平成19年6月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇1番(木村幸弘君) 政和・社民クラブの木村幸弘でございます。
 このたびは、改選後最初の定例議会におきまして一般質問の機会をいただき、ありがとうございます。これからの4年間、山積する諸課題の解決や県民生活の向上に努める所存でございます。先輩・同僚議員各位の御指導と、達増知事を初め、県当局の御協力を賜りますようよろしくお願いいたします。
 それでは、通告に従いまして順次質問を行います。
 初めに、達増知事の基本姿勢と憲法観についてお伺いいたします。
 第1に、現憲法は、国民主権、基本的人権、平和主義という理念のもとに、戦後、日本の民主主義国家の体制をなし、そして、国民生活の向上と経済発展に平和国家として大変大きな役割を果たしてきたと私は思っております。この現憲法の基本理念について、知事はどう御認識を持たれておりますか、御所見をお伺いいたします。
 第2に、憲法改正論議が政権与党主導のもとで進められようとしております。特に憲法9条の改正について、自民党の憲法改正草案によると、自衛隊を自衛軍へ変えることや自衛軍の役割について、改正を既成事実化するために集団的自衛権行使の検討を行い、解釈改憲を進めようとする安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の設置など、軍事面の体制づくりを強化しようとする状況にありますが、憲法9条の意義と、これを取り巻く一連の動きに対して、知事の御所見をお伺いいたします。
 第3に、格差社会問題についてお伺いいたします。
 私は、この格差社会の問題を考えるとき、憲法25条の理念を踏まえれば、国民の暮らしについて、しっかりと保障されていなければならないと思っています。年金や医療・福祉といった社会保障に対する責任を初め、各条項においても、教育の義務、勤労の義務と権利、両性の平等など、現憲法の理念に基づく政治が国民に対して誠実に実行されていれば、今日のような子供を安心して産み育てる環境から高齢者の年金生活や介護サービスに至るまで、生涯にわたる不安を増大させるような格差社会がここまで深刻な問題にはならなかったはずであります。もともとスタートラインの異なる多様な地域性や経済力の違いなどを無視してグローバル化への適応を目指し、規制緩和と市場経済原理主義に基づいて進められてきた国の政策のあり方について、知事は、聖域なき構造改革によって経済格差と地方の疲弊をもたらしたと断じています。
 そこで、県民の暮らしと県政の実態を踏まえ、憲法の理念に照らし合わせたとき、知事は、行政としてどのような役割と責務を果たすべきであるとお考えか、御所見をお伺いいたします。
 次に、知事演述とマニフェストに掲げた方針についてお伺いいたします。
 第1に、知事の打ち出したマニフェストに基づく今後の施策推進と増田前知事のもとに進められてきた2010年までの岩手県総合計画を基本とする各計画との整合性についての考え方や、前任からの引き継ぎ課題など具体的重点課題として、後期実施計画に何を目標に定めてどのように取り組んでいくのか、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、平泉の文化遺産の世界遺産登録を目指す中で、重要となる広域観光振興戦略は県南広域振興局において既に策定されているわけですが、その中でも、特に平泉文化の基盤的要素と言える北上川の活用策が注目されております。北上川は、岩手の歴史と文化をはぐくみ、豊かな農村風景が広がる、景観にすぐれた川として知られています。この流域には多くの市民活動が生まれ、多様な実践とビジョンが幾つも発信されています。こうした流域及びその周辺の地域資源をつなぎ、切り口となるのが、藩政時代に隆盛を極めた舟運文化であると思います。岩手ブランド力としての北上川、平泉世界遺産登録へのアプローチとしての舟運の再興を早急に検討すべきと思いますが、いかがお考えかお伺いいたします。
 次に、雇用対策についてお伺いいたします。
 総合雇用対策局廃止に伴う今後の具体的対策についてでありますが、総合雇用対策局廃止については、改選前の3月15日、本会議におきまして、岩手県部局等設置条例の一部改正に伴い、廃止が決定されております。廃止に伴う当時の質疑の中で、前知事は、雇用情勢は改善の兆しが見られ、今後は、非正規雇用の問題や県北・沿岸地域の雇用を、重要課題として商工労働観光部で産業振興施策と一体的に取り組むと答弁されました。県は今、産業成長戦略をキーワードとして経済基盤確立と産業支援策の強化に努め、もって雇用への具体的拡大へと結びつけようとする意気込みは評価したいと思います。
 そこでお伺いいたします。第1は、求人数や有効求人倍率など雇用情勢は改善の兆しがあるとは言いながら、その実態として、依然、非正規雇用や派遣労働者の占める割合が高いなど、量的改善策とあわせて、処遇改善や身分の確保など、正規雇用へ結びつける質的改善対策が望まれており、こうした課題に対して具体的にどう取り組まれるのか、お伺いいたします。
 第2に、公務職場にあっても、近年、教職員などに臨時雇用の実態が拡大する傾向にあると思います。特に臨時的任用教員の状況を見ますと、病休や産休などの措置のほかに、欠員補充という枠組みでの任用教員配置数が、本年5月1日現在で、小・中・高校、特別支援校全体で、717名、そのうち実に65%に当たる464名にもなっております。この背景には、少子化や高校再編等による教職員定数の減少を見越すなど、新規採用の抑制につながっていることは明らかであります。そうした中で、さまざまな任用形態のもと、臨時職員が正規職員と同等の任を担わざるを得ないという現場の実態にあると承知しております。賃金、手当、労働条件全般について、正規職員との格差の存在について是正をしていくことが求められます。
 子供たちにとっては、臨採も正規採用も、先生は先生なのです。生活不安や雇用不安を抱え、なおかつ現場では、臨採だからと言いわけのできない、子供たちや保護者との関係など、使命感と責任感によって職務を全うしようと努力されている実態について、その改善を図るべきでありますが、お考えをお伺いいたします。
 第3に、県内において、一定の人口規模を有する自治体等の単位で設置されております中小企業勤労者福祉サービスセンター等の国の補助金制度のシステムが平成19年度から変更される中で、現在、中小企業に働く労働者の福利厚生対策として、盛岡市、北上地区、胆江地区で1、301事業所、会員数9、331人が、各中小企業が自前で福利厚生事業ができないことから同制度を活用しています。県においても、産業成長戦略として地場産業の拡大や人材の確保に対する環境整備や雇用対策に取り組むに当たり、大切な役割を果たしているこれら事業の推進について、国の制度拡充を求めるとともに、県としての対応についても検討すべきであると考えますが、お伺いいたします。
