平成15年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇38番(千葉浩君) 政和会の千葉浩でございます。
 今議会は私にとって最後の議会となりましたが、政和会を代表して、以下、順次質問をいたしますので、知事の誠意ある、前向きの御答弁をお願いいたします。
 私が初めて当選いたしました平成3年は、顧みますと、国内では、バブル経済の崩壊、湾岸戦争に90億ドルの追加支援、雲仙普賢岳の噴火、国外では、湾岸戦争の勃発、ソ連邦の崩壊、世界経済が戦後初のマイナス成長に、など大変な時代ではありましたが、経済的には、例えば日経平均株価は2万円台と、まだ余裕のあった時代でありました。あれから3期12年、日本経済は、今や株価は8、000円台、土地の公示価格は91年をピークとしておよそ40%下落と、深まる一方の深刻なデフレ不況下にあります。
 この間、増田知事は、平成7年に、若さと行動力で県民多数の支持を受け本県の知事となられ、以来、幾多の諸課題に果敢に取り組んでこられました。特にも、2期目の県政運営では、自立、参画、創造による持続的な地域づくりを新しい岩手づくりの基本理念とし、みんなで創る夢県土いわてを目標に、環境、ひと、情報の視点を21世紀の扉を開くかぎと位置づけ、さまざまな施策を積極的に展開してこられました。
 そこでお伺いいたしますが、2期8年の県政運営を振り返って、知事はどのような所感をお持ちでしょうか。また、今後の県政運営の課題と展望についても御所見をお伺いいたします。
 次に、県内の景気動向と平成15年度予算の編成についてお伺いいたします。
 政府は、今年1月、デフレ克服、経済成長の目標時期を2年先送りいたしました。株価、企業倒産件数、失業率、鉱工業生産指数などさまざまな経済指数が一向に改善の兆しを見せず、銀行貸出残高も6年連続減少、個人消費は不振をきわめ、頼みの輸出にも陰りが見え始めているという状況の中で、不良債権の加速処理という内患を抱え、さすがに日本経済の先行きに不安を感ぜずにはいられないところであります。2003年は、政府の経済財政運営次第では、日本経済が恐慌に陥るか、それとも危機的状況から脱出できるか、歴史的分岐点になると見る人は多いと聞きます。
 知事は、こうした日本経済の情勢を踏まえて、本県の景気動向についてどのように認識しておられるのか、その見通しも含めてお示し願います。
 さて、こうした中で、国は、平成15年度予算の編成に当たり、歳入の柱となる一般会計税収が大幅に落ち込むことから新規国債の発行額を36兆4、000億円余といたしましたが、これは、実に一般会計に占める国債の比率が4割を超えるという過去最悪の事態であります。
 一方、県においても、県税や地方交付税の大幅な減収が見込まれることから、主要3基金を取り崩すほか、県債発行予定額を前年度対比3.6ポイント増の1、381億円余とするなど、厳しい財源確保を強いられております。平成15年度予算は骨格予算ではありますが、知事の予算編成に当たっての基本的な考え方をお伺いいたします。また、特に配慮された点はどのような点かあわせてお聞かせ願います。
 また、今後、県税や地方交付税のさらなる減収が見込まれる中で、主要3基金残高も残り少ないとなりますと、勢い県債に財源を依存する、極めて不健全な、ひいては立て直しが困難な事態にも陥りかねないと思うわけでありますが、本県の今後の財政見通しについて、中期展望も含めてお示し願います。
 次に、広域行政の推進という観点からお伺いいたします。
 まず、市町村合併の取り組み等についてであります。いよいよ合併特例法の期限である平成17年3月のタイムリミットまで、あと2年となりました。最近においては、本県でも各地域で市町村合併に向けた動きが活発化しており、2月1日には一関地方任意合併協議会が設置されたところであります。しかしながら、合併までには、法定協議会の立ち上げ準備を含め22カ月程度の期間を要するとされていることからしますと、本県のこのようなペースで本当に大丈夫なのだろうかと危惧を抱いております。知事は、昨年12月に胆江地域の合併シンポジウムにみずから出席されるなど、このところ合併推進に積極的な姿勢を見せておりますが、まだまだその成果が見えないという感じがいたします。
 そこでお伺いいたしますが、昨年末から今年初めにかけて各地方振興局長が市町村長の合併に関する意向調査を実施しているようですが、その結果も踏まえて、知事は、本県の現状をどうとらえておられるのか。また、合併特例法期限内での合併の実現に向けて今後さらに県の指導力が問われるものと考えますが、平成15年度にはどのような積極的な姿勢で臨もうとしておられるのかあわせてお伺いいたします。
 ところで県は、平成15年度から地方振興局の組織を大幅に改編いたしますが、今後、市町村合併が進展しますと、現在12カ所に設置されております地方振興局の再編につきましても、近い将来議論がなされるものと思われます。私は、再編を機会になお一層の機能強化を期待するものでありますが、知事は、地方振興局の再編について、どのように認識し、どう対処しようとしておられるのか御所見をお聞かせ願います。
 次に、北東北3県の合併と道州制についてであります。
 国においては、都道府県のあり方について、先日、増田知事が意見陳述をした衆議院の憲法調査会を初め、政府の第27次地方制度調査会などで論点とされており、議論が重ねられているところでありますが、地方においても、北海道や四国4県で研究がなされるなど、都道府県みずからの問題としてさまざまな議論が始まっております。北東北3県においては、若手職員による研究会で、2010年あたりをめどとして、3県は合併を進めるべき、さらには、東北全体で東北州の実現を目指すべきとする報告の取りまとめ作業が行われているようであります。知事自身も、地方分権が進展し、さまざまな構造改革が進む中で、地域の自主性を高めていくことがますます重要であるとして、地域の自立に向けた自治体間の連携の必要性を強く主張されているところでありますが、知事の北東北3県の合併や道州制に対する認識について改めてお伺いいたします。
