令和4年2月定例会 第19回岩手県議会定例会会議録

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〇2番(千田美津子君) 日本共産党の千田美津子でございます。
 私は、発議案第14号令和4年度の水田活用の直接支払交付金の見直しに関する意見書について、反対の立場で討論をいたします。
 この意見書は、第1に、今回の見直しにより交付金の対象水田から除外されることにより、農地維持や農業水利施設の管理が困難となり、耕作放棄地の増加や離農者の増加等が懸念されるため、運用に当たって丁寧な説明を行うことや、生産現場の実態や課題を十分に踏まえることを求めてはおりますけれども、あくまでも、撤回ではなく見直しを進めるべきとしている問題でございます。
 第2は、多年生作物である牧草の取り扱いについて、畜産農家は、自給飼料確保のために水田を賃借しており、今回のような唐突な見直しにより交付金が削減された場合、賃借料の負担が大きくなり、賃貸借契約の継続にも影響を及ぼすことから、営農計画等を十分に検討する期間を設けてほしいという内容ではありますけれども、その趣旨は交付金の見直しを肯定しているものであり、到底容認することはできません。
 今回の見直しが公表されて以来、政府が育成するとしてきた大規模経営体や集落営農からも、もう続けられないとの悲鳴が上がっております。このままでは生産基盤のさらなる弱体化と食料自給率の一層の低下はまさに必至であり、白紙撤回こそ必要であります。
 先ほどの討論でもありましたが、岩手県内でも、このようなことから、岩手県町村会が2月15日の定期総会において見直し撤回を決議しており、さらに、岩手県市長会も2月24日に、自由民主党総裁等に対して、見直しの撤回の要望等を行っており、撤回すべきとの声は、まさに多くの県民の思いではないでしょうか。
 また、この間、政府は、主食用米の生産量を抑制する減反を進めてきましたけれども、昨年末、農林水産省から、水田機能を有する農地における主食用米から他作物への作付転換を支援する水田活用の直接支払交付金の見直しを行い、令和4年度から5年間に一度も水を張らない水田は、交付金の対象から除外するとの方針が示され、これまで転作に協力してきた農家は、この交付金が得られることを見込み、水田を畑として利用して農業を行ってきているため、今回の見直しに伴い、経営の支えとしてきた交付金の対象外となることによって、今後、経営困難に陥る農家や離農による耕作放棄地の増加が懸念されています。
 また、今回の見直しについては、農家や関係団体からは、説明不足との声や今後の経営に関する不安の声が上がるとともに、この春の作付準備がまさに本格化する中、今後の農業経営の見通しや融資の計画が立てられないなど、深刻な影響が生じています。
 このような中で農家からは、米価暴落に加えて、政府が突如持ち出した水田活用の直接支払交付金の見直しに対し、長年転作を進めておいて、転作を続けたら助成金をカットするとは、2階に上げてはしごを外すようなものだとの強い怒りの声が広がっています。
 政府は、今回の見直しが農業関係者に与える影響の大きさを認識するとともに、水田活用の直接支払交付金の見直しは白紙撤回し、農家の安定した経営を支えるための予算の充実こそ急務であります。
 昨年の総選挙での与党などの農業政策には、産地交付金を含む水田フル活用予算は、責任を持って恒久的に確保しますなどとうたっており、今回の水田活用の直接支払交付金の見直しは、まさに公約違反だとの指摘が挙がるのも当然であります。
 2020年の日本の食料自給率は37%と過去最低であり、主要国では際立った低さであります。国内での畜産に欠かせない飼料の75%は輸入であり、化学肥料原料の大半も国外からの輸入となっています。このように日本は食料の6割以上を海外に依存しており、その危うさが、地球規模の気候変動や新型コロナウイルス感染症感染拡大の中で浮き彫りになっており、さらに、ロシアのウクライナ侵略が世界の食料情勢に深刻な影響を及ぼしています。
 このような中、世界は、地球規模の環境破壊やコロナ危機を踏まえ、人と環境に優しい農政への転換を進めています。そして欧米では、農業所得に占める価格保障と所得補償などの補助金の割合が、イギリスは90.5%、ドイツは69.7%、フランスは94.7%であるのに対し、日本は30.2%にしかすぎません。世界規模の災害や食料不足が指摘される中で、今必要なのは欧米並みの農業保護であり、食料自給率の引き上げこそ重要であります。
 日本も食料の外国依存を改め、価格保障や所得補償の充実などで、多彩な家族経営が成り立ち、農村で暮らせる農政に真剣に踏み出すべきだと考えております。そういった点でも、今回の水田活用の直接支払交付金の唐突な見直しなどは全く論外であり、撤回すべきであります。
 以上の観点から、発議案第14号令和4年度の水田活用の直接支払交付金の見直しに関する意見書については反対するものでございます。どうぞ御賛同賜りますようお願い申し上げまして、反対討論といたします。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(五日市王君) 以上で通告による討論は終わりました。
 これをもって討論を終結いたします。
 これより、発議案第14号令和4年度の水田活用直接支払交付金の見直しに関する意見書を採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(五日市王君) 起立多数であります。よって、発議案第14号は、原案のとおり可決されました。
   
