平成16年2月定例会 第6回岩手県議会定例会 会議録

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〇11番(工藤勝子君) 自由民主クラブの工藤勝子でございます。
 質問に先立ちまして、御逝去されました故及川幸郎先生には御指導をいただきましたことがありまして、心から感謝を申し上げ、謹んで御冥福をお祈り申し上げます。
 このたび、本定例会におきまして、先輩・同僚議員の御配慮と御指導をいただき、登壇の機会をいただきましたことに対し感謝を申し上げます。
 通告に従いまして順次お尋ねしてまいりますので、また、初めての一般質問でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まず初めに、行財政構造改革プログラムについて増田知事にお伺いいたします。
 「財源不足 800億円超」、「29自治体『破たんの可能性』」、県財政の借金残高も1兆3、000億円超、国と地方をあわせて719兆円、これは、地元紙元旦号の1面トップの見出しでございます。輝かしい新年を迎え、明るい希望に満ちた記事を想定していた者にとりましては、余りにも衝撃の大きい内容でございました。思えば、さきの知事選挙で増田知事は約67万票を獲得され、新しい目で県政運営を担当し、県民の負託にこたえたいと、力強く自信に満ちた声で県民に喜びを語ったのは昨年4月のことであります。その後、10月には行財政構造改革プログラムを策定するとともに、今後4年間で重点的に取り組む誇れるいわて40の政策を打ち出し、12月には岩手県出資等法人改革推進プラン、明けて1月には県立高校新整備計画後期プラン、さらに2月には県立病院改革プランを矢継ぎ早に打ち出すとともに、この間においても予算編成や人事システムの大幅な改革方針を打ち出されたのであります。一連の改革はそれぞれ必要に迫られたものと理解しておりますが、それに伴ういわゆる県民の痛みにつきましては、いささか説明不足の感を禁じ得ません。日ごろから説明責任と情報公開においては全国的にも定評のある増田知事ですから、まず、一連の改革に伴う県民の痛みについて、知事として具体的にどのように認識されているのかお尋ねいたします。
 また知事は、仕事始め式において幹部職員に対し、地方交付税の減額などで財政は著しく圧縮されるが、県民のサービスを大きく変えることはできない、再建の道筋を立てることに全力を挙げる旨訓示されたと報道されております。経営者として説明責任をきちっと果たし、住民との信頼関係をしっかり築きながら、住民が本当に求めているもの、望んでいるものを十分見きわめながら対応していくことが重要であると述べられたとしております。
 そこでお伺いいたしますが、知事は、今回の行財政構造改革プログラムの成否を決めるものは一体何であるとお考えなのでしょうか。財政再建の道筋を含め、その財源的な根拠を明確にお示しいただきたいと思います。
 また、県では、昨年11月、知事、関係部局長出席のもとに、市町村長に対し県の行財政構造改革プログラムについて説明会を開催するとともに、その後においても、県市長会、県町村会役員に対しても重ねて説明会を開催されたとお伺いしておりますが、そこでは主にどのような要望や意見が出されたのでしょうか。それに対してどのように回答されたのでしょうか。出席者には十分な理解が得られたとお考えでしょうか。行財政構造改革プログラムの実効性を担保とする観点から、総合政策室長の御所見をお伺いいたします。
 また、誇れるいわて40の政策についても総合政策室長にお伺いいたします。厳しい財政状況下にあって意欲的に取り組む姿は大いに評価いたしますが、これは知事のマニフェストにも関係してくると思われますので、政策の策定プロセス及び政策実現に必要な財源見通しについてお示し願います。
 次に、農業問題について何点かお尋ねいたします。
 まず、知事に対して、本県の農業振興についてお伺いいたします。今日、農業は、輸入農林水産物による価格の低迷等によって生産額は年々減少し、所得の低下が生産意欲の減退を招くとともに、後継者不足、高齢化の進行などにより、生産活動の停滞や地域活力の低下が懸念されております。一方において、農業を初めとする1次産業は、根源的な産業として、私たちの暮らしと命を支える重要な役割を果たしております。知事は、10年ぶりとも言われる異常気象に見舞われた昨年、県内各地に直接足を運ばれ農家の方々を激励されるとともに、農業団体の代表者の方との対談におきましても、この災害をばねに、来年、そして将来に向けて、農家の皆さんが意欲を持って何倍にも力を発揮できる農業を一緒に展開していきたいと力強く述べられております。この言葉から、農業者は勇気と希望を与えられたものと思っております。
