平成16年2月定例会 第6回岩手県議会定例会 会議録

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〇27番(田村正彦君) 政和会の田村正彦です。
 会派を代表して、知事に県政運営に当たっての所感をお尋ねしてまいります。
 その前に、このたびの及川幸郎議員の突然の御逝去に対し、心から哀悼の意を表するものであります。私ごとで大変恐縮ですが、議会初挑戦の際、寒風の中、街頭での応援演説をいただいたことが鮮明に思い出されます。重ねて御冥福をお祈りいたします。
 さて、平成12年、小泉内閣発足により行財政改革が声高に叫ばれ、三位一体改革という言葉があらゆる場面で使われ、聞かされ、平成14年から国の政策として具体化されてまいりました。そういう中での昨年7月、統一地方選挙が実施されました。今でこそ政党によるマニフェストがもてはやされておりますが、我々政和会は、選挙戦に向け、会派としてのマニフェストを県民に示し、小泉内閣の三位一体改革を受け、これからは、まさに国と地方のせめぎ合いが始まり、地方自治のあり方を真剣に議論していかなければならない。そのためには我々地方自治体議員は、県民、住民に不利益をもたらす政策であっても、また、逆に利益をもたらすものであっても、与党、野党を問わず、その賛否は、霞が関、いわゆる永田町の決定に従わざるを得ないという立場から脱却することで真の地方自治が確立されるものであり、まさに今こそ無所属の立場で県民、住民の立場に立ち、産業、経済、そして財政的な不利な状況に置かれている地方の声を知事、市町村長、自治体関係者一丸となって国に対し訴えていくべきであり、そのためにも私ども政和会議員を当選させてくださいと、街頭から、そして各種集会において訴えてまいりました。そういう意味からは、全国知事会、そして各種の全国レベルでの知事の発言、行動は当を得たものであると私は思っておりますし、県外出張が多過ぎるという御指摘もあるようですが、私は、今後とも積極的に出ていっていただき、我々地方の置かれている立場をあらゆる機会を通じ訴えていただき、特に行財政両面における地方自治の真の確立につながる大きなうねりをつくっていただきたいと思うわけですが、知事の所感をお伺いいたします。
 また、これに関連しますが、今まさに国会においては、国の平成16年度予算審議が行われており、バブル崩壊後今日まで、政府においては、一貫して予算が通れば景気がよくなる、そういう一点張りで予算審議に当たってきたのは皆さん御承知のとおりでございます。その結果はどうだったでしょうか。大型補正予算を組んでも一向に景気はよくならず、むしろ悪化の一途をたどって現在に至っているのが現実です。まさに政治のミスリードであり、その影響をまともに受けているのが私たちが住んでいる本県を含めた地方ではないでしょうか。
 そういう中で、昨年12月末、平成16年度の国の予算が決定されるとともに、地方財政対策の概要が示されました。私は、その内容に愕然となる一方、本県及び県内市町村財政にどれほどの影響が及ぶのかとの思いに駆られました。予算案を作成した財務省の資料によれば、平成16年度末には、国、地方をあわせた長期債務残高、いわゆる借金は719兆円という膨大かつ天文学的な額になり、まさに国、地方ともこれまでにない財政危機に瀕しております。この多額の公債残高は、今後県民生活にどのような影響をもたらすのか、不安でいっぱいであります。なぜこのような状態に立ち至ったのか、多くの県民が将来に大きな不安を抱くことはもっともであります。
 県は、昨年6月、平成11年10月に策定した岩手県中期財政見通しの見直し作業に着手し、これまでどおりの財政運営を続けた場合、今後4年間で約1、750億円程度の財源不足が見込まれると発表しました。その発表に県民の多くは驚き、唐突さを感じ、不安を覚えるとともに、県の対応とその取り組みに県民ひとしく注目しているところであります。
 このような状況を解決するため、県においては、行財政のすべての分野において、一切の聖域を設けることなく徹底した見直しを行って、今後見込まれる1、750億円の財源不足を解消するとともに、10年先、20年先を見据え、県民が心の豊かさやゆとりを実感し、安心して暮らせる地域社会、すなわち誇れる岩手の実現を図るためのあらゆる手だてを岩手県行財政構造改革プログラムという形で県民に示しました。そして、知事マニフェストが具体化された40の政策とあわせ、プログラムに掲げられた各般の取り組みの内容が、多少の不満はあるわけですが、平成16年度当初予算に盛り込まれたものと信じているところであります。平成16年度当初予算は、まさに改革の実現に向けた大事な予算であり、県みずから自立と構造改革元年予算と銘打ち、本気で行財政改革に取り組もうとする意気込みであると認識しているところであります。
