平成16年6月定例会 第8回岩手県議会定例会 会議録

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〇21番(樋下正信君) 自由民主クラブの樋下正信でございます。
 通告に従い順次お尋ねいたしますので、知事初め関係部局長には誠意ある御答弁を期待するものであります。
 まず初めに、農林水産部長に農業振興についてお伺いいたします。
 本年は、WTO農業交渉が国際貿易ルールの枠組み合意に向け大詰めの議論が行われております。また、国内においても、国は、平成14年12月に策定した米政策改革大綱に基づき、市場重視、消費者重視の視点に立った新たな米政策をスタートさせ、一方においては、消費者の食の安全・安心への関心の高まりや農業担い手の減少、高齢化、耕作放棄地の増加などを背景とした食料・農業・農村基本計画の見直し作業を通じて政策全般にわたる農業改革が行われようとしており、農業を取り巻く環境は、今まさに大きく変わろうとしております。農業を営んでいる県民にとっては、このような大きな転換期を迎え、大変な御努力と御苦労をされているものと認識しております。
 その中にあって、私の地元である盛岡市上鹿妻第一地区は、非農家も含め全65戸が一体となって集落を組織化し、農業生産、産直、交流、文化活動を長年にわたって取り組んだむらづくり活動が評価され、国の豊かなむらづくり表彰事業の推薦地区として取り上げられており、去る6月14日には審査委員が当地を訪れ、現地審査が行われたところであります。昨年は、この表彰事業において遠野市の綾織地区が天皇杯を受賞されているようですし、ことしは私の地元が推薦されておりますので、大変うれしく、ぜひとも入賞してほしいと願っているところであります。
 私は、農業・農村を取り巻く環境が大きく変わろうとしている今日において、私の地元のように地域住民が一丸となって取り組むことは、農家個々の力では対応できないような難局も乗り越えることが可能となるとともに、効率的な農業生産や所得の向上にもつながり、さらには非農家も含めた地域コミュニティーの活発化に寄与するなど、今後の農業・農村の振興に極めて重要なものと考えます。
 そこでお伺いしますが、県では、このようなむらづくりを進めるため、農家や集落組織等に対する指導について今後どのように取り組まれていくのでしょうかお聞きいたします。
 次に、本県のリンゴ栽培は、矮化台木を使用し、無袋栽培によりリンゴの果実にたっぷりと太陽を浴びせて、糖度が高く、みつが入った高品質な果実を生産し、収穫後速やかに年内には大部分の販売を終了する体制をとっている産地であります。その中で、鮮度保持剤スマートフレッシュを用いた長期貯蔵技術の研究をされていると聞いておりますが、この技術が開発されればリンゴの長期販売が可能となり、農家の経営上もメリットがあるものと考えております。県内で研究されているこの貯蔵技術について、現段階で県はどのように考えているのか、また、県としてどのように対応をしていかれるのか御所見をお伺いします。
 次に、入札制度についてお伺いします。
 平成4年度以降、国、地方とも公共事業を中心とした景気対策を重視した財政運営を継続的に行ってきたにもかかわらず、デフレの長期化による経済不況、また、企業の経営破たんなどによる失業率の増加など、本県においてもその影響は深刻であります。このような状況の中で、公共事業の大幅な削減や深刻な県内経済の低迷などを背景に建設業者間の受注競争はますます激化しており、過度な安値受注、いわゆるダンピング受注による手抜き工事などの品質の低下、下請や資材業者へのしわ寄せ、労働環境の悪化などの問題が指摘されるところであり、県議会に対しては、県内の工事関係団体から低価格入札の専門工事業者へのしわ寄せ防止などといった要請がなされているところであります。県では、良質な社会資本を整備するに当たり、このようなダンピング受注についてどう対策を講じているのかお聞きします。
 また、このような建設業者間の激しい受注競争は入札価格の大幅な低下を招き、その結果、調査基準価格を下回った業者は、その入札で真に施工できるかどうかを判断する低入札価格調査制度の対象となり、さらに調査対象業者数の増加と相まって調査期間が長期化している現状にあります。この低入札価格調査により、建設業者及び発注者の双方に、例えば調査に従事する職員の人件費や、そのほか調査に要するさまざまな費用など新たなコストが生じておりますが、県では、このことについてどのように考えているのかお伺いいたします。
 次に、臨時会についてでありますが、6月7日に開催された臨時会のあり方等に関し私の意見を述べ、質問いたします。
 まず、臨時会のあり方についてでありますが、臨時会の招集は、地方自治法第101条第1項の規定により、議員定数の4分の1以上の者から会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集の請求があるときは、当該普通地方公共団体の長はこれを招集しなければならないとされております。今回の臨時会の招集に当たっては、法律上には問題がなかったとしても、そのあり方に疑問が残るものと考えます。
