令和4年6月定例会 第21回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇23番(千葉絢子君) いわて県民クラブの千葉絢子です。
 今定例会では、一般質問初日の最初の登壇の機会をいただき幸甚に存じます。参議院議員選挙の応援で大変お忙しい知事におかれましては、有権者ではなく、どうか県民を主語に置いた議論になりますように、また、執行部におかれましても、県民の真の幸福のために御答弁くださいますようお願い申し上げます。
 それでは、順次質問してまいります。
 知事は、昨年2月、いわて気候非常事態宣言において、本県では温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロの達成に向け、省エネルギー対策と再生可能エネルギーの導入にこれまで以上に積極的に取り組むとともに、本県の強みである自然の豊かさを最大限に活用し、地域経済や県民の生活の向上にもつながるよう、オール岩手で気候変動対策に取り組むと述べました。
 昨年10月には、イギリスのグラスゴーでCOP26―気候変動枠組条約締約国会議が開催され、各国が気温の上昇を1.5度に抑えるための努力を追求することで合意しました。
 これを受け、本県でも今年度予算は、コロナ禍を乗り越え復興創生をデジタル・グリーンで実現する予算と名づけ、暮らし、産業、地域の省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入に向けた取り組みを拡充するほか、水素の利活用の実証など新たな取り組みも進める内容としています。
 我々も、経済社会活動や生活様式の変革など、あらゆる面において気候変動を自分のこととして捉え、覚悟を持って行動することにより、さらに取り組みを加速させることが求められています。
 日本政府は、2030年度に温室効果ガスを2013年度に比べて46%削減するという目標を掲げ、エネルギーや産業の大変革を起こそうと各地で実証試験をスタートさせています。
 こうした中、6月19日の新聞報道によると、県は、国の削減目標が大幅に引き上げられたことを背景に、第2次岩手県地球温暖化対策実行計画の見直しを進めているとのことです。基準となる2013年度の温室効果ガス排出量に比べ、2018年度は、調整後の排出量で基準年を17.7%下回ったものの、2017年度と比べると実排出量は0.4%の減少にとどまり、産業部門は逆に0.9%ふえるなど横ばいとなり、急激な削減の非現実性も指摘されていました。
 また、国の脱炭素先行地域は26件が選定されたものの、我が岩手県から申請した四つの自治体は、いずれも採択されないという残念な結果となりました。
 2回目以降の再チャレンジを期すために、県の支援も不可欠と感じていますが、選定に至らなかった理由をどのように捉えているか伺います。また、本県の脱炭素の取り組みの方向性についてもお聞きします。
 壇上での質問は以上です。この後は、質問席でお伺いいたします。
   〔23番千葉絢子君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 千葉絢子議員の御質問にお答え申し上げます。
 脱炭素先行地域の選定についてでありますが、国では、2050年カーボンニュートラルに向けて、先行的な温暖化対策が行われる脱炭素先行地域を選定した上で、交付金により複数年度にわたって、継続的かつ包括的に支援することとしています。
 脱炭素先行地域の第1回公募では、日本全体の脱炭素ドミノにつながる先進性、モデル性や実現可能性、地域特性等を踏まえて評価の上、全国で26件が選定されたと承知しております。
 本県においても、脱炭素化に向けた市町村の積極的な取り組みが必要不可欠であると認識しておりまして、脱炭素先行地域を目指す意欲ある市町村に対し、国の選定要件等を踏まえた適切な助言等を行いながら、県、市町村を挙げて、2050年度の温室効果ガス排出量の実質ゼロの実現に向けて取り組んでまいります。
 次に、本県の脱炭素の取り組みの方向性についてでありますが、第2次岩手県地球温暖化対策実行計画において、省エネルギーと再生可能エネルギーで実現する豊かな生活と持続可能な脱炭素社会の実現を目指す姿とし、2050年度の温室効果ガス排出量の実質ゼロを目標に掲げております。
 その達成に向けては、全国有数の再生可能エネルギーのポテンシャルや森林面積等の強みを生かし、産業、経済、交通、運輸、農林水産業、家庭など、各分野における積極的な施策展開により、温室効果ガス排出量の削減にとどまらず、地域経済の活性化や県民生活の質の向上を実現してまいります。
 今後も引き続き、県内のあらゆる主体が連携、協働し、県民総参加の取り組みを進めることにより、地域経済と環境の好循環をもたらすグリーン社会の実現を目指してまいります。
〇23番(千葉絢子君) それでは、主に産業分野についての脱炭素社会に向けた質問をさせていただきます。
 早くから脱炭素に注目し、国の実証試験に手を上げた北海道苫小牧市では、隣接する製油所から排出される二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素のみを抽出し回収、それをアミン溶液という液体の吸着剤とともに地下に貯留させるCCS―カーボンダイオキサイド・キャプチャー・ストレージという技術を導入し、2016年4月から実験をスタートさせています。
 二酸化炭素を溶かしたアミン溶液を深さ1、000メートルから1、200メートル、また、2、400メートルから3、000メートルの地下に貯留させるというもので、貯留層と遮蔽層、つまり目の詰まった岩石がある地層を利用して二酸化炭素を地中にためるというもので、3年半で目標の30万トンの二酸化炭素の貯留を達成し、日本では最大規模の地中貯留に成功しました。これは、官民一体となったプロジェクトとして注目を浴びております。
 2018年に世界全体で排出された二酸化炭素は335億トンありました。このうち日本は10.8億トンと世界で第5位の排出量だったわけですが、苫小牧市の実証実験では30万トンの貯留という目標を達成したものの、それでも、これは日本の年間排出量の3、600分の1にしかすぎないという実績でございます。ということは、脱炭素の取り組みは、いかに排出させないかということが非常に重要だと私は感じております。
 岩手県において、基幹産業にものづくりを据え、北上川バレー構想で集積を図っていますけれども、自動車や半導体など、ものづくり産業における二酸化炭素の排出抑制の取り組みについては、現在どの程度進んでいるのでしょうか。
 また、人間生活を営む以上、廃棄物は必ず出るわけで、この廃棄物処理における抑制の取り組みはどうなっているのでしょうか。今後の推進方針とあわせてお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 県内の自動車、半導体関連企業においては、まずは、使用電力の再生可能エネルギー化として、太陽光パネルの設置のほか、地中熱の活用や冬期間の雪を貯蔵して夏場に冷房として利用する取り組みなど、また、製造過程における排出抑制対策として、照明のLED化や省エネルギー型設備、機器への更新、温室効果ガス除害装置の設置、工程改善による消費エネルギーの削減、加えて、工場内で発電した際に発生する排熱を再度エネルギーとして利用するといった取り組みなど、多くの企業にて積極的に排出抑制に向けた取り組みが進められております。
 自動車、半導体関連企業に限らず、広くものづくり企業においては、ゼロカーボンに向けた取り組みの推進に強い関心を示しており、第2次岩手県地球温暖化対策実行計画に掲げる排出削減目標の達成に向け、省エネルギーや再生可能エネルギーに関する国や県の支援制度、また、先進事例の紹介などを行いながら、ものづくり産業における二酸化炭素の排出抑制の取り組みを推進してまいります。
〇企画理事兼環境生活部長(白水伸英君) 廃棄物処理における排出抑制の取り組みについてであります。
 廃棄物は、その処理に当たりまして、二酸化炭素などの温室効果ガスが発生いたしますことから、まずは、廃棄物の排出量そのものを減らし、廃棄物処理による温室効果ガスの排出を抑制することが重要と考えております。県では、令和3年3月に策定いたしました第三次岩手県循環型社会形成推進計画に基づきまして、いわゆる3Rの取り組みなど廃棄物の減量に取り組んでいるところであります。
 その上で、廃棄物の処理過程における温室効果ガスの排出抑制については、引き続き、市町村のごみ焼却施設における省エネルギー化のための改修、それから、ごみ焼却施設の広域化、集約化が進むように、市町村に対して助言等を行ってまいります。
 加えて、今後においては、温室効果ガスの排出抑制に関する新たな技術の開発動向等を踏まえ、中長期的な観点から、廃棄物処理における二酸化炭素等の排出削減に取り組んでまいります。
