令和2年12月定例会 第11回岩手県議会定例会会議録

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〇19番(岩渕誠君) 希望いわての岩渕誠です。
 登壇の機会をいただきました全ての皆様に感謝し、質問いたします。
 初めに、新型コロナウイルス感染症対策についてお尋ねします。
 まずもって、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々に対し、心から御冥福をお祈りするとともに、御遺族にお悔やみを申し上げます。
 さらに、陽性と確認された皆様に対し、お見舞いと一刻も早い御回復をお祈りし、また、医療関係者を初め、対策の最前線で活動されている皆様に対して、心からの敬意と感謝を申し上げます。あわせて、感染防止に日々の御努力を続けておられる全ての県民の皆様にも敬意を表します。
 さて、本県でも新型コロナウイルス感染症の感染者はこれまでに208人を数え、感染拡大期に入りました。地域別に見ると、感染が拡大している盛岡市などでは、他医療圏での入院措置も余儀なくされており、既にオール岩手での総力戦となっていると認識しています。県民も、懸念を持ちながらも比較的冷静に受けとめているものと感じておりますが、発生拡大期にステージが上がったこと、飲食店でのクラスターが発生したことで、年末商戦に期待をかけていた人たちへの動揺も広がっています。
 県では、今定例会に提出された補正予算案で資金需要に対応するための予算を計上しています。この補正によって、融資実行枠は新型コロナウイルス感染症対応資金と新型コロナウイルス感染症対策資金を合わせて1、200億円増加し3、200億円を確保しました。これは、当面の年末資金対応の措置か、あるいは今後も見据えてのものか、これまでの実績とあわせて、その考えと現状の県内経済についての分析をお示しください。
 これからの時期で懸念されるのは、年末年始の対応です。知事は、記者会見において、既に年末年始の休暇について分散型の取得の方向性を示しているものと承知していますが、帰省や初詣など県内外への移動について、現段階ではどのような方針かお示しください。
 また、この時期は医療体制も脆弱となりがちです。ふだんの年でも課題が指摘されていますが、ことしの場合は特に懸念が強く、受診する側も医療機関側も、また、検査体制についても対応が難しいところです。この点、どのように体制を構築するのか、考えをお聞かせください。
 さて、政府は、感染者の急速な拡大を受けて一連のGo To キャンペーンの見直しを行いました。都道府県知事の判断を尊重するものとしながらも、最終的な判断などの面で国との関係は曖昧なままです。政府の対応はあくまで運用改善であり、強制力と補償の関係など法的整備は急務ですが、全国知事会が以前から求めている新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正について、本格検討は事態が収束してからとの態度を変えていません。
   〔副議長退席、議長着席〕
 野党各党は、まさにこの時間、国会に特措法改正案を共同で提出しますが、これまで実現に至っていないことは、政府や国会の怠慢と指摘されてしかるべきです。
 政府は、営業時間短縮に係る協力金について財政支援することとし、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を措置しましたが、経済と感染防止策を両立するには、やはり法的に整理をつけておかなければならない最初のものであり、法改正について県の見解をお示しください。
 また、Go To キャンペーンについて、現状、国との間でどのような調整が進められているのか、変更する場合はどのような条件下で、どのように進めるお考えか、あらかじめ県民に示して周知する必要性があるとの認識からお尋ねします。
 次に、財政問題、今後の予算編成方針について伺います。
 これまでの質疑で税収減の実態と減収補填債の発行などについてある程度明らかになりました。ポイントは地方消費税です。県税収入における地方消費税の割合は年々増加しているところで、全体で3割を占めております。きのう明らかになった今年度当初予算に対しての税の減収分60億円余のうち、実はほぼ半分が地方消費税相当分で、これが減収補填債の対象にならないとさらなる財政調整基金の取り崩しにもつながりかねないと危惧しています。この点は指摘にとどめます。
 予算では、年明け、国の第3次補正予算が入ってきますから、県としても早期の対応が求められます。新型コロナウイルス感染症関連は切れ目のない予算編成になろうかと思いますが、方針をお聞かせください。また、新型コロナウイルス感染症対応全般に対する新年度予算編成の基本的な方針もお示しください。
 そして、もう一つ確認しておきたいのは、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金についてです。最新の全国知事会の要望などを見ますと、さらなる積み増し、継続が必要とされています。先ほど秋の段階で50億円という数字が出ましたけれども、新年度予算編成の時期を前に、岩手県として、現状、どの分野のどの事業に幾ら必要であると試算されていますでしょうか。
 私は、新型コロナウイルス感染症関連予算の財源については国が責任を持って交付金対応すべきと思いますが、これに対する政府の対応についてもお知らせください。
   〔19番岩渕誠君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 岩渕誠議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正に係る県の見解についてでありますが、特別措置法では、国の緊急事態宣言のもと、知事みずからの判断で、都道府県内の感染拡大防止や社会経済維持のために、外出の自粛や休業等の要請、解除ができることとされています。
 岩手県においても、特別措置法に基づき、緊急事態宣言発令時には接待を伴う飲食店等に対し休業の協力の要請を行いましたが、特別措置法においては、休業要請、指示に協力する事業者への支援の枠組みが十分ではないことから、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、独自に協力金の制度を設けて対応を行ったところであります。
 社会経済への影響を最小限にとどめ、より実効性が高い感染防止対策を実施するためには、特別措置法の改正が必要と考えており、県では、全国知事会に設置された新型コロナウイルス対策検証・戦略ワーキングチームに参加し、報告書において特別措置法に基づく外出自粛、休業要請等の運用基準や法的な枠組みのあり方について提言したところです。
 また、11月17日の政府予算提言、要望においても、休業要請、指示等による感染拡大防止策の措置に伴う補償金的な協力金について制度化するとともに、休業要請等を行う際の国への事前協議を不要とするよう提言、要望を行ったところであり、引き続き、あらゆる機会を通じて国に提言してまいります。
 次に、新型コロナウイルス感染症に係る予算編成についてでありますが、国の第3次補正予算は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止や防災・減災、国土強靱化の推進などを柱とする新たな経済対策を踏まえ編成されると承知しております。
 本県においても、感染の拡大により社会経済活動に影響が生じることが見込まれ、国の経済対策に対応した補正予算案を提案できるよう検討を進めてまいりたいと思います。
 また、令和3年度当初予算における対応については、国の当初予算における財政措置や県内の感染状況や社会経済活動の動向などを踏まえ、予算編成過程において適切に対応してまいります。
 次に、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金についてでありますが、さきの全国知事会において、全都道府県で合計6、134億円が不足していることから、国の予備費の活用や第3次補正予算を活用して積み増すよう提言しています。
 本県の不足額は約50億円程度であり、中小企業の資金繰り対策約20億円や感染症対策のための環境整備約17億円などを見込んでいます。
 現時点では、交付金の増額や継続について国では明らかにしておらず、引き続き、感染症対策に必要な額が交付されるよう国に働きかけてまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔商工労働観光部長戸舘弘幸君登壇〕
