令和6年2月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録 |
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〇22番(福井せいじ君) 自由民主党の福井せいじです。
自由民主党を代表して質問させていただくことに関し、先輩議員初め皆様に感謝申し上げます。 まず初めに、本年1月1日に発災した能登半島地震で亡くなられた方々の御冥福をお祈りし、被災された方々にお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復興がなされますことを祈念いたします。 さて、本日、私が質問させていただく項目は、人口減少問題と岩手県中期財政見通しについての2項目です。 まず初めに、人口減少問題について伺います。 昨年末、国立社会保障・人口問題研究所は、2050年の推計人口を発表いたしました。2050年の日本の総人口は2020年比2、146万人減の1億468万人になるということです。 一方、岩手県の人口は、2020年の121万534人から5年ごとに7万人程度減少し、2035年までに100万人を割り込み、2050年には78万3、242人となる推計です。 ここで知事に伺います。日本が人口減少に陥った主たる要因は何か、知事のお考えをお聞かせください。 この後の質問は質問席から行いますので、よろしくお願いいたします。 〔22番福井せいじ君質問席に移動〕 〔知事達増拓也君登壇〕 〇知事(達増拓也君) 福井せいじ議員の御質問にお答え申し上げます。 日本の人口減少の要因についてでありますが、高齢化が進行する中での長年にわたる少子化の継続が要因と考えており、内閣官房参与、山崎史郎氏によると、社会経済の変化による晩産化、晩婚化から出生率が減少し、その後の産み戻し、いわゆるキャッチアップが起こらず、少子化につながったとされています。 また、山崎氏は、これまで少子化から脱却する3度のチャンスがあったものの、適切な対応がなされなかったと分析しており、具体的には、1970年代後半から1980年代の出生数の減少が始まった時期に、出生数はいずれ回復するだろうと楽観的見通しだったこと、1990年代前半に政府が少子化対策に初めて取り組んだが、質量ともに十分ではなく、子育て制度拡充に関係者の理解が得られなかったこと、1990年代後半から2010年代前半に第3次ベビーブームが期待されたが、経済危機が発生する中、晩婚化の進行、未婚者の急増により出生率が過去最低に落ち込んだことを指摘しています。 これらの指摘のとおり、少子化対策の不足により、日本の現在の人口減少に至ったものと認識しております。 〇22番(福井せいじ君) 私も、今の知事の答弁とおよそ同じような理解をしております。特に、さまざまな意味で少子化が懸念される中で、その理解が得られなかった、あるいは国民共通の認識が共有されなかったということも、一つ挙げられると思います。 今お話になった中で、男女とも未婚化、晩婚化にあるというのがまず一つでありますが、それは、女性の社会進出の時代に、仕事と家庭が両立しがたかったために起こっていると私は思います。そしてまた、その両立を妨げているのは、固定的な雇用慣行や男女の役割関係にあるのではないか。それゆえに、企業社会と家庭、地域両面でのシステムの変革が必要であると私は捉えています。 そこで、これからはそういった自然減対策あるいは社会減対策について伺いたいと思います。 先ほど話しました社会保障・人口問題研究所の推計を見ると、県当局が目標としている2040年に本県人口を100万人程度確保することは、私は非常に厳しい状況に置かれていると感じます。 最初に、自然減対策から伺います。本県の自然増減は、1999年以降に減少に転じ、2019年以降は1万人以上の減少を続けて、2033年は1万4、269人の減となっています。 さて、将来も現在の人口を維持していくためには、合計特殊出生率が2.07以上でなければならないのですが、岩手県の合計特殊出生率は2022年、1.21です。県は、2026年度目標値を1.58以上に設定しています。 これまで国や県は、出生率を上げるために子育て支援を中心にさまざまな施策を展開してきました。その成果は徐々にあらわれてきていると思います。しかし、私は、子育て支援はあくまで出口戦略であると考えています。子育て支援の前に、人口減少対策の入り口である婚姻率をいかに上げるか、つまり結婚組数を上げていかなければ、子育て支援にはつながらないということです。