 21世紀の初頭を迎えた今日、我が国の食を取り巻く環境は、食料が絶えず国境を越えて行き交うまさに国際化の時代を迎えており、スーパーなどの小売店では、外国の生鮮野菜や果実、そして畜産物などがあふれ、国産品と並んで販売されるなど、国内産と外国産の市場競争も激化している状況にあります。
 そこでお伺いいたしますが、昨年の県内水稲が冷夏の影響で戦後3番目の不作に見舞われた事実と、本県の農業・農村が担っている食料供給基地としての役割、さらには、水源涵養、環境保全、文化の継承といった多面的機能の発揮など、農業が持つ根源的な意義と本県の農業環境の変化や輸入農産物に代表される農業の国際化の進展状況を踏まえ、知事は今後、本県農業をどのように位置づけ、振興されるお考えなのか明確にお示し願います。
 次に、協同農業普及事業についてお伺いいたします。
 御承知のとおり、農業改良普及事業は、昭和23年、国と県との協同事業として発足以来、県農政の第一線において試験研究成果や新技術をもってその機能を十二分に発揮し、冷災害の克服に努め、農業生産の向上、農業青年の育成、農家の生活改善、そして普及にと、その時々の農業・農村の重要な課題に取り組み、多大な貢献をしてきたものと高く評価しております。あるときは農家の庭先で、あるときは水田のあぜ道で、あるいは集会所において技術普及に努められ、農家の人たちとともに苦楽を分かち合う多くの指導者を目の当たりにしております。稲作指導から畜産、果樹、野菜、花卉、経営指導へと活動領域が拡大するとともに、農家所得の向上により、今では企業的な農家の育成にも活躍されております。
 特にも、農村女性の指導におきましては、各地域の生活改善グループの結成に力を注がれ、農家の嫁としてただ働くだけの女性たちが、同じ悩みを持つ仲間とともに、自分の暮らしや衣食住の改善に懸命に励みました。知恵と工夫と技術をもって農業の生活に夢と希望を見出し、直売所から地産地消運動、農産物加工技術を生かしての起業、農家レストラン、グリーンツーリズムなど、今、生き生きと輝いて活動する多くの農業指導士や女性の姿を見ることができるようになりました。このことは、知事も各地を回られ積極的に意見交換を行っておりますので、今の元気な女性たちの姿は一朝一夕にできたことではないことは十分御承知のことと存じます。厳しい農業情勢の中にあっても、たくましく、明るく生きる力を与えてくれているのは多くの農業改良普及員の努力にあることを忘れてはならないと思うのであります。
 しかし、その一方では、地方分権改革推進会議や経済財政諮問会議等における提言や意見によれば、農業改良普及事業に係る必置規制の廃止または大幅緩和、普及組織のスリム化、改良普及手当の上限廃止等が検討されており、平成17年4月の新体制スタートに向けて作業が進んでいると聞いております。畜産農産物の輸入自由化の進展による国際化に対応できる足腰の強い農業の確立や、消費者が求める安全・安心の農産物の生産、冷災害に見舞われる本県にとっての技術革新は、私たち農業者の自助努力のみでは解決できない大きな課題となっております。
 そこでお伺いいたしますが、国では、農業改良普及センターの必置規制の廃止などを内容とする農業改良助長法の改正案を今国会に提案する予定と聞いておりますが、仮にこの法改正が予定どおり施行された場合、本県の普及指導体制等はどのように変わるのでしょうか。米政策改革や食の安全・安心などの取り組みが急務になっている現状にあって、私は、普及指導機能が低下するようなことがあってはならないと考えますが、知事は、本県の農業改良普及のあり方についてどのように考えているのかお伺いしたいと思います。
 次に、新たな米政策についてお伺いいたします。
 縄文時代から延々とつくられてきた日本の稲作によって、国土が開かれ、人々が集まり、地域社会が形成され、稲作文化が生まれたと言われております。戦後の食料難、米不足から米余りの時代に、そして、昭和46年からは政府が責任を持って米の生産調整を行う方式がスタートしたのは御承知のとおりであります。その後、年々減反面積が拡大されることに不満を感じながらも減反政策に協力してきた反面、中山間地から担い手が離れ、耕作放棄地が目立ち、地域のあるべき姿と自然が少しずつ変化してまいりました。また、平成7年、新食糧法が施行され、米の流通規制は大幅に緩和され、政府米と自主流通米は政府の計画流通米とされました。さらに、今年4月から米政策改革が本格的にスタートすることによって計画流通米を廃止し、政府は原則的に関与しない方針を打ち出しております。今までの減反面積の配分方式ではなく、販売できる数量の生産方式に変更され、集落に対する配分も決まり、現在、地域における話し合いが進められております。農家からは、米づくりに対する不安と水田農業構造改革対策交付金、すなわち産地づくり対策要件の厳しさに不満の声も多く聞かれます。従来、米づくりは代々家族単位で行われてきましたが、最近は、集団化、法人化組織と理想的な集団も誕生しておりますが、基本的に米だけはつくり続けたいという農家が多いことも事実であります。このような中、地域リーダーは、厳しい現状の課題に直面しながらも、精力的に集落の話し合いを進め、集落水田農業ビジョンを3月中に策定する作業を進めております。県内では、花巻地方全域で集落ビジョンを策定したと伺っております。