 次に、雇用対策についてお伺いいたします。
 先月末に発表された12月の完全失業率は過去最悪の5.5%に並び、雇用環境は一段と厳しくなっております。県内の有効求人倍率はやや持ち直してはいるものの、同様に厳しい状況となっております。
 県では、このような厳しい雇用情勢を踏まえ、昨年2月の雇用対策本部会議において、平成14年度からの3年間で2万1、000人の雇用創出を目指す総合雇用対策を取りまとめておりますが、この目標に対する実績はどのようになっているのでしょうか、まずお示し願います。
 また、一部報道によりますと、県の雇用対策は必ずしも十分に正式雇用に結びついていないという指摘もあります。私は、国の基金のみに頼ることなく、角度を変えて取り組むことも必要と考えますが、県としては、今後どのような分野やニーズを対象にいかなる雇用対策を講じようとしているのかお伺いいたします。
 ところで、雇用を維持、拡大するための根本的な対策は、私は、何よりも産業の活性化であると考えております。しかしながら、近年の経済のグローバル化の中で、中国などアジア諸国への工場移転や国内工場の再編による工場閉鎖など、全国的に産業の空洞化が急速に進みつつあります。こうした中で、本県においては、幸いなことに、テクノポリス開発計画の成功例の一つとして全国的にも高く評価されております北上川流域地域を中心とした誘致企業をも含めた先端技術産業や基盤技術産業の集積があります。私は、こうした本県の強みを生かした産業の活性化を積極的に推進していく必要があると考えますが、県は、中長期的な観点から産業活性化策にどのように取り組んでいかれるのかお尋ねいたします。
 次に、環境問題についてお伺いいたします。
 まず、省エネルギー対策と環境学習への取り組みについてであります。90年代に入り、環境保全、とりわけ地球温暖化対策が国際的に大きな課題となってきております。本県では、平成11年9月に策定した環境基本計画において、2010年の二酸化炭素排出量を1990年対比で国の削減を上回る8%削減という目標を立て、その削減に向けた取り組みを進めてきておりますが、こうした中で、今般県は、エネルギー需給両面にわたる地域からの取り組みを総合的に推進するため、新エネルギーの導入の促進及び省エネルギーの促進に関する条例の制定を今議会に提案しております。私は、これを評価するものでありますが、とりわけ省エネルギー対策が重要であると考えております。本条例の設定後、省エネルギーの促進に向けてどのようにこれを進めようとしておられるのか、まずお聞かせ願います。
 また、多様化する環境問題を解決し、良好な環境を保全し、つくり上げていくためには、県民一人一人が問題を認識し、できるところから具体的な行動を起こしていくことが極めて大切であります。そのためには、とりわけ子供のころから環境に関心を持つように、地域や学校でさまざまな機会をとらえて実践的な環境学習を進めることが重要であると考えますが、これまでどのように進めてこられたのか、また、今後どう取り組んでいかれるのかお示し願います。
 次に、青森県境の産業廃棄物の不法投棄と今後の環境行政についてであります。
 この不法投棄事件は、27ヘクタールという広大な地域に、香川県豊島の46万立方メートルをはるかに上回る82万立方メートルもの膨大な量の産業廃棄物が不法投棄されていたこと、そして、投棄された廃棄物の大半が首都圏から持ち込まれたものであるという点ににおいてまことに許しがたい事件であります。県が、不法投棄を行った産業廃棄物処理業者のみならず、この廃棄物処理業者に廃棄物の処分を委託したおよそ1万社に及ぶ企業に対しても排出責任を求め、責任を負うべき者の負担により不法投棄現場の原状回復を行うという姿勢を示しておりますことは大変評価できるものであります。
 この事件は、まさにごみをめぐる現代社会の縮図でもあり、何としてでも事件の解決に向けて困難な課題を克服していかなければならないと思うわけでありますが、一方、この事件が過去に例を見ない国内最大規模の不法投棄であっただけに、この事件を契機に、さまざまな反省、貴重な教訓、データが得られたのではないかと推察いたしております。
 そこで、環境首都を目指す本県として、この事件をどう今後の環境行政、特にも廃棄物対策に生かしていかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、農業問題についてお伺いいたします。
 まず、本県農業振興の基本姿勢についてであります。今、農業を取り巻く諸情勢において大きな関心の一つは、WTO農業交渉合意の行方であります。今月14日から東京の非公式の閣僚会議において最後の詰めが行われ、経過は既に報道されているとおりでありますが、我が国の農業に大きな影響を及ぼすだけに、まさに全国の農業関係者がかたずをのんで見守ったところであります。そしてまた、国内に目を転ずれば、米政策改革大綱が公表される一方、BSE問題に端を発した偽装表示問題、そして無登録農薬問題といったように、食の安全をめぐり農業経営が直撃されるといった事態が発生している状況にあります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 いついかなることが起きてもおかしくない時代であります。私は、こうした世界の動き、あるいは国内の農業にかかわるさまざまな情勢の変化にしっかりと対応し、どのようなことがあってもぐらつくことがない盤石な岩手の農業を構築していく必要があるのではないかと思うのであります。
 そこでまず、知事は、本県農業を我が国の農業の中でどのように位置づけて、どう振興されようとしているのか、その基本姿勢について御所見をお伺いいたします。
