令和2年9月定例会 第10回岩手県議会定例会会議録

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〇39番(工藤大輔君) いわて新政会の工藤大輔でございます。
 世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス感染症により、とうとい命を失われた方々に哀悼の意を表しますとともに、現在も治療を受けられている方の一日も早い回復をお祈りいたします。また、命と健康を守るために細心の注意を払いながら、医療、保健、衛生、介護などの職務に当たられている方々に、敬意と感謝を申し上げます。
 本県で7月29日に初めて感染者が確認されてから68日が経過いたしました。きのうまでに24人の感染が確認されておりますが、感染の拡大は最小限であり、重症者の発生も抑えられております。引き続きの対応と県内経済の立て直しに注力し、社会的弱者への対策を強化していただきますようお願いいたします。
 いわて新政会としても、これまで4度にわたる要望を行い、県当局の対応を求めてまいりました。今後も適宜、要望や情報共有をさせていだきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
 それでは、通告に従い順次質問をさせていただきます。
 初めに、コロナ禍における岩手の成長戦略についてお伺いします。
 未知なる感染症がもたらした影響は、日本が抱える弱みを顕在化させました。不要不急の外出自粛を求め自由な行動に制限が加わったことにより、国民生活は一変し、価値観やこれからの社会への認識に大きな変化が生まれました。テレワークによる働き方、企業のリスク分散への考えが拡大し、首都圏から地方への移転や拠点づくり、サプライチェーンの再構築などの動きも出ております。
 新型コロナウイルス感染症がもたらすさまざまな影響を見通し、新機軸を打ち立てられれば、コロナ後の社会の変化にいち早く対応した経済の再生や暮らしに希望の持てる岩手となると思います
 現在の社会的な危機を変革のチャンスと捉えて施策の展開を図ることに、県民は期待をしております。
 知事は岩手の特徴を生かし再生、発展させるために、どの分野を成長の柱として捉え戦略を描いていこうとしているのか、お伺いします。
 いわて県民計画(2019~2028)の初年度の評価についてお伺いします。
 県民が感じる幸福を政策の推進手法に取り入れた、いわて県民計画(2019~2028)が実施され1年が経過します。さきに示された主要施策の成果に関する説明書と、いわて県民計画実施状況報告書によりますと、いわて幸福関連指標の達成状況は、おおむね達成以上が61%となっており、前の計画の成果と比べ低目に出ていると感じました。
 また、明らかなおくれを示すD評価が38%となっており、新型コロナウイルス感染症の影響はほぼ受けていない中で、10の政策分野において評価が二分していることも気になるところであります。
 現時点において、知事は、いわて県民計画(2019~2028)の初年度をどのように総括しているのでしょうか、お伺いします。
 また、令和2年5月15日に改定した岩手県新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針において、本県の新型コロナウイルス感染症対策は、いわて県民計画(2019~2028)及び第2期岩手県ふるさと振興総合戦略と目指す方向を一にするものである。計画に沿った事業のかなりの部分が、延期や縮小、中止となる可能性があるとしております。
 第1期アクションプラン、政策推進プランにおいて、外国人宿泊者など施策推進の前提が大きく変わっているものもありますが、今年度の事業を評価するに当たり、現状の評価基準に沿って実施していくのかどうかお伺いします。
 次に、新型コロナウイルス感染症対策についてお伺いします。
 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部からの次のインフルエンザ流行に備えた体制整備についてに基づいて、季節性インフルエンザ流行期に備え、かかりつけ医などに発熱者の相談、検査をするための体制整備を10月中に整えるよう都道府県に求めることとされました。
 一般に、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの症状を見分けることは難しいとされており、混雑も予想される医療機関の安全を保ちながら、発熱患者への適切な医療体制づくりには、地元医師会を初めとする関係機関の調整が必要となります。地域の実情に応じながらも1医療機関に患者が集中することがないよう、複数の医療機関において発熱患者等の相談、診療、検査ができる体制が望ましいとされておりますが、九つの二次医療圏における医療資源には大きな差があります。どのような医療体制を目指していくのかお伺いします。
 県では、県民の安心を得るために国が示した公表基準で否とした職業、居住している市町村を公表対象としていますが、地域住民に注意喚起を行う上で一定の効果を発揮してきたと思います。一方で、他者に感染させ得る時期以前の行動歴は、感染症の蔓延防止に資するものではないことから公表する必要がないとされておりますが、感染2週間前の行動歴を公表対象とするなど、全国的にも国のガイドライン以上に詳細な公表を行ってきました。
 感染確認に対し冷静に受けとめている人がいる一方で、感染者に関する興味や感染リスクを避けるため知り得る情報は全て知りたいという方も一定数おります。感染症では、積極的な疫学的調査を行い速やかな公表が求められますが、個人情報やプライバシーを守ることも前提となっております。地域とのつながりが深い県民性は、そもそも個人が特定されやすい環境下にあることも踏まえ、現在の公表基準に対する考えと課題、今後の方針についてお伺いします。
 新型コロナウイルス感染症に感染した方やその御家族、職場などへの偏見や差別、誹謗中傷が全国的にも後を絶ちません。SNS上では悪質な書き込みが相次ぐなど、感染された方や関係者の心労は察するに余りあります。残念ながら県内でも同様の事案が発生しており、その影響は、新型コロナウイルス感染症に感染することが悪いことのような意識につながりかねず、受診控えや感染経路の特定に支障が出ることも懸念されます。
 全国の自治体においては、人権保護の観点で条例制定に向けた動きも拡大しており、専門相談センターの設置や弁護士の支援体制の整備など、被害者支援や抑止力につながる取り組み事例があります。
 知事は定例記者会見において、他県に見られる条例制定について現状では必要ない旨の見解を示されておりますが、コロナ対策は長期化することが予想されており、今後の感染拡大によって、いわれなき中傷や不利益、学校、保育施設等におけるいじめや登校、当園拒否といった差別が起こることがないよう、取り組みの強化が求められます。
