平成15年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇32番(菊池勲君) 自由民主クラブの菊池勲でございます。
 県政の諸課題について、会派を代表して質問させていただきます。今任期最後の県議会定例会となりますので、この4年間の県政運営の成果を総括しつつ質問してまいりますので、よろしくお願いをいたします。
 最初に、知事の3選出馬表明に関して2点お尋ねをいたします。
 知事は、昨年12月25日に3選を目指して出馬を表明されました。知事はこの4年間、自立、参画、創造の理念のもとに、夢県土いわての実現を目指し県政運営に当たってこられましたが、今後の県政の目標として、そのキーワードの中で、参画、創造よりも自立にウエートを置く姿勢を強調されていますが、自立の実現に向けた具体的な公約があれば、この考えをお聞かせ願います。
 ところで、8年前、知事は当時の新進、公明両党の推薦を得て初当選をされました。前回の選挙では共産党を除く各政党に推薦を要請されました。そして、今回は各政党や会派には推薦をお願いしないとのことのようでありますが、政党に推薦要請しないことで政党との距離を一層置く考えを打ち出したのはなぜでしょうか。知事は政党との関係をどうあるべきと考えているでしょうか。御所見をお伺いいたします。
 次に、平成15年度の予算編成についてお尋ねをいたします。
 先日の新聞各紙は、県の新年度当初予算について大きく報道し、厳冬期とか、がけっ縁とか、まさに現在の県財政の厳しさを表現したさまざまなフレーズが躍っていたことは、まだ記憶に新しいところであります。
 その中でも公共事業については、予算編成基本方針における15%からさらに切り込み、最終的には18%強の削減にしたとの大きな見出しでありました。
 昨年にも増す大幅な削減に、さすがの私も驚き、愕然とし、そして悄然とし、ついには両の肩ががくっと沈み込んでしまいました。といいますのも、私は一農民であり、また県央の土地改良区の理事長を仰せつかっておりますので、理事長として何とか農家の方々に楽をしていただきたい、豊かになっていただくとか、また県の方針を踏まえ、安全・安心な農産物をできるだけ低コストで生産しようとか、農地の流動化や担い手の育成をしなくてはとか、さまざま念じながら、農家の皆さんと一緒に頑張っております。
 そのために農家のさまざまな要望を受け、県にもお願いしながら生産基盤の整備も進めており、完成したところからは大変喜ばれております。子孫に美田を残すなということわざがありますが、今の農家は、苦しい経営ではありながら、地域の農業や農村を守るため、負担金を払いながら基盤整備に参加しているのであります。
 私も理事長として、農村整備事務所の職員と一緒になって夜な夜なあちこちの説明会に参りますが、その際、計画どおりの完成を目指すよう努力するとの説明をし、完成後の姿を夢見ながら、農家の方々といろいろな話をしてくるわけです。農家の方々も、一日も早い事業の完成を願い、日々の農作業にいそしんでおります。
 農業・農村は大きな曲がり角に差しかかっていると言われてからかなりの時間がたちました。米政策も大きくかじを切るという状況下において、水田を畑にも利用できるようにする農地の汎用化が急速に求められているところであります。その一翼を担わんとする生産基盤の整備が県予算のせいでままならない上に、計画した基盤整備の完成もめどが立たないということになれば、農家はダブルパンチを食ったも同然であり、焦燥感はとうに過ぎ、あきらめの渦の中に沈み込んでしまうのではないでしょうか。私は、このまま農村が衰退し、滅びてしまうのではと見ているしかないのでしょうか。
 このように、農業・農村整備のみならず、県土整備部関係も含めて、公共事業全体が大変大幅に削減されることは、ここ数年の削減とあわせて、完成期間の大幅延伸につながることになり、そのことは、とりもなおさず私や県の現地の担当者が説明をし約束をしたことが、ほごにされるということになるわけであります。
 県では、平成11年度に平成17年度までの中期財政見通しを策定し、財政健全化を図ることにしたところであります。その財政の裏づけを背に受け、私どももそれに沿って県の総合計画にいう夢県土づくりに向けて汗を流してまいりました。しかしながら、最近の県財政環境は、残念ながらその見通しは極めて甘く、私どもは甘い夢に乗せられただけではなかったかとの思いを強くするものであります。
 このような県民との約束を違えるに至った原因は何なのか、責任の所在はどこにあるのか、財政を含め、県政全般の運用を担っておられます知事の御所見をお伺いしたいと思います。
 また、先般私どもが国に行って予算などをお願いしたところ、どんどん要求してください、でも、岩手県は要らないと言うんですものねと皮肉まじりに返されてしまいました。国でも、財政状況が極めて苦しい中、景気浮揚や雇用対策にも配慮して、殊に公共事業関係費は3.7%の削減にとめるなど精いっぱいの努力を重ねております。国と本県の削減幅は年々広がり、大きな溝ができてしまっているのです。
 本県などは、首都圏に比べれば用地費もかからず、その分、建設資材など多くの関連産業への波及効果も期待でき、加えて、雇用促進・雇用拡大にも大きく貢献する公共事業の効果は高いものと考えられます。私も県財政の厳しさはよく理解しているつもりでありますが、このままでは企業倒産が続出し、多くの労働者が路頭に迷うことが目に見えており、公共事業の大幅削減は、それをさらに加速化することにつながるとの懸念をしております。今こそここで食いとめなければ、雇用促進どころではないという危機感でいっぱいです。こうした窮状を踏まえて、知事の英断を期待したいと思いますが、いかがでしょうか。
 また、この際、おくれている社会基盤の整備による格差是正に向け、国の施策に呼応しながら、本県でもできる限りの対応をし、夢県土いわての実現に向けて全力を挙げて取り組むべきではないでしょうか。あわせて知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、雇用の確保と地域経済の活性化についてお伺いをいたします。
 総務省が1月31日に発表した昨年12月の全国の完全失業率は5.5%と、昨年10月と並び過去最悪となっております。一方、県内の雇用情勢についても、12月の有効求人倍率が0.47と若干の改善が見られたものの、依然として厳しい状況にあり、特に今年3月に卒業する高校生の就職難は深刻であります。私は、こうした状況を改善するには、やはり地域経済の活性化をし、雇用の受け皿をつくるしかないと思うわけでありますが、こうした観点から幾つかお伺いをいたします。
 まず、構造改革特区についてであります。
 構造改革特区は、地域の特性に応じた規制の特例を導入することにより、国主導の地域振興からの転換を図り、地域の自助・自立と民間の活力を生かし地域経済の活性化を図ろうとするものであり、私は、これを大いに活用すべきだと思うのであります。
 県は、本県にふさわしい特区として三つの構想を国に提案し、その実現に努力していると聞いておりますが、構想実現の見通しはいかがでしょうか、現時点での状況をお聞かせ願います。
 次に、新事業の創出と育成についてお伺いをいたします。
 経済のグローバル化の進展により、本県においても、地域経済を支えてきた企業が、海外移転等により工場を閉鎖するなど、地域経済や雇用に深刻な影響を与えているところであります。このような厳しい環境下にあって、地域の競争力を強め経済の活性化を図っていくためには、雇用の受け皿となる新しい事業を創出していくことも必要であろうと考えます。しかし、その担い手となるベンチャー企業は、総じて経営資源が乏しく、資金調達や販路開拓などが弱点となって、成功している企業が少ないとの指摘もなされているところであります。