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) まず、事業者支援の融資枠の増額等についてでありますが、直近10月末時点での融資実績は、新型コロナウイルス感染症対応資金が7、696件で、1、253億9、036万円、新型コロナウイルス感染症対策資金が1、019件で、425億8、089万円となっています。
 融資枠の増額につきましては、年末に事業者の資金需要が増加すると見込み、まずは、これに対応するためのものであり、さらには、国による新型コロナウイルス感染症関連の保証制度及び利子補給制度の延長を見据え、二つの融資制度の取り扱いを3月末まで延長できるよう、今回の補正予算案に盛り込んだところであります。
 県内経済の現状につきましては、県が毎月実施している事業者へのアンケート調査によりますと、10月の売り上げ実績は前年同月と比較しゼロ%から20%減が42%、21%から40%減が32%、41%から60%減が14%、61%から80%減が6%、81%から100%減が3%となっており、41%以上減少の割合は計23%と、前月比で5ポイント減少し、改善傾向を示しています。
 一方、11月に入り、県内において飲食店でのクラスターが確認されるなど複数の感染事例が確認されており、特に飲食業などの事業者は、予断を許さない状況にあるものと認識しています。
 次に、Go To キャンペーンについてでありますが、Go To キャンペーンについては、国の新型コロナウイルス感染症対策分科会から実施主体である国に対し、都道府県の感染状況がステージIII相当と判断される場合には、一部区域の除外を含め、当該都道府県をGo To トラベルの対象から除外することや、Go To イートにおける食事券販売の一時停止等の検討を当該都道府県に要請するよう提言されているものであります。
 現時点におきまして、本県はステージIIの状況にあると判断しているところであり、Go To トラベルについては、国との調整は行っていません。
 また、Go To イートについては、農林水産省から県への検討依頼があり、利用客の人数制限や食事券の販売停止などの必要性について検討し、現時点において、これらの制限を行う段階にはないと考え、その旨を回答したところであります。
 県では、全国知事会を通じて、ステージIIIの運用、判断について一層の明確化を図ることなどについて要請しているところであります。
 いずれにせよ、ステージIII相当と判断される場合には、Go To キャンペーンについてさまざまな制約が生じるものと認識しており、感染症対策に万全を期すとともに、そういった事態に立ち至った場合には、県民や事業者に混乱が生じないよう、事業実施主体である国と調整してまいります。
   〔保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇保健福祉部長(野原勝君) 年末年始の対応についてでありますが、国の新型コロナウイルス感染症対策分科会の提言におきましては、帰省や初詣などにより人の移動が集中し密とならないよう、休暇の分散取得などが提言されているところであり、本県においても、近く岩手県新型コロナウイルス感染症対策本部会議を開催し、人の移動に係る対応について決定することとしております。
 また、受診体制及び検査体制については、感染者との濃厚接触が疑われる場合や発熱などの症状があらわれた場合には、年末年始においても24時間電話対応している受診・相談センターにおいて相談できる体制を整えています。
 受診、検査に当たっては、各圏域に設置している診療・検査医療機関において速やかに検査を実施できるよう体制を整備しているところであり、陽性者が確認された場合には、感染症指定医療機関等において適切な医療を提供できるよう、受け入れ体制を整備しているところでございます。
〇19番(岩渕誠君) 特に年末年始の医療機関の対応については、やはり前目前目に対応して、大事なことは周知するというところであります。特に帰省なりで来県する方に対してもきちんとやっていかないといけませんから、これは広報も含めて相当な量の対応をいただきたいと思います。
 今、御答弁があった中で、私は商工労働観光部長にお尋ねしたいわけでありますが、資金融資の関係でありますけれども、3月まで延長して対応するといったことは評価をしたいと私は思うのですが、一方で、現実としてかなりの額をもう既に借りているということです。それは審査もありますから、銀行側の問題もあって、これはなかなかこの先本当にどうなのだと。借りるほうからすると、これ以上先が見通せなければ借りてもしようがないというところになってきまして、本当にこれからの対応ということになると、直接補償か、もしくは融資でやるにしても、資本性資金を投入していくことがかなり有力な選択肢になってこようかと思います。
 補正予算でも、資本性資金のことは劣後ローンの格好で出ていますけれども、これはなかなか使い勝手が悪かったり、あるいはそれに対応できる規模というところからいうと、岩手県内で果たしてどれぐらい使えるのだということがいつも聞こえてくるのです。事ここに至ると、やはりそんなことも言っていられなくて、資本性資金をどう生かしていくかということも考えていかなければならないところに来ていると思うのですが、御所見があれば伺います。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 資本性劣後ローンについてでありますけれども、国の第2次補正予算で措置されまして、日本政策金融公庫及び商工組合中央金庫による取り扱いということになっておりますが、令和2年8月3日から取り扱いが開始されております。10月31日現在、日本政策金融公庫盛岡支店で7件の県内事業者による活用があったと伺っております。
 資本性劣後ローンは、既往の借入金の償還を進める上で、長期間償還を猶予されますことから、事業者の資金繰り負担を軽減することに加えて、金融機関においても、この債務は資本金とみなされるものでありますので、信用格付を下げずに融資の継続が可能になるといったメリットがございます。
 県といたしましては、商工指導団体や金融機関と連携いたしまして、この制度の周知を図りますとともに、必要とする事業者の方々には、貸し付けの前提となります事業再生計画の策定などの支援を行ってまいりたいと考えております。
〇19番(岩渕誠君) ぜひ、資本性資金の注入に関しては、もうちょっと力を入れてやっていただきたいと要望しておきます。
 それから、予算の部分で言うと、今までいろいろな補正予算の措置をされてきたのですが、県は県で広報をする、それから市町村は市町村で広報するというのはあるのですが、実は、まだこういう補助金があった、助成金があったということが結構あります。傾向を聞いてみますと、国が直轄でやるものは抜け落ちているケースが多いです。直接国からの広報というものがないものですから、メニューがなかなか届かないということがあって、しかも、それが年末で終わりますよとか、1月で終わりますよとか、この臨時国会の中でも、11月半ばになって制度が変わったのだけれども、これは1月末までに完了してくださいよという非常に、ある意味、乱暴なスケジュール感でやっているものもあるわけです。
 そういった意味において、やはり予算の周知というのは国の部分も含めてやっていかなければいけないと思っているのですが、このあたりはどうお考えですか。
〇総務部長(白水伸英君) 議員御指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症に関する予算は、我々県の予算だけではなくて国も含めてということでございますが、予算あるいは支援制度について、事業者の皆さんにしっかりとお伝えすることが重要であると認識しております。
 これまで、県におきましては、県の公式ホームページ等での公表はもちろんでございますが、先ほど商工労働観光部長からも答弁がございましたように、いわゆるプッシュ型で、8月と11月に全飲食店に補助金のチラシの送付等を行ったほか、11月24日から広域振興局職員が店舗を戸別に訪問して、感染症対策の徹底と補助金の活用を促したという取り組みもしております。
 それに加えまして、本県で他県に先駆けての取り組みということで、LINEと協働いたしまして、県専用の新型コロナ対策パーソナルサポートを開設しております。フォロワー数は12月1日時点で10万3、000人余となっております。この支援メニューの中にビジサポ岩手というサービスがあるのですが、事業者の種別ごとに県や国の支援制度を一部ですが紹介をしているという取り組みもしております。
 いずれにいたしましても、今後、議員の御指摘も踏まえまして、広報あるいは周知の仕方にどういった工夫ができるのかについては、引き続き検討してまいりたいと考えております。
