平成16年2月定例会 第6回岩手県議会定例会 会議録

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〇41番(渡辺幸貫君) 民主・県民会議の渡辺幸貫でございます。
 質問に入るに当たり、及川幸郎先生から、なぜか、前定例議会で、直前に質問の機会を譲ってくれと言われまして、それが最後で、心から御冥福をお祈りしたいと思っております。
 私は、平成8年2月議会の一般質問で、ケインズ的な拡張的財政の限界を国の財政審議会が指摘していること、市町村合併の必要性をただし、その後の県政調査会でも3回にわたり、当時の財政を揺るがした住専処理の負担の大きさ、銀行や農協など金融危機等の問題で機会をとらえ、一日も早い健全財政運営を唱えてきました。当時の知事の答弁は、財政の健全化に努めながらも、社会資本の整備が何より肝要というものでした。知事は、今定例会に先立つ所信として、過去の社会資本の整備が景気の面では効果が薄かったと話されておりますが、もっと早かったらと思いながら、以下質問をさせていただきます。
 さて、2月10日は日露戦争開戦100年なそうであります。司馬遼太郎さんの坂の上の雲が思い出され、皆さんと歴史観を話したいと思います。
 幕藩体制のころの学問は、いわゆる読み、書き、そろばんで、読むとは子供には非常に難しかったと思われる子曰に始まる朱子学、すなわち道徳が政治の規範だった。ペリーの浦賀来航で明治維新となり、日本が植民地にならないために富国強兵、近代化に一丸となって走り、その頂点が日露戦争の勝利だった。一等国という言葉は、国民にとって自信と誇りだっただろうし、植民地政策に苦しんでいた当時のアジアの人々には、大変な喜びと励みだった。その自信で進む日本は、日韓併合、日支事変、第二次世界大戦へと進み、富国強兵ゆえの敗戦による挫折、戦後の苦難の中での民主化が始まった。豊かになりたいという、経済大国への必死の努力が今日まで続いている。その過程の中で、日本列島改造論は、どの地域も豊かになるのは政治の力が必要だ、財政投資が経済発展を支えるとして、その後、今日まで大きな影響をもたらしてきた。金太郎あめのごとく、政治家は、道路、新幹線、港湾、空港、大規模な農業土木、商店街の近代化、レジャー、リゾートなどを唱え、それができたかどうかで政治の評価とされてきました。
 バブル崩壊後の公共事業を中軸とした累計130兆円に上る事業規模と言われる景気浮揚策は、経済を持続的な成長軌道に乗せられなかった。ケインズ経済学の波及効果の考え方は、すっかり色あせてしまった。昨年の総選挙で躍進した我が民主党も、公共事業のむだをとめるがマニフェストだった。
 そこで私は、政治改革とか一新とか言うが、その基本は人口構成をもとにして考えるべきと思います。我が国の人口は、2006年をピークに減少すると言われています。そして、出生率は御存じのとおり約1.3であります。総務省の住民基本台帳に基づく人口調査によると、岩手県は人口増減率マイナス0.37で、秋田、和歌山に次ぐ減少である。ゼロ歳から4歳までの年齢人口は平成14年10月1日現在6万1、840人で、9歳までの年齢人口は12万8、808人である。このペースで50年たったら、掛ける5だとすれば64万人にすぎない。これが50歳までの人口である。この議場でも、若い議員は50年後も元気でおられることと思います。そこまで行かなくても、国立社会保障・人口問題研究所の日本の世帯数の将来推計によれば、20年後の2025年には、世帯主が65歳以上の世帯の割合は2000年の約1.7倍となり、一般世帯総数のほぼ4割を占めるようになり、さらに、世帯数が75歳以上の単独世帯は2000年のほぼ3倍になると推計されています。
 将来、空港、新幹線にどれだけの人が乗るか、盛岡駅周辺に現在進められている高層ビル群は過剰ではないか。神戸と大阪を結ぶJR、阪神・阪急電鉄の乗車率は既に減り始めており、同じことが人口が集中している東京圏にも言えるそうです。例えば、多摩ニュータウンでも老人タウンになっている。近鉄の球団名変更も将来を見越しているそうだ。岩手でも、三陸鉄道の苦しさは通学生の減少が理由の一番に挙げられている。道路も同様だが、団塊世代が退職を迎え、通勤しなくなる5年後ぐらいから顕著になるのではないかと言われている。そのあらわれは地方ほど早い。借金県土と叫ばれる以上、来年度当初予算で公共事業費が昨年に引き続き17.9%の縮小は当然のことでしょう。今後は県資産の売却も進め、2006年には借金残高が減っていく状態になさるそうだが、心配しております。明治の初め、散切り頭をたたいてみれば文明開化の音がすると言ったそうだが、将来はっきり言える人口構成、借金返済で、ともに頭をたたく必要があるのではありませんか。
 内閣府の世論調査でも、将来への不安が過去最高の67%に上ったという。知事を初め議会の私たちも、従来の地域振興議論より、世代間不公平の年金なども含め、責任を自覚した将来実態に向けた議論を県民は待っているのではないでしょうか。
 知事は、人口構成の及ぼす急激な社会変化をどのように予測し現在の責任と将来像を描いておられるのか、お聞かせください。将来予測に危機感を持たなければ、県民は政策の変化に信頼を寄せないと思うので、国の政策に従ったことへの反省ではなく、歴史観として御答弁をお願いしたい。
 もう一度重ねて強調したい。少子・高齢化は、単に教育、福祉の問題ではなく、迫り来る社会全体なのだと。
 さて、今日まで豊かさの中で国民は競争を嫌い、やれ、ゆとりある教育とか道徳教育を疎んじ、定職につきたがらない若者たちを生み、社会全体が、古代ローマ衰退期のパンと見せ物を要求する市民に似た現象になってはいないか。
 一方、企業は国際競争力に焦り、能力主義を唱え、企業の求める人材と教育実態との間にこれほどの隔たりのあった時代があったろうか。この矛盾にだれもが疑問を持っている。指導要領の混乱は、子供中心主義の考え方、教えることは大人の価値観を注入することになる。子供がみずから考えることが大切と語られもした。それが道徳教育などへの反対に結びつきやすかった。しかし、子供は教育と社会的訓練を受けて初めて人間になっていくのではありませんか。教師の方々が教育観を見直し、教えることに自信と誇りを持っていただきたい。