 次に、医療・保健対策についてお伺いいたします。
 第1に、県内の二次医療圏の医師・診療科不足対策と偏在の解消についてでありますが、県内を九つの地域として区分した二次医療圏において、医療圏ごとの全体の医師数や充足率などのデータは医師数不足の実態としてさまざまな論議の根拠に取り上げられていますが、私は、特に救急医療体制として病院群輪番制をとっている医療機関で、救急にかかわる診療科の体制が不安な要素としてあらわれてきているのではないかと思うのです。産科、小児科は全国的にも取り上げられる問題でありますが、循環器科、脳神経外科、神経内科などの診療体制については、県内に3カ所設置されています救命救急センターにおいても、盛岡医療圏を除いて、他の二次医療圏もあわせて深刻な状況にあると言えます。
 特に、心筋梗塞などの循環器医療については救急対応が重要であります。本年4月1日施行の改正医療法では、各都道府県の医療計画策定に際し、新たに心筋梗塞など4種の疾病についての定めを指定しており、現在、県当局内部における県医療制度改革推進本部会議で進められている県医療計画の検討にあわせ、同時に協議されている急性疾患等に係る医療連携体制のあり方に関する検討会が3月27日に第1回会合を行っていますが、心疾患や脳卒中など急性疾病対策について、盛岡医療圏を除く二次医療圏の偏在解消を、救急医療体制として具体的にどのような検討が進められているのか、お伺いいたします。
 また、医療計画策定に当たっては医療審議会の意見を聞くこととされておりますが、患者本位と地域ニーズに対応するため、住民や労働者を代表する方などの参画も必要であると考えます。利用者の立場や公募による県民の参加など、医療提供者や関係者に偏らない、幅広い審議が必要であると思いますが、県のお考えをお伺いいたします。
 第2に、医師会との連携についてお伺いいたします。
 4月20日、時事通信社の官庁速報によると、厚生労働省が県医療計画作成に対する指針として、開業医による時間外・訪問診療を強化し、入院治療を担う病院と地域医療を担う診療所の役割分担を明確化する必要があるとし、開業医に期待される役割として、一つ目は、在宅当番医制構築と休日、夜間の救急センターへの交代勤務、二つ目は、時間外携帯電話連絡体制、三つ目に、午前は外来、午後は往診、訪問診療という経営モデルの構築、四つ目として、在宅療養支援診療所を24時間体制でグループ対応で行うという点を明示しています。さらに、岩手県医師会が昨年3月に作成した岩手県地域医療グランドデザインでは、特に救急医療の項目で、初期救急に関して、開業医の時間外診療への意識づけ、自身の患者との携帯電話等を活用した時間外対応、救急・夜間時に開業医は当てにならないという患者意識を変える努力が必要など、開業医としての役割意識を高める提言が述べられております。勤務医や病院体制の厳しい現状を踏まえ、積極的な役割を果たし、地域へ貢献しようとする医師会への期待を感じる内容でありました。
 県内では、既に医師会との連携による休日当番医制や、盛岡の夜間急患診療所、胆江地区休日診療所、奥州市小児夜間診療所、宮古市休日急患診療所などが展開されており、こうした取り組みを、各医療圏についても、初期救急医療体制として、不足する診療科体制をフォローするため、各地区医師会との積極的な連携のもとに整備拡充する必要があると考えますが、県のお考えをお伺いいたします。
 第3に、AED導入の普及拡大についてお伺いいたします。
 自動体外式除細動器、以下AEDと略しますが、この導入については最近注目が高まっております。日本では、2001年に医療機関への設置を皮切りに、2004年7月には一般市民の使用が許可されました。内因性突然死の原因疾患の約半分は急性心筋梗塞症で、発症した患者の約半分は病院到着前に死亡しているとの実態があります。
 2005年当時、県立久慈病院循環器科長の白戸隆洋氏がインターネットへ配信しているAED普及の経過によりますと、県内では2001年に久慈病院に初めてAEDが設置され、院内で実際に医師以外の医療従事者が設置後4年間で10人を蘇生したとのことです。また、命の教育として、医療圏内の小・中・高校教員への指導者講習を行い、生徒たちも講習するなどの取り組みが進められています。4月15日に報道された中で、北上市で一般市民がAEDで救命したことが取り上げられ、全国的にも、試合中の生徒がボールを直撃され心肺停止状態となる中、居合わせた消防職員が設置されていたAEDを使用して命を取りとめたというニュースがある一方で、5月には、愛媛県で中学生がサッカーボールを胸に受け、AEDがなかったために手当てがおくれ、死亡したとの事例も報じられています。
 県内におけるAEDの設置状況等を見ると、県に対する自主的設置状況報告では260カ所に375台で、施設割合では、体育施設、医療機関、社会福祉施設、役所に集中し、県内35自治体中、未設置は葛巻町、岩泉町、野田村の3カ所、設置数上位は、盛岡市、一関市、宮古市、久慈市、奥州市が抜き出ています。このほかに、県心肺蘇生法普及推進会議によりますと、報告されない分や個人取得などを含めて700台余りが設置されていると聞いております。
 そこで、医療体制と専門医不足という現実の問題を抱えながら、基本的には医師と医療の体制確保が第一義ではありますが、先ほどの白戸先生のお言葉をかりれば、公共の場への設置と心肺蘇生法の普及が急務であり、医師が病院で待っていても救えない命がたくさんあるという言葉を重く受けとめなければなりません。先ほど申し上げましたが、県内設置状況を見れば、単に理解の不足だけにとどまらず、地域によっては財政力も含めての格差もあるとすれば、救われる命の代償が地域によって異なるような状況であってはならないと思いますが、公共施設等における普及率を向上させるために、具体的な普及促進策を講じることについてお伺いいたします。
 また、公共施設のうち、特に学校については、児童生徒が授業のほか日常的にクラブ活動等を行う場でもあり、AED設置の必要性も高いと考えますが、今後の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、県土整備についてお伺いいたします。
