令和2年9月定例会 決算特別委員会会議録

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令和2年10月14日(水)
1開会 午前10時2分
1出席委員 別紙出席簿のとおり
1事務局職員
事務局長 南   敏 幸
議事調査課
総括課長 嵯 峨 俊 幸
議事管理担当課長 藤 枝   修
主任主査 千 葉 絵 理
主任主査 糠 森 教 雄
主査 鈴 木   忍
主査 阿 部 真 人
主査 赤 坂 宏 紀
主査 鈴 木 貴 博
1説明員
知事 達 増 拓 也
副知事 保   和 衛
副知事 菊 池   哲
企画理事兼
環境生活部長 藤 澤 敦 子
会計管理者 永 井 榮 一
会計課総括課長兼
会計指導監 大 塚 貴 弘

政策企画部長 八重樫 幸 治

総務部長 白 水 伸 英
参事兼財政課
総括課長 小 原 重 幸

ふるさと振興部長 佐々木   淳

保健福祉部長 野 原   勝

復興局長 大 槻 英 毅

ILC推進局長 高 橋 勝 重

監査委員 寺 沢   剛
監査委員 沼 田 由 子
監査委員事務局長 小 畑   真
参事兼監査第一課
総括課長 小 守 健 一
監査第二課
総括課長 佐々木 昭 司
〇南議会事務局長 御承知のとおり、委員長が互選されるまでの間、委員会条例第7条第2項の規定により、年長の委員が委員長の職務を行うことになっておりますので、年長の委員を御紹介申し上げます。
 出席委員中、工藤勝子委員が年長の委員でありますので、御紹介申し上げます。
 工藤勝子委員、委員長席にお着き願います。
〔年長委員工藤勝子君委員長席に着く〕
〇工藤勝子年長委員 ただいま紹介のありました工藤勝子であります。何とぞよろしくお願いいたします。
 それでは、ただいまから決算特別委員会を開会し、直ちに本日の会議を開きます。
 これより委員長の互選を行います。
 委員会条例第7条第2項の規定により、委員長の互選の職務を行います。
 お諮りいたします。委員長の互選の方法につきましては、先例に基づき、指名推選の方法によりたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇工藤勝子年長委員 御異議なしと認めます。よって、互選の方法は指名推選によることに決定いたしました。
 お諮りいたします。指名推選の方法につきましては、当職において指名することにしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇工藤勝子年長委員 御異議なしと認めます。よって、当職において指名することに決定いたしました。
 決算特別委員長に菅野ひろのり君を指名いたします。
 お諮りいたします。ただいま当職において指名いたしました菅野ひろのり君を決算特別委員長の当選人と定めることに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇工藤勝子年長委員 御異議なしと認めます。よって、ただいま指名いたしました菅野ひろのり君が決算特別委員長に当選されました。
 ただいま当選されました菅野ひろのり君が委員会室におられますので、本席から当選の告知をいたします。
 菅野ひろのり委員長、委員長席にお着き願います。
〔決算特別委員長菅野ひろのり君委員長席に着く〕
〇菅野ひろのり委員長 ただいま決算特別委員長に選任いただきました菅野ひろのりでございます。
 公正な委員会運営に努めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
 引き続いて副委員長の互選を行いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇菅野ひろのり委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 これより副委員長の互選を行います。
 お諮りいたします。副委員長の互選の方法につきましては、先例に基づき、指名推選の方法によりたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇菅野ひろのり委員長 御異議なしと認めます。よって、互選の方法は指名推選によることと決定いたしました。
 お諮りいたします。指名推選の方法につきましては、当職において指名することにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇菅野ひろのり委員長 御異議なしと認めます。よって、当職において指名することに決定いたしました。
 決算特別副委員長に千葉絢子さんを指名いたします。
 お諮りいたします。ただいま当職において指名いたしました千葉絢子さんを決算特別副委員長の当選人と定めることに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇菅野ひろのり委員長 御異議なしと認めます。よって、ただいま指名いたしました千葉絢子さんが決算特別副委員長に当選されました。