 教育について、先日、県北の市町村で小学校の生徒数の減少に伴い統合が発表された。地域の住民、とりわけ、父兄が切磋琢磨と社会性を育てていきたいとして英断されたことは高く評価したい。さきに触れたとおり、ゆとり教育で広がった学力低下の不安は、さきの文部科学省による40年ぶりの高校生学力テストの結果、学校外学習を全くやらない高校生の数が41%に及ぶことと考え合わせ、競争意識、向上心を身につけさせる意味からも、学校統合の必要性が叫ばれて当然であります。
 先日、我が会派の研修で、世田谷区の保育園が中学校に併設され、財政的にはもちろんのこと、教育的にも相乗効果があることに感心してまいりました。幼稚園、保育園の維持・再編のよい参考になると思います。そして、国は廃校となった建物や空き教室などを、民間企業や非営利組織に多目的に開放する方針を固めたそうであります。
 そこで、県においては、県立高等学校新整備計画の後期マスタープランを公表され、小規模校の統合を進める方針が示されております。小・中学校設置者は市町村であるとはいえ、地域の教育向上を図ろうとする場合、小・中学校、高等学校を一体としてどのようなあり方が望ましいかを考え統合を進めることが重要ではないでしょうか、御所見をお聞かせください。
 次に、学力向上についてでありますが、教職員と生徒の数から見れば、実に13人の生徒に先生1人で、県人口でも100人に1人が先生である計算になる。学校統合が進めば習熟度別学習など、さきの平野議員の指摘や知事の所信の、学力向上という教育本来の使命が果たせていく気がいたします。
 また、教育長は定例記者会見で、学習定着度状況調査、いわゆる学力テストの結果について、教育事務所単位まで公表はしたいとの認識を持っておられますが、ぜひ生かしていただきたいと思います。
 文部科学省の中央教育審議会が中間報告で、地域運営学校の創設を提言しております。予算の使い方、教育、非常勤講師の採用、ドリル学習の検討の提言など、さまざまな外部からの発想も入れた地域運営も全国で9校の実践研究校が指定され、成果が期待されております。さらに、小学校から英語教育の期待の高まりや埼玉県で新年度より実施する教員の土曜日補習も勤務とみなすことなど、さまざまな取り組みが行われていますが、本県はどう学力向上に取り組むのか、教育長の考えを伺いたい。
 さらに、北東北3県連携について伺います。
 さきの県政調査会で、北東北3県合体を2010年とした北東北広域政策研究会の報告書が総合政策室より情報提供されました。さらに、県庁所在地は田沢湖高原が最適との秋田県知事の発言にびっくりいたしました。国でも道州制の議論を高めるとの新聞を見て、正直、はるか先のことと思っていた私も、おくればせながらその3県の枠組みについて申し上げたい。
 3県連携の概要によれば、その目的は交通網の整備、高度情報化が進む中で右肩上がりの成長が終わりを告げた今、限られた資源、財源をスケールメリットで有効に活用し、相互利用や共有によって総合力を発揮していくことが求められているとしている。考え方は大賛成であります。大きな枠組みは知事サミットの合意事項のように、1回から三、四回ごろまでは、津軽海峡大橋に代表されるように実現に向けての大きな夢でありましたが、5回、6回、7回は、より現実的な産廃や医師確保や名古屋、ソウル、シンガポールの事務所設置や情報発信をもとにしたものとなっているとの印象を受けました。しかし、北東北3県の財政状況を見ると、本県は県債残高1兆4、040億円と新聞の見出しに躍る財政状況であり、また、平成14年度決算審議資料によれば、青森県も本県同様の苦しさで、秋田県はさらに税収も低くとても夢どころではない。それに引きかえ、宮城県の税収は倍の2、435億円もあり、県債依存度も岩手県17.2%、青森県17.1%、秋田県19.1%に対し、12.1%の低さで福島県も13.7%と続いている。簡単に言えば、平成14年度は200億円借金がふえる本県に対し、宮城県は200億円返済しているのである。福島県も宮城県同様、税収もあるし県債も何とかふえないようにやっている。さらに、旧仙台領を持ち出すまでもなく、北上川流域に発展する岩手県南と大崎平野など宮城県北は、古川、一関、気仙沼、石巻など一体をなしているではないか。盛岡や県北でも出身校などを考えたら、経済面だけでなく人的親しみから言っても、青森県、秋田県の比ではないと私は思います。まして今日、第2の東京一極集中が叫ばれているとき、南に活路を求めるのは自然であると思うのであります。北東北3県を目指すと後戻りできなくなります。市町村合併について議論を尽くしながら、地域の実情と住民の意向が何より大切と強調されている知事にしては、北東北3県の構想が具体化し過ぎているような気がいたします。枠組みについて、県民の意向を尊重しながら進めてほしいと思うのですが、今後の進め方をどう考えているのか、知事にお尋ねします。
 次に、米政策改革について伺います。
 現在、県内各地では米政策改革による地域水田農業ビジョンの策定が市町村と農協と一体になって進められ、水田営農組合を核とした特色ある作物づくり、担い手の明確化と育成、生産調整や過剰米処理の推進に取り組まれております。こうした中で、市町村では、担い手である認定農業者の目標数を確保しようとして、農業収入が市町村の基準にほど遠くても、認定農業者として認定しているところもあるように思えるのですが、いかがでしょうか。
 また、地域ビジョンの内容も高いハードル、背伸びしたものを策定しているのではないかと危惧しております。例えば、有機農業が叫ばれる中、家畜が農業者の高齢化で減ったが、価格が持ち直してきたことを受けて、増頭させたいために、家畜がいない集落では牧草転作は認めないとか、乾燥施設が十分でない、消費のめどが立たないのに麦、大豆を大量に転作させる、その収穫目標が高くなければだめだとか、大規模営農ほど農薬の手助けがないとやれないのに、無農薬または減農薬栽培が果たして両立するか。トマト、キュウリのハウス栽培のように、技術的に長い経験とかなりの努力と投資が必要なのに安易に奨励したりなど、現実を無視しがちな地域ビジョンがありはしないか危惧いたしますが、県の把握実態を伺いたい。