 しかしながら、現実は非常に厳しい状況にあると言えます。私は、平成13年12月議会における一般質問で、小泉内閣発足以来、政策決定に重要な役割を持つ経済財政諮問会議を初めとする各種会議においての議論からは、我々が望む地方の視点に立った議論があるとは思えないと発言いたしました。今日の三位一体改革の進め方を見ますと、私の指摘はまさに当を得ていたものと確信いたしております。具体的には、今回の三位一体改革による税源移譲額の歳入総額費ランキングを見ますと、上位5県が神奈川、埼玉、千葉、愛知、福岡、下位5県が福井、秋田、徳島、鳥取、島根、まさに地方を切り捨てる、地方の実情を無視した一方的なものであるとの感を強く持ったところであります。
 知事は、先ほど申し上げましたとおり、多方面において三位一体改革の取り組みについて意見を述べ、行動してきたわけですが、その行動が平成16年度の国の予算編成、地方財政対策、とりわけ三位一体改革の動向にどのような成果を見たと考えているのか、また、その成果を踏まえて今後の活動をどのように行っていこうとしているのか、あわせてお伺いいたします。
 また、財政再建に偏った地方切り捨てとも言える国の財政対策に対し、いかに地方の実情を理解させ、地方の意見を取り入れた政策の実現を可能なものにしていくのか、そのための取り組み等についてもお考えがあればお示し願います。
 一方、県においては、平成11年8月策定された岩手県総合計画の財政的裏づけでもある中期財政見通しを同年10月に策定されました。しかしながら、先ほども申し上げましたが、中期財政見通しを昨年6月、そして10月、ことしに入り1月と立て続けに見直しを行い、平成18年には歳入、歳出の均衡――プライマリーバランスを可能とする財政見通しが示されたところであります。この見通しも、国の混沌とした地方財政政策の中にあって果たして可能かといえば甚だ疑問を持たざるを得ないわけで、そのような中、県の総合計画の方向性、位置づけをどうするのか、抜本的な見直しも必要と思われますが、知事の所感をお伺いいたします。
 さきに述べましたとおり、国の三位一体改革により地方財政はますます逼迫し、県はもとより、市町村においても16年度予算編成に当たり大変な苦労をなされているものと認識いたしております。そのような背景もあって、県内各市町村において多少ながらも合併に向けての動きが活発化してきております。合併特例法期限である平成17年3月末までの合併議決に向け、鋭意努力されている地域があることは御承知のとおりであります。また、県においても、行財政改革プログラムにより、より一層の経費の削減、行政の効率化に取り組もうとしております。私ども県議会においても、当然のことながら、みずからそのあり方を見直さなければならない時期であると私は認識いたしております。合併特例法期限内である平成17年3月末までには県内市町村の再編が行われることが予測されることから、それに連動し、県議会定数の削減も含めた選挙区の見直しをすべきであり、それと同時に、公職選挙法第15条で定めている選挙区割り、郡、市による区割り、特に郡については、現実の生活圏から見て、果たして妥当なものか疑問を持たざるを得ません。私は、選挙区割りについては公職選挙法により県議会みずから決定できる事項とされていることから、県民本位の実態に合った区割り見直しをすべきであると考えるものであります。知事は、定数削減、選挙区割りの見直しは当然議会みずからが判断、決定すべきことであるというお考えであろうと思います。あえて知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、公共事業、特に道路を主とした交通に係る公共事業のあり方についてお尋ねいたします。