 第1に、土砂災害警戒区域等の指定についてでありますが、本年6月8日付で追加指定された14カ所を含めて、県内の土砂災害危険箇所1万4、348カ所のうち、平成18年度末までに約2、000カ所の基礎調査を行い、19年3月末で970カ所の調査結果の地元説明会が実施され、そのうち地元の理解が得られた660カ所を指定したと聞いております。この土砂災害警戒区域の指定に係る基礎調査とは具体的にどのような調査であるのか、そして、地元説明会で理解を得られたとするその内容について御説明をお願いいたします。
 また、具体的な今後の対策について、区域指定されたことにより、例えば家屋の移転等を伴う対策や指定区域対象が迂回路等のない生活道や主要な幹線道である場合、その安全対策や新たな道路整備を伴う事業の計画など、どのような対応が検討されているのか、事例等を具体的にお伺いいたします。
 第2に、県の施策上で、各市町村をまたがっての組織再編に伴う県の施設等の統合が実施されることにより、これらの施設を利用するため新たな市町村道の整備を必要とする場合がありますが、特に県立病院再編に伴うアクセス道整備についても、関係市からの要望などを踏まえて、県はどのような支援方針を持っておられるのか、お伺いいたします。
 次に、環境対策についてお伺いいたします。環境問題は、地球規模の課題から生活に密着した問題まで多岐にわたって山積しているわけですが、私は、次の2点についてお伺いいたします。
 第1は、悪臭公害対策であります。県は、悪臭規制の基準について、住民自身が不快と感じる臭気の感覚を規制の判定とする臭気指数を導入することについて、今年度予備調査を行い、来年度に導入する見込みであることが本年1月末に報道されておりました。この判定方法は、既に花巻市と奥州市が独自に悪臭公害防止条例を定め実施されている取り組みでありますが、県では、悪臭防止法指定地域となる各市町村の意見を聞きながら、住民の感覚に近い規制として検討したいと述べられております。
 そこで、規制基準値の制定など具体的な施行規則を定める際には、既存の自治体の条例及び施行規則との整合性を図り、一体的な指導と監視体制が確立されるようにすべきであります。そこで、今年度における具体的な調査事業と今後の具体的検討の内容について、どのような考え方であるか、お伺いいたします。
 また、悪臭公害は、もっぱら産業活動などから発せられることにより地域住民とのトラブルが絶えない状況もあり、地域住民と当該市町村が中心となって、事業者を加えた公害防止対策協議会を設置し、また、環境保全協定を締結するなどの取り組みを具体的に進める必要があると思いますが、現実的には所期のとおり取り組みが進んでいないところもあります。このように、地元だけではなかなか解決できない事例に対して、県がより積極的に支援していただきたいと思いますが、お考えをお伺いいたします。
 さらに、恒常的になっている悪臭問題のため、畜産振興対策として、化製場の原料を供給する側の産地処理体制の確立に向け、単に生産供給活動の面だけではなく、後処理関係まで含めた一体的な取り組みについて検討課題に据えるなど、抜本的解決の方向性を見出すため、県として対策を検討すべきものと考えますが、お伺いいたします。
 最後に、環境対策と農業政策を連動させた取り組みとして、バイオエタノール対策を具体的に推進することについてお伺いいたします。
 この課題については、2月定例会においても前県議の小原宣良氏が代表質問で取り上げ、バイオマス資源の有効活用システム構築と利活用モデルの調査研究を初め、岩手生物工学研究センターでのエタノール生産技術の開発などに取り組んでいると答弁されております。
 そこで、具体的に開発に取り組まれている現在の状況と今後の具体的な計画についてお伺いいたします。
 また、奥州市において、本年2月に奥州市地域新エネルギービジョン・自然資源とエネルギーの地産地活という計画が策定されました。この計画策定には、東北大学大学院農学研究科教授の両角和夫氏が委員長、同大学大学院環境科学研究科の和田清美氏を副委員長に据えて、JA、森林組合、商工会議所、東北電力、市民団体等によって委員会を構成し、エネルギー資源の地産地活、産学官民の協働、地域産業の振興、地域自然環境の保全を一体的なものとして推進することについて大変よくまとめた計画であると思っています。そうした中で、具体的な実証実験に基づく米のエタノール化について、その結果についてのシンポジウムを開催し、企業化を提言するなど積極的な姿勢が示されているところであります。
 御承知のように、今、世界各地では、バイオエタノール燃料開発に向けた動きが拡大する中で、食料用や畜産飼料用としての穀物類がエタノール増産計画に向けられ、輸入原料の不足と価格高騰の影響を受け、我が国においてもその影響が懸念され始めています。先ほど御紹介した東北大学の両角教授は、休耕田で米をつくれというNHKの番組で、休耕田を生かし、エタノール用米の作付や養鶏や養豚用の飼料米作付による水田資源の活用と保全、資源循環、そして、何よりも厳しい農業情勢についても触れて、米消費量が少子・高齢社会の影響も重なり頭打ちの情勢が予測される中で、農業の新たな展望に結びつくことが重要だと訴えております。したがいまして、米のエタノール化については、県の産業成長戦略にも掲げている環境産業の振興として、農林業、工業との連携も視野に入れるなど、生物工学研究センターを初め、県内大学や研究機関の参画も含めて本腰を入れた組織体制を確立し、重要な政策課題として位置づけ取り組むべきであると思いますが、お伺いをいたします。
 以上で、登壇しての私の一般質問を終了させていただきますが、御答弁につきましては、積極的かつ建設的な御答弁を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 木村幸弘議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、現憲法の基本理念についてでありますが、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義、この3大原則は、グローバル化の進展など内外の大きな変化の中でますます重要度は高まっており、今日においても、守らなくてはならない理念であると認識しております。また、私といたしましては、真の地方分権改革を推進することにより、憲法に位置づけられた地方自治の本旨である地域の自立と共生がこの岩手で実現されるよう、知事の職務に邁進してまいる所存でございます。
 次に、憲法第9条の意義等についてでありますが、日本国憲法第9条は我が国憲法の特色であり、また、国際連合憲章の理念でもある平和主義を規定した極めて重要な条文であると認識しており、今後とも、平和主義は、日本国憲法の原則として維持されなければならないと考えているところでございます。