〇19番(岩渕誠君) 制度、仕組みがあるのは知っています。だけれども、実際に伝わらなければ伝えていないことと同じですから、もうちょっとやり方を工夫して、例えば農林水産部だって、もうちょっと頑張ってほしいというところがあります。これは後で取り上げますけれども、しっかりやっていただきたいと思います。
 それでは、新型コロナウイルス感染症対策で、どうしてもお医者さんがいない、医療体制はどうなのだというところは脆弱なだけに、その強化についてお尋ねしたいと思います。
 平成19年に県立病院改革がありました。皆さん、大変血を流しながらの改革だったと思っています。それを契機に医師確保対策に力を注いできて、平成20年度から718人の岩手県内の子供たちが医学部に進学することができた、これは私は素直に評価すべきものだと思っています。ただ、依然として十分に足りているかというと、そうではないということから、さらなる医師養成が必要であるという観点からお伺いしたいと思います。
 このところ医学部進学者は県外に進学しているケースが多いようで、5年間で見ると266人の進学者のうち114人は県内、152人が県外への進学ということになっています。県内に進学した8割は奨学金を受けている、県外は3割ということであります。県内は私学ですから当然と言えば当然なのですが、県外進学者の割合が多い中で、医療資源を確保するという観点から言えば、Uターンをしてくれるかというのが、これからの医師確保の大きなウエートだと思います。
 新設の東北医科薬科大学は、本県に関係する奨学金利用者が44人在籍しているとお聞きしているのですが、他県の大学に進学すると、奨学金でも受けていなければどんどん帰ってこない方向になる、特に勤務医はそうだという話をお医者さんからはよく聞きます。
 県が提唱する地域医療基本法が、この局面ではより一層大事になってくるのだろうと私は思っているのですが、こうした点を踏まえて、今後の医師確保の方向性についてお示しいただきたいと思います。
 また、岩手県立大学の看護学部の県内就職率は、平成27年度卒業生の51.7%をピークに半数に達したことはありません。看護師など他の医療スタッフの確保についても、現状と今後の方向性、具体的な対策をお示しください。
〇保健福祉部長(野原勝君) まず、今後の医師確保の方向性についてでありますが、議員御指摘のとおり、県内高校からの医学部進学者のうち、県外に進学する方が多くいることから、卒業後に県内勤務につながる県外進学者向けの奨学金制度は、本県の医師確保を進める上で重要な施策であると認識しており、県では、県外大学進学者も対象とした奨学金養成枠を25名設定しているほか、今年度新たに東北大学に地域枠2名を設置したところであります。
 県外進学者を含む医学奨学生の県内定着を図るため、岩手県の地域医療への意識の醸成を図り、本県医療関係者との交流を目的としたセミナーを毎年度開催しております。特に、本県関係奨学生が多い東北医科薬科大学については、本県の医療の現状等についての講義を行っているほか、本県関係奨学生等を対象とした交流会を開催するなどによりまして、卒業後の勤務が円滑に進むよう取り組んでいます。
 また、臨床研修病院群合同説明会を県外でも開催いたしまして、岩手県での臨床研修を働きかけるとともに、県出身者が多い大学の県人会を通じまして勤務を働きかけており、このような取り組みも進め、県内出身進学者のUターンを促進しながら本県の医師確保を図ってまいります。
 次に、看護師などの医療スタッフの確保についてでありますが、高齢化の進展に伴う疾病構造の変化に対応し、効率的かつ質の高い医療を提供する上で、医師のみならず、さまざまな医療従事者の確保が重要であると認識しています。その中でも最も人数が多い看護職員につきましては、県内の就業者数は平成26年の1万7、305人から、平成30年は1万7、708人と403人増加している一方で、看護職員養成施設卒業生の県内就業率は、令和元年度卒業生で65.8%であり、平成25年度以降、60%台後半で推移しています。
 今後も、医療の高度化や在宅医療等への対応、働き方改革の推進に伴い看護職員の需要の増加が予想されますことから、いわて看護職員確保定着アクションプランに基づき、県内養成施設への県内出身入学者の増加及び県内就業者の増加に向けたさまざまな取り組みを推進していくこととしております。
 具体的には、中高生向けの進学セミナーの開催、看護職員修学資金の貸し付けや就職、進学説明会の開催に加えまして、今年度から、県内就業の動機づけのため、看護学生や県外就業者向けに、県内で活躍している認定看護師等による講演会を実施しておりまして、今後とも、きめ細かな取り組みを推進し、看護職員などの医療従事者の確保、定着に努めてまいります。
〇19番(岩渕誠君) いずれこういう厳しい状況の中で、県民の命を守ってくださる最前線に立った若い人材を何とか確保していただきたいと切に思っております。よろしくお願いしたいと思います。
 次に、コロナ禍における県内の雇用、就職環境についてお尋ねしたいと思います。
 これまでにコロナ禍による業績悪化の関係で623人の解雇が見込まれているそうであります。加えて、雇用調整助成金の申請件数は9、800件を超えております。特例措置によって何とか雇用が維持されているのが実態でありまして、これがないと、この1万人近い方たちは、まさに失業予備軍というような形になっているのだと思います。
 こうしたしわ寄せは新規学卒者の就職環境に反映していると思います。これまでのところ、新規高校学卒者の求人数が、10月末現在で前年同月比800人の減、率にして13%を超える減少ということです。業種的に見ていくと、コロナ禍による離職が多かったのは製造業ですが、ここでやはり400人以上減って最も減少率が高くなっているということであります。
 大卒以外の来春の就職内定率を見ても軒並み減少しています。高卒は16.5%減少して70.5%。今の段階でその程度にとどまっているということです。特に、製造業の求人低下がやはり高校生の就職と密接に関係しています。このところ高校生の県内就職の割合は上がってきています。平成22年には55%だったのが、この春は68.5%と上がっているのですが、これを押し上げているのは製造業です。
 就職者の産業別割合を見ると、5年前から製造業が10%以上上がって就職者全体の43%を占めるということでありますから、製造業が大きな受け皿として地元定着の柱になっているわけですが、この現状と雇用対策について、県の考えをお聞かせいただきたいと思います。
 それから、各種補正予算で就職未内定者や学生に対する支援措置がとられていますが、現状はどうなっていますでしょうか。
 また、今後さらに、雇用状況の悪化も懸念されるのですが、今後の補正予算あるいは新年度において県自身が臨時的雇用の受け皿とならざるを得ない場面が来るかと思っているのですが、方針をお示しいただきたいと思います。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) まず、製造業の現状と雇用対策についてのお尋ねでありますけれども、令和3年3月卒業予定の高校生を対象とした製造業の求人数は10月末現在で1、527人と、前年同期比21.7%の減となっています。求人数全体に占める割合は29.9%で、前年同期比で3ポイント減少しています。
 県内の製造業に就職した高校生の割合は、平成27年3月卒の31.9%に対し、平成31年3月卒は43.3%と11.4ポイント増加しておりまして、高校生の就職先として重要な分野であることは、議員御指摘のとおりでございます。
 県は、県内の中小ものづくり企業が中長期な将来を見据え、自社の競争力を強化し業容拡大等を図ることができるよう、ものづくり企業競争力強化緊急支援事業費補助によりまして28社を支援先として決定し、生産性向上や技術力強化等の取り組みを支援しているところであります。
 また、雇用につきましては、各広域振興局に配置した就業支援員と高校教員が連携し、高校生の県内就職に向けた個別支援を行いますとともに、県内ものづくり企業等で活躍する若手人材の動画による情報発信や企業見学会、企業説明会等を実施するなど、企業と高校生とのマッチング支援に取り組んでいるところでございます。
 次に、就職未内定者や学生に対する支援についてでありますが、これまでの補正予算によりまして、オンラインによる県内企業と大学生の面談会や、本県出身の大学生等が県内で就職活動を行う際の交通費、それから宿泊費の助成、高校生の就職未内定者等を対象とした就職面談会等を新たに行っているところであります。
 各事業の実施状況は、オンラインによる県内企業と大学生の面談会はこれまでに3回開催いたしまして、延べ78名が参加しています。さらに12月から3月にかけて6回開催する計画としております。
 また、県外在住の大学生等の就職活動に要する交通費及び宿泊費の助成については、10月末までに231名に対して支援をしたところでございます。