 あわせて、ことしの11月から施行される畜産業を営む者を対象とした家畜排せつ物法の対応ができているのか、たい肥センターの運営赤字をどう負担していくか、14年度末で1万3、000トンの在庫に苦しむ処理済みの堆肥の消費をどう進めるか、お答え願います。
 ところで、認定農業者ほど価格下落に悩まされているのに、米価1万円でも生産ができるとか強がりを言ってはいませんか。また、集落ビジョン策定の1月末の取組状況は、目標のビジョン数2、200に対し約600と報道されておりますが、集落ビジョンの策定に当たって、集落営農のハードルが高過ぎてその取り組みをあきらめたり、高齢化が進んでいる今日、集落での話し合いの中で担い手の規模拡大を声高に叫んでも、小規模の高齢農家が就農の場を失うものと身構えてしまい改革が進まなかったり、逆に集落の人間関係まで壊す結果になりはしまいか。不耕作地もますますふえます。書類などのチェックが多く、パソコン熟達者がいない集落では、現実的に集落営農が進まないのではないかと危惧します。また、担い手を明確化しなければならないので、その結果、担い手が多勢に無勢で孤立して行き詰まらないか、担い手だけで水路の清掃ができるのか。
 いずれにしても、産地づくり交付金は金額が3年間固定されるため、各地域とも助成対象作物の選定に苦慮していることと思います。今まで実績のある作物と新たに選定する地域の振興作物にどう配分するのか。3年後に交付額が見直され、減少することはあってもふえることのない御時世では、国、県、市町村と末端ほど、より農家実態に合った緩やかな助成措置をとっていただき、集落の話し合いに時間をかけながら見守っても、農家集約は自然に進みます。少しでも取り組みやすいビジョンづくりを指導願いたいが、県の考え方を伺います。
 なぜこんな話をするかといえば、WTOの話し合いが頓挫しFTA交渉、すなわち二国間、地域間での貿易についての関税や通商制限措置を撤廃することが原則の話し合いであり、その交渉を政府も本格化させている以上、土地利用型農業の場合どんな経営体でも厳しい。担い手中心の大規模経営体や集落経営体も、育つどころか脱落が目につく。この際、地域住民として多数の兼業農家も農業の多面的機能の担い手になってもらわないと維持できない。地域をうまく取り込みながら、各国からも理解を得やすい直接支払い政策で、所得の補償もしながら営農のむだも次第に省いていくべきです。
 農業は第1次産業としてだけでなく、今やいやしや安らぎの空間として、国民的な農業に対する再評価が得られてきていると思います。また、今、国際競争力を振りかざして農村社会を無理に壊して取り返しがつかなくなってはと心配いたします。担い手としては、青年だけでなく、むしろ退職する人は、岩手の場合農業県だけに、自然に親しみ百姓をする人が多いのではないか。定年退職者が人数的にも経済的にも、足腰の強い意欲的な担い手になり得るかとも思うからです。どぶろく特区の岩手として、自然な考え方ではないでしょうか。
 次に、ことしの米冷害に関連し、本県の米づくりについて伺います。
 我が県は10年以上前の品種独自開発ブームに乗って、耐冷品種のかけはし、いわてっこを育ててきました。しかし、ことしはそれが被害を受けました。穂と花粉がつくられる幼稲形成期と減数分裂期に寒さが来ると、どんな品種も影響を受けます。何年かに一度冷害を受けやすい岩手にとって、品種値が評価を落とすと回復に多年を要します。量の多い品種であれば、翌年品質がよければ評価はすぐ戻ります。つまり、品種奨励は少量しか見込めない新品種よりも、国や他県の開発でもいいので、10万トンといういわゆる品種としての流通単位を大切にすることが、米の改革大綱に沿った消費者が求める米づくりになると思うのですが、いかがでしょうか。
 次に、農家の頼りとする農協組織について伺います。
 私は、来年に備えたペイオフの全面解禁や金融店舗の職員の配置基準が最低3人以上とすることなど、信用事業を取り巻く大きな環境変化に加え、農村人口の高齢化による共済保有高の減少、米の冷害に伴う取り扱い手数料の減少、経済業務の石油販売、生活店舗の赤字などにより、構造的な悪化が心配されます。さらに、米価の低落と転作の増大、BSE、輸入増大の影響などによる畜産の不振、そして野菜、リンゴなどの過去数年にわたる価格低迷は、専業農家を中心に借金の返済をおくらせ、不況による農外収入の減少は農家経済を圧迫してきております。農協にとって、貸し金の担保である農地は処分先もなく、来年度は県下に健全経営の農協はあるのだろうかという危機に立たされていると思います。指導監督の立場にある県は、現状をどうとらえ、今後を予測されておられるのか伺います。
 力強く警鐘を鳴らし、経営の抜本的な改革を迫っていただきたいと思う次第です。
 次に、当面の深刻な課題になっております医師確保について伺います。
 高齢化に伴い患者が増加し、医者は年に1億円も2億円も稼ぎ出すと言われる中で、県立病院改革は医師確保に起因すると考えます。それと同時に、医学部を持つ全国の大学の6割以上の51校で、延べ1、161人の医師が行っていた医師の名義貸しや医師派遣を求める医局への献金の実態と、大学病院では授業料を払い勉強を名目に無給で働く大学院生や、薄給で長時間働く研修医、名義貸しを仲介したのは医局、診療科ごとに教授が頂点の任意組織です。教授の人事命令は絶対で、嫌われると飛ばされることもある。また、医局は医師養成に係る費用の不足など、医師の世界で深く根づいてきた現状に寒々とした不安と、今後明らかにすればするほど、医師の引き揚げなど自治体運営を問わず、病院経営の行き詰まりに危惧の念を抱いております。
