令和2年12月定例会 第11回岩手県議会定例会会議録

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〇8番(米内紘正君) 自由民主党の米内紘正でございます。
 初めに、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するとともに、感染され治療に励んでおられる皆様の一日も早い御回復を心よりお祈り申し上げます。
 それでは、通告に従って質問いたしますので、御答弁をよろしくお願いいたします。
 世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症の拡大は、我々の社会に大きな影響を与えております。それは、社会的価値観の変容や生活様式の変化をもたらすだけでなく、この政治の世界においても大きな変革をもたらすきっかけとなったと考えております。
 新型コロナウイルス感染症拡大初期に当たる3月には、政府による学校の全国一斉休業要請という判断について、政策決定とは何か、また、政治的判断となる科学的根拠とは何かという議論が巻き起こったことは記憶に新しいと思います。今現在、新型コロナウイルス感染症の拡大初期と比べ、この感染症についてはさまざまな知見やデータが蓄積されてきたものの、この未知の感染症について全容が解明されているとは言いがたいと考えます。
 当初は全く知見がなかった未知のウイルスへの対応策として、徐々に知見を積み重ねながら、科学的根拠を用いて有効な感染症対策を行ってきた県の取り組みは、政策形成の過程として手本になるものだと考えております。今でこそ感染者数はふえてしまいましたが、最後まで全国の都道府県において感染者数ゼロで持ちこたえ、その間に医療体制を整えたことで、クラスターの追跡など現状対応している県の取り組みを評価するものであります。
 そこで、この未知のウイルスへの対応策として、これまでの県が下してきた政策決定は、まだ科学的根拠が出そろわない初期の判断を初め、先日出された会食における人数制限に至るまで、どのような根拠あるいは科学的根拠に基づいて判断されてきたものかお聞かせください。
 また、現状、第3波が世界中を襲っている中で、今後、新型コロナウイルス感染症がどのような展開に至るか、どのように収束していくかを的確に予測することは困難であり、難しい政治的判断を強いられる局面もあるかと思います。その中で、県は、これから下していく政治的判断あるいは政策決定において、これまで積み重ねてきた知見、科学的根拠をどのように活用していくか。そもそも今後の政策決定に科学的根拠を必要と考えるかどうかお聞かせください。また、十分な知見やデータがない場合には、どのようにして意思決定を行うかもあわせてお知らせください。
 次に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下におけるいわて県民計画(2019~2028)についてお聞きいたします。
 現在のコロナ禍においては、三密や濃厚接触を回避するなど、新たな行動様式の浸透に伴い、人との接触、交流を前提とした県の事業の多くが計画どおりに進捗していないことが推察されます。その中で、県の最上位指標である、いわて幸福関連指標を達成するための行動指標である具体的推進方策指標や政策推進のための事務事業評価、それにひもづく活動内容指標や成果指標において、達成が困難になるもの、あるいは事業自体の推進が不可能になるものも数多くあるのではないかと考えます。
 そこでお聞きします。来年度以降のいわて県民計画(2019~2028)について、いわて幸福関連指標達成のための見直し、あるいは具体的なアクションプランの変更をどの程度考えているかお聞かせください。
 残りの質問については、質問席から行わせていただきます。
   〔8番米内紘正君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 米内紘正議員の御質問にお答え申し上げます。
 政策決定の科学的根拠についてでありますが、県では、2月18日に岩手県新型コロナウイルス感染症対策本部を設置し、これまで、県民に対して、国の緊急事態宣言の発令に伴う外出の自粛、休業の協力の要請や新しい生活様式による感染防止対策などを行ってまいりました。
 対策本部の政策決定に当たっては、国の基本的対処方針や内閣官房、厚生労働省などの国からの通知に加え、国の新型コロナウイルス感染症対策分科会等のさまざまな分野の専門家による提言、岩手県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会の見解などを参考としてきたところであります。
 具体的には、医療体制の構築に当たっては、厚生労働省から示された推計モデルに基づき、患者数を予測し、岩手県新型コロナウイルス感染症医療体制検討委員会における議論を踏まえ、病床確保や重点医療機関の指定、宿泊療養施設の設置を進めてきたところであります。
 盛岡市内の飲食店でクラスターが発生した際には、感染症の専門家を招聘し、クラスターの分析を行い、その提言を踏まえて具体的な感染対策について県民への留意事項として注意喚起を行ったところです。
 今後におきましても、国の分科会や県の専門委員会からの提言などを参考に、全国や県内の感染状況や社会経済状況を踏まえて総合的に勘案し、機を逸することなく判断の上、取り組みを進めてまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔政策企画部長八重樫幸治君登壇〕
〇政策企画部長(八重樫幸治君) いわて県民計画(2019~2028)の見直しについてでありますが、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、県民計画に沿った事業の中には、延期や縮小、中止となったものがある一方で、学校におけるタブレット端末の前倒し整備など当初の想定よりも取り組みが進んでいる事業もあります。
 また、東京一極集中の是正や地方の暮らしやすさが広く認識される契機にもなっていることから、感染防止対策をしっかりと行うことが地方創生にもつながるとの考えのもと、地方がよりよくなっていく政策の流れをつくっていきたいと考えています。
 こうした方向性は、豊かな自然など岩手のよさと先端技術の活用を組み合わせることによって、地方の暮らしや仕事を起点とする政策を推進し、県民の幸福度を高めようとするいわて県民計画(2019~2028)の長期ビジョンと軌を一にするものであります。
 このため、いわて県民計画(2019~2028)の基本目標であるお互いに幸福を守り育てる希望郷いわてにより力強く向かっていけるよう、長期ビジョンのもと、アクションプランに掲げる取り組みについては、新型コロナウイルス感染症対策やこれに伴う社会経済情勢の変化などを踏まえ、新たな事業の追加や事業のブラッシュアップを進めてまいります。
〇8番(米内紘正君) まず、1点目の質問ですけれども、今回の新型コロナウイルス感染症対策における政策決定の過程においては、これまで以上に科学的データ、医学的な根拠が重視されて、その中で、科学的根拠を用いた政策立案が大きく浸透してきたところだと思います。
 当初2月においては、まず、そもそも飛沫感染であるのかどうかもわからなかった状態から、濃厚接触が危険であるとか夜のまちがクラスターになっている可能性があるとか、その後は、年代別の重症化率、死亡率、持病があるかないかなど少しずつ積み重ねてきた結果、かなり根拠に基づいた政策が今形成されているものだと思っております。
 次の、いわて県民計画(2019~2028)と具体的なアクションプランの見直しについてですけれども、長期ビジョンであるいわて幸福関連指標については、見直しは考えていないということでございましたけれども、その後の具体的なアクションプランについては、ブラッシュアップ等を考えているとのことでした。これは今年度中に例というか、2月定例会にはその内容が示されるのでしょうか。
〇政策企画部長(八重樫幸治君) 今般の新型コロナウイルス感染症の対応について、いわて県民計画(2019~2028)や第2期岩手県ふるさと振興総合戦略については、環境変化などを的確に捉えながら、必要に応じて政策推進プランの内容や戦略を見直すなど、弾力的に対応していく考えでございます。
 来年度の予算編成方針の中で、新型コロナウイルス感染症対策への対応方針を定めながら必要な予算の計上を行ってまいりますので、当初予算においても、新型コロナウイルス感染症対策等の内容をまとめ上げて、それをお示しすることになると思います。
