令和4年9月定例会 第22回岩手県議会定例会会議録

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〇1番(千田美津子君) 日本共産党の千田美津子です。
 私は、請願陳情受理番号第78号について、委員長報告に反対し、原案に賛成の立場で討論いたします。
 請願陳情第78号消費税インボイス制度の実施凍結または中止を求める請願でありますが、私は、総務委員会で不採択としたことに反対いたします。
 消費税のインボイス―適格請求書が2023年10月から導入されることに、自営業者などから不安と批判の声が上がっています。インボイスが導入されれば、これまで消費税の納税を免除されていた小規模の事業者に、新たな税負担がのしかかります。しかも、今、新型コロナウイルス感染症の長期化などで収入が減って苦境に立つ事業者に追い打ちをかけるものであり、容認できません。
 そして、深刻なのは事業者の税の負担増です。現在、年間売上高が1、000万円以下の業者は消費税納税を免除されていますが、インボイス導入により、消費税の転嫁が困難な零細業者にも課税業者になることを迫ります。
 インボイスは課税業者しか発行できません。今は、課税業者が免税業者から仕入れた場合、消費税がかかっているとみなして控除できますが、今度は、インボイスのない仕入れでは消費税額の控除は認められません。そうなりますと、多くの課税業者は免税業者との取引をやめることが想定されます。それを避けるために課税業者になるしかありませんが、赤字経営になっても身銭を切って消費税を納めざるを得なくなります。既に経営状態が苦しい事業者の倒産や廃業が相次ぐことが懸念されております。
 また、インボイス制度の導入は、平均収入が決して高いとは言えない個人タクシー、文化、芸術、イベント、スポーツの分野で働く方々、農家を初め、ウーバーイーツ等の配達員、電気、ガスの検針員など多岐に上ります。さらに、シルバー人材センターや福祉作業所も例外なくインボイス制度の対象となり、利益を出すことに重きを置いていない社会的にも意義ある活動においても、活動の幅を狭めてしまうことになるこの制度は、大問題であります。
 また、その影響を受ける事業者は、全国約500万の免税業者と1、000万人とも言われるフリーランスであり、少なくない関係者は、自分が免税業者との自覚がないままでいることが予想されます。
 このまま実施されれば混乱は必至であり、日本商工会議所など各団体も延期、中止を求めています。日本商工会議所は、仮に制度が導入された場合、約500万もの免税事業者が、取引から排除されたり不当な値下げ圧力等を受けたりする懸念があることに加え、発行する請求書の様式変更、システムの入れかえ、改修、受け取った請求書等に登録番号があるかの確認、仕入先が免税事業者かどうかの確認、自社が発行する請求書等の保存、端数処理のルール変更等、事業者にとって多大な負担が生じることになること。
 また、こうした状況を踏まえ、2019年10月の軽減税率制度導入後3年以内を目途に、事業者の準備状況や事業者の取引への影響の可能性などを検証し、必要があると認めるときは、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講じると規定されておりますが、コロナ禍の影響もあり、この2年半の間、十分な検証は行われていない。
 したがって、まず政府は、免税事業者の取引排除等による倒産、廃業の可能性や、現行の区分記載請求書等保存方式で、どういった問題があるかなどを含め検証を徹底的に行うべきであること。
 さらに、日本商工会議所がことし6月に実施した調査によれば、インボイス制度導入まで1年余りとなった現時点においても、中小企業全体の4割超、売上高1、000万円以下の中小企業では約6割が、まだ何も手をつけていない状況であり、事業者の理解は進んでいないため、制度導入後の大混乱は避けられないと述べ、検証結果やコロナ禍の影響、物価高騰などの影響を受ける中小企業経営の実態、免税店制度の創設趣旨等を踏まえ、制度導入に向けた影響最少策が講じられず、制度導入後の混乱が避けられない場合は、制度導入時期を延期すべきと指摘しています。
 物価高騰の影響が多くの商品やサービスに及ぶ中、今最も効果的な対策は消費税の減税です。コロナ禍以降、世界99カ国もの国と地域で消費税、付加価値税の減税が進められており、日本も5%に減税することで、中小零細企業やフリーランスを危機に追いやるインボイス制度も導入の必要はなくなります。
 委員会審査の中で、世界では消費税を導入している国も多く、そのほとんどがインボイスを導入しているなどの意見もあったようでありますが、しかし、ヨーロッパのように数種類の付加価値税率を設定している国ならインボイスが必要かもしれませんが、2種類で、しかも区分が明確な日本の消費税なら、従来の帳簿方式で十分計算でき、インボイスのような複雑で膨大な事務負担を課す制度は必要ありません。
 社会保障制度を通じて所得の再分配を行うというのが国家の役割であり、その財源は応能負担が原則であります。これ以上、平均年収が低い事業者などに課税することで、貧富の差を広げ日本経済を冷え込ませるようなことがあってはなりません。
 そもそも消費税減税、不公平税制の是正とともに、インボイス制度は凍結、中止すべきと考えますので、本請願は採択すべきであり、総務委員会の不採択に反対をいたします。
 何とぞ御賛同賜りますようお願い申し上げまして、討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(五日市王君) 次に、高橋穏至君。
   〔9番高橋穏至君登壇〕

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