 ただいま当選されました千葉絢子さんが委員会室におられますので、本席から当選の告知をいたします。
 千葉絢子副委員長、御挨拶をお願いします。
〇千葉絢子副委員長 ただいま副委員長に選出いただきましてまことにありがとうございます。
 菅野委員長を補佐いたしまして、委員会の円滑な運営に努めてまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
〇菅野ひろのり委員長 これより決算の審査に入るのでありますが、この際、保健福祉部長から、新型コロナウイルス感染症罹患者等の判明について発言を求められておりますので、これを許します。
〇野原保健福祉部長 昨日、盛岡市内で岩手県第25例目、盛岡市第6例目の新型コロナウイルス感染症患者が確認されました。詳細につきましては、本日11時から盛岡市保健所が記者会見で説明する予定です。記者発表資料につきましては、盛岡市から入手し次第、各会派等控室にお届けいたしますので、御承知くださるようお願いいたします。
〇菅野ひろのり委員長 これより決算の審査に入ります。
 お諮りいたします。当決算特別委員会に付託されました決算15件及び議案2件についての審査の方法でありますが、お手元に配付してあります日程案のとおり、本日及び明日は、知事、副知事、企画理事、会計管理者及び関係部局長等の出席を求め総括質疑を行い、明日の総括質疑終了後から16日まで及び19日から23日までの7日間は、会計管理者及び関係部局長等の出席を求め部局ごとに質疑を行うこととし、決算15件及び議案2件に対する意見の取りまとめと採決につきましては、10月23日の県土整備部関係の質疑が終わった後、世話人会の意見調整を経た上で行いたいと思います。
 なお、7日目の農林水産部の審査については、第1部を農業関係、第2部を林業、水産業関係とし、それぞれ区分して審査することとしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇菅野ひろのり委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 これより議事に入ります。
 認定第1号から認定第15号まで、議案第37号及び議案第38号の以上17件を一括議題といたします。
 これより、会計管理者に決算の総括説明を求めます。
〇永井会計管理者 令和元年度歳入歳出決算の概要について御説明申し上げます。
 お手元に令和元年度歳入歳出決算書、歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書など8件の法定書類のほか、決算調製資料を補完する説明資料として令和元年度歳入歳出決算説明書をお配りしておりますので、便宜、この歳入歳出決算説明書に基づき御説明させていただきます。
 それでは、歳入歳出決算説明書の1ページをお開き願います。第1令和元年度歳入歳出決算の概況、1決算の状況でありますが、令和元年度の当初予算は、いわて県民計画(2019~2028)のもと、東日本大震災津波からの復興と平成28年台風第10号災害からの復旧、復興に最優先で取り組むとともに、県民みんなで目指す将来像の実現に向けた取り組みを着実に推進する新時代スタートダッシュ予算として9、355億182万円が措置され、前年度の当初予算に比べ178億4、644万円、1.9%の減となっております。また、その後の補正予算におきまして、復興事業を推進するための経費や令和元年台風第19号災害からの復旧、被災者の生活再建支援に要する経費などの措置により352億4、253万円の増額補正が行われたところであります。これに前年度からの繰越額1、716億872万円を加えた最終予算額は1兆1、423億5、307万円となり、前年度に比べ402億5、689万円、3.4%の減となっております。
 次に、この予算に対する決算について、初めに、一般会計を御説明いたします。
 まず、歳入でありますが、44ページと45ページをお開き願います。第2表一般会計歳入決算状況の表の一番下の合計欄左から三つ目、令和元年度の収入済額は1兆105億5、268万円余で、右の45ページ中央の欄、前年度との比較増減額は395億1、711万円余、3.8%減少し、収入率は、45ページの左端の欄、対予算現額88.5%、対調定額97.6%となっております。
 なお、収入未済額は、左の44ページ、右端の下の欄249億9、023万円余で、前年度に比べ6、701万円余の増となっており、この主なものは、諸収入であります。
 次に、歳出でありますが、52ページ、53ページをお開き願います。第7表一般会計歳出決算状況の表の一番下の合計欄左から二つ目、令和元年度の支出済額は9、376億3、208万円余で、右の53ページ、二つ目の前年度との比較増減額は392億896万円余、4.0%減少し、執行率は、左の52ページ、右端の下の欄、対予算現額82.1%となっております。