知事も某誌の新春インタビューで、出生率の急減を調べると婚姻数の急減があると言及していましたが、私もそう思います。 厚生労働省の人口動態統計によりますと、日本の婚姻数は、1972年の約110万組がピークでした。しかし、2022年の婚姻数は約51万組と、50年間に59万組の婚姻数が減少しているのです。当然のことながら、子供が減っていくのは当たり前と感じます。 岩手県でも、近年の数字を見ると、2018年が4、439組、人口1、000人に対し3.6%の婚姻率でしたが、2022年は3、508組、3.0%の婚姻率で、これは全国で44位です。全国平均と約1%の開きがあります。岩手県は最も婚姻率が低い現状にある。 そして、女性の平均初婚年齢が2022年、29.2歳で全国43位、さらに、15歳から49歳までの日本人女性人口が2022年が19万2、000人で全国42位。婚姻率、平均初婚年齢、日本人女性人口とも全国最下位に近い現状です。 そこで、人口減少対策の入り口である婚姻率の向上がまず大切だと考えますが、どのような施策で婚姻率を上げていくか、知事のお考えをお聞かせください。 〇知事(達増拓也君) 婚姻率の向上でありますが、本県における少子化要因の分析では、出生数減少の主な要因として有配偶率の低下があり、国の出生動向基本調査によると、独身者が未婚でいる理由は、適当な相手とめぐり会わない、まだ必要性を感じない、結婚資金が足りないが主なものとなっています。 こうしたことから、有配偶率の向上に向け、高校生など若者へのライフプラン形成支援に取り組むほか、令和6年度当初予算案において、“いきいき岩手”結婚サポートセンターのマッチングシステムへの性格診断や趣味検索機能の追加によるマッチング精度の強化、オンライン登録や自宅閲覧機能の導入による利便性の向上、会員の交際初期の活動を後押しするため、交際成立カップルへの食事券の配布、結婚に伴う経済的負担の軽減のため、29歳以下の新婚世帯に対する県独自の支援金10万円の上乗せ補助などの事業を盛り込んだところであります。 県といたしましては、これらの取り組みを通じて、市町村や関係団体等と連携しながら、出会いの機会のさらなる創出や結婚新生活支援の強化を図り、県民の結婚したいという希望がかなえられるよう総合的な結婚支援を推進してまいります。 なお、若い世代の実質賃金や可処分所得の低いことが有配偶率の低下につながっているという指摘もありますので、これらの対策については、この後、社会減対策についてのお尋ねの際にお答えいたします。 〇22番(福井せいじ君) 結婚するに当たって、収入とかそういったさまざまな環境を整えることにちゅうちょする若者もいるかと思いますが、私は、まず出会いの場をつくっていくことが大切であると思っています。 そういった意味では、i―サポ―いきいき岩手結婚サポートセンターがあるということで、i―サポのキャンペーンなどによって会員登録数がふえている、これは非常に評価することであると思います。その中で、私は、1回お見合いしたからといって、なかなか結婚に踏み切れないのではないか。やはり人生を左右する結婚ですから、1度会ったからといって、すぐ結婚ということには結びつかない。私もそうでしたし、達増知事もそうだったと思うのですけれども、やはり何度か交際を重ねるとか出会いを重ねて、その中で、お互いの共通認識を持っていく、価値観がどれだけ共有できるかということが必要だと思うのです。 そういった意味では、i―サポで出会った、その後のフォローが私は大切と思っています。自分自身の所得あるいは結婚してからのさまざまな支援というよりは、出会ってからのサポートをいかにつくっていくかが必要だと思うのです。 このサポート体制、私は、もうはっきり言いますけれども、例えば、出会いのところまではi―サポ、それからは、例えば成婚率の高い民間事業者に委託してもいいのではないかと考えますが、知事、いかがでしょうか。 〇知事(達増拓也君) i―サポでマッチングが成立しても、そもそも会わないというケースもあるので、先ほど食事券による活動後押しということを申し上げたところでありますけれども、その後、交際を重ねていく際に、議員御指摘のような、専門家の支援をかりるということもあり得るのだと思います。 〇22番(福井せいじ君) そういった意味で、今のi―サポの体制プラス、結婚支援の事業者に対する委託ということも考えてもいいと思いますので、ぜひともそういった形をつくる、仕組みをつくるような前向きな検討をいただきたいと思います。 