 厚生労働省のまとめでは、全国の病院のうち、医師数が基準を満たしているのは75%の6、480病院だが、北海道、東北は52%にすぎず、このままでは保険医療機関の指定を取り消され地域医療が破綻する。医療法が定める病院に置く医師の基準は、占領下の1948年に制定以来見直されたことがなく、数字の根拠もはっきりしない。特に、その基準の6割の医師を置かないと診療報酬をカットされてしまうことに、病院関係者の不満は多いという。風邪などの軽度の治療も先進医療も、患者・病床数に応じ、医師の数を横一線に求める制度に、老人を多く診療する地方病院の不満は大きい。逆に、勤務医の人たちは、毎週回ってくる夜勤やその翌週も翌日も患者が待ち受ける状態。厳しくなる医療ミスの追及、気がかりな子弟の教育、単身赴任、医師の実態から地域の病院、診療所の医師の負担を軽減するため、広域基幹病院等に重点的に医師を配置し、地域の病院、診療所に派遣等を行い、そして学びたい高度医療と地域の期待する総合医としての役割を果たそうとする県の立場。大学、医局ごとに違う医療機器、処方の仕方、医師不足を埋めるための研修医の活躍も期待する県。一方、経験が浅く医療事故を招くおそれが指摘されている1年目の研修医の宿日直は、必ず指導医や上級医と組んで診療に当たることを厚生労働省は求めている。疲れ果てている状況を知った研修医が、地方に勤務してくれるだろうか。不安を抱えながらも県民は今回の病院改革は、追い詰められた末のやむなきものとして受け入れざるを得ません。新たな医師養成事業は大賛成ですが、とても抜本策とは思えません。
 大学医学部を所管する文部科学省、病院を所管する厚生労働省の連携、県においても保健福祉部と医療局など、問題解消には医療法だけでなく、地域医療のあり方まですべてを見直さなければならないのではないか。全国一医療過疎に悩み県立病院網を築いてきた本県として、医療政策を国に問いかけていくべきです。ついては、県としての医師確保の現状認識と、今後の取り組みについて改めて伺いたい。
 以上で私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 渡辺幸貫議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、人口構成の及ぼす急激な社会変化、これを知事としてどのように予測をし、現在の責任と将来像を描いているのか。歴史観として答弁を願うというお話でございました。
 私も、現在の少子・高齢化、そして、こうしたことからもたらされる人口構成の変化、それが社会的な変化、しかも急激な変化につながっていくということをしっかりととらえた上で、将来構想というものを描いていくことが大変重要な視点であると思います。歴史観というお話でございましたけれども、やはり時間軸の上で、こうした将来を見据えた急激な変化が起こる中で、世代間公平ということを常に意識して念頭に置いて、そして物事を進めていかなければならないと考えておりますし、今回の知事演述の中で、特に岩手の将来への備えということで大分ボリュームをとって、次世代に何を引き継ぐか、従来にない量でこの世代間公平のことについて触れたわけでございますが、これは、今、議員からお話しがございましたような、そういう継承というものが非常に重要であるという認識に基づくものでございます。
 ヨーロッパを見ましても、スウェーデンのように、いち早く少子・高齢化が進行しましたけれども、年金制度や産業労働政策の見直しなどの改革が功を奏して、こうした社会的な変化に前向きに対応して経済成長を続けているという例もございますので、こうしたことも十分に見ていく必要があろうかと思います。本県の総人口が2030年には123万人ぐらいまで減るという予測もございますので、特にその中で若年人口が急激に低下をする。これはまさしく社会の活力が大変失われるわけでございます。
 そこで、やはり将来への備えということを、我々のこの時点でできるだけやっておく必要があるだろう。確かに公共事業や大規模な施設整備事業を集中的に実施してきた。東北新幹線や県立大学、美術館などを後世代に残すためにということで、さまざま良質な社会資本を整備してまいりましたけれども、これは恐らく今から、これからということでは決断できない事業であろうと思いますし、確かに大変な負債を今しょっているわけでありますけれども、しかし、それも私たちも大変苦しい中で我慢をしながら、これから数年の間に借金をしっかりと返済して、プライマリーバランスの均衡を回復して、そして次世代の人たちにそうした良質な社会資本を残すということが、私どもにとっても大変重要な責務ではないか、こういうふうにも思うところでございます。
 そして、こうした大規模な社会資本の整備を進めることは、今申し上げましたように、今後これからやろうとすれば大変困難でありますので、私は先人の築いてきたこと、そして私の前任者が決断してきたこと、そうしたことが決して間違いではなく、我々も、これまで多くの整備してきたものをいかに有効に活用していくか、そういうことが重要な時代に入ってきている。そういう時代の変化を十分にとらえた上で、置かれている状況を多角的にとらえて、新たな地域の創造につなげていくという視点が不可欠であろうと思います。これからこの人口減と人口構成の変化に的確に対応する、そして活力を維持し、さらに存続していくことができるように、当然市町村や県民の皆様とともに、さらに真剣に議論を深めていきたいと考えているところでございます。
 それから、北東北3県連携の関係でございまして、具体化が過ぎているのではないか、また、県民の意向を十分に尊重しながら進めるべきと、このようなお話がございました。この北東北3県連携については、多くの連携事業を積み重ねてきておりまして、着実にその成果が上がっていると思っておりますし、今3県がこの段階でまたさらにグランドデザインをしっかりと描いて、それぞれの機能分担ということを意識して、広く視野を広げて競争力のある海外戦略を展開などしていくことが、これからますます必要になってくると思うところでございます。