 そこで農林水産部長にお伺いいたしますが、現在、県下全域で集落水田農業ビジョンの策定が進んでいると思いますが、現時点で明らかになっている課題があれば、その内容と解決策についてお示し願います。
 また、この改革により、中山間地域では担い手がますます減少し、耕作放棄地の増加も懸念されるところであります。今後は、中山間地域における水田農業振興という観点での新たな施策が必要であると考えますが、具体的な施策についてお示し願います。さらに、集落ビジョンを策定できない地域や、集落ビジョンは策定したものの、担い手、経営安定対策の要件を満たせない地域、さらには、担い手となる認定農業者が育たない地域の支援策も必要と思いますので、その取り組みについてもあわせてお示し願います。
 次に、食料自給率の向上と食の安全についてお伺いいたします。
 御承知のとおり、我が国の食料自給率は、1960年には79%であったものが、現在は40%にまで低下しております。これは、先進国の中でも最も低い数値であり、世界178カ国、地域の中で130位前後の低さであります。このように、我が国の食料自給率水準は国際的に見ても際立って低い状況となっております。この理由の一つは食生活の変化であり、パン食や家畜飼料の多くを輸入することによる肉類や油脂類の使用、さらには、食材を輸入に頼る割合の多い外食産業やインスタント食品の利用の増加も一因と言われております。農政の憲法とも言われる食料・農業・農村基本法に基づく基本計画には食料自給率の目標は45%と明記されており、農林水産省にとって自給率向上は政策目標の大きな柱となっております。
 こうした中、昨年12月24日、米国で発生したBSE――牛海綿状脳症により米国産の牛肉の輸入がストップ、さらには、アジアでの鳥インフルエンザの大流行により牛肉や鶏肉の輸入が相次いで一時停止したのを受けて、外食産業や加工業者、さらには消費者、日本の食卓にも大きな影響をもたらしたことから、改めて食料自給率の向上論が高まってきております。日本でも、山口、大分、今、京都において鳥インフルエンザが大量に発生しております。目に見えない感染症が北上しているように思えてなりません。本県においても養鶏農家が多いことから、万全を期すことをお願いいたします。
 私は、食料の60%を海外に依存している我が国にとって、今後の世界的な異常気象や大きな災害の発生、世界全体での人口増加、国際紛争など不安定な要因が多いことを考慮するならば、我が国の食料自給率の向上について今こそ真剣に取り組むべきであると考えております。他国の多くは、自国で必要な食料は自国で賄い、自給率向上を明確な目標として掲げ、ほとんどすべての農産物について強固な国境保全措置のもとで増産政策を実施してきているのが実態であります。安全で安心な食べ物を食べたいという国民の願いにこたえて、多種多様な農林水産物を生産できる条件を備えている本県こそ、地産地消、自給運動に積極的に取り組むべきではないでしょうか。折しも政府では、2010年度までに自給率を45%にまで上げる目標を2015年まで先送りするとも言われております。日本の食料供給基地を標榜している本県こそ、食料自給率向上県を明確に掲げ、命の糧となる食料生産に取り組むべきと考えますが、農林水産部長の御所見をお伺いいたします。
 次に、構造改革特区についてお伺いいたします。
 構造改革特区は、地方公共団体や民間企業の提案により、地域の特性を生かしながら、さまざまな規制をその地域の中で緩和、撤廃し、地域の活性化や地域の成功事例の全国的な普及等を目指す制度であります。本県では、地域の農林水産業をベースに、地産地消運動、魅力ある地域づくり活動、都市との交流など活発に行われております。特にも、遠野市の日本のふるさと再生特区、いわゆるどぶろく特区は、全国的にも話題となったばかりでなく、そのユニークさに加え、安代町、浄法寺町も同様に申請するなど波及効果も見られるところです。既に特区の認定を受けるとともに、早速県の工業技術センターにおいて醸造技術研修を実施するなど、その取り組みが着実に進み、日本で第1号の認定証が交付されました。さらに、遠野市では、地方振興局と一体となって、農地の取得条件の緩和により、建設業界の雇用確保のため農業分野の参入を促すモデル地域を設けることにしております。国の構造改革特区の認定を受け野菜栽培に取り組む動きも見られ、新たな雇用創出効果も期待されております。