 まずは県民宣言を取りまとめ、人権を守る意識の啓発と県民が一丸となって取り組める体制を整え、差別的行動が起こることがないよう強力に取り組むべきと考えますが、知事の見解をお伺いします。
 令和3年3月11日で発災からちょうど10年を迎えます。当初、国の復興・創生期間は今年度までとされていましたが、延長されることとなり、復興庁設置期間及び復興特別会計も延長されることとなりました。それにあわせて、国の復興庁の窓口となる岩手復興局も釜石市に拠点を移し、より被災地のそばで復興を完遂する体制が確保されました。
 また、県でも、岩手県東日本大震災津波復興委員会において、いわて県民計画(2019~2028)の第1期アクションプランである復興推進プランを、国の復興・創生期間の延長に合わせ見直しすることが了承されたとのことでありますが、10年目以降の3.11を風化させないためにどのように取り組んでいくのか、知事の考えをお伺いします。
 11月に開催を予定していた、県の震災津波伝承館と米国ハワイの太平洋津波博物館、インドネシアのアチェ津波博物館と連携した、(仮称)三陸TSUNAMI会議については、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが終息に向かわない場合は、会議の開催を延期または中止もあり得るという話を聞いておりましたが、開催はどうなったのでしょうか。3.11の教訓を後世に残していくためにも有益な取り組みと期待していたものであり、仮に予定どおりの開催が困難としても、それにかわるものを実施できないかと考えるものであります。今後の方向性についてお示し願います。
 東日本大震災津波からの復興では、被災者一人一人に寄り添い、生活面などへのきめ細かな支援が必要であります。中でも被災地の子育て世帯にとって、児童生徒の通学交通費が経済的に大きな負担となっていることから、県では、平成30年度から、通学定期券購入費用の2分の1を補助する被災地通学支援事業費補助を実施しております。平成30年度は1、472人、令和元年度は1、873人が利用するなど、県が単独で支援している被災地通学の支援は、子育て世帯の負担軽減に大きく寄与しているものと評価しております。
 この補助制度は、開始時点では令和2年度末までの3年間とされており、今年度末で制度が終了した場合、家計に及ぼす負担増が危惧されます。
 沿岸市町村からも、県に対して来年度以降の制度の継続について要望されていると承知しており、被災地における児童生徒の教育環境の充実と子育て世帯の負担軽減を図るため、来年度以降も被災地通学支援事業費補助を継続する必要があると考えますが、知事の考えをお伺いします。
 次に、観光振興についてお伺いします。
 10月から東京発着が含まれたGo To トラベルキャンペーンは、秋の行楽シーズンとも重なり、観光地ににぎわいをもたらしています。3、000円に引き上げられた県民限定の泊まるなら地元割クーポンは、9月19日の応募開始から10日もたたずに予定枚数の15万枚に達し、観光需要の盛り上がりを感じます。
 一般会計第3号補正予算での2、000円の泊まるなら地元割クーポンの10月1日現在の利用状況は、配布予定枚数20万枚中約16万2、000枚の発行で、利用実績は4万1、500枚と聞いており、実際に利用した人は25.6%にとどまっております。最終的に事業者が精算を済ませれば利用実績はふえますが、第2弾の泊まるなら地元割クーポンが予定枚数に達したとしても、発行枚数の全てが活用されるとは限りません。
 今後、第1弾の最終実績や東北及び新潟各県分の応募状況を見ながら、県民向けに追加で募集をかけてはと思います。
 また、事業者からは、精算にタイムラグが生じるため資金繰りに苦労するとの声が聞かれます。事業の課題を含め、今後どのように進めていく考えかお伺いします。
 また、来年は、東北6県の自治体の観光関係者とJR6社などが一体となって行う大型の観光キャンペーン、東北デスティネーションキャンペーンが控えております。震災から10年の節目に開催する東北DCでは、各県の力を掛け合わせ東北の大きな力とし、東北の魅力を国内外へ発信することによって東北観光のブランド化を推進していくとのことであります。東京オリンピック・パラリンピックの開催時期と重なることもあり、日本が世界から注目されるときとなります。
 新型コロナウイルス感染症の感染状況や海外との渡航制限の解除、訪日観光客の見通し等の不確定要素がありますが、オリンピック・パラリンピック効果を含め東北DCをどのように岩手の観光振興に結びつけていくのでしょうか。半年後に迫った東北DCへ向けた具体策をお伺いします。
 就職氷河期世代の人材確保についてお伺いします。
 就職氷河期世代とは、1993年から2004年に高校や大学などの卒業期を迎えた世代と定義づけられております。バブル崩壊後に続いた景気の低迷により企業の新卒採用が抑制され、希望の職種への就職がかなわず、非正規での雇用形態を余儀なくされ、転職も不利に働いてきました。それゆえ、この時期に社会人としてスタートを切った世代には、いまだ生活基盤が安定していなかったり、ひきこもりの状態が長く続いている人も少なくありません。
 就職氷河期世代で不安定な就労状態にある方は全国で54万1、700人、本県では6、200人とされており、雇用状況が悪化している中で対策が必要であります。官民挙げての支援体制により、この世代の正社員をふやす取り組みをどのように進める考えかお伺いします。
 また、行政機関における職員採用も一定程度進んできましたが、県の採用実績は減少傾向にあります。就職氷河期世代のみを対象とした採用予定があるのは、大船渡市、陸前高田市、矢巾町に限られております。
 行政機関における採用はどのように進めるべきと考えているのか、県の職員採用の考え方をお伺いします。
 県産材の利用促進についてお伺いします。
 県内の木材需要は、大型の木材加工施設、木質バイオマス発電施設の進出と復興需要により、素材生産量は150万立方メートル程度に増加し、木材需要量に対する県産木材の比率は81.2%の高水準で推移してきました。
 しかし、被災地での住宅建設の復興需要の低下とともに新型コロナウイルス感染症の影響が重なり、県産木材需要を牽引してきたバイオマスエネルギーへの供給は安定しているものの、住宅建設用資材やパルプ用のチップの出荷が落ち込んでおります。
 全ての関係者の主体的取り組みを推進するため、いわて県産木材等利用推進協議会が7月に設置され、今年度の取り組みとともに来年度の課題が共有されたとのことでありますが、林業の成長産業化に向け、県産木材の利用推進にどのように取り組む考えかお伺いします。
 原木シイタケについてお伺いします。
