平成19年6月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇41番(佐々木一榮君) 民主・県民会議の佐々木一榮でございます。
 改選後、初の定例県議会におきまして代表質問の機会をいただき、同僚議員各位に対しまして衷心より感謝申し上げます。
 会派を代表いたしまして、達増拓也新知事に対しまして、希望王国マニフェスト、所信表明、そして県政における継続する課題等について、お尋ねしてまいります。
 さて、4月の第16回統一地方選挙は、知事、県議会議員選挙を初め地方選挙が施行され、3期12年の増田知事の勇退を受け、新人5人による選挙戦が展開されましたが、45万票という圧倒的県民の支持を得て、全国最年少知事が誕生いたしました。改めまして、その栄誉を祝し心からお喜びを申し上げます。今後の達増知事の山積する県政課題解決に向けての強いリーダーシップを、県民の先頭に立って発揮されることを念願いたします。
 知事には、昨年8月の出馬表明後、衆議院議員現職としての立場もありながら、時間を割いて積極的に多くの県民との直接対話により、県内それぞれの地域課題を目の当たりにしたことと思います。また、知事就任後も、県政の重要課題である県北・沿岸振興策に向け、該当首長との意見交換を初めとし、今定例会前には、すべての首長との意見交換も一通り済ませられました。
 そこで、まずお伺いいたしますが、県内の現状をどのように認識されたでしょうか。また、改めまして、希望王国・格差をなくし、共に生きる岩手の実現に向けた基本姿勢と決意をお尋ねいたします。
 達増知事初の予算編成となった厳しい県財政を引き継いでの6月補正予算案303億円の評価と、補正予算規模をどう認識されているでしょうか、あわせてお尋ねいたします。
 ここ数年、格差社会の拡大が大きな問題となっています。そこで、小泉政権下での三位一体改革についての評価と今後の改革の方向性についてお尋ねしてまいります。
 本来の三位一体改革は、地方分権の推進と国と地方を通じた財政再建の双方を実現するものであり、全国知事会でもさまざまな議論が行われましたが、そうした理念を国と地方が共有してこそ、初めて改革に結びつくものと考えます。しかしながら、実際には、国庫補助負担金のスリム化や交付金化、国の負担率の引き下げなど、地方の自由度や裁量の拡大にはつながらず、本来の趣旨とはかけ離れたものと考えます。地方交付税についても、国の政策誘導的機能を縮小し、制度の簡素化・透明性を進め本来の機能を果たしていくことが必要と思いますが、実際には交付額の削減のみで、地方に痛みのみ押しつけられた感があります。
 まずもって、達増知事の三位一体改革に対する認識・評価をお伺いいたします。
 地方を国のもとに位置づけてきた機関委任事務の廃止を決めた第1期分権から7年経過し、いよいよ第2期地方分権改革の議論がスタートいたしました。国、都道府県、市町村の役割を徹底的に洗い直し、国から地方への十分な税財源の移譲が可能になるかどうかが大きな焦点となってまいります。
 政府は、3年後には新分権一括法案を国会に提出することとなっておりますが、問題は、中央省庁の厚い壁をいかに破るかにあるかと思いますが、国政経験を持つ知事は、この新分権議論にどのような役割を担っていかれようとお考えでしょうか。
 次に、マニフェストについての考え方についてお尋ねいたします。
 今回の知事選挙は、新人候補のみの選挙戦となりました。ここ数年、マニフェスト選挙の重要性が問われております。首長のみならず、議員も同様であります。政策実現のための施策、財源、到達数値目標等、国からの交付金の関係もあり、首長も具体詳細にマニフェストを掲げることは大変な時間と労力を要すると考えます。現職知事であれば、県庁そのものがシンクタンクでありますから、その組織力により、ある程度具体的マニフェストを県民に提示できると思いますが、新人の場合は、当然ながら現職のようにはいきません。
 達増知事も、今回の選挙戦で希望王国マニフェストを県民に示されましたが、マニフェストの重要性についてどのようにお考えでしょうか。
 あわせて、増田前知事は、二つの緊急課題と七つの重点施策を含む40の政策という形でまとめられましたが、どういう手法を用いて今後御自身のマニフェストに沿った具体的到達目標、財源、マンパワー等、いつごろをめどにその方向性を示されるのか、お尋ねいたします。
 次に、危機を希望に変える2大戦略についてお尋ねいたします。
 知事は現状を、県民所得が減少する一方で、医療・福祉・社会保障の負担の増大、子育て、教育の負担の増大と多くの県民が苦しみ、悩み、不安を抱えているということが岩手の危機であると認識され、今、岩手県民に必要なのは、危機に直面した上で、危機を乗り越える理念と政策を持つことにより、危機は希望に変わると述べられております。その上で、岩手が直面する危機は、既存の仕組みを前提とした政策論では解決できず、自治体の仕組みや県行政のあり方、さらには、県民意識をも根本から変えるような真の改革によってのみ危機を希望に変えることが可能とし、新地域主義戦略と岩手ソフトパワー戦略の2大戦略を提示されました。
 そこで、順次この戦略についてお尋ねしてまいります。
 まず、新地域主義戦略についてでありますが、県北、県央、県南、沿岸の4大広域圏を将来の自治体と位置づけるとしておりますが、形の上では昨年、さまざまな議論はありましたが、県南広域振興局の体制のみがスタートいたしました。そのほかの振興圏については、いつその体制がスタートするのかは明らかにされず、県行政の二重構造の批判も聞かれます。真に地域の課題を解決するためには、その地域ごとの市町村と一体となって、詳細な財源の移譲も含めた施策が必要になってまいります。
 そこでお尋ねいたしますが、県南広域振興局以外の広域振興局をいつをめどに体制を整備されるのでしょうか。また、その際の市町村の枠組みをどのようにお考えでしょうか、お尋ねいたします。