 私は、衆議院議員時代、日本国憲法第9条については、国際連合憲章との整合的な運用について特に強く訴えてまいりましたが、最近の一連の動きの中では、その点についての議論が深まっていないことに懸念を覚えております。いずれにいたしましても、今後、さらに国会などの場で十分に議論し、広く国民的論議を経て結論を導いていくべきものと考えます。
 次に、格差社会問題についてでありますが、今日の大都市圏とその他の地方における所得や雇用などの格差は、バブル崩壊で日本経済に余力がなく、地方分権が進まない中で推し進められた市場原理優先型の経済財政政策などがもたらしたものと認識しております。
 このように、市場原理主義に傾いている現在の社会経済システムの中で、格差が拡大・固定化せず、真に自立した豊かな地域社会を構築していくためには、まず、岩手の持つ文化を含めた資源を最大限に引き出し、国際的な視野の中で、産業・経済面の効果を目指す、いわば自立の視点からの政策を進める一方で、同時に、さまざまな立場にある人々が、地域においてともに支え合い、安心して暮らしていくことができるといった、いわば共生の視点に基づく政策が重要であると認識しております。
 この自立と共生という二つの理念に基づく政策を同時に進めることが、憲法第25条の理念にもかなうものと考えているところでありまして、自立の基礎となる確かな地域経済基盤のもとで、県民の生活や暮らしを守るためのセーフティネットを構築していくことが今日の行政の役割であり、責務であると認識しております。
 次に、後期実施計画の具体的な取組目標についてでありますが、現在の県の総合計画に掲げる自立、参画、創造による持続的な地域づくりといった理念や、さまざまな施策の取り組みの基本方向には、私がマニフェストに掲げました公正、自立そして共生という理念や政策の方向性と重なり合う部分が多くあることから、私が進めようとする県政と各分野の計画は、十分な整合性が図られると認識しております。
 一方、グローバル化が急速に進展し、地域経済や県民生活を取り巻く環境も大きく変化していることから、私のマニフェストを盛り込んだ新しい地域経営の計画を、後期実施計画として早急に策定しようと考えております。
 私は、今後の県政運営におきましては、産業振興により県民の雇用と所得を確保することで、確かな地域経済基盤を構築しつつ、安定した財政基盤のもとで、医療、福祉、教育などの県民生活の基本となるサービスを、しっかりと提供していくことが重要と考えております。
 このような認識のもと、計画の策定に当たりましては、県北・沿岸圏域の産業振興や、地域医療の確保などの前知事から引き継いだ県政課題を含め、さまざまな分野におけるこれまでの取り組みの成果や課題を十分に踏まえた上で、今後4年間に優先的、重点的に取り組むべき政策や適切な指標、さらには、具体的な推進方策などを明らかにしてまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部長から答弁させますので御了承をお願いいたします。
   〔企画理事酒井俊巳君登壇〕
〇企画理事(酒井俊巳君) 北上川の舟運の再興についてのお尋ねでありますが、昨年度、県南広域振興局が策定したいわて県南広域圏観光産業振興戦略において、北上川流域を一体的に観光資源として活用した広域観光を推進するということにしてございます。
 具体的な取り組みとしては、本県及び宮城県における北上川流域の官民が一体となって、北上川を活用した観光に取り組む北上川流域観光地域づくり実践プランを策定し、昨年度末、この3月に、国土交通省の観光ルネサンス事業に応募したところでございます。
 現在、国土交通省において、このプランの選定に係る審査をいただいているところでありますが、今年度は、選定結果を受けましてアクションプログラムを作成することとしているところであり、その中で、北上川を活用した観光において最も重要な要素資源と認識されます舟運文化、舟運の再興についても十分に検討してまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長阿部健君登壇〕
〇商工労働観光部長(阿部健君) まず、正規雇用の拡大など雇用の質的改善についてでありますが、平成18年度における本県の正社員有効求人倍率は0.35と、依然として低いことから、正規雇用の拡大は、本県の雇用対策における重要課題であると考えております。このため、県といたしましては、昨年度から、商工関係団体への要請活動や200社を超える企業への個別訪問、また、正規雇用の拡大により成功している企業の事例を学ぶシンポジウムの開催を通じて、企業に対し正規雇用の拡大を呼びかけてきたところでございます。
 今年度におきましては、正社員を採用する企業のみを対象とした会社説明会、就職面接会を県内各地で開催するとともに、正規雇用啓発冊子の作成・配布、4広域振興圏での正規雇用拡大をテーマとした雇用・労働フォーラムの開催、また、派遣社員が能力を向上し、将来、派遣先企業等において正社員に登用される機会がふえるよう、派遣元事業主に派遣社員の能力開発に取り組んでいただくための情報を提供するなど、県内における正規雇用の拡大に向けて関係機関と連携し、より積極的に取り組んでまいる考えであります。
 次に、勤労者福祉サービスセンターについてであります。
 厳しい財政状況を背景として、国は、平成14年度に、サービスセンターに対する補助金の一部見直しを行い、さらに、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律が成立したのを受けて、平成18年度には雇用福祉事業などの見直しを行い、その結果、サービスセンターに対する補助金の廃止を決定したものと受けとめております。
 このような状況の中で、各センターにおきましては、国からの補助金なしでも運営していくことができるよう、平成15年度から自立化計画を策定し、業務内容の見直しなどに取り組んでいるところであります。
 平成19年度からは、国が補助金交付等の事務を県を経由することなく直接市町村と行うこととなりましたが、県といたしましては、労働福祉向上の観点からも、事業運営に必要な情報提供や助言等を今後とも行ってまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長赤羽卓朗君登壇〕