 東日本大震災津波の被災を受けた東北電力福島第一原子力発電所の事故により、出荷制限などの影響を受けたシイタケ産業は、徐々にではありますが生産を取り戻しております。令和元年の原木シイタケの生産量は77トンで、うち24トンが洋野町、8.8トンが宮古市、7.2トンが岩手町となっております。一大産地であった県南部13市町の生産量は15.5トンまで回復しましたが、本格的な産地の再生に向け一層の手厚い支援をお願いいたします。
 原木シイタケの平成30年度の県平均単価は1キロ当たり3、476円で、全国平均の4、149円を16.2%も下回っております。この傾向は東日本大震災津波の発災以前から続いており、高い技術力や生産実績が販売価格に反映されにくい状況を克服していかなければなりません。
 原木シイタケ価格の低迷の要因をどのように捉えているのか、今後の対策とあわせてお伺いします。
 磯焼け対策についてお伺いします。
 近年、海水温の上昇による影響等により、全国的に藻場の減少いわゆる磯焼けが深刻となっており本県も例外ではありません。藻場の減少は、魚介類の生息域や産卵場所を減らすとともに、水質の悪化を招くなど、海の砂漠化をもたらす深刻な課題であります。
 磯焼け対策として、過密に生息するウニの除去や、侵入防止フェンスの設置、胞子をふやす母藻の海中への投入、岩盤に海藻の胞子が付着しやすくなるよう石灰藻の除去などが主に挙げられます。
 大槌町が令和元年から行っている船越湾内での対策によると、初年度にウニの除去やワカメの新芽、昆布の種を岩礁に固定した結果、対策を講じたエリアには2年目に小型海藻類が繁茂し昆布の発芽も見られるようになり、3年目に昆布などの大型海藻の繁茂が期待できる成果が出ています。
 県では美しい海環境保全対策事業により、大船渡市の四つの活動組織へ磯焼け対策の支援を行っていますが、年々深刻化する磯焼けに対し全県的な取り組みを講じるべきと考えます。今後、県は磯焼け対策についてどのように進める考えかお伺いします。
 また、全国2位の生産量を誇る本県のキタムラサキウニの高単価需要期での出荷を目指し、県ではこの定例会に、新たなウニの蓄養、出荷モデルの構築を図るため、黄金のウニ収益力向上推進事業を提案しています。
 国産ウニが品薄となる冬場の価格は、夏場と比べ、東京都中央卸売市場では1キロ当たり3、000円以上上昇しております。高品質でブランド力のある三陸産のウニの出荷は、市場や生産者からも期待が寄せられるものと思います。課題として12月から3月の間は養殖昆布が枯れているため、大量にウニを蓄養する際の餌料の安定確保や保管、夏場と同程度の身入りの確保が挙げられますが、県では、本県ウニの収益力の向上にどのように取り組まれるかお伺いします。
 住宅政策についてお伺いします。
 新型コロナウイルス感染症の影響により、全国の新設住宅着工戸数は今年度が73万戸、来年度が74万戸に落ち込むとの予測を野村総合研究所が発表しました。全国の新設住宅着工戸数は4月から6月までの第1・四半期は前年対比12.4%の減少となり、県内においては第1・四半期の住宅着工戸数が1、459戸と、前年同月比で29.6%の大幅な減少であり、消費者の住宅着工に対するマインドは冷え込んでおります。
 新型コロナウイルス感染症の感染状況による経済活動の先行きの不透明感が続くことにより、着工戸数の落ち込みとその長期化も想定されます。
 戸建て住宅に代表される住宅産業は、裾野が広い産業と言われており、地域経済への影響は決して小さいものではありません。減少が続く住宅着工に対し早急な対策が求められますが、どのように取り組む考えかお伺いします。
 2018年度末に、国土交通省から小規模住宅における2020年省エネ基準適合義務化の方針の延期が示されました。日本の住宅における断熱性能の基準は、世界と比べると決して高い規格ではありませんが、省エネ住宅の周知や普及、中小工務店や建築士の省エネ基準の習熟が課題に上げられます。
 鳥取県では、欧米を上回る省エネ住宅基準を新たに作成し、国内基準より30%から70%の冷暖房費を抑える新築住宅に対し最大150万円の助成を行いながら、2050年にカーボンゼロを目指す取り組みの一つとして、助成制度を始めました。
 本県では、省エネ性能プラス岩手らしさを備えた岩手型住宅を推進しています。北海道並みの厳しい寒さとなる岩手の冬を考えると、ハイスペックな岩手型住宅基準を新たに設定し、県産木材の活用とあわせて支援制度を設けることにより、市場の優位性や大手との競争力が高まり、地元工務店の育成につながると考えますが、県の考えをお伺いします。
 最後に、教育の振興についてお伺いします。
 小学校における専科教員の活用は、教科指導力を持つ教員により学年を越えた系統的な指導を行うことができることから、本県でも英語、理科、音楽の授業での導入が見られます。
 学級担任においても、教科の持ち時間の減少により、児童に向き合える時間がふえ、さまざまな変化に気づきやすくなるメリットもあります。今後、中学で苦手教科になりやすい算数や5年生から必修化された外国語の専科指導の増員を図り、いわゆる中1ギャップの要因の解消に努めるべきと考えます。
 文部科学省は、2022年を目途に小学校高学年において教科担任制を本格実施すべきとし、教育課程のあり方を検討していくとしておりますが、県では今後どのように取り組む考えかお伺いします。
 あわせて、市町村の希望に対しどの程度の配置ができているのか、お伺いします。
 GIGAスクール構想の実現に向けた整備が急速に進んでおります。小中学校では年度内に特別支援学校を含む全ての小中学校で1人1台端末の整備が完了予定であり、県立学校においてもICT環境の整備に向けた取り組みが進んでおります。
 教育効果としては、反転学習や振り返り学習による子供たちの個別学習の充実、習熟度別学習や個別最適化した教材の活用により、より探求した学びや課題解決力を養う学びに時間を充てることが期待されております。
 今後、教師が円滑に利用できるよう専門的技術を有するICT支援員やGIGAスクールサポーター等の適正配置が必要となるほか、端末やソフトウエアの整備を市町村がそれぞれ行うため、教材ソフトの相違がある場合、教員の負担となり得ることや、小学校の学級担任は複数の教科指導を担うため、それぞれの教科において研修が必要となります。
 これらを踏まえ、計画的にどのように進めていくのかお伺いします。
 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 工藤大輔議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、コロナ禍における岩手の成長戦略についてでありますが、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、分散型社会の重要性や地方の暮らしやすさが広く認識される契機となっており、感染防止対策をしっかり行うことが地方創生にもつながるという考えのもと、地方がよりよくなっていく政策の流れをつくっていきたいと考えております。