 一昨年の議論では、産業振興を大義としてなぜ県南地域ばかり先行するのか。これではますます県内格差が広がるのではないかという懸念の声も聞かれましたが、結果的には、行財政計画の一環と、県内でも市町村合併が進み行政基盤が整っているということからスタートした経過がございます。その際の議論の中で、それぞれの地域の考え方の温度差があって、それを受けて県北・沿岸振興本部が、急遽でありますが設置されたと認識しております。それでは、今までの県北、沿岸の振興局は何もしてこなかったのかという議論もありました。
 これらの経過については知事も御存じかと思いますが、今の体制は本来あるべき姿ではないと考えますが、どのようにお考えでしょうか、あわせてお尋ねいたします。
 知事は、4大広域振興圏中、県北と沿岸振興に特に力を入れるとしています。このことに私は異論はないのでありますが、県民所得の減少、県民人口の減少や高齢化、若者の定住対策等、知事の認識される岩手の危機を希望に変えていくには、県内に元気のいい地域をつくり、一時的には県内格差が生じても、その後には県内経済を牽引し県全体に広がりを持たせていくことが肝要と考えます。
 確かに北上川流域の県南広域は、自動車関連やIT関連産業などの誘致は県内で見ますと他地域よりも進んではおりますが、それでは他県との競争に勝っていけるかというと、インフラ整備や高度情報通信網等、企業の要求に十分対応できているとは言いかねます。
 そこでお尋ねいたしますが、岩手における県南広域の産業振興についての認識についてお尋ねいたします。あわせて、内閣府は月例経済報告において、我が国の景気は、生産の一部に弱さが見られるものの回復しているとし、景気回復が続いているとの判断を示しましたが、県内経済の状況をどのように認識されておられるでしょうか。
 また、岩手経済研究所の実施した4月中旬の県内企業景況調査によりますと、県内企業の景況は1月の調査より後退しており、景況は悪化しているとしております。こうした県内企業の景況調査結果をどのように受けとめていらっしゃるでしょうか、お尋ねいたします。
 次に、岩手ソフトパワー戦略に関連してお伺いいたします。
 第1番に挙げておられます平泉の世界遺産登録の実現と平泉の平和の精神を世界にアピールするとあります。今回の6月補正予算においても、景観緊急対策事業と未知の奥・平泉観光振興事業に、合わせて2億3、000万円余を計上されました。来年夏の世界遺産登録に向け、ことしの秋には、国際記念物遺跡会議―イコモスの現地調査が行われる予定となっております。
 先月行われました平泉の文化遺産の保存管理状況等現地指導会での鉄塔問題の指摘についてお尋ねいたします。この質問につきましては、昨年12月定例会でもお尋ねいたしておりますが、鉄塔問題の方針を出さずにイコモスの調査に臨むわけにはいかないとの指摘があることから、この指摘に対する対応策の検討状況についてお尋ねいたします。あわせて、指摘された個々の資産を一体的に、浄土思想を基調とする文化的景観というコンセプトで説明する必要性、景観条例によるバッファゾーン―緩衝地帯開発規制の実効性等についてはどのように対応していくお考えでしょうか、お伺いいたします。
 また、世界へのアピール戦略は具体的にどのようにお考えでしょうか、お尋ねいたします。
 関連いたしまして、平泉の世界遺産登録と連動して、岩手が誇る民俗芸能や文化・芸術を振興するため、仮称文化芸術振興基本条例を制定するとしていますが、条例の本旨と今後の制定スケジュールについてお尋ねいたします。
 次に、岩手のソフトパワー戦略強化の一環としてマニフェストに位置づけられた行財政改革についてお伺いいたします。
 まず初めに、いわて公共サービス憲章の策定により、県職員のあるべき姿を明らかにし、士気を高め、不祥事や失敗を防ぐこととしていますが、平成13年3月30日制定の職員の職務に係る倫理の保持に関する条例の大前提となる憲章となると考えますが、このことは、県職員のみならず市町村職員にも関係が出てまいると思いますが、知事は、今後どのように憲章制定に向け理解を得ていかれるお考えでしょうか、お尋ねいたします。
 次に、本定例会に提案されております特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例案でありますが、これは、知事の退職金の廃止条例であります。
 そこで、まず確認の意味でお伺いいたしますが、知事、副知事、出納長、特別職三役の任期に係る退職金の額は現在どうなっているでしょうか。達増知事はマニフェストに退職金廃止を掲げておられましたが、財政難をその一番の理由とされたのでしょうか。それとも、退職金そのもののあり方に何らかのお考えがあったのでしょうか。歴代知事は提案されてこなかったところでありますが、達増知事の提案の本旨をお伺いいたします。
 また、知事の任期についても2期8年としています。増田前知事も、多選の弊害を戒めることを一番の理由として、3期12年を多選の区切りとして勇退されました。総務省の首長と多選問題に関する調査研究会も、多選制限をめぐっては、憲法の法のもとの平等や職業選択の自由に抵触するとの批判等もあったが、知事や市区町村長など自治体の首長について、3選以上を法的に制限することは必ずしも憲法に違反しないとの報告書をまとめました。
 そこで、2期8年を任期とした知事の多選禁止の考え方と条例化への取り組みについてお尋ねいたします。
 次に、公社、県出資法人等の新たな見直しについてお伺いいたします
 地方自治体の財政再建制度が半世紀ぶりに抜本的に見直されようとしております。今般、地方財政健全化法案が成立し、財政の健全度を判定するために四つの指標を用いることとされましたが、これらの指標は、平成19年度決算から公表し、平成20年度からは、指標が一定の基準に達した団体は、財政健全化計画または財政再生計画を策定するなどの義務づけがされているところであります。