 国のレベル、地方、県のレベルでも同じことが言えるわけですが、私は、公共工事のよしあしの議論は別として、現実の地域社会、そして行政のあり方を考えた場合、大きな矛盾を感じております。交通の利便性の向上は地域住民の最大の要望事項の一つであり、確かに必要なことであろうと思います。しかし逆に、それが東京一極集中を生み、本県においては盛岡周辺への集中を生んでおります。地方においては過疎化に拍車をかけ、立派な道路ができて人がいなくなったという笑えない話もあります。そして、地方都市においては、購買人口の流出による商店街のいわゆるシャッター通り化が進んでいるのが実態ではないでしょうか。また、交通体系の整備により利便性が飛躍的に向上したにもかかわらず、家畜保健衛生所、農業改良普及センター等、一部においては進展は見ましたが、地方振興局、学校、県立病院等の組織あるいは設置の見直しは一向に進まない現状にあります。多大な予算、税金をつぎ込んで利便性を高めても、その投資効果が地方の活性化、そして組織の効率化に結びつかないジレンマ、劇的な解決策は見出せないと思いますが、こういう現実に対し、知事はどのような思いをいたしているのか、お伺いいたします。
 次に、県政の大きな課題の一つである県立病院のあり方についてですが、昨年11月、医療局により県立病院改革基本プランが示されました。少子・高齢化の進展、国による医療制度改革や診療報酬、薬価基準の見直し、さらに医療を受ける側の意識も大きく変化している中、県立病院のあり方も当然見直しを図らなければならないと私は考えるものでございます。
   〔副議長退席、議長着席〕
 しかしながら、今回の改革プランに対し、関係自治体あるいは労働組合等から反対の意見があることも確かであり、議会においても議員による県民の医療のあり方研究会が設置され、知事に対し基本プラン見直しに係る要望書が出されていると承知いたしております。
 それでは、現実の問題として、県立病院の組織運営が今のままで果たしていいのでしょうか。厳しい県財政の中、平成14年度は145億円余の税の投入がなされているにもかかわらず、18億円余の赤字となっております。税の投入が今後も続けられるものと想定しても、試算によれば、5年後には累積欠損額は172億円余と膨大な額に上り、3年後には内部留保資金がマイナスに転じ、資金繰りにも事欠くという事態が予測されております。そういう状況の中での今回の改革基本プラン及び実施計画の策定であると承知いたしております。
 県立病院の創業の精神として、県下にあまねく医療の均てんをということが高々にうたわれております。現実はどうでしょうか。県立病院が設置されていない町村においては、同じ県民医療の確保のため多大な財政負担をして町村営病院あるいは診療所を維持しているという、私から言えば矛盾と不公平も一方にはあるわけでございます。そのような町村の声として、抜本的な改革を行ってもなお赤字体質が改善できないのであれば、当然県立病院設置市町村においても何らかの財政負担を負うべきであり、それが真の県立病院のあり方ではないのかという意見もあるということを、知事、そして県民の皆様にも御理解いただきたいわけでございます。
 一方、県立病院における医業収益に占める給与費の割合は、平成14年度、実に63%となっており、全国自治体病院の平均61.1%を上回っている状況にあります。また、県立病院職員の給与は一般の県職員とバランスをはかっているとは思いますが、昨今の厳しい経済状況の中で、民間企業においては人件費面を含めたさまざまな経営努力を行っており、民間で働く者から見ると、県立病院職員はまだまだ恵まれているという印象を持っていると思います。私は、民間病院勤務の看護師の皆さんと話をする機会が多い方だと思いますが、看護師さんたちの同窓会、クラス会等では、その待遇の格差にびっくりするというお話をよくお聞きします。経費の中で最も割合の高い給与費の縮減は、県立病院の改革で取り組むべき大きな課題であると考えており、何ら犠牲を払わず、既得権を守るだけでは改革財政再建など到底実現不可能と思われます。
 このように、さまざまな課題を背負った県立病院ですが、知事は、今回の改革基本プランを踏まえ、今後の県立病院のあり方をどのように考えるのか、お伺いいたします。
 次に、本県の産業の位置づけ、重点施策のあり方についてお伺いいたします。
 知事は、昨年10月、誇れるいわて40の政策を県民に示されました。今後の県政の方向性を示す非常に重みのある政策提示であり、知事就任8年の実績を踏まえ、本県の置かれた状況から脱却を図ろうという未来志向型の政策であり、評価するものですが、一方で物足りなさも感じております。なぜかと申し上げますと、県議会議員当選以来、委員会調査あるいはプライベートでも全国各地を視察し、また、その移動を通じ、その地域地域の産業の状況、それを支える生産流通、生活基盤等を視察してまいりました。帰ってくるたびに強く感じることですが、本県の置かれている地域性、風土、交通の利便性、生活基盤を考えた場合、今現在、本県が全国的に誇れる産業、背伸びしなくても他県と十分に渡り合える産業は、農林漁業に代表される第1次産業と十和田八幡平・陸中海岸国立公園、歴史・文化のまち平泉等に代表される観光産業であると思っております。