そして、5、000円の食事券ですけれども、果たしてそれがいいのかどうかということも、御検討いただきたい。5、000円の食事券をもらったからといって、もしかしたら店を選べないかもしれないとか、5、000円の食事券がどれだけ有効なのか、ここら辺ももう一度ぜひ御検討いただきたい。お金よりも出会った後のフォローが、その気にさせることが私は大事だと思いますので、ぜひ、そういったこともお考えいただきたいと思います。 続きまして、出生率向上の取り組みについて伺っていきます。 先ほどもお話ししましたが、岩手県の合計特殊出生率は、2022年、1.21で、2026年の目標値が1.58以上です。この目標をいかにして達成するかが問われています。 出生率を上げる方策の一つには、出産から大学卒業までの育児費用の負担軽減があります。幼稚園から大学まで、公立学校、私立学校などの選択など、さまざまな場合の推計額がありますが、政府や民間事業者の想定では、養育費、教育費を合計して、出産から大学卒業まで1人当たり約2、000万円程度の子育て費用がかかると想定されています。 岩手県は全国トップレベルの子育て支援を展開していると言っておりますが、子供を2人出産した場合、この支援策のもとでは、出産から大学卒業までの子育て費用は幾らになるかお示しください。 〇知事(達増拓也君) 国の少子化社会に関する意識調査によると、子育てに係る経済的費用の大きなものとして、学習塾や習い事の費用に次いで保育に係る費用が挙げられており、食費や医療費よりも高くなっています。 このことから、県では、これまでの人口減少対策に加えて、今年度から、第2子以降の3歳未満児を対象とした所得制限のない保育料無償化や在宅育児支援金の創設など、全国トップレベルの子供、子育て支援策をスタートしたところであります。 出生から大学卒業までの子育て費用につきましては、進学先などにより教育に係る費用に違いがあり、一概に算出することは困難でありますが、議員御指摘の政府等の推計データでは、1人当たり約2、000万円程度となっており、一つの参考になるものと考えます。 本県独自の取り組みである保育料無償化による第2子の保育料の軽減額を一定の要件のもとで算出すると、1人当たり80万円余の軽減が見込まれるところでありますので、先ほどの数字と合わせると、その差し引きが出てくることになると思います。 このほか、産後ケア利用料の無償化や多子世帯に対する県営施設利用料の減免などの支援策によっても、さらに子育て費用の軽減が図られるものと考えております。 また、国は、昨年末にこども未来戦略を閣議決定し、今後3年間で、児童手当の抜本的拡充、高等教育のさらなる無償化などに取り組むとしていますので、国が全国一律で行う施策と地方が行う事業を組み合わせながら、子供、子育て施策の強化を図ることができると考えております。 〇22番(福井せいじ君) 今、費用についてはお示しいただいたのですけれども、ここで、費用にかかわって、先ほど賃金の関係は社会減のときにお答えしたいという話だったのですが、賃金のことについてここで言及させていただきたいのです。 今お話ししたように、子供を産み育てるには非常にお金がかかるわけです。そこで賃金の話にフォーカスしたいのですけれども、今の岩手県の賃金、令和4年度の平均賃金は、岩手県の場合、男性が275.5万円、女性が215万円、男女間の賃金格差が78%。全国平均を見ると、男性は342万円、女性は259万円。平均賃金を岩手県と全国で比べると、岩手県は全国の80.9%という状況です。 結婚し共働きすると、平均年収は、岩手県では約490万円。490万円で20年間働くと約9、800万円。これでは、子供を2人産み育てるには非常に不安があるのではないかと私は思います。そこで、賃金を何とかして上げていかなければいけないと思うのです。 そこで聞きたいのが、賃上げについて知事の考えがもしあればお聞きしたいのですけれども、いかがでしょうか。 〇知事(達増拓也君) 賃上げは今、国を挙げて進めていこうという非常に重要なテーマであります。物価高騰が生活を圧迫しているわけでありますけれども、賃上げによりまして、可処分所得がふえ、消費を行うことができ、かつ、それがふえていくと、それは関係する企業の収入になって、それら企業はさらに賃上げが可能になるという好循環を経済につくっていくことが、国を挙げて取り組まれておりますし、岩手県においても重要と考えております。 正確に思い出せないのですけれども、昨年12月の補正予算でも、賃上げを促すような企業の取り組みに対して、支援金を出す形の物価高騰対策など工夫しているところです。 