 新制度では、特別会計の赤字や第三セクターの借入金なども含めて、自治体財政を連結ベースでチェックすることになり、隠れ借金が浮き彫りとなり、今後の不採算事業の見直し、撤退、不振第三セクターの処理を迫られることになります。
 そこでお尋ねいたしますが、平成18年度末の企業会計、県出資法人の経営状況はいかに予測しておられるでしょうか。あわせて、長期貸付金、短期貸付金及び債務保証、損失補償の状況はどうなっているでしょうか。
 また、県立大学や地方独立行政法人への財政支援の状況についてもお尋ねしてまいります。
 知事は、今回のこの財政健全化法が、本県の財政運営にどのような影響があるとお考えでしょうか、お伺いいたします。
 また、県内35市町村も基金残高が10年前の半分という大変厳しい財政下にある中での影響度は、どう認識されておられるでしょうか。破綻する市町村の懸念はないでしょうか。あわせてこの点についてもお尋ねいたします。
 川崎市における第三セクターが、金融機関から借り入れする際に、自治体が金融機関と結んでいる損失補償契約を違法とする判決を横浜地裁は下しました。今回の判決については総務省の見解も明確ではありませんが、知事はどのような認識をお持ちでしょうか、お尋ねいたします。
 次に、関連いたしまして、新しい行財政構造改革プログラムについてお伺いいたします。
 このプログラム策定には、これまで質問させていただきました普通会計部門の改革のみならず、県立病院会計や工業用水道事業、あわせて県出資法人の経営改善方策等も十分に考慮しながらその策定に取り組んでいかなければならないと考えますが、現在の進捗状況と該当するすべての連結バランスシートの作成について、現在の進捗状況はどうなっているのかお尋ねいたします。
 続きまして、岩手県競馬組合についてお尋ねいたします。
 達増知事は、この問題について知事就任以前から、失敗は繰り返さぬよう政策決定過程をより明確にするとともに、失敗については徹底した検証を行うこととしております。県議会2月定例会では、県競馬組合に対する融資問題が長時間にわたり議論され、一度否決廃止、その後、修正案により可決存続の方針となりました。
 知事は、これまでの県議会での議論及び―現在は管理者でありますが、これら一連の経過についてどういう認識をお持ちでしょうか。
 県競馬組合の運営をチェックする第三者機関―県競馬組合事業運営監視委員会は、以前から県議会でも指摘されておりましたが、繰り上げ充用、馬事振興を目的とした4億400万円に上る美術品の購入や盛岡新競馬場の当初事業費176億円から410億円への増加など、現在の競馬組合の経営難を招いたずさんな体質を指摘いたしました。県議会でもこの問題については取り上げられたことがありますが、何せ当事者が現在は競馬組合に在籍しておらず、責任の所在がいまだに明確になっておりません。増田前知事も、この問題の検証には踏み込めずに、新しい競馬組合実行計画の策定を進めてきたという経過があります。
 そこでお尋ねいたしますが、達増知事は、これらの問題を含め、過去の検証と責任の所在の明確化についてどのように進めていかれるお考えでしょうか、お伺いいたします。
 単年度収支が赤字となった場合には廃止することを原則としている競馬事業については、開催競馬場が変わる時期をめどに、年間5期に分け、経営計画を厳しく見直しながら、経費の削減、売上増加に努め、関係者と協力して努力することで経営の再建に取り組んでいくこととしております。このことに異論はありませんが、直近の状況を見ましても、2月定例会でも指摘された売り上げの過大計上に対する疑義が、そのとおり推移することが懸念されます。果たしてコスト削減はこのまま追いついていくとお考えでしょうか。
 岩手競馬には、歴史も文化も、また公営ギャンブルとして地方財政に寄与してきたことも、また競馬関係者の雇用についても、これまでに何度も議論がされてまいりました。
 そこでお尋ねいたしますが、赤字となった場合の競馬事業の廃止について、管理者としての知事は、どのような廃止スキームをお考えでしょうか。3月臨時会の融資決定により金融機関への債務は解消されましたし、廃止した際の債務保証も競馬組合には一切ないと答弁をいただいております。
 私は以前より、黒字経営の水沢競馬場の1場体制とし、現在のみたけの運動公園用地を売却し、盛岡競馬場を陸上競技施設を備えた県営運動公園とし、2巡目の国体のメーン施設にしてはどうかということを再三提言してまいりました。いずれ単年度収支が安定的に黒字化するのであれば事業継続は可能となりますが、私は、今後のさまざまな想定の中で、万が一赤字となった場合の対策、スキームを検討すべきと常日ごろから考えております。ただ廃止しても、そこから何も生まれません。知事はいかがお考えでしょうか。仮に廃止という厳しい選択が迫られた場合、身軽になった水沢競馬場に利益を出してもらい県に還付する方策は考えられないでしょうか。
 次に、県民総参加の教育立県についてお尋ねいたします。
 昨年は、本県の多くの県立学校において必履修科目の未履修問題が発覚し、問題発生の原因についても、学校週5日制の導入により授業時間数が削減される中で、生徒の進路希望を達成するための授業時間数の確保が難しくなり、生徒の進学希望を実現させたいということから、受験指導を意識し過ぎて高校教育の本質を忘れた指導を行ったことに基本的誤りがあったと教育委員長は述べられております。そして、この問題を教訓として、教育の本質を失うことなく、長い目で見て、子供たちがどのような知識や教養を身につけて社会に出ていくべきなのか、また、将来日本を支えていく人材を育てるために必要な教育とは何なのかということを、改めて教育の原点に戻って考えていくことが重要と述べられています。