 次に、米政策についてであります。
 昨年12月に国は米政策改革大綱を決定し、これまでの米政策を大きく転換することといたしました。今般の改革に向けた国の生産調整に関する研究会では、生産調整における国と農業団体の役割分担のあり方などについて活発な議論があったわけですが、私は、好むと好まざるとにかかわらず、改革の方向が決定されたからには、いち早く大綱が示す方向に沿って本県水田農業の改革に取り組まなければ、今後ますます激化するであろう産地間競争に打ち勝つことができないのではないかと思っているところであります。
 しかしながら、多くの集落では、改革の必要性は感じながらも、農業従事者の減少、高齢化が急速に進む中で担い手をいかにして確保するのか、転作をどうするのかなど将来の水田農業の姿がなかなか見えず、大いに悩んでいると聞いております。私は、この悩みを解消し、担い手が意欲と展望を持って生き生きと農業に取り組めるようにするためには、水田農業の生産構造改革を急ぐことが何にも増して重要であろうと思うのでありますが、この構造改革は、一朝一夕には実現が難しいことも承知しております。
 そこでお伺いいたしますが、知事は、この国の米政策の改革にどのように対処しようとしておられるのか御所見をお伺いいたします。
 次に、少子・高齢化対策についてお伺いいたします。
 我が国の2001年の合計特殊出生率は1.33人で、過去最低を記録いたしました。本県においても、出生数は1万2、000人余、合計特殊出生率は1.52人でいずれも過去最低となっており、加えて最近の経済環境から若年層の社会的減少も見られ、一層の少子・高齢化が進むのではないかという深刻な事態を迎えております。
 このような中で、県は、平成13年1月にいわて子どもプランを策定し、少子化対策に取り組んできておりますが、まず、これまでの取り組みをどのように評価しているのかお示し願います。
 私は、子育てに夢や希望を持つことができる社会にしていかなければならない、子育てに不安を持たせるような社会ではいけないと考えるものでありますが、例えば、学校において不登校の児童生徒がふえている現実は、まことに憂慮すべき問題の一つであります。2001年度の小・中学生の不登校は全国で13万8、000人余、本県でもおよそ1、400人と、10年前の2倍にふえているといいます。都道府県によっては数値目標を設けて不登校対策に取り組んでいるところもあると聞きますが、こうした問題を含めて、私は、子供が健やかに育っていける環境づくり、安心して産み育てられる環境づくりに総力を挙げて真剣に取り組む時期に来ていると思うわけでありますが、知事の御所見をお聞かせ願います。
 また、高齢者の人口はこれからますます急速に増加すると見込まれておりますが、高齢社会を明るく活力あるものにしていくための仕組みづくりをどう進めていこうとしておられるのかあわせてお伺いいたします。
 次に、教育問題についてお伺いいたします。
 ひとづくりにおいてその根幹をなすものは、申し上げるまでもなく子供たちへの教育であります。教育こそが私たち今に生きる大人たちが残すことのできる遺産であり、未来をつくる営みでもあります。
 その教育を取り巻く環境を見ますと、昨年4月から完全学校週5日制が始まり、また、新学習指導要領が小・中学校で完全実施されるなど、まさに教育改革が各学校段階で実行されてきております。このような中、昨年末に本県教育委員会から公表された学力調査結果では、基礎・基本の定着が必ずしも満足できる状況ではないことが明らかとなりました。私は、今、教育に求められているのは、いわゆる生きる力をはぐくむことであり、基礎・基本の確実な定着、基本となる学力の確保は、その生きる力をはぐくむ上で欠くことのできない要素であると考えるものであります。子供たちの将来の可能性を最大限に引き出すため、子供たちが充実した学校生活を過ごすため、確かな学力のもと、創造性や豊かな人間性をはぐくんでいくことが大切であると強く感じております。
 そこでお伺いいたしますが、岩手の未来を切り開く、担い手となる子供たちの学力の向上について御所見をお示し願います。
 また、確かな学力の定着を図るためにも、現在の少人数指導の取り組みをこれまで以上に推進し、きめ細かな教育に取り組むべきものと考えますが、あわせて御所見をお伺いいたします。
 次に、本県の治安対策についてお伺いいたします。
 ここ数年、我が国の治安情勢は著しく低下し、かつて世界有数の治安のよさを誇っていた時代は既に過去のものとなっております。著しい増加を続ける外国人犯罪や街頭犯罪など、犯罪態様も10年前と比較して大きなさま変わりをしてきております。
 平成14年の本県における治安情勢を見ますと、刑法犯の認知件数が1万5、000件余、検挙件数がおよそ4、200件、検挙率は28.4%となっており、いずれも平成13年と比較しますと若干の改善は見られますが、ここ数年の検挙率は20%台から30%台で推移しており、予断を許さない状況にあります。
 そこでお伺いいたしますが、知事は、このような状況をどう認識され、また、今後どう対処し、県民の安全と生活を守っていこうとしておられるのか御所見をお伺いいたします。