 そこでお伺いをいたします。県は、新事業の創出・育成に当たり、今後どのような取り組みをされていくのか、お考えをお示し願います。
 次に、中心市街地の活性化対策についてお伺いをいたします。
 中心市街地は、身近な買い物の場としての機能ばかりでなく、商業、業務、居住等の都市機能が集積し、長い歴史の中で文化、伝統をはぐくみ、さまざまな機能を培ってきた町の顔と言うべき地域であります。
 昨年は中心市街地からの大型店撤退が相次ぎ、各地域では現在もその対応に苦慮しているところでありますが、一方で、大型店の郊外への新たな出店の動きも報道されているところであります。このような一連の動きが続けば、中心市街地の空洞化に拍車がかかり、町の顔が失われ、その結果として地域経済に大きな影響を与えていくものと考えます。県は、強いリーダーシップを発揮し、本腰を入れて中心市街地の活性化に取り組む必要があると考えますが、いかがでしょうか。知事のお考えをお聞かせ願います。
 次に、地方分権に関連して2点お尋ねをいたします。
 まず、市町村合併への対応についてであります。
 平成17年3月の市町村合併特例法の期限まであと2年を残すのみとなりましたが、県内の動向を見ますと、2月1日に一関市、花泉町、東山町、川崎村の4市町村による一関地方任意合併協議会がスタートしたほか、宮古地域や西和賀地域で合併に向けた検討が進められているなど、各地域においていろいろな動きが見られているところであります。しかしながら、全国の動きと比べますと、総務省が公表した1月1日現在の資料によれば、法定協議会の設置に至っていないのは5都県のみ、さらに、任意協議会を含めて設置されていないのは本県と東京都のみという結果となっており、客観的に見て、本県において特例法期限内に多くの合併を遂げることが困難な情勢にあるのではないかと見ております。
 そこでお伺いいたします。県においては、昨年末からことし初めにかけて地方振興局長が各市町村長と面談の上、合併に関する意向調査を実施したとのことでありますが、その結果をどのように受けとめられたのでしょうか。また、その結果をもとに、今後どのような対応をしていくおつもりなのか、知事の考えをお聞かせ願います。
 次に、地方振興局と市町村への権限移譲についてであります。
 知事は就任以来、現場重視の理念を掲げ、地方振興局の自己完結性を高めるため、地方振興局に大幅な権限委譲を行うなど、その機能強化に努めてこられましたが、一方、市町村との関連では、平成14年度から、大船渡市と大東町に対し、地方自治法の事務処理の特例制度を活用し、いわゆる一括事務移譲を全国に先駆けて始められました。この試みは、市町村が県の事務の移譲を受ける際に大きな障害となっていた人の問題を解消し、移譲を加速し、それにより市町村の機能をより強化していこうという意図のもとに取り組まれたとのことでありますが、来年度はどのような考えで、どのように取り組まれていくのでしょうか、お伺いをいたします。
 さらに、地方分権の時代において、県、とりわけ地方振興局と市町村がそれぞれどのような役割を担っていくべきでしょうか、そのお考えをお示し願います。地方振興局や市町村への権限移譲をどのように進め、どのような姿を目指していこうとしておられるのか、今後の進め方も含めて知事のお考えをお聞かせ願います。
 次に、少子化対策について2点お尋ねをいたします。
 まず、子育て支援体制の充実についてであります。
 国はこれまで少子化対策として、平成11年12月にいわゆる新エンゼルプランを策定し、また平成13年7月に仕事と子育ての両立支援の方針についてを閣議決定し、保育所の待機児童ゼロ作戦などにより、子育ての負担を軽減し、子供を産み育てていきたい人が産めるようにするための環境整備に力点を置いて取り組みを進めてきました。
 しかしながら、少子化には歯どめがかからず、昨年1月、国立社会保障・人口問題研究所が出した新しい人口推計では、これまで出生率低下の要因と考えられていた晩婚化、未婚化とともに、新たに、結婚した女性が産む子供の数が少なくなっているという現象、いわゆる夫婦の出生力の低下が見られるようになったとして、将来少子化が一層進むとの予測が示されたところであります。
 本県においても、平成14年に生まれた子供の数が本年1月に発表された人口動態統計の年間推計値では1万1、944人となり、平成13年の1万2、272人と比べると328人も減少するとのことであります。このような数字を示されますと、少子化対策はまさに喫緊の課題であり、とりわけ安心して子供を産み育てられる環境づくりの充実に向けて早急に取り組まなければ大変なことになるのではないか。このままでは岩手が、日本が、この先一体全体どうなるのでしょうかと心配になるのであります。
 そこでお伺いをいたします。知事は、少子化が進行している現状をどのように見ておられるでしょうか。また、子育て支援体制の充実を図るために、今後どのような取り組みを展開されるのでしょうか、お考えをお聞かせ願います。
 次に、小児救急医療体制の整備についてであります。
 昨年9月、一関市内で生後8カ月の乳児が、高熱、下痢、吐き気の症状を訴え、夜間に小児科医のいる病院を探したが、ついに小児科医にめぐり会えずに亡くなったという痛ましい出来事がありました。当然のことながら、二度とこのようなことが起こってはならないと思うのでありますが、と同時に、私はこの事件を通じて、若い世代が安心して子育てのできる環境の一つとして、小児救急医療体制の充実が極めて重要なことであるとの思いを強くしたのであります。
 そこでお伺いいたします。一関市の実例を契機に、小児救急医療が全国的に大きな社会問題となり、国においても対策を強化されると聞いておりますが、その内容はどのようなものでしょうか。また、この世に生を受けた大切な子供の命を守るため、県はどのような取り組みを進めていかれるのでしょうか、お伺いをいたします。
 次に、産業廃棄物不法投棄問題についてお尋ねをいたします。
 青森県境の産業廃棄物不法投棄事件については、投棄された産業廃棄物の量は全国最大級であり、さらには、不法投棄を行った産業廃棄物処理業者に対して、廃棄物の処理を委託していたと思われる排出事業者が1万事業者を超え、しかもその大半が首都圏に所在しているということなどから、全国的にも注目されているところであります。
 県は、不法投棄を行った産業廃棄物処理業者に対して廃棄物の撤去を命じておりましたが、その業者は既に破産・清算の状態であるとのことから、この業者による廃棄物の全量撤去は困難と思われます。かといって、そのまま放置しておくわけにはいかないわけでありますが、不法投棄現場の原状回復には多大の費用を要すると思われます。しかしながら、投棄された産業廃棄物の大半が首都圏から持ち込まれたものであるにもかかわらず、その処理費用を岩手県民が一方的に負担するというのは極めて不公平であると考えます。
 そこでお伺いをいたします。不法投棄を行った産業廃棄物処理業者に処理を委託した排出業者の責任追及については、現在どのような状況になっているのでしょうか。今回の事件にかかわる排出業者は1万事業者を超えるとのことでありますから、すべての事業者の責任を明確にするのには相当な期間を要すると思われますが、その見通しなども含めてお聞かせを願います。
 また、費用負担の問題については、国への支援要請はもちろんでありますが、排出事業者の所在する首都圏の自治体にも応分の負担を求めるべきものと考えますが、いかがでしょうか。県のお考えをお聞かせ願います。