 その第1点は、招集理由が国会での法案成立前に早急に意見書を提出する必要があったとのことにつきましては、この数年の間に同様な意見書が提出されていること、また、今6月議会招集を2週間後に控えた時点であったこと、さらに、招集請求の時点と臨時会後に、ある会派が配布したビラの内容にあたかもその会派が意見書を提出したと受け取れるものがあり、このことから、政党色が前面に出たものと思わざるを得ないものでありました。我が会派は、意見書の内容においては、県及び県民にとっての必要性を認め、意見調整の上、賛同したものであります。今後の臨時会のあり方においては、少なくとも事前に各会派の合意が得られるような案件にすべきであり、議会運営委員会等で何らかの検討をするべきものと考えます。
 臨時会のあり方の疑問点の第2点は、6月7日に本会議において、結果的には、知事、副知事が出張用務をキャンセルして議会に出席したわけでありますが、私は、定例本会議であれ臨時会であれ、県民にとって重要な案件を審議する場であり、議会の意思イコール県民の意思となるものであると考えますことから、議会の総意として我々の代表である議長が判断するものであり、今回の例は議長権限なのか、また、その判断が議長の独断で行われたとすれば議長の不信任にもつながるような行為と思われ、大いに疑問が残るところであります。その経緯において、知事は、招集に当たり、前もって議長から本会議に出席しなくてもよい旨話があったことから出張の日程を入れた。出席が必要なら最初から伝えてほしかったとマスコミでコメントをしております。このことについて文書か口頭で言われたのか、その事実関係と、どう受けとめたのか知事に改めてお伺いいたします。
 次に、いわて森のトレー生産協同組合の補助金返還問題について2点お尋ねします。
 森のトレーの補助金返還問題につきましては、返還命令額の3分の1を組合からの回収を待たずに国に返還したいとして提案があり、総務委員会と農林水産委員会の連合審査など慎重な審議を経て、平成16年2月議会で議決したところであります。この問題は、今、訴訟の場に舞台が移り、すなわち組合は、機械メーカーのトリニティ工業を相手に補助金返還分を含む損害賠償請求の訴訟を盛岡地裁に提訴し、県や久慈市は補助金を回収するためその訴訟を支援している、そのような構図となっております。県民もこの訴訟については大きな関心を寄せているところであり、その経過がどのような状況になっているのかお知らせ願います。また、今後の見通しはどのようになっているのかあわせてお知らせ願います。
 第2点目は、県は、3月29日に森のトレー問題で指導監督が不十分であるとして担当職員10人を処分しましたが、知事は、3月30日の報道によりますと、森のトレー事案の処分について、こうした事態を厳粛に受けとめ、今後、国に対する責任も明らかにしつつ、再発防止に努めながら県政の信頼回復を図っていくとコメントを発表しておられます。この国に対する責任も明らかにしつつという部分についての意味するところを改めてお聞かせください。
 次に、県営施設の運営等についてお伺いします。
 我が国では、国、地方を問わず財政状況が厳しさを増している中で、近年、民間の資金、ノウハウ、視点を活用した社会資本整備や施設運営が行われるようになってきました。平成11年7月にはいわゆるPFI法が制定され、民間資金による公共施設等の整備などの道が開かれたところであります。
 このような中で本県では、本年度、廃棄物処理モデル施設、いわゆる第2クリーンセンターの事業化に向けたPFI可能性調査を行うと聞いております。私は、本県初のPFI事業に大いに期待を寄せるものでありますが、調査の取組状況並びに現時点における採択の可能性についてお伺いいたします。
 次に、県では、昨年10月に策定した行財政構造改革プログラムにおいて、官と民、県と市町村との適切な役割分担と官民協働化の推進を掲げたところであり、官と民との適切な役割分担を進める具体策として、民間でできることは民間にゆだねる、事務事業の外部委託を進める、公共施設の管理運営の外部委託を進めるとしているところであります。このうち、公共施設の管理運営につきましては、昨年6月の地方自治法の一部改正により指定管理者制度が創設され、民間法人による管理が可能となったことから、県が所有する公共施設の管理運営については、民間サービス向上の視点から民間法人への外部委託を進めるとしているところであります。
 県が設置する公の施設のうち、現在、公共団体や出資法人などに管理委託している施設は57施設で、これら既存の公の施設の管理運営主体については平成18年9月までに指定管理者制度に移行していく必要があるとのことであり、今議会に公の施設に係る指定管理者の指定の手続等に関する条例案が提案されておりますが、この条例の位置づけと今後の具体的な取り組み、スケジュールをお示し願います。