 まずもって、知事は、これらの問題も含めて県の教育行政のあり方、教育委員会制度についてどのようにお考えでしょうか。
 知事は、教育委員会との定期協議の場を設けるとともに、教職員が誇りを持って教育現場で活躍できるよう、教職員の公正な処遇や教育環境の適切な整備に関し、知事と教職員が随時対話できる場を設定するとしていますが、これは、知事の教育政策を教育行政の中に反映させていくという意図のものなのでしょうか。知事のマニフェストにおける教育政策の実現に向け、教育委員会とのかかわりを従来の体制から改革しようとするものなのでしょうか。
 あわせて、政府の教育再生会議は第2次報告を提出し、今年度中に学習指導要領を改訂し、必要に応じた土曜日の授業実施などで授業時間数10%増や小・中学校の徳育―道徳教育の新たな教科への格上げを含む充実を図ることなどを四つの対応と位置づけ政府に取り組みを促していますが、知事は、今回の第2次報告を本県の現状に照らし合わせどう評価されているでしょうか、お尋ねいたします。
 次に、県営医療における医師不足対策と県立病院改革についてお尋ねいたします。
 医師不足の問題は、本県のみならず、地方においては大きな喫緊の重要課題であります。県においては、保健福祉部と医療局の組織横断で、昨年、医師確保対策室を設け新たな組織としてスタートいたしましたが、国の診療報酬改定や医師臨床研修制度など、医療制度上の問題が大前提にあるほか、地域の偏在や医療の高度化による診療科の細分化による偏在など、解決策を見出せずにいるのが現実であろうと思います。しかしながら、安心して暮らせる県民医療を守っていくことは、当然の責務であります。
 日本政策投資銀行の調査によりますと、自治体病院に勤める医師の給与は、都道府県によって2倍もの開きがあることがわかりました。本県は北海道に次ぐ全国2番目の平均給与でありますが、トップの北海道の2、301万円が最高で、最低は奈良県の1、132万円でありました。しかし、100床当たりの医師数を見ますと、北海道の6.6人に対し奈良県は12.1人であり、全国的に見ますと、本県や東北各県が高水準なのに対し、東京、神奈川、大阪といった大都市や西日本は低いという傾向が浮き彫りとなり、給与の高い上位10道県のベッド100床当たりの医師数が平均9.4人、一方で、給与の低い下位10都府県は12.3人と、給与の高い地域のほうが医師が少ない傾向があると分析しております。これは、医師を養成する医科大学の偏在も大きな要因と考えられます。
 群馬県の医師給与は本県の66%でありながら100床当たりの医師数は本県の約2倍であります。このような全国の状況を見ますと、決して高給だからといって医師が確保できるとは限らないことが明白であります。恐らく医師自身も、このような状況であることは認識がないものと思います。
 そこで、医師確保戦略として、具体的に、岩手の住環境を初め、本県の特質や優位性をこれまで以上に積極的に働きかける必要があると思いますが、達増知事も、医師不足解消のための人材確保を進めることをマニフェストに掲げておられます。医師確保対策として具体的にどのような分野に力を入れて取り組まれていかれるお考えか、お尋ねいたします。
 関連いたしまして、県立病院改革についてお伺いいたします。
 平成18年度の県立病院等事業会計の決算は、一般会計からの繰入金約136億8、900万円を含む総収益は、医師不足により診療体制が満足にとれず、入院患者数、外来患者数とも減少し、前年度比3.5%減の約934億9、100万円となり、2年ぶりに約9億7、100万円の単年度赤字となり、累積欠損金は過去最高の約127億5、700万円となりました。また、職員の退職金の一部を賄うため退職手当債を初めて15億円発行しており、今後ますます厳しい運営を強いられてまいります。この2年間で、花泉、紫波、大迫、伊保内の4病院が診療所化されています。
 そこでお尋ねいたしますが、県立病院の現状をどう認識され、今後の進むべき体制をどのようにお考えでしょうか。この際、医療局を再編、分社化し、保健医療圏ごとに病院長に権限を委譲し、経営に責任を持たせ、地域の病院施設との連携強化や医師会との綿密な連帯による地域医療を支える体制づくりが必要と考えますが、いかがでしょうか、お伺いいたします。
 結びに、達増知事の希望王国マニフェストの実現を期待いたし、また、微力ではありますが、私自身も県勢発展の一翼を担えるよう努力することをお誓い申し上げ、以上で私の代表質問を終わります。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木一榮議員の御質問にお答えいたします。
 まず、県内の現状と県政運営の基本姿勢についてであります。
 知事選とその準備の段階で多くの県民の皆様と対話をさせていただきましたが、本日、傍聴席にもそのとき対話をさせていただいた皆様がおいでになっており、改めて責任の重さを感じております。
 県民の皆様、そして市町村長の皆様との意見交換の中において、雇用や医師不足などの問題に加え、社会資本整備や企業集積における格差などについて御意見を伺っており、改めて岩手が危機に直面していることを認識したところであります。こうした危機を希望に変え、先人が築き上げてきた岩手の心を失わず、グローバル化の時代に対応した改革を進めるため、本議会冒頭の演述で申し上げました新地域主義戦略と岩手ソフトパワー戦略により、確かな地域経済基盤と住民生活を守るセーフティネットの構築を図り、県民一人一人が確かな希望を抱くことができるふるさと岩手の実現に向けて、全力で取り組んでまいる考えであります。
 次に、6月補正予算の評価についてでありますが、今回の6月補正予算では、厳しい財政環境の中にあっても、プライマリーバランスの均衡を維持しながら、必要性、緊急性の高い事業を積極的に計上したところであり、私のマニフェストをベースとした二つの戦略と6本の政策の柱に沿って、今後の県政運営の第一歩となる予算が編成できたものと考えております。