 そのときに、やはり東北、宮城県を初め、南の方も十分意識をして、東北全体を見渡して常に東北全体の底上げを図るという視点が大変重要であろう。今、議員の方から南に活路を求めるという話がありましたけれども、宮城県のみならず東北全体の視点というのを忘れずに進めていく必要があると思いますし、そのためにも、例えば宮城県なら宮城県とより連携を進めていく上でも、我々の地域が逆により魅力を高めていく必要があると思いますので、そのためにも南とさらに連携を深める意味でも、北東北3県がしっかりと連携をして、この地域の魅力を高めていくということ、このことが南と連携を深める、あるいは東北全体として全体を底上げしていくことにつながっていくのではないかと思うものでございます。
 そして、一方で、都道府県合併とか道州制といった新しい地方自治制度に結びつくいろいろな話が出てきておりますけれども、こうした広域連携を積み重ねていくことが、直ちに都道府県合併や道州制といった新しい地方自治制度に直接結びつくものではないと考えております。そういった制度の話は、これはまさしく国の統治機構そのものの問題でございまして、これから新しい地方自治制度の設計をしていかなければならない時期に来ていると思いますが、そのときの大事な視点というのは、やはり住民との距離をできるだけ近づけると、そして国と地方の機能や役割分担を大きく変えていくという視点が大事だと思います。住民により身近な自治体に権限を移譲していくという視点で、そういう制度設計はまた一方で必要かと思いますけれども、それはそれとして国の統治機構にかかわる大問題でございますので、やはり十分慎重な議論が必要かと思っております。
 私は、地方自治の制度については、やはり地方がそれぞれ住民の皆さんとの合意の上で選択をしていくような、全国一律の制度というものではなくて、一国多制度を基本とした多様な自治制度があって、そしてそれを地域、地域で住民の皆さんが判断をしながら選択をしていくということが必要だと思いますので、北東北のこの連携を東北地方全体の視野で、これからなお進めていく必要があると考えておりますが、先ほど言いましたような地方自治制度、そうしたものについては当然住民の合意ということを前提に、そもそも今制度がほとんどないわけでありますから、そうした制度構築についても提言あるいは発言をしていきながら、住民の合意形成を慎重にやはりやっていく必要があるのだろうと思っております。
 その他のお尋ねは、関係部長に答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔農林水産部長佐々木正勝君登壇〕

〇農林水産部長(佐々木正勝君) まず、認定農業者の認定基準についてでありますが、市町村が経営改善計画を認定する際には、その計画が市町村の基本構想に掲げる認定基準に照らして適切であるか、あるいは達成される見込みが確実であるかなどの観点から判断しているものでございます。しかしながら、新たに農業経営を開始する場合や小規模な経営から規模拡大をしようとする場合など、5年間の経営改善期間では基本構想で示す目標達成が困難であっても、農業者の意欲と能力があり、その後も経営発展に継続的に努力することによって、目標達成が確実と認められれば認定するものとされている制度でございます。今後におきましても、プロの農業経営者を目指そうとする農業者の意欲の芽を伸ばしながら、市町村と一体となって経営改善計画の達成に向けて支援してまいりたいと考えております。
 次に、地域水田農業ビジョンの内容についてでありますが、地域水田農業ビジョンは、まず、それぞれの地域の水田の現状、いわば強み、弱みを十分検証した上で、地域に賦存する農地や労働力などの資源を最大限に活用する新たな営農の仕組みや担い手の明確化、さらには、農地の利用集積目標、作物の生産計画等について、市町村、農協等で構成する地域水田農業推進協議会で協議を積み重ねた上で策定されるものであります。
 県で、2月上旬に、地域水田農業ビジョンの策定状況等について、市町村等と協議を行ったところでございますが、全市町村で原案が固まっておりまして、現在、産地づくり対策の交付金の具体的な活用方法や交付単価、担い手のリストアップなど、仕上げの段階に入っているところでございます。この原案を見させていただきましたが、議員御指摘のとおり、このビジョンにおいては、直ちに取り組めることのほか、改革という観点から、あるべき方向としての目標も掲げていただいており、ハードルが高いものも盛り込まれているとの印象もありますが、全体として、新たに挑戦しようとする大変意気込みのあるものになっていると感じたところでございます。
 県としては、市町村、農業団体とも連携しながら、この地域ビジョンがいち早く実現されるよう、積極的に支援するとともに、このビジョンは、進捗状況を踏まえて毎年度見直すこととされておりますので、より実効性の高いものになりますよう、その見直しについて、適時適切に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、家畜排せつ物の処理についてでありますが、県では、いわゆる家畜排せつ物法の対象となる農家の方々の意向調査に基づきまして、処理施設の整備計画を作成し、その促進に努めているところでありますが、県単独の地域有機物資源活用促進事業を初めとする各種補助事業や融資制度の活用により、今年度末までには約8割の農家で施設が整備される見込みとなっており、残された期間はわずかではありますが、16年度につきましても予算の確保を図りながら、10月末の期限までの施設整備に万全を期してまいりたいと考えております。
 また、たい肥センターの運営状況についてでありますが、14年度の決算を見ますと、年間処理量1、000トン以上の県内20カ所のうち11カ所で赤字となっており、その大きな要因は、販売不振により在庫を抱えていることなどが考えられますが、堆肥の販売を促進し、収支の改善を図ることが緊急の課題となっているところでございます。このため、岩手県たい肥センター協議会や、地方振興局ごとに設置しております地域たい肥生産利用推進協議会を中心に、土づくり講習会の開催や堆肥散布への助成など耕畜連携による地域内での利用促進を図るとともに、地域外への販路拡大にも取り組んでまいらなければならないと考えているところでございます。