 また私は、この指定管理者制度を積極的に導入し、県民に対し、料金が安く、かつ良質な施設サービスを行っていく必要があると考えております。そのためには、特にもNPOの積極的な参画、連携が望まれるところであり、指定管理者制度が導入されることにより、NPOと行政との協働の機会がふえることになると思いますが、NPOと行政との協働についてどのように考えておられるのかお聞かせ願います。
   〔副議長退席、議長着席〕
 さらに、盛岡駅西口地区に建設中の複合施設については指定管理者制度を導入すると聞いております。行政とNPOとの協働の推進の観点からNPO法人も指定管理者の対象となる方向で検討が進められているものと推測されますが、県のお考えはいかがでしょうか。
 また、複合施設には、既存あるいは新規の公共施設が入居する予定となっており、視聴覚障害者情報センターや障害者団体が運営する民間施設が計画されていると聞いておりますが、現時点における計画をお知らせ願います。
 次に、観光政策についてお伺いします。
 平成14年12月1日、東北新幹線の八戸延伸が実現し、北東北を訪れる観光客の増加等による経済の活性化、いわゆるはやて効果が期待されたところでありますが、現実には、平成15年の本県の観光客入込数で見ますと、対前年比1.5%の減少という結果に終わりました。これについては、長引く景気の低迷やレジャー志向の多様化などにより全国的に観光需要が低迷し、また、値段の安い海外旅行との競合が続く中にあって、昨年は、記録的な冷夏、台風、スキー人口の減少など悪条件が重なったこともあり、健闘したという見方もできるかと思います。しかしながら、長らく東北新幹線のターミナル駅として北東北の玄関口の役割を果たしてきた盛岡駅が通過駅になったという事実を踏まえ、今後の本県の観光の振興を考えますと、従来にも増して観光客受け入れ態勢の整備や観光資源の開拓が必要になるのではないかと思います。
 特に、盛岡広域観光を考えますと、大型バスの駐車場が少ないと思われます。例えば、有名な石割桜を見にこられた観光客の方々や観光バスの運転士さん等に尋ねましたら、岩手公園下の道路に駐車をさせられるか、あるいは現地に観光客をおろし、観光客の観光時間が終わるまでそのバスが市内を循環するというような方法をとっているということでございます。
 そこでお伺いしますが、県は、盛岡広域における観光政策についてどのように考えておられるのでしょうか。特に、今申し上げました大型バスの駐車場等についての御見解と盛岡市との連携はどのようになっているのかお尋ねいたします。あわせて、盛岡南部不来方城跡を中心とした観光活用策についても御所見をお伺いいたします。
 次に、学校・家庭教育についてお伺いします。
 平成17年度政府予算提言・要望についての保健福祉部少子化対策の推進の項目に関連しますが、児童虐待に対するケア確立のための体制強化、子育て環境の整備の充実など要望、提言がなされておりますが、自分も小・中・高・大学を経て現在に至っておりますが、特に幼少期や小学生のときは、よく近所の仲間と石けりやくぎ刺し、ビー玉遊び、夏は川で泳ぎ、山に行ってはカブトムシ、セミをとり、冬は雪の中、田んぼに迷路をつくり、鬼ごっこ、お握りを持ちゴム長靴でのスキーなど、自分たちでできる昔からの遊びに毎日のように興じていました。私がそんな時代を過ごしていたころ、いたずらをすれば近所のおじさん、おばさんにしかられ、暗くなるまで外で遊んでいれば、早く帰りなさいと言って心配してくれた近所の人たち、学校で先生にしかられたと親に話せば、悪いことをしたんだからとさらにしかった両親、私は、こんな人たちに囲まれて育ちました。しかし、現在の学校教育、家庭教育、近所づき合いの中での教育、この三つの教育の歯車がうまくかみ合っていないのではないでしょうか。6月1日には、佐世保市の小学校で給食時間に同級生の女子児童にカッターナイフで切りつけ、死亡させるという本当に信じられない痛ましい事件などもありました。
 そこで県として、このような事件なども含めて、過去から現在の教育についてどのようにとらえているのかお聞かせ願います。また、先生方の指導のあり方、PTA、父母との連携についての御所見をお示し願います。
 次に、スケートボードの施設についてお伺いします。
 近年、生活水準の向上や生活様式の変化、余暇の増大等に伴い、県民の健康や体力に対する関心がますます増大しているほか、高齢化の進行に伴い、県民が生涯を通じて健やかな生活を営むためには、生涯にわたりスポーツ、レクリエーションに親しむことが極めて重要であると考えております。スポーツは、体を動かすという人間の本源的な欲求にこたえ、爽快感や達成感を感じ、さらには楽しさや喜びをももたらすとともに、体力の向上やストレスの発散、生活習慣病の予防など心身の両面にわたる健康の保持増進に寄与するものであり、その振興を一層促進していく必要があると考えております。