〇22番(福井せいじ君) 突然賃上げの話になってしまったので失礼しましたが、今、奇しくも達増知事が言及した税金の流れです。例えば、事業者が生産を上げることによって利益が上がってくる。利益が上がると法人税が増加する。利益が上がると今度は賃金を上げる。賃金を上げると県民税が増加する。賃金が上がると消費税に回っていく。消費も上がると、また地方消費税が上がっていく。こういった税金の好循環をつくることは非常に大事だと私も思っています。 そういった意味では1人当たりの生産性を上げていくことが大事だと私も思いますので、ぜひ、そういった取り組みを県もしていただければありがないなと思います。税の循環をよくすることによって賃金が上がっていく、そういったサイクルをぜひつくっていただければと思っております。 次に、合計特殊出生率の向上について、そしてまた、さらに働き方改革の推進も大きなポイントですので、ここについてお聞きしたいと思います。 まず、育児休業取得についてでありますが、日本の育児休業制度は先進国の中でも充実していると言われていますが、使いにくさが問題視されています。2023年7月の厚生労働省調査によると、育児休業取得率は、女性が80.2%、男性が17.18%でした。また、ある就職あっせん紙の調査によると、育児休業取得日数は、女性の8割以上が半年以上に対し、男性の6割が2週間以内、4割が4日以内でした。企業規模など調査対象に幅があるとは思いますが、総じて女性に比べて男性が育児休業を取得しにくい環境があるということです。 また、女性が育児休業を取得して不安を抱えている問題として、復職後のキャリアアップ、勤務時間制限、昇進のおくれなどが挙げられました。 このような問題の解決と同様に、女性の正社員雇用率の増加、男女間の賃金格差の解消、就業環境の整備が、女性の県外流出の増加の抑止、さらには出生率の向上につながると考えます。 そこで伺います。このような状況で仕事と子育ての両立を支援するため、男女問わず働きやすい職場環境づくりのためにどのような取り組みをしているのでしょうか。また、女性活躍推進に関し、県はどのような取り組みをしているか伺います。 〇知事(達増拓也君) まず、働きやすい職場環境づくりについてでありますが、本県では、労働者が100人以下の企業等を対象に、次世代育成支援対策推進法によって努力義務とされている労働者の仕事と子育てに関する一般事業主行動計画の策定を促すため、インセンティブとして、いわて子育てにやさしい企業等認証制度を実施しています。 認証を受けた企業等は、昨年12月末現在237社と年々増加しており、この認証制度によって、本県において多数を占める中小企業等での一般事業主行動計画の策定が促進され、育児・介護休業法を上回る休暇制度等の導入が図られており、仕事と子育ての両立に向けた環境整備の推進に一定の効果があるものと考えています。 また、男女とも、仕事と子育ての両立や多様な働き方など将来のライフプランについて考えてもらうため、新婚世帯や結婚を予定している方などを対象に、出産や妊娠、育児休業などの制度活用、育児、家事の分担などをテーマとしたセミナーを開催しております。 そして、女性活躍推進についてでありますが、県ではこれまで、いわて女性の活躍促進連携会議を初め、さまざまな取り組みを行い、いわて女性活躍企業等認定制度は500社の大台に近づいており、国のえるぼし認定企業数も東北地域で1位となっております。 今年度は、新たに外部専門人材を委嘱して啓発活動を強化したことにより、企業の経営層のマインドが変わりつつあるほか、足元の取り組みとしては、社会保険労務士の派遣によるハンズオン支援によって、えるぼし認定の取得を目指す企業をふやすことにも成功しているところです。 来年度は、さらに女性デジタル人材育成やマッチングに力を入れることで、多様な働き方や所得の向上を目指すほか、企業とコラボした家事、育児等の負担を見直す啓発キャンペーンも予定しており、これまで以上に女性が活躍できる環境の構築に取り組んでまいります。 〇22番(福井せいじ君) 私は、先ほど知事がお話をしたいわて子育てにやさしい企業等認証制度、あるいはいわて女性活躍企業等認証制度の認証企業数がふえていることは評価したいと思いますが、本来の目的は認証した企業の数ではないです。私は、そういった意味では、認証して、どれだけ子育て環境や女性活躍が成果としてあらわれているか、これをぜひ調べていただきたいし、それを認識できるようなフォローをしていただきたいと思うのです。 