〇23番(千葉絢子君) 先ほど商工労働観光部長の答弁の中で、温室効果ガス除害装置という言葉が出てまいりました。この温室効果ガス除害装置を少し御説明いただけますか。どのような仕組みで、どのようになっているのでしょうか。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) この温室効果ガスの除害装置ですけれども、半導体のフラッシュメモリーの製造とかをする過程において、どうしても特殊ガスを使用しなければならない事情があります。そのガスを製造の後に排出しないために、害のある形で残さないような装置を設置する取り組みと認識しております。
〇23番(千葉絢子君) 除害したガスがその後どうなるかとか、いろいろ利用なども含めてこれから研究が必要かと思いますけれども、国の大きな流れが二酸化炭素を排出しないというような方向に今行っておりますので、この後もちょっと詳しくお伺いしていきたいのですが、日本国温室効果ガスインベストリ報告書によると、二酸化炭素の排出割合は、発電所が39.1%です。工場などの産業部門が25.2%、4分の1に当たるわけですね。そのほか、自動車など運輸部門が17.9%、家庭が17.8%となっておりまして、発電所に次いで産業部門の排出量がすごく多くなっていることがよくわかります。
 そこで、今期待されているのが、岩手県は、先ほど知事からも御答弁ありましたが、森林吸収など自然由来のものではなく、回収するという技術なのです。二酸化炭素の排出量を減らすだけでなく、出してしまった二酸化炭素を大気中から直接回収しようというDAC―ダイレクト・エア・キャプチャーというものに国が注目しているようです。利点としては、どのような場所においても回収ができるということ。例えば、岩手県でいいますと、沿岸被災地の利用がまだ決まっていない土地などにも建設が可能だということです。
 このDACというのは、日本政府が国を挙げて進めようとしている技術で、新エネルギー・産業技術総合開発機構、いわゆるNEDOを初め、国内外の研究機関が地球温暖化対策の切り札としてDACに注目しています。
 このDACの先行事例といたしましては、アイスランドにつくられた大規模な施設がありまして、ここは去年9月から回収が実際に始まっています。その仕組みは、本当に巨大なファンで大気を取り込んで、特殊な吸着剤とフィルターで二酸化炭素を吸着させます。その後、二酸化炭素を100度まで過熱して、その回収したものから二酸化炭素だけを分離するのですけれども、ここで回収した二酸化炭素は水に溶かして地中に埋められて、玄武岩層に含まれるケイ酸カルシウムなどと反応して、2年以内に石となって固まるというような論理になっています。その能力は、1年間で4、000トンの二酸化炭素を吸収することができ、2025年までの間に地球全体から排出される二酸化炭素の1%の回収を目指しているということです。
 岩手県は、地質学的にも玄武岩層が非常に多く、このDAC導入にもとてもポテンシャルのある場所だと思いますけれども、この国の取り組みについて、県はどの程度興味があるでしょうか、お伺いいたします。
〇企画理事兼環境生活部長(白水伸英君) 二酸化炭素の回収技術についてであります。
 この回収、貯留技術につきましては、現在、経済産業省と環境省の連携事業として、二酸化炭素貯留適地の調査事業が行われておりまして、貯留に適している調査井掘削の候補地を令和5年度までに選定することを目指していると承知しております。
 また、議員御紹介のNEDO等の研究機関において、二酸化炭素を回収するための吸収材の研究等も進められていると承知しております。
 県といたしましても、温室効果ガスの排出量削減に向けて、二酸化炭素を回収、貯留する技術の活用は重要であると考えておりますことから、国等の調査、研究の動向について、引き続き強い関心を持って注視をしていきたいと考えております。
〇23番(千葉絢子君) 令和5年度までに候補地を選定したいということで募っているということでした。これは注視ではなくて、ぜひ積極的に手を上げていただきたいと私は思っております。
 岩手県は、皆様御承知のとおり、ILC誘致に動いておりまして、地層的には非常に安定しているというのが、国際的にも評価されている場所であります。また、岩手県がこういった産業とか、あとは脱炭素の先行地域になることは、東日本大震災津波からの復興にも非常に有効だと私は思っておりますので、ぜひ積極的に名乗りを上げていただきたいと思っております。
 ところで、県当局の皆さんは、ムーンショットプロジェクトというものを御存じでしょうか。これは、重要な社会課題に対して、人々を魅了する野心的な目標を設定し、日本初の破壊的イノベーション創出を目指すもので、この中で、二酸化炭素を回収して、さらに資源として使っていこうというプロジェクトが動き出しています。
 このうち、地球環境産業技術研究機構では、ハニカム構造のローターと先ほどもちょっと出てきました新しく開発したアミン溶液を使って、これまでより低エネルギーで空気中の二酸化炭素を回収できるようになりました。これまで、二酸化炭素を吸収したアミン水溶液を120度で過熱すると二酸化炭素を分離する性質があるということで知られていましたが、この機構では、その温度を半分の60度で分離を可能にして、いわば、これまでより軽い力で二酸化炭素を引きはがせる技術を開発しています。60度ということは、これまで製造過程で発生するものの、使い勝手が悪いということで全て捨てられてきた工場の排熱などを利用できるということなのです。その程度の熱で二酸化炭素を分離できる技術が開発されています。
 2025年以降、年間550トンの二酸化炭素の回収を目指して研究が行われているのですけれども、これは、東京ドーム13個分の杉の人工林が1年間に吸収できる二酸化炭素の量に匹敵しているということです。
 このアミン溶液を使う技術は、世界中でも日本が一番得意としているということで、そこらじゅうで捨てられている熱で二酸化炭素を回収することができる、非常に画期的な研究成果ではないでしょうか。
 ものづくり産業の集積化を図っている岩手県では、その一方で、環境王国も標榜してまいりました。ということは、企業と一緒になって、企業版ふるさと納税などを利用して取り組むことができるのではないかと考えるわけですが、岩手県では、現在、企業などと共同で脱炭素の取り組みを既に何か模索していらっしゃるでしょうか、伺います。
〇企画理事兼環境生活部長(白水伸英君) 企業との共同による脱炭素の取り組みについてであります。
 本県では、昨年3月に策定いたしました岩手県環境基本計画において、持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築、豊かな環境づくりに資する科学技術の振興を柱に掲げまして、環境関連技術の産業化を目指す中小企業等の研究開発や事業化等の取り組みを技術面から支援することとしております。
 具体的には、県の補助事業等によりまして、昨年度は、県内企業と岩手大学による発泡プラスチックの製造における低炭素化に係る研究開発への支援を行い、今年度は、県内企業による原材料の減量化による環境負荷の低いペットボトルの製品開発への支援を行っているところであります。
 また、可燃性ごみからのエタノール製造など、県内でも民間企業による二酸化炭素削減につながる新たな取り組みが行われていると承知しております。
 議員御指摘のアミン水溶液等を活用して二酸化炭素を吸収、分離する実証研究は、県内では現時点では行われていないと承知しておりますが、脱炭素に向けた新たな技術開発は産業の創出にもつながることから、二酸化炭素の吸収、分離技術の開発動向等を踏まえ、中長期的な観点から県内企業等の技術開発や実用化を支援していきたいと考えております。
〇23番(千葉絢子君) これは何事に関してもですけれども、岩手県の場合、守るだけではなくて、課題と変化に果敢に挑むという動きを求めていきたいと私は思っております。
次に私が可能性に注目しているのは、コンクリートに二酸化炭素を封じ込める技術です。これはちょっと化学式みたいなものなのですけれども、どういう仕組みか御説明いたしますと、建物を解体するときに出る廃コンクリートを粉末状にしまして水の中に入れます。そしてぐるぐるかきまぜると、水の中に溶け出した炭酸カルシウムと二酸化炭素が、水の中に入れた空気と結びついて炭酸水素カルシウム水溶液になります。
 これとは別に、水に溶かす前の粉末状の廃コンクリートを用意いたしまして、それを70度に過熱します。その70度に過熱した粉末状のコンクリートに、この炭酸水素カルシウム水溶液を流し続けますと、コンクリートの粒と粒との間に針のような炭酸カルシウムの結晶ができて、この粉状、粒状だった廃材が、またコンクリートとして固まるというものなのです。
 通常、コンクリートをつくるときの原料にはセメントが使われますが、セメントをつくるときには、大体1、400度の温度に焼かなければいけません。製造過程で、どうしても大量に二酸化炭素を排出してしまうのです。ある報告によれば、世界の二酸化炭素排出量の7%が、このセメントをつくる過程で発生しているという指摘があります。
 そこで、この技術を使えば、新たにセメントをつくらなくてよくなるため、実用化されれば国内で7%の排出削減になるほか、この二酸化炭素をコンクリートに封じ込めることができますので、さらなる二酸化炭素の削減効果が期待できるという、本当に革新的なコンクリートの再生技術なわけです。