 次に、資源循環型社会の基盤づくりについてお尋ねをいたします。
 国は、循環型社会形成推進基本法を初めとする、いわゆる容器包装リサイクル法や家電リサイクル法、建設リサイクル法など環境関係法令を制定し、資源循環の推進を促進しております。
 一方、本県でも、岩手県総合計画やいわて資源循環型廃棄物処理構想などを策定し、限りある地球の資源を大切にし、また、環境への負荷を低減するため、再使用、再生利用、適正処分などの仕組みづくりに努めてきたところであります。昨年12月には、循環資源の循環的利用の推進により県民の快適な生活を確保するため、また、県みずからが率先して循環資源の循環利用に努めることなどを内容とした循環型地域社会の形成に関する条例などを制定し、各種施策のさらなる推進を図ることとしたところであります。
 知事は、環境を県政の重要な柱の一つに位置づけ、これまで資源循環型地域社会の形成のため積極的に取り組んでこられたところですが、これまでの取り組みの成果をどのように認識しておられるのでしょうか。また、さきの条例制定を踏まえ、廃棄物の発生抑制や環境資源の利用によるゼロエミッションの推進、農林水産廃棄物の適正処理などに今後どのように取り組もうとしておられるのか、お伺いをいたします。
 次に、安全・安心ないわての食の確立に向けた取り組みについてお尋ねをいたします。
 最近の食をめぐる情勢は、牛海綿状脳症の発生や食肉産地の偽装事件、食品の不正表示、輸入野菜からの残留農薬の検出、無登録農薬の販売・使用などが連続して起こり、これらの事件が消費者の食の安全・安心に対する信頼を失墜させる状況となっております。
 食が安全・安心なものであることは当然のことでありますが、私は、消費者の信頼を取り戻すために最も重要なことは、まず、生産者が自信を持って安全・安心な農産物を生産できるようにすることであると思います。そのための取り組みについてこれから何点かお伺いいたしますが、個別の問題にお答えをいただく前に、まず、食の安全及び安心の確立に関する知事の基本的な考え方をお聞かせ願います。
 それでは、以下4項目についてお尋ねいたします。
 まず、トレーサビリティーシステムについてお伺いいたします。
 安全・安心ないわての食を確立していくためには、生産面での対応はもちろんのこと、農林水産物の素性を消費者の方々に正しく理解していただくことも重要であると考えております。こうした観点から、近年、トレーサビリティーシステムに対する期待が大きくなってきており、総合食料供給基地を目指す本県としても、消費者の信頼を得、評価を高めていくためには、いち早くこのシステムの導入をしていく必要があると考えます。
 そこでお伺いいたします。県は、トレーサビリティーシステムの導入促進に向けて、これまでどのように取り組んできたのでしょうか。また、今後どのように進めていく方針なのでしょうか、お伺いをいたします。
 次に、牛海綿状脳症、いわゆるBSE対策についてお伺いをいたします。
 この問題については、BSEについての正しい知識が伝えられ、情報公開が進んだこともあり、本年に入って立て続けに6頭目、7頭目の感染牛が出たものの、消費者を初め、国民全体が冷静に受けとめるようになってきたように思われます。また、肉牛消費量や枝肉価格・子牛価格も昨年夏ごろから回復してきておりますので、生産現場にあっては、今後の営農について見通しを立てることができる状況になってきたものと考えております。
 そこでお伺いをいたします。BSE対策については、原因が究明されるまでは徹底して行わなければならないと考えておりますので、現在、生産現場、生産段階で残されている課題にはどのようなものがあり、県はどのように対処していかれるのかお聞かせを願います。
 次に、地産地消推進運動についてお伺いをいたします。
 消費者の食に対する信頼が大きく揺らいでいる今、生産者と消費者の相互理解を深めるこの運動には、大きな期待が寄せられているものと考えております。特にも、昨年10月に開催されました地産地消全国の集い岩手大会を契機として、その運動も徐々に県民運動として定着しつつあるように感じられるわけでありますが、これらが一過性のものに終わることなく、末永く継続していくことが重要であると考えております。そのためには、とりわけ次の世代を担う子供たちに、地元で生産されたものを消費することのすばらしさを感じてもらうことが大切であり、学校給食の取り組みは極めて重要であると考えます。また、地産地消は、身土不二や医食同源といった考え方にも通じるものでありますことから、県立病院や福祉施設などでの取り組みも進めていくべきではないかと考えております。
 そこでお伺いをいたします。学校給食などでの地産地消の推進について、これまでどのように取り組まれてこられたのでしょうか。そして、今後はどのように取り組みを進めようとしているのでしょうか、あわせてお聞かせを願います。
 次に、農薬問題についてお伺いをいたします。
 山形県に端を発した無登録農薬の問題は、その後、全国に広がりを見せ、広範な販売・使用の実態が明らかになりました。この問題は、頻発した輸入野菜の基準値を超える残留農薬の検出や産地名などを偽った食品の偽装表示とともに、消費者の食の安全に対する信頼を大きく損ないました。とりわけ農業生産現場で起きたという点で、国産農産物に対する不信感を拡大させたことは否めないと思っております。農薬を正しく使って安全な農産物を生産することこそ、消費者へ安全で安心できる農産物を供給するための第一歩であり、このことをおろそかにしては何にもなりません。
 そこでお伺いいたします。この一連の農薬問題を受けて、県は、これまでどのような取り組みを行い、今後どのような取り組みを行っていくのかお聞かせ願いたいと思います。
 最後に、食の安全とともに大きな課題であります新たな米政策についてお伺いいたします。
 国は、昨年12月に米政策改革大綱を決定いたしました。この大綱では、消費者重視、市場重視の考え方に立って、需要に即応した米づくりの推進を通じて水田農業経営の安定を図るため、これまでの需給調整対策、流通制度、関連米政策の改革を実行することとされたところであります。これまで、農家がまじめに生産調整を実施しても依然として米価が低迷し、農家の経営が苦しくなる一方だったことを考えると、今般の改革こそ大きな成果を上げなければならないと思うのは私一人だけではないはずであります。本県水田農業の改革に取り組む知事の決意のほどをお示し願います。
 以上で私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 菊池勲議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、私の出馬表明の中で、大分自立にウエートを置いて話をいたしまして、総合計画の中の自立、参画、創造の中では、自立に大分ウエートを置いたわけでございます。これは、今まで右肩上がり成長を前提にして、国が中心となった行財政システムができてきたわけですが、こうしたものに対して、これからは、人口減少が急激に始まる。それから、経済の基調というものが低経済成長を前提に考えていかなければならない。バブル期が崩壊して低迷しているわけですが、これは一時期の低迷であって将来またもとに戻るというものではなく、むしろ低経済成長を前提にこれから考えていかなければならない。こういう劇的な変化が生じたととらえ直さなければならないと思っているわけで、そうすると、今までの国への極めて強い依存体質――財政的には補助金や交付税などに大きく依存しているわけですが――から一刻も早く脱却して、県として自立していく必要がある、こうしたことを痛感したからこのように申し上げたものでございます。