 高校生の未内定者等を対象とした就職面談会につきましては、岩手労働局と連携しながら、これまでに盛岡市及び奥州市で開催し、高校生34名の参加があったところであります。
 なお、本日は久慈市で開催しているところでございます。
 今後も引き続き、岩手労働局や高校、大学等と連携しながら、新規学卒者の県内就職を支援してまいります。
〇総務部長(白水伸英君) 雇用状況の悪化に伴う県における会計年度任用職員の採用方針についてでございますが、今年度、県におきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により内定を取り消された新規学卒者や、経済的理由で修学の継続が困難な大学生等につきましては、国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、会計年度任用職員として臨時的に雇用する支援制度を運用しているところでございます。この制度により、これまで修学の継続が困難な大学生等について、県内大学の学生4名を雇用し、うち3名は、現在でも県での就業を継続しているところでございます。
 今後の感染拡大の状況によりましては、雇用情勢のさらなる悪化も想定されることから、県としては募集を継続するとともに、国の経済対策や財政措置なども注視をしつつ、県内の雇用情勢を踏まえ、今後の事業のあり方について検討を進めてまいります。
〇議長(関根敏伸君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〇19番(岩渕誠君) いずれ、厳しい雇用状況、就職環境でありますので、できるだけの対策をとってやっていただきたいと思います。
 いろいろな対策を打つにしても、やはり財政の支援ということが大切であります。来年度の予算編成の基礎となります国の地方財政計画について伺いたいと思います。
 総務省の概算要求によれば、来年度の地方交付税交付額は、今年度より4、000億円少ない16兆2、000億円と見込みました。交付税の原資となる国の税収減を踏まえたものですが、地方譲与税を含む地方税全体では39兆9、000億円と、こちらは今年度より3兆6、000億円の大幅減を見込んでおります。大きな財源不足は避けられないところですが、赤字地方債でもある臨時財政対策債については、今年度の倍以上、116%増の6兆8、000億円に膨らむことが明らかになっています。
 そこで伺いますが、本県の新年度予算案において、臨時財政対策債の発行はどの程度になる見込みかお示しください。あわせて、県債残高に占める臨時財政対策債の割合はどう見込まれるかなど、現状を明らかにしていただきたい。
〇総務部長(白水伸英君) 本年9月に公表いたしました中期財政見通しにおきまして、令和3年度の臨時財政対策債の発行額は352億円と見込んでおりまして、令和2年度当初予算から127億円の増となっております。
 これは、本県の実質的な一般財源総額が縮小傾向にある中で、新型コロナウイルス感染症の影響で税収が落ち込むことを一定程度踏まえ試算したものでありますが、現時点での税収見通しを踏まえますと、発行額が今後さらにふえることも見込まれるところであります。
 一方、令和元年度末における臨時財政対策債の残高は5、239億円となっておりまして、これは、普通会計における県債残高の39.2%を占めているところであります。
 また、現在の予算額や中期財政見通しをもとに推計いたしますと、県債残高に占める臨時財政対策債の割合は、令和2年度末で40.2%、令和3年度末で41.9%になると見込んでおります。
〇19番(岩渕誠君) 今答弁があったように、県債残高に占める臨時財政対策債の割合が4割を超えてきますと、さすがにこれは放置しておけない問題だと思います。
 御承知のとおり、臨時財政対策債は、財源不足を補うために国がつくった制度であります。言いかえれば赤字地方債なのですが、本来は、地方交付税として交付すべきものを、国の都合で地方にその穴埋めとして赤字公債を発行させるという形で、平成13年度に3年間の時限措置としてスタートしたのです。まさに臨時的だったのですが、20年近くたって、制度は温存されて、地方の財源不足に対しては恒常的にこの臨時財政対策債が使われています。そして、この結果が、いつの間にかその総額が膨れ上がって、今答弁がありましたけれども5、200億円で、今後もその割合は高くなっていくと。県全体の赤字公債に占める割合も9割程度で当面は維持されると私は思います。
 この臨時財政対策債の問題を取り上げたのは、私は緊縮財政をしろということではなくて、今、積極財政を展開するにしても、将来的に健全財政に向けるにしても、これを問題にしなかったらどちらもできないという観点でお聞きしております。県として、臨時財政対策債が膨らんだ形での財政運営について見解を伺います。
〇総務部長(白水伸英君) 臨時財政対策債でございますけれども、地方の財源不足を補填するために、本来、地方交付税として交付されるべき額の一部を振りかえたものでありまして、その元利償還金相当額は、地方の財政運営に支障が生じないよう、後年度の地方交付税の基準財政需要額に参入されているところであります。
 本県におきましては、標準財政規模が縮小傾向にある中で、臨時財政対策債の償還額が増加傾向にあるため、政策的に活用できる一般財源が縮小し、財政の硬直化を招いていることから、持続的な財政運営を進める上での課題の一つと認識しております。
〇19番(岩渕誠君) 地方とすれば、これまで一括交付金とか税財源の移譲ということで、財政の自由度を優先に地方財政制度の改革を求めてきたと思います。これは私も理解します。ただ、今は臨時財政対策債など地方債改革に手を入れないと、今説明があったとおり、非常に硬直化して財政を維持できないという状況だと思います。
 スキームから言えば、臨時財政対策債は後年度交付税措置されることになっていますから、本来は地方の腹は痛まないということになるのですが、注意しなければならないのは、年々、臨時財政対策債の償還額がふえていくのですが、一方で、地方交付税全体は維持するのがやっと、右肩下がりというのが実態であります。平成13年度と比較すると、現在、岩手県では700億円も地方交付税は減少しているという状況です。安定的な地方財源を実現するためには、この臨時財政対策債という前提は、税収が右肩上がりで地方交付税も伸びていることが必要なのですけれども、前提が崩れているわけであります。そういう意味では、この臨時財政対策債の問題は、今、総務部長から説明がありましたけれども、最悪、臨時財政対策債の償還財源を生み出すためにまた臨時財政対策債を発行しなければならないという自転車操業―これはもう既にやっているところもあると思いますが、これが最大の問題で、破綻をしていくというのが最悪のシナリオになっています。
 加えて、災害が頻発して、新型コロナウイルス感染症もあるという中では、償還財源として国から交付されている地方交付税が、これを償還財源に使わないで、目の前の対策に財政投入しなければいけないという状況になっているのだと思います。
 こうした指摘を踏まえて、私は、地方財政制度はこのまま行くともう破綻状態だと思っているのですが、県としては、地方債改革の必要性や臨時財政対策債の発行が恒常化した地方財政制度に対してどのような見解をお持ちなのか、お示しいただきたいと思います。
〇総務部長(白水伸英君) 臨時財政対策債でありますが、先ほども一部答弁させていただきましたけれども、地方財政全体として生じた多額の財源不足に対応して措置されているものでありまして、地方交付税の代替財源であります。本県においても、基本的な財政需要に見合うものとして、毎年、相当規模の臨時財政対策債の発行を余儀なくされている状況であります。
 そもそも地方交付税法におきましては、地方財源の著しい不足が引き続き発生した場合に、地方財政制度の改正または地方交付税の原資となる国税の法定率の変更を行うものとされておりまして、本来であれば、国において、これに沿った対策を講じるべき状況と認識しております。
 このため、国に対し、全国知事会等を通じ、法定率の引き上げなど地方交付税制度の抜本的な見直しを検討するよう、今後とも働きかけを進めてまいります。
〇19番(岩渕誠君) 今答弁にありましたけれども、やはり根本的なところにメスを入れていないのです。金がかかる今の時期にこれをやっておかないと、後年度の負担というのは本当に大変な話なわけです。やはりこれは今政治課題にしておかないといけないと私は思っておりますので、ぜひ全国知事会等を通じて頑張っていただきたいと思います。
 次に、東日本大震災津波からの復興についてお伺いいたします。
 内陸部の最大の課題である東京電力福島第一原発事故の影響等について伺います。