 東京大学大学院野口貴文教授の試算によりますと、世界生産の半分をこの再生コンクリートにすると、2050年には、日本の年間排出量の2倍に当たる21億トンの二酸化炭素を回収できるということなのです。
 NEDOによりますと、DACの技術は2030年までにでき上がるものの、広く普及させるために問題がまだあるということですので、岩手県が国の実証実験に手を上げて実用化につなげていくことができれば、この岩手の地が、本当に環境王国を名乗るにふさわしい場所となるのではないかと、私はわくわくしてこの研究の論文を読ませていただいております。
 例えば、県内のものづくり、自動車産業の工場、そしてセメント工場でこのDACを導入して、二酸化炭素を排出しない、あるいは抑制するシステムをつくっていくことはできないでしょうか。
 私が知っている事例に例えるならば、岩手中部クリーンセンターから出る焼却灰は、既にセメント会社へ原料として提供されていますが、コンクリート原料として、焼却灰の利用に加え、廃コンクリートに炭酸カルシウム水溶液を加えてつくる二酸化炭素を封じ込めたコンクリートを生産することで、県内の製造業挙げての二酸化炭素排出の抑制と回収による新たな付加価値の創造につながって、この工場などで生産される製造品が、環境負荷を低減する製品としてヨーロッパ、アメリカなど海外の市場で競争力を増すことが可能になるのではないかと、大変夢が膨らんでまいります。
 岩手県と国のカーボンニュートラルの目標達成と産業振興につながる非常に魅力的な取り組みだと思いますけれども、具体的に動き出してみてはいかがでしょうか。環境生活部長にお伺いいたします。
〇企画理事兼環境生活部長(白水伸英君) コンクリートへ二酸化炭素を閉じ込める技術についてであります。
 2050年度の温室効果ガス排出量実質ゼロの実現のためには、二酸化炭素を回収、貯留する等の革新的技術の活用が重要と認識しております。
 現在、国等においては、二酸化炭素の回収と再資源化、再エネルギー化などの社会実装に向けて、二酸化炭素を用いたコンクリート製造技術の開発を進めておりまして、県としても、将来的に有望で必要な技術と考えております。
 県といたしましては、県内にコンクリート製造関連の企業や環境技術の開発に取り組む大学等が存在しますことから、二酸化炭素を用いたコンクリート製造技術の将来的な実用化を展望しながら、企業や大学の取り組みを支援していきたいと考えております。
〇23番(千葉絢子君) 岩手県が、積極的にこういう研究機関の実証フィールドとして場所を提供したり施設を提供したりということは、これからの子供たちが生きていく世の中には非常に大切な取り組みだと私は思っております。ぜひ、守るだけではなく、どうしたらこの負荷を低減できるか、出したものを資源として活用できるかという方向で施策を考えていただきたいと思っております。
 最後に、新エネルギーや脱炭素における取り組みについて、この項目で思うところを申し述べたいと思います。
 先ほど述べましたとおり、国が選定した全国26カ所の脱炭素の先行地域には、県内からは四つの自治体が応募しましたけれども、いずれも選定までには至りませんでした。
 また、海洋エネルギーの実証試験に選ばれた釜石の洋上波力発電の設備ですけれども、試験のためにこれまで4億円の国費が投入されています。まさに今から発電がスタートしようというところですけれども、この試験では、国が所有する釜石港の湾口防波堤の上に民間の発電設備がつくられているのですが、この実証試験の期間は来年3月までなのです。それまでに設備の撤去までしなければいけないということで、実際に発電が試みられるのは来年3月までの半年ぐらいという非常に残念なスケジュールになっていると聞きました。
 実証試験の効果や採算性がある事業を、これに限らず実用に結びつけていくためには、相応の費用も必要となってくるほか、場合によっては、国の制度などの改正や特別な措置も必要となってくると考えられます。
 こうした事例を初め、持続可能な脱炭素社会の実現に向けては、国の財政支援のほか、必要に応じた制度の改正等が求められてくると思いますが、お考えを伺います。
〇企画理事兼環境生活部長(白水伸英君) 国への働きかけ等についてであります。
 まず、国におきまして脱炭素を進めるに当たりましては、大きく三つの役割があると思っております。一つ目は規制的手法、二つ目は奨励的手法、三つ目は基盤整備の大きく三つの役割があると考えております。
 一つ目の規制的手法については、例えば、欧州諸国並みの炭素税の導入、あるいはクレジット取引などのカーボンプライシングの具体化であります。これは、市場メカニズムを活用した経済的手法とも言われております。
 二つ目は奨励的手法であります。企業や自治体等に対して、補助金等により脱炭素の取り組みを促すものでありまして、これは、例えば議員御指摘の脱炭素先行地域の選定や、新技術を活用する実証事業等への支援が挙げられると思います。
 三つ目としては基盤整備でありますが、これは、再生可能エネルギー導入のための送配電網の増強等が挙げられます。特に、自治体に対しては、国は、早期に人材、技術、情報、資金面で支援する役割があると考えております。
 また、県においては、市町村と連携し、地域と共生する再生可能エネルギーの導入、地域、企業、家庭等における温室効果ガス排出量の削減、企業による技術開発の支援など、地域の実情に合わせた取り組みを積極的に進めることが必要と考えております。
 このような国と県との役割分担のもとで、国からの財政支援や必要な制度改正については、市町村等の要望や提言も踏まえて、適時に国に働きかけながら、本県のグリーン社会の実現に向けた取り組みを進めていきたいと考えております。
〇23番(千葉絢子君) 国の実証実験をそのまま事業化していくときに、やはりいろいろな制度の壁とか、あとは国の所有する構造物の上に何かを民間がつくる形で実証実験が認められた場合、撤去しなければいけないということがあります。例えば今回の洋上波力発電の設備でも、4億円のものを撤去するとなると、全部もう一回ゼロになってしまうわけで、そこからまた新しい場所を選定して取り組みをするとなっても、非常に時間とお金が無駄というような印象を我々に与えてしまう、現在そういうような制度になっています。
 どうか、岩手県でも実証実験を、今、国にあるメニューだけでなくても結構ですので、これをやってみたいというものを国に制度としてつくってほしいというように、逆に提案できるような、そういった取り組みをもって、環境王国いわてをさらに強固なものにしていっていただきたいと思っております。
 東京大学に学ぶある若い研究者は、こう言っていました。二酸化炭素はエタノールなどの燃料にも加工できるほか、エチレンなどの化学製品、プラスチックの原料などにも利用できる。私たちの身の回りのものを燃やせば何でも二酸化炭素になるということは、つなぎ合わせればもとのものに戻ると言うことができるのだと。二酸化炭素は資源にもなるという視点で、この気候変動の抑制をきっかけに、新産業や新技術の先駆者となり、東日本大震災津波からの復興と日本や世界を救う拠点にこの岩手県がなっていけるように、そういう日を夢見てこのテーマの質問を終わりたいと思います。どうぞ皆様、考えてみていただきたいと思います。
 次に、今月は、いわて男女共同参画推進月間ということなのですが、私の政策テーマの最重要課題と位置づけている女性の活躍推進についても伺っていきます。
 3月の予算特別委員会で取り上げたとおり、まずは、この新型コロナウイルス感染症の労働分野への影響については、かねてから国内外で、女性労働者を初め、多くの女性たちに影響が出ると指摘されてきました。
 東京都では、東京大学に研究を依頼して、昨年9月、東京都の社会福祉審議会において、コロナ禍の女性への影響と今後の課題について公開研究会を行いました。女性を取り巻く環境の現状把握と施策展開についてもう既に動いているわけですけれども、資料を見ますと、コロナ禍直後に女性に何が起こって、今どんな課題が出ているかがきちんと整理されていると、私は3月の予算特別委員会でも申し上げました。
 改めて御紹介いたしますと、女性就業者数が、男性就業者数に比べて数が大きく減少した。つまり女性が職を失ったということです。特に、製造業、飲食業、生活、娯楽業における女性就労者の減少が大きい。医療現場を支える多くが女性であり、ワーク・ライフ・バランスの確保が困難である。仕事の満足度の低下は、保育、教育、サービス、医療の分野で大きいこと。家庭内での家事、育児負担が女性に依然偏っていること。家庭内暴力の相談件数は、前の年度に比べて1.6倍に増加していること。自殺者数は、おととし6月から7月にかけて男女ともに大きく増加した。量的には男性の数が多いが、女性の増加程度が大きく、特に、夏休み明けには女子高校生の自殺の増加があったと指摘されているわけで、これは、我が岩手県にも当てはまるものが多いのではないかと申し上げました。