 スポーツは、競技力に重点を置いたものから、生涯スポーツとして自分のスタイルに合わせて行うものなど多種多様なものがありますが、近年、若者を中心に流行しているものに、スケートボード、いわゆるスケボーをよく目にすることがあります。アメリカが発祥の地と言われており、ファッションも個性的で、流行に敏感な若者たちに受け入れられ、近年では地区大会や世界大会が開催されるまでに発展し、その様子はテレビで中継されたりもしておりますが、県としてどのような認識をお持ちかお聞きいたします。
 また、スケートボード愛好者の一部であると思いますが、歩道や公共地等で練習している傾向を目にし、事故など、通行者や公共施設の他の利用者に対する影響が懸念されるところであります。全国的には、市町村あるいは民間の施設としてスケートボード場が整備されてきており、本県においても、愛好者及び周辺環境の安全並びにスポーツの健全な発展を促す意味からも、例えば雫石川の河川敷未利用地等を活用し、そのような場所を提供するようなお考えがないかお聞きいたします。
 次に、農業振興地域整備計画の変更手続についてお伺いします。
 現在、盛岡市が県に対し農業振興地域整備計画変更の事前協議を行っております。これは、5年ごとに農業の現状について基礎調査をもとに本計画を見直すものであります。具体的には、各種マスタープランの変更のほかに、例えば農家の規模拡大に伴う農業倉庫の建設、道路・沿道活用に伴う用途変更、新規農業者の分家住宅建設により農用地区域からの除外などに伴う計画の変更であります。今回、盛岡市内71件の農振農用地区域から除外案件が出ておりますが、これらは、現在、事前に市、市農業委員会、県により調整しているところであります。ところが、通常のスケジュールでは本年3月末で計画に対する知事同意となるものが、いまだに調整しているものであります。早くて本年8月の知事同意であり、申請者は、当初予定より建築申請が大きくおくれ、支障が出ております。なぜここまでおくれているのか原因をお知らせください。また、事前協議の調整経過の内容をあわせてお知らせください。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。答弁の内容によっては再度質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 御清聴まことにありがとうございます。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 樋下正信議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、臨時会について何点か聞かれております。
 事実関係についてでございますけれども、議長からのお話でございますが、これは、口頭でなされたものでございます。
 それから、どう受けとめたのかということでございましたけれども、地方自治法では、知事等は、説明のために議長から出席を求められたときには議場に出席しなければならない、このように規定されているところでございます。これは、議会の審議の自主性を確保する観点から、執行部は、出席要求がなければ当然には議場に出席するものではない趣旨とされているものでございます。特に出席を求めないということで今回はございましたので、そのように受けとめまして、その趣旨に沿って、議場への出席は予定せずに出張することとしたところでございます。また、後日になりまして議長から出席の要求がございましたため、私も副知事も予定しておりました出張を取りやめまして、議場へ出席したものでございます。
 次に、いわて森のトレー生産協同組合補助金返還問題につきまして、国に対する責任も明らかにしつつと、このように私コメントしたわけでございますが、これにつきましては、責任ということで次の三つが考えられると思っております。なお、これにつきましては3月に県議会でございました合同審査会で申し上げているものでございますが、一つは、国庫補助事業等の実施に当たりまして適正な指導監督や当該事務執行上の必要な検証を十分行わなかった責任を明らかにすることでございます。既に本年の3月29日に関係職員の処分を行ったところでございますが、私知事自身の責任につきましては、訴訟への対応や再発防止策など本事案の残されたさまざまな問題に対応しながら、私の任期中には明確にしなければならないと考えております。いま一つは、いわて森のトレー生産協同組合が事業の機械納入業者でございますトリニティ工業株式会社を相手取って提起しております損害賠償請求訴訟の勝訴に向けて、久慈市と連携をとって全力を傾注することでございます。いま一つは、事業を実施したいわて森のトレー生産協同組合、さらに会計検査院に指導監督の責任を問われた県や久慈市のみならず、国にも責任の一端があることを明らかにすることでございます。