 また、300億円という予算規模は、危機を希望に変えるために必要な予算を県政の各分野において盛り込んだ結果の数字であり、そういうメッセージとして受けとめてもらえればありがたいと思っております。
 次に、三位一体改革についてでありますが、私は、本来の三位一体改革とは、国と地方の役割分担を明確化し、国に集中する権限及び税財源を住民に身近な地方に移して、地方が自立的な行財政運営を行えるような仕組みに変えていくことであると認識しております。しかし、これまでの改革は、国庫補助負担金の単なる負担率の引き下げといった手法で行われ、地方の自由度や裁量の拡大につながるものが少なかったほか、地方交付税については、制度改革の方向性が不明確なままで大幅な削減が行われるなど、国の財政再建に軸足が置かれており、地方分権推進の観点からは極めて不十分な内容であったと受けとめているところであります。
 今後、地方が主役の地域主権型の社会を実現していく観点から、地方分権をさらに推し進めていく必要があり、そのためには、税財政制度の抜本的な改革によって一気に税財源を地方に移すことが望ましいと考えております。しかしながら、この実現に向けては、強大な権限を握っている霞が関の厚い壁を突き崩していくことが必要であり、そのためにも、地方分権が進めば、福祉や教育などの分野における住民生活がこのように変わるという具体の効果を国民に示すことにより、改革についての理解や支持をいただくことが重要であります。本年4月には地方分権改革推進法が施行され、今後3年以内に地方分権改革推進計画が作成されることとなっておりますので、私もさまざまな機会を活用しながら、県民や国民の皆様に情報発信を行うなど、真の地方分権の実現に向けて全力を挙げて取り組んでまいります。
 次に、マニフェストについてでありますが、マニフェストを示すことにより、地域の将来ビジョンやその実現に向けた政策を有権者と約束することは、その政治責任を明確化するとともに、有権者の政治への関心や信頼を高めるなど、民主主義の質を高める重要な役割を果たすものであると考えております。このような認識のもと、現在の岩手県総合計画の後期実施計画に当たる新しい地域経営の計画を今年度中に策定し、マニフェストに掲げた戦略や政策の具体的な取り組みなどを盛り込んでいきたいと考えております。その際には、各政策分野のあるべき姿を適切にあらわす目標を設定していくほか、限られた行財政資源の適正な配分を目指す行財政改革に関するプログラムと一体的に策定することで、実効性の高いものにするよう努めてまいりたいと考えております。
 次に、県南広域振興局以外の振興局の広域振興局体制への移行時期についてでありますが、私は、マニフェストに掲げた新地域主義戦略に記したとおり、産業の類似性を初めとした各地域の特性を最大限に発揮する上で最適な仕組みと考えられる4広域振興圏の早期の確立が必要であると認識しております。この考えに基づき、各地域における合併や県事務の権限移譲などによる基礎自治体である市町村の体質強化の状況、各地域の産業振興の状況を踏まえ、さらに、市町村長や県民の御意見なども伺いながら総合的に検討し、平成22年度を目途に、各広域振興局体制についての一定の姿を示してまいりたいと考えております。
 また、その際の広域振興圏の区域については、さきの市町村長との意見交換会においても広域化に伴う利便性低下を懸念する声などさまざまな意見が寄せられたところですが、世界と直結し、競争、共存する中で地域の自立性や独自性を高めていくためには、基本的に現在の4広域振興圏の枠組みが最適であると考えております。
 なお、圏域の境界に位置する市町村については、大きな支障が生じないよう、それぞれの地域の特性や実情に即して、地域のIT基盤の整備や行政サービスの電子化を進めることなどにより利便性の向上を図るほか、先行する県南広域振興局の体制の検証、評価を踏まえ、対応を検討してまいります。
 次に、県南広域における産業振興の認識についてでありますが、本圏域は、県内では最も産業集積が進んだ地域であります。しかしながら、全国や東北における有数の工業集積地に比べ、工業集積の現状はなお低位にあるほか、ものづくり基盤技術についても一層の高度化を図ることが必要であると認識しております。このため、自動車や半導体産業、半導体関連産業を中心としてさらなる誘致を促進するとともに、地場中小企業のものづくり総合力の向上や人材育成に向けた取り組みを強化するほか、産業振興の観点から特に重要な路線の道路整備を推進するなど、本県産業振興の牽引役としての県南広域圏の役割がさらに高まるよう積極的に取り組んでまいります。
 次に、本県経済の状況についてでありますが、生産活動は、自動車など一部業種の好調さに支えられており、全体としては緩やかな持ち直しの動きが続いていると認識しておりますが、個人消費などは弱い動きが見られることから、今後、格差拡大などの傾向には十分注意していく必要があると考えております。また、岩手経済研究所の県内企業景況調査によると、企業の業況判断や先行きの見通しは一般機械などを除いて低い水準にあり、これは、個人消費の低迷などの経済状況が背景にあるものと受けとめております。今後においては、昨年11月に策定した岩手県産業成長戦略の工程表に掲げる取り組みなどを着実に推進し、産業振興を図ってまいりたいと考えております。
 次に、平泉の景観に係る鉄塔問題についてでありますが、平泉は、中尊寺などの歴史的な拠点施設のみならず、周囲の山々や河川などの自然的要素を取り込んで良好な景観を形成しているところに世界遺産としての価値を見出しているものです。しかしながら、現在は、このような景観の中に、地域の方々が生活する上で欠くことのできないもろもろの人工物も存在している状況になっておりますので、私は、景観を保全していくためには、多くの方々に平泉の価値を理解してもらい、地域の方々の生活と世界遺産の価値との調和を図っていくことが重要だと考えております。こういう観点で、鉄塔問題についても事業者とあらゆる角度から検討を加えているところでございます。