 また、令和2年11月に独立行政法人労働政策研究・研修機構が、NHKと共同で行った調査によりますと、雇用に大きな影響を受けた女性労働者を業種別に見ると、飲食、宿泊業が最も多く、次いで、生活、娯楽等サービス業となっていて、解雇や雇いどめに遭った女性の3割強は、再雇用に結びついていないことがわかっています。
 これまで、男女共同参画は環境生活部において主に取り組まれてきましたが、男女平等、雇用機会均等、男女の賃金格差の解消については、環境生活部の取り組みだけでは厳しいとかねがね指摘してまいりました。これは、岩手県における人口減少、女性の県外流出の大きな原因であると、私は、議席をいただいてから7年間、毎度毎度申し上げて、私の質問アーカイブもたまりにたまっております。
 商工労働観光部、そして保健福祉部も連携して、労働施策や社会の意識の変革、変容にともに取り組んでいかなくてはならないと申し上げてきたわけですけれども、3月の予算特別委員会でもその熱意は十分お伝えいたしました。その後、県として、問題意識として共有していただくことができているか伺います。
 また、これまでの議論を経て、県としては部局連携に取り組まれる方針か否か、予算特別委員会での議論を踏まえて、今年度の取り組みに加わった点などがないかお尋ねします。
〇企画理事兼環境生活部長(白水伸英君) これまで、県におきましては、平成28年に設置いたしました女性活躍推進本部会議におきまして、子育て支援や働き方改革などの女性活躍に関連する取り組みについて、全庁的な情報共有を図りながら施策を推進してきたところであります。
 今般、ことし3月ですけれども、令和4年度岩手県一般会計当初予算の議決に当たりまして、人口減少対策については、若年女性の県外流出に歯どめをかけるため、県内で働く女性が抱える困難などの課題を的確に把握した上で、産み育てる環境の整備を図るほか、中長期的な戦略的施策を講じることとの意見、すなわち附帯意見が付されたところでございまして、なお一層の女性活躍推進や支援施策の検討が必要と認識しております。
 具体的には、コロナ禍における女性への支援につきましては、離職者訓練のコース拡充や生活福祉資金の特例貸付、いわて女性のスペース・ミモザによる相談対応や女性用品の提供等に取り組んできたところでございますが、コロナ禍の長期化に伴い、宿泊、飲食あるいは小売業に従事される非正規雇用の女性、あるいはひとり親家庭の女性、学生等の若者女性への影響がさらに大きくなっていると認識しております。
 こうしたことから、県では本年5月に、若者女性が抱える困難を把握し、労働施策や子育て支援等の施策を部局横断により総合的に検討するため、私、環境生活部長をトップとし、商工労働観光部、保健福祉部、政策企画部、環境生活部の中核を担う職員等で構成いたします若者女性サポート・活躍推進緊急タスクフォースを立ち上げまして、庁内における情報共有や調査分析を行い、施策につながる検討を行っているところであります。
 なお、本タスクフォースの検討内容については、今年度策定を予定しております、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランへ反映させていきたいと考えております。
〇23番(千葉絢子君) ありがとうございます。若者女性サポート・活躍推進緊急タスクフォースを設置してくださったという答弁、物すごくうれしく拝聴いたしました。胸が震えるような思いでただいまの答弁を伺っておりました。
 ただ、このタスクフォースが政策形成に果たす役割は、この政策によって、誰の、どんな困難を見出して、そして解決に導いていくかということが非常に重要だと思っております。現在、県のそれぞれの部局で持っているデータ、あとは各種の調査結果などにはどんなものがあって、その情報は十分であるかどうか、そこも伺いたいと思います。
 かつての保健福祉部の子供の生活実態調査のような、若者や女性、学生などのニーズ調査など、その制度を必要とした人に対してしっかり届くような調査をしていただきたいと思うのですが、今後の調査の予定などがあったら教えていただきたいと思います。
〇企画理事兼環境生活部長(白水伸英君) まず、議員御指摘のとおり、各部局が保有している情報やデータをしっかりと共有することが大事だと思っております。具体的に申し上げますと、まず、事業者向けの調査ということで昨年度実施いたしまして、この6月に取りまとめたところですけれども、環境生活部の女性活躍に関するアンケート調査でございます。こういった調査結果も共有いたしましたり、事業者向けに加えまして、やはり若者女性から直接生の声をしっかり聞いていくのが大事だと思っております。
 具体的には、ジョブカフェいわての相談件数とか内容、あるいは、ひとり親家庭等サポートネットワーク会議での各機関での相談状況、あるいはNPOのインクルいわての有するひとり親家庭へ実施したアンケート調査結果もございます。そして、いわて女性のスペース・ミモザで実施いたしました女子大学生へのアンケート調査結果等もございます。
 こういった内容について分析いたしましたところ、やはりコロナ禍の影響により雇いどめとなって収入が大きく減少したとか、ダブルワークを余儀なくされている、求職活動が難しい、出費がふえた、精神的に不安定になったとか、経済的、精神的に困っている若者女性の実態がわかってきました。あるいは金銭や、特に物的支援については、食料とか生活必需品、女性用品への支援、子育てへのサポート等を望む切実な声が寄せられております。
 こういった状況を改めて各部局で持ち寄って把握し、さらに、各部局の持っている情報をしっかりクロスで分析して、検討していくのが重要だと認識したところでございます。
 それから2点目、こういった調査を継続的、定期的にやっていかないといけないと思っておりまして、今年度に入りまして、コロナ禍に加えて物価高が非常に深刻になっていると思っております。特に、やはり若者女性の皆さんに直結することだと思っておりますので、そういった点も踏まえて、最新の状況については、しっかりと状況把握した上で、先ほど申し上げましたように、今年度検討を予定しております政策推進プランの施策にしっかりと盛り込んでいきたいと考えております。
〇23番(千葉絢子君) 私が花巻市の富士大学で担当している女子学生のためのキャリア形成論という授業の中でも、労働環境におけるジェンダー平等の問題を真っ向から取り上げておりまして、今年度は、韓国からの留学生も含めて30人の学生が履修してくれています。この学生たちにアンケートやレポートを書いてもらいました。その結果、日本においても、お隣韓国においても、やはり社会の隅々にはびこる男尊女卑の意識が労働環境にまで大きく影響し、自分たちの親たちの役割分担意識や男女の経済的な格差などに、不満や不安を抱えていることが浮き彫りになりました。中でも、日本の低賃金や所得の男女間格差という理由から、結婚したい、子供が欲しいという判断に大きくマイナスの影響が出ていることがわかりました。
 結果については、環境生活部長にも分析資料として後ほど御提供したいと思いますので、このタスクフォースの取り組みに役立てていただければ本当にありがたいと思います。
 こうした中、5月30日の新聞報道によりますと、政府は、従業員300人以上の企業に、男女の賃金格差について情報開示を義務づける方針を示しました。日本は先進国の中で賃金差が大きいことで知られておりまして、男性を100としたときに、女性は80以下の水準であることが大きな問題になっています。
 これは、非正規のパートで働く女性が多いこと、結婚、出産などを理由にキャリアが中断あるいはゼロからのスタートなど女性の勤続年数が男性に比べて少ないこと、女性の管理職が少ないことが、この平均を押し下げていることにつながっています。
 岩手県の場合、賃金格差についてはどうなっているでしょうか。また、賃金格差の解消に向けて政府が取り組みを始めることで、岩手県はどのように格差解消、また情報開示に取り組んでいくのか、方針を伺います。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 厚生労働省による令和3年度賃金構造基本統計調査によれば、本県でフルタイムで働く方々の通勤手当等を含めた給与額の平均は、女性21万4、100円、男性27万600円であり、男性の給与額を100とすると女性が79.1となっております。
 また、全国平均では、女性25万3、600円、男性33万7、200円であり、女性が75.2となっております。
 今般、内閣府が公表した女性版骨太の方針2022においては、男女間賃金格差に係る情報開示や非正規労働者の賃金の引き上げ、女性デジタル人材の育成などのほか、アンコンシャスバイアスの払拭にも取り組んでいくこととされております。
 現在、県では、労働局や市町村と連携し、県内経済団体に対し、女性の管理職への登用や総合職への採用の促進などを含めた安定的な雇用確保のための要請活動や、県内の女性経営者を構成員とする女性の就業促進部会において、アンコンシャスバイアスをなくすための意見交換会、さらには、職業訓練におけるIT分野の活用などの取り組みを進めているところであり、こうした取り組みと重なり合う部分が多いと受けとめております。