 そこで総合政策室長にお伺いいたしますが、県では、国の構造改革特区制度をどのように評価し、また、本県における特区の申請と認定状況を踏まえ、その課題をどのように把握されているのでしょうか。さらには、特区構想に続き、国では地域経済の活性化と雇用創出をねらいに地域再生策を打ち出しておりますが、これに対する本県の取組状況と見通しについてもあわせてお示しをお願いいたします。
 次に、食育の推進についてお伺いいたします。
 国においては、いわゆる食育基本法が提案され、各都道府県においても具体的に食育について基本計画を策定するよう義務づけられる内容になると伺っております。子供たちが健全に育っていく過程において、食育教育の大切さについて国会において議論されることは大変意義のあることであると同時に、食の大切さ、食文化を考えるとき、農業・農村の機能と役割が改めて見直されるよい機会になると期待しております。近年、海外から安い農畜産物が輸入される今日、外食、加工食品に頼る機会が多くなり、消費者の食に対する生産過程への関心や知識が薄れ、食と農との距離が拡大してきているように思えてなりません。私は、子供たちに本当の自然の中で育ったしゅんの味をぜひ教える必要があると同時に、子供たちに農業体験を通じて農業・農村に対する感謝の気持ちを醸成することが大切であり、食育教育を推進する意義もそこにあると考えております。
 さきに陸前高田市が2002年度と2003年度の1学期の学校給食の食べ残し量の状況を調査したところ、毎日約100キロの食べ残しが発生したとの報道がありました。子供たちの食事の現場に眼をやると、そこには、礼儀や作法、行事、食事への感謝といった道徳性や倫理観が乱れ、希薄になってきているのではないかと危惧するのは私だけでしょうか。もちろん食育の原点は家庭であり、子供の成長過程とともに望ましい食習慣や基本的な健康教育を行い、子供が親元を離れて1人で暮らしていても、自己管理をしていける力を身につけさせることが前提と考えるものであります。学校教育における食育の推進もあわせて積極的に行う必要があると考えております。
 そこで教育長にお伺いいたしますが、教育現場における食育の実態と国の食育基本法の動きを踏まえ、教育委員会としての具体的な食育推進方針と取組方策についてお示しをお願いいたします。
 最後に、一般国道340号立丸峠の改良についてお尋ねいたします。
 陸前高田市から青森県八戸市を結ぶ一般国道340号は、北上山系を南北に走る総延長255キロメートルの壮大な路線であります。昭和50年、一般国道340号の整備促進期成同盟が発足し、これまでシンポジウムや改良促進大会を開催するなど、27年の歳月をかけ継続的に運動を展開しております。このような非常に長い間の運動にもかかわらず、残念ながら地元の熱い思いはいまだ届かず、関係市町村や住民の悲願となっております。特に、遠野市、川井村の立丸峠の5.9キロメートルは標高も高く、地形や気象条件も厳しい上に、急カーブ、急勾配で幅員も狭いため、交通の難所で道路状況も旧態依然としております。特に、冬期間は積雪により自動車のすれ違いもままならず、道路事情を心得た方でなければ運転が難しいのが実態です。
 一方、この道路は、三陸沿岸の観光資源を生かした広域観光ルートにもなっており、また、医療、福祉、産業振興、津波被害、さらには、沿岸ルートにがけ崩れが発生した際の代替ルートの役割も担う重大な路線であります。
 そこで、県土整備部長にお伺いいたしますが、一般国道340号立丸峠に対する現状認識と道路改良の見通しについてお示し願います。地元の熱い思いを理解していただきますよう、お願いをいたします。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 工藤勝子議員の御質問にお答え申し上げます。