〇8番(米内紘正君) 見ていただければわかるのですけれども、具体的なアクションプランのところは、セミナーだったり、基本的に人が集まる事業がかなり多くなっています。ここ全てが、今年度見直さないことによって来年度も同じアクションプランのまま走ってしまうと、来年度も、新型コロナウイルスの影響によりできませんでしたというのが並ぶことになってしまうのです。
 そもそも今年度に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響によって相当の事業ができていないと思います。したがいまして、来年度にいただく計画の実施状況の報告書は、今からある程度想像ができてしまうわけです。どの項目に関しても、新型コロナウイルス感染症の影響によりという文言が何十個、何百個と並んで、計画が未達になりましたとなるわけです。ですので、ここで今年度中に見直さないと、再来年度、令和4年度の報告書でも、新型コロナウイルス感染症の影響でという文言が入ってしまうのです。
 結局、PDCAサイクルは速く回すにこしたことはない。1年で回すのでも遅いのに、それが2年、3年かかってしまうと、社会の変化スピードに全くついていけないことになっていきますので、ぜひ、一つ一つの指標を見直して、もうこれは到底できそうにないことは、最初から行動目標の中にオンライン化をするとか、あるいはそもそも廃止するというものを入れて考えていただきたいと思っております。
 それでは、次の質問に移りますけれども、ここまでコロナ禍における政策立案の根拠とその評価に関してお聞きしてまいりましたので、その2点について掘り下げて質問をしてまいります。
 まず、従来、これまで政策立案過程においては、住民からの意見の吸い上げ、すなわち要望や陳情などをもとに、それらに応えるために、あるいは解決するために政策を作成してきたものと認識しております。その中で、さきの9月定例会において達増知事は、ハクセル美穂子議員とのやりとりの中において次のように発言されました。読み上げます。
 各市町村の要望、かつて陳情という言葉を多く使っていたわけですけど、その陳情を県にする、そして、都道府県の陳情を国にするっていうのは、陳情行政と呼ばれて、この政治行政改革の一つの柱で、そういうことはやめましょうということがあるわけです。
 このように発言されました。政策立案の根拠ともなる要望、陳情ですが、陳情行政をやめましょうと発言されましたことについて、知事は陳情行政についてどのように考えているのか、どのようなことに問題があると考えていたのかお聞かせください。
 また、そのような課題意識、問題意識に対して、現在どのような解決策あるいは体制をもって市町村からの要望に対応しているのかもお示しください。
〇知事(達増拓也君) 我が国では、国と地方の関係を上下、主従のような関係から対等、協力の関係に転換し、個性を生かし自立した地方をつくることを目指す地方分権改革を推進しているところであり、かつて行われていたいわゆる陳情型の要望は、利益誘導型政治を解消するなど政治行政改革の中で見直されてきました。
 このような中で、本県では、日ごろから地域事情に精通している広域振興局長が、市町村からの要望に組織的かつ的確に対応し、その内容を庁内はもとより、広く県民に公開しております。
 このほか、市長会、町村会、市町村の議会議長会からの要望において、市町村長等と直接意見交換を行っておりますほか、知事と市町村長との意見交換会の開催を初め、重要な案件については、市町村長から直接お話を伺っています。
 今後におきましても、市町村からの要望、提案には組織として丁寧に対応しながら、具体的な施策につなげてまいります。
〇8番(米内紘正君) 実は、私も陳情行政には、少なからず課題はあると考えております。それというのは、そこに人が介在することによって不均衡性が生まれてきてしまうわけでございます。ということは、平等ではない。例えば、陳情、要望を伝えられる人と伝えられない人が出てくる。例えば選挙区によっては、自分の地域から代表が出ていないところがある。そういうところは、どうやって陳情、要望を伝えていけばいいのか。この辺が、突き詰めて考えると、これは理想論になってしまいますけれども、不均衡が生まれてきてしまうと考えております。
 そこで、もう一つ、次の質問に行くわけでございますけれども、先ほど示しましたハクセル美穂子議員とのやりとりの中で、知事は次のようにも発言をされております。
 非公然に、非公式に特定の政治家が関与して、影響を振るうとかいうことも全国の中では見られたところもあって、そういうやり方はやめるという中で、知事があちこち回るというやり方よりも今のやり方のほうが、より県執行部として正式に市町村の状況を捉えて、県として責任ある意思決定に役立てられているというふうに考えております。
 つまり、特定の政治家が影響を振るうということはやめたほうがいい、今の広域振興局の体制が正式な意思決定の場であるということをお話しされたのだと思いますけれども、ただ、さきの定例会では、このような答弁もありました。今年度、知事が行った県内の市町村長との面談は6回、6市町村と聞いています。
 これなのですけれども、私は、これは面談数が少ないのではないかとか、そういうつもりではなくて、むしろ陳情行政に今のように課題を持っていた知事が、わざわざ広域振興局ルートの正規の意思決定のルートをつくったのに、特定の首長とのみ個別に面談を行うということは、課題に濃淡が生まれてしまい、正規のルートから外れることで、まさに特定の政治家が影響を振るうということにつながっているのではないかということです。これは、全ての市町村からの要望を的確に県の施策に反映させていくべきプロセスにおいて、大きな不均衡、不確実性を生じさせかねないと考えているのですけれども、知事の考えをお聞かせください。
〇知事(達増拓也君) 市町村からの要望については、広域振興局長が、市町村からの要望を組織として受け、全庁的に市町村の課題等を把握、共有しながら、具体的な県の意思決定や施策につなげているところであり、一連の仕組みは十分機能していると認識しております。
 また、県政懇談会等、県内出張の機会を捉えて、私が現地で直接市町村長とお会いし意見交換することについては、具体的な政策形成プロセスとして位置づけているものではございません。
〇8番(米内紘正君) よくわからないのですけれども、結局、正式なものとして機能している。機能している中で、ごく一部の市町村長とだけ会うということが、せっかく広域振興局を通して集まってきた公正公平な意見、不偏不党な意見に知事のバイアスがかかってしまう可能性があるのではないかということでございます。
 私がこれを危惧したのは、さきの9月定例会における武田哲議員とのやりとりの中での知事の発言であります。自由民主党が達増知事を推すというのであれば、それはもう相談に乗るということも、もう去年でしたかおととしでしたか、もうそのころから言っていてと発言されています。
 つまり、ここに政局が絡んできてしまうわけです。知事を応援している人の相談には乗る。応援していない人の相談には乗らない。つまり、どういうことが起きるかというと、例えば知事を応援している人がずっと出ていたところは、ずっと相談に乗ってもらえていたかもしれない。しかし、そこが知事を応援していない人にかわった瞬間、その相談には乗ってもらえなくなる。つまり、これまでつくってきた、せっかくつくり上げた知事の正規のルートというのが、知事自身の手によって壊されてしまっているのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 広域振興局において市町村からの要望を受けることとは別に、知事が市町村長と会うことはやったほうがいいのではないか、市町村長たちは知事と会いたがっているというようなことを、繰り返しこの議会の場でさまざまな議員から質問の形で伺う中、全然会っていないわけではないと答弁したものです。会っている例として、具体的な政策形成プロセスではないのですけれども、他の用務で県内出張したときに昼食をともにするというようなことはしていると答弁したところでありまして、それが何か政策形成プロセスのゆがみにつながっているものではないと思います。
 ちなみに、最近お会いした例としては、宮古市長と宮古市で昼食懇談を行っていますけれども、昨年の参議院議員選挙で、選挙における政治的立場は、私と宮古市長とは異にしたところであると記憶します。しかし、新型コロナウイルス感染症対策、東日本大震災津波からの復興、また、港湾の活用等、仕事の面ではもう一緒に仕事をしている同志でありますし、昼食懇談が、何か政策形成プロセスをゆがめることには結びつかないと思います。現に、その昼食会で何か新しいことを決めたりしたことはございません。