 今後、県内企業の生産性向上に向けた取り組みを促進しつつ、男女間賃金格差の情報開示を含め、国の取り組みが具体化されるのと連動して、女性管理職の積極的な登用などの経済界への働きかけなどをさらに強化いたしますとともに、女性のキャリア形成を推進し、賃金格差の是正につなげていく考えであります。
〇23番(千葉絢子君) 上智大学などの調査で、岩手県の場合は、フルタイムで働く女性の割合が高く、男性との賃金格差も少ないほうから3番目という調査結果も出ているようですが、岩手県と似たような格差の小さい地域は、最低賃金も低いという問題を内包しております。県内では、開示が義務化される企業は、5万数千社のうち、たった数百社しかないのです。
 女性のキャリア形成は、これまで商工労働観光部から御答弁をいろいろいただいてきましたけれども、なかなか働きかけを積極的に行ってこなかったと。最低賃金ではなくて、賃金アップとか女性登用についてのポジティブアクションもなかなかしづらいというような御答弁を予算特別委員会でいただいておりました。ここの取り組みが私は大事だと思っておりまして、このタスクフォースにおいてしっかり取り組んでいただくようにお願いいたします。
 次に、県庁舎の建てかえについて伺います。
 知事は、4月22日の記者会見で県庁舎の建てかえに言及されました。岩手県庁は築57年で老朽化と狭隘化が著しく、外壁補修等による施設の長寿命化を図っているものの、遠くない将来、いずれはこの建物も寿命を迎えます。
 建てかえ構想について問われると、知事は、自分の中に考えはあるが、組織として対応する。県民と一緒に考える問題と、広く意見を聞きながら議論し、今年度中にも建てかえ準備に着手する姿勢を示しています。
 現時点で御自身のプランは明らかにされていないわけですけれども、知事が年度当初に建てかえの意思を表明するに至ったのは、どのような背景や理由からなのか伺います。
〇知事(達増拓也君) 県庁舎についてでありますが、本年3月、盛岡市において内丸地区将来ビジョンが策定され、内丸地区のまちづくりの将来像の検討が進む中、同エリア内に立地する県庁舎においても、建築から57年経過し老朽化が顕著でありますことから、建てかえや改修を検討していかなければならない時期に来ております。
 今年度、持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会において、行財政運営の構造改革の方策について議論いただいているところでありますが、私自身も、さまざまな行財政改革について考える中、岩手県公共施設等総合管理計画に掲げる公共施設の今後のあり方について検討していく必要があると考えたものであり、県庁舎もその中に含まれるものであります。
〇23番(千葉絢子君) 県庁の建てかえについては、知事は、一体いつから構想なさっていたのでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 記者会見でのやりとりに関しましては、一番新しい記者会見、これは5月20日と記憶しますけれども、調査、検討という作業をきちんとやるところからいろいろスタートしていくのではないかと考えていますと。内丸地区将来ビジョンの中にあるさまざまな施設の今後について、広く市民、県民的に議論が進む中で、まずは、県庁舎については、改めてこの建物、設備、特に防災関係の機能でありますとか、調査、検討という作業をきちんとやるところからスタートしていくことが必要と考えております。
〇23番(千葉絢子君) 知事御自身の構想はいつごろだったのかというところをお伺いしたのですけれども、手続のところを詳しく御説明いただいてしまいました。
 2019年に策定されたいわて県民計画(2019〜2028)には、この構想は含まれていませんでした。議会に対しても、これまで何の説明もされないまま県庁建てかえの話が唐突に出てきたということで、職員も少なからず驚きをもって受けとめられているようです。こんな余裕があるのかと。周りに特に御相談もなく、いきなり記者会見で発表したというような印象があると私の耳にも入ってきているわけですけれども、なぜこの時期の発表になったのでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 繰り返しになりますが、本年3月、盛岡市において内丸地区将来ビジョンが策定され、内丸地区のまちづくりの将来像の検討が進む中、県庁舎においても、建てかえや、あるいは改修といった検討をしていかなければならない時期に来ているという中、公共施設の今後のあり方について検討していく必要がある中に県庁舎も含まれるという状況であります。
〇23番(千葉絢子君) 直前まで2月定例会が行われていました。3月25日に閉会したわけですけれども、年度初めのいきなりの大きな発表でございまして、これは、ただいま展開されている参議院議員選挙に絡んだ集票のためのパフォーマンスではないかといううわさも一部あるようですが、この点についてはいかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 記者会見で4月から5月にかけてこの件について何回か質問がありましたけれども、一番新しい答えとして、調査、検討という作業をきちっとやるところからいろいろスタートしていくのではないかと考えているということで、マスコミ的にもそういうふうに理解されているところと思います。
〇23番(千葉絢子君) マスコミの皆さんは理解していても、私は理解できていなくて申しわけありませんでした。
 現在の内丸地区は、昭和32年に内丸団地として都市計画の全国第1号として整備されることになりました。内丸地区は、県庁、市役所、国と県それぞれの合同庁舎、警察本部、議員宿舎、金融機関、報道機関などが林立しておりまして、まさに県庁所在地の社会経済活動の中心地区としてその役割を担ってきました。
 これに関連して、盛岡市では、先ほど知事からも御紹介がありました内丸地区将来ビジョン懇話会におきまして、ことし3月に発表した内丸地区将来ビジョンで、県庁や市役所が立地する内丸地区の中心的役割を維持することを前提としたグランドデザインの検討を始めているわけですけれども、知事は、この内丸地区将来ビジョンをごらんになって、どのように思われましたか、率直に感想を伺います。
〇知事(達増拓也君) 内丸地区将来ビジョンは、盛岡市のほか、内丸地区の行政機関や企業、商店街の代表、大学関係者などで構成する内丸地区将来ビジョン懇話会で議論が行われ、策定されたものでありますが、県もこれに参画してきたところであります。
 内丸地区将来ビジョンには、策定の目的、地区の現状と課題、地区が置かれている社会的役割や機能などが整理されているほか、内丸地区のあるべき姿として、県都の核として社会経済を牽引するまち内丸、城下の風格と都市空間が調和するまち内丸、英知が集い未来を創造するまち内丸の三つが掲げられ、今後の取り組みの方向性等が盛り込まれており、内丸地区将来ビジョン懇話会のほか、市民等が参加するまちづくりシンポジウムでのアンケート結果等を通じて、さまざまな視点から議論や意見集約がなされ、取りまとめられたものであります。
 県としては、広域的な視点や多様な主体による合意形成などが重要であると申し上げてきたところであり、内丸地区将来ビジョンには、このような県の意見が反映されているものと認識しております。
〇23番(千葉絢子君) 知事御自身はどのように感じられましたか。配置は盛岡市がするような話も書いてありましたけれども、それに関して、知事御自身の御感想はいかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 県都の核として社会経済を牽引するまち内丸、城下の風格と都市空間が調和するまち内丸、英知が集い未来を創造するまち内丸、これらは、先ほど申し上げましたように、県の意見が反映されているものと感じておりますが、私の個人的な盛岡での経験からも、こういった内丸ということが言えると思います。
〇23番(千葉絢子君) 盛岡市だけが岩手県なわけではなくて、県民全体にとって県庁が内丸地区にあり続けることの意義も考える必要があるのではないかと私は思っておりますが、県知事としては、どのようにこの内丸地区を考えていらっしゃるか。その点、知事御自身の御感想をお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 記者会見の中でも答えていたと記憶いたしますけれども、広く内丸再開発といいますか、内丸地区の盛岡市の都市計画、さらに、そこに存在する民間も含めたさまざまな主体の将来像、そうしたものとすり合わせながら、県庁のあり方も考えていく必要があると考えております。
 また、調査、検討という作業をきちっとやるところからスタートしていくという意味では、県庁内のそれぞれの官庁営繕、施設営繕にかかわる専門家、建設や電気等設備に関する専門家の検討もあわせながら進めていくべきものと考えます。
〇23番(千葉絢子君) 最初に言い出したお立場上、ある程度、御自身のプランもあるかと思って、その片りんでもお伺いしたいと思ったわけですけれども、なかなか要領を得ないので、具体的に伺っていきたいと思います。