 まず、本題に入る前に、女川原発の再稼働に向けた動きについて伺います。御承知のとおり、女川原発再稼働に向け、宮城県の村井知事は、立地自治体の首長などの意見を踏まえ地元同意しました。宮城県の地元紙の調査によれば、立地自治体を含めて県民の6割が再稼働に反対し、74%が原発の安全性について不安とする中で、政治の場で決定された政治決断でありました。政治決断は、当然、もっぱら責任を政治が負うという意味であります。
 現行の仕組みでは、再稼働プロセスの中で意思決定や住民理解について地方に丸投げしていると言わざるを得ない状況で、原発政策を国として推進してきた政府が、事故を経験してなお、その責任を果たそうとする姿勢は全く見えてきません。この判断とその過程について、まず、県の考えをお聞きします。
〇知事(達増拓也君) 女川原子力発電所の再稼働についてでありますが、国のエネルギー基本計画では、原子力規制委員会が、安全性について規制基準に適合するものと認めた原子力発電所については、国がその判断を尊重し、再稼働を進めることとされており、その際、国が前面に立って立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう取り組むこととされています。
 女川原子力発電所については、原子力規制委員会によって規制基準に適合すると認められ、これを踏まえ、政府として再稼働を進めることを判断し、経済産業大臣は、立地自治体の理解と協力を得るため、宮城県知事に再稼働に向けた理解要請を行い、宮城県ではこれを受け、住民説明会の開催や県内市町村からの意見聴取を行い、最終的に宮城県知事が理解要請を了解しているところであります。
 国は、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう前面に立たねばならず、また、リスクを最小限にするため万全の対策を尽くさなければならないとされているところでありますので、国がそのとおりに取り組むことを期待いたします。
〇19番(岩渕誠君) わかりました。
 宮城県の村井知事の決定の過程で、私どもに関係するところで一つ指摘をしておかなければならないのは、避難計画の実効性であります。避難計画は、原発から30キロメートル圏内の住民に対してのものですが、ここには私の地元、一関市の隣町の登米市も含まれております。計画によれば、30キロメートル圏内に当たる登米市南部の住民は、県境に近い登米市の北部に開設される避難所に行くこととしており、基本的に宮城県内で完結するという計画になっています。
 一方で、私の住む地域から原発30キロメートル圏内に通勤、通学している人もいます。私の事務所の前には一般国道342号があるのですが、毎日、石巻市の大学の送迎バスが北上市から通っていっています。私のところからは50分で石巻市内に着きますから、通勤圏と言えば通勤圏です。
 この30キロメートル圏内に行き来する県民の安全をどう守るか、これはまさに我が県行政においてもしっかりとした位置づけがあるべきものだと思うのですが、宮城県の計画では、そうした部分は余り想定していないと受けとめていますし、そもそも県域だけで完結することは困難であるということは、福島原発事故の重要な教訓の一つであると思います。
 私どもの地域は、この宮城県北部との交流も極めて盛んで、東日本大震災津波のときも、県境を越えた助け合いが当たり前になされた地域であります。また、もし万が一の事故の影響があったとして、それが宮城県内にとどまるという保証はどこにもありません。
 そこで伺いますが、岩手県に対して宮城県から原発事故時の避難計画について相談や説明があったのかどうか伺います。あわせて、岩手県南部と宮城県北部の交流の実態を踏まえ、避難計画の課題についてどのように認識しているかお尋ねします。
〇総務部長(白水伸英君) 本県におきましては、最も近い原子力事業所である女川原子力発電所から46キロメートルの距離にありまして、国が定める原子力災害対策重点区域―これは議員からの御指摘もありましたけれども、半径30キロメートル以内の区域ということでございますが―この区域の外であるところでございます。そのため、これまで宮城県内において避難計画を策定する際に、宮城県から特段の相談、説明は受けていないところでございますが、議員からの御指摘のとおり、宮城県北部に通勤、通学していらっしゃる岩手県民もいらっしゃることから、県としては、避難計画の内容について注視をしてきたところであります。
 また、避難計画を含め、原子力災害時の避難に当たっての課題についてでありますが、県境を越えた避難の必要性がある場合の広域的な連携や事故発生時の早期の情報収集等が挙げられるところでございます。そのため、広域避難については、本県では、原子力災害を含む大規模災害に備え、他自治体への応援を円滑に進めるための岩手県災害時受援応援計画や市町村や都道府県の区域を越えた避難の手順等を定めた広域一時滞在マニュアルを策定するなど、より実効的な広域連携体制を整備してきたところであります。
 また、事故発生時の情報収集については、原発事業者との協定に基づき、早期の情報連絡体制を構築しているところであります。
 今後も、原子力災害時の避難については、近隣各県との共通認識を深めていくとともに、国の防災基本計画―これは原子力災害対策編というものがありますが―や原子力災害対策指針等の改正状況を注視し、必要に応じて県の地域防災計画を見直すなど、適切に対応してまいりたいと考えております。
〇19番(岩渕誠君) いずれ、県民がその地域に行っているわけですから、それの対応については、やはり優先して宮城県に対応を求めていただきたいと思います。
 それでは、福島原発事故のほうに戻りまして、こちらは、やはり放射能の影響がまだ残っております。農林水産物の出荷制限指示及び出荷自粛要請は、国、県によるもの合わせて34品目、14市町村に及び、このうち解除に至ったのは16品目にとどまります。丸10年にならんとする今も、キノコや山菜など18品目、14市町村で依然出荷制限指示等が続いております。
 代表的なシイタケで申しますと、出荷制限地域で、事故前は生産者が1、100人以上いたけれども、今はその2割しかいません。賠償金も、これまでさまざまな分野でおよそ650億円の賠償がされていましたけれども、行政経費を中心に支払いに合意していないものもあります。中には、原発ADRの仲介で賠償対象になった費用についても、東京電力が直接賠償に応じないケースもあると聞いています。
 そもそも東京電力は、風評被害について一方的に賠償期間を設定したほか、原発事故との因果関係の厳密な証明を求めるなど、対応は極めて消極的であると言わざるを得ません。東京電力との交渉状況を踏まえて、損害賠償について今後どのように取り組んでいくのかお聞かせください。
〇企画理事兼環境生活部長(藤澤敦子君) 東京電力への損害賠償の取り組みについてでありますが、県は、東日本大震災津波に伴う原発事故により生じた損害について、市町村等と協調して、平成21年1月以降、12回にわたる東京電力への賠償請求や原発ADRへの和解仲介の申し立てを行ってまいりました。
 これにより、行政経費については、県、市町村など合わせて148億円余の請求に対し賠償額は約85%の126億円余となっておりますが、一方で、側溝土砂の一時保管に要する経費や臨時職員賃金など、過去の原発ADRにより賠償が認められたにもかかわらず、翌年度の請求において、東京電力が支払いに応じない費用もあるところであります。
 県といたしましては、東京電力の幹部職員に対し、本年7月の交渉の場において、現場の声を十分に聞き、処理の迅速化や誠意ある対応をとるよう強く要請するとともに、国に対しても、東京電力に対して、速やかな賠償の実現を指導することなどを要望しているところであります。
 今後も、原発事故に起因する損害は、原因者である東京電力が一義的にその責任を負うべきといった考え方のもと、直接請求の実施や原発ADRの利用などにより、東京電力に対して、全ての損害について実態に即した賠償を行うよう粘り強く求めてまいります。
〇19番(岩渕誠君) まず、東京電力の幹部を岩手県内に呼んで実態を見てもらうということを、もう一回やってもらわなければいけないと私は思っています。
 それから、賠償だけではなくて、実際、農林業系廃棄物や除染土壌の処理もまだ残っています。一時保管が10年続いていまして、この数量は1万3、000トンです。国が処理するとされた8、000ベクレルを超える廃棄物の処理が、岩手県では進んでおりません。除染土壌についても、処理基準の策定を国に求めたのですが、いまだに明確なものは示されておりません。これも地元に、そこはきちんとやってくださいよというような話なのだけれども、これはやっぱりプロセスなど責任を押しつけた国には、私は喝を入れなければいけないと思っているのです。こうした放射性物質汚染廃棄物の処理の現状を踏まえて、今、国との協議はどのように進められているのでしょうか。