 このような中、テレワーク等の多様な働き方の加速化や、教育、行政などあらゆる分野のデジタル化が進展し始めており、リモートワーク等を活用した移住、定住の促進やソサエティー5.0の推進等による地域課題の解決が求められています。
 こうした動きは、先端技術の活用を図り、社会経済環境の変化を踏まえながら、長期的な視点に立って、岩手のよさを生かした新たな価値、サービスの創造などを進める県民計画の11のプロジェクトと重なるものであると考えております。
 そのため、例えば、北上川バレープロジェクトにおけるものづくり関連産業や新型コロナウイルス感染症検査製品開発で注目を集める医療機器等関連産業の一層の集積、活力ある小集落実現プロジェクトや人交密度向上プロジェクトが目指す、岩手のよさを生かした交流人口や関係人口の拡大、農林水産業高度化推進プロジェクトにおける、先端技術を活用したスマート農林水産業の展開などの取り組みを加速化させることにより、暮らしやすく働きやすい岩手の実現を目指してまいります。
 次に、いわて県民計画(2019~2028)の初年度の総括についてでありますが、いわて幸福関連指標の達成状況について、政策分野別に見ると、家族・子育てや安全の分野で達成度が高くなっている一方、居住環境・コミュニティや教育の分野で達成度が低くなっているところです。
 また、いわて幸福関連指標の一部がD評価となった要因については、東京一極集中に歯どめがかかっていないことや台風災害の影響のほか、指標の設定に当たり、県民にわかりやすく、岩手の強み、弱みを把握するため、できるだけ全国比較できる指標を選定し、全国や東北の上位を目指すなど高い目標値を設定したことも、その一因と考えられます。
 今後実施する政策評価において、指標の達成状況に加え、社会経済情勢等を踏まえて課題を分析し、10の政策分野の取り組みに反映させることにより、いわて幸福関連指標の向上を図り、県民一人一人の幸福度を高めていきたいと思います。
 次に、誹謗中傷対策についてでありますが、県では、岩手県新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針において、患者、感染者、その家族や治療、対策に携わった方々等の人権が侵害される事態が生じないよう、適切に取り組むこととしております。
 本年7月には、医療関係者等に感謝と思いやりの気持ちを持って応援するよう、産学官が参画しているいわて未来づくり機構ラウンドテーブルメンバーにより、いのちと健康を守り、生活となりわいと学びを支える岩手宣言を取りまとめ、県民の皆様に対して呼びかけたところであります。
 また、感染された方やその家族などに対する誹謗中傷や差別的な行為は、人権擁護の観点から決して許されないことに加えて、症状のある方が誹謗中傷等をおそれ受診や検査を控えることにより、見えない感染拡大につながる可能性があることから、県民の皆様に対して、定例記者会見や県本部員会議におけるメッセージなど、機会あるごとに呼びかけてきたところであります。
 さらに、県が管理するツイッターなどのアカウントに対して、感染された方への誹謗中傷や個人情報を特定するような悪質な書き込みがあった場合は、これを画像で保存するとともに、被害者からの求めがあれば提供できるようにしていくなど、被害に遭われた方の救済に役立つような取り組みを行っています。
 今後におきましても、感染された方等への誹謗中傷や差別的な声に対し厳格な姿勢で臨むほか、個人の尊厳を守り、県民一人一人がお互いに支え合いながら幸福を追求していくことができる地域社会の実現を目指すことについて、引き続き呼びかけてまいります。
 次に、3.11を風化させないための取り組みについてでありますが、東日本大震災津波の事実を踏まえた教訓や復興の姿を広く発信し、確実に後世に伝えていくことは、国内外の防災力向上に貢献するほか、復興への理解や継続的な復興への参画を推進するためにも極めて重要であります。
 このため、いわて県民計画(2019~2028)の復興推進の基本方向において、新たな柱として、未来のための伝承・発信を掲げ、取り組みを進めているところであります。特に、震災から10年の節目を控え、改めて東日本大震災津波からの復興に対する国内外からの関心が高まっており、より一層の伝承と発信の取り組みを進めていく必要があります。
 このことから、東日本大震災津波伝承館を拠点に、県内の伝承施設や語り部団体などと連携し、オンラインなども活用しながら、震災の事実や教訓を発信するとともに、修学旅行や震災学習などでの活用を通じ、次世代への伝承を進めます。
 また、いわて震災津波アーカイブの活用の促進や復興フォーラムの実施、来年度、震災10年の節目に復興五輪として開催される東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の機会を捉えた情報発信など、多様な取り組みを展開し、将来にわたって復興への理解を深め、参画を促進するよう、未来のための伝承、発信に永続的に取り組んでまいります。
 次に、被災地通学支援事業についてでありますが、県では、復興推進の基本方向の柱の一つである暮らしの再建に教育、文化、スポーツを掲げ、これまで子供たち一人一人の学びの場の充実を図り、安心して学べる環境の整備を進め、被災した児童生徒等が希望する進路を実現できるよう取り組んできたところです。
 発災から10年目を迎える中、復興の歩みは着実に進んでいますが、心のケアやコミュニティー形成支援、まちづくり後の事業者支援など、復興の状況に応じた取り組みが今後とも必要であります。
 子供たちの学びを支えている本事業の来年度以降の継続については、沿岸市町村や町村議会議長会からも要望をいただいているところであり、こうした地元の声を踏まえ調整を図ってまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔政策企画部長八重樫幸治君登壇〕
〇政策企画部長(八重樫幸治君) 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の評価についてでありますが、政策評価は、政策推進プランに掲げる指標の達成状況や県民の実感、課題等を分析し、その結果を次の政策等に適切に反映させることにより、効率的かつ効果的な行政を推進するとともに、県民の視点に立った成果重視の行政運営を図ることを目的としているところであります。
 今般の新型コロナウイルス感染症の影響を受けることになる今年度の事業については、来年度行うこととなる政策評価において、指標の達成状況や県民の実感に加え、経済の回復状況を初めとした社会経済情勢などをしっかりと踏まえて行うことが重要と考えますが、その総合的な評価のあり方については、今後、政策評価専門委員会の御意見も伺いながら検討してまいります。