 行財政構造改革プログラムを初めとする各種改革プランを立てまして、今、進めようとしております一連の改革の目的でございますが、これは少子・高齢化の進行に伴う人口構成の変化ですとか、国、地方を通じた深刻な財政危機など、今、大変大きな転換期に差しかかっているわけでございますが、こうした転換期に対応して、これまで、ともすれば量的な拡大を前提として進めてまいりました行財政運営を根本から見直しをいたしまして、量よりも質を重視した行政サービスを将来にわたり持続的に提供できる行政形態に転換をしていこうと、これが目的でございます。これらの改革、当然まず自助努力、内部努力を第一とすべきでございますが、今議員の方から御指摘がございましたように、例えば県単独補助金の廃止・縮減や公共事業など投資的経費の削減、県立病院の再編など、さまざまな形で県民の皆様に従来にない痛みを与えるものもございます。しかし、この改革を進めることによりまして、限られた資源、これは人材であったり物であったり財源であったりする場合がありますが、こうした限られた資源をより必要とされている分野に再配分をして、それらの分野におけるサービスをこれまで以上に充実をさせたり、あるいはその質を高めていくことが可能になると考えております。また、少子・高齢化が急速に進行する中にありまして、良質な社会資本を整備する一方で、改革に伴う痛みを共有し合うことによって、財政的に次の世代に過剰な負担を先送りしないということが我々の世代の責務であると考えておりますので、県民の皆様方にも、ぜひこのことを御理解賜りますようにお願い申し上げる次第でございます。
 それから、このプログラムの成否を決めるものは何かという御質問がございましたが、それに対しては、まず知事である私自身が、そしてこの改革に具体的に取り組む県職員が、改革の方向性やその目指す姿をしっかりと認識をすると、共通認識のもとで、一丸となってその実現に向けて誠心誠意取り組んでいくということが必要かと思います。
 また、こうしたことを踏まえた上で、多くの県民の皆さんに改革の方向性そして目指す姿を御理解いただいて、県民の皆さん方と私ども県、知事あるいは県職員が強固な信頼関係を築いていくと、そしてその信頼関係のもとに、行財政構造改革に掲げる目標一つ一つを確実に実現していく、このことが不可欠かと考えております。
 この財政再建の道筋、そして財源的な根拠というお尋ねでございますが、その実現に向けた道筋といたしましては、県税等の収入に見合った財政支出なり歳出規模の適正を図ることでございまして、当然内部努力が第一でございますが、そうした考え方のもとで、県そして市町村との適切な役割分担と連携のもとで組織・職員体制のスリム化を図る、それから身の丈に合った投資的経費の規模の見直しと重点化などに取り組むといったこと、また、公債管理の適正化に努めて、当面、平成18年度のプライマリーバランスの均衡の達成を目指すと、こうしたことが必要かと思います。また、財源的な裏づけということでありますと、地域経済の活性化策の推進による中長期的な税源の涵養、このためには産業育成、中小企業の経営革新といったことが必要になりますが、こうした税源の涵養に努めるとともに、やはり国に対して歳出規模とそれから地方税収入との乖離が著しく見られますが、この乖離の是正を図るように強く働きかけをしていくことも必要かと思っておりますので、こうしたすべてを総合的にこれから行って取り組んでいきたいと考えております。
 本県農業の位置づけについてお尋ねがございましたけれども、本県農業は地域経済を支えるその中心となる産業でございまして、関連産業への波及効果の高い極めて重要な産業であると認識をしております。本県は幸いにして広大な農地、それから変化に富んだ地形、多様な気象条件を有しておりますので、こうした地域特性を最大限に生かして、本県の基幹をなす産業として、我が国の自給率向上の一翼を担う総合食料供給基地として、この農業の一層の振興に努めていきたいと考えております。
 この具体的な考え方でございますけれども、それは、一つには、自立できる産業構造への変革、それから二つ目には、安全・安心な食の提供が必要だと思っておりまして、このために、現在策定を進めております集落水田農業ビジョンの実現に向けた実践活動の支援を行い、経営体質の強い担い手を中心とした農業構造への変革をさらに加速化していくということが必要でございます。また、消費者が求める安全・安心な食の提供が何にも増して優先をされますので、土づくりから始める安全な農産物の生産やトレーサビリティーシステムの導入などによって、生産者と消費者の顔の見える関係の構築に努めていきたい。
 また、三つ目としては、単なる食料供給にとどまらずに、消費者と生産者の双方向の視点に立って、地産地消の取り組みや食育などを推進して、本県ならではの豊かな伝統食や食文化を継承・発信することによりまして、スローフード、スローライフといった価値観を提案して、食の先進県いわてを実現していきたいと考えております。