例えば、女性の正規雇用率の向上であるとか女性の管理職のシェア向上、育児休業取得率の向上であるとか、先ほど言った育児休暇期間の伸びなどをしっかり検証しなければ、本来の、女性の就業環境の改善であるとか出生率を高めようという意欲にはつながらないと思います。そういった認証した後のフォローあるいはその実施状況をどのように把握していくかを教えていただきたいのですけれども、いかがでしょうか。 〇知事(達増拓也君) 認証企業に対しまして、一律に休暇等の取得実績などの報告を義務づけているものではありませんので、本庁あるいは広域振興局の県の職員が当該企業を訪問する機会などに、ヒアリングをするなどして状況を把握しているところであります。 議員御指摘のように、全ての企業から休暇取得実績等の報告を求めることにつきましては、いわてで働こう推進協議会や女性活躍促進協議会などで、県商工会議所連合会、商工会連合会、中小企業団体中央会など団体の代表にも出てきていただいていますので、そうしたところの意見を参考にしながら、制度の改良に努めてまいりたいと思います。 〇22番(福井せいじ君) 今、制度の改良というお話をいただきました。私は非常に大事なことだと思うのです。女性活躍を推進するには、女性の役割は家事、育児、男性の役割は仕事といった今までの性別役割分業意識の改革が必要だと思うのです。そういった意味では、経営者の方々にこういった認証制度を普及するというのも必要ですけれども、その成果として、女性が本当に働きやすい環境にあるのか、あるいは子供を産み育てようという意識が起きてくるのか、それを成果としてぜひ検証するような取り組みを推進していただきたい。 例えば、本当にサンプリングでいいので、この認証制度をとった企業の女性職員に対するアンケートの実施であるとか、そういったものにぜひ取り組んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 社会減少については、今、質問しようと思ったのですけれども、後にしたいと思います。 そこで、次は、人口減少対策についての市町村との連携についてお聞きしていきたいと思います。 人口減少対策について、自然減対策について、今さまざま質問、そして提案をさせていただきましたが、ここで、人口減少対策の推進体制について伺いたいと思います。 岩手県人口ビジョンにおいて、何度もお話ししてきましたが、2040年に100万人程度の人口を確保することを展望し、また、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略において、令和8年度社会減ゼロの目標を掲げています。 この数字は市町村との合意の上に設定されているのでしょうか、これを知事に伺います。 〇知事(達増拓也君) 現行の岩手県人口ビジョンは、令和元年に改訂された国のまち・ひと・しごと創生長期ビジョンと、同年策定の国の総合戦略を踏まえて将来人口を推計したものであり、岩手県ふるさと振興総合戦略は、国の改訂やいわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランの内容を踏まえて改訂したものであります。 これらの目標達成に向けては、県と市町村が連携、協働することが重要でありますことから、策定及び改訂に当たり、市町村と意見交換を重ね、合意形成を図ってまいりました。 また、これまでの成果や課題、市町村の意見等を踏まえ、より具体的で実効性ある施策を盛り込んできたところであり、県と市町村の間で、目標や課題などは常に共有されていると考えております。 〇22番(福井せいじ君) 今のお話ですと、国が掲げた施策にのっとって各市町村もつくっている、そしてまた、県も策定したということですが、この数字については、そうすると100万人というのは、市町村の目標の積み上げと考えていいのでしょうか。そしてまた、令和8年度、社会減ゼロ、これもやはり市町村の取り組みの積み上げとして考えていいものかお聞きします。 〇知事(達増拓也君) 基本的には、国のビジョンと総合戦略に基づき、例えば5年間で東京圏への人口流入を10万人からゼロにする、それに対応して岩手県の人口の転出超過ゼロといった形で、国のビジョンと総合戦略に沿った形で県のビジョンと総合戦略はつくられているところです。 〇22番(福井せいじ君) 私が伺いたいのは、例えば、2040年、人口100万人程度の確保というお話ですと、33市町村それぞれが2040年に人口維持の目標を立てている。それの積み上げがこの100万人になっているのかということをお聞きしたいのですけれども、いかがでしょうか。 