 最後に、日本経済はいよいよ不透明感を増してきております。知事は、今議会冒頭の演述で、こういう時代だからこそ非連続の改革に挑戦していくことが大切であるとしてその決意を述べておられますが、本県においても当分の間厳しい緊縮予算が続くものと思われ、総合計画への影響も必至と思われます。地方分権を推進する改革派知事として、より一層政策評価の徹底を図りながら依存自治から自立の自治への構造改革を進めることが求められておりますが、私は、こうした維新にも似た変革と激動の時代、海図なき時代だからこそ、知事には、我が郷土の偉大なる先見の政治家後藤新平に倣い、世界を、アジアを、そして岩手の未来をしっかりと見据え、夢県土いわての創造に向けて希望の翼を大きく広げ、より豊かな未来への飽くなき挑戦に全力を傾注していただきたいと思うわけであります。そして、ぜひ活力に満ちた真に豊かな社会を県民一人一人とともにこの岩手の地に築いていかれますことを御期待申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 千葉浩議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、県政運営の所感並びに今後の展望と課題についてお尋ねがございますが、改めましてこの8年間を振り返りますと、時代の大きな転換期にあって、県政を担う者として、その重責を常に自覚するとともに、県民の皆様の県政に対する期待を強く感じ、それにこたえるために日々全力で駆け抜けてきた、こういう感がするところでございます。
 先ほどのお2人の議員の皆様方へのお答えと少し重なるところがございますが、私は、任期を通じて、生活者主権、地域主権の社会の確立に向けて今まで努力をしてまいりまして、その中で、2010年を目標とする岩手県総合計画に基づいて県政の推進に努めてきたところでございます。
 こうしたことを踏まえて、今後は、具体的には喫緊の課題である青森県境における産業廃棄物の不法投棄事案について全力を挙げて取り組んで、そのことを通じて循環型社会の形成に努めるとともに、安全で安心ないわての食の確立や本県のものづくり基盤の拡充に向けた産業集積、それから、岩手の子供たち一人一人の個性を生かした教育の推進など、こうした分野に重点的に取り組んでいく必要があると考えております。
 また、21世紀の夢県土いわての創造をより確かなものにするためには、やはり今までのような国への依存体質から脱却して、まず経済的にしっかりと自立した上で、エネルギーや食料などの物的資源、教育や交流・連携などの人的資源、技術や立案機能等の知的資源などにおいて自立する具体的な戦略づくりを行った上で、一人一人がその個性を引き出し、特性を生かしながら、真の自立への方向を目指していくための取り組みというものを進めていきたいと考えております。
 次に、本県の景気動向についてでございますけれども、昨年上期には、本県製造業の中でウエートの高い電気機械の一部に回復の兆しも見えたのですが、そういうことで県内景気に一部持ち直しの動きも見られましたけれども、下期にかけましては、世界経済の先行き懸念や株価低迷の影響などによりまして国内景気の持ち直しに向けた動きが弱まってきたことを受けまして、本県におきましても、生産活動を初めとした回復の動きは弱くなったところでございます。
 このような中で、本県の最近の主要な経済指標を見ますと、大型小売店販売額、乗用車新車登録台数といった、これはいわゆる個人消費の分野ですが、ここは低調に推移しています。それから、雇用情勢についても改善の動きはあるんですが、有効求人倍率が全国を下回る水準で推移するなど、依然として厳しい状況にあって、大型倒産、企業の撤退といった状況が続いているところでございます。
 今後のこうした点での見通しですが、政府がいわゆる総合デフレ対策を取りまとめて、それから今年度の補正予算を編成するなど景気の回復に努めているわけですが、本県でも、県として中小企業における一層の経営革新の促進に向けた支援体制の充実強化、それからベンチャー企業や地域資源を活用したコミュニティ・ビジネスの育成、さらに、情報サービス、物流・環境産業の誘致など、いわゆる雇用の創出・拡大に向けた取り組みをこれから積極的に進めていくこととしていますので、こうした施策の実施などによって着実に景気の回復を図っていきたいと考えております。
 次に、平成15年度の当初予算についてでございますが、これは、4月に選挙を控えていますので、今お話のとおり骨格予算として編成したわけでございますが、特徴としては、歳入が県税、地方交付税の大幅な減収ということもございましたので、その歳入に見合った歳出規模となるように全体的に抑制しましたので、これは初めてとなりますが、2年連続のマイナス予算ということで編成いたしました。
 この中で、県債残高をふやさないように、プライマリーバランスの均衡の早期実現に向けて、公共事業がどうしても県債を財源とするものですから、これまで前倒しで事業実施に努めてきたということもありますので、その平準化を図るために、公共事業については18%の削減を行う、それから、緊急性の高い青森県境の産業廃棄物の不法投棄対策、食の安全安心対策やBSE対策、雇用対策などについては、この中に盛り込んで機動的に対応するようにということで編成をしたものでございます。
 次に、今後の財政見通しですけれども、これも先ほど申し上げましたが、本県の財政は、平成15年度の当初予算ベースで申し上げますと、収入見込み額がちょうど13年前の平成2年度決算額に近いところまで減少してございます。一方、歳出規模の方は、公債費が著しく増加しているわけですが、これは景気対策ということで公共事業を随分行ったということに関係がございます。それから、その後、県立大学をつくりました、それから美術館をつくりました。こうした新たな施設の管理運営経費、それから県単の医療費助成、さらには県立病院等事業会計への繰出金など、削減・抑制が難しい経費が増加するなど、いわゆる歳出と歳入の間にギャップが生じております。
 この状況は、今のままだと今後とも拡大して、財政運営は一層厳しさを増していくということが見込まれるわけでありますので、このギャップを解消して健全な財政運営を行っていくためには、国からの交付税とか補助金などに頼るというものではなくて、やはり持続可能な財政構造に転換していくことが不可欠でありますので、本県における財政健全化のための具体的方策と、本県の自立の道筋を明らかにしたプログラムを策定して、平成15年度から18年度の4年間に集中的に取り組んでいきたいと考えています。