 それから、国の方で改正を今予定しております農業改良助長法でございますが、その改正案の内容でございますけれども、これは都道府県が地域ごとに農業改良普及センターを設置することとされておりますいわゆる必置規制を廃止して、その設置については県の判断にゆだねると。それから、現在の改良普及員と専門技術員を一元化して資質向上を図ると、このようなことを内容としております。
 今回の法改正に合わせて、国と県との協同農業普及事業として取り組む課題でございますが、これは、国際化の進展に対応した競争力のある担い手の育成、それから米政策の改革の推進など、いわゆる全国的なものに重点化をされるわけでございますが、我が県としても地域特産物の産地育成やアグリビジネスの支援といった、本県独自の課題についても取り組んでいかなければならないと考えております。
 さらに、認定農業者などの担い手に対する高度専門的な技術支援機能と生産の組織化や集落営農の促進など、地域農業のアドバイザー機能を明確にして一層強化するため、この活動体制の見直しも必要であると考えております。こうした観点を踏まえて、地域ごとにニーズを的確にとらえて、普及指導の重点課題を絞り込んで、そして市町村それから民間団体などと役割分担を明確にするなどによって、効果的でしかもなお効率的な事業が展開できるようにしていきたい。この改正法が平成17年4月からのスタートということになっておりますので、それまでにさらに具体的に検討を進めて、17年度からの新体制のスタートに向けて万全を期していきたいと考えております。
 その他のお尋ねは、関係部長より答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔総合政策室長照井崇君登壇〕

〇総合政策室長(照井崇君) まず、行財政構造改革プログラムの説明会についてでございますが、このたびの行財政構造改革の成否は、この改革の方向性や目指す姿をいかに県民の皆様に御理解いただき、信頼関係を築きながら目標を一つ一つ確実に実現することにかかっていると考えております。このため、市町村長への説明会や意見交換会につきましても、平成16年度予算編成の前に延べ4回開催し、御意見を伺ったところです。
 市町村長からいただいた主な意見や要望とこれに対する県の回答でございますが、保健福祉や農業関係の補助金の削減については、住民の生活に直結しているので、その実施に当たってはこのことに十分に配慮することや、市町村総合補助金の継続について御意見をいただきました。県からは、市町村や関係機関などの意見や要望を十分に踏まえて毎年度の予算編成の中で検討を行っていくこと、医療費助成の見直しにあわせて新たに在宅酸素療法患者に対する支援制度を創設すること、個々の補助金の廃止・縮減により、市町村総合計画などの目標達成に支障が生じないよう、市町村総合補助金に特別枠を設け支援することなどを説明いたしました。
 また、医師確保対策については、県民医療の確保の観点から、これまで以上に県としての取り組みを強化するよう御意見をいただきましたが、これに対し、県内における医師不足の解消と地域医療の充実を図るため、新たな医師確保対策に取り組むことを説明いたしました。さらに、県と市町村は、今後、より一層の共通認識を持ち、合意形成を図る必要があるとの意見をいただきました。このため、来年度以降、年3回程度、知事と市町村長との意見交換会を開催し、共通認識を持って行財政構造改革の取り組みを進めていく考えであることを説明いたしました。
 このように、市町村長から率直な御意見をいただきましたが、それらの御意見を踏まえて平成16年度予算を編成するとともに、今後とも市町村の御意見を伺いながら取り組んでいく考えであり、一定の御理解をいただけたものと考えております。
 次に、誇れるいわて40の政策についてでありますが、この40の政策は、知事が昨年の知事選に当たり作成したマニフェストが県民との約束であるという認識のもと、マニフェストに掲げられた項目を県としてこの4年間に優先的、重点的に取り組むべき政策として整理し、その達成目標や実施期限などを明らかにしたものです。
 この40の政策に掲げた一つ一つの目標を具体的に推進するための主要な施策として、各部局において政策形成プロジェクトとそれを実現するための構成事業を企画、立案し、それを知事以下三役と各部局長で構成する政策評価・推進会議の場でさまざまな角度から検討を重ね、最終的に翌年度の政策形成プロジェクトとして決定しているところです。
 このプロジェクトの推進に必要な財源につきましては、厳しい財政環境の中ではございますが、4年間で一般財源200億円としている新たな政策推進枠――毎年度約50億円でございますが――をあらかじめ確保し、これを充てていくことにしております。