〇知事(達増拓也君) 住民票を所管する市町村であれば、個別具体的な住民に関して、この人は何歳になってもこの町にいるようにするとか、この人は卒業後どこに行きたいと言っているからというような数字の積み上げによって人口の目標をつくるのではなくて、国のビジョンや総合戦略も、国民の意識調査等で、持ちたい子供の数ですとか、そこから目標出生率などを出したり、そして、先ほど申し上げたような東京圏への人口流入ゼロという目標、そういうビジョンと総合戦略のほうから、それぞれ県、市町村がつくっていくというたてつけと理解しております。 〇22番(福井せいじ君) 簡単に話をしますと、例えば、33市町村で3万人ずつ確保しようとすると99万人。そういった積み上げの上に100万人があるのかということを聞きたいのですけれども、いかがでしょうか。 〇知事(達増拓也君) 日本で行われている地方創生、今はデジタル田園都市国家構想ということになっているのですけれども、市町村ごとに何か割り当てを義務づけて人口の動きをコントロールしようとなっているのではなくて、先ほどから述べていますように、国としてのビジョンや総合戦略があり、それを踏まえて県としてのビジョンと総合戦略があり、また、市町村もビジョンと総合戦略を決めているということだと思います。 〇22番(福井せいじ君) わかりました。何となく抽象的に国がビジョンを掲げた、それを県も市町村もあるべき数字を設定しているということですね。 〇知事(達増拓也君) いわゆる地方創生が始まる前は、国は、出生数とか、あとは社会増減、県境を越えた人の移動に関する目標を掲げたことは基本的になかったわけでありまして、地方創生の中で初めてそういう目標が設定されるようになったのです。ただそれは、積み上げと言い始めますと、結局は国民一人一人の結婚、出産とか、県境を越えた、あるいは市町村境を越えた移動をコントロールするような話になりかねないわけですので、国のビジョンと総合戦略であって、いわゆる他の分野で使われるような計画という言葉は使われていないということだと思います。 〇22番(福井せいじ君) 知事の言いたいことはわかりましたが、人口減少、例えば100万人の人口を確保したいという思いがあるのであれば、私は、市町村と一体となった目標実現に向けて取り組む体制が必要だと思うのです。 そういった意味では、人口減少対策で私が調べた中では、全国の市町村には非常に多くの成功例が見られます。例えば出生率の達成であるとか、あるいは目標とした人口を維持している、そういった市町村が多く見られます。 私は、市町村の取り組みと、その目標とする数の積み上げが県と一緒になれば、目標実現に向けた取り組みの体制であるとか目標実現の可能性がより一層高まるのではないかと思うのです。 そういった意味で、目標数字の達成について各市町村と合意し、県から資金と人を投入して伴走型の人口減少対策にともに取り組んだほうがいいのではないかと思って、先ほど、合意しているのかという言葉が悪かったのかもしれませんが、そういった形での市町村の目標の積み上げと県の目標とする数字を一致させて、一緒に取り組むほうが実現性が高いと私は考えました。 そこで、県から資金と人を投入して伴走型の人口減少対策を加速すべきだと思っているのですけれども、知事、いかがでしょうか。 〇知事(達増拓也君) 伴走型の人口減少対策というのはそのとおりでありまして、岩手県としていろいろな機会に申し上げていることは、人口が減少する自然減、社会減それぞれ、生きにくさ、望むような就職がしにくいとか、望むような賃金が得にくいとか、そして、婚姻しにくい、出産しにくい、子育てしにくい、それは今、目の前にある非常に重要な課題であるので、これは県、市町村が力を合わせて、それぞれの暮らしの現場や仕事の現場は基本的に市町村の中にあるわけですから、そこを県も、予算的にも人員的にも市町村にさらに寄り添う形で来年度やっていきたいと考えております。 〇22番(福井せいじ君) わかりました。令和6年度予算案を見ますと、地域の実情を踏まえた少子化対策という中に、新規事業として、地域課題分析型少子化対策支援事業というものが設けてあります。資金の投入としては、これまで地域経営推進費のうち5、000万円を人口減少対策として確保していましたが、令和6年度は、さらに小規模市町村支援分で2、000万円を上積みし、合計7、000万円の予算が計上されています。私は、これは少額ではありますが評価するところであります。 