 この上で大事なことは、やはりまず、経済的に自立することが大変重要なことでございまして、こうした観点から県内を見てみますと、岩手が持っておりますものづくりの技術を生かした産業の集積、すぐれた人材や先進的な技術を生かしたベンチャー企業、それから、地域の創意工夫によるコミュニティ・ビジネス、こうした地域資源を生かした産業の活性化と雇用の創出を図って、そして、それによって安定的な財源を確保して行政なども展開していく、こういうことを考えていかなければならないと思っております。
 さらに、地方がみずからの役割を確実に担って、みずからの課題をみずからの力で解決していく、そして、それぞれの地域の独自性とか個性を最大限発揮する上では、エネルギーや食料などの物的資源、教育や交流・連携による人的な資源、技術や立案機能などの知的資源、それぞれの自立についてこれから具体的な戦略づくりを行って、そして地方の自立――岩手県の自立ということですが――に向けた取り組みを進めていきたいと考えております。
 それから、政党との関係についてお尋ねがございました。私は、県知事として――県政執行の最高責任者でありますので――、県民の視点に立って、よい政策だと判断されるものについては党派を問わず率先して取り入れることがまず基本であると考えております。こうした立場から見ますと、確かに多くの県政課題につきましては、県内の世論を二分するほどの政党間の対立というのは少ない、今まで8年間県政を担当してこのように感じております。しかし、国政全体も含めて考えますと、現実にそれぞれの政党は、中央政府下におきましては政策的にも政治力学的にも大変厳しく、かつ鋭く対立しておりまして、大局的な世界観が異なっている多くの政党との間で、しっかりとした、しかも内容の充実した政策協定を締結するのはなかなか難しい場面が多いと思います。
 もう一方で、私はこういう声も多く聞いております。知事というのは、いわゆる県民党的な立場で、一党一派に偏しない姿勢をぜひ貫いてほしい、こういう声が県民の間に根強く存在する、こういうことを感じておりますので、そうした上で、今申し上げましたような考え方も十分尊重して、各政党の皆さんとの間では、こうした議会の場を初めとして、それぞれの場面でお互いに政策実現のために切磋琢磨していく関係をつくり出していくことが最善と思いまして、前回はお願いしたわけでございますが、今回はあえて推薦を求めない、このようにしたものでございます。
 次に、平成15年度当初予算編成についてお尋ねがございました。これは、国、地方を通じて今まで経験したことのないような厳しい財政状況にあるのは御承知のとおりと思いますが、この中で、やはり本県財政は――本県だけというわけではありませんけれども――歳入に大きなウエートを占めている県税と地方交付税が大変落ち込んでおります。平成15年度の当初予算ベースで申し上げますと、実は13年前の平成2年度の決算額に非常に近いところまで落ち込んでいるということで、この財源の確保が現実には極めて厳しい、こういう状況になっております。
 こうした厳しい財政状況を招いた要因は幾つか考えられるわけですが、一つとしては、長引く経済の低迷の中にあって、平成4年度以降、政府主導で国、地方ともに公共事業を中心とした景気対策を重視した財政運営をずっと継続的に行ってきまして、結果としては景気は目立った改善がなされなかったわけでございますが、こうした財政運営でありましたので、一方で多額の公債残高を抱えて非常に硬直した財政構造に陥ってしまったことが挙げられるかと思います。平成11年度に県の中期財政見通しを策定したわけですが、そこで前提として考えておりました事態をはるかに超えるところまでなってしまった。県税収入、国からの交付税も大幅に前提よりも落ち込んでおります。そういう状況になったと考えております。
 こうした状況というのは、これはもちろん県の政策判断ということもございますが、一方で、国において、経済対策や県単独事業の拡大のための地方債に対して後年度有利な交付税措置を講ずるというインセンティブを随分振りまきまして、国が公共事業や箱物整備を誘導してきた側面も否めない事実でございまして、そうしたことから生じた面も随分あったのではないか。その結果、現在の地方財政の中で、財政規模の拡大と膨大な地方債残高をもたらす。しかも、最後の今のこの段階になって交付税を大幅にカットするという――これはいわば地方いじめともいうようなことかと思いますが――、こんな国のやり方にも大きな問題があったと考えております。
 景気対策としての公共事業は、確かにおくれておりました社会資本の整備のみならず、地域経済や雇用を支える役割も大きく果たしてきたわけでありますが、今後は、本来あるべき適正水準を超えて、このところずっと前倒し前倒しで実施してきた投資規模を、段階的に平準化していくことが必要かと考えております。
 このため、今の中期財政見通しを全面的に見直して、持続可能な財政構造に転換するための健全化の目標と本県財政の自立の道筋を明らかにしたプログラムを策定する必要があると考えておりまして、これは、平成15年度――来年度から18年度までの4年間の期間設定を行って、その期間で達成すべき数値目標を具体的に掲げて、政策評価の精度を高めて施策や事務事業の見直しなどの歳出削減策を徹底し、県で持っております基金――主要3基金がございますが――の取り崩しに頼らない、安定した歳入確保策を講じることなどを今検討しているところでございます。
 また、公共事業についてお尋ねがございましたが、これについては今のところを若干繰り返すところもございますが、相次ぐこの間の経済対策により過熱した――膨れ上がった投資規模を適正な規模に段階的に縮小していくとともに、その実施に当たっては、まず、その地域にとって本当に必要な事業であるかどうか、さらに公共事業評価結果などを見て優先度が高いものであるかどうかを十分見きわめて、実施地区の精査や重点化を図っていくことが必要不可欠と考えております。
 喫緊の課題である雇用対策については、例えば、緑の雇用事業の推進などによる農林業などへの労働力移動を図る仕組みなど、産業構造の変革に対応した、いわゆるセーフティネットの構築を進めていきたいと思っておりますし、それから、岩手が持つものづくりの技術を生かした産業の集積、すぐれた人材や先進的技術を生かしたベンチャー企業、地域の創意工夫によるコミュニティ・ビジネスなど、いわゆる新たな内発型産業の育成を図って、考え方としては、こうした公共事業だけに過度に依存しない、足腰の強い地域経済への転換を図っていくことが肝要であると考えております。
 先ほど菊池議員の方から、中央省庁――どこかわかりませんが――に行ったときに、どんどん要求してくださいと。でも、岩手県がなかなか受けられない、こういう話が来ている。こういう話があって、私は、各議員の先生方がわざわざそうして県の要望のために足を運んでそういうことをやっておられることには大変敬意を表したいと思いますし、大変県勢発展にとっても重要なことかと思っておりますが、それにしても、そうした県民の代表の議員の先生方に、そんなのんきな、地方への責任転嫁ともいえる話をする中央官僚の考え方が大変残念でありますし、がっかりするわけでございます。直轄の事業ですら国で大変高い地元負担金を取って行うわけでございますし、中心が補助事業でございますが、補助裏の財源対策も極めて不十分。一方で交付税を切るということでございまして、以前は、少なくとももっとこうしたさまざまな事業を地元がやりやすい環境づくり、財源対策も含めて政府部内での調整力を発揮して、地方がやりやすい環境づくりに随分努力をしたものでございますが、そうしたことなしに、一方ではそういうことを言いながら一方で交付税、補助裏などの不十分な対応をしたままにしていくという、この中央官僚の無責任さというか、そこまで力が落ちたのかということで大変残念に思っております。こうしたことからも、今こそ地方にそうしたものをさまざま移して、我々の責任でやる、こういう体制づくりが一層重要だということを改めて考えたところでございます。