 なお、52ページの中央、翌年度繰越額は1、810億8、607万円余で、前年度に比べ94億7、735万円余の増となっており、この主なものは、土木費や災害復旧費であります。
 その右隣の不用額は236億3、491万円余で、前年度に比べ105億2、527万円余の減となっており、この主なものは、災害復旧費や土木費であります。
 次に、実質収支の状況でありますが、42ページ、43ページをお開き願います。第1表一般会計及び特別会計決算状況の表の一番上、一般会計の欄ですが、歳入総額から歳出総額の差引額は、右の43ページにお移りいただきまして729億2、059万円余となっております。
 また、歳入歳出差引額から翌年度へ繰り越すべき財源を差し引いた実質収支額は130億8、639万円余の黒字となっております。
 続きまして、特別会計の決算を御説明申し上げます。33ページをお開き願います。ページ中段の特別会計歳入歳出決算収支の状況の表により御説明申し上げます。
 特別会計全11会計の歳入総額は3、225億4、996万円余で、前年度に比べ177億8、645万円余の増であります。続いて、歳出総額は3、190億3、284万円余で、前年度に比べ191億5、777万円余の増であります。増減の理由は、歳入歳出ともに、公債管理特別会計の増によるものなどであります。
 なお、実質収支は、各特別会計とも黒字または収支均衡となっております。
 次に、決算の特色を御説明申し上げます。再度1ページをお開き願います。ページ中段の2決算の特色をごらん願います。
 なお、前年度比較につきましては、便宜、増減率で御説明させていただきます。
 まず、第1に、決算規模が前年度を下回ったことであります。歳入においては、繰越金、繰入金などの減により前年度に比べ3.8%減少し、歳出においては、土木費、災害復旧費などの減により前年度に比べ4.0%減少しております。
 第2に、県税収入が減少したことであります。企業収益の減退に伴い、法人事業税が4.7%減少したほか、軽油引取税が7.7%減少したことなどにより、前年度に比べ3.1%減少し1、300億1、762万円となっております。
 第3に、投資的経費が減少したことであります。国の防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策に対応した公共事業費などが増加したものの、復旧、復興事業等の進捗に伴い、災害復旧事業費が13.5%減少、普通建設事業費が4.3%減少などにより、前年度に比べ6.8%減少し2、725億3、158万円となっております。この結果、歳出総額に占める投資的経費の割合は、前年度に比べ1.0ポイント減少し29.0%となっております。
 第4に、翌年度繰越額が増加したことであります。令和元年台風第19号災害により復旧事業が増加したほか、震災からの復興関連事業等への影響も生じたことなどから、前年度に比べ5.5%増加し1、810億8、607万円となっております。
 第5に、県債残高が減少したことであります。県債発行額が公債費の元金償還額を下回ったことから、前年度に比べ0.8%減少し1兆2、536億354万円となっております。
 以上で令和元年度歳入歳出決算の概要説明とさせていただきますが、決算内容の詳細につきましては、審査日程に従いまして、それぞれ担当の部局長から御説明申し上げることとなっております。
 なお、監査委員から御意見のありました事項につきましては、関係部局において所要の措置を講じているところであります。
 以上で説明を終わらせていただきます。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
〇菅野ひろのり委員長 ただいまから総括質疑に入るわけでありますが、議会運営委員会の決定に基づき、総括質疑は、各会派及び会派に所属しない議員に質疑時間を配分して行うことになっております。
 質疑時間につきましては、まず、希望いわてが33分、次に、自由民主党が31分、次に、いわて新政会が21分、次に、いわて県民クラブが15分、次に、日本共産党が11分、次に、社民党が9分、次に、会派に所属しない議員は、公明党小林正信委員、無所属山下正勝委員、無所属上原康樹委員の順に、それぞれ7分となっております。
 各会派は、配分された時間の範囲内で複数の委員が質疑することができること、この場合におきましては、会派として続けて行うこととなっておりますので、御了承願います。
 また、議会運営委員会の決定及び世話人会の申し合わせにより、新型コロナウイルス感染症対策として、換気のため、午前は1回、午後はおおむね1時間半ごとに休憩いたしますので、御協力をお願いいたします。
 なお、総括質疑は、明日の遅くとも正午までに終了することを目途にしたいと思いますので、御協力をお願いいたします。
 それでは、これより総括質疑に入ります。岩渕誠委員。
   〔岩渕誠委員質問者席に着く〕
〇岩渕誠委員 希望いわての岩渕誠であります。会派を代表して質問いたします。