 今回検討が始まった内丸地区将来ビジョンでは、地区全体の建物の再配置を盛岡市が総合的に調整する意思を示しています。内丸エリア外に分散している機能の集約と、庁舎については民間事業者との複合化、防災機能の強化などについても模索が行われるようです。
 県庁の将来的な建てかえが、盛岡市の描く内丸地区将来ビジョンとどのように関連していくのか、また、新しい県庁の候補地については、内丸地区以外の場所への新築移転の可能性があるかなど、現時点で知事はどのようにお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 盛岡市では、内丸地区将来ビジョンをもとに、今後、具体的な事業手法等を盛り込んだ(仮称)内丸プランを策定する予定であり、県としては、同エリア内に複数の建物を保有していますことから、引き続き、盛岡市や関係機関と意見交換しながら、今後の県庁舎のあり方を含め、内丸地区のあるべき将来像の実現に向けて参画してまいります。
 また、現在の県庁舎は、地方自治法第4条第2項の規定に基づき、県民の利便性や交通事情、他の官公署との関係等を考慮した上で内丸地区に建てられたものであり、この視点は、今後においても重要と認識しております。
 県としては、将来にわたり県民にとって必要な行政サービスが持続的に提供できるよう、議員御提案の防災機能の強化なども含め、今後のあり方を検討してまいりたいと考えております。
〇23番(千葉絢子君) 内丸地区に存在することは非常にメリットがあるというような御答弁に聞こえました。これから具体的にお聞きして、提案もしていきたいと思うのですが、私は、県庁、市役所、そして合同庁舎などは、引き続き内丸地区にとどまることが望ましいと考えております。はっきり申し上げておきます。
 しかし、3年前には岩手医科大学附属病院が矢巾町に移転したのをきっかけに、今回の建てかえ議論の始まりによりまして、官公庁がもしかしたら内丸以外に移転してしまうのではないかという心配から、内丸地区の市民団体や飲食店などからは、県庁や市役所の移転について特段の配慮を求める要望なども相次いでいます。移転先によっては、これまでの中心市街地が空洞化してしまい、まちの活力が衰えることも心配されています。
 また、かつて郊外のニュータウンに住んでいた市民や県民が、高齢化に伴って、利便性を求めて市内中心部のマンションに続々と転居してくる状況が続いておりまして、中心部からこうした官公庁が移転することは、交通のアクセスを含めて、多くの市民や県民、また県外からのお客様の利便性を損なうことも心配されています。
 この点については、県庁建てかえの用地選定においてどのように配慮されるつもりか伺います。
〇知事(達増拓也君) 盛岡市が策定した内丸地区将来ビジョンの中で県庁舎の具体的な位置について言及はされていませんが、地方公共団体の事務所の設定または変更については、地方自治法第4条第2項の規定において、住民の利用に最も便利であるように、交通の事情、他の官公署との関係等について適当な考慮を払わなければならないとされているところであります。
〇23番(千葉絢子君) 移転してしまうのではないかと心配になっている原因としては、現在の内丸地区には、市役所や県庁、合同庁舎などの移転新築する箇所にふさわしい場所がないというところなのかと思うわけです。新築移転となると、どうしても内丸地区から離れてしまうというイメージが県民、市民の間にはついてしまっていると思います。
 ですので、私から用地の提案をいたします。県庁のすぐそばにあった岩手医科大学附属病院が矢巾町に移転して間もなく3年になります。新しい移転先として、恐らくこの岩手医科大学附属病院の跡地も候補に挙がっていると思うわけですけれども、内丸地区将来ビジョンの記述によれば、岩手医科大学では、現在の隣接地に新しいメディカルセンターの建設を計画しているとありました。その後の岩手医科大学附属病院と現在の内丸メディカルセンターがあるこの議会棟の裏の土地の利活用について、県はどの程度関心があるでしょうか。
 また、盛岡市や岩手医科大学との間で、跡地利用などに関する意見交換ですとか、あるいは意向について、これは事務レベルでもいいです、またトップの3者会談でもいいですけれども、話し合いが行われているのか否か。行われていなければ、今後、このまち全体をどうしていくかというような意見を率直に話す機会を設けることもお考えなのかどうか伺います。
〇知事(達増拓也君) 内丸メディカルセンターの跡地活用についてでありますが、さまざまな機能を有する内丸地区は、社会経済活動の中心的な役割を担っており、この病院跡地の利活用については、盛岡市の将来的なまちづくりのみならず、広域的な視点からも重要な課題であると認識しております。
 これまで、土地建物を所有する岩手医科大学が事務局となって、盛岡市、盛岡商工会議所及び県の4者で構成する岩手医科大学跡地活用検討会議を設置し、情報共有や意見交換を行ってまいりました。
 また、盛岡市においては、内丸地区将来ビジョン懇話会において、地区のまちづくりの将来像について議論を重ねてきたところであります。
 県といたしましても、引き続き、関係機関との連携のもと、岩手医科大学跡地活用検討会議や盛岡市が今後策定を予定している(仮称)内丸プランの検討の場等において、この病院跡地活用等の検討に参画し、県としての役割を果たしてまいります。
〇23番(千葉絢子君) その4者会談では、この病院跡地利用について、今どんな話になっているのでしょうか。我々はなかなか耳にする機会がないので、これまでも4者会談を重ねてきたのであれば、お話しできる範囲で教えていただきたいと思います。
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) 先ほど知事が御答弁したとおり、これまで4者で協議を行ってきたところでございますが、まず、岩手医科大学のほうで、内丸地区の医大跡地がどういう形で将来的にあるべきかにつきまして、地元商店街とか住民の方々から意見を聞く場、それから、いわゆる先進的な他県の事例といったものを収集いたしまして、4者で共有し、さまざま意見交換を行ってきたところです。
 ただ、岩手医科大学が事務局となっておりますが、新型コロナウイルス感染症の対応に専念したいということもあり今のところ中断しておりますが、事務レベルでは毎年打ち合わせをしているところであります。今まさに、情報収集といいますか情報共有を図っているという形であります。
〇23番(千葉絢子君) では、内丸地区のグランドデザインを描くリーダー的役割は、その4者の中ではどこが担うのでしょうか。ああでもない、こうでもないと言っていても、こうしたらいいのではないかというたたき台ぐらいは出してもいいかと思うのですけれども、そういった議論は始まっていますか。
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) 先ほども申し上げましたとおり、岩手医科大学が土地所有者でございますので、当時の議論とすれば、岩手医科大学が事務局となりまして、そういった住民の御意見でありますとか先進地の状況等を踏まえまして、こういう将来像の描き方があるのではないかというようなさまざまなお話を伺った経緯はございます。
〇23番(千葉絢子君) 盛岡市は、新しい官公庁について、さきに申し上げたとおり、内丸エリア外に分散している機能の集約とか民間事業者との複合化などについても研究しているようですが、私は、岩手医科大学附属病院の跡地に県庁、市役所、それから合同庁舎と民間事業者の合築あるいは敷地内分築を提案したいと思います。
 国内を見てみますと、石巻市役所とか遠野市役所、また神戸市の北区役所などは民間施設と合築されています。これにならって、全国的には例がないかもしれないですけれども、県庁と市役所、あるいは県庁単独でも、市役所と合同庁舎を敷地内に合築いたしまして、庁舎機能の集約、手続のしやすさに加えて、災害時の指揮系統も1カ所に集約することで、防災機能も飛躍的に高めることができるのではないかと考えています。
 市役所と現在の県庁、議会棟の場所は、緑地化や駐車場として災害時の陸上自衛隊の活動拠点にも利用できるようにするほか、物資の備蓄、集約、ヘリポートの設置などもでき、あるいは自走式の高層駐車場などを設ければ、駐車場の空きを待つための今起きている付近の渋滞も緩和できるのではないかと考えております。何よりも、岩手医科大学附属病院跡地への庁舎建設の間も、県庁と市役所と合同庁舎も、現庁舎で業務が継続できるという大変なメリットがあるのです。
 県庁や市役所が新たな建設地を求めて、それぞれが土地を探して、交通アクセスを検討するよりも、現在の土地を有効に活用しながら庁舎機能の集約と効率化が図られる、現在の岩手県の財政力に見合った方法をとるほうが、市民、県民の理解も得られやすくなるのではないでしょうか。
 また、合築した新庁舎には、群馬県庁のように、民間の飲食店などテナントに入居してもらって、民間活力の導入で国の補助金獲得の道を模索したり、こちらから全国初での試みですよということで働きかけて、新しい補助金メニューをつくってもらうなど、チャレンジしてみてはいかがかと思うわけです。