〇保健福祉部長(赤羽卓朗君) 急性疾患等に係る医療連携体制のあり方に関する検討会についてでございますが、この検討会は、新たな医療計画の策定に向け、本県における脳卒中、心疾患等の急性疾患につきまして、医療連携体制のあり方を検討することを目的に本年3月に設置したものでございまして、これまで3回にわたり検討会を開催してきているところでございます。
 この検討会におきましては、重症患者の救命率の向上、初期救急患者が地域の拠点病院へ集中している現状を踏まえた医療機関の役割分担と連携のあり方等について、一般県民への意識啓発、それから病院前救護・医療体制、広域救急搬送体制などの観点から検討をいただいているところでございます。
 今後においては、検討会で出された意見を踏まえまして、脳卒中や心疾患といった急性疾患の本県における医療連携体制のあり方について、新たに策定いたします医療計画において、その方向性を示してまいりたいと考えております。
 次に、医療計画策定に当たっての審議についてでございますが、医療計画の策定に当たりましては、県医療審議会の御意見を伺うこととされておりまして、その委員は、医療法施行令第5条の17によりまして、医師等の医療関係者、医療を受ける立場にある方、学識経験者から、都道府県知事が任命することとされております。
 本県の医療審議会の委員は、医療関係者に、県医師会、県歯科医師会、県薬剤師会から、医療を受ける立場にある方には、女性団体、公募委員、労働組合、市町村などから、それから学識経験者に、岩手医科大学、県看護協会などから御就任いただいているところでございまして、これらの方々により、幅広い見地から御審議をいただいているところでございます。
 医療審議会での審議のほか、医療連携体制に関する各種協議会やパブリックコメントなどにより、医療関係者はもとより、県民などさまざまな立場の方々から広く御意見を伺いながら、本年度末までに新たな医療計画の策定を進めてまいりたいと考えております。
 次に、医師会との連携についてでございますが、現在の取組状況でございますが、時間外における初期救急医療体制につきましては、現在、市町村が主体となって、各地区の医師会等と連携しながら休日の当番医制を実施しておりまして、一部の市町村では、休日夜間急患センターの運営にも取り組んでいただいているところでございます。
 また、県におきましても、県医師会などと連携しながら、開業医等を対象に、小児救急医療の一翼を担っていただけるよう研修会を開催する、あるいは、夜間、子供の症状が心配になった保護者からの相談を受け付け、適切な対処方法についてアドバイスをいたします小児救急医療電話相談事業等に取り組んでいるところでございます。
 県としては、こうしたこれまでの取り組みを引き続き推進いたしますとともに、病院と診療所の機能分担と連携により、地域医療を確保するといった観点から、今年度、地区医師会、市町村及び県立病院の連携のもと、地域の開業医の参加・協力をいただきまして、夜間に小児科の初期救急患者の診療を行う新たな地域医療連携の取り組みを進めることとしております。
 今後とも、このような医師会等との連携による初期救急医療体制の整備の支援に努めてまいりたいと考えております。
 次に、自動体外式除細動器、いわゆるAEDの普及拡大についてでございますが、このAEDの使用につきましては、平成16年7月に一般市民の使用が認められたところでございまして、その使用に関する講習の受講が勧奨されたところでございます。これを後押しする形で、同年12月に、国の制度として、心肺蘇生法の普及講習にAEDの使用が盛り込まれたところでございます。
 県では、こうした国の動きも受けまして、県及び関係団体で構成いたします岩手県心肺蘇生法普及推進会議を中心とし、講習会に係る指導者の養成並びに一般市民向け講習会を開催し、これまで約2年間で延べ11万4、500人、県内総世帯数と単純に比較いたしますと、約5世帯に1人の方が受講されたといった割合となっております。
 こうした取り組みにより、AEDの必要性が広く普及、認識されてきているのではないかなと考えておりまして、さまざまな事業所や団体の自主的な購入とか設置につながっているものと考えております。
 今後とも、岩手県心肺蘇生法普及推進会議を中心にPR活動や講習活動を実施し、県内への普及に努めてまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長西畑雅司君登壇〕
〇県土整備部長(西畑雅司君) 土砂災害警戒区域の指定についてのお尋ねでございますが、平成13年に施行されました土砂災害防止法に基づきまして危険箇所の調査を行い、土砂災害警戒区域等の指定を進めているところでございます。
 そこで、お尋ねの基礎調査でございますが、地形図や現地調査などによりまして、がけ、沢の地形、表層の地質、土地利用の状況、建築物の構造などを調べまして、大雨などによりまして土砂災害が発生するおそれがある土地の区域を明らかにする、それから、土砂災害が発生するとしたときに、そこにある建物が損壊するかどうかを計算しまして、その範囲を土砂災害特別警戒区域と土砂災害警戒区域に分けて図示するための調査でございます。
 また、地元説明会では、県と当該市町村が連携いたしまして、基礎調査の結果を図示した2、500分の1の図面、土砂災害警戒区域等の指定に伴って生ずる行為規制、地域防災計画への位置づけなどによる情報の収集伝達、避難救助等の警戒避難体制について御説明し、区域内にお住まいの住民の方々に御理解を求めているところでございます。
 土砂災害特別警戒区域におきましては、特定の開発行為に対する許可や建築物の建てかえ時に構造規制がかかるため、そこに居住されている住民の方々の移転に対する合意形成が得られた場合には、がけ崩れの危険箇所からの家屋移転を支援する制度を、平成18年度に創設したところであります。
 また、土砂災害警戒区域内に、議員御指摘の迂回路のない道路が含まれる場合には注意深い道路管理に努めるとともに、新たな道路計画予定路線に土砂災害警戒区域が含まれる場合には、土砂災害危険箇所を考慮した検討を行って、必要な箇所には必要な対策を講ずることとしております。
 今後とも、土砂災害対策につきましては、ハード、ソフトを効果的に組み合わせ、地域の安全確保に努めてまいりたいと考えております。
 次に、県立病院再編に伴うアクセス道整備についてでありますが、現在整備しております県立花巻厚生・北上統合病院―仮称でございますが―のアクセス道整備を、花巻市と北上市が連携しながら取り組んでおります。花巻市では、花巻市道山の神桜木町線、延長約360メートルと、都市計画道路山の神藤沢町線、それから花巻市道山の神飯豊線の延長1、720メートル、合わせて北上市境までの約2、080メートルにつきまして、地方道路交付金とまちづくり交付金の二つの交付金を活用しながら整備しているところであります。