 国の責任については、国と県の主張は依然として対立をしておりますけれども、県は国に相談しながら補助事業を進めてきたものでございまして、引き続き事業実施過程における国の責任について主張を続けていく、このようなことでございます。本年の3月29日に発表いたしましたコメントの中で国に対する責任も明らかにしつつと申し上げた趣旨は、こうした三つの責任をこの事案への対応の過程で明らかにしていくということでございまして、そのことをコメントで表明しようとしたものでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長より答弁させますので、御了承お願いいたします。
   〔農林水産部長今泉敏朗君登壇〕

〇農林水産部長(今泉敏朗君) まず、農家や集落組織等に対する指導についてでありますが、今日の農業・農村は、人口の減少、高齢化や農産物価格の低下等に伴う生産額の減少により、活力の低下が懸念されておりますが、こうした中にあって、議員から御紹介のありました盛岡市の上鹿妻地区、さらには遠野市の綾織地区などのように、担い手農家はもとより兼業農家や非農家も含めた、地域住民が一体となった話し合いをベースとして、作物の集団栽培、産直の開業、花の植栽による環境美化、郷土芸能の伝承活動など、生産面から生活面に至るさまざまな活動が展開され、地域全体が活性化しているすぐれた事例が出てきており、農業・農村を取り巻く環境が厳しいときこそ、このような地域の自主的な話し合いによる主体的な村づくりは、ますます重要になってくるものと考えております。
 本県では、新たな米政策への転換を契機として、今後の水田農業の改革に向けた集落水田農業ビジョンを策定するため県下一円で、担い手の明確化、生産の組織化、新たな生産性の高い転作作物の導入、売れる米づくりをどうするかなどについて活発に話し合いが行われたところであります。県としましては、このような話し合いが単に水田農業の改革にとどまることなく、女性や高齢者による農産物加工・産直販売、都市住民との交流、非農家も含めた農村景観等の維持・整備など住民全体を巻き込んだ村づくりにつながっていくことを期待しているところであります。既に県内では、約9割の集落で集落水田農業ビジョンが策定され、活発な実践活動が始まっておりますので、県といたしましては、集落みずからが創意と工夫を凝らしながら主体的にそうした取り組みを進めていけるように積極的に支援を行い、この中から第2、第3の上鹿妻地区あるいは綾織地区が生まれてくるように努めてまいりたいと考えております。
 次に、リンゴの新しい鮮度保持剤についてであります。議員からお話がありましたスマートフレッシュというのは商品名でございますが、これは、その果実の熟成に関与するエチレンの作用を妨げることによって、果実の軟化をおくれさせ、長期にわたって品質を保持できる薬剤を含有するものでありまして、最近アメリカにおいて実用化され、日本でもリンゴ、ニホンナシ、カキの植物成長調整剤として登録が申請されており、本県におきましては、農業研究センターが現在、品種や処理条件等による効果の違いなどについて試験を行っているところであります。この薬剤の利用により、通常の冷蔵施設でもさらに長期保存ができることや、温度管理が困難な流通・販売段階での品質低下を抑えることができることから、リンゴの流通上有利な面もあると考えられますが、一方では、この薬剤は収穫後の果実に処理するものであり、安全・安心を強く求めている消費者にどのように受け入れられるのかということもありまして、その対応については慎重を期す必要があるのではないかと考えているところであります。
 次に、いわて森のトレー生産協同組合の損害賠償請求訴訟の状況についてでありますが、いわて森のトレー生産協同組合が本年3月3日に提起したトリニティ工業株式会社を被告とする損害賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が去る5月14日に開かれ、その後、県及び久慈市は、損害賠償請求訴訟においてトレー組合を支援するため、5月の連休明けにそれぞれ補助参加の申し出を行ったところであります。これに対しまして被告から双方の申し出に対して異議が述べられましたが、その後、久慈市の補助参加に対する異議が撤回されたと聞いております。いずれ県と市の補助参加を認めるかどうかは裁判所が最終的に決定することになります。なお、次回口頭弁論は7月16日に開かれる予定となっております。
 今後の見通しについてでありますが、いずれ県といたしましては、県、原告及び久慈市の担当弁護士を中心に調整を図りながら、勝訴に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、農業振興地域整備計画の定期見直しの変更手続についてであります。