確かに40の政策項目の中には両産業ともその振興策、年度別計画は盛られておりますが、どういう言葉で表現すればいいのか迷うわけですが、文字の表現だけで、その裏にある意気込みが感じられないというのが実感であります。目新しい先端技術開発を推進する施策も確かに重要であろうと思いますが、せっかく先人の皆さんが苦労と工夫を重ねて努力され、他に誇れる産業が現にあるわけで、とりわけ第1次産業、観光産業両産業を取り巻く業種のすそ野は広く、大きく、そこで働く人たちの就業割合も本県の場合大きいものがあります。安定した雇用の拡大、そして貴重な文化、伝統を後世に引き継いでいくためにも、両産業の振興政策を予算の配分も含めて重点化すべきと思いますが、知事の所感をお伺いいたします。
 次に、さきに述べた第1次産業の振興にかかわり、国においては、平成11年、食料・農業・農村基本法を制定し、その具現化に向け、翌平成12年3月、平成22年度を目標年度とした食料・農業・農村基本計画が閣議決定されました。本県の農業施策もその計画に沿った形で現在進行中であるという認識を持っておるわけですが、基本法では、おおむね5年ごとに基本計画を見直すものとされております。既に5年目を迎えようとしており、見直しに向けての作業が始まっており、検討内容の基本的な事項も示されていると仄聞いたしております。その中身をお示しいただきたい。
 また、今回の国による見直しは本県の農業政策に重大な影響を及ぼすものと思われ、農業を営む者の一人として重大な関心と不安を持たざるを得ません。この国の見直し作業の過程の中で、県として意見を述べ、提言すべきと考えるわけですが、そういう機会があるのか、あるとするならばどのような提言をしていこうとしているのか、あわせてお伺いいたします。
 また、平成16年度から始まる国の米政策改革大綱実施に向け、県は、県内各市町村に対し集落ビジョンの策定を求め、県内各集落においてその作業が進められております。県独自の政策であるこの集落ビジョンづくりは、県内農家が集落において本音で話し合える場をつくることとなっております。農家意識の改革を図る意味でも有意義なものであり、高く評価するものであります。その作業の状況と見通しをお示し願います。
 次に、県民多数の皆様が注目しているであろう岩手競馬についてお伺いいたします。
 岩手競馬の状況については、マスコミ報道を通じ広く県民の知るところであり、ここに至った経緯等についてはあえて申し上げませんが、今現在、国においては、中央、地方をあわせた公営競馬の今後のあり方について、競馬法の改正も視野に入れて検討されており、3月上旬には改正法案の国会提出が予定されていると聞いております。既に地方競馬関係者による意見交換会も行われており、どのような改正法案になるのか非常に興味のあるところであります。その改正案次第により、我が県の競馬が存続し得るのか、あるいはし得ないのか、大きな岐路に立たされるものと思っております。岩手県競馬組合あるいは競馬振興公社を初めとする競馬関連団体の厳しい内部改革も当然必要不可欠ですが、それも改正法案の中身次第という側面もあることから、県においては、改正案の中身をどの程度把握されているのか、その改正案が施行された場合、岩手の競馬は、その運営形態は別として、水沢、盛岡両競馬場とも存続する可能性のあるものなのかどうか、お伺いいたします。
 最後に、毎年行われている県による政府の予算要望事項の一つであり、長年にわたる県政課題であり、地域課題でもある旧松尾鉱山の清流化対策と災害対策、県においては北上川清流化確保対策とされておりますが、その対策についてお伺いいたします。
 この問題については、平成9年12月定例会において1度お伺いいたしておりますが、国の対応が進んでいるとは思われないことから、あえて取り上げさせていただきます。平成9年、この演壇から旧松尾鉱山が抱えている問題を提起させていただいたわけですが、その結果、県と総務、経済産業、国土交通、環境の各省と林野庁によるいわゆる5省庁等連絡会が発足し、今日に至っており、その間の県の御努力には敬意を表するものであります。しかしながら、清流化対策はとられているものの、財政負担の問題、そして、補償制度も含めた災害対策はいまだに進展を見ていないというのが現実ではないでしょうか。県は、清流化対策として既に90億円近い財政負担を強いられており、このままでは未来永劫その負担が続くことに加え、坑道には県庁8杯分の300万立方メートルの砒素を含むPH2という超強酸性の水が満杯状態で詰まっております。