 それから、構造改革特区でございますけれども、県の方では、三つ構想をまとめまして提案してございます。日本のふるさと再生特区、地域分散型総合クリーンエネルギーシステム特区――これはエネルギー特区と言っております――、それから、ITを核とした産学官連携特区――いわゆるIT特区でございますが――、こうした三つの構想をまとめて提案したわけですが、こうした提案に対して、国の方では、それぞれの諸規制を所管している中央省庁の縦割りで、いわばそれぞれ輪切りにされたような形で個々の項目ごとに可否が検討されたものですから、規制緩和の特例措置がそうした形で制度化されておりますので、当初ワンパッケージとして想定しておりました特区がそのままの姿で実現できる仕組みにはなっていない状況でございます。一部緩和されたものがあり、一部は依然としてそのままということになって、その特区の姿としては、全体ができ上がって特区の姿ができてくるわけですので、今はそういう形になっていない。やっぱり縦割りの弊害が出てきているわけです。
 個別に提案した三つについて見ますと、日本のふるさと再生特区の方では、遊休農地の再生を図る農地法の特例など提案が実現したものも一部ございます。ございますが、グリーンツーリズム振興の柱として、いわばその味つけとして位置づけました自家製造酒の解禁――どぶろくなどの関係でございますが――についてはまだ実現の道筋ができていない。きのう、きょうの話ですと、来週にはまた新たな判断が出るということで、その情報もできるだけ早くとって検討したいと思いますが、今のところはまだ実現の道筋ができていない状況でございます。
 クリーンエネルギーの関係については、今後具体的な実現の方策を検討する必要があると考えていますし、ITの項目については、特区というよりも、おおむね全国規模での規制緩和がこれから順次実施される、こういう状況になっております。
 今後は、自家製造酒の関係等についてのこともございますが、既に特区として実施がその一部分認められた事項につきましては、地域の活性化を図る見地から、どういう活用ができるのかできないのか、そういったことをよく精査して、市町村に働きかけて、取り入れると効果の出るものは導入を促進させていきたいと思いますし、県でも、本県の地域経済振興にとって有効と考えられる規制緩和については、今申し上げました三つだけではなくて、これからも案を練って国の方に提案していきたいと考えております。
 それから、ベンチャーを初めとする、いわゆる新事業の創出・育成についてのお尋ねでございますが、これは、そうした企業が独創的な技術などを持っているかどうか、それから、ビジネスプランとして新しい視点でそうしたものを考えているかどうか、ここがポイントだろうと思います。こうした観点で、これまで、いわゆる創業ノウハウの習得を目的としたいわて起業家大学、これは全国の中ではいち早くこうした大学を設けてそのノウハウ習得を目指して行ってきたわけですが、さらに内容をより専門的、高度化して、より実践的な個別指導なども含めたいわて起業家大学院も開催して、こうした新しい事業に果敢に挑戦する起業家の育成を図っております。
 それから、創造的な研究開発への助成や産業支援機関のネットワークによる研究開発成果の事業化、販路開拓などを今まで支援してきたところでございまして、成果としては、操作性にすぐれた医療画像診断システムの開発で全国展開をしている企業がその中から育ってきております。これはなかなかいい成果が出てきていると思っておりますが、一方で、岩手大学などを中心として企業の共同研究などもかなり数多く行っているんですが、その割にはまだ必ずしもビジネスにつながっていない、こういう課題もございます。
 そこで、ことし4月からは、これはいわて産業振興センターの中ですが、経営やマーケティングの専門家チームを設置して、すぐれた技術や製品を有するものの、資金面や販売面などの課題がある企業に対して、そうした専門家の人たちによって経営戦略の確立、販路開拓などきめ細かに支援していく、こういう一段と強い体制をつくります。それから、今年度、といいましても昨年から設置しましたいわてインキュベーションファンド――これは10億円のファンドでございますが――による投資と株式公開支援を一体的に行うなど、成長企業の育成に重点を置いた施策を積極的に展開して、成功事例を一つ一つ積み重ねて、できるだけ元気な企業を数多くつくり出していきたい、こういうふうに考えております。
 中心市街地の活性化についてのお尋ねでありますが、中心市街地の活性化の考え方には二つポイントがあると思っておりまして、一つは、その地域固有の歴史や文化などの特色を生かした町並みづくりにいろいろな支援をしていくということ、それからもう一つは、消費者の視点に立った魅力ある商店街づくりということで、消費者の買いやすさということをポイントに据える、この二つだと思います。
 これまで本県では、まず、地域が一体となったまちづくりへの積極的な取り組みということで、まちづくり機関――TMOのマスタープランとなるTMO構想の策定に力を注いでまいりまして、今現在では15の市や町で策定されております。これは東北では一番多くて、全国的には北海道に次いで第2位の数でございますが、この構想づくりのところまでは一定の成果が出てきたと考えております。これからは、この構想の実現ということでございまして、各TMOが歩行者通行量、年間販売額などの数値目標を設定した、その構想の次に当たる事業推進計画を作成して、そして今、実施に向けての動きを展開していまして、江刺の蔵のある町並みづくりや、その蔵を活用したクラフトショップの開設、それから、遠野では一店逸品運動など、地域の創意工夫を生かした取り組みが展開されているところもあります。
 こうしたものをさらに実効あるものとしていくためには、とりわけ地域の皆さん方――この人たちが主役でありますので――に成果が目に見え実感できるように、町並みなどのハード・ソフト両面で成功事例を一つ一つつくり出すということ、それをまた起爆剤にしていくことが大切であると思いますので、今後、こうしたでき上がったTMO構想をTMO機関と連携してその実現に当たる。消費者と商店街とのネットワークを強化した住民参加型の商店街づくり、それから、郊外店にはない魅力ある町並みの店舗づくりといったことに力点を置いて、新しい視点に立った取り組みを積極的に応援していきたい、こういうふうに考えております。
 市町村合併の対応についてですけれども、県が昨年末からことしにかけて実施した県内の58市町村長の意向調査では、結果として、全体の9割近くの市町村で何らかの形で住民懇談会など地域との対話が実施されておりまして、県内での市町村のあり方についての議論は、以前に比べまして大変活発になってきていると認識しています。その一方で、まだまだ市町村長のはっきりとした意向が表明されていないところもありますし、また、合併を志向している中でも市町村長間での方向性が一致していない、こういう地域もこの調査の中でわかったところでございます。