   〔保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇保健福祉部長(野原勝君) まず、新型コロナウイルス感染症の医療体制の構築についてでありますが、季節性インフルエンザの流行期には、発熱等の症状を訴える者が大幅にふえ、診療、検査需要等が急増することが見込まれることから、医師会と連携して、かかりつけ医等の身近な医療機関に相談、受診し、必要に応じて検査を受けられる体制の整備を進めているところであります。
 しかしながら、議員御指摘のとおり、二次医療圏ごとに医療資源の状況は大きく異なり、かかりつけ医等での相談、受診体制を十分に構築することができない地域も想定されるところであります。
 こうしたことから、公的医療機関を中心に設置している帰国者・接触者外来や、県内全ての二次医療圏に10カ所設置している地域外来・検査センターも活用し、かかりつけ医からの紹介を受け入れるなど、地域の実情に応じた診療、検査体制を構築することができるよう取り組んでまいります。
 次に、感染者の公表内容の基準についてでありますが、県では、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づき、地域での感染症の蔓延を防止し、県民の安全・安心を確保する観点から、感染症に係る発生状況等について公表しているところであります。
 公表内容については、感染拡大のリスクなどを総合的に判断し、感染者の特定に至らない範囲で、感染者情報、感染源との接触歴、感染者の行動歴などのうち、必要な情報を本人の同意を得ながら公表しているところであります。
 公表に当たっては、個人情報保護の関係法令を遵守するとともに、感染者等の特定による偏見、差別、事業者等の風評被害が生じることのないよう、個人情報やプライバシーの保護に十分配慮することとしています。
 具体の行動歴の公表に関しては、議員御指摘の個人情報管理への配慮が必要な環境のほか、他都道府県では患者が利用した施設、店舗等の同意が得られないなどの課題もあることから、全国知事会としても、国による補償金的な協力金の制度化や、感染者情報等の統一的な公表基準を定めるよう要望しているところであります。
 現在、国のワーキンググループにおいて、偏見、差別の解消に向けた取り組みとともに、公表基準についても検討されているところであり、県では、こうした審議の状況についても注視してまいります。
   〔復興局長大槻英毅君登壇〕
〇復興局長(大槻英毅君) 三陸TSUNAMI会議についてでございますが、この会議は、海外津波博物館との連携により、東日本大震災津波の事実と教訓を世界に発信しようとするものでございますが、新型コロナウイルス感染症の影響によりまして、ハワイとインドネシアの関係者の来日が難しいことから、内容を見直し、まずは、三陸TSUNAMI会議の目的の一つである教育普及に焦点を当て、ウエブを活用したセミナーを開催する方向で検討を進めているところでございます。
 このセミナーでは、津波博物館関係者のほか、各地域の大学研究者や児童生徒も参加し、津波災害からの学びをテーマにウエブ会議で意見交換を行い、津波災害の理解と意識啓発の機会としたいと考えており、このセミナーで得られた成果も踏まえ、津波博物館の役割や世界の防災力向上に向けた議論を行う場として、今後の三陸地域で一堂に会した三陸TSUNAMI会議につなげていきたいと考えているところです。
 なお、このセミナーの模様を収録、編集をいたしまして、来年3月11日に向けてインターネットで国内外に広く配信することによりまして、東日本大震災津波から10年の節目を迎える岩手の復興の今を情報発信していきたいと考えております。
   〔商工労働観光部長戸舘弘幸君登壇〕
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) まず、観光振興に係る宿泊助成についてでありますが、10月1日から利用が始まりました岩手県民を対象とした宿泊助成は、既に全体で予定していた15万人泊分を上回る申し込みをいただいたところであり、今後は、できるだけ多くの県民に実際に利用していただけるよう、紅葉や温泉、ウインタースポーツなど、本県の秋冬の魅力を紹介する宣伝広告を行いながら利用促進に努めてまいります。
 議員御提案の県民向けの追加募集につきましては、9月まで実施した泊まるなら地元割クーポンの利用実績や、東北各県及び新潟県の県民を対象とした宿泊助成の今後の利用状況を見ながら検討してまいります。
 また、宿泊事業者へのお支払いについては、クーポン利用後の精算は月2回まで手続ができるようにし、極力配慮しているところであります。
 次に、東北デスティネーションキャンペーンに向けた取り組みについてでありますが、東北DCでは、旅行会社、個人観光客、双方への情報発信による誘客の促進、周遊観光の促進や体験コンテンツの充実による長時間滞在と観光消費の拡大、質のよいサービスによる旅行者の満足度向上、国内外の岩手ファンの増加やリピーター化を目指すこととしているところであります。
 このため、9月には、徹底した感染症対策を講じた上で、全国の旅行会社等を招請し、現地視察会や商談会を開催いたしましたほか、現在、新たな体験プログラムを地元の方々に評価していただくモニタリングを実施しているところであります。
 今後さらに、Go To トラベル事業などを利用して本県を訪れる旅行者に対する東北DC期間の再訪を促すダイレクトな情報発信のほか、首都圏等の旅行会社への訪問営業やメディアキャラバンの実施、海外メディアの招請やオリンピック期間中の東北の情報発信拠点となる東北ハウスの開設準備、県内でのおもてなし運動の展開、専門家派遣による地域の魅力の磨き上げなどに取り組むこととしているところであります。
 次に、就職氷河期世代の正社員をふやす取り組みについてですが、就職氷河期世代への支援については、国の就職氷河期世代支援プログラムにより、官民が協働して、就職氷河期世代の支援に社会全体で取り組む機運を醸成するとともに、活躍支援策の取りまとめを行う組織を都道府県ごとに設置することとされています。
 本県におきましても、岩手労働局が事務局となり、経済団体、労働団体、支援団体等により、7月にいわて就職氷河期世代活躍支援プラットフォームが設置され、県も構成員として参画しているところであります。
 県では、正社員をふやす取り組みとして、就職氷河期世代の方を対象に、正社員化への意識や求めている支援等を把握するための調査の実施や、支援機関、施策等の周知、ジョブカフェいわてにおける相談会の開催などの経費を今回の補正予算案に盛り込んでいるところであります。
 今後は、いわて就職氷河期世代活躍支援プラットフォームにおいて、関係機関と連携した支援計画の策定、実施、各種支援施策の周知等を行いながら、就職氷河期世代の正社員化に向けて取り組んでまいります。
   〔総務部長白水伸英君登壇〕