しかし、今お話しした中で資金という観点からいうと、この7、000万円は、地域経営推進費ではなく、人口減少対策費として明確に使途を限定して、例えば人口減少対策費という形での市町村支援の財源確保にならないか。 それから、もう一つ、先ほどの人の支援でありますけれども、私は、33市町村に対して、県から人口減少対策推進プロジェクトチームをつくって、各市町村に、例えば人口減少対策監というものを位置づけて派遣したらいいのではないか。つまり、お金と人を各市町村に張りつけて、加速化して、令和8年度の社会減ゼロとか、あるいは2040年の100万人程度の人口確保をともに実現していくのだといった取り組みをしていただきたいのですけれども、いかがでしょうか。 〇知事(達増拓也君) 県と市町村の間では、県・市町村トップミーティング、県・市町村連携推進会議、さらには市町村長、副市町村長などのトップレベルによる重要施策の情報共有、意見交換の場づくり、また、部局単位での課長会議などの開催によって、市町村と連携した体制をつくっているところであります。 また、来年度から、広域振興局を拠点に、市町村と一体となった集中的かつ効果的な人口減少対策を推進するため、本庁と各広域振興局に特命課長を設置する予定であります。そして、特に専門的な人材を必要としている小規模町村には、人的、財政的支援を一体的に行って、より重点的に支援していこうとしているものであります。 〇22番(福井せいじ君) 先ほど私は、二つの固有名詞をお話ししました。県から、地域経営推進費ではなくて人口減少対策費と位置づけること、それからもう一つは、人口減少対策監というか、そういった役職をつけて、人とお金を市町村に支援していくことを何とかできないかということを提案しましたので、ぜひ前向きに捉えて御検討いただきたいと思います。 次に、県は、2040年に100万人程度の人口を確保することを目標としております。さて、100万人県民の社会はどのような姿なのでしょうか。人口減少対策とともに取り組まなければならない政策が、100万人県民の社会構築であると私は考えています。 社会保障・人口問題研究所では、2040年の人口構成比について、15歳から64歳の現役世代の人口は2割減少し、全人口の3人に1人が65歳以上の構成になるとしています。 私は、岩手県は、全国水準より現役世代の割合が少なく高齢者割合が多い人口構成になると考えています。そのような人口構成になったときに想定される事態は、例えば、農業を営む人が2020年比7割減少し、農作物の価格が高騰する、建築後50年以上たった老朽化した道路、橋が75%にも上り、修繕できずに通行どめが多発する、介護職員が不足し介護施設の運営ができなくなる、運転士不足で路線バスが廃止され移動できない、地方公務員が8割しか確保できず行政サービスの維持が困難などなど、私たちの暮らしに大きな影響が出てくると想定されています。 このような事態に備え、知事は、100万人県民の岩手県をいかに構築していくか、その構想、お考えを伺います。 〇知事(達増拓也君) まずは、人口減少の背景にあるさまざまな生きにくさを生きやすさに変えることに力を尽くしていくわけでありますけれども、人口減少のもとで中長期的に維持、向上を図るべき分野、医療、介護、福祉、教育、地域公共交通、産業、雇用環境等、これらについては、市町村長との意見交換なども踏まえながら、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランの10の政策分野の中で施策を推進しているところであり、また、三つのゾーンプロジェクトや活力ある小集落実現プロジェクトなどにおいて、地域の特性や課題を踏まえた長期的な観点に立った取り組みを展開しているところであります。 また、県事業における協働を通じてのほか、産学官で組織するいわて未来づくり機構などによって、岩手県の将来的な展望を議論いただいて、それを県民に共有しながら、それぞれが必要な取り組みを進めていくということを図っているところであります。 将来想定される100万人程度の人口減少社会に備えて、いわて県民計画(2019〜2028)を推進し、希望郷いわての実現を目指していきたいと思います。 〇22番(福井せいじ君) 2040年まであと本当にわずかであります。そういった中で2040年100万人の人口の社会をつくるということは、私は容易なことではないと思っています。例えば、15%あるいは20%体が小さくなっていく。今と同じ洋服を着ていたのでは、格好も悪いし機能的にも体にはマッチしないと思っています。 