 それから、政権がかわったり、大臣がかわったりするたびに、いろいろな大臣が県内視察にいらっしゃいます。それはありがたいことなのですが、この問題について言及があったのかどうか。私は、報道ベースでこのところ全く聞き及ばないのですが、政府高官の認識を県ではどのように感じ取っていますか。
〇企画理事兼環境生活部長(藤澤敦子君) 放射性物質汚染廃棄物の処理についてでありますが、県では、農林業系廃棄物や道路側溝汚泥、除染土壌について、市町村による保管や処理が長期的に及んでいることから、財政措置の継続や処理基準の策定を要望しているところであります。
 また、1キログラム当たり8、000ベクレルを超える廃棄物については、国の責任で処理するとされておりますが、国と市町村の協議の際に処理に向けた支援や調整などを行っております。
 さらに、復興大臣等が現地視察に来県した際には、除染、廃棄物処理への対応など、放射線影響対策の充実、強化を要望しているところであります。
 国では、昨年12月、「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針を策定し、8、000ベクレルを超える廃棄物の最終処分に向け、個別の状況に応じた取り組みを進めるとともに、基準値以下の農林業系廃棄物などの処理の促進も引き続き行うと閣議決定し、重要課題として取り組むこととしております。
 県としても、引き続き国に対して、廃棄物などの早期処理を強く求めてまいります。
〇19番(岩渕誠君) 今までの経緯の御説明がありましたけれども、昨年きちんと方針を出しましたと言うのですが、では、本当にやっているのかというと、私はやっているとは言えないと思います。そうだとすると、岩手復興局とか、これは釜石市に行くそうですけれども、やはり内陸に専任を置くぐらいのことをやってもらわないとこの問題は解決しないと思いますがいかがですか。
〇企画理事兼環境生活部長(藤澤敦子君) 議員からの御指摘のとおり、除染に関する基準がまだ示されていないことなど、さまざまな課題があると承知しております。私どもといたしましても、引き続き国に対して粘り強くそういった基準の策定等について求めてまいりたいと考えております。
〇19番(岩渕誠君) 政権がかわりましたけれども、やはり内陸にも残っていますから、ぜひそういったところも要望して、現地に住んで、その温度感を感じて対応に当たっていただきたいと思います。
 さて、原発問題を契機に再生可能エネルギーの開発が進みましたが、岩手県では自然エネルギーのポテンシャルの高さから、県内発電量に占める再生可能エネルギーの割合は増加しております。
 先日公表された岩手県の環境基本計画及び第2次岩手県地球温暖化対策実行計画、それぞれの素案を見ましても、再生可能エネルギーについて言及しておりますけれども、現状で県内の電力自給率に占める再生可能エネルギーの割合は34.4%と既に3分の1以上を占めていますが、2030年には65%にまで上げる、そして、2050年度の温室効果ガス排出量実質ゼロの大きな柱とするという計画であります。国に先駆けた方針を高く評価しております。
 県の計画では、今後の再生可能エネルギーの主力として風力発電に期待しております。2030年には現状の6倍近い15億8、800万キロワットアワーの発電量を見込み、エネルギー種別としては太陽光発電を抜いて再生可能エネルギーの約3割を担う計画であります。急速に導入が進む局面が予想されるわけですが、太陽光発電であったさまざまな課題を教訓としてほしいと思います。
 この計画の数字自体は発電事業者の計画に基づいた積み上げだと思っていますけれども、県として、その実効性をどのように捉えているのでしょうか。また、導入に当たっての課題認識についてお聞かせいただきたいと思います。
〇企画理事兼環境生活部長(藤澤敦子君) 風力発電導入の実効性と課題認識についてでありますが、2030年度の再生可能エネルギーの電力自給率65%を目指すためには、風力発電のさらなる導入が必要でありますが、そのためには、2025年度までに計画されている事業の着実な実施に向けた取り組みが重要であると考えております。
 また、1万キロワットアワー以上の風力発電事業については、法律に基づく環境アセスメントの手続を行っており、専門家によって構成される技術審査会での議論を踏まえ、希少野生動植物に対する適切な環境保全措置を講ずることや、景観への影響が懸念される場合には、調査や予測などを実施することなどを事業者に対して求めております。
 今後も引き続き、国及び市町村と連携し、風力発電事業に係る許認可や環境アセスメントなどを適切に運用しながら、環境との調和に配慮した再生可能エネルギーの導入を図ってまいります。
〇19番(岩渕誠君) 大変御期待申し上げたいというところで終わりたいところなのですが、ここに来て、風力発電のトップバッターとも言える洋野町沖の洋上風力発電事業について非常に心配な記事がありました。県として、この現状にどのような認識を持っていらっしゃいますか。
〇ふるさと振興部長(佐々木淳君) 洋野町におきましては、平成31年4月に洋野町沖洋上風力発電事業の導入に係るガイドラインを制定しまして、発電事業者を募集しているところであります。
 報道にありました民間事業者は、平成30年度に事業化に向けて調査を開始したところでありますが、調達を予定していた国内唯一の風車メーカーが事業を撤退することになりまして、現在、海外メーカーからの調達等の検討で時間を要していると聞いております。
 現時点では、同社は事業中止を考えてはおらず、事業化に向けて取り組みを継続する方針であることを確認しております。
 県としても、事業化に向け支援してまいります。
〇19番(岩渕誠君) 最大限の支援をお願いしたいと思います。
 次に、デジタル戦略について伺います。
 菅内閣の看板政策の一つが行政のデジタル化であるとされています。デジタル庁は、当面、行政のデジタル化に注力するものと思いますが、岩手県における行政のデジタル化について、どのように進めていくお考えか、現状と今後の取り組みについてお伺いいたします。
〇ふるさと振興部長(佐々木淳君) 行政のデジタル化の現状と今後の取り組みについてでありますが、県では現在、自動車税の住所変更等153の電子申請、届け出を実施しているほか、電子申請の入力作業の自動化のためのRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)や会議録作成におけるAIの導入など、行政のデジタル化による県民サービスの向上や事務の効率化に取り組んでおります。
 また、今年度におきましては、電子決裁・文書管理システムの構築や職員1人1台端末の更新など庁内デジタル化の基盤整備のほか、押印による業務の見直しにも着手したところであります。
 今後、国が創設するデジタル庁は、国や地方公共団体の業務システムの標準化などデジタル化を積極的に推進することとしており、県におきましては、国の動向を踏まえた岩手県ICT利活用推進計画の見直しや体制強化などを行い、デジタル化の効果が社会全般に早期に波及できるよう、市町村や民間と連携して取り組んでまいります。
〇19番(岩渕誠君) いずれ、そこはしっかりお願いしたいと思います。
 コロナ禍の中で、役所も企業も学校も非対面、リモートによる仕事や教育の必要性が認識された一方で、どうもこの分野では設備的な問題があるということ、それから、日本は本当におくれているのだということが浮き彫りになったわけです。一旦、この感染状況が落ちつくと、必要性は認識しても、実際は、例えば勤務体制がもとに戻ってしまったというケースも少なくなくて、これはアフターコロナの社会像とは合致しない懸念も強く出ていると認識しています。
 そこで伺いますけれども、県行政としてのリモートワークの導入の状況と今後の方針をお示しください。また、企業に対する助成金も補正予算で既に措置されていますけれども、どの程度の反応があるのか、県内民間企業の導入状況と課題についての認識をあわせて伺います。
〇総務部長(白水伸英君) まず、県行政におけるリモートワークの導入についてでありますが、県では、ことし6月に働き方改革推進会議を立ち上げまして、効率的な業務遂行や多様な働き方の推進に向けまして、効果的な取り組みを検討し、一部試行や実施をしてきたところであります。
 具体的には、サテライトオフィスの設置のほか、子育てや介護等と仕事の両立及び感染症の拡大防止を図るための在宅勤務制度の創設、県のネットワークに接続できるリモート接続数の拡充やノートパソコンの整備を進めているところであります。