〇総務部長(白水伸英君) 県における就職氷河期世代の人材確保についてでありますが、就職氷河期世代の採用は、多様な人材の確保や組織の活性化等にもつながることから、県としてもその必要性を認識しているところであり、また、国からも積極的な取り組みを要請されているところでございます。
 これまで、県では、就職氷河期世代も含めた中途採用者に配慮した一般行政B、総合土木Bといった試験職種の設定、年齢制限のない任期付職員の採用等を実施してきたほか、本年度におきましては、運転技士の採用において、就職氷河期世代への支援も考慮して、対象年齢を従来の40歳未満から50歳未満に引き上げたところでございます。
 いずれにいたしましても、定年年齢の引き上げを初めさまざまな人事諸制度の改正が見込まれる中、就職氷河期世代の採用につきましては、職員の年齢構成の平準化や適切な職員体制の整備に係る取り組みとあわせ、一体的にそのあり方を検討してまいります。
   〔農林水産部長佐藤隆浩君登壇〕
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) まず、県産木材の利用促進についてでありますが、今般設置した知事を会長とするいわて県産木材等利用推進協議会では、森林資源の重要性を認識し、森林がもたらす多くの恩恵をよりよい形で次の世代に引き継ぐため、いわて木づかい宣言を採択するとともに、木材利用のキャッチフレーズを、木で感じるほっといわて─使いましょう。岩手の木を。─と定め、国や市町村、森林所有者、関係団体、県民等と協働し、一体となって県産木材等の幅広い利用を積極的に進めていくことを確認したところであります。
 県としては、県産木材の利用の促進に向け、岩手県県産木材等利用促進基本計画及び同行動計画に基づき、公共建築物や民間商業施設等の木造化、木質化の推進、県産木材等のブランド化や認証制度の普及、県産木材等の需要創出につながる新たな加工技術等の研究開発、国内外を視野に入れた販路拡大などの取り組みを、本協議会の構成団体等と連携しながら積極的に推進してまいります。
 次に、原木シイタケ価格の低迷要因と今後の対策についてでありますが、原木シイタケは、そのほとんどが干しシイタケとして加工、出荷されますが、総務省の家計調査によりますと、干しシイタケの1世帯当たりの年間購入量は、平成20年の86グラムから平成30年は47グラムと約半分になるなど、需要量の大幅な減少が全国的な価格低下の要因の一つと考えております。
 また、本県の干しシイタケの平均価格は全国平均を上回っておりましたが、原発事故以降、全国平均を下回っており、市場関係者の声も踏まえると、その要因は、原発事故による風評被害の影響があるものと捉えています。
 このため県では、風評被害の払拭や販路の拡大に向け、生産者とともに首都圏等で原木シイタケの対面販売や安全性のPR等を行ってきたほか、平成29年度以降は、台湾での物産展への出品や、海外での販路開拓を目的とした商談会を開催してきたところであります。
 さらに、今般の9月補正予算案に原木シイタケ販売力アップ促進事業を盛り込み、栄養価やおいしさなど、食材としての魅力や、さまざまな調理方法を幅広い年齢層に向けて効果的に発信する手法のほか、卸売業者のみならず、量販店等も参加可能な入札会の実現に向けた検討などを進め、高品質な本県の原木シイタケが高価格で取引されるよう積極的に取り組むこととしております。
 次に、磯焼け対策についてでありますが、近年の海況の変化等により、魚介類の産卵や育成の場として重要な役割を有している藻場が減少していることから、水産資源の回復、増大に向けて藻場の保全、創造に資する対策を講じていくことが重要であると認識しております。
 このため県では、これまでウニ、アワビが生息可能な藻場を造成してきたほか、昆布の養殖技術を応用した海中林の設置や漁場からの過剰なウニの間引きなど、漁協と漁業者による藻場の再生に係る取り組みを支援してきたところであります。
 また、国が策定した藻場・干潟ビジョンに基づき、本年3月から、全県の藻場の分布状況等について既存文献等からのデータ収集や潜水調査を実施してきたところであり、現在、藻場の衰退要因等の整理、分析などを進めているところです。
 今後、有識者等を交えた委員会を設置し、藻場の回復に向けたハード、ソフト対策を一体的に盛り込んだ藻場ビジョンを策定することとしており、漁業関係団体や関係市町村と緊密に連携しながら、藻場の保全、創造に努めてまいります。
 次に、新たなウニの蓄養、出荷モデルの構築についてでありますが、天然のウニは夏が旬で、冬から春先は餌となる海藻が少なくなるため身入りが悪く、価値が低下します。冬でも、人工的に餌を与えることにより、身入りがほぼ回復することがわかっております。
 このため県では、今般の9月補正予算案に黄金のウニ収益力向上推進事業を盛り込み、磯焼け対策で間引きしたウニを特定の漁場や養殖施設などで蓄養し、高値が期待できる年末から春先の需要期に出荷する、新たなモデルづくりに取り組むこととしています。また、ウニの蓄養に必要となる餌は、通常は廃棄する海藻加工の残滓を漁協の冷蔵施設等の空きスペースで保管して活用するなど、収益性の高いモデルが構築できるよう調査を進めていくこととしております。
 こうした取り組みにより、夏場に加え冬場でも出荷できる、いわばウニの二期作を早期に実現し、ウニの主産地として、漁場の生産力と産地の魅力を高め、さらなる漁業者の収益向上につなげてまいります。
   〔県土整備部長中平善伸君登壇〕
〇県土整備部長(中平善伸君) まず、住宅着工の対策についてでありますが、新型コロナウイルス感染症による住宅着工への影響については、県民の皆様の家づくりへの不安を軽減し、さらに住宅産業等の地域経済にも寄与できるように対応することが重要と認識しているところであります。
 このため県では、県産木材を利用した岩手型住宅の家づくりを推進する助成事業に関して、新型コロナウイルス感染症の影響により、建設資材の納入や着工がおくれる場合には相談に応じることとし、これを周知するとともに、あわせて住宅着工が進められるような支援措置について検討を進めているところであります。
 また、工務店等と協力して、岩手型住宅の見学会やホームページ等を通じたPRにより、住宅着工の後押しに取り組んでいるところであります。
 今後は、震災復興事業の進捗の影響も含めた県内の住宅着工戸数の推移や、国の住宅関連施策の動向を注視しながら、対策について検討してまいります。
 次に、岩手型住宅の推進に向けた事業者の育成についてでありますが、県では、岩手型住宅の推進を図るためには、建築士や工務店における省エネ基準に習熟した人材を育成することが必要と認識しております。
 このため県では、知事が指定する講習会において、省エネ基準に関するプログラムを平成30年度から追加し、人材育成を図るとともに、岩手型住宅の推進に賛同する事業者においても人材育成を行っていると聞いているところであります。