 一方、北上市では、花巻市道山の神飯豊線と接続いたします北上市道飯豊北線、延長約2、400メートルでございますが、これを新たなアクセス道として計画し、今年度中に都市計画決定を行って、来年度、道路整備に着手したい意向であると伺っております。
 県といたしましては、都市計画決定に係る手続を円滑に進めるなど、できるだけ早い時期にアクセス道が利用できるよう、両市と連携を図りながら支援してまいりたいと考えております。
   〔環境生活部長菊池秀一君登壇〕
〇環境生活部長(菊池秀一君) 悪臭公害対策についてでありますが、まず、調査事業と検討の内容につきましては、悪臭の規制は悪臭防止法に基づき、県は規制地域の指定と規制基準を定め、具体的な規制については市町村が実施することとされております。
 規制の方法としては、個々の物質に応じた化学的な物質濃度規制と人間の嗅覚によって判断する臭気指数規制の二つがありまして、県では、これまで、関係市町村の意見を踏まえた上で物質濃度による規制を行ってきたところでございます。しかしながら、近年、この規制では、住民の苦情に対応できない地域も出てきておりますことから、6月補正予算に、臭気指数規制を導入するための調査経費を計上したところでございます。
 調査の内容といたしましては、事業場の立地状況や苦情の実態を調査するとともに、業種ごとに臭気の実態をサンプリング測定し、これを踏まえて、年度内に臭気指数の規制地域と規制基準を告示したいと考えております。
 なお、その際、既に独自の条例で臭気指数規制を定めている花巻市、奥州市との調整が必要となりますが、両市の地域事情を優先させる方向で十分に協議してまいりたいと考えております。
 次に、解決できない事例に対する県の支援についてでありますが、悪臭防止法では、事業者に対する具体的な規制は市町村の事務とされておりますが、市町村の取り組みだけでは改善されない場合もございますので、県としては市町村と連携し、事業者に対し悪臭が低減されるよう、県が所掌する水質汚濁防止法等の関係法令を適用させながら、各種基準の遵守と施設の改善等の指導監督を行っております。
 また、個別の課題を有する市町村に対しましては、県、地元市町村の関係部署による連絡会議を設置いたしまして対策について検討するとともに、地元住民、市町村、事業者による話し合いの場に参画いたしまして、環境保全協定の締結に向けた助言を行うなど、積極的に対応しているところでございます。
 今後とも、地元との連携を一層強めながら、地域の事情に応じた必要な支援を行うなど、問題解決に向けて積極的に取り組んでいく考えでございます。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) まず、悪臭公害対策のお尋ねについてでございますが、畜産副産物の産地処理体制につきましては、本県で生産される食鳥残渣やフェザー等の畜産副産物は、一部については生産者がみずから処理しているものの、処理の効率性などの点から、大部分は県内及び県外の化製場で処理されている現状にございます。
 畜産副産物の処理とその利用につきましては、原料供給側と化製業者それぞれが民間の経済活動として行われているところでございまして、その事業活動が法令を遵守している以上、原料供給側に対して、産地処理を指導することは難しい事情にございます。したがいまして、農林水産部といたしましては、畜産副産物の適正処理と有効利用の観点からも、原料供給側にも、この問題についての認識を深めていただくよう要請するとともに、環境生活部等との十分な連携のもとに、適切に対応してまいりたいと考えております。
 次に、バイオエタノールの生産に関する技術開発の状況と今後の計画についてでございますが、生物工学研究センターでは、バイオエタノールを生産する基礎研究に着手するため昨年度から専門の研究員を配置するとともに、今年度はセンター内にプロジェクトチームを設置し、水稲の茎や葉などに含まれます植物繊維を、バイオエタノールの原料となるブドウ糖へ効率よく分解する酵素の開発などに取り組んでいるところでございます。
 今後は、平成21年度の完了をめどに、技術開発を進めていく計画となっております。
 また、農業研究センターにおきましては、バイオエタノールの原料となります水稲の多収品種の開発に取り組んでおりまして、10アール当たり一般の食用米の約1.5倍に当たる約800キログラムの収量が期待できる系統を育成できるめどが立ったところでございます。今後は、平成21年度からの供用開始を目標に、種子の増殖に取り組むことといたしております。
 次に、バイオエタノールの今後の取り組みについてでございますが、御承知のとおり、農林水産業が基幹産業である本県は、広大な農地や森林、豊かな海洋資源に恵まれておりまして、米のみならず、さまざまバイオマス資源が豊富に存在しております。また、研究開発の面では、県の試験研究機関を初め、岩手大学や東北農業研究センター、森林総合研究所、それから民間の海洋バイオテクノロジー研究所などの教育・研究機関が立地しており、バイオマスの研究開発を総合的に進める環境が整っていると考えております。このため、今年度、新たに関係部局で構成する検討チームを設置し、このような教育・研究機関や民間企業等の連携も含めて、本県が目指すバイオエタノールを初めとするバイオエネルギー利活用構想、これを策定することといたしておりまして、県といたしましては、この構想の策定を受けまして、バイオマス資源を活用した岩手らしい循環型社会の形成を目指して取り組んでまいりたいと考えております。
   〔教育長相澤徹君登壇〕
〇教育長(相澤徹君) 臨時的任用教員についてお答えを申し上げます。
 今後の児童生徒数の減少を踏まえた計画的な定数管理を行っていくためには、定年まで雇用する正規の教員の採用を抑制し、ある程度臨時的任用教員によって欠員を補充していくことは、やむを得ない面があると考えております。しかしながら、現状を極力改善していくことは必要と考えており、まず第1点は、将来必要とされる教員の推計をさらに精査することなどにより、臨時的任用教員の数を最小限に抑え、極力正規の教員に切りかえていくように検討いたします。第2点は、勤務条件についてでありますが、臨時的任用教員は、選考試験による教諭としての採用ではなく講師としての任用であることから、法令上の制約もあり、正規任用の教諭と比べ勤務条件に開きが生じるのはやむを得ない面がありますが、しかしながら、改善できるものは改善するように十分検討してまいりたいと考えております。