 また、そこに建てる場合、土地の取得費用あるいは借地料を岩手医科大学に県と市が折半してお支払いすることで、岩手医科大学にとっては、新しい内丸メディカルセンターの建設とか施設の更新とかの原資に充てることができるのではないかと思っております。結果として、内丸地区の活性化と機能強化が、県民や市民の幸福につながるグランドデザインになっていくのではないかと思うわけです。
 こういう方向で盛岡市や岩手医科大学、それから盛岡商工会議所でしたか、この4者会談で模索してみるのはいかがでしょうか。知事の御所見を伺います。
〇知事(達増拓也君) 地方公共団体の事務所を単独で整備する以外にも、議員から御提案のあった他の自治体や民間事業者との合築のほか、自治体が保有する他の省庁との集約、県民利用施設との複合整備、民間が保有する他の施設の本庁舎への転用など、さまざまな例がございます。
 なお、県庁舎の整備においては、議員御指摘の民間資金の活用など財政面での検討も重要であり、盛岡市や岩手医科大学など関係機関とも緊密に連携を重ねながら、今後の県庁舎のあり方を検討してまいります。
〇23番(千葉絢子君) これまで多くの財政問題をお尋ねしてきた私としたことが、ここまで、新庁舎の建てかえに伴う費用が一体幾らになるかというところをお伺いするのを忘れていました。見積もりはどれぐらいになっていますでしょうか。これは知事、お答えになれますか。それとも総務部長でしょうか。
〇総務部長(千葉幸也君) さまざまな整備手法がございまして、また、現時点では方針が未定でございますけれども、長期的視点で考えれば、いずれ何らかの対応が必要となるものと認識しております。
 その経費でありますが、手法等によって大小がございまして、例えば、先進他県の事例などによって、床面積に県庁舎の現在の面積を掛けるといったことで単純な積算はできるのではありますが、現時点では詳細な積算などは行っておりません。いずれ多額となることが想定されますので、他の自治体等の例も参考にしながら、また、さまざまな課題を整理しながら、中長期的視点に立って県庁舎の適正管理を行っていきたいと考えております。
〇23番(千葉絢子君) 一部の予測では、建てかえに伴う総費用は現時点で600億円から800億円という数字も聞こえてきているところであります。これはいかがでしょうか。
〇総務部長(千葉幸也君) 今800億円というお話がありましたけれども、他の自治体の例なども見て、それから、今の県庁の狭隘化している状況などを考えると、実際どれくらいが必要なのかということは、まだ積算しておりません。例えば、他の例で西日本のほうの事例などを見てみますと、本県の場合、寒冷地の仕様なども考えなければいけないということでございまして、単純な計算ということでは積算できるかもしれませんが、詳細の検討は行っていない状況でございます。
〇23番(千葉絢子君) こうした額は、まだ具体的には出ていないということですけれども、持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会発足時には、県庁の建てかえという話は出てきていませんでした。ことし9月までにいろいろ検討して、この行財政研究会から答申をもらうというようにスケジュールを把握しておりますけれども、この行財政研究会においても、県庁建てかえについて知事が言及なさったことで、今後の見通しや方法についても議論に当然含まれていくという解釈でよろしいでしょうか。
〇総務部長(千葉幸也君) 持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会における議論についてでございますが、この行財政研究会においては、それぞれ個別の施設についてまで議論いただくことは想定しておりませんが、安定的で持続可能な行財政基盤の構築に向けた論点の中で、将来を見据えた公共施設等の適正管理の推進につきまして、総論的に議論いただく予定ということでございます。
 議員御指摘のとおり、県庁舎を含め県が保有する公共施設等について、中長期的な視点から公共施設マネジメントを推進することは重要であると認識しておりまして、今後、個別具体的な施設の状況の把握や検証、課題の抽出を通じて、将来にわたって県民が安全・安心に利用できる質の高い公共施設等を維持してまいりたいと考えております。
〇23番(千葉絢子君) いずれ、次に知事になる方にとっても責任が発生する建てかえ議論でございますので、今後の財政見通しなども念頭に、費用と業務の効率化と多機能化に配慮された議論をしていただきますようお願いいたします。
 次に、特殊詐欺被害の実態と被害防止のための対策について伺ってまいります。
 岩手県警察本部によりますと、昨年、2021年の刑法犯認知件数は、戦後最少だった2020年を46件下回る2、507件でした。人口10万人当たりの犯罪率は秋田県に次いで全国で2番目に低くなっていますが、殺人や強盗、強制わいせつなどの認知件数は、ここ数年、横ばいです。
 また、特殊詐欺の推移を見てみると、2016年の110件をピークに、昨年は31件と、件数は徐々に減少傾向にありますけれども、この5年の間、毎年の被害総額が1億円から1億6、000万円余との資料を頂戴しております。そして、被害者の8割を65歳以上の高齢者が占めていまして、高齢者を中心に県民の暮らしの安全が脅かされる状況が続いていると思っております。
 近年、デジタル化に伴うネットバンキングやマイナンバーカードの普及を目指した手続の煩雑化、また、銀行の窓口業務の縮小などにより、情報管理やセキュリティー意識の弱者とも言える高齢者が、煩雑な手続の肩がわりなどをかたった犯罪に巻き込まれやすくなっていることが考えられます。
 岩手県警察としては、特殊詐欺被害がなくならない原因はどこにあると考えているか、また、近年の手口の傾向を踏まえ、未然防止のためにどう取り組んでいるか伺います。
〇警察本部長(森下元雄君) 特殊詐欺がなくならない原因についてでありますけれども、特殊詐欺は、社会一般に広く認知されてはいるものの、だます手段、方法を変えたり、その内容も複雑、巧妙化していることから、被害者がだまされていることに気づいていないことが主な原因ではないかと考えております。
 また、近年の手口の傾向についてでありますけれども、過去5年間で発生した特殊詐欺の手口を分析しますと、高齢者宅の固定電話に電話をかけ、警察官や金融機関職員などをかたってキャッシュカードをだまし取る手口、あるいは未納料金の請求名目などにより、電子マネーや現金送付による被害が後を絶たない状況にあります。
 次に、未然防止への取り組みについてでありますけれども、岩手県警察では、県民の皆様に犯人のうそに気づいていただく力を身につけていただくことに重点を置いた広報啓発活動に取り組んでおります。
 具体的には、巡回連絡時の高齢者の方々に対する被害防止の啓発、あるいは特殊詐欺の手口や対策などを紹介する民放のテレビ、ケーブルテレビでのコマーシャルの放送のほか、高齢者に近い民生委員の方々、また、ケアマネジャーの方々と連携したチラシの配布などを継続して行っているところでございます。
〇23番(千葉絢子君) 未然防止のためには、啓発が何より効果的だと私も思っております。岩手県警察の場合、特殊詐欺被害が発生した際に、認知してから、どのような手順で対応するのでしょうか。また、同様の被害を防止するためには、被害を認知してから速やかに金融機関や各市町村など関係機関に情報を提供して、振り込み先の口座を凍結する必要があると思いますが、この対策のスピード感はいかがでしょうか。
〇警察本部長(森下元雄君) 特殊詐欺が発生した場合の被害の拡大防止への対応につきましては、被害を認知した段階で、直ちに、防犯メールであるぴかぽメール、ヤフー!防犯速報あるいは県のツイッターを活用して、タイムリーな情報提供を行っているところです。このほか、金融機関、コンビニエンスストア、市町村などへの電子メールを利用した情報提供も行っているところであります。また、テレビ、ラジオ、新聞など各種媒体を通じて、各速やかに注意喚起も行っているところであります。
 あわせて、犯行に利用された預貯金口座の迅速な口座凍結要請、これは24時間365日、対象となる金融機関に対応していただいているところであります。また、犯人が利用した携帯電話の利用停止要請など、いわゆる犯行ツールの無力化対策を実施しているところでありまして、引き続き、スピード感を持って被害防止に努めてまいりたいと思います。
〇23番(千葉絢子君) 特殊詐欺事件において、加害者は、首都圏など都市部の暴力団等が関与する犯罪者グループであるケースが多く、一つ摘発しても、またすぐに同様の犯罪が繰り返されるのが特徴です。
 そこで大切なのが首都圏との広域捜査になるわけですが、岩手県警察の首都圏派遣体制は現在どうなっているでしょうか。
〇警察本部長(森下元雄君) 議員御指摘のとおり、特殊詐欺については、首都圏を拠点に犯行が行われ、被害が広域にわたることが多いことから、警察においては、捜査を効率的に進めるため、各道府県警察の捜査員により構成されている首都圏派遣捜査専従班を設置しております。当県からも首都圏に捜査員を派遣しているところです。