 今後、市町村を中心とした社会を形成していくことが大変重要であろうと思っていますので、県では、市町村を中心とした社会形成づくりに重点を置いていきたいと思いますし、県の仕事としては、広域的な視点からの地域の先導、それから、自立に向けての市町村の支援、県域を越えた、より広域での行政課題への対応、機能分担、こういった方向に県の役割は変化していくと考えております。
 現実の市町村では、IT化や地球温暖化防止など新しい行政課題が出てきているわけですが、こうした新しい行政課題に対応できるような体制を構築し、そして自立した市町村を形成するのが重要ですけれども、やはりITの専門家などの人材が不十分でございますので、合併は、こうしたところを充実させる有力な手段だと思っておりまして、意向をまだ表明していない市町村長さんに対しては、地域での議論をぜひもっと活発にやっていただいて、そして、どういう考え方で臨んでいくのか、そういう意向をぜひ早目に表明していただきたい。そういうことを促していきたいと思いますし、また、合併を志向しながらも、どうも方向性が市町村長間で一致していない地域も多くあるわけで、こうしたところでは、関係市町村間での協議が十分に有意義に行われるように、私も先頭に立って、全庁挙げてこうした市町村合併の問題に取り組んでいきたい、そして、市町村の動きを積極的に支援していきたい、こういうふうに考えております。
 次に、地方振興局と市町村に今、県の権限を移していますが、そのことについてお尋ねがございました。これは、先ほどの点と少しダブるところがございますが、私は今、国、県、市町村が担っております役割を見直して――いわゆる補完性の原理と言っておりますが――まず、基礎的自治体である市町村が住民に身近な行政をできるだけ数多く担っていくべきだと。そこから、市町村が難しいものは都道府県、それから最後に国、こういう順番で考えていくべきと考えております。そのことによって受益と負担の関係が一番クリアになりますし、行政の透明性が確保される、そして、住民自治が一層確保されやすくなりますし、まさしく憲法で言っております地方自治の本旨がこうしたことによって全うされるもの、こういうふうに考えております。
 現在、岩手県で試みております市町村への一括事務移譲は、こうした市町村中心の行政システムへの転換を図るとともに、市町村の自立性を高めるための支援として検討してきたものであって、本年度からは岩泉町と田野畑村に県道などの道路維持管理事務を移譲することとしているわけで、これは、両町村がその地域の道路維持管理事務をみずからの責任と権限で行うことによって、これまで県の土木事務所と町村がそれぞれ分けて行っておりました道路の維持修繕や除雪などを一元的、効率的に実施することが期待できます。そういったことで、当該町村との協議の上で、希望を受け入れて実施することとしたものでございます。
 地方振興局と市町村の役割と権限移譲についてでございますが、私は、先ほど申し上げましたような市町村中心が基本であると思いますので、こうした市町村の行政サービス機能の充実に伴って、地方振興局は、より広域的な地域振興施策の立案など広範な市町村支援機能を担う役割にこれからシフトしていくものと考えております。このように、住民に身近な事務を市町村が担っていくためには、地方振興局はこうした市町村への支援機能を強化する必要がございます。市町村の行財政基盤を強化することも重要でございますので、今後、市町村の合併あるいは広域行政の推進なども促進していきたいと思いますし、やはり自立できる市町村を構築することに全力を挙げていきたいと思います。
 こうした観点で、今後、地方振興局長の裁量権をより拡大して、住民への行政サービスに係る地方振興局の事務、例えば保健福祉などの分野についても包括的な権限委譲を検討するなど、こうした市町村の機能強化にさらに取り組んでいきたいと思っております。
 次に、子育て支援体制の充実でございますけれども、岩手県でつくりましたいわて子どもプランに基づいて、子供を産み育てやすい環境の整備に努力してきたわけでございますが、これは国も同じような対策を講じておりますけれども、全国的には少子化に歯どめがかかっていないという状況です。
 こうしたことに対して、国の方で出しております少子化対策プラスワンということで、育児休業の改善など働き方を見直すなど、少子化対策がその中に盛り込まれております。地域や企業の子育て環境の改善を促す方向というものが出てきております。
 県でも、そうしたものの一方で、それから、実施はやはり市町村と連携して行う必要がございますので、市町村とも十分に話をしながら、さまざまな保育サービスや放課後児童クラブの充実をこれからさらに図っていきたいと思います。それから、ホームページを活用して子育て支援情報の提供をすることが大変有益だということでございますので、そうしたことも行っていきたい。
 それから、岩手県の中では、仕事と子育ての両立に向けての就労環境の整備という部分はいまだ立ちおくれていますので、ぜひ企業の理解を求めて、育児休業取得を促進するなど、ここにさらに力を入れていきたい、地域で子育てを支援する体制の充実に努めていきたいと考えております。
 それから、本年5月に県北の一戸町に開所予定のいわて子どもの森(仮称)がございますが、ここでも遊びを通じて子供たちの健全育成の支援ということを行っていきたいと思っております。
 次に、小児救急医療体制の整備でございまして、これは、本県の一関で発生いたしました大変お気の毒な事例がございました。
 これを受けて県でも、各圏域での関係機関の協議の結果で、小児科医への診療が必要な場合には、一つは輪番制を実施している盛岡での受け入れや患者搬送体制の確保など、必要な場合には、確実に小児科医が対応できるような体制の整備に努めたところでございます。
 またさらに、小児科以外の医師のための救急対応の参考として、これは県立千厩病院でつくった小児救急診療マニュアルというのがございますので、このマニュアルを取り急ぎ全救急病院に配付いたしました。そのほか、今年度から開業医などを対象に実施した小児救急に関する研修というものがございますが、来年度は救急病院の当直医にも研修対象を拡大して行っていく、そして、こうした小児救急医療体制の整備にさらに力を入れていきたいと思っております。
 それから、国の方でもこの一関市の事例を契機として、国立病院・療養所に対して小児救急医療体制の積極的な参画を求めるとともに、今後、小児救急の外来診療マニュアルをつくったり、ITを活用した小児救急医療ネットワークの構築を推進するという話を聞いていますので、本県でもこうしたITを活用したネットワークなどを取り入れることが可能かどうか、そういったことが必要かどうか、早急に十分検討をしていきたいと思っています。
 なお、問題の根本には小児科医の不足がございます。これが一番の問題でございますので、こうした点については、昨年度から県の方で開始しました医師養成事業において、義務履行期間というのがございますが、これについては、小児科等を専攻していただければこの義務履行期間を短くするというインセンティブのようなものを設置しまして、できるだけ医師養成の中で小児科等を専攻してもらうような、そんなことも制度としては行っております。これは少し長い目で見た対策でございますが、こうしたことなどにも努力をしていきたいと考えております。