 次に、AEDについてでありますけれども、本年6月に調査を実施いたしました。県立学校では、高等学校78校中、設置予定も含めて40校が設置、特別支援学校については、平成18年度中に17校すべて設置済みであります。全体の設置率は約6割になります。市町村教育委員会が管理する幼稚園、小・中学校等については、689のうち、設置予定も含めて39校が設置しております。設置率は約6%にとどまっております。
 学校は、体育や部活動等を日常的に行う場であり、AED設置の必要性は高いものと認識しております。高等学校については、今年度、13校設置いたしますが、順次設置に向けて取り組んでまいります。幼稚園、小・中学校等については、市町村教育委員会に対し、これまで以上にAEDの有効性などの情報を提供し、理解を深めていただきながら計画的な設置を要請してまいります。
〇1番(木村幸弘君) それでは、再質問をさせていただきたいと思います。
 ただいまは、それぞれの施策の推進の課題について建設的あるいは前向きな御答弁をいただいたところであり、大変ありがたく思っているところでありますが、なお何点かにわたって、確認も含めて質問をしたいわけであります。
 第1点は、雇用対策に向けた取り組みの課題でありますが、先ほど御答弁をいただきましたとおり、今、県が取り組んでいる正規雇用に向けた取り組みのその概要というか、主な取り組みが、いわゆる企業に対する協力要請を中心とした、企業頼みと言わざるを得ない、そうした中での雇用対策になってきているということだと思うんです。こうした状況の中で、やはり企業としても、具体的に正規雇用に向けてとなると、まだまだ県内的には中央とは違って景気の回復感とかそうしたものを含めて決して十分な状況になっていないとすると、なかなか正規雇用への取り組みというのはまだまだ重い課題になっているのではないかと思うわけです。そういう点からいうと、例えば国に対する制度のあり方、改正なども含めて、当然、行政として積極的に物を言っていかなければならないわけであります。特に、パート労働改正法など労働法の改正などの中身についても、正規雇用化するための一つの方向性を見出そうとしているわけですが、しかし、一定の条件やさまざまなハードルがあって、そうした改正労働法の中身自体、実は実際にはなかなか正規の雇用に結びつかないのではないかという労働団体を含めた関係者からの声が強いわけであります。そういったところに対する国の制度改正をしっかりと地域の現状を伝えながら訴えていくことが必要だろうと思います。
 また、地域の雇用情勢からいえば、いわゆる規制緩和によって、必要以上に競争主義が地域の企業あるいは働く人たちの環境に著しい影響を与えていると見受けられる問題が多々あります。いわゆるハイタク労働者の最低賃金以下の労働実態の改善問題であるとか、あるいは産業全般にわたってサービス残業が恒常化する中で、過労死の問題へ発展していくとか、さらに、人件費、コスト削減のために民間委託が進められ、結果的には安い労働力を求めようとする動きを助長させてしまうという問題。さらに、公共事業の発注などにおいても、やはり今の厳しい競争下で、人件費に結局そういったコスト競争が影響を与えてしまうという問題、こういったところについても、やはり行政として、例えば入札制度に係るそうした人件費への影響をどう考えていくのかといった問題や、そういった点をしっかりと押さえながら、総体的な雇用対策というものをしっかりと政策として打ち出していく必要があるのではないかと思います。先ほど質問で申し上げたとおり、そういう意味での雇用対策の組織が本来は新年度においても継続されるべきではなかったのかと私は思うわけでありますけれども、今時点でこれを復活させようとか、そういった状況にはないわけですが、いずれにせよ、今後の雇用対策の問題の中で、しっかりとしたそういう体制を含めて、取り組む姿勢について改めて当局の御答弁をいただいてまいりたいと思います。
 2点目には、土砂災害にかかわる問題でありますけれども、特に当局から御説明をいただいた際に、いわゆる危険箇所に指定されることによりまして、特にこの土砂災害、急傾斜地等があるエリアというのは、御承知のように山合いであり、場合によっては、岩手の優良な観光資源となっている温泉地帯にも接する場合があるわけであります。そういったところに危険指定がされた場合、観光振興を図る上において、危険な場所に温泉があるという風評被害も含めて、そういった手だてをどうしていくのか。
 あるいは、特別警戒と警戒という分け方をしておりますけれども、その区分けの中で対策のとり方が当然違ってくるわけですけれども、しかし、警戒、特別それぞれにあっても、目の前にそういった指定をされた危険地域があるんだということになりますと、これはやはり利用される観光客等に対して、その事業者あるいは地域の皆さんも、大丈夫です、安心なんですということをある程度しっかりと言える、そういった対策というのがあってしかるべきだろうと思うわけですけれども、これからの観光産業振興を図っていく上においても、こうした土砂災害における、膨大な指定区域の数になっておりますけれども、それぞれの地域の事情、特徴やそういった地域性などにかんがみながら、こうした手だて、安全対策、あるいは場合によっては安全宣言を行うということで、利用者等の安全認識を誤解のないようにしていただくという取り組みが必要ではないかと思いますけれども、その点について再度お伺いしたいと思います。
 次に、バイオエタノール問題でありますけれども、質問の中で、実は奥州市の例を取り上げて、大変すばらしい計画だということで御紹介をいたしました。今、これから具体的に県としても本腰を入れて取り組みたいという御答弁をいただいたわけですけれども、その際に、奥州市あるいは葛巻町など、それぞれの自治体が特徴を持って取り組まれている環境対策といいますか、新エネルギー対策を含めた取り組みについては、これらの自治体との連携のあり方、県として組織を立ち上げ、検討する場合に、こうした先進的に取り組んでいる各県内の自治体との連携のとり方や、あるいは場合によってはそれぞれの自治体の取り組みに具体の支援等を行っていく、そういった考え方があるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
〇商工労働観光部長(阿部健君) ただいま、総合的な雇用対策についての御質問がございました。今後の雇用対策につきましては、一つには、やはりいかに雇用を創出するかという雇用創出の関係、これは県北、沿岸を中心にここをやっていくと。