 次に、集落ビジョンへの指導についてでございますが、国の米政策改革大綱において、市町村ごとに、それぞれの地域の米政策の方向づけを行う地域水田農業ビジョンを策定することとされたところであります。こうした市町村レベルのビジョンはもとよりでございますが、この改革を実効あるものにするためには、実践者である集落の方々が十分な話し合いのもとに、担い手を明確化した上で、売れる米づくり、米以外の作物の産地づくりなどについて、みずからの集落の将来像を描き、目標と戦略を持って取り組むことが何にも増して重要でありますので、本県独自に集落段階でもビジョンを策定していただくこととしたものでございます。
 このビジョンでは、直ちに実践するもののほか、少し時間をかけて取り組む目標も掲げられておりますが、いずれにしても、1回策定して終わりではなくて、一つ一つできるところから実践しながら、さらにその内容を充実していただき、体質の強い生産構造が構築されることを期待しているものであります。今回の新たな米政策は、過去のオイルショックや農産物の輸入自由化などにもまさるとも劣らない大きな課題でございますが、これを機に集落の方々が、みずからの農業経営や集落の水田農業の将来方向について熱心に、しかも本音で話し合ったことは、必ずや今後に生かされるものと考えております。
 次に、本県の米づくりについてでありますが、本県産米につきましては、これまで県・団体を挙げて、高品質・良食味米の安定生産や減農薬栽培の生産拡大のほか、最近におきましては、消費者の食の安全・安心のニーズにこたえるため、栽培履歴の全戸記帳などに取り組んでいるところであり、こうしたことによって、ひとめぼれ、あきたこまちを主体に、いわて純情米として有利販売に努めているところであります。こうした米の販売については戦略上、単一品目において全国でのロットの確保は重要な意味を持つものであると考えておりまして、本県の主力品種であるひとめぼれにつきましても、東北各県が栽培試験を行った結果、耐冷性や食味がすぐれていることから、本県を含め、東北4県が奨励品種として採用し作付面積が拡大したことにより、コシヒカリに次いで全国2番目の品種となっておりまして、現在の評価が得られているものと考えております。
 本県は、多様な気象条件下にありますことから、耐冷性の強化と品質・食味の向上を目標としてオリジナル品種の開発を行ってきておりますが、本県開発のわせ品種かけはしは、青森県の奨励品種に採用されているところであります。これまでも他県の品種を導入し、現地における適応性を検討しながら品種の選定をしておりまして、今後におきましても、本県に適するものがあれば奨励品種として採用し、有利販売に努めてまいりたいと考えております。
 次に、農協組織についてでありますが、農協の主要事業であります信用事業、共済事業及び経済事業におきましては、金融情勢の変化、量販店等との競合、農家経済の悪化などによりまして、平成14事業年度の決算において、繰越損失金を計上している農協が7農協あるなど、極めて厳しい状況にあるものと認識しているところでございます。また、平成5年冷害の例によりますと、冷害の翌年は米の在庫の減少により販売手数料の大幅な落ち込みが予想されますことから、平成16事業年度は、さらに厳しくなるものと予測しているところでございます。
 こうした状況の中で、農協が健全な経営を続けてまいりますためには、信用事業実施機関として財務や組織体制を磐石にするのはもちろんのことでございますが、大きく変化しつつあります農業や社会経済情勢に対応して、適地適作による生産拡大や安全・安心を求める消費者ニーズへの対応、組合員に対する経営指導の強化などにより、農協組織の存立基盤である地域農業を活性化することが不可欠であると考えております。
 県は、これまで農協経営の健全性を確保するため、金融検査マニュアルに基づく厳格な検査と財務状況等に懸念のある農協の指導を重点的に行ってきたところでありますが、今後は、これに加えまして、地域農業振興の中核としての役割を担う農協が、組合員や地域により一層貢献していくよう、検査や検査後の指導ヒアリング等のあらゆる機会を通じて、役職員の意識改革と経済事業の改革について積極的に取り組んでいただくよう求めてまいる考えであります。
   〔保健福祉部長長山洋君登壇〕

〇保健福祉部長(長山洋君) 医師確保など国への働きかけについてであります。
 都市部と過疎地域を含め全国一律となっています病院の医師数の算定方法、診療報酬上の評価、大学医学部入学定員の抑制など、制度上の問題に関し、本県はこれまで東北地区における大学医学部の定員増や、過疎地域等における診療報酬上の評価の改善等を国に対し強く要望してきたところであります。昨日、動きがございました。厚生労働省、文部科学省、総務省3省の協議で医師数の配置基準、あるいは大学医学部の入学の地域枠の検討が進められるということになりました。今後これらのよい結果が得られるということを期待しているところでございます。
 医師確保の取り組みについてでございます。
 本県は、全国と比較し医師数の増加の伸び率が依然として低い状況にございます。しかし、本県出身で県外を含めた大学医学部に進学する学生が毎年数十名おります。これら医学生に対し本県の医師として定着するため、確実で効果的な働きかけを積極的に行う必要があると認識しております。このため、平成13年度から実施しております岩手県(医療局)医師養成事業に加え、今般、新たに県と市町村とが協働して、県立病院や市町村立病院等で勤務する医師の確保を目的とした医師養成事業を行うこととしたものであります。これらの事業によりまして、ここ五、六年の間に60ないし65名程度の医師の養成を進めたいと考えております。
 また、平成16年度から医師の臨床研修の必修化に当たりまして、これまで関係機関の努力によって医療圏ごとに臨床研修体制の整備が図られまして、県全体で受け入れられる研修医の数が15年度38名から来年度74名と倍増する見込みでございます。臨床研修を本県の病院で受けていただき、将来的にも本県の医療に携わることが期待されますので、今後もさらに研修医の確保に努め、県内への定着に向けた取り組みを積極的に進めてまいりたいと考えております。