〇8番(米内紘正君) その昼食会、懇談会が一体何の意味を示しているのかはよくわからないのですが、会えと言われたから会っているけれども、会っても、それは政策プロセスには何も関係ないよというのであれば、別に会う必要もないですし。自由民主党が達増知事を推すのであれば相談に乗るということを言っていたという前定例会の発言は、撤回されるということでいいのですか。相談には、宮古市長のように、知事を推さなくても乗ってもらえるということでよろしいですか。
〇知事(達増拓也君) 前会期といいますか、今の県議会を構成する議員の皆さんの前の4年間の議会の際に、自由民主党所属の県議会議員から知事の政治姿勢について質問があり、それに対して、一緒にやりたいのであれば相談に乗るとその場で答弁したのは、これは会議録に載っている事実でございます。
〇8番(米内紘正君) ちょっとわからなかったですけれども、とにかく、知事が、今の広域振興局体制が正規なルートで、そこに政策決定のプロセスがあるというのであれば、そこは自信を持ってそこのルートにすべきで、あとの市町村長との懇談というのは、もし政策決定のプロセスにかかわらないのであれば、ただの本当にプライベートな場ということで位置づけるということを自信を持っておっしゃられればいいのではないかと思います。
 ただ、陳情行政に課題意識を持っている、それが今変わってきているわけですけれども、そこは、私は知事と考え方は同じでございまして、例えば中央の政権がかわることによって、知事が行くことができたり、行くことができなかったりというのは、やっぱり何かあやふやだなというか曖昧で、不確実性というものを私は感じているところでございます。
 ですから、私は、例えば知事に首長と直接会うなとか、一分一秒のずれもないように平等に首長と面談しろと言っているわけではなくて、陳情行政の不均衡自体に問題意識を持っているわけですから、そこから政策立案、政策決定のプロセスにおいて、岩手県ではその一歩先、次のフェーズへ一歩踏み出してほしいと思っているわけでございます。それが、きょうの私の伝えたいことの一つでありますEBPM―エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキングの概念の導入であります。
 EBPMというのは、エビデンス、すなわち証拠に基づいた政策立案のことであります。県の一つ一つの政策は、今後50年、100年の県の未来を左右するものであります。だからこそ、その根拠を、例えば知り合いが言っていたからとか、みんな言っているからとか、おのおのエピソードベースの曖昧なものとか個人の経験とか勘だけに頼ってほしくないのです。知事のもとに集まった意見とか広域振興局が収集した意見、あるいは我々議員が聞いてきた意見というのは、全て課題の一つにすぎず、そこからダイレクトに政策形成につなげてしまうことは、私は大きな危険性をはらんでいると思います。
 例えば先ほどの課題を見つけてきたことにしても、ベテラン議員が言ったことと1年生議員が言ったこと、知事が聞いてきたことと広域振興局長が聞いてきたこと、ここで課題の濃淡が発言者に影響されてしまうというのは、大きな問題があると思っているわけでございます。
 課題を拾ってくるというのは、行政だったり議員だったり我々の仕事であります。そこから政策立案に至るまでにしっかりとエビデンスを構築してほしい。今回の新型コロナウイルス感染症というのは、そういうきっかけを与えてくれたのではないか。何か課題がある、こういう可能性があるという仮説に対して、実際に数字で、数値が根拠となって政策を立案してきた。それが今回の政策形成過程にあったと思います。
 EBPMにはエビデンスレベルという考え方があるのですけれども、これはジョンズ・ホプキンス公衆衛生大学の大学院を修了されている知事には釈迦に説法になってしまいますが、エビデンスレベルというのは、その根拠がどの程度信頼できるかという序列であります。
 ちょっと難しい言葉が並んでしまいますけれども、エビデンスレベルの中で一番信頼度が高いと言われるのは、メタアナリシスやRCT―ランダム化比較実験でありまして、一番低い位置にあるのが専門家の意見であります。残念ながら、国においても県においても、専門家による意見が政策立案の根拠とされているものが数多く見受けられるのですけれども、もし仮に不確かなエビデンスの上に政策が決定すれば、その政策は、まさに砂上の楼閣になってしまうと考えます。
 したがいまして、お聞きしたいのは、知事が政策立案と根拠、EBPMにおけるエビデンスについて、どのように考えていらっしゃるかお聞かせください。
〇知事(達増拓也君) 政策立案とエビデンスについてでありますが、限られた行財政資源のもとで、より効果的な政策推進を図っていくためには、エビデンスに基づいた政策立案が重要と考えます。
 このような考えのもと、県が政策を実施するに当たっては、県のみならず、県民や事業者などさまざまな人々の関与や協力が必要でありますことから、専門家や有識者、一般県民などから広く意見等を聴取し、政策への反映の可否を含め、エビデンスや政策効果を十分に検討した上で政策立案を行うものであります。
 一方で、議員からの御指摘のとおり、EBPMにはエビデンレベルの考え方がありますが、そのようなエビデンスの質を高めるための手法を県が取り入れていくには、統計手法等を用いて分析を行うことによる時間の制約や、コストなど他の制約要因との関係を初めとした課題もあるところでございます。
 こうした中、現在、国において、ICTを活用し、効率的に信頼性の高いエビデンスを収集する方法が検討されていますことから、県としても、こうした動向も踏まえながら、よりよい政策の立案を行っていきたいと思います。
〇8番(米内紘正君) これから政策立案の中でICTを利用して、しっかりとした確度の高いエビデンスを用いてくださるということで、これは時間がかかることはもちろんわかっておりますけれども、一歩目を踏み出さないことには永遠に進んでいきませんので、方向性としてはよかったと思うところでございます。議会の場で、やはり県のトップである知事が、このエビデンスということについて確度の高いしっかりとした考え方を持っていただけるのは、大変重要なことだと思います。
 ちょっと私が不安になったのは、これも9月定例会における武田哲議員とのやりとりなのですけれども、次のように発言されました。
 情報発信については、東京都知事や大阪府知事、あれがいいのだということが言われていますけれども、さまざま専門家の方の分析や評論によると、ああいうのは余りよくないという考え方もあります。最近ネットで見たアンケートによると、最も信頼できないと思う政治家の発言というアンケートの結果、1位が前の総理で、2位と3位に東京都知事、大阪府知事が入っていたというような……。
 こういう発言をされているのですけれども、やはり県議会の場で、こういう印象操作ともとれるような論拠の出し方というのは、これからは少し控えていただきたいと思います。専門家の方々が話し合うのは、それは大切なのですけれども、それを一歩引いたところで、このように専門家が言っているということは、専門家というのは、Aと言う人もいれば、Bと言う人もいれば、AでもあるしBでもあると言う人もいる。いろいろなことを言う専門家というのは探せば幾らでもいるのです。ですので、こういうふわっと専門家の方によるとと言うのは、少し危険な議論、ロジックになってしまいます。
 あと、知事が議会の場で、インターネットで見たアンケートによるとと答弁しているのですけれども、これを私、調べたのですが、これはある大手新聞社の週刊誌のインターネット調査で、回答数は111件。しかも、その雑誌のインターネット会員に送られているアンケートなのです。こういうものを県議会の場でお話しされるときは、少し注意していただけたらと思うところです。
 例えば、その大手新聞社の系列の週刊誌なのですけれども、この大手新聞社は日本の有力紙ですが、イギリスのオックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所が行っているメディア調査レポートでは、日本の読者における信頼度が有力紙の中で最も低い新聞社なのです。つまり日本人が最も信頼できないという新聞社の系列の週刊誌のデータで、信頼できない政治家がいるとこういう正式な場で言うことは、かなりよくないのではないかと思いますけれども、どうお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 事前通告という仕組みがあって、そして、答弁検討ということで、私は歴代知事の中でも最も答弁検討に時間をかけているほうだと思うのですけれども、組織として、担当の部局、室課の意見も参考にしながら答弁を作成していくのと違って、このようなやりとりの中で急にされた質問に対し答弁する際に、後から振り返れば根拠薄弱な例を引いていることがあるかもしれません。