 まずは、こうした人材育成の取り組みを進め、省エネ基準に習熟した建築士等をふやすこととし、あわせて、その習熟状況や国における省エネ基準義務化の動向などを踏まえつつ、省エネ性能のより高い住宅基準のあり方について検討することとします。
   〔教育長佐藤博君登壇〕
〇教育長(佐藤博君) まず、小学校高学年における教科担任制についてでありますが、本県においては、国の専科指導のための教員の加配定数を活用して、専科指導の推進を希望する学校に教員を配置し、外国語や理科などの専科指導の充実を図っているところです。市町村への専科指導教員の配置については、今年度、小学校、中学校及び義務教育学校の89校からの要望に対し、62校に63名の専科加配教員を配置しています。
 国においては、中央教育審議会の特別部会が8月20日に示した骨子案によると、教科指導の専門性を持った教員によるきめ細かな指導を可能とする教科担任制の導入により、授業の質の向上を図り、児童一人一人の学習内容の理解度、定着度の向上と学びの高度化を図ることが重要である。教員の持ちコマ数の軽減や授業準備の効率化により、学校教育活動の充実や教員の負担軽減に資するとあり、これらのことを踏まえ、小学校高学年からの教科担任制を令和4年度を目途に本格的に実施する必要があるとしています。
 本県においても、国における教科担任制についての検討状況を注視しながら、国の加配定数をより一層活用して、専科指導をさらに充実させたいと考えているところです。
 次に、GIGAスクール構想についてでありますが、整備したICT機器を授業の中でどのように効果的に活用していくかが今後の課題であると認識しており、県教育委員会では、総合教育センターに無線LAN環境やタブレット端末等を新たに整備し、学校と同じ環境下での研修を通じて、ICT機器を活用した指導力の向上を図っていくこととしているところです。
 また、ICT支援員についても、民間企業等への委託により、各学校を訪問しての教員研修や児童生徒の機器操作の支援、電話相談対応などの業務を担ってもらうこととしており、年内に配置できるよう現在調整を進めているところです。
 今後は、県と市町村がICTに関するさまざまな課題や対応等について協議、調整していくための組織を新たに設置することとしており、引き続き本県学校教育のICT環境の整備と円滑な利活用に向け、市町村教育委員会と連携して取り組んでいく考えです。
〇39番(工藤大輔君) 再質問をさせていただきます。
 先ほど知事からは、コロナ禍における岩手の成長戦略ということで、総合計画に沿った内容、またプラスの答弁をいただいたと思っております。
 ソサエティー5.0の社会、デジタル社会が政府のほうでも急速に進展させようという取り組みが検討されているようであります。また、その方向で進むものとも思いますが、そういった社会において、これは企業誘致との関係でもあるのですが、これまで企業誘致等で見れば、データセンター等の誘致というのも魅力的なものだと思っております。県北沿岸の地域で見れば、やませの環境下でもありますので、冬においてもさほど寒くもない、夏においてもすごく暑くもないということで、通年で余り変わらないような気象状況にもあるということで、再生可能エネルギー等も活用しながら利用できる場所で、地域の特性を生かした誘致活動等も含めて、これは取り組んでいただきたいなと思い、要望とさせていただきます。
 そして、いわて県民計画(2019~2028)の関係ですけれども、これについては、明らかに新型コロナウイルス感染症の発生状況で世の中が変わり、また、実施できる事業等が大幅に減少してしまった、あるいは形を変えて実施することによって、当初の予定の効果を見通せない状況になることが懸念されております。4年の第1期アクションプランはコロナ禍でもう既に2年目に入っており、来年以降も影響があるというように推測されている中で、第1期アクションプランの事業の達成について、県ではどのように考えているのか。
 中期財政見通し等においても、先般、年間の収支で90億円から98億円のギャップが生じるという説明もございました。財政が厳しい中で効果的な事業を実施しなければなりませんが、この第1期アクションプラン内において大きな影響が出てこないのかどうか答弁をいただきたいと思いますし、影響が出てくる際はこの計画の見直しについても検討されるのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。
 次に、新型コロナウイルス感染症対策についてですが、インフルエンザとの同時流行の心配があるということで先ほど答弁をいただきました。県のほうからいただいている資料によりますと、10月3日、郡市医師会長の会議を経て、10月5日から10月15日まで行政検査希望医療機関の募集をするということであります。地域の二次医療圏ごとの医療体制が全く違うということもあって、特に、県北、沿岸地域等においては、検査体制がどうなっていくのかということは大変注目をされているところであります。
 応募する、希望する医療機関が少なかった場合、県ではどのような体制をとっていくのか。帰国者・接触者外来を拡充していくのか。あるいは、現在ある地域外来・検査センターを拡充するのか。あるいは、閉鎖をし、地域の医療機関の受診の強化に回してもらうのか。
 また、県において基本的に、各二次医療圏ごとにどの程度の診療、検査医療機関が必要となっているのか。ある程度の推計は立てているかと思いますが、やはり複数設置が必要ですので、どの程度二次医療圏ごとに必要だと見通しているのかお伺いしたいと思います。
〇政策企画部長(八重樫幸治君) 初めに、新型コロナウイルス感染症下における岩手県の成長戦略といわて県民計画(2019~2028)の関係についてお答えを申し上げます。
 先ほど御答弁申し上げましたとおり、今回の新型コロナウイルス感染症下において、豊かな自然などの岩手県のよさと先端技術の活用を組み合わせることの重要性がますます高まったものと考えておりまして、岩手県のよさを生かした交流人口や関係人口の拡大、先端技術を活用した産業基盤の創出等の取り組みを一層加速化させていきたいと考えているところでございます。
 一方、いわて県民計画(2019~2028)の事業の中には、延期や縮小、中止となる見込みのものも含まれておりますことから、感染症対策や今後の社会経済情勢の回復状況などを踏まえながら、アクションプランに掲げる取り組みについて新たな事業の追加や事業のブラッシュアップを進め、感染拡大の防止と社会経済活動の両立を図っていきたいと考えております。
 また、そうした際に、社会経済情勢の影響に加えまして、中期財政見通しにおける本県の財政状況等もしっかりと見据えながら、政策の立案に努めていきたいと考えております。
〇保健福祉部長(野原勝君) 今冬に向けたインフルエンザ等の流行に備えた地域における検査、医療体制について御質問いただきました。