万が一にも起こらないことを念じてはおりますが、一たん起きてしまったら土壌汚染を伴う大きな災害が想定されており、その復旧は県レベルでの対策では到底対処できない規模であることは容易に想像されます。松尾鉱山の開発は国策の一環として行われた経緯もあり、閉山後の清流化対策、災害対策は国が責任を持って対処すべきであり、その場その場の予算措置ではなくて、法による恒久的な対応がなされるべきと思うわけであります。5省庁連絡会の議論の状況はどうなのか、また、当連絡会のメンバーは担当者レベルとお聞きしておりますが、ランクアップを国に求めるべきと私は思いますが、その考えをお持ちになっているのか、あわせてお伺いいたします。
 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 田村正彦議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、三位一体改革についてでございますが、地方自治の真の確立に向けて、現在、私は、21世紀臨調知事・市長連合会議を初め、地方分権研究会や地域自立戦略会議などに参加しながら、ともすれば改革の動きの鈍い国に対し、地方の側からの積極的な提言活動に努めているところでございます。
 これらの活動は、いずれも地方の自立を地方みずからが考え、その実現に向けて地方から国に提言をして、そして、みずから実践していくことを目指しているものでございまして、三位一体改革を初め、地方が直面している共通の課題について、志を同じくする知事や市町村長、さらには、学界や経済界、労働界、言論界などとも連携しながら進めてきたところでございます。
 その結果、次第に知事・市長連合会議への参加者の輪が広がる一方で、全国知事会も、こうした我々の活動を契機に、昨年7月から闘う全国知事会を標榜して、三位一体改革研究会や市町村財源問題研究会など各種の研究会を設置して、諸課題に積極的に取り組み、国に提言活動を行うなど、この改革のうねりは確実に広がってきておりますけれども、これをさらに大きな改革のうねりにつなげながら、地方自治の真の確立に向け、今後とも積極的に取り組む考えでございます。
 次に、平成16年度予算における三位一体改革の成果、今後の活動についてでございますが、三位一体改革とは、本来、国庫補助負担金の廃止・縮減、それに伴う税源移譲及び地方交付税の見直しをセットで行って、地方みずからの判断と責任により自立的な行財政運営を可能にする真の地方自治の確立のための改革でございまして、これまであらゆる機会をとらえて政府や関係者にその実現を強く要請し、あるいは提言してきたところでございます。
 そうした我々の主張を受けとめて、小泉総理は、昨年6月に骨太の方針第3弾を発表して、11月には平成16年度予算編成に向けて、1兆円の補助負担金廃止等の指示をするなど、改革に向けた意欲を強く打ち出されたわけでありますが、各省庁の抵抗に遭いまして、その方向性がゆがめられて、内容的には極めて不本意な結果になったと考えております。
 特に、国庫補助負担金の廃止・縮減及びそれに伴う税源移譲につきましては、所得譲与税が創設されたものの、補助負担金の削減額に比べると移譲額が大幅に下回った上に、その内容も国の関与を残したまま、ほとんどが採択基準の引き上げや補助率の引き下げといった従前の手法による調整に終始して、地方の自由度の拡大にはつながっておりません。
 また、地方交付税については、本来、国庫補助負担金の廃止・縮減とそれに伴う税源移譲との関連でその見直しの方向が検討されるべきでございますけれども、それと全く関係なく、また、地方の声に耳を傾けることもなく一方的に削減されているわけでございまして、強い憤りを感じているわけでございます。
 今後は、我々地方の側が、みずから地方の実情を踏まえた望ましい財政調整制度のあり方を検討して、骨太の方針第4弾が示される前に、政府や関係者等に提言をしてまいりたいと考えおります。
 次に、地方の意見を取り入れた政策の実現についてでございますが、こうした三位一体改革の本来あるべき姿の実現を確実なものにしていくためには、国民の理解が不可欠でございまして、政府及び関係者への提言、働きかけのみならず、県と市町村が手を携えて、地方の側が一枚岩となって国民的な運動を巻き起こす必要があると考えております。