   日程第62 議員派遣の件
〇議長(五日市王君) 次に、日程第62、議員派遣の件を議題といたします。
   
〔参照〕
議事日程第8号中 日程第62 議員派遣の件の議員派遣一覧
派遣の目的派遣場所期間派遣議員
令和4年度「県民と県議会との意見交換会」大槌町令和4年
4月22日
名須川   晋 議員
佐 藤 ケイ子 議員
千 葉 秀 幸 議員
岩 崎 友 一 議員
米 内 紘 正 議員
小 野   共 議員
千 葉   盛 議員
ハクセル美穂子 議員
千 田 美津子 議員
令和4年度「県民と県議会との意見交換会」平泉町令和4年
4月27日
小 西 和 子 議員
岩 渕   誠 議員
岩 城   元 議員
工 藤 勝 子 議員
神 﨑 浩 之 議員
臼 澤   勉 議員
佐々木 朋 和 議員
飯 澤   匡 議員
小 林 正 信 議員


〇議長(五日市王君) お諮りいたします。本件は、お手元に配付いたしました2件についてでありますが、会議規則第116条第1項の規定により議員を派遣いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(五日市王君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
   
   退任者の挨拶
〇議長(五日市王君) この際、副知事保和衛君から発言を求められておりますので、発言を許します。保和衛君。
   〔副知事保和衛君登壇〕
〇副知事(保和衛君) 議長のお許しをいただきまして、副知事退任に当たりましての御礼の御挨拶を申し上げたいと思います。
 平成30年3月に議会の御同意をいただいて4年間の任期を、そしてまた、通算で約40年にわたる県職員としての職務を全うすることができましたのも、五日市議長を初め、この場にいらっしゃる議員の皆様、そして、これまでの岩手県議会議員諸先輩の皆様の広範にわたる御指導、御鞭撻のたまものでございます。ここに深く感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
 顧みますと、東日本大震災津波からの復興における企業の再建支援を初め、私がかかわることができた数々の仕事のことが思い起こされますが、このような場でございますので、議会事務にかかわって一つだけ、最も私の心に残り、すなわちそれは、若かりしころに答弁案作成に最も苦労した思い出でもある一般質問のことをお話ししたく、お許しをいただきたいと存じます。
 それは、平成15年9月定例会における、今は故人となられました佐々木大和議員が、知事に対し、これからの岩手県の進路における中間技術の重要性に関する認識を問うた質問であります。中間技術とは、経済学者のエルンスト・F・シューマッハーが、その著書、人間中心の経済学の中で提唱したものであり、私は、岩手県における地域振興の方向性とも親和性のある、今日でも重要な示唆に富む概念であると思っております。
 質問当日、議場での佐々木大和議員の弁論は大変説得力があり、私には、これぞ議会の神髄だと思えて、深く感じ入りました。
 この経験などから、私は、物事を外部からの視点も取り入れて多角的に考えることの重要性を教えられ、今日に至りました。
 今、世界では、国連憲章を無視する事態が突如として起こったり、また、民主主義の衰退さえ議論されるような状況です。東日本大震災津波のような大災害や新型コロナウイルス感染症の蔓延などのように不意に襲来する危機は、これからもいつやってくるかわかりません。
 しかし、我が岩手県は、さまざまな課題がありつつも、これまでの未曾有の危機を乗り越えて、今、希望を抱いて大きく羽ばたこうとしている、そのような手応えを感じております。
 県議会が、多面的な視点からの深い議論をベースに、県政の質を高める場として末永く発展していくことを通じて、岩手県に住み、あるいは岩手県にかかわる全ての人が、お互いに幸福を高めていける、今後ますますそのような岩手県になっていくことを信じ、また、議員の皆様の今後のますますの御活躍と御健勝を祈念し、私の感謝の言葉といたしたいと存じます。
 これまで長い間、本当にどうもありがとうございました。(拍手)
   
   閉 会
〇議長(五日市王君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 これをもって本日の会議を閉じ、第19回県議会定例会を閉会いたします。(拍手)
   午後7時45分 閉 会

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