 内容は、具体的には事務事業の見直しや投資的経費の削減、さらには人件費の抑制などの歳出削減や県税等の歳入確保策について具体的な数値目標を明らかにする一方で、自立実現に向けたいわゆる政策推進枠といったものを確保して、新産業の創造や雇用対策を初め、生活者や地域の視点に立って、環境・福祉、教育などの施策について優先的・重点的に配分することなどをその中に盛り込んでいきたいと考えております。
 次に、市町村合併の取り組みでございますが、これは、全体の9割近くの市町村で住民懇談会が実施されるなど、議論は全体として全県的には活発になってきていると考えております。
 今月に入って一関市、花泉町、東山町、川崎村、この4市町村で任意の協議会が設立され、これについては県でも合併重点支援地域の指定を行ったわけでありますが、そのほか、沿岸の宮古市、田老町及び新里村、この三つの市町村、それから、内陸部ですが、湯田町、沢内村の2町村で合併に向けた検討会が今開催されています。こんなことで、具体的な動きが県内の幾つかのところで見られるようになってきました。
 一方で、合併の相手先やスケジュールなどについてどうもうまく双方の考え方が一致していないケース、それから、まだ関係する市町村間での議論に入れないという地域も見られるわけでございます。
 県では今後、今申し上げましたような市町村間での方向性が一致していない地域では、そうした関係市町村間でのさまざまな具体の協議が進むように助言していきたいと思いますし、地域の熟度に応じて任意協議会の早期設置なども促していきたいと思っています。それから、県が指定する合併重点支援地域の指定の一層の拡大も図りたい、こんなことを思っていまして、合併特例法期限内に多くの市町村でそうした成果が上がるように、私も先頭に立って、全庁的にこうした市町村のさまざまな取り組みを支援していきたいと考えております。
 それから、地方振興局の再編ですけれども、この地方振興局、まず基本的な考え方は、市町村中心の行政システムに全体として地方自治のあり方を変えていかなければいけない、こういうのが一つございます。
 こうした観点に立つと、県組織の中で現場に一番近い地方振興局も、従来その大きな役割とされてきたのは、地域における行政サービスの総合センター機能、県が直接行政サービスの供給主体となって行う総合センター機能、これが地方振興局の大きな役割と言われていましたけれども、それは地方振興局が抱えているのではなくて、できる限り基礎的自治体である市町村に委ねていこう。地方振興局の役割は、より広域的な立場からの地域支援機能、市町村支援といったようなところに移っていくものと考えているところでございます。
 このように、市町村と地方振興局の担うべき役割の変化、それから、一方で進んでおります市町村合併の動向、さらには、こうしたことを踏まえた総合計画の広域生活圏の見直しなどの必要性から、今後、地方振興局の再編を検討する必要も出てくると思いますし、さらには、市町村合併の動向次第では、当然、地方振興局の所管区域を越えるような合併が現実に起こるところも出てくると思いますので、これは必然的にそういった外的な要因で再編を行わなければいけない場合も想定されるわけです。
 したがいまして、今後の地方振興局の再編に当たっては、今言いましたように、地元の市町村において行政サービスが受けられるように、できるだけ市町村に対して、今、地方振興局の持っている事務を包括的に移譲していくということを地方振興局が行うべきですし、地方振興局にどうしても残るという事務も、住民からの申請手続が容易になるように、電子県庁の構築などということによって地域での行政サービスの確保に十分配慮しながら、地域支援機能の充実に向け、こうした考え方で地方振興局の体制づくりを検討していきたいと考えております。
 それから、北東北3県の合併とか道州制ということでございますが、今、自己決定、自己責任の原則に基づいた地域主権型社会の実現ということで、この前に申し上げたことと同じですが、やっぱり住民に最も身近な市町村を中心としてさまざまな行政を展開する、受益の負担が見えやすい市町村で展開する、これをまず最大限に考えていくべきと思います。
 そのために市町村合併なども一つの手段になりますし、いずれにしても、市町村の行政能力を一層高めるということを行って、徹底した地方分権改革を進め、今、国が数多くの役割を持っているんですが、その国と地方の役割分担をもう一回見直しをして、しかも県の権限を可能な限り市町村へ移管する、こういう必要があると考えております。このように、市町村が行政の中心的機能を担うような形になっていけば、県は市町村を補完・支援する機能や県境を越えたより広域的な行政課題の対応など新たな役割を担っていく、次の段階に進んでいくものと思います。
 こうしたことから、北東北3県では、今まで県外事務所の合同化や産業廃棄物税制の導入など、県境を越えて広域で取り組むことにより、より効果が発揮できる分野において、さまざまな広域連携事業に積極的に取り組んでまいりましたし、そうした実績を着実に積み重ねてきましたので、今後もこうした取り組みを着実に積み重ねて、連携の成果を具体的に示していきたいと考えています。
 こうした連携の成果を北海道や東北各県との連携の強化につなげて、地方全体としての総合力を発揮していくことが重要だと考えていますので、地域主権の確立に向けて、広く住民やNPOあるいは民間企業の皆さん方にも参加していただいて、具体的な議論の場を設置するということも必要だろうと思っています。そして、地方の自立のあり方というものについて幅広く議論を重ねていきたいと考えております。