 こういったやりとりへの答弁というときに、どこまで話すか、先ほどの市町村長との昼食についても、やはり慎重であるべきではないかという御趣旨のことを伺いましたし、私も、任期を重ね、知事としての活動期間も長くなってきているわけですけれども、より慎重に対応していきたいと思います。
〇8番(米内紘正君) その前の質問で、きちんとエビデンスレベルの高い、確度の高い政策推進をしていくということでお話しされていたので、ぜひ、そういう姿勢を県庁全体で、一歩とまって、これは思い込みではないか、これまでの思い込みではないのか、実はこうではないかと、一歩下がって考え直すことが、県の中に体質として浸透していくことだと思っていますので、よろしくお願いいたします。
 これまでの検討を踏まえた上で、EBPMという考え方についてのやりとりだったのですけれども、県は、今後の方向性として、県政にEBPMという概念を実際に取り入れていく検討をする予定があるかどうかお聞かせください。
〇政策企画部長(八重樫幸治君) EBPMについては、政策立案における客観性が確保できるほか、政策の根拠をエビデンスによりわかりやすく示すことで説明責任を強化することができ、さらには、政策立案プロセスのよかった点、悪かった点を分析する手段としても有効であると認識しています。
 一方、EBPMの導入に向けた実証研究を進めている国では、EBPMは、政策立案における意思決定の精度を上げる手段であり、いかに政策立案をよくするかが目的との視点を示しています。
 県においても、厳しい財政状況の中、限られた資源を有効に活用して政策の質を向上させるため、資源の投入から政策の効果が発現するまでの過程をあらわすロジックモデルを意識した事業の立案や指標の設定に努めているところであります。
 今後においても、EBPMの導入に向けた国の動向などを注視しながら、政策の論拠が明らかになるよう改善に努めてまいります。
〇8番(米内紘正君) 実際、国でも2016年ぐらいからこの考え方が進み始めていて、神奈川県の葉山町とかは、もう実際にこの概念を取り入れて政策を実行しているケースもあるので、ぜひ取り入れていただけたらと思います。
 EBPMはこれから検討していくということであったのですけれども、ここで最初の質問に戻るわけでございます。くどいようかもしれませんけれども、いわて県民計画の指標の件であります。
 政策の評価とEBPMというのは表裏一体であるわけでございますけれども、令和元年度から始まったいわて県民計画(2019~2028)においては、初年度の実施状況報告が上がってきております。これによると、県の施策に関する県民意識調査における12の政策分野ごとの実感では、12項目中、1項目が上昇、5項目が横ばい、6項目が下降と報告されています。
 これは、実際に数値を見てみると、12分の2が上昇、12分の10が下降という結果になっているのですけれども、このいわて県民計画を考える際に、岩手の幸福に関する指標研究会が最終報告書を取りまとめておりますが、やっぱりここでは、県の施策に関する県民意識調査における県民の幸福実感を一番重要視するのだと報告書に書かれているわけであります。
 つまり現状の具体的推進方策目標の8割以上は達成しているのに、最重要のアウトカムである県民の幸福の実感につながっていないのではないかというのは、実際にいわて幸福関連指標とこのアクションプランが結びついていない危険性があるわけでございますけれども、先ほどから申し上げておりますとおり、アクションプランと最上位の幸福実感のところを結びつける考え方の概念がEBPMであるわけであります。
 その中で、一番先に質問しました新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響とあわせて、ここで数百ある指標の一部でも見直して、一つでもいい―全部数値化しろというのは100%無理です。でも一つだったら何とか取っかかりをつくることができるのではないかと思うのですけれども、指標の再構築に関して所感をお聞かせください。
〇政策企画部長(八重樫幸治君) ただいま議員から御指摘がありました政策形成支援評価において、いわて幸福関連指標と県民の幸福感、県民の実感にギャップがあるものについては、総合評価に反映させた上で、より詳細に課題の検討を行ったところでございます。
 具体的推進方策指標は、10の政策分野ごとに掲げたいわて幸福関連指標の目標を達成するため、ロジックモデルの考え方を取り入れて、政策体系を構築し、県が主体的に取り組む具体的な推進方策の実績を的確に把握するための指標として設定したところであります。
 こうした中で、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、延期や縮小、中止となった事業もあることから、一部の具体的推進方策指標の見直しが必要となる可能性もあると考えております。
 あわせて、国において実証研究を進めているEBPMの手法や他の自治体の導入事例について、先ほど議員から御紹介がありましたが、EBPMの取り組みについては、例えば北上市においても、地域のマクロデータを使った分析等を行っているところでございます。そうした他団体、他自治体の取り組み状況などについても注視をしながら、さらに具体的推進方策指標のあり方について検討を進めてまいります。
〇8番(米内紘正君) ぜひよろしくお願いいたします。
 次の質問に移ります。根本はエビデンス、EBPMというところで変わらないのですけれども、地域の未来を担う教育政策において、特に、信頼できるエビデンスに立脚した政策が求められていると考えております。
 まずは、ことし3月、新型コロナウイルス感染症の流行初期に政府から全国へ一斉に学校の休業要請が行われ、知事を初め県教育委員会が学校の休業を決断したことにつきまして、県においては、どのような根拠のもとに判断されたか、また、4月に入って学校再開の決断に至ったときにおいては、どのような根拠だったのかお示しください。
〇教育長(佐藤博君) 学校の休業についてでありますが、令和2年2月28日付の文部科学省事務次官通知による全国の一斉臨時休業の要請を受けまして、学校保健安全法第20条に基づき、設置者として、感染予防の観点から県立学校の臨時休業措置を実施したところです。
 当時、新型コロナウイルス感染症に関する科学的な知見が限られていた中で、児童生徒の健康安全を最優先として判断したものです。
 学校再開については、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の提言を踏まえ、新年度における教育活動の再開等について、令和2年3月24日付事務次官通知があったものです。
 この通知をもとに岩手県新型コロナウイルス感染症対策本部の対応等を踏まえ、県立学校における新学期からの教育活動の再開を判断し、各県立学校長に対し、感染症対策を徹底するとともに、児童生徒や地域等の実態にも留意しながら、新学期からの教育活動の再開に向けた準備を進めるよう通知したものです。
〇8番(米内紘正君) 2月、3月の頭というのは、本当に知見、データが全くない中で科学的根拠を求めるというのは、そもそもないものですから、そんなことはできなかった判断だと思います。したがいまして、県があそこで判断したことは、私はすばらしい判断だったと思います。
 クラスターがどの年代で、どう発生するのか。そもそもどうやって感染するかもわからない状態で、逆に、あそこで学校を続けることについて科学的根拠があったのかと言われたら、それはないわけですから、あそこでは、最大限のリスクヘッジとしてあのように判断するしかなかったと思います。現に今、知見が積み重ねられた状態では、現在の感染拡大下においても、適切に学校の休業判断ができている状況だと思われます。
 先ほども申しましたとおり、教育政策にこそしっかりした根拠が必要、EBPMを導入する必要があると考えておりますけれども、子供たちの将来を左右する教育政策を大人たちの都合だったり思い込みで決定するのは、私は余りにもリスクが高いと思っております。
 その中で、いわて県民計画(2019~2028)の幸福関連指標においては、体力指標が主要指標となっている一方で、学力指標が主要指標ではなくなっている。ただの参考指標になっていることについて大きな違和感を感じておりますけれども、その理由と、そうなった経緯についてお聞かせください。