   〔教育長佐藤勝君登壇〕

〇教育長(佐藤勝君) 県立高等学校新整備計画についてでありますが、後期マスタープランは、次代を担う子供たちが、今後ますます変化する社会に的確かつ柔軟に対応して、新しい時代を切り開いていくためには、活力ある環境の中で、豊かな人間性や社会性をはぐくみ、一人一人がその個性や創造性を伸ばし、さまざまな可能性に挑戦できるような学びの環境の整備を進めることが重要との視点から、これからの本県高等学校教育のあり方について、基本的な方向性を示したものであります。
 この場合、高等学校は、通学区域を設けず全県を学区とする専門高校や総合学科高校があるほか、普通高校においても生活圏域をもとに通学区域を設定し、生徒の多様な選択を保障するなど、広域的な視点に立った配置を基本とするものであります。しかしながら、御指摘のとおり、高等学校教育のあり方を考える場合、広く地域の教育実態を把握することが重要であります。このマスタープランに基づく後期計画の策定に当たりましては、関連する地域の小・中学校とのかかわりなどについても総合的に勘案しながら、十分に地域との話し合いを重ね、取り組んでいくべきものと考えております。
 次に、学力向上についてでありますが、学習定着度状況調査の結果によれば、本県における児童生徒の基礎・基本の定着状況は必ずしも満足できる状況にはないことから、この学力向上を本県の最重点施策の一つに位置づけ、さまざまな取り組みを進めてきているところであります。
 具体的には、外部識者による学力向上推進会議がさきに取りまとめた学力向上に向けたアピールに沿って、児童生徒一人一人の学習到達度の実態把握に基づき、それに基づく指導の充実、学習到達度に応じたきめ細かな指導や、発達段階に応じたより専門的な指導の実現などの観点から、本年度におきましては学力向上プロジェクトとして、学習定着度状況調査を拡充して実施したほか、個に応じた指導を推進するための少人数指導や、教員が授業改善のあり方を学ぶわかる授業創造プランなどを実施し、確かな学力の定着を目指しているところであります。
 もとより、学力向上のために何よりも重要なことは、各学校における目的意識をしっかり持った意欲ある取り組みであると考えております。各学校においては、その実態に応じて、創意工夫を凝らし児童生徒一人一人に応じたきめ細かな指導を実施するとともに、自己点検、自己評価を通じて、その成果の検証を不断に行い、授業内容や教育課程、指導方法等を改善していくことが不可欠と考えております。
 今後とも、県教育委員会といたしましては、このプロジェクトを基軸に各学校現場と一体となって、これらの事業を着実に進め、さらなる充実を図り、本県における学力向上に努めてまいりたいと考えております。

〇41番(渡辺幸貫君) 知事にお尋ねします。
 先ほどの答弁の中で歴史的認識の話をしました。私が申し上げたとおり、安眠をむさぼった道徳教育の時代から明治維新があり、富国強兵があって第二次世界大戦の敗戦があり、そしてまた、日本列島改造論で今日の財政破綻があると思っております。先ほどの答弁は、大規模投資は決して間違いではなかった、それらを有効に生かしていけばいいというような答弁があったような気がするのでありますが、それは決して、将来の人口の変化には配慮しつつプライマリーバランスというお話もされた。だけれども確実に次の時代にフリーハンドを渡すことが私は大切だということを先ほど申し上げたんですね。
 要するに、私たちは深く反省をしながら、財政の厳しいことは私たちの世代で、年金だとかいろいろなことも厳しいかもしらぬけれども、いろんなことを我慢しながら財政的なバトンを渡してやらなければ、今の社会は、例えば携帯電話を持ったりIT機器を持ったり、それはもう10年前から予測できない、そういう時代の変化というものに財政というのは常にすぐ即応できるものでありませんから、その時代はその時代の財政の運営をしながら渡すもの、そして今お答えのように、大規模投資は間違いでなかったということも、今議会が始まって知事がおっしゃられたですね。要するに、過去、国の政策に乗ってやり過ぎたという反省と、ちょっと今ニュアンスが違うというか、いや、今までのものはそれなりにというお答えがあったので、ちょっともう少し謙虚に次世代にバトンを渡すような御答弁をいただきたいと思います。それが1点。
 その次に、北東北3県の連携についてでありますが、それなりに3県の魅力を高めることで、宮城県なり東北全体のそういう道州制に関する考え方を促しながらつくっていくことでいいではないかという御答弁のように聞こえました。北東北3県の連携は、民間のつながりも次第に銀行だとかいろんなところで見えてきています。ただ、私が申し上げたいのは、もっと宮城県なり南に対して、私ども県南はもちろんのこと、とっくにつながりが深いのではないかと思うんです。南3県なりそれなりの連携も模索していただくことによって、さらに民間のつながりも促せるのではないかと思うんです。ですから、北3県にそれを高めていって東北を促すという考え方だけではなくて、それも謙虚に、翻って、要するに県民の声を聞くお答えをいただきたいと思います。
 次に、農林水産部長に伺います。
 さっき品種の話がございました。他県なり国の品種もやりたいというお話がございましたけれども、私が聞きたいのは、売れる米づくりの中では流通ということが今後の米政策改革の基本だと。逆に言えば、流通単位ということを大切にしてはどうかというのが私の質問であります。そういう流通単位としての考え方の御返事がなかったように思いますが、ぜひお答え願いたいと思います。

〇知事(増田寛也君) お答え申し上げます。