 そのため、三位一体改革の必要性やその目指す姿、さらに三位一体改革が誤った方向で進められていった場合に、将来的に住民生活にどのような影響を及ぼしていくのかについて、わかりやすく示すとともに、厳しい財政環境のもとで、地方自治体が本気で行財政改革に取り組んでいる実情など、具体的事例を掲げながら、国民、住民の皆さんに、三位一体改革は国民、住民のためのものであるということを理解いただいて、我々を応援していただけるような運動を展開してまいりたいと考えております。
 次に、中期財政見通しと総合計画についてでございますが、自立、参画、創造により夢県土いわてを実現するという総合計画の理念、そして基本目標は、本県の目指すべき姿として、引き続き県政の基本指針として堅持していく考えでございます。
 しかし、今日の厳しい財政状況下、今後とも予算の大きな伸びは期待できませんので、総合計画を推進する具体的な取り組みについては、誇れるいわて40の政策に基づいて、雇用、保健・医療・福祉、教育など、特に県民ニーズの高い分野に重点化を図っているところでございまして、その実現に向けて最大限の努力をしていく考えでございます。
 なお、総合計画の実施計画に掲げております343の主要な事業については、平成14年度まではおおむね順調な推進が図られてきているものの、今後は、必ずしも計画策定当初に想定していた目標に達しないものも出てくることが想定されますので、平成17年度までにその達成状況を十分に見定めながら、その後の実施計画のあり方を検討していきたいと考えております。
 次に、県議会議員定数の削減及び選挙区割りの見直しについてでございますが、この県議会議員定数等につきましては、議員のお話のように、県議会において十分に議論されるべきものと考えておりますが、私の考えをあえてお尋ねでございますので、私もあえて申し上げますと、今最も重要で、また住民の皆さんも望んでいることは、議員の皆さん方個々の議員の活動がより充実されることではないか、このように考えております。そのためには、議員活動を支えるスタッフや政務調査費のあり方など、このサポート体制の強化について具体的に検討していくことが必要でありますし、これらの検討とあわせて、こうした議員定数のあり方あるいは削減についても、総合的に議論されるべきものと考えております。
 また、選挙区割りの基本となっている郡域については、公職選挙法制定時とは社会経済情勢が大きく変化してきておりまして、住民の生活圏域と必ずしも合致していない面があると感じております。現在、県内各地において市町村合併の議論が活発化しておりまして、今後、郡市の区域そのものが大きく変更されると見込まれますので、こうした動きを見きわめていくことが重要と考えております。
 次に、道路を主とした交通に係る公共事業のあり方についてでございますが、広大な面積を有する本県にとりまして、県土の有効活用を図る上で、道路整備は重要な課題でございまして、これまでもそれぞれの地域の資源や個性を生かしたまちづくりやプロジェクトを支援するために、関係機関と連携を図りながら、その発展基盤となる道路ネットワークの構築に向けて積極的に取り組んできたところでございます。
 これらの整備によって、通勤・通学圏域が拡大され、生活圏域の広域化が進んで、地域間交流・連携の活発化が図られるなど、整備効果が着実にあらわれてきているものと認識しております。
 その一方で、さまざまな要因から都市部への人口の集中が進んで、地域経済の衰退による過疎化の進行も懸念されておりますので、今後におきましても、中心市街地活性化対策などとあわせて、救急医療機関や廃棄物処理施設の配置を有効に生かすなど、この多様な地域連携や安全・安心の確保に資する道路ネットワークの整備の効果を、最大限発揮してまいりたいと考えております。
 次に、県立病院改革基本プランを踏まえた今後の県立病院のあり方についてでございますが、県立病院の現状は、医師確保が非常に困難になっている中で、在院日数の短縮による入院患者の減少や薬の長期投与の緩和による外来患者の減少、そして診療報酬のマイナス改定などによりまして、経営が急速に悪化してきているところでございます。
 このようなことから、今般策定した県立病院改革基本プランにおける経営改善の取り組みとしては、まず、医事・調理業務の外部委託の拡大などによります職員数の縮減や諸手当の見直しなどによって、全体として給与費の抑制を図り、さらには、薬品・診療材料等の廉価購入や在庫管理を適正化するなどによって経費を節減するとともに、診療報酬の適正な算定や公衆衛生活動の拡大などによる収入の確保を図るなど、経営全般について、自助努力による改善に取り組むことと考えております。