〇教育長(佐藤博君) 学力に関する指標の設定についてでありますが、本県の子供たちが、これからの社会のつくり手として持てる力をより一層伸ばしていくために、知、徳、体から成る生きる力をバランスよく育んでいく必要があります。
 こうした考え方のもと、幸福関連指標として、意欲を持って自ら進んで学ぼうとする児童生徒の割合、授業で自分の考えを深めたり広げたりしている児童生徒の割合を設定し、確かな学力を育むために不可欠な児童生徒の学習意欲や学習活動、教員の指導等の改善を推進することとしたものです。
 一方、参考指標とした学力が全国平均未満の児童生徒の割合については、学習内容の定着状況を継続的に確認し、全体的な底上げを図ることを目指しつつ、過度な競争への懸念など、県議会やパブリックコメント等における学力に関する御意見を踏まえ、参考指標としたものです。
〇8番(米内紘正君) ここで、体力指標はあって学力指標が参考指標になっている理由のところは、明確には説明されなかったかと思うのですけれども、では、意欲を持って学習に取り組む生徒数のアンケート調査の数字がどんどん伸び、一方で、この参考指標の学力がどんどん落ちていったら、それを県はどう判断するのでしょうか。
〇教育長(佐藤博君) 県教育委員会といたしましては、児童生徒の確かな学力の育成、それから、一人一人の子供たちを伸ばすという考え方がございます。そして、一人一人の子供たちの学習内容の定着状況を把握し、その向上を図っていくことが大変重要であると考えております。
 全国学力・学習状況調査の教科調査の結果を指標に用いることにつきましては、全国的な状況として、平均点の順位づけによる数値データによる単純な比較とその上昇を目的とするような、調査の趣旨を損なう取り扱いへの懸念も示されているところであります。
 県教育委員会といたしましては、確かな学力育成の基盤となる児童生徒の学習意欲や学習活動の改善状況を幸福関連指標としたところであり、学習内容の定着状況を参考指標とすることで、児童生徒の状況を丁寧に把握し、確かな学力の育成を総合的に推進することとしたものでございます。
〇8番(米内紘正君) ここが私が最初から課題にしているところ、何かエピソードベースの大きな力によって変わってしまっているというところなのです。だったら、体力指標だって、一人一人を伸ばすという意味であれば参考指標でいいと思うわけであります。
 そもそも今回の県の施策に関する県民意識調査の分野別実感では、教育に関する項目、子供のためになる教育が行われていると感じますかという設問に対して、感じるが5%、やや感じるが19.5%と、全分野の中で感じるとやや感じるの割合が一番低いのです。ここを細かく見ていくと、その要因ですけれども、20代の方、あるいは居住10年未満の方、あるいは今お子さんがいらっしゃらない方が何を要因に挙げているかというと、学力を育む教育内容なのです。ここを重視している。
 パブリックコメントも大切だとは思うのですけれども、私も見ましたが、来ていた意見は1件であります。やっぱりあそこは反対する方が出されるわけですから、それが先ほど来私が言っていますとおり、全ては一つの課題、仮説なのです。そこをきちんと検証しないといけない。
 岩手の幸福に関する指標研究会においても、平成30年9月の時点では、この学力指標は入っていたのです。そこから何でこれが抜けてしまったのか。先ほど、その数字を単純比較することにおいて、何か無意味な競争を生むのではないか、確かな学習の習熟度、定着がなされないのではないかという問題点を指摘されましたけれども、それは大人の都合なわけです。大人の勝手な都合で、教育の仕方を目の前の、例えば詰め込みとか一夜漬けではない教育の仕方をするところであって、その結果がはね返ってくるのは子供なのです。その最終的な結果として、学力というところではね返ってくるわけでございます。
 私が思うのは、もし県が学力ではなくて意欲を大切にする、体力指標を大切にするというのであれば、県庁の採用試験も体力テストとアンケートにすればいいと思うのです。あなたは県庁で働く意欲がありますか。はい、いいえ。でも、そうではないですよね。県庁の採用試験では、すごく難しいテストが課されるわけであります。私は、子供のためを考えたときに、学校生活で、学力は特に関係ないですと言いながら、いきなり社会に出たときにそういうことを課すのは、余りにも大人の都合だと思っております。
 この教育における指標値が私はかなり曖昧だと感じているわけでございますけれども、私は、子供の学力においては、行政が明確なビジョンを示し、しっかりと方向づけをしなければ、学力は低下の一途をたどると考えております。県は、体育、徳育とともに知育を掲げておりますけれども、岩手県の子供の学力に対して、県はどのような考えで、どのような方向へ導くつもりなのかお聞かせください。
〇教育長(佐藤博君) 子供の学力に対する考え方及び方向性についてでありますが、確かな学力の育成については、基礎的、基本的な知識、技能とこれらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等、そして、主体的に学習に取り組む態度を総合的に育んでいくことが重要であります。
 県教育委員会では、児童生徒一人一人の学力を育んでいくため、学校が組織的に取り組む体制の強化や、授業づくりの共通指針に基づいた児童生徒が学習の成果を実感できる授業づくり、授業と連動した家庭学習の充実などに取り組んでいます。
 今後、急激な社会変化に向き合い、他者と協働しながら、新たな価値を創造することができる児童生徒を育むため、国のGIGAスクール構想下で整備される1人1台端末など、ICT機器等の効果的な活用も図りながら、主体的、対話的で深い学びの推進により、これからの社会で活躍するために必要な資質、能力を育成してまいります。
〇8番(米内紘正君) 学力の向上においては、競争をあおるということではなくて、的確に子供たちが自分たちの現状を把握することが私は大変重要だと考えております。ただ一方で、国連子どもの権利委員会による、教育における過度な競争を是正するようにという日本への勧告がたびたび問題になるところではあるのですけれども、これは学力の向上自体を否定するものでは全くないのです。
 教育先進国と言われるフィンランドの教育体制は、たびたび見本となるところですけれども、ただ、フィンランドの子供たちの学力は、国際学力比較調査において総合1位なのです。フィンランドにおいてもテストはあるのです。習熟度をはかるための学力調査はもちろんあるのです。それをただオープンにして比較しないだけであります。
 国連子どもの権利委員会の日本への勧告は、競争をあおることを注意したものであって、学力調査を廃止するように求めているものでは全くありません。そもそも一部の地域に起きていることで、果たして岩手県にこの状況が当てはまるのかどうかも、きちんとデータを分析する必要があると思うのです。
 これは私はまだわかりませんけれども、少なくとも岩手県の中学生の通塾率、塾に通っている子供の率は30%で、全国で一番低いのです。塾に通っている子供が一番少ないのです。結構伸び伸び過ごしているのではないかと見受けられるのですけれども、県の学力調査に対する考え方と今後の方向性、あるいは現在、県が抱えている学力調査における課題と解決策についてお示しいただきたいと思います。
〇教育長(佐藤博君) 学力調査に対する考え方と今後の方向性についてでありますが、この調査は、本県の児童生徒の学習上の課題を踏まえて、身につけるべき学力を具体的な問題の形で示した調査であります。学習上のつまずきや教員の学習指導上の課題等を明らかにしながら、それを生かした授業改善を推進していくことで、学習状況の改善や学習意欲の向上を含む確かな学力の定着を目指していくものです。
 なお、県学習定着度状況調査について課題も指摘されていることから、現在、調査のあり方について検討を進めているところです。
 また、課題と解決策についてでありますが、県内全ての市町村教育委員会との意見交換を行い、学力調査について、児童生徒一人一人のつまずきの把握や授業改善に活用しているといった意見があった一方で、採点業務や調査結果処理に係る負担が大きい、調査結果のフィードバックまでに時間がかかるなどの課題が改めて明らかになったところです。
 県教育委員会といたしましては、各市町村教育委員会等との意見交換を踏まえ、今年度中に方向性をお示しできるよう検討を進めているところでございます。
 それから、ICTを活用して効率的で信頼性の高いデータ収集及び分析を行うことが、今後可能になっていくと思います。高いレベルのエビデンスを作成していくためには、専門的な統計手法であるとか、多くの時間と労力を要するところでございます。また、多額の経費もかかるかと思います。