 まず、初めの人口構成の関係でございますけれども、これで幾つか大規模事業等のお話がございましたが、私、決してそれが間違いでなかったとか、それでいいのだというつもりで申し上げたわけではありませんで、いずれ必要なもの、新幹線なり何なり、先人が我々に社会資本整備で与えてくれたものが多くあって、それをもとに我々も今日の社会を築いているということがあるわけであります。そしてそのために、先人も大変苦労しながら我々に残してくれたと、こういうことがございます。私どもも、東北新幹線なり何なり、次の世代の人たちが確実に生活を送っていく上で、大事なものを見きわめて残していく必要がある。当然、そのときにあわせて、これから人口がどんどん少なくなっていく上で、借金も同じようにその人たちに先送りをするわけにいきません。先人も大変苦労をされた。我々もそうした借金もできるだけ、大変痛みも伴うかもしれませんけれども、我々の中でそれをきれいにして、そして次の世代に、今議員がおっしゃったように、財政のフリーハンドも含めてお渡しすることが私は大変重要なことだと思うわけでありまして、確かに公共事業、景気対策の道具として平成4年から国が使ったんですね。それで膨れ上がったんですが、そこにはいいもの、悪いものが私は随分いっぱいあったと思います。ですから、そういうことを繰り返してはいけないということがございます。それは景気の回復にはつながらなかった。しかし、いい社会資本というものを見きわめて、そういうものは渡していかなければならないという考え方がございますので、そういう選別をはっきりと私どもはする必要があるだろうと。そして景気回復が十分でなかった、したがって税収も上がらない。それをそのまま受けてずっと社会資本整備を縮小させてしまっては、そうしたものを次の世代に残せないわけでありますから、我々が苦労するけれども、しかし、今だったらまだ決断できるといったものが数年前まであったわけでありまして、これからは恐らく非常に難しいことになると思いますけれども、そういうものをできるだけ間に合う段階でやってきたという意味合いも、中にはあったんだろうと私は思っております。全くそういったことだからよかったんだと胸を張るつもりもなくて、謙虚にそこは今までのことを反省しながら、財政もきついので大変県民の皆様には御負担をかけます。大変反省をしなければいけないわけですけれども、ぜひここで私どもも我慢をして、そして財政をきれいにしてそしていい社会資本を残すということで、これから次の世代の発展を期待していきたいと、そういう思いで申し上げたところでございます。
 それからもう一つ、北東北3県連携でございます。これについては、南との今までのつながりが十分にあって、むしろ北東北というのは、今議員がおっしゃったように歴史的に見れば最近出てきた話で、従来の南とのつながりというのは既にあった。それを生かし切るということが大変大事なことだろうと思います。それは、今までも十二分に行われてきただろうと思うんですが、逆に私は、南側の人たちの立場に立って物事を考えていかなければならないと。ここで今までのそうした流れをもう一度立ちどまって、振り返って考えてみなければいけないんだと。本当に北がさらに魅力が高まっていれば、黙っていても南の人たちは私どもとさらに連携を深めようとしていくはずでございます。そうした南との活路ですとか、南との連携を高めることが非常に大事でありますし、それも含めて東北全体としての底上げを図っていかなければいけない。その意味でも、今まで余り手がつけられていなかった北との連携を進めて、そして北も魅力を高め、より南の人たちから見ても魅力のある北東北3県というのをつくっていくことが、南の今までの歴史的なつながりをより太くしていくことにつながるであろうと思っておりますが、そういう具体的な事業も随分進められてきて、これからどういう分野があるのか、また、それも慎重に見きわめをしていかなければならないと思います。今、議員からお話があったように、そういったものを進めていくときには、常に一つ一つ県民の皆さんがどういうことをそのことでメリットとして感じておられるのか、常に検証していく必要がありますので、私はこういった場で申し上げていますけれども、制度論とかそういったことに余りとらわれるのではなく、実態的に意味のある事業を確実に進めていけばいいのではないか。ですから、予算を必要とするものも議会できちっと御判断をいただいて、その上でこうした連携事業を進めていく。そして当然、南のことも十二分にこれから歴史的なものも踏まえて進めていくべきと、このように考えております。

〇農林水産部長(佐々木正勝君) 米の販売のロットの話でございますけれども、価格形成力を高めていきますためには、ロットの確保が基本にならなければならないと思っているところでございます。
 全国の米の品種ごとの生産量でございますけれども、今、コシヒカリがダントツで約320万トン、それからひとめぼれが85万トン、1番目、2番目ということでございます。あきたこまちは飛んで4番目でございますが70万トンということで、これらでかなりの量が占められているわけでございますが、いずれ、本県におきましてもひとめぼれとあきたこまちで大半を占めているわけでございまして、それ以外のササニシキ、かけはし、いわてっこにつきましては面積がかなり小規模でございますので、いろんな用途に応じた販売をしていくということが大事だと思っております。
 いずれ、ロットを確保するためには、1県だけではなかなか難しいということでございまして、少なくとも数十万トン単位のものが必要になるとすれば、本県で開発した品種であってもあるいは他県で開発された品種の中でも、隣県同士あるいは数県の中でロットを確保するというような品種の開発目標を持たなければならないものだと思っておりまして、本県は気象条件が多彩でございますので、平場中山間地域に合ったというような考え方で品種開発に取り組んでいるところでございますが、今後はもっと幅を広めて、そして全体のエリアの中でロットが確保されるような、そういう広域的に適する品種の開発というようなことについても、各県と協力しながら取り組んでまいらなければならないと思っております。

〇議長(藤原良信君) 次に、照井昭二君。
   〔22番照井昭二君登壇〕(拍手)


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