 それから、青森県境産廃不法投棄事件の排出事業者の責任追及の関係ですが、今、私どもが割り出しをしております事業者は、当初2、600社と言っておりましたが、今現在は約1万700社までふくれ上がってございます。こうしたことがございまして、このすべての事業者に対して廃棄物処理委託の内容について現在報告を求めているところでございまして、これまでに提出された個々の報告書については、その内容を一つ一つ厳正に今審査をしているという状況にございます。
 これからの見通しですが、こうした事業者については、法に違反している事実が判明した場合には、原状回復措置を講ずるよう、当然のことながら命令を発するなど、その責任を徹底して追及していく考えでございます。
 一方、地域住民の皆さんの健康被害の防止と安心感の醸成のためには、早急に現場の原状回復の作業に着手する必要がございますので、今の国会に提出されております特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法案の枠組みにおける補助、それから地方債を活用して、平成15年度から行政代執行の手法によって県が原状回復措置に取りかかることにしております。これに要する費用については、不法投棄を実行した廃棄物処理業者や今後解明してまいります違法な廃棄物処理委託を行っていた排出事業者などに求償をしていく、こういう考えでございます。
 それから、排出事業者などが所在する県等の負担につきましては、これは多くは首都圏ですが、現在こうした首都圏などの県にはさまざまな協力をいただいて、排出事業者などの責任の追及に今我々全力を挙げておりますので、今後、こうした責任追及の状況をよく見ながら、不法投棄された側である本県が一方的に費用負担することのないように、その考え方、それから方策について検討していきたいと考えております。
 次に、循環型地域社会の形成に向けた取り組みの成果と今後の対応についてお尋ねがございました。これは、基本的な考え方は、今世紀は、環境の世紀と言われるほど大量生産、大量廃棄型で来ておりました経済社会システムを一回見直しをして、廃棄物の発生をできるだけ抑える、そして、発生した廃棄物はこれを資源として循環的に利用するという、この循環型地域社会を形成するという基本の考え方に立つことが必要だと考えております。
 こうした観点で、私は環境首都いわてという理念のもとに、産業廃棄物の、例えば自県(圏)内処理を基本としたいわて資源循環型廃棄物処理構想というものを一昨年に策定したわけでございまして、この構想の具体化を図るために、さきの12月議会で循環型地域社会の形成に関する条例ほか2条例を早速に制定していただいたわけでございます。これは議会の各議員の皆様方に十分な理解を早い段階で得られたということで大変感謝を申し上げたいと思うわけでございます。こうした制度面の整備も行われてきましたので、本県における取り組みは、こうしたことによって着実に促進されるものと考えております。
 今後は、この条例の円滑な実施に努めることが必要でございますし、農林水産系廃棄物の循環利用を視野に入れた第2クリーンセンター構想をより具体化していくこと、それから、リサイクル製品の認定制度やその利用拡大を図るためのグリーン購入の推進、リサイクル可能な産業廃棄物をインターネット上で情報交換するシステムの構築、さらには、産業廃棄物税の税収、あと協力金もございますので、こうした収入を活用して、廃棄物の発生抑制やリサイクルを推進するための技術研究開発、設備投資への支援などを実施していきたいと考えております。
 また、農林水産関係の廃棄物についてもお尋ねがございましたが、農林漁業者に対して廃棄物の適正処理に向けた一層の意識啓発を図りながら、家畜排せつ物の堆肥利用、それから、林業の関係では木くずなどを熱エネルギー利用として考えていく、こういうものを促進していきたいと思っております。それから、海の関係では、カキ殼が大変発生しますが、こうしたカキ殼を牧草地で土壌改良材として利用するような試みがございますので、こうしたものの実証試験に取り組むなど、いろいろな現場での取り組みを通じて循環型社会の形成に努めていく考えでございます。
 それから、食の安全・安心の確保について基本的な考え方をまず述べよということでございますが、今までは、生産から流通・消費までの各段階で、例えば生産指導という形や食品衛生法などによる監視・指導ということの実施の中で安全性ということを確保してまいりましたし、今年度からは、県民に食品表示ウオッチャーを委嘱するなどの対策をとって、こうした点を考えてきたわけです。県民の食に対する不安感を払拭して、本当に安心した食生活の確保を図るためには、今まで行ってきた取り組みだけではやはり十分とは言えずに、一定の限界があると考えております。このため、いま一度、食は本来安全で安心なものであるべき、こういう原点に立ち返って、消費者側に軸足を置きかえて、生産者、事業者、行政などの食にかかわる者が全体として総合的な取り組みを進めていく必要がある、こういうふうに考えております。
 県では今後、第三者機関として食の安全安心委員会を年度内に設置の予定でございまして、この委員会で公正・中立な立場からさまざまな意見をいただきたい。これは委員会がそれぞれの各現場と十分な緊張関係を持って、そして、具体的、積極的な提言をしていただく、こんな運営を考えております。そこで出された意見を踏まえて、食の安全及び安心の確保に関する基本方針を策定して、保健福祉部や農林水産部といった関係するところだけではない、全庁的な推進体制による生産から消費までの一連の対策、それから客観的な安全性のチェック・評価機能の整備など、そうした幅広い対策を展開していきたいと思います。
 それから、国に対しては、今、全国的な課題となっている食品表示制度でございますが、これをもっと改善していかなければならないと思っておりますので、そうした改善に向けての働きかけ、それから、輸入食品の検査体制、これも国が水際で全部やっていただく必要がございますので、こうした検査体制の強化などについて働きかけをさらに強めていきたいと考えております。
 それから、トレーサビリティーシステムの導入促進でございますが、この仕組みは、消費者の食に対する信頼を確保する上で極めて有効な手段であって、こうしたものに積極的に取り組むべきと考えております。
 こうした観点で、県では今まで、全国の中ではいち早く、牛肉や加工米飯などについて、これは県の独自のシステムとして開発して、運用しているわけですが、また、さらにJAグループや民間企業においても、米や鶏肉、干しシイタケなどの品目について、それぞれが独自の取り組みなどを開始しているところでございます。
 こうしたトレーサビリティーシステムを導入するためには、生産者にきちんと生産履歴を記録していただく必要があるので、JAグループではこの春から、5万農家規模を目指した全県的な記帳運動を展開するということでございまして、県でもこれを積極的に支援していきたいと思っています。
 そうした生産現場での準備ができますと、こうした取り組みを通じて、今度は、そのほかの関係者との緊密な連携のもとに、野菜、果樹、水産物など、さらに他の多くの品目でこうした仕組みの導入拡大を図っていきたいと考えております。
 このシステムは、もとより生産現場から消費者に届くまでの各過程を明らかにすることによって、生産・加工に携わっている関係者が、それぞれの段階で皆が心を込めて安全・安心な農林水産物を提供し、消費者はそれを受け取るというものでございまして、これは単なる販売促進活動というものではなくて、双方の共生関係を築くためにも重要な意味合いを持っておりますので、消費者の皆さん方にも、この意義や仕組みなどについて十分な理解を得ながら、この県産農林水産物の生産、そして供給ということに努めていく考えでございます。