 教育については、国レベルで全国学力・学習状況調査のデータ等、今後デジタル化が進んでいく中で対応していただくこともいいのではないかと考えております。例えば、全国学力・学習状況調査のCBT化といった話もございますので、私どもとしましても、国の動向等も見ながら研究を進めてまいりたいと考えております。
〇8番(米内紘正君) 学力調査の課題として教職員の方々の負担は大いにあると思います。例えば、毎日小テストのようなものをして―毎日は言い過ぎですけれども、毎週して、どれぐらい追いついてきているか、あるいは離脱しているお子さんが少ないかを調べられるのが一番効率的だと思いますけれども、それは難しいわけでございます。だからこそ、今お話しいただきましたとおり、国でももちろん進んでおりますけれども、教育界におけるデジタルトランスフォーメーションが必要なのだと思っております。
 GIGAスクール構想において1人1台端末が配布されれば、例えばそこでみんなに、はい、このテストを受けてくださいと、ぱっと受けて、そのテストをほかと競争することなく、オープンにすることなく、自分が今どこでつまずいているのかが即座にわかる。それが県としてわかる。市町村としてわかる。この地区はここが弱い。何の課題があるのだろうか、どこを解決すればいいのかが瞬時にわかると思うのです。
 私は、盛岡市に来たときに家庭教師をやっておりまして、5軒、6軒のお子さんを教えていたのですけれども、ある中学校3年生のお子さんは、分数のところから全く追いつけていなかったのです。ですので、学校の授業がつらい。関数とか言われても何もわからない。その方は分数なので小学校3年生ですかね。小学校3年生のときに離脱してしまった。そこから数年間、算数、数学の時間が全くわからなかったのです。
 よく学力がいじめの原因と言われますけれども、そんな論文は全くなくて、いじめの原因はストレスなのです。ストレスがテストと結びつくのは、学校の勉強についていけないからなのです。そこを的確にフォローアップしていく。
 今、私が出した自分がやっていた家庭教師の話は、私個人のエピソードです。エピソードベースの話です。だから、これをそのまま政策にするのは違って、そこから仮説をつくって、もしかしてこういうことがあるのではないかというところで、私は、教育政策に対してもエビデンスを用いてやっていってほしいというところであります。
 先ほど、GIGAスクール構想において、生徒側、教師側でどういうメリットがあるのか、もちろんタブレットでテストを受ければ先生は採点の必要がないですから、全く労力がかからないわけです。つまり一石二鳥。いわて県民計画(2019~2028)でもSDGsの思想を取り入れていますけれども、SDGsの思想はまさにそれです。SDGsというのは、人間中心の開発、何ものも失わない、そのトレードオフの関係を解決するためにイノベーション、技術革新を起こすわけです。まさに何ものも、生徒にもウイン、教師にもウインのためにイノベーションを使う、技術革新を使うということで、SDGsの方針に沿った教育政策を進めていっていただきたいと思います。
 教育界におけるDX―デジタルトランスフォーメーションについてお聞きしましたけれども、ここから2問まとめてお聞きします。
 菅内閣のもとで進んでおりますデジタル庁の構想の中で、地方行政においてもDX、デジタルトランスフォーメーションが急務であると考えますが、県が今後、県民への行政サービスの面において、DXをどのように進めていくか具体的にお聞かせください。
 もう一つ、それにあわせて、まず、県自体、県庁自体がICTによる行政サービスの展開とか民間のデジタル化支援、データの利活用を進めるに当たって、庁内のDX、デジタルトランスフォーメーションをどのように進めていくか、具体的な構想、スケジュール、あるいはそこに関する課題をお聞かせください。
〇ふるさと振興部長(佐々木淳君) まず、デジタルトランスフォーメーション推進に係る具体的な施策についてでありますが、国では、国、地方を通じたデジタルガバメントの構築を目指し、各自治体の取り組みの指針となる自治体デジタルトランスフォーメーション推進計画を年内に策定し、次期通常国会にはIT基本法の改正案を提出することとしております。
 県におきましては、これら国のデジタル化の動きを踏まえ、業務プロセスの見直しや関連業務を含めたシステムの最適化、手続のオンライン化などに向け、岩手県ICT利活用推進計画の見直しを初め、全庁挙げてデジタル化を推進する体制の整備や市町村、民間とも連携した対応も進め、デジタル化による県民の利便性のさらなる向上を図っていきたいと考えております。
 次に、庁内の―DXと呼ばせていただきます―DXの具体的な構想についてでありますが、県では現在、県民の利便性向上の観点から、自動車税の住所変更等153の電子申請、届け出を実施しているほか、電子申請の入力作業の自動化のためのロボティック・プロセス・オートメーション―RPAや会議録作成におけるAIの導入など業務の効率化にも取り組んでおります。また、令和4年度の稼働を目指して、電子決裁・文書管理システムの構築にも着手したところであります。
 国におきましては、令和7年度までに自治体における標準準拠システムへの移行を進めるとしておりますので、県におきましても、スピード感を持って集中的、計画的に庁内のDXを推進し、働き方改革や県民の利便性の拡充などデジタル化の効果が早期に発現するよう取り組んでまいります。
〇8番(米内紘正君) 今、スピード感を持ってとお話しされましたけれども、ここが一番大切だと思います。多分若い世代にとってみれば、私も昨年、この県議会に来て本当に愕然としたところであるのですけれども、いまだに紙です。皆さんトートバッグに資料を大量に入れて移動されているわけですけれども、今の若い世代が見たらどう思うのか。もう20年前の話かと私は思って、毎日来ると、こんなに紙が積み重ねられているわけです。もう時代錯誤も甚だしいです。
 その中で、答弁の中では、ICT、IoT、ビッグデータ、AI、こういう言葉が並んでくるわけです。言い方はよくないですけれども、これは大変恥ずかしいというか滑稽な話で、私から見たら、かつて洗濯のときは洗濯板を使っていたみたいですけれども、洗濯板を持ちながら最新鋭の洗濯機の利便性を説いているみたいな、それぐらい何かおかしい状況だなと思うわけであります。
 先日、福岡県の久留米市の市長に聞いてきたのですけれども、福岡県久留米市では、8カ月でもう稟議書は電子決裁を導入して、庁内は全部Wi-Fiが整備されて、会議をするときも、みんなノートパソコンを持って会議をするという状態がつくられたみたいです。ぜひ、これは本当にスピード感持たないと、5年、10年かけていたら次の技術に移行してしまうわけですから、多分もう本当に1年とか2年とかというレベルで計画を考えていってほしいと思います。
 最初からEBPMについて質問しているのですけれども、国のIT総合戦略会議の中には、デジタル庁の推進、デジタル化を進めているIT総合戦略会議の中にEBPM推進委員会が設置されているのです。つまりEBPMとDXというのは親和性が高いのです。エビデンスに基づく政策立案は、これまでのアナログ行政では到底実現不可能だった。ICT化が進むことによって、情報の収集であったり、回帰分析とか多変量解析とか、そういうビッグデータの解析も可能になったからこそ、最近になってこのEBPMという概念が出てきたわけであります。
 ただ単にデジタルトランスフォーメーション、デジタル化を進めたところで、県職員の皆様の負担は多少軽減されることはあっても、なかなか庁内のデジタル化が県民に還元されることは少ないと思うのです。だからこそ、確かな成果を生み出すために、EBPMを推進するためのDXだと私は考えているわけであります。
 したがいまして、この両者の有機的な活用、あるいはそれを活用するための人材育成について所感をお聞かせください。
〇ふるさと振興部長(佐々木淳君) 県のDXに対する考え方を説明させていただきたいと思いますが、今後、国、地方公共団体が共通のプラットフォームを持ち、民間も連携して社会全体のデジタル化が進展した場合には、さまざまな活動のデジタルデータがこれまで以上に得られる環境になると考えられます。
 こうした中で、DXの推進は、業務の生産性やサービスレベルの向上だけではなくて、行政データとその他のさまざまなデータを連携し活用することで、地域産業の活性化や地域課題の解決、イノベーションの創出などに資することが期待されると考えております。
 一方で、このような取り組みの基盤となるデジタルデータの活用におきましては、データの類型化や連携、利用のルールを初め、データ解析や統計処理などの高度な専門知識が必要になる等の課題もあると認識しております。