 また、二次保健医療圏を単位とした医療提供体制については、各医療圏の広域基幹病院に医師や医療器械などを重点的に配置することによりまして、救急医療や高度・特殊医療機能の充実を図って、地域の病院・診療所は初期医療や慢性期医療を担うなど、県立病院間で機能分担や連携を進めるとともに、患者数が減少していることに伴って、二次保健医療圏ごとの病床数についても、その適正化を図ることとしております。
 さらに、検査業務や事務部門についても、広域基幹病院にできるだけ集約して、県立病院群を一体的・効率的に運営することとしております。
 今後の県立病院のあり方については、二次保健医療圏を単位として県立病院群を一体的に運営するとともに、それぞれの広域基幹病院は、市町村立病院等への診療応援や、民間の医療機関等との病診連携を強めながら、救急・高度医療など圏域全体の中心的な医療機関として、その役割・機能を果たしていくべきものと考えております。
 次に、本県産業の位置づけと重要施策のあり方についてでございますが、農林水産業は人の命を支える食料を供給するという重要な使命を担っておりますが、その生産活動を通じて、美しい郷土の保全や農山漁村地域に根差した伝統文化の継承など、国民生活をさまざまな形で支えるかけがえのない産業であると認識しております。
 また、これからの観光は、これまでの自然景観に加え、その地に根づく歴史、民俗、そして芸能の文化素材などをうまく活用することで、訪れた人々に心の感動や豊かさ、安らぎなどを与えて、さらには地場産業などとの連携を図ることによって、地域全体の振興へとつながる21世紀のリーディング産業であると考えております。
 このような認識から、私は、誇れるいわて40の政策の重点施策として、スローライフを基調とした食と森の先進県を掲げまして、この二つの産業の融和した振興策などを積極的に展開していくこととしてございまして、ただいま提案している平成16年度当初予算においても、重点的に取り組むこととしたところでございます。
 具体的には、我が国の主要な食料基地として、消費者の信頼を裏切らない、日本でトップクラスの安心できる食料・食品の供給を目指して、残留農薬検査の充実強化やトレーサビリティーシステムの積極的な導入に取り組んでまいります。
 また、首都圏と本県との顔の見える関係を構築していくため、首都圏を対象にモデル校を選定して、いわて食材給食や岩手の食文化の紹介などを通じた食育出前授業に取り組んでまいります。
 さらに、経済が拡大する中国など東アジアをターゲットに、新たな市場の開拓を図るため、県農林水産物のブランド化を進めて輸出促進に取り組んでまいります。
 また、世界の注目する国際観光文化県を目指して、平泉の文化遺産の平成20年の世界遺産登録に向けた運動や、平成17年にNHKで放映予定の大河ドラマ義経とタイアップした情報発信に取り組むとともに、北東北3県の連携事業や海外事務所などを活用しながら、東アジアとの観光交流にも積極的に取り組んでまいります。
 このように、平成16年度においては、農林水産業と観光産業の将来を見据えた布石を打ったところでございまして、今後これらの施策を着実に推進することによって、全国に誇れるたくましい産業へと育っていくものと考えております。
 次に、国の食料・農業・農村基本計画の見直しについてでございますが、国における見直しの内容については3点でございまして、一つは、プロ農業経営を支援する品目横断的な仕組みへの移行、二つ目は、農地・農業用水など資源の保全・増進政策と環境を重視した持続的な農業生産への転換、三つ目は、意欲と能力のある担い手の育成・確保と優良農地の確保及び有効利用の促進、これらの主要3課題等についての検討でございまして、今後、これら検討の結果を踏まえ、平成17年3月を目途に新たな基本計画を決定することと伺っております。
 また、国に対する提言の機会につきましては、本年4月に、各都道府県の担当部長を集める政策提案会が開催されることとなっておりますので、その場で本県としても具体的な提案をすることとしているほか、国の見直し作業の動きを注視し、必要に応じて独自に提案してまいりたいと考えております。
 県としての提言についてでございますが、国において検討されている内容に加えまして、担い手を対象とした所得補償制度とあわせて、兼業農家が、それぞれの経営志向に応じた役割を担いながら、地域が一体となって農業生産等に取り組むことにより、集落機能が維持・増進される仕組みづくりとその活動への支援、また、食に対する消費者の関心の高まりを背景として、消費者と生産者の双方向の視点に立った施策の展開などにつきまして、現在、具体的な提言を行うべく検討を進めているところでございます。