 また、景観条例の実効性を確保するためには、地域の方々の保存管理に対する意識を醸成していくことが何よりも重要であることから、シンポジウムなどで景観保全を初めとする保存管理の重要性を広くお伝えし、行政と地域の方々が一体となって景観を保全していくよう努めてまいります。
 さきの専門家による現地指導会では、個々の資産と浄土思想に係るコンセプトの関連性をより明確にするように助言をいただいたところですが、例えば、無量光院と金鶏山は一体的に浄土思想の西方極楽浄土を具現化したものであるなど、個々の資産と浄土思想との関連性をよりわかりやすく説明するための補足資料を、文化庁初め関係市町村と連携しながら鋭意作成しているところであります。
 次に、世界へのアピール戦略についてでありますが、県としては、アジアを中心とした日本への関心の高まりを踏まえ、まずは、香港、シンガポールなどで開催される旅行博覧会で平泉の世界遺産登録を十分にPRしたいと考えています。また、台湾や韓国の旅行会社などを本県に招き、平泉に直接触れていただくことにより、商品造成や情報発信も促すこととしております。さらには、県の海外向けホームページを活用し、平泉の平和の精神を軸として、その価値を世界に発信していきたいと考えております。こういうことを踏まえて、さらに今後、欧米も含めて、岩手ソフトパワー戦略全体の中で、平泉の価値を世界に十分アピールしていくよう検討してまいります。
 次に、文化芸術振興基本条例(仮称)についてでありますが、自然や歴史、風土にはぐくまれ、先人たちが培ってきた本県の豊かな文化芸術は、地域に誇りと希望を与えるものであります。私は、この岩手の文化芸術のすばらしさを再確認し、国内はもとより、世界に向け積極的に発信することにより、本県の地域的価値を高めていくことが地域社会の活性化にもつながるものと考えます。この条例は、本県の文化芸術振興の基本理念や基本方策について明文化し、その振興を宣言しようとするものであり、これに基づき、総合的な施策を推進してまいりたいと考えています。今後、県民の皆様や文化芸術団体などの意見を広く伺いながら、来年2月定例会への提案を目途に検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、いわて公共サービス憲章についてでありますが、私は、本県が分権型社会に対応した地域経営を推進していくためには、公正、自立そして共生という基本理念のもとに、質の高い行政サービスを提供していく仕組みをつくり上げていくことが必要と考えており、県政の第一線で働く県職員のあるべき姿や行動基準などを県民の皆様に明らかにする公共サービス憲章の策定をマニフェストに掲げたものであります。
 この憲章については、今後、憲章に掲げる具体的項目の検討を初め、いわゆる倫理条例等の現行諸規程との調整など、県内部での議論を重ねながら、しかるべき時期に市町村初め県民の皆様の意見も伺ってまいりたいと考えております。
 次に、知事等の退職手当についてでありますが、本県におけるいわゆる三役の任期満了時の退職手当の額は、知事3、868万8、000円、副知事2、073万6、000円、出納長1、166万4、000円となっております。
 また、私の退職手当を支給しないこととする条例案を提案した本旨につきましては、衆議院議員時代、議員年金廃止の活動に参画しておりましたが、同じように選挙で選ばれる議員には退職手当がないのに、知事には高額の退職手当が支給されることに疑問を感じておりました。本県の財政が大変厳しい今、少しでも県民の暮らしと仕事の向上に役立つ税金の使い方をすべきであると考え、今般の条例を提案させていただいたところであります。
 次に、多選禁止の考え方と条例化への取り組みについてでありますが、各地の自治体で談合事件に絡み首長が逮捕される事件が続発し、首長の多選に対する批判が高まっております。私も多選の弊害は認識しており、そのことから、私自身、知事の任期は原則2期8年とします、とマニフェストに示したところであります。
 一方、法制度により多選に制限を加える場合は、どこを多選のラインとすべきか、例えば2期がよいのか3期がよいのかという期間の設定の問題や、法律で制限すべきか、あるいは条例にゆだねるべきかなどさまざまな議論があり、もう少し研究をさせていただきたいと思います。
 次に、企業会計、出資法人等の経営状況でございますが、まず、企業会計の平成18年度決算におきましては、電気と工業用水は単年度収支が黒字でありますが、県立病院は9億7、000万円の単年度赤字で、127億6、000万円の累積欠損となるなど、厳しい経営状況となっております。また、出資法人につきましては、県の指導監督対象となっている法人のうち、先月に解散した林業公社を除く39法人について見ると、単年度赤字の法人が11法人で、その赤字の合計が8億1、000万円、繰越欠損を計上した法人が5法人で、その繰越欠損の合計が13億1、000万円となっており、いずれも前年度の額より縮小しております。
 出資法人に対する財政支援につきましては、長期貸付金は5法人に対して66億8、000万円、短期貸付金は5法人に対し52億3、000万円、損失補償は5法人に対し限度額97億4、000万円、債務保証は該当なしであります。
 次に、地方独立行政法人については、県立大学及び工業技術センターに対し、平成18年度は運営費交付金を合計54億円交付しているところであります。