 また、国では、新しい都道府県のあり方について地方制度調査会や、先般も憲法調査会がありましたけれども、ああいったところで議論を今始めたところでありますが、こうしたことについては、いわゆる地方自治に関することでありますので、やっぱり住民の目線に立って、住民が求める制度を協働して築いていく、そういう制度設計をしていくことが必要で、国だけでこういう地方自治の制度を一方的に決めるべきものではないと思っております。やはり地方が使いやすい多様な選択肢の中から、ふさわしい制度を地方が自由に選択できるような仕組みとなるように、こうした点については国に対しても積極的に働きかけていきたいと考えております。
 次に、雇用対策についてですが、総合雇用対策の雇用創出目標に対する実績は、今年度の目標は6、400人でございましたが、今年度末時点で5、946人、到達度が93%ということになります。その内訳で、国の交付金により造成した基金事業による緊急かつ臨時的な雇用について、これは達成率がよくて、目標数が2、600人でしたが、これに対して3、669人、到達度が141%と目標を上回っております。一方、産業支援などによる常用雇用の創出、こちらは目標数が1、500人でしたけれども、これに対して1、126人、到達度が75%、それから、国の雇用関係助成金の活用による常用雇用の創出については、目標数2、300人に対して、こちらは1、151人いうことで、到達度が50%、半分、こういうことでございます。
 したがいまして、やはり常用雇用の創出ということになお一層取り組みを強める必要がございますので、今後とも意欲ある中小企業の経営革新を支援して、新しい事業分野への進出を促進する、あるいはベンチャー企業や地域住民が地元の資源を利活用して行うコミュニティ・ビジネスの育成を図るとか、情報サービス、物流、環境等の雇用吸収力の高い産業分野を中心とした企業誘致を進める、こういったことで、多様な雇用・就業機会の創出に取り組んでいきたいと考えております。
 それから、産業活性化策についてですけれども、今、産業界は熾烈な国際競争の中で、やはり将来にわたってその企業を維持していく、また従業員の雇用確保をするためには、何らかの独自技術に支えられた競争力の強いものを持っていることが必要であり、そういう産業を育成していくことが重要だと思っております。
 このような観点から、ものづくり産業を支える基盤的技術、その点での国際競争力を強化するために、本県の産学官の連携によって、精密金型加工や新素材加工技術など、本県が従来から優位性を持っている分野における次世代技術の開発や、高度な技術を有する人材の育成に重点的に取り組むなど、やはり、ねらいは世界に通ずる基盤的技術産業の一層の集積を図っていきたいと考えております。
 また、このような高度な基盤的技術や、東北・北海道では唯一、関東自動車という自動車組立工場が立地している本県の優位性を生かして、産業のすそ野が広く地域経済への大きな波及効果が期待できる自動車関連産業の集積を促進したいと思っておりまして、この4月に自動車部品メーカーが現実に立地するわけでございますが、そうした自動車部品メーカーの立地や地元取引企業の育成などに積極的に取り組んでいきたいと考えております。
 さらに、今後も成長が期待される情報・通信関連産業や環境産業というものもございますので、こちらについては、岩手大学地域共同研究センターや県立大学の前につくりました地域連携研究センターにおいて産学共同研究を推進したい。それから、工業技術センターにおけるバイオマス活用技術や環境関連技術などの研究開発を推進する。これはまた、産業廃棄物税や県外からの搬入の協力金についての税収などもこういったものに充て込みたいと思っていまして、こうしたことでの研究開発を推進することによって、本県のポテンシャルを最大限に生かした産業の活性化を図っていきたいと考えております。
 省エネルギー対策の関係で、条例を今度お願いしているわけですが、その制定後の省エネルギー対策についてお尋ねがございましたけれども、この省エネルギーということは、地球温暖化防止など、地球環境の保全にとって極めて大きな役割を果たしていると認識しておりますので、現在、この定例会に提案申し上げている条例に基づく基本計画として、岩手県省エネルギービジョンの策定に向けた準備を内部で行っております。この中で長期的な目標と具体の施策の方向を定めることとしておりまして、省エネルギーの推進に当たっては、これは企業ですとか社会の一部ではなくて、あらゆる部分での取り組みが必要となってまいりますので、一層の普及啓発を図って、県民一人残らずの取り組みというものを進めていきたいと考えております。
 具体的には、今見ておりますとエネルギー消費の伸びが大きい民生部門、それから運輸部門での対策を重点的に推進していきたいと思っております。企業の方は、この省エネについては割といろいろ努力して取り組んでいただいているんですが、今言った民生部門や運輸部門が少し消費が大きいわけでありますので、この対策に取り組みたい。それで、公共施設における率先した取り組み、これは県の方でいろいろ取り組みますが、こうした公共施設における率先した取り組みを初め、家庭における省エネ行動の実践や断熱性能の高い住宅の普及を促進するとともに、公共交通機関や自転車の利用環境の整備、低公害車の普及促進、省エネ運転の普及徹底などを図っていきたいと考えております。
 それから、環境学習の取り組みですけれども、環境学習の第一歩は身近な自然に目を向けることであって、そうした意味では、本県は絶好の素材がすぐ身近にございますので、こうしたことを有効に活用していく必要があると考えています。これまで体験的な環境学習として、こどもエコクラブの交流会、水生生物調査などを開催してまいりましたし、デジタルエコミュージアムなどインターネットを活用した情報の提供、さらには、小学校5年生全員には、環境副読本を配付して環境学習というのを支援してきたところでございます。