 派遣体制の詳細につきましては、捜査にかかわることでございますので、お答えを差し控えさせていただきます。
〇23番(千葉絢子君) 岩手県からは、犯罪が発生して、認知してから東京都に向かえば2時間以上かかるわけで、犯罪組織に肉薄してアジトを突きとめようとしても、この2時間が非常にネックになってしまうという話も伺ったことがあります。首都圏における突発事案への対応はどうなっているか伺います。
〇警察本部長(森下元雄君) 議員御指摘のような問題がございますことから、当県において首都圏が関係する特殊詐欺被害が発生した場合には、当県警察の捜査員のほか、先ほど申し上げました首都圏派遣捜査専従班や関係する都道府県警察と迅速に連携して被疑者の検挙に努めているほか、その後の捜査においても、関係都道府県警察と連携した広域捜査を積極的に推進しているところです。
〇23番(千葉絢子君) 架空料金請求詐欺は、昨年は被害額が7、936万円と最も多い被害でありましたが、検挙にはつながらなかったということです。臨場して検挙数を上げるには、やはり即時性が求められる、つまりマンパワーが必要なのだと私は認識しているわけですけれども、先ほどの首都圏派遣につきましては、東北の他県だと複数人派遣しているところもあると伺っております。現場の捜査がしやすくなり、検挙率を上げるということは、やはり特殊詐欺捜査に当たる現場の方の士気を高め、また、県民の安心につながる大変重要な未然防止対策でありまして、首都圏派遣の増員を含めた拡充を図るべきだと思いますが、お考えを伺います。
〇警察本部長(森下元雄君) 議員御指摘のとおり、特殊詐欺事件については、マンパワーが重要でございます。現在の特殊詐欺の事件捜査におきましては、暴力団等の犯罪組織が深く関与している実態が見られることから、特殊詐欺事件の捜査と事件に関与する犯罪組織への対策を一元的に行うため、警察庁に続き、当県警察においても、本年4月より特殊詐欺事件捜査に関する事務を、これまで担当していた捜査第二課から組織犯罪対策課に業務移管するなどしているところであります。首都圏派遣の体制についても、これらのさまざまな情勢を踏まえながら、必要な捜査体制のあり方について検討を行ってまいりたいと思っております。
〇23番(千葉絢子君) 特殊詐欺事件については、この4月から組織犯罪対策課へ業務を移管して、暴力団対策と一元化して取り組んでいらっしゃるというお話でした。現場にかかわる職員の士気を高めるために、岩手県警察本部の特殊詐欺事件の検挙率の向上、そして、関係機関とさらに連携を深めた啓発、未然防止に取り組んでいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 次に、県内に拡大している若年層の薬物事犯について伺います。
 県内で覚醒剤や大麻等の薬物事犯で検挙された人は、昨年は若干減少したものの、2017年からやや上昇傾向が見られています。このうち2019年と2020年において大麻の摘発が過去最多の14人、両年とも、このうち20歳代以下が10人となっているのですね。2020年は5人が20歳未満となっていて、若年層への拡大がかなり深刻化していると危惧しています。
 警察としては、この事態をどのように受けとめているでしょうか。
〇警察本部長(森下元雄君) 若年層の薬物事犯についてでありますけれども、近年の全国における薬物事犯検挙人員はおおむね横ばいではありますが、その中でも大麻の事犯につきましては、30歳未満の若年層を中心に増加が続いているところです。
 県内傾向もおおむね全国と同様であり、覚醒剤事犯はやや減少しているものの、大麻の事犯につきましては、若年層を中心に増加の傾向、過去5年間を見ましても、若年層の割合が、いずれも5割を超えている状況にございます。
 これは、インターネット等で、大麻は身体への悪影響がない、あるいは依存性がないなどといった誤った情報が氾濫しており、これらに影響されやすい若年層への薬物蔓延が深刻化しているものと受けとめております。
 さらなる取り締まりの徹底、あるいは薬物の危険性を正しく認識できるような広報啓発を推進してまいりたいと思います。
〇23番(千葉絢子君) 先ほど警察本部長からも御紹介がありましたとおり、インターネットを通じていろいろな情報が入ってくる、そして、密売とかそういった情報も手に入りやすくなっている、非常に危惧すべき事態だと思っております。
 また、海外では大麻を合法としている地域もありまして、旅行や留学などで大麻を経験した、あるいはそういった方の情報に触れて、興味本位から手を出す若者が全国的にもふえていると伺っております。また、こうした地域で犯罪率も高まっているという考察もあるようですので、やはり若いころからの教育が必要になってくると思います。
 ここで、学校における薬物乱用防止教育について伺ってまいりますが、こうした状況から、小学生や中学生など早い段階からの教育の必要性が叫ばれているわけですけれども、県教育委員会では、児童生徒への薬物の浸透という大いに不安な状況についてどう認識しているか、現在の薬物乱用防止教育についてお聞きしたいと思います。また、非行防止教育のあり方についても、あわせて御答弁ください。
〇教育長(佐藤博君) 学校における薬物乱用防止教育についてでありますが、近年、本県におきましても若年者の大麻事犯検挙数が増加傾向にあり、SNS等を通じて薬物を入手しやすい環境にあるなど、児童生徒を取り巻く薬物乱用の未然防止について、重点的に取り組むことが必要な状況にあるものと認識しております。
 薬物乱用は犯罪行為であることは言うまでもなく、心身の健康や生命に深刻な影響を及ぼすこと、また、強い依存性から、一旦使用すると本人の意志でやめることが難しいことから、未然に防止することが最も重要と考えております。
 学校におきましては、学習指導要領に基づき、保健体育など関連する教科の授業において、飲酒、喫煙のほか、薬物の健康への影響、薬物乱用が引き起こす社会問題等の学習を行うほか、特別活動等において、薬物等に関する専門的知識を有する警察職員や薬剤師等を講師に招いて、薬物乱用防止教室を開催しているところです。
 また、指導者の資質向上を図るため教職員を対象とした研修を行っているほか、外部講師を務める警察職員や薬剤師等を対象とした研修会も実施するなど、薬物乱用防止教育の充実に努めているところです。
 学校における非行防止教育のあり方についてでありますが、児童生徒やその保護者が困った事態に遭遇したことを学校が把握した場合は、学校において、その内容を把握し、必要に応じて関係機関に相談の上、連携して児童生徒の支援に当たっているところです。
 具体的には、警察との連携としては、少年サポートセンターと、矯正、更生保護施設としては、法務少年支援センターいわて等と連携を図りながら、児童生徒の支援を行う体制を整えています。
 また、薬物や犯罪を含めた非行防止については、長期休業前等に未然防止の通知を学校に送付したり、SNSの適切な利用については、機会を捉えて情報モラル教育を実施するなど、各学校に適切に指導しているところです。
 あわせて、学校では、不安や悩みを抱えたり、解決が困難な事態になったりした場合等には、誰かに相談することが大切ということを児童生徒に伝え、その一つの方法として、24時間子供SOSダイヤル等、学校以外に電話を利用した相談をすることが可能であることも伝えており、引き続き取り組みを推進してまいりたいと考えております。
〇23番(千葉絢子君) 終わります。(拍手)
   
〇議長(五日市王君) この際、暫時休憩いたします。
   午後2時32分休憩
   
出席議員(46名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 上 原 康 樹 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
9  番 武 田   哲 君
10  番 高 橋 穏 至 君
11  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 佐々木 朋 和 君
15  番 菅野 ひろのり 君
16  番 柳 村   一 君
17  番 佐 藤 ケイ子 君
18  番 岩 渕   誠 君
19  番 名須川   晋 君
20  番 佐々木 宣 和 君
21  番 臼 澤   勉 君
22  番 川 村 伸 浩 君
23  番 千 葉 絢 子 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(1名)
8  番 米 内 紘 正 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   午後2時52分再開
〇議長(五日市王君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。関根敏伸君。
   〔41番関根敏伸君登壇〕(拍手)

前へ 次へ