 次に、構造改革特区についてでありますが、この制度はスタートして間もないことや、国においても評価委員会を設置して今後その効果などを検証していく段階であり、現時点で定まった評価を下すことはなかなか難しいところでございますが、地域の自立を進める観点から、それぞれの地域に固有の課題解決や地域の特色を生かした経済の活性化などを図る上で、大変有効ではないかと考えております。
 県内では、ことし1月末までに八つの市や町が計9件の特区計画を申請し、うち5件が認定されております。現在申請中のものにつきましても、年度内には申請どおり認定されるのではないかと見込んでおります。このうち、農家による濁酒の製造については、県も制度発足当初から提案していたものであり、去る2月26日、全国初の酒造免許が与えられました。このように、地方からの提案が一定の実を結んだことは、まことに意義深いものがあります。
 一方で、この特例措置については、例えば酒造免許の申請に要する書類作成や納税などの管理事務が農家にとっては過重であり、思い切った規制緩和で地域活性化を進めるという、本来の特区制度の趣旨に合わないのではないかと考えられる部分もあり、地域の要望に対する国の規制緩和はまだまだ不十分であると感じております。県といたしましては、実際に取り組む市町村などから出された意見や要望について国に対し改善を求めたり、新たな提案をしていきたいと考えております。
 また、昨年12月に、国は地域再生推進のための基本指針を発表し、全国から具体的なプランの提案を募集しましたが、県内では遠野市、釜石市、住田町の3市町がそれぞれ構想を提案しております。国は、これらの提案をもとに、2月27日、地域再生推進のためのプログラムを策定したところでございます。県といたしましては、地域経営の主体である市町村がこれらの国の制度をうまく活用して、地域の自立や再生につなげていくことが最も望ましいと考えており、地方振興局を通じた助成などによりまして、その取り組みを一層促進してまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長佐々木正勝君登壇〕

〇農林水産部長(佐々木正勝君) 新たな米政策に関連して、集落ビジョンの策定の課題と解決策についてでありますが、今回、県内全集落に集落水田農業ビジョンの策定をお願いする中で、さまざまな問題が浮き彫りにされたものと思っております。最初はどういう手順でどうしたらよいかといった戸惑いもありましたし、また、どんな作物をどのぐらいつくったらいいのかという、皆目見当がつかないといったことなど、さまざまな問題が提起されたと受けとめております。
 具体的には、例えば認定農業者がいない地域では担い手をどう確保するか、水田の少ない地域で担い手経営安定対策の面積要件をどうクリアするのか、また、こうしたことなどによりましてビジョンづくりが思うように進まないといった、まさに議員御指摘のようなことが大きな課題であったと思っております。こうした課題の解決を図ってまいらなければなりませんが、担い手の確保が難しい地域におきましては、副業型農家や自給型農家それぞれの志向に応じながら、女性や高齢者も一定の役割を分担し合う地域ぐるみの営農を進めながら、その取り組みの中で担い手を育成するやり方、また、水田の少ない地域では隣接する集落と連携する手法もあると考えられますので、集落の実情に応じた取り組みが重要であると考えております。
 県としては、できるだけ多くの集落でビジョンを策定していただきますよう、地方振興局の支援チームが市町村、農協と一緒に集落に入ってまさに地域の悩みを伺い、また、一つ一つの課題が解決されるように、引き続き支援活動に努めてまいる考えであります。
 また、中山間地域における水田農業の振興策についてでありますが、中山間地域はまとまった水田が少ないものの、夏期冷涼な気象を有するなどの条件下にありますので、減農薬など特色のある稲作とあわせて夏秋期の野菜、花卉や畜産、地域特産物などの振興により、水田と畑地が一体となった個性ある産地づくりを進めることが重要であると考えております。このため、今年度から新たに実施されます国の産地づくり交付金を集落の営農方向に即して効果的に活用していただきますとともに、県としても先進農家での新規栽培農家の技術習得でございますとか、水田の畑地化など、収益性の高い園芸作物の導入・拡大を促進する新たな事業を創設することとしておりまして、こうした支援策を講じながら、体質の強い水田地域農業の確立を図ってまいる考えであります。
 次に、食料自給率の向上と食の安全性についてでありますが、本県農業は担い手の減少、高齢化、農産物価格の低迷などにより生産額が減少しており、こうした中で、本県が我が国の主要な総合食料供給基地としての役割を果たしてまいりますためには、体質の強い農業構造への変革、安全・安心な食の提供を今後の農業振興施策の両輪として位置づけ、総合産地力を高めながら、我が国における食料自給率向上の一翼を担ってまいりたいと考えております。