 本県の場合、一般会計における多額の収支不足や高水準で推移する公債費への対応が今後の財政運営の課題の中心となるものと考えておりますが、地方公共団体の財政の健全化に関する法律が制定されたことを踏まえ、県立病院等の企業会計の経営の健全化や出資法人等に対する適切な指導監督、地方独立行政法人の運営の効率化などについても特に力点を置いて対応し、財政の健全化を図ってまいりたいと考えております。
 次に、県内市町村への影響度についてでありますが、この法律により、上下水道や病院などの企業会計や出資法人を含めた市町村トータルでの財政運営上の課題が将来負担を含めてこれまで以上に明らかになることから、各市町村では、行財政改革の一層の推進と情報公開など行政運営のさらなる透明性の向上が求められるものと考えております。
 また、破綻する市町村はないかとの御懸念についてでありますが、指標の算定方法や基準は、今後、政令で具体的に示される予定であり、しかも指標の公表が適用されるのは平成19年度決算であるということから、破綻する市町村があるかどうかについては現時点では申し上げかねます。県といたしましては、引き続き、各市町村が策定した集中改革プランのフォローアップを通じて適切な助言を行ってまいります。
 次に、川崎市の第三セクターの借入金に係る損失補償契約の判決についてでありますが、そもそも第三セクターなどの資金調達は事業自体の収益性に着目することが基本であり、将来の新たな支出負担リスクを回避する観点からも、第三セクター等の借入金についての損失補償は最小限にとどめるべきものと考えております。公共性や公益性が極めて高い事業について、その円滑な実施のために損失補償を行うことが必要となる場合もあり得るものと考えますが、その際には、損失補償の必要性や返済の確実性などを議会や住民の皆様に対して十分に説明し、御理解いただくことが必要であると考えております。
 次に、行財政改革に関するプログラムについてでありますが、今年度内に策定することとしている新しい地域経営の計画の中で、行財政改革に関する方策も一体的に取りまとめることとしており、現在、新地域主義戦略を推進するための県と市町村の役割分担の再構築や民間力、地域力が最大限に発揮される仕組みづくり、さらには、岩手のソフトパワーの発揮を下支えするため、持続可能な行財政基盤の構築を目指し、普通会計部門に限らず、外郭団体の改革なども含め、多面的な検討を行っているところであります。
 また、バランスシートの連結対象についてでありますが、昨年11月の公表におきましては、県が法人運営に主導的な立場を確保していると認められる出資比率25%以上50%未満の13法人を新たに連結対象に加えたところであります。今後においては、現在、国において検討が進められている地方公会計改革の内容をも注視しつつ、その内容の充実に努めてまいりたいと考えております。
 次に、岩手県競馬組合についてでありますが、まず、県議会での議論などの経過に対する認識につきましては、さきの2月定例会では、存続か廃止かという形で県民世論が二分されるような議論がなされる中で競馬組合への融資関連議案が審議されることとなってしまったと認識しておりますが、私は、必ず黒字にできるのであれば存続を認めるという県民が多かったものと考えており、売り上げをより厳しく見積もった計画が提示されていれば、存続か廃止かという二者択一的な議論ではなく、県民共通の課題として、競馬事業を黒字化し、存続させるためにはどうすればよいのかという議論ができたのではないかと感じております。県議会を初め、構成団体議会での議論の結果、新たな赤字は許されないという条件のもとで競馬事業が存続することとなったことを、私はもとより、岩手競馬にかかわるすべての関係者が重く受けとめながら、年度途中における適切な対応をとることを含め、信念を持って正しい道筋で取り組むことにより、岩手競馬の存続という使命を果たしていかなければならないと考えております。
 次に、過去の検証と責任の所在の明確化についてでありますが、本年4月に、県を初めとする構成団体が、弁護士や公認会計士等の専門家で構成する岩手県競馬組合事業運営監視委員会を設置し、岩手競馬の経営悪化と累積債務拡大に至る経過やその時々の競馬組合の対応について、地方自治法等の法令に照らして、違法、不当な部分があったかどうかを含め、問題の具体的な原因等を法律、経営等の専門的見地から検証していただいているところであります。この検証の結果、違法、不当な部分があるとの指摘があった場合には、その内容をさらに精査し、所要の対応をとる必要がありますし、いずれにいたしましても、この検証等を通じて経営悪化に至った経過や原因をしっかりと究明するとともに、それを今後の競馬組合の適正な事業運営に生かしてまいりたいと考えております。
 次に、コスト削減の実現性についてでありますが、平成19年度の発売実績が計画を下回っていることから、競馬組合は、新計画に基づいて、収支均衡を図るため競馬関係者や取引先とのコスト調整を進めてまいりましたが、先般6月23日に開催した競馬組合運営協議会において収支均衡のためのコスト調整が整ったところでございます。このような年度途中でのコスト調整はこれまでできなかったことであり、これは、競馬事業の継続の条件が収支均衡であり、そのためには、発売額に見合った事業運営が必要であるとの理解が浸透したことを示すものと認識しております。
 今後におきましては、今回のコスト調整結果を踏まえ、現実的な売り上げ見通しに対応したコスト管理を徹底するとともに、売り上げ拡大にも全力を尽くしてまいります。また、仮にさらなるコスト調整が必要となる場合であっても、状況を十分に説明し、協議を深めていくことによって、収支均衡を図るためのコスト調整を実現してまいりたいと考えております。