 議員から御指摘のリモートワークは、感染症の拡大防止とともに、職員の働き方改革の推進に効果的なものと認識しておりまして、今後は、先ほどふるさと振興部長からも答弁させていただきましたが、職員1人1台端末を持ち運びに適したノート型のパソコンに更新するとともに、決裁手続と行政文書の管理を電子化する電子決裁・文書管理システムを導入するなど、ペーパーレス化の推進を含めた業務の見直しをあわせて行うことにより、リモートワークの導入を進めていきたいと考えております。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 民間企業のリモートワークについてでありますけれども、県内の中小企業等におけるリモートワークの導入による働き方改革の推進を支援するテレワーク導入推進事業費補助金につきましては、11月2日から27日まで申請を受け付けたところでありますけれども、116件の申請をいただいたところであります。テレワークに対する県内企業の関心の高さが見られると感じております。
 一方、株式会社東京商工リサーチが本年8月から9月にかけて実施いたしました新型コロナウイルスに関するアンケート調査によりますと、本県において、在宅勤務やリモートワークを導入した企業は全体の29.1%となっておりまして、全国平均の57.3%を大きく下回っている状況にあります。
 この調査によりますと、在宅勤務を行わない理由として、業務がリモートワークに適していない、必要書類が電子化されていない、情報セキュリティーに不安がある、労務管理が困難になるなどが挙げられています。
 県のテレワーク導入推進事業費補助金は、こうした課題にも対応できるものとなっておりまして、テレワークの導入、推進に向けた3年間の事業計画をもとに、テレワーク用通信機器の導入のほか、就業規則や労使協定等の作成及び変更、従業員に対する研修などに要する費用も補助対象とし、企業における業務環境の整備も含めて支援することとしております。
〇19番(岩渕誠君) この29.1%という数字、これはまさに人口減少対策、定住対策、移住対策の肝になる部分だと思いますので、これはきっちり予算措置を継続して、フォローしていただきたいと思います。
 本来、デジタル戦略は、行政の利便性のみならず、民間の利便性や行政との情報統合による社会変革の可能性、最近だとDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が出ていますけれども、それから、世界と戦うデジタル産業の育成など多角的なものであるべきですが、本県の場合は、まず、ブロードバンド環境の整備のおくれというところをやらないとそこにたどり着かないのが課題でありました。
 今、予算措置されて、市町村それぞれで事業者に支援をする形でこれが進んでいますけれども、住民の関心は、これはいつになったらできるのかというところなのです。今までもいろいろな理由をつけては、できますと言っていながら、ちょっと待ってくださいというのが多かったものですから、これは、やっぱりアフターコロナの社会像でも基本中の基本のデジタルインフラですから、明確にロードマップを示すべきだと考えますが、県の見解をお示しください。
〇ふるさと振興部長(佐々木淳君) デジタル環境の整備についてでありますが、国におきましては、新型コロナウイルス感染症に対応して、新たな日常に必要な情報通信基盤として、光ファイバーを令和3年度末までにおおむね全ての地域に整備が進むよう、今年度に支援制度を拡充しております。
 県におきましては、これまで、事業主体である市町村や通信事業者等へ整備の働きかけを行い、11市町村の未整備地域が国に申請したところであります。これにより、県内の光ファイバーによる超高速ブロードバンドの世帯カバー率は、平成31年3月末時点の95.5%から、令和4年3月末までに県内ほぼ全域となる99.4%まで整備が進むものと見込んでおります。
〇19番(岩渕誠君) 今ロードマップは示されませんでしたけれども、できるだけ早期に、うちの地域はいつできるのだということを示していただきたいと思います。
 デジタル戦略の最後に、デジタル関連産業の育成についてお尋ねします。
 やはり産業としてのデジタル分野には、今後もさらに大きな期待がかかるわけでありまして、産業の特性から見ても、地方分散型で十分に世界と戦える余地があると思います。
 岩手県立大学の学生の就職動向を見ていますと、県外で就職を希望する4年生のうち、デジタルと関連の強い情報通信業は、民間では最も高い人気を誇っております。県内にデジタル関連産業があれば、岩手県にとどまるという裏返しとも読めると思います。
 こうした産業の県内での育成は、高度な技術を持った学生の県内定着につながるという認識のもとでお尋ねしますが、県内のデジタル関連産業の現状と今後の取り組みについて方針をお示しください。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) デジタル関連産業についてでありますけれども、デジタル関連産業の中心となる情報関連産業は、本県では、盛岡市や滝沢市を中心に集積しておりまして、経済産業省が平成30年に抽出により行った特定サービス産業実態調査によりますと、事業所数は144社となっております。
 また、県内には大手ものづくり企業のソフト開発部門やAIの社会実装を最先端で行う企業など、過去5年間で10社が立地しております。
 一方、学生の就職につきましては、県内企業の情報が十分に伝わっていないこともあり、多くの学生が首都圏を初めとする県外に就職している状況にあると認識しております。
 県では、本年11月に県内情報関連企業を対象に実施したアンケート調査結果等を踏まえて、現在、情報関連産業の将来を見据えた戦略の策定を進めているところでございます。この戦略では、取引先の拡大や新たな技術分野への取り組みを支援いたしますとともに、多様な情報関連企業の誘致や学生に対する県内企業の情報提供などによりまして、IT人材の育成、確保、定着に向けた取り組みを推進し、集積が進む情報関連産業のさらなる成長を促進してまいります。
〇19番(岩渕誠君) いずれ、この産業自体は人材育成とセットで、そして、今の企業の実態と情報をうまくつないで、残っていただくような施策を打っていただきたいと思います。
 最後に、産業振興について伺います。これまで製造業あるいはデジタル産業について触れてきましたので、食産業と農業について伺います。
 今年度産米は、コロナ禍で外食を中心として需要が伸びず在庫が積み上がっていたことに加え、豊作基調もあって取引額は軒並み下落しました。JAの概算金ベースで、主力のひとめぼれは800円減の1万2、300円と6年ぶりに下落しました。早い段階からコロナ禍による影響で在庫が積み上がっていたことから、市場隔離、とりわけ備蓄米の買い上げ増などで対応すべきと考えておりましたが、政府は、生産者向けの対応とすれば、飼料用米への転換を進めるという対策が主だったと思います。
 県内において、果たしてこの農林水産省の取り組みはどの程度効果があったのか、まず、お考えをお示しください。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 国の米政策の効果ということでありますが、新型コロナウイルス感染症の影響によりまして、外食等での米の需要が低迷いたしまして民間在庫量が増加する中、国は、米の需給安定を呼びかけるため、各県ごとに、需要に応じた米の生産と販売について県やJAグループ等と意見交換を行うとともに、各産地で主食用米から飼料用米等への転換を促すために、例年6月30日になっている飼料用米等の取組計画書の受け付け時期について、例年より3カ月延長いたしました。
 県では、こうした国の取り組みを受け、JAグループと連携いたしまして、県内各地域における米の生産と販売の見込み、あとは田植え終了後に主食用米からの転換の可能性といったものについて、地域農業再生協議会と意見交換をして転換の働きかけを行ったところであります。
 今回の取り組みで、田植え後にどの程度主食用米から飼料用米に転換されたかというのは国から公表されていないところでありますが、本県の令和2年産の主食用米の作付は4万8、200ヘクタールということで、生産目安よりも150ヘクタール下回っているという状況になっております。
〇19番(岩渕誠君) 農林水産部長は、ちょっと大変な答弁だったと思っています。政策の効果の検証は必要なわけですから、それによって次年度どうするかというのが出てくるので、これはやっぱり国にきちんと開示をするように要求してください。
 それから、いずれ来年度産米の生産でことしのツケを払う形になって、きのうから取り上げられていますけれども、生産目安が現行制度で最大の下げとなり、生産量で1万4、000トン、面積換算で1、200ヘクタール減少という、これは非常に大変な数字だと思っています。