 現在、県下全域において集落水田農業ビジョンを策定していただいておりますが、これは16年度から始まる新たな米政策に対応するためのものでありますが、同時に、年々減少しております農業生産に歯どめをかけることもねらいとしているものでありまして、このビジョンの中では、地域資源を最大限に生かした生産拡大計画を掲げていただいておりますので、生産者の意欲の結集を図りながらこの実現を図ってまいりたいと考えております。
 また、自給率を高める観点からも地産地消運動の一層の推進を図るとともに、栽培履歴の全戸記帳やトレーサビリティーシステムの導入等を進め、消費者から信頼される安全・安心な食を提供する産地形成に努めてまいります。
 こうした取り組みを通じて、市町村、農業団体と一体となって、引き続き我が国の総合食料供給基地として食料自給率先進県を目指してまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長猪股純君登壇〕

〇県土整備部長(猪股純君) 一般国道340号立丸峠についてでありますが、この区間は幅員が狭小で急カーブが連続するなど、交通の隘路区間となっていることから、国道としての機能を十分に発揮し、また、安全で円滑な交通の確保を図るためには、抜本的な改良整備が必要な区間であると認識しております。これまで、航空測量、地表地質調査、また、概略設計等の各種調査を行ってまいりましたが、地形が急峻であることから、抜本的な改良整備を図るためには、複数の長大トンネルを必要とする大規模な工事になるものと考えております。
 一方で、逼迫した県財政状況の中にあって、道路整備を初めとする公共事業は極めて厳しい環境にあることから、事業実施に当たっては、これまで以上に選択と集中による事業の重点化、効率化を図る必要があると考えております。このため、立丸峠の整備については、このような状況や今後の予算の動向を見きわめるとともに、交通量の推移や地域開発の動向も踏まえつつ、県全体の道路整備計画の中で検討してまいりたいと考えております。
   〔教育長佐藤勝君登壇〕

〇教育長(佐藤勝君) 食育の推進についてでありますが、子供たちの健康と体力の増進、これは今後の教育が目指すべき生きる力の基礎となるものであり、食に関する指導、すなわち食育の充実は、子供の生きる力をはぐくんでいく上で非常に重要な課題であると認識いたしております。
 昨年7月に実施いたしました食育実態調査によれば、今年度県内の小学校の98.0%、中学校の77.7%の学校において、総合的な学習の時間や特別活動などで食の匠を講師に招いたり、古代米の栽培やホタテの養殖などのさまざまな体験活動を実施するなど、それぞれの地域の実態に応じて、地域の協力を得ながら多様な取り組みが行われております。
 例えば、小学校においては、農作業体験や豆腐づくりなど、生産・加工に関する取り組みが多く、また、中学校においては、栄養のバランスや朝食の重要性などを学ぶ健康・食習慣に関する取り組みが多く、また、ひっつみづくりを地元の人に指導していただくなど、地域の食文化の伝承にかかわる事例も多く見られたところであります。
 教育委員会では、子供たちが本県の豊かな農林水産物を素材に、それぞれの地域の特性を生かした食生活や食文化、環境と調和のとれた食料の生産や消費、健全な食生活の基礎となる食品の安全性などについて学び、一人一人が生涯にわたって健全な心身を培い、食を通じた基本的な規範意識や他者を思いやる心などの豊かな人間性をはぐくんでいけるよう、こうした各学校の取り組みを支援してまいりたいと考えております。言うまでもなく、食育は単に学校だけで進めることができるものではなく、学校、家庭、地域がそれぞれの役割を自覚しつつ、相互に連携を図りながら取り組むべきものと考えております。
 こうした観点から、お話がありました現在検討が進められております食育基本法案の動きも注視しつつ、来年度は学校を中心とした食育推進事業、これは文部科学省の委嘱事業になりますが、この事業を展開し、継続的に食育に協力いただける個人、団体のネットワーク化を図るとともに、小・中学校におけるすぐれた食育実践事例の紹介などに取り組むこととしており、食育のより一層の充実を図りたいと考えております。

〇議長(藤原良信君) 次に、新居田弘文君。
   〔18番新居田弘文君登壇〕(拍手)


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