の問題ですとか、その機能のあり方は大変大きな問題なんですが、ただ、ものが一般道ではなくて高速道路なものですから、私はやはり、先ほど議員がお話しになったように、まず、地域振興を考えて、それで採算をとれるようにということなんですが、国の基幹的な高速道路というのは、今、中国や韓国などもまさしくそうですが、採算性よりもむしろ将来のいろいろな発展可能性を前提に置いて、当面損するにしても、借入金で緊急につくるにしても、そういう形で整備を戦略的に考える。そして、その上で十二分な活用策を図って、将来的には皆さんがそれを活用して、十二分な通行量等によって維持管理が十分できるような、そういう方向性を考えていくことが国の基幹的な高速道路のあり方だろうと思うので、国の方にはそういうことを言いつつ、やはり我々としては、地域振興について十二分に英知を集めるということが必要でございますので、沿岸部を振興させるためにいろいろなプロジェクトを実施していくということは県政としてとっていくべき方針でございますので、これからも沿岸地域の皆さん方と十分な議論を重ねた上で沿岸部の振興を図っていきたいと思います。
   

〇議長(谷藤裕明君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時52分 散 会


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