 これらの課題解決に向けて、県におきましては、国のデータ戦略等も踏まえ、各種施策展開にデジタルデータが有効に活用されるよう、データ利用のルールや行政、そして民間のいわば二層における人材育成、確保が重要だと思っております。こういったことに取り組みながらDXを推進していきたいと考えております。
〇8番(米内紘正君) まさに人材育成が進まないとこれは全く進まないところで、人材育成が進まないうちにDXとかEBPMが進むとどういうことが起きるかというと、結局、例えば何もわからない方が、これをシステム化したいと外注する。外注すると、外部のベンダーにいいようにされて、いわゆるベンダーロックインですね。全部その外注した、あるいは東京の大手のシステム会社しか使えないようなシステムがつくられてしまって、それがメンテナンスに年間1億円とか取られてしまう。
 だから、ここは県庁の中に、外のベンダーだったりシステムの開発会社と対等に戦える人材をきちんと育成しないと、本当に形だけ稟議書の電子化、ワークフローは進みました、でも、これはすごく不便ですといった状況が起こりかねないので、ぜひ、そこは本当に細心の注意を払って推進していただけたらと思っております。
 最後の項目になりますけれども、これまで長々とEBPMとかDXとか、アルファベット、片仮名を並べて話してきたわけでございますが、これらは、もちろん手法、手段であって、目的ではありません。EBPMの導入もDX化も目的ではありません。真の目的は、それらの手法をどのように用いて社会課題、県政課題を解決していくかだと思っております。
 これまでのEBPMの議論を踏まえた上で、社会課題についての因果関係をひも解いて、改めて県政最大の課題である人口減少について根本的課題と解決策を考える必要があると思いますけれども、しっかりと分析した上で、県の人口減少の根本的な課題についての考え方、解決策をお聞かせください。
〇政策企画部長(八重樫幸治君) 本県の社会減については、有効求人倍率や給与等の全国との差など雇用情勢との因果関係が深く、近年の東京圏を中心とした景気拡大の中で、東京一極集中が加速化し、特に若年層を中心に県外への転出超過が続いているものと考えております。ものづくり産業の集積や若者の県内就業の促進などに取り組むことにより、令和2年の社会減は3、872人と平成30年の5、215人から2年連続で減少幅が縮小したところであります。
 県において、社会減をゼロとするための試算を地元係数を用いた重回帰分析により行ったところ、本県と全国との給与格差を埋めることで社会減が縮小するとの予測が出ています。その根本原因の解決策として、本県の若者の住宅支援策などの実施について、現在、検討を行っているところであります。
 また、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、東京一極集中の是正や地方の暮らしやすさが広く認識され、7月から直近の10月まで4カ月連続で東京都が転出超過、本県が転入超過となるなど、これまでの東京一極集中拡大の傾向に変化が見られるところであります。
 こうしたことを踏まえ、就業促進情報誌いわてダ・ヴィンチの活用などにより、岩手県のよさを広くPRするとともに、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた今年度の補正予算により、オンラインを活用した移住相談会や多様な働き方を実践する県内企業の紹介を行うなど、引き続き、県内就業の一層の促進や本県への移住、定住を強力に推進してまいります。
〇8番(米内紘正君) もう一歩、もう二歩進んで原因を細かく追求して、細かい的を絞った政策をやっていかないと、範囲が広過ぎるのです。若者のとか、社会減をとか、東京一極集中をとか、それが細かいその後の指標に落とし込まれていればいいのですけれども、そうではないです。
 例えば、人口ビジョンも5年前、6年前の県議会の中でもさまざま議論されていたので進んでいてもおかしくないかと思ったのですけれども。岩手県の人口ビジョンの中でも、結構しっかり分析されていたので、当たり前と思われるかもしれないですが、合計特殊出生率とかをどんなにこれから上げたところで、あるいは社会減が、おととし5、200人から去年4、300人、ことし3、800人ぐらいと言っていましたけれども、おととしから去年については、これはキオクシア株式会社の進出です。キオクシア岩手株式会社の影響で800人ぐらい縮小しているのです。つまり20代、30代の男性の方の―9割が男性だったと思いますが、男性の転入者数がふえたから800人ぐらい差が小さくなったのです。今年度に関しては、完全に新型コロナウイルス感染症の影響でございます。2点とも、いわば特殊要因なわけであります。
 一番見てほしいのは、20歳から24歳の女性の人口です。これはもうさんざん言われていますけれども、この1点に限られるのです。合計特殊出生率とかもいろいろ言われますけれども、結局、出生率の低い東京都がどんどん人口がふえているわけですから、この20歳から24歳の女性の人口を、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略の中でもしっかり追っていかないと、2010年ごろに消滅可能性都市と言われた日本創生会議の資料の中でも、2010年から2040年に20歳から39歳の女性の方が半減する都市ということで岩手県は上げられているわけでございます。
 これは2010年でしたから、今2020年なので、私は数字を調べてみたのです。ちょうど10年たったわけでございます。2010年に13万6、555人いた20歳から39歳の女性は、2020年時点で10万855人で、26%減です。これは恐ろしい数字です。これが2030年、2040年と同じ減少率が続くと、まさに2040年には20歳から39歳の女性が2010年の半数以下になるわけでございます。つまりこの女性の社会減のところをまずは食いとめないと、今、男性の未婚率も全国2位でございますから、ここも連動して解決できないわけでございます。
 なので、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略とかいろいろなプランがあって、指標がごった返しているのはいいのですけれども、ある程度どこかで筋道をつけて、本当にエビデンス、これをやればここがこうなるんだというところを追っていかないと、本当に、これは私、心の底から危惧しているところです。
 2040年は、たった20年後であります。20年後にこのままの減少率でいくと20歳から39歳の女性が6万人を切るのです。本当にここに調査を絞って、どうして女性が県外に行ってしまうのか、どうして県外から女性が来ないのか。先ほど給与水準のところもありましたけれども、もちろんそこも相関関係があります。若い女性が外に出ていってしまうのは、月額、決まってもらえる給与の額、正社員の給与の額。あと、高卒の有効求人倍率が一番強い相関関係があるというレポートがあるのですけれども、ここも改めて調べてもらえばいいのですが、多様な職種がその地域にあるかどうか。
 ですので、ものづくり産業とかいろいろな産業、その地域の産業活性化策としてそれを出すのはもちろん大切です。ただ、何の問題を人口減少問題と結びつけるかということについては、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略が始まったばかりではありますけれども、改めて考えてほしいところであります。
 最後の質問で、ちょっと長くなりますけれども、長期的な人口問題を考えた上で、合計特殊出生率というのは避けては通れない課題ではあります。岩手県の合計特殊出生率はこの十数年、回復基調にある全国平均とは対照的に、当時、全国平均を上回っていたその差は逆転して、全国平均を下回る結果となりました。ただ、合計特殊出生率に関しては、2015年以前の指標値は算出方法に問題があり過去数値と比較できないと東北大学の吉田教授らの指摘がありまして、2016年から政府は、合計特殊出生率の算出方法を修正しています。
 その算出方法について指摘した東北大学の研究グループがことし6月に発表した論文ですけれども、2000年までさかのぼって合計特殊出生率を再度算出したところ、全国45の都道府県において合計特殊出生率が過去最低を記録したのは2005年。この2005年を基準として、2019年までに合計特殊出生率がどの程度回復したかという数値を見ると、2005年より合計特殊出生率が下がっている県は全国に6県しかなく、その中で岩手県は一番下、全国最下位なのです。これに関しては、首都圏への一極集中が云々と言っている場合ではなくて、この合計特殊出生率の回復が全国最下位である原因をもう一回ゼロから見直して、改めて原因を探る必要があると考えています。