 また、学校の総合的な学習の時間で環境を取り上げている学校も、調べますとかなり多いので、こうした環境についてみずから考え、行動するひとづくりというものは、時間の経過とともに着実に進んできていると考えております。現在、関係機関の協力を得ながら、インターネットを活用した季節前線の調査や学校などにおける環境ホームページの作成の支援、それから、先ほど申し上げましたこどもエコクラブの指導者層のネットワーク化などを進めておりまして、今後とも、地域や教育現場におけるいろいろなニーズがありますので、環境パートナーシップいわてという環境団体などとの連携も十分強化して、指導者の育成や活用しやすいプログラムの提供などを行って、より一層この実践的な環境学習の充実を図っていきたいと考えております。
   

〇議長(谷藤裕明君) 答弁中でございますけれども、本日の会議時間は、議事の都合により、あらかじめ延長いたします。
   

〇知事(増田寛也君)(続) 次に、県境不法投棄と今後の環境行政についてでございますが、私はこの事件から、環境首都いわてを標榜する本県の環境行政にとって当面する大きな課題は、大都市圏からあふれ出てくる膨大な産業廃棄物問題であると改めて強く認識したところでございます。すなわち、事件の背景には、こうした産業廃棄物が広域的に移動することに伴って、処理の責任が非常に不透明になるということがございます。それからもう一つは、大都市が自立した自治体としての廃棄物処理の機能を全く喪失している。そしてまた、コスト優先の安かろう悪かろうの処理による悪貨が良貨を駆逐する構造といったものもございますし、この20世紀の大量生産、大量消費の現代社会が抱えておりました多くの構造的な問題がこの中に含まれていると考えております。
 これらの問題に適切に対処するためには、その基本となるものとして、昨年12月にお認めいただきましたこの循環型地域社会の形成に関する条例など関係3条例、これを確実に実施していくことが必要でございますし、事件への取り組みや条例制定の過程において、県民の皆様の間で種々の議論が沸き起こって、環境に対する意識がこれまでにないほどの高まりを見せてきているということもございます。こうしたことは、むしろ環境首都いわてづくりへの大きな契機となったととらえているところでございます。
 今後は、事件の教訓というものを大切にしながら、さらに徹底した不適正処理の監視指導と責任追及、優良処理業者の育成、公共関与産業廃棄物施設の整備――これは第2クリーンセンターですが――や、産業廃棄物の税収等を活用した環境産業の育成など総合的な産業廃棄物対策を、北東北3県のほかに、東北他県にも呼びかけながら推進していくとともに、本県が標榜しております産業廃棄物の自県(圏)内処理の原則、廃棄物を自県(圏)内で処理するという原則について、首都圏も含めた全国の自治体に理解を求めていきたいと考えております。
 また、今般県民世論の高まりと事件現場の環境再生に向けた両県の対応が、結果として政府を動かして、現在、国会に提案されているあの特別措置法などの動きにつながったということもございますので、不法投棄の被害県として、先ほど言いましたような、国全体の産業廃棄物分野のさまざまな構造の改革に取り組んでいきたいと考えております。
 本県の農業振興の基本姿勢についてですけれども、本県農業は、農産物の生産・販売活動を通じて地域経済を支えておりますとともに、食品加工など他分野の誘発効果が大きく、極めて重要な産業でございますので、引き続きこれの一層の振興を図りながら、我が国の重要な総合食料供給基地として、食料自給率向上の一翼を担っていかなければならないと考えております。
 このため、県内それぞれの地域の農地や変化に富む気象条件などの立地特性というのを積極的に生かして、例えば、平場地域では大規模経営、それから中山間地域における多品目の複合経営など、地域、地域で特色ある、言うならばモザイク模様の農業というものを本県の中で構築して、県全体として総合産地力というものを発揮していくことが肝要だと考えております。
 こうした考えのもと、平成16年度から本格実施される新たな米政策というのがありますけれども、あれをできるだけ早目に取り入れて、経営能力にすぐれた担い手を中心とした農業構造への改革を進めていきたいと考えております。
 また、適地適作を基本とする作目再編の推進、食品産業との連携によってアグリビジネスを創出していく、それから、販売戦略の方についても強化をするといったことで、産業としての競争力を一方で高めていくわけですが、また、消費者が大変望んでいる、食の安全・安心を基軸とした生産から流通に至るいわゆるフードシステムの確立も図っていきたいと考えております。
 こうした地域農業を実現するためには、農業者、それから地域の主体的判断と創意工夫ということが重要でございますので、やはり、それぞれのところでの実践活動を誘導しながら、全国有数の農業主産県としての地位、地歩をさらに強固なものとしていきたいと考えております。
 国の米政策について今申し上げましたが、これへの本県の対応についてもお尋ねがございました。これは、国では需要に即応した米づくりの推進などを通じて、水田農業経営の安定と発展を図るということで改革大綱というのを決定して、生産調整システムなどの改革をするということになっているわけです。
 県では、この国の大綱を踏まえまして、農業者を初め関係機関・団体といろいろ議論をいたしまして、こうした水田農業の改革に取り組むために、先般、需要を先取りした売れる米づくり、それから稲作・他作目を組み合わせた水田の高度利用、さらには、担い手を中心とした生産構造改革の加速化など、こうした内容を柱として盛り込んだ岩手県水田農業改革大綱というのを策定して、先月の下旬から県内キャラバンなどを実施して改革に取り組む機運の醸成というものを今図っているところでございます。