そういった意味では、早くその想定される事態に備えて、さまざまな取り組みをすることが必要だと思いますので、今まさに2040年、岩手県民100万人の社会をつくる取り組みにぜひとも力を注いでいただきたいと思っております。人が少なくなっていく中で、どのような形でやらなければいけないものをやっていくかということは非常に大切なことだと思いますので、ぜひともお考えいただきたいと思います。 次に、中期財政見通しについてお話を伺っていきたいと思います。 昨年9月末に岩手県中期財政見通しが公表されました。令和9年までの傾向についての当局の見解は、歳入においては、人口減少などを背景とした普通交付税の減少の影響、実質的な一般財源が減少する傾向にあり、一方、歳出に関しては、給与改定や定年引き上げによる人件費の増加や高齢化の進行等に伴う社会保障関係費の増加のほか、公債費も増加傾向に転じる見込みとしています。 このような傾向から、令和6年度以降は102億円から153億円程度の財政収支ギャップが生じ、その全額を財政調整基金の取り崩しにより対応した場合、残高は令和9年度に枯渇するとしております。 この財政見通しによると、令和5年度当初予算では211億円あった財政調整基金は、令和9年度には97億円の赤字になります。 一方、知事は、昨年の知事選挙における公約において、県財政の健全化と必要な財源の確保の両立を掲げ、その内容としては、収支均衡予算の実現、プライマリーバランスの黒字維持が盛り込まれています。 私は、このような状況であれば、歳出の抑制と歳入の増加を図ることが必須であると考えます。今後5年間のうちに歳出で100億円程度の抑制、歳入で100億円程度の増加がなされなければ、収支均衡予算、つまり知事の公約は実現できないと考えますが、知事の考えを伺います。 〇知事(達増拓也君) 本県を含む地方全体の一般財源総額は、国のいわゆる骨太の方針によって令和6年度までは同水準を確保するとされており、令和7年度以降も、国の方針に大きな変更がない限り、地方交付税などの一般財源が大幅に増加することは考えにくい状況と認識しております。 このような中、令和6年度当初予算編成においては、歳出面で義務的経費や社会保障関係費が増加する中、事務事業評価を活用した33億円の縮減を行う一方、四つの重点事項には、昨年度を実質的に上回る840億円を重点措置し、歳入面では、人口減少の影響等により地方交付税を含む実質的な一般財源が減少する中で、長期資金運用を初めとした基金の活用やふるさと納税のさらなる魅力化、電気事業会計からの繰り入れなど、あらゆる歳入確保の取り組みにより162億円を確保するなど、めり張りある予算を編成したところであります。 その結果、財源不足額は、中期財政見通しの102億円から22億円改善し、財政目標である80億円を下回る水準まで圧縮いたしました。 希望郷いわて、そしてその先へ歩みを進めていくためには、安定的な行財政基盤の構築が不可欠でありますので、現在、施設の適正管理、組織のあり方、歳入の確保などの具体的な検討に着手しており、令和10年度の収支均衡予算の実現に向け不断に取り組んでまいります。 〇22番(福井せいじ君) さまざまな歳出の抑制策あるいは歳入の増加に取り組んでいると思いますが、ここで一つ提案したいのは、交付税配分の考え方ですけれども、国では、地方団体が標準的な行政水準を確保できるよう、全国自治体の総額を確保して、自治体に総額配分をしているということでありますが、私は、人口基準だけではなく、面積基準も勘案して、これから標準的な行政水準を確保できるように強く求めていくべきだと思います。 そういった意味では、私は、知事が直接霞が関に行って交渉すべきだと思いますが、いかがでしょうか。 〇知事(達増拓也君) 持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会の議論に基づく報告書にも書かれていますように、やはり岩手県の面積の広さ、土地の広さということで、学校関係、病院関係に他の小さい県よりも予算は多くかかっているわけであります。そういったことを交付税算定に盛り込むよう、毎年の予算要望の中で政府に求めておりますし、全国知事会の中でもそういう議論を続けていきたいと思います。 〇22番(福井せいじ君) 終わります。ありがとうございました。(拍手) 〇議長(工藤大輔君) 以上をもって福井せいじ君の一般質問を終わります。 次に、名須川晋君。 〔31番名須川晋君登壇〕(拍手) |
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