 御指摘のとおり、二次医療圏ごとに医療資源が異なります。現在は併設しております帰国者・接触者外来、これは公表しておりませんが各圏域に複数箇所ございます。また、御答弁申し上げました帰国者、接触者の検査センター、こういった既存施設に加えて、各開業医の先生方にも検査を担っていただこうということで、今準備を進めております。
 先日10月3日に行われました郡市医師会長協議会の中で、県のほうからも、さまざまな資器材の提供でありますとか、検査の支援のスキームなどもお示しをした上で御協力を呼びかけたところ、ほとんどの郡市医師会のほうでは、かなり御協力いただけるというような感触を得たところでございます。
 そうした中で、10月15日までの締め切りとしておりますけれども、そこで終わりということではございません。その後におきましても順次、手を挙げていただいた医療機関については担っていただくということで進めていきたいと思っています。
 10月15日の段階である程度我々が想定していた医療機関数に達しないということになりましたらば、また県医師会等とも十分協議をさせていただいて、保健所単位で十分地域の医療機関とも協議、調整をさせていただきながら、地域において必要な医療、検査体制の確保に向けて取り組んでまいります。
〇39番(工藤大輔君) 地域の医療体制の件ですけれども、その方向性で進めていただきながら、なかなか体制が整わないといった際には、帰国者・接触者外来の強化も含めて、体制の整備についてもよろしくお願いをしたいと思います。
 また、感染した方が退院をされて以降、通常の生活に戻られているのかどうかということも心配であります。新型コロナウイルス感染症に感染したということの心の傷もあったり、さまざまな誹謗中傷もあったとも思いますし、特に多くの方が関心を示したというわけでなくても、感染した方からすれば、自分を見る目というものについて非常にセンシティブになっているというようにも思います。時間の経過とともにそれは薄れていくとは思いますが、そういった心のケアであったり、また感染した方が退院後通常生活に戻ってからのケアについても、また、どういう苦労があったかということも聞いてもらいながら、それを県の政策に反映していただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 あともう1点、再質問させていただきたいと思います。
 木材製品の技術が高まり、耐震や耐火基準が向上したことによって、これまで鉄筋コンクリートであったり鉄骨構造でなければ建設できなかった構造物が、木造で建設できるようになってきました。木のよさが引き立つ建物は、安らぎと癒やしを与えるとともに、民間需要を刺激し木造での建設の呼び水になると思います。
 県では、低層の公共施設の原則木造化の方針で県産木材の率先利用に取り組んでいるところでありますが、取り組みの評価と今後の見通しについてお伺いします。
 あわせて、条例制定による効果を一層高めるために、大規模な公共建築物の木造化、あるいは岩手のランドマークとなるような木造建築物の建設にも取り組んではいかがかと考えておりますが、これについては、岩手県公共施設・公共工事木材利用推進本部のほうで具体的な取り組みを決定するということでございますので、本部長である副知事の見解をお伺いしたいと思います。
〇副知事(保和衛君) 県産木材の利用促進についてお答え申し上げます。
 まず、公共部門での率先利用についての評価ということでございますけれども、県で設置しております岩手県公共施設・公共工事木材利用推進本部におきまして、低層建築物については原則木造化するといった目標を立てながら、木材利用推進行動計画を定めまして、率先して取り組んでおります。
 平成29年度には県立大槌高校のセミナーハウス、平成30年度には前沢明峰支援学校特別教室棟など、それから令和元年度は、法令等の制限があるものを除いた全ての低層建築物、これは全部で14施設になりますけれども、これを木造化しているところでございます。
 木材利用の量でこれを申し上げますと、令和元年度から令和4年度までの4年間の目標値が8、500立方メートルでございますが、今年度までの2年間で目標の約7割になります6、200立方メートルというのが、実績見込みとして今上がっております。引き続き、できるだけこの目標を上回るということを目指して、全庁を挙げて取り組んでまいります。
 また、委員からお話がありましたランドマークとなるような木造建築物ということでありますが、県内では紫波町のオガールにおける諸施設ですとか、大槌町の文化交流センターおしゃっち、あるいは本年7月に完成いたしましたグランドセイコースタジオ雫石といったような、先進的な木造建築や著名な建築家の設計による特色ある木造施設の整備が県内各地で進んでおります。こうした事例を県内外に大いにアピールしていきたいと考えておりますし、県による建設ということについては、今後の県営施設の新築等について、それをにらみながら総合的に検討してまいりたいと考えております。
   
〇議長(関根敏伸君) この際、暫時休憩いたします。
   午後2時29分 休 憩
   
出席議員(48名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 上 原 康 樹 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 武 田   哲 君
10  番 高 橋 穏 至 君
11  番 千 葉 絢 子 君
12  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 田 村 勝 則 君
15  番 佐々木 朋 和 君
16  番 菅野 ひろのり 君
17  番 柳 村   一 君
18  番 佐 藤 ケイ子 君
19  番 岩 渕   誠 君
20  番 名須川   晋 君
21  番 佐々木 宣 和 君
22  番 臼 澤   勉 君
23  番 川 村 伸 浩 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 小 西 和 子 君
27  番 吉 田 敬 子 君
28  番 高 橋 但 馬 君
29  番 小 野   共 君
30  番 軽 石 義 則 君
31  番 郷右近   浩 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(なし)
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後2時48分 再開
〇議長(関根敏伸君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。城内よしひこ君。
   〔34番城内よしひこ君登壇〕(拍手)

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