 次に、廃止となった場合のスキームについてでありますが、競馬事業を廃止する場合には、関係者の生活支援策はもとより、競馬組合そのもののあり方や他の用途への転用も含めた資産処分の方法などについて十分に検討し、具体的なスキームを整理する必要があると考えております。しかしながら、廃止の際には、330億円の融資の返済が困難になることに加えて、廃止に伴う追加費用も発生し、構成団体に極めて重い負担が発生すること、また、黒字のもとでの事業継続が県民から与えられた命題であることを考えれば、そのような結果を招かないよう、岩手競馬の存続のために全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 次に、水沢1場体制についてでありますが、2巡目国体は既存施設の活用を基本にしたいと考えていることや、盛岡地域の都市計画との関係など、盛岡競馬場の運動公園化については慎重な検討が必要と考えておりますが、将来の競馬発売額の縮小の可能性への一つの対応案として、水沢1場体制化は傾聴すべきアイデアだと認識しております。ただ、1場体制とすることは、競馬組合の収支に大きな影響が及ぶだけではなく、組合のあり方や雇用問題など岩手競馬の根幹にかかわるさまざまな課題をはらむ問題であります。岩手競馬は、今年度から、新たな赤字は発生させないという厳しい条件のもとで事業の継続に取り組んでいるところでありまして、まずは2場体制の中で経営の安定化を実現した上で、次の段階として、1場体制を含め、どのような体制が岩手競馬の将来にとってより望ましい選択なのかという抜本的な対策についても検討を行うべきであると考えております。
 次に、教育行政のあり方等についてでありますが、私は、昨年度の本県の未履修問題については、学校側が受験指導を意識し過ぎて、高校教育の本質を忘れた指導を行ってしまったこと、また、教育委員会においても適切な指導ができなかったことに大きな問題があったと考えております。このような目先の課題にとらわれた学校教育のあり方については見直されていかなければならないと考えております。すなわち、教科に関する基礎・基本をしっかりと定着させ、豊かな人間性を培い、社会人として十分に力を発揮していくことができるような総合的な人間力を身につけさせることが本県の学校教育の使命であると考えており、教育委員会においては、このような観点を踏まえて、各学校現場における教育活動を充実させていく責任があるものと考えます。
 次に、教育委員会との定期協議についてでありますが、私が教育委員との定期協議などに取り組んでいく理由は三つあります。その第1は、21世紀において教育を受ける権利は最も重要な権利であり、県民総参加で保障すべきものであることから、県政全体の責任者である知事は、教育委員との十分な協議を行う役割を担っております。第2は、教育の危機については、家庭の教育力の低下や地域全体で子供を育てるといった意識の希薄化など、さまざまな外部の変化が大きな要因であると考えられます。このような観点から、知事と教育委員は連携を深める必要があります。第3は、今日、教育委員会制度そのもののあり方が議論されている中において、知事と教育委員は同じテーブルに着いて話し合う必要があります。もとより、教育委員会の主体性を尊重することを前提に、以上のような問題意識のもとに教育委員との定期的な協議を進めてまいりたいと考えております。
 次に、教育再生会議の第2次報告についてでありますが、今回の報告は、地域や学校現場の実態を踏まえた議論に乏しく、従来型の画一的で上意下達的な枠組みにとどまっているように感じております。例えば、学力向上のための第1番目の提言として、ゆとり教育を見直し、授業時数の10%増を提案しておりますが、これも一つの方策足り得るかもしれませんが、今日の学力問題には家庭の教育力の低下など、さまざまな要因が絡んでいるのが実態であり、学校と家庭、地域との連携のありようなどを総合的に見直していくことが必要であります。このような観点から、私は、県民総参加の教育立県を基本理念として、特にも、いわて型コミュニティ・スクールという形で、学校と家庭、地域とが連携した取り組みを進め、自立した岩手を担う人材育成のための教育に取り組んでいくことが重要であると考えております。
 次に、医師確保対策についてでありますが、地域医療の確保は県政の最重要課題の一つであることから、医師確保対策アクションプランに基づき、医師養成のための奨学金制度、高校生を対象とした進学セミナーの開催、臨床研修体制の充実などにより医学部進学者数の増や卒業生の地元定着に取り組んできたほか、医師確保対策室による即戦力医師の確保などの取り組みを進めてきたところであります。今後もこうした取り組みをさらに強力に進めるとともに、医学生や医師の専門性や総合力の確保・向上など、キャリア形成にこたえるよう、本県の医師確保対策の競争力を高めることが必要であり、医学生を育てる大学の教育機能や拠点病院のがん・救急などの医療機能の充実など、医師にとって魅力ある医療環境の整備に努め、本県の地域医療を支える医師の確保、定着に力を入れて取り組んでいく決意であります。
 次に、県立病院の現状についてでありますが、医師の地域別・診療科別の偏在が顕著となり、あるいは国の医療費抑制政策が続くことが予測される中で、従来にも増して厳しい経営環境に置かれていくものと認識しております。
 このような中で、現在、医師不足と経営収支については、医療局全体のスケールメリットを生かしながら対応しているところでありますが、今後、医療計画などの策定を通じて県立病院の役割や機能を明確にするとともに、医師確保が充実し、安定した医療提供体制が確立されていくに伴い、御提言の趣旨も踏まえ、その経営形態についてさらに検討していかなければならないものと考えております。
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、千葉伝君。
   〔45番千葉伝君登壇〕

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