 きょうは決算の総括質疑ということでございますので、私からは、財政問題、新型コロナウイルス感染症対策と今後の危機管理のあり方などについて中心に取り上げて、大きな方向性を議論できればと考えております。また、後半は、発災から間もなく丸10年を迎える東日本大震災津波からの復興と被災地の振興などにつきまして、被災地を熟知しております岩城元委員がお尋ねすることとしておりますので、よろしくお願いいたします。
 最初に、決算について伺います。
 2019年度、令和元年度決算は、実質収支が131億円の黒字となりました。本県の財政規律上のポイントでもありますプライマリーバランスも、黒字化を達成しています。災害対応で巨額の財政出動を強いられている中で、県債残高も昨年度末の残高は1兆2、536億円と前の年度に比べて95億円減少し、着実に財政の健全化に一定の成果も出ていると評価しております。特に、通常分の予算規模と臨時財政対策債を除いた実質県債残高がほぼ均衡のところまで近づいてきていることを私は評価するべきだと思っております。
 さて、昨年度決算には新型コロナウイルス感染症の影響はまだ本格的には出ていないわけですけれども、決算の内容を見てみますと、新型コロナウイルス感染症なしでも財政上の懸念される点が散見されております。
 まず、何といっても税収の落ち込みであります。昨年度決算では地方税の主要5税のうち、法人二税と軽油引取税の落ち込みが目立つ内容でありました。軽油引取税は4年連続の減少、それから、法人二税については、前年度比5.4%減と、これは東日本大震災津波の発災以来、その年度を除くと、この10年間で2番目の減少率でありました。
 こうした税収の実態についてどのように分析しているのか、まずお伺いいたします。
〇白水総務部長 令和元年度の県税決算額でございますが、県税全体では前年度決算額に対しまして42億920万円、3.1%の減となる1、300億円余となったところでございます。
 減収の要因でございますが、まず、法人二税について、製造業におきまして、電気機械製造が中国経済の減速などの影響を受けたほか、食料品製造が肉用鳥―これは鶏肉でございますが―の値下がりなどの影響を受けたことにより13.6%の減、非製造業におきましては、復興需要の縮小に伴い建設業が落ち込んだことにより1.9%の減となったところでございます。
 また、軽油引取税の税収でございますが、東日本大震災津波以降、復興需要により増収となっていたものが、平成27年度をピークに減収に転じているところでございます。
 今後の税収につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響による減収が見込まれるところでございまして、引き続き動向を注視してまいります。
〇岩渕誠委員 中国経済の影響もあったということでありますが、いずれこの落ち込みが目立った法人二税については、岩手県の経済活動を反映したものであるわけですけれども、今後、ここに対する税源涵養対策は非常に重要だと思っております。コロナ禍の中でも、新しい生活様式に対応する需要、とりわけ半導体製造は、市中の資金調達の問題に課題を残していますけれども、生産はいち早く回復しているようであります。今後の経済再生の牽引役とも期待されています。
 自動車関連産業も、トヨタ自動車東日本株式会社の県内工場で生産される新車の市場投入が始まっていまして、こちらも急回復が期待されています。
 地元調達率あるいは関連企業群の形成などについて、県としてどのような支援を行い、どのような実績に結びついているのか、このあたりが今後の税収対策につながっていると思うのですが、今後の対応や期待についてお伺いいたします。
〇保副知事 まず、地元調達の推進あるいは関連企業群の形成についてでありますが、自動車関連産業については、地場企業に対する設備投資や人材育成への補助、アドバイザーによる取引マッチング、展示商談会への出展支援などを行っており、令和元年度の取引成約件数は35件、関連企業の増設件数は3件となっております。
 次に、半導体関連産業ですが、産学行政で組織する、いわて半導体関連産業集積促進協議会による大規模展示会への出展あるいはマッチング支援などによりまして、昨年度の取引成約実績が25件、また、企業誘致は、新規立地が16件、増設が3件となっており、それぞれ順調に拡大しているものと考えております。
 税収の面では、令和元年度の自動車、半導体を含む製造業の法人二税の税収額はおよそ80億円となっております。全ての業種の法人二税額のおよそ3割ということで、大きな割合になっております。これに加えまして、県内に良質な雇用が創出されることによりまして、若者の県内定着、県民所得向上への寄与など幅広い波及効果がありますほか、サービス業、小売業などへの好影響もありまして、地域経済全体の活性化に大きくつながっているものと認識しております。
 今後におきましては、自動車関連産業については、トヨタ自動車東日本株式会社岩手工場の新型車種の生産開始や既存車種のモデルチェンジが予定されております。また、半導体関連産業においては、IoTですとかAI、5Gなどの普及拡大に伴う