 この原因を考えるときにフィンランドの例なども研究すると有益であると思うのですけれども、子育て支援制度、教育制度が充実していて、国連の幸福度ランキングでも2年連続トップのフィンランドは、2010年に合計特殊出生率が1.87と人口置換基準近くを保っていて、その制度は世界の模範とされたわけでありますけれども、そのたった8年後に、その1.87あった出生率は1.41と日本以下にまで低下しています。10年足らずの間にこれほどまでに急激に低下した事実は見逃してはいけないと思っています。
 子育て支援とか教育制度の拡充、医療体制の整備は、もちろん県民の幸福のために欠かせない政策ではあるのですけれども、それを人口減少の原因として単純に結びつけることはかなり危険があると思います。
 人口減少について、改めてどういったことに因果関係があるのかを考えて、不名誉ではありますけれども、合計特殊出生率の回復が全国最下位を記録した岩手県だからこそわかることもあるかもしれない。危機感を持って、その原因を追求して、全国に先駆けて対策を打ってほしいのでありますけれども、知事の所感をお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 県では、昨年度策定しました第2期岩手県ふるさと振興総合戦略に岩手で育てるを掲げ、市町村等さまざまな主体と連携し、結婚、出産、子育て支援などの取り組みを進めてきたところでありますが、岩手県の合計特殊出生率は全国と同様に低下傾向にあります。
 その要因としては、経済的な不安や出会いの機会の減少など、さまざまな要因が複雑に絡み合っていると認識しています。
 本県の特徴として、20代女性の有配偶率は全国上位にあるものの、30歳以上の有配偶出生率が全国下位となっていますことから、男女の仕事と子育ての両立の難しさや家事、育児の負担が依然として女性に偏っていることなどが影響していると考えられます。
 県では、少子化対策、子育て支援は、将来に関する問題であると同時に、今、目の前にある重要な問題であるという認識のもと、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略に掲げる岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らす、岩手とつながるの4本の柱に基づいて、人口減少対策を総合的に推進し、県民の結婚したい、子供を産みたい、育てたいという希望に応えてまいります。
〇8番(米内紘正君) そこをもう一度見直してほしいと思います。改めてゼロから考えていただかないと、本当に大変なことになるのではないかというのが、私の不安なわけでございます。どうしてフィンランドが下がってしまったのか。子育て支援も充実している、教育制度も充実している。
 私は、きょうここに大きな問題提起をしたい。次の課題については通告していないので、もし難しければ答えていただかなくてもいいですけれども、いわて県民計画(2019~2028)と第2期岩手県ふるさと振興総合戦略の間にはすごく大きな課題があるのです。
 今、価値観が物すごい勢いで多様化しているわけでございます。その中で、社会的なマイノリティーの方、LGBTの方もいらっしゃいますし、あるいは結婚―結婚だって強いるものではありません。あるいは子供だって、何人産めと、それは外から言うものではありません。いわて県民計画(2019~2028)の中では、やはり一人一人の幸福ということで多様性が重視されているわけでございます。
 一方で、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略は、人口減少を大きな課題と捉えていて、この人口減少問題を解決するには、ある程度昔ながらの感覚、結婚して、子供を産んでというような指標が設定されているわけでございます。
 私はずっとここに違和感を感じていて、この双方の計画はトレードオフになっているのです。どちらかを立てればどちらかが立たない。では、あえて価値観を強要してまで出生率を上げるというのは、いわて県民計画に沿っているのだろうかというところを考えてみる。そして、私はそれがフィンランドの一例を分析することによって見えてくるのではないかと考えて、これは答えは出ていないですけれども、知事、この件に関してどう考えられるか、もしお考えがあれば、お聞かせください。
〇知事(達増拓也君) 個人の生き方とか内面の問題を公権力をもって左右するというやり方で人口問題に対応するのではなくて、潜在的に結婚したい、家庭を持ちたい、また、子供を産みたい、育てたいという人たちが、さまざまな経済的、社会的困難に直面して、それで、いわゆる生きにくさということが理由で出生率が低い水準にあるという、その生きにくさを生きやすさに変えていくことが、政策の基本的考え方であるべきと考えております。
 先ほど、30歳以上の有配偶出生率が全国下位になっているということで、やはり雇用形態、労働時間といった働き方の問題、また、保育環境の整備や育児費用の支援、住宅環境の整備といったことには、背景としてその地域の経済情勢、企業などに余力があれば、働き方改革を進めたり、また、さまざまな保育環境の整備にもお金を使っていけるようになるわけです。そういう意味では、地域全体の産業振興も重要になってくる。
 そういったことを県のあらゆる部署が、それぞれの担当している部分について、生きにくさを生きやすさに変えていくということを行う中で、結果として、結婚する割合が高くなるとか出生率が高くなるとか、そういう統計に出てくるわけです。都会のブラック企業ですり切れて働くのではなくて、岩手の豊かな自然の中で、第1次産業に従事して、家庭もつくって生きていきたいというような一人一人の個性を生かした多様性のある生き方が、その統計の背景にある。そういう形でいわて県民計画(2019~2028)と第2期岩手県ふるさと振興総合戦略を結びつけて取り組んでいきたいと思います。
〇8番(米内紘正君) ありがとうございます。まさに社会が多様化、複雑化しているからこそ、一番最初の話題に戻るわけでございます。もう個人の経験とか勘とかエピソードベースではどうにもならないところに来ていると思います。だからこそ、EBPMの概念、しっかりと緻密な分析をして、一人一人の価値観、多様化に合わせた政策をこれから立案していくべきだと考えます。
 ありがとうございました。(拍手)
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって米内紘正君の一般質問を終わります。
   
〇議長(関根敏伸君) この際、暫時休憩いたします。
   午後2時28分 休 憩
   
出席議員(48名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 上 原 康 樹 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 武 田   哲 君
10  番 高 橋 穏 至 君
11  番 千 葉 絢 子 君
12  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 田 村 勝 則 君
15  番 佐々木 朋 和 君
16  番 菅野 ひろのり 君
17  番 柳 村   一 君
18  番 佐 藤 ケイ子 君
19  番 岩 渕   誠 君
20  番 名須川   晋 君
21  番 佐々木 宣 和 君
22  番 臼 澤   勉 君
23  番 川 村 伸 浩 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 小 西 和 子 君
27  番 吉 田 敬 子 君
28  番 高 橋 但 馬 君
29  番 小 野   共 君
30  番 軽 石 義 則 君
31  番 郷右近   浩 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(なし)
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後2時47分 再開
〇議長(関根敏伸君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。佐藤ケイ子さん。
   〔18番佐藤ケイ子君登壇〕(拍手)

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