 それから、ただいま御質問もございました質的な問題、正規雇用をどういうふうにふやしていくか。ここの部分につきましては、今、私のほうの答弁では正規雇用に向けていろいろな働きかけのお話を申し上げましたが、議員からお話がございましたとおり、最低賃金とか、まさに労働法をきちんと守る、これは非常に大事なことでございます。ここの部分につきましては岩手労働局が監督指導権を持っているわけでございますが、そこにまずしっかりとやっていただく。それから、県のほうといたしましても、今、例えば雇用・労働フォーラム、これは労使で開いております。それから、各地方振興局に地域雇用相談員、これが各企業を回っておりますが、こういったまさに労働法規をきちんと守るように、それをしっかりとやるように、そういった周知方、これは労働局と一緒になって進めていかなければならない、このように思っております。
 それから、先ほどの話に戻りますが、今後の雇用の方向といたしまして、雇用の創出、それから質的な問題、それからやはり、今、私ども県のほうでは、障害者の方と若年者の方々にどういうふうに就業していただくか、これが大きな課題でございますので、この辺を柱としながら、ことしの方向といたしましては、これらのことにつきまして、もちろん私どもでもいろいろ考えていかなければならないわけですが、経済界、労働界、そういったところと一緒になって、この辺のプラン、これからの方向を考えていく、こういった方向で今おるところでございます。
 それから、先ほど入札の関係のお話も出ましたが、これは県のほうで、いろいろと入札、それから民間委託をやっていることでございますが、いずれにしても、このシステム、それからその運用が主原因で賃金が守られないとか、そういったことはやはりあってはならないということだろうと思います。いずれにしても、県の民間委託あるいは発注関係、労働関連法規いろいろあるわけでございますが、これに十分配慮して進める、これを基本的な考え方にして進めてまいるべき、こういうふうに思っております。
〇県土整備部長(西畑雅司君) 土砂災害特別警戒区域と土砂災害警戒区域が温泉等の本県の観光施設の近くにもたくさんあるだろうという御指摘でございます。そういった箇所につきまして、土砂災害でも、今この指定を行っているのは二つの類型がございまして、一つはがけ崩れでございます。もう一つは土石流でございます。がけ崩れにつきましては、擁壁でありますとかのり面の処理といったような対策も考えられます。それから土石流については、砂防ダムとか流路工とか、そういった施設も考えられます。そういった施設整備を図っていくというのも、観光振興とか、そういった部分も考慮しながら、優先度の高いところから整備してまいりたいと思っております。
 それから、自然災害でございますので、万が一発生という場合が考えられるわけでございますけれども、そういったときにも、緊急的にすぐ土砂を排除しましたり、あるいは片側だけでも通行を可能にするとか、それが無理だと、例えば迂回路をつくるとか、そういった形で住民の方あるいは観光客あるいは観光産業、そういった部分への影響ができるだけ小さくなるような対策も必要だと思っておりまして、そういったものにも努めてまいりたい、かように考えている次第でございます。
〇農林水産部長(高前田寿幸君) バイオエタノールの取り組みについてでございます。議員御指摘のとおり、県内ではさまざまな研究開発、そして自治体の先進的な取り組みが始まっておりますが、エタノールを混合したガソリンについて現状を見てみますと、現在のガソリン価格と同じ価格―同程度の価格で供給することを考えました場合には、原料米の価格を大体1キログラム当たり約20円に抑える必要があると言われてございます。これは、現在の主食用の米の価格の約10分の1に相当するということでございまして、この格差をどうやって埋めていくかということが大きな課題となっております。
 このため、まず私ども考えておりますのは、やはり超多収米の開発であるとか、直播栽培の導入などによりまして、米の生産コストを引き下げることでございますとか、発酵残渣等についても飼料等に有効に活用していくといったような技術的課題がまずございまして、こういったような検討がまず必要だということ。そして、政策上の課題としては、今申し上げました価格差を埋めていくために、例えば産地づくり交付金の活用といったことであるとか、それから、耕作放棄地、転作田の有効活用を具体的にどう進めていくかといったような政策的な課題もございます。
 こういったようなことについて、国内の事例も参考とし、そして、先ほど御指摘にございました県内の先進的な取り組みを実施している自治体とも連携を図りながら十分に検討していきたいと考えておりまして、この結果を先ほど御説明をさせていただきました本年度策定予定のバイオエネルギー利活用構想に反映させていきたい。この構想を策定して、岩手らしいバイオエネルギーの地産地消といったことを実現させるべく積極的に取り組んでいきたいと考えております。
〇1番(木村幸弘君) 再質問させていただきますが、先ほどのAEDにおける答弁の中で、普及率、特に学校の普及率の関係で御答弁をいただいたわけですけれども、県の管理にある高校等について、あるいは特別支援校については非常に高い設置率で進んでいることが明らかになっているわけですけれども、問題は、市町村単位の取り組みとして進められなければならない小・中学校、幼稚園、ここにおけるAEDの設置率は、先ほどの御答弁にあったとおり大変低い。まずほとんど設置されていないに等しいほどの設置状況になっているということだと思うんです。そういう観点を考えますと、市町村がそれぞれの取り組みとして行わなければならない、学校設置者の責任ではありますけれども、しかし、このまま市町村任せという形の中で果たしていいのだろうかと。先ほど私は一般質問の中でも申し上げましたけれども、そうした自治体における、あるいは財政的な問題を含めてなかなかそれが進まないということであれば、やはり一定の県としての支援なり、そういった取り組みが具体的に必要になってくるのではないかということをぜひ御検討していただきたいと思うわけですけれども、その点について改めてお考えをお伺いしたいと思います。
〇議長(渡辺幸貫君) 木村幸弘君に申し上げます。議会運営委員会の申し合わせにより、2回目の再質問は1回目の再質問に対する答弁に係るものに限るものとなっておりますので、ただいまの質問については執行部に答弁を求めないことといたします。
 次に、高橋元君。
   〔7番高橋元君登壇〕(拍手)

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