 政府も年明けの第3次補正予算において、過去最大の作物転換に向けた財政支援を検討する方針と報道されておりますが、作物転換圧力が一層強まることとなりそうです。ただ、これを報道ベースで見ていますと、手厚い支援を受けるためには生産コストの削減に取り組むことなどが条件となりそうで、実態は、生産コストの削減のためにAIなどを含めて莫大なイニシャルコストをかけてやらなければならないということが容易に想像されるわけであります。結果として、これに取り組めるメリットのある農家、あるいは手を出せる農家は限られてくるのではないかと私は思っています。
 本県においては、とりわけ生産コストの高い中山間地域、かつ小規模農家が多く、ことしは3ヘクタール未満では赤字の試算も出ています。実態は、転作牧草への助成金がなくなった段階で、小規模稲作農家経営は真っ赤っかであると思います。やっている私が言うのだから間違いないです。
 こうした地帯は、高齢化が進んで後継者もなく、耕作放棄地と隣り合わせであり、むしろ戸別所得補償制度を復活させて農地と家族的農業経営を守ることが、人口減少や環境保全など多面的に効果を発揮するものと私は考えております。こうした指摘に対し、県は、今後の米生産と作物転換の面でどうお考えになるかお示しください。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 今後の米生産と作物転換についてでありますが、本県の米生産は、農業経営体の約7割が携わるとともに農業産出額の約2割を占めるなど、地域農業を支える重要な役割を担っている一方、米生産を行う経営体の約9割は、経営規模が3ヘクタール未満と生産コストが高い状況にありますことから、需要に応じた米生産とともに、生産コストの低減等による経営の安定化が重要と考えております。
 このため、米生産に当たりましては、消費者、実需者に支持されるブランド米や業務用米などの用途別の生産を需要に応じて進めるとともに、飼料用米や大豆、地域特性を生かした野菜等への転換など、主食用米と転換作物の最適な組み合わせによる水田フル活用により、生産者の所得が確保できるように取り組んでいくことが必要と考えております。
 また、生産コストの低減等に向けましては、農地集積による経営規模の拡大や直播などの省力栽培技術の導入を進めるほか、収入保険等のセーフティネットへの加入促進など、生産者が安心して米づくりができるように取り組んでまいりたいと思っております。
〇19番(岩渕誠君) 直播とか中山間地域でやることが、どれだけ大変かわかりますか。均平をとるというのがあります。それから、水管理をきちんとやらなければいけない。これを今の状況でやれと言うほうが無理です。これはやはり、いわて中山間地域いきいき暮らし活動支援事業とかいろいろありますけれども、しっかりと対応していただきたいと思います。
 さて、農業全体に目を転じますと、コロナ禍の中でかなりの影響を余儀なくされ、和牛生産などを中心に厳しい環境が続きました。このところは東京食肉市場全体の取引価格も前年比を上回る水準まで回復してきましたけれども、取引量、価格とも最も多いこの年末を控えて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は再び先行きを不透明にしております。
 食産業全体で見ても依然厳しい環境ではあるものの、注目すべき資料もあります。これは日本政策金融公庫の調査ですが、消費者の巣ごもり需要あるいは内食化を受けて、食品小売業では過半数がプラスの影響だったとのことです。消費者サイドからしても、国内志向の高まりと生産品質管理による安全性の確保、海外原料調達の不確実性などの理由で、今後、国内産地との取引拡大をふやしたいとする意向も、食品製造あるいは卸、小売でも3割から4割以上の数字が出ていまして、かなり期待をされている。これは食料安全保障の観点もあると思いますけれども、ピンチをチャンスに変える材料の一つだと思いますが、価格、ロット、通年取引の課題があると思います。
 県では、食産業の専任部署を既に10年以上設置していますけれども、これまでは完成品の流通支援を中心に業務展開してきたと承知しています。いわば川下対策がメーンですが、食産業に対して本県農林水産業へのブリッジ役として、川上部分も含めて一層踏み込む時期にあると考えております。
 県内食産業で県内素材がどの程度使用されているかなどについては、専門部署が正確なデータを持ち合わせていないなど課題も多いと私は感じているのですが、食と農林水産業は一体であるという認識のもと、今後の展開について方針をお聞かせください。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 食産業の今後の展開についてでありますけれども、食産業は、本県の基幹産業の一つとして地域経済の牽引役を担っており、県では、農商工連携等により、地域の特色ある農林水産物等を生かした付加価値の高い商品開発や販路開拓等に取り組んできたところであります。
 これまでの取り組みによりまして、県産の米粉や小麦粉を使用した麺やスイーツ、パンなど岩手県独自の商品が多数開発、販売されてきたところであります。また、県が主催する食の商談会出展者に対して行ったアンケートでも、半数を超える事業者が、県産材料を70%以上使用していると回答するなど、県産農林水産物の利用が進んでいると捉えているところであります。
 一方で、県産食材を利用する場合の課題として、調達コストの高さや定量確保の困難さなどが挙げられておりまして、これは議員からの御指摘のとおりでありますけれども、翻ってみますと、高価格、少量生産であっても、消費者に選ばれるような高品質で魅力ある商品づくりを支援していくのが、一つの方策であろうと考えています。
 このため、今後とも関係部局等と連携いたしまして、いわて希望応援ファンドによる助成や産業創造アドバイザー等専門家の派遣などを通じまして、県産食材を活用した付加価値の高い商品づくりを支援いたしますとともに、県内外での商談会開催や食の情報発信などによりまして販路開拓を支援してまいります。
〇19番(岩渕誠君) ロットの問題で言うと、岩手県で最大の問題は和牛です。いわて牛というブランドはありますが、市場側あるいは卸業者から見た実態は、農協ごとに細分化されたブランドでありまして、これはそれぞれ年間1、000頭足らずです。ブランドと呼ぶにはちょっとロットが少な過ぎるのです。これが安定的高値販売への足かせの一つということは、東京都の食肉市場関係者はみんな言っているのですが、私もずっとブランド統一の必要性を言ってきています。
 販売環境はコロナ禍で一層厳しいですから、今やらないで、いつやるのだという話なのです。これは最後のチャンスだと私は言わざるを得ないので、しっかりとした取り組みを求めたいのですが、県の取り組み状況をお示しください。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) いわて牛のブランド統一の取り組みについてでありますけれども、ブランド牛として高く評価されるためには、議員御指摘のとおり、市場において一定のシェアを獲得し、流通関係者の需要に常に応えられる頭数を継続的に出荷することが重要と考えております。
 このため、県や市町村、関係団体等で構成するいわて牛普及推進協議会では、昨年5月に策定いたしましたいわて牛生産流通戦略に、いわて牛へのブランド統一を初めて位置づけまして、農業団体や系統出荷以外の生産者組織等との意見交換を実施してまいりました。
 その結果、個別のブランドで出荷している複数の生産者組織から、いわて牛へのブランド統一に向けた前向きな意見が寄せられたところでありましたので、今年度は、前向きな意見を寄せていただいた当該組織と個別に協議をいたしまして、必要な環境の整備を図ることにしております。
 今後も引き続き、各団体等に対し、ブランド統一の意義、実需者のニーズ等を伝えながら、その実現を目指して取り組んでまいります。
〇19番(岩渕誠君) 私は、ブランド統一の話を10年ぐらい続けてやってきましたけれども、初めて納得のいく答弁かなと思います。ぜひ進めていただきたい。本当にこれを逃すと大変なことになります。
 最後に要望しておきますが、飲食店が痛んでいるのはそのとおりですが、その源流をたどれば農林水産業への手当ても必要だと思います。御検討いただきたいと思います。
 終わります。(拍手)
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって岩渕誠君の一般質問を終わります。
   
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時40分 散 会

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