 この改革を実現するためには、集落単位での徹底した話し合いということを通じて、土地利用方式や振興作物などについて合意形成を図っていく必要もございますし、その実践活動を促進する必要がありますので、今、将来展望の持てる集落ごとのビジョンの作成を指導している段階であります。
 今後におきましては、こうした取り組みを実効あるものにするために、水田農業改革運動というのを全県的に展開する、そして、この実現のための支援策を具体的に我々もつくり、盛り込むということで、こうした水田農業の生産構造改革に取り組んでいきたいと考えております。
 少子・高齢化対策についてでありますが、これについては、まず、これまでの少子化対策について、各種保育サービスの充実、放課後児童クラブの設置、子育てボランティア、子育てサークルの育成など、地域で子育てを支援する取り組みに一定の成果が見られているわけですが、県内で見ますと、仕事と子育ての両立が可能となるような就労環境の整備についてはまだまだでございまして、一層の取り組みを要する状況にあると考えております。
 今後は、先般策定したいわて子どもプランに基づいて、地域で子育てを支援する体制の充実を図るとともに、やはり企業の理解を得ることが大変重要でございますので、そうしたところに働きかけをして育児休業取得を促進するなど、今言いました就労環境の整備を進めていきたいと考えております。
 また、不登校の子供を一人でも少なくするように、学校や家庭、相談機関などが一体となった相談体制の整備や一人一人を大切にする少人数指導の充実などに努めていきたいと考えております。
 それから、高齢化対策ですが、高齢者は、多様な人生経験と価値観を持つ世代の集まりでありますので、高齢者個々人が、自分にふさわしい多様な生き方を選択できる仕組みづくりが大変重要だと思います。県でつくりましたいわていきいきプラン2005に基づいて、お元気な高齢者の皆さん、いわゆる元気老人の皆さん方に対しては、積極的な社会参加を促進するため、シルバーパワーネットなどを通じて、そうした皆さん方の自主的な取り組みを積極的に支援しております。
 また、地域の中でできるだけ自立して暮らせるように、NPOやボランティアの皆さん方を活用した配食サービスや生きがいデイサービスなどのきめ細かな部分の施策の充実を図る。それから、介護を要するような状態になりましても、やはり個々人の尊厳に十分配慮した一番いい形での介護が受けられるように、個室タイプのユニットケア型の特別養護老人ホームなどの介護サービス基盤の整備を積極的に行っているところでございます。もちろん、グループホームなどの整備にもこれから大いに取り組むべきものだと思います。
 今後とも、市町村と密接に連携しながら、これらの取り組みを推進して、心豊かで活力に満ちた明るい長寿社会の実現を目指していきたいと考えております。
 次に、学力向上についてですけれども、科学技術の発達、国際化、情報化の中で、やはり新しいこうした時代の課題に的確に、かつ柔軟に対応できる人材が求められているわけでありまして、子供たちの教育においても、一方で豊かな人間性などをはぐくんでいくとともに、基礎・基本を確実に身につけさせ、子供たちの個性や能力を伸ばし、自分で進んで学び、考えるなどの確かな学力を育成することが大変重要だと考えております。
 こうした観点に立って、学習定着度状況調査の結果を踏まえて指導の改善・充実を図るとともに、少人数指導のための教員配置などを通じて、できるだけきめ細かな指導や教員の指導力の向上などを推進しております。
 少人数指導の取り組みについてですけれども、これは、今年度実施した岩手県少人数指導支援事業が子供たちの基礎学力の向上などに非常に効果的であったという報告も受けていますので、来年度は、小学校入門期における非常勤講師を、ことしは30人ということだったんですが、来年度は25人を超える学級を有するすべての学校131校、160名まで拡充したいと思っておりますほか、さらに年次的に他の学年にも拡大していくなど、本県独自の観点も加えながら少人数指導の充実に努めていきたいと考えています。
 今後とも、次の世代を担う子供たちが、心豊かで個性と創造性に富み、実行力のある人材となるよう、こうしたさまざまな教育環境の整備に努めて岩手のひとづくりを一層推進していきたいと考えております。
 最後に、治安対策ですけれども、本県における治安情勢でございますが、これは、一方で長引く経済情勢の低迷、それから、何といいましても社会の規範意識が低下し、国際情勢の変化を背景に、県民の生活空間の中で発生する侵入窃盗などが増加しております。それから、将来を担うべき少年による犯罪が増加、凶悪化しているほか、外国人グループによる凶悪犯罪が発生、そして、高齢者が絡んでおります交通事故の多発など、極めて予断を許さない状況にあると承知しています。
 このような状況に対処するため、現在、県警察を中心として、街頭犯罪などの抑止と検挙率の向上、さらには少年非行の防止活動など、犯罪実態それぞれに即した対策を積極的に今展開しているわけですが、犯罪のない住みよい地域社会を実現するためには、やはりこうした県警察を中心とした活動だけではなくて、もっと広げて、行政あるいは関係団体、地域住民が手を携えて、それぞれの立場から積極的にこうした活動に取り組んでいく必要があるわけでございます。
 また、良好な治安を確保し、犯罪や事故に対する県民の不安感を取り除くことは、夢県土いわてを実現していくためにも極めて重要な課題であると認識しておりますので、引き続き、私、県政運営の責任者として、こうした治安基盤の充実や県民活動の促進に配意するなど、良好な治安確保に向けて努力をしていきたい、このように考えております。
   

〇議長(谷藤裕明君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時8分 散 会


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