 それからBSEの発生に伴い現在残されている課題は何かということでございますが、これは二つありまして、一つは、肉骨粉の在庫の解消ということ、それからもう一つは、ことしの4月からの死亡牛検査への対応、こういうふうにとらえております。
 まず、第1点目の肉骨粉の関係でございますが、肉骨粉については、現在、県内6カ所、県外3カ所の施設で焼却をしていただいておりますが、ようやく日々の焼却量が生産量を上回る状況となってきておりますけれども、依然として肝心の2万4、000トンの未焼却在庫を抱えているわけでございます。
 この大量の在庫を早期に解消するためには、焼却を受け入れていただく施設をさらにふやす必要があるんですが、実はいろいろな関係方面と当たっていたんですが、2万4、000トン抱えているという本県の事情を酌み取っていただきまして、本県に太平洋セメント株式会社の工場が大船渡にございますが、九州の大分県にここと同じ系列の津久見工場がございまして、ここで近々に焼却できる見通しとなったところでございます。焼却する肉骨粉は、大船渡港から海上輸送で大分港に陸揚げされて、津久見市内の工場に搬送される計画でございます。これは当然、運送賃などの経費がかかりますけれども、これは全額国によって負担されるというものでございます。
 このことによりまして、在庫分の焼却を大幅に加速することができることとなりまして、これはおおよそのめどでございますが、おおむね平成15年度中には在庫が解消されるという明るい見通しがついたところでございます。
 この実現に当たりましては、当然のことながら、大分県を初めとして、大分市、津久見市の特段の御理解と御協力をいただいたわけでございまして、深く感謝を申し上げるところでございます。
 いずれにしても、肉骨粉自体は今後とも継続して焼却をしていかなければなりませんので、県内、それから隣県のより多くの施設で焼却をしていただきたい、こういふうに考えているところでございます。
 それから、もう1点の死亡牛の検査についてでございますが、これは、昨年7月に制定された牛海綿状脳症対策特別措置法で、生産者は24カ月齢以上の死亡牛が発生した場合には、これはすべてBSE検査が義務づけられたということでございます。
 このため県でも、死亡牛から検査材料を採取して、結果判明までの間、保管する冷蔵施設を確保・整備して、生産者への周知徹底を図り、こうした24カ月齢以上の死亡牛のBSE検査、これは4月から完全実施ということで、適切に対応していきたいと考えております。
 学校給食などでの地産地消の推進でございますけれども、これは、子供たちが給食を通じてより多くの地元食材に触れて、ひいては地域の農林水産業、食文化への理解を深めることにもつながるということで、これは食育の推進ということにつながってくるわけですが、大変意義があると思っております。
 こうしたことで、関係機関や団体が連携して、既に県内各地域で地元食材を取り入れた、しかも特徴のあるメニューが学校の方に提供されております。本年度上期でのそうした利用状況を調査したところ、地産地消推進運動の開始前である平成11年度の県平均の利用率が30%だったんですが、今回は、上期でございますけれども、高いところでは85%まで上っていますし、県全体の平均でも50%を超えておりまして、品目によってもちろん違いはあるんですけれども、地元食材の利用はここのところ急速に高まっている、こういう結果が出ております。
 それから、県立病院ではまだ取り組みが少しおくれているんですが、今、いわて食財の日にあわせて、地場産品や郷土料理を取り入れた給食が実施されているわけですが、これはぜひ御理解をいただいて、順次拡大していきたいと思っております。
 こうした取り組みをさらに広げるために、今月4日に学校や病院、福祉施設などの給食事業関係者と生産、流通関係者の参加のもとに、地産地消推進フォーラムを開催して、地元食材の利用と安定供給方策について議論を深めたところでございまして、我々の方では、県産食材の安定供給の仕組みづくりを支援するとともに、こうした給食事業での取り組みの拡大などを通じて、この地産地消の一層の浸透を図っていきたいと考えております。
 それから、農薬問題についてですが、やはり消費者の皆さん方への安全・安心な農産物の供給ということの上では、農薬の適正な販売と使用により安全性が確保される、このことが大変重要なポイントだと思うわけです。
 昨年、本県でも無登録農薬の販売、使用が確認されたところでもございますので、こうした点を重大に受けとめて、10月に学識経験者や消費者も委員に加えた農薬適正販売・使用推進協議会を設置して、そこでいろいろ議論していただいて、現在、生産現場での指導などの徹底を図っております。
 それから、雑穀など地域特産農作物への登録農薬というのが極めて少ないといったことも、この農薬の不適正な使用の一因となっているということもございますし、やはり生産者の皆さん方からは、こうした使用できる登録農薬を少しでも数をふやしていただきたい、こういう強い声もございますので、先月国に対して、これら農作物への農薬登録の拡大を提案したところでもございます。
 この3月に施行される改正農薬取締法において、無登録農薬の使用禁止、農薬の使用基準の遵守の義務化などが新たに規定として追加されましたので、農業関係者に対してその内容の十分な周知徹底を図るとともに、来年度から、新たに農薬適正使用アドバイザー制度というのを創設して、生産者の皆さん方にいろいろなアドバイスがしやすい体制、相談を受けやすい体制というものをとって、十分生産現場にも浸透させたいと思っています。
 今後とも、生産者の皆さん方が高い倫理観のもとでこうしたものを使い、安全・安心な農作物を提供することが極めて大切なわけでありますので、今言ったような啓発活動をさらに強化をしていく考えでございます。
 最後に、本県の水田農業の改革について知事の決意を述べよというお話でございました。
 国の米政策改革大綱では、平成22年度までに効率的かつ安定的な経営体が生産の大宗を担う生産構造等を実現することとして、その道筋が示されたわけであります。本県にとってみても、稲作を初めとする水田農業というのは農業の基幹をなすものでございますので、こうした国の新たな米政策というのを一大転機ととらえて、そして、なお一層この水田農業というのは振興していかなければいかんと考えるわけでございます。
 今、こうした農業分野だけではなくて、あらゆる分野で自己決定、自己責任ということが求められる時代であるわけですが、農業の場面においても、そうした生産者や集落全体としての自主性や創意工夫というものを十分散りばめて、自立できる経営体ということを全体で育成していくことが大変重要なことでございます。これは、行政も当然そうでありますし、農業のさまざまな関係の団体といったところにも十分理解していただく、さらには、県民全体がそうしたことを応援していく、こういう機運をつくっていかなければなりません。需要を先取りした売れる米づくり、それから地域の特産作物の振興、それをうまく組み合わせて所得形成力の高い産地をつくっていったり、主業型農家や地域ぐるみでの集落型の経営体の育成ということで、いずれにしてもこうした体質の強い、しかも持続性のある水田農業の確立に私は全力を挙げていきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。

〇議長(谷藤裕明君) 次に、折居明広君。
   〔44番折居明広君登壇〕(拍手)


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