 定期見直し手続がおくれた原因は、農業振興地域整備計画の定期見直しにおきましては、農業生産に関する各種計画、農家の就業計画等の計画、いわゆるマスタープランの変更と農用地区域からの除外案件に係る検討を同時並行的に進めていくものであります。しかし、盛岡市からのこれらの事前協議書類の提出が、本来であれば昨年10月に予定されていたわけでありますが、事前協議のマスタープラン関係書類が提出されたのは昨年11月、そのときにはその除外案件に係る検討資料が未提出でございました。除外案件に係る書類が提出されてきたのは本年3月でございますが、そのときには当該除外案件に係る図面が未提出であったというようなことでございまして、すべての書類が整ったのは本年3月下旬となった。そこから本当の事前協議が始まったということでございまして、全体の手続がおくれているのはこういった事由によるものであります。
 いずれ今後、県と盛岡市の間で意見、それからその回答、さらに回答に対する再意見、また、それに対する再回答といったやりとりを行っておりますが、事前協議を終了した後、盛岡市において公告縦覧・異議申し立て、これは40日間の法定期間でございます。それから、県への法定協議・同意、法定公告、こんなことになりますが、これらに要する見込み期間は約2カ月であり、すべての手続が終了するのは8月末ごろになると思われます。農振農用地区域からの除外事務につきましては、担当者会議を開催するなどして、農地制度の確実な周知やスケジュール管理の徹底を図っているところでありますが、今後におきましても、今回の事例を反省点といたしまして、さらに市町村と連携しながら、事務の迅速化に努めていきたいと考えております。
   〔総務部長時澤忠君登壇〕

〇総務部長(時澤忠君) まず、ダンピング受注の対策でございます。
 採算を度外視しました低価格での受注は、工事の品質の低下や下請へのしわ寄せなどのおそれがあるばかりではなく、建設業の健全な発展を阻害することにもなりかねないと考えておりまして、県では、昨年の2月に直接工事費等の費目が一定の割合を下回った場合に失格とするその数値的判断基準、あるいはその着工後の追跡調査制度、こういったものを導入したところでございまして、さらに、ことしの1月でございますが、履行保証割合を1割から3割へ引き上げる、前払い金を4割から2割へと引き下げる、あるいは失格となった場合のペナルティーの強化、こういった低入札対策の強化を行ったところであります。引き続き低入札に対する適正な調査、こういったものを行ってまいりますので、これらを通じて不適切な受注の排除に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、低入札価格調査の調査期間でありますが、この低入札価格調査制度によります調査は、調査対象者だけではなく、下請予定業者あるいはその資材納入提供業者などへの調査を実施するということもありますので、所要の調査期間を要するということになるわけでございますが、関係者が多数に上る場合もありますし、また、同一業者による低入札や調査対象者が増加しているといったこともありまして、調査期間が長期化しているといったことが現状でございます。したがいまして、工事の早期着工に向けまして、手続の簡素化、効率化を行うことによりまして――標準調査日数というのがございます――これを30日から20日に短縮するということといたしまして、この8月以降に公告します案件から適用することとしたところでございます。引き続き調査期間の短縮あるいはその入札コストの縮減に向けて努力をしてまいりたいと考えております。
 次に、指定管理者制度の導入につきましてのお尋ねがございました。
 昨年改正されました地方自治法では、指定管理者制度を導入するに当たりまして、指定管理者の指定の手続、指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲その他必要な事項を条例で定めるとされております。そのうち今議会に上程をしております条例におきましては、指定管理者の指定の手続及び指定管理者に共通する一般的事項について定めようというものでございまして、指定管理者が行う管理の基準、業務の範囲につきましては、今後それぞれの公の施設の設置条例を改正するということで対応しようと考えているものでございます。
 現在、各部局におきまして所管をしております個々の施設の管理のあり方につきまして検討しているところでございまして、今上程をしております条例が制定されますと、指定管理者制度の導入に向けた環境が整うということになりますので、条件が整った施設から個別の施設設置条例の改正を行いまして、順次指定管理者制度に移行していくということを予定しております。最も早く移行するものは来年の4月となるのではないかと見込んでおります。
   〔環境生活部長中村世紀君登壇〕