 次に、集落水田農業ビジョンの策定状況と見通しについてでございますが、約2、200のビジョンを目標として、ほぼ全集落で話し合いに入り、各集落においては策定作業が進められております。
 現時点では約半数の集落においてビジョンが策定済みでございますが、策定されていない集落にあっては、引き続きビジョンづくりに向けた大詰めの座談会が開催されておりますので、県としても、市町村や農協等と一体となって集落に入り、できるだけ多くのビジョンが策定されるよう支援しておりますが、時期に余りこだわらずに、十分議論して内容のあるものにしていただきたいと考えております。
 新たな米政策への移行に当たりましては、改革の成果を上げるため、地域の特色ある資源を積極的に生かしながら、目標と戦略を持って取り組むことが重要であるとの考えからこの集落ビジョンの策定を進めているところでございますが、これほど多くの集落において地域農業の将来について話し合いが行われたことは、これまで余り例がなかったことでございます。
 既にでき上がったビジョンの中には、中身の濃い、しかも将来展望が開かれるものが多く策定されておりますので、県では、国の産地づくり対策の交付金とあわせ、新たに県独自に創設することとしております水田農業構造改革支援事業によりまして、適地適作を基本とした作目再編を推進するなど、集落ビジョンの実現に向けた実践活動を支援してまいりたいと考えております。
 次に、岩手競馬についてでございますが、まず、競馬法改正法案の内容について、これは、農林水産省が現在までに公表しております競馬法の一部を改正する法律案の骨子によれば、法改正の趣旨は、近年の競馬の売上額の減少に伴う競馬主催者の厳しい事業収支の状況を踏まえ、一つ目としては、競馬の実施に関する事務の委託に係る規制緩和、二つ目としては、勝馬投票法の追加など、それから三つ目として、地方競馬主催者に対する必要な支援等、こうした措置を講じようとするものと聞いております。
 地方競馬にかかわる内容としては、1点目、競馬の実施に関する事務について、中央競馬は都道府県等に、また、地方競馬は中央競馬会等にそれぞれ委託することが可能となること、2点目は、地方競馬主催者が連携して事業収支の改善を図るための計画を共同で作成し農林水産大臣の認定を受けた場合、その計画に基づく事業に対し、地方競馬全国協会からの補助を受けることができること、3点目は、地方競馬主催者が事業収支改善計画を作成し、農林水産大臣の同意を得た場合、地方競馬全国協会に対する交付金の一部の交付が猶予されることなどが挙げられておりまして、今後、改正法案及び関係政省令の中で詳細が明らかになっていくものと考えております。
 また、改正法案が施行された場合の岩手競馬の存続の可能性については、岩手県競馬組合が、歳入不足額が年々増加して厳しい経営状況にあると受けとめ、現在、懇談会を設置して、この岩手競馬のあり方について議論をしていただいておりまして、来月には最終報告が取りまとめられる予定と伺っております。
 県としては、水沢、盛岡両市とともに、この懇談会の報告を踏まえて、また、先ほど概要を申し上げましたが、この国の制度改正の内容について十分に検討を行って、そして、岩手競馬の方向性を早急に見きわめたいと考えております。
 次に、北上川清流化確保対策についてでございますが、県ではこれまで、危機管理や財源確保などについての五つの課題ごとに関係省庁と協議を重ねて、この協議結果については、関係省庁の担当者レベルで構成する北上川清流化対策5省庁等連絡会で、共通の認識を得ているところでございます。
 また、個別協議で解決困難となった場合等は、改めて各省庁の局長等をメンバーとした5省庁会議の再開を求めていくこととしているところでございます。
 現在のところ、法により事業主体を明確化することや、恒久的な制度を確立することにつきましては、いまだ関係省庁の理解を得られるには至っておりませんが、去る1月30日に開催された今年度の連絡会においては、協議を継続する必要性については理解を得られておりますので、今後もこの協議を継続して、そして、制度論が具体化するような場合に、改めて5省庁会議の再開も求めてまいりたいと考えております。
   

〇議長(藤原良信君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時24分 散 会


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