〇環境生活部長(中村世紀君) 公共関与による廃棄物処理モデル施設、いわゆる第2クリーンセンターの事業化に向けたPFI可能性調査についてでございますが、現在、調査専門会社に委託いたしまして施設に対する需要調査、PFI事業参入に関する意向調査などの実施に向けた作業を進めておるところでございます。今後これらの調査の結果を踏まえ、施設の規模、機能等を精査の上、PFI事業の導入可能性に関する検討を行い、今年度中にその可否について判断をしたいと考えております。
   〔地域振興部長山口和彦君登壇〕

〇地域振興部長(山口和彦君) まず、指定管理者制度におけるNPOと行政の協働についてでありますが、今回の指定管理者制度は、公の施設の管理・運営について民間事業者等の能力やノウハウを幅広く活用することが有効であるとの視点で導入されたものでございますが、まさにNPOとの協働の対象になり得るものであることから、NPOとの協働を推進する上での一つの契機につながるものと考えておるところでございます。
 次に、盛岡駅西口複合施設の管理運営につきましては、外部委員で構成いたします管理運営計画検討委員会を設置し、さまざまな観点から御意見や提言をいただきながら、利用者の視点に立った管理運営計画の策定に向けて取り組んでいるところでございます。この中で複合施設の管理は、業務の範囲や管理基準を確定した上で、指定管理者制度の導入を考えており、公募手続によって選定することとしております。したがいまして、指定管理者の公募には、NPO法人も含めて民間事業者や団体から応募提案があることを想定しており、最も適当と判断されるものを指定管理者の候補者として選定する方向で検討しております。
 次に、視聴覚障害者情報センターや障害者団体が運営する民間施設の計画についてであります。
 視聴覚障害者情報センターは、視聴覚障害を持つ方々の自立を促進するための情報拠点、ボランティアの活動拠点として設置するものでございます。いずれ今回の設置で、きめ細かな情報提供、相談対応機能を充実させるとともに、支援ボランティアの養成や派遣、さらには、障害を持つ方々と持たない方々との交流を進めながら運営しようとするものでございます。
 また、障害者団体が運営する民間施設についてでございますが、この複合施設における民間施設は、来館者の利便性の向上を図るための店舗として、飲食店やコンビニエンスストアなどの出店を想定しているところでございます。その中で視聴覚障害者情報センターに隣接する店舗については、障害者団体が主体的に物品販売を行い、障害者の自立を支援する場として活用する方向で検討を進めているところでございます。
   〔商工労働観光部長酒井俊巳君登壇〕

〇商工労働観光部長(酒井俊巳君) 盛岡広域観光、特に大型バスの駐車場対策に関するお尋ねでありますが、盛岡市中心部では、岩手公園下と中の橋わきに団体バスの駐車場――これは無料でございますが――数台分確保されているほか、上の橋わきの市駐車場――これは有料でございますが――にも駐車可能となってございます。ただし、石割桜の開花時期などの特定の時期には非常に混雑あるいは市内の駐車場が不足しているのが実態というふうに認識はいたしてございます。このため、例えば石割桜鑑賞のための大型バスによる車両混雑を緩和する取り組みということで、昨年の12月議会、樋下議員を初め、県議会側からの御提案もいただきましたが、盛岡市との連携のもとに、この4月から県庁駐車場の一時使用について大型バスを中心として、平日4台分、土日祝日は7台分の駐車スペースを確保いたしたところでございまして、4月16日から4月25日の13日間で、合計341台の利用があったということでございます。この交通整理要員といたしまして、盛岡市の方からは31人、県の方からは15人が対応したということでございます。
 次に、不来方城跡を中心とした観光活用策についてでございますが、不来方城跡は国指定史跡に指定をされており、東北最大級の壮大な石垣は、それ自体が観光資源であります。近年、特に北海道――これは北海道で修学旅行の規制緩和があったということでございまして――からの中学生の修学旅行が大きくふえているわけでございますが、石川啄木が、不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五の心と詠んだ盛岡城跡は、その歌碑の存在とともに多感な中学生たちの修学旅行の場にふさわしいところであると考えてございます。また、お城の跡周辺には、紺屋町から中の橋の周辺にかけて歴史的な建造物がございます。あるいは先人ゆかりの文学碑や彫刻、サケの遡上する中津川がございます。また、最近とみに全国的に知名度が高くなってまいりました盛岡冷麺あるいはじゃじゃ麺、わんこそばの盛岡三大麺を初めとする食のスポットがこのお城周辺に集中してございまして、まさに盛岡広域観光の中心となるところでございますので、今後とも盛岡市と連携をしながら、不来方城跡を中心とする観光資源の魅力を高めていくような努力をしてまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長橋本義春君登壇〕

〇県土整備部長(橋本義春君) 雫石川河川敷未利用地のスケートボード愛好者への場所提供についてでありますが、当該地区は国の直轄管理区間でありますが、国が策定した北上川水系河川環境管理基本計画及び盛岡市が策定した雫石川太田橋下流河川敷利用基本計画によりますと、現況の利用状況を踏まえて現状を維持する保全ゾーン、自然環境に配慮して整備活用を図る調和ゾーン及び新たな空間として整備活用する整備ゾーンに区域が定められております。これらの基本計画に基づき、盛岡市では雫石川エコミュージアム推進協議会を設置し利用計画を検討しておりますが、スケートボード場は盛り込まれていないと聞いております。なお、別な場所になりますけれども、盛岡市では、北上川、雫石川、中津川の3川合流点河川敷にございます北上川公園内に、今年度スケートボード場を整備する予定と聞いておりまして、完成後には利用が可能になるものと考えてございます。
   〔教育長佐藤勝君登壇〕

〇教育長(佐藤勝君) 学校教育、家庭教育についてでありますが、まず過去から現代の教育について、本県には、豊かで美しく、時には厳しい自然と先人が築いてきたすぐれた歴史、文化を有し、この中で培われた進取の気性や、粘り強く温かい県民性があり、この本県の持つ特性を基本に据えた人づくりを大切にしてきた土壌があります。また、学びを大切にしながら、他者への思いやりや豊かな人間性、困難に立ち向かう意志や勇気、体力など心身ともにたくましさを持つ県民をはぐくんでいくという教育の基本は、過去から現在までいつの時代にあっても変わらないものと認識いたしております。
 一方、今日の教育を取り巻く環境は、少子・高齢化、国際化、高度情報化、価値観の多様化など大きく変化してきており、また、学校現場におきましても、いじめや不登校といった教育上多くの課題を抱え、これまでもこれらへの対策を学校、家庭、地域一体となって積極的に講じてきたところでありますが、こういう中で、昨今各地で児童生徒をめぐる痛ましい事件事故が頻発していることは極めて憂慮すべきことと重く受けとめております。
 県教育委員会といたしましても、これまでにも命の大切さ、善悪の区別など心の教育の充実に努め、一定の成果を上げてきたところでありますが、今後なお一層の充実が必要と強く感じており、そのためにも今後、今まで以上に学校ではしっかりとした教育、家庭ではきちんとしたしつけ、また、地域社会においては児童生徒の健全育成の環境づくりなど、それぞれが役割を十分に果たしながら、かつ、三者が相互に一体的な連携を図り、学校、家庭、地域がみんなで子供を守り育てていこうとするその姿勢の確立こそが何よりも重要であると考えております。
 次に、教員の指導のあり方についてでありますが、命の大切さなど、人間として基本的な倫理観を身につけさせること、学校生活のあらゆる場面を通して児童生徒一人一人をよく観察し、心のサインを見逃さず適切に対応していくことが肝要と考えております。また、児童生徒一人一人が、学校生活を通して意欲的にみずからの目標を立て、その達成に向けて努力するよう育て支える必要があります。各学校におきましては、このような考えに立ち教員が指導に当たっているところであります。
 学校と家庭、PTA、父母との連携につきましては、各学校では、学校便りや学級通信などによる情報の提供、家庭訪問や期末面談、必要に応じての個別の面談、さらには地区懇談会を実施するなど、家庭と協力、信頼関係を築くよう努めております。また、本県独自の教育振興運動の推進を図るほか、今年度から始めた家庭、地域、学校が協働して取り組む子どもの居場所づくり事業を積極的に活用し、健やかな子供の育成を図る地域ぐるみの活動を一層支援してまいる考えであります。教員の指導やPTA、父母との連携につきましては、実施に当たる学校現場に対し、なお一層の指導の徹底や支援をしてまいりたいと考えております。
 次に、スケートボードに対する認識についてでありますが、近年、余暇の増大や健康に対する関心が高まっていることなどから、昨今とみに、生涯にわたりスポーツ・レクリエーションに親しむ傾向が顕著になっております。従来のスポーツに加えまして、自分に合ったスタイルで体を動かすことができるような、年齢、性別にかかわりなく、だれもが気軽に楽しめる新しいタイプのスポーツが普及されてきております。そのような中で、スケートボードにつきましても、若者を中心に新しいスポーツとして普及されてきておりますが、遊び方いかんによっては危険を伴うことや、愛好者の一部には音楽などによる騒音及びごみ、たばこのポイ捨てや、隣接している施設への侵入などマナーに対する批判も聞こえております。健全な遊び、競技として普及されることを願っております。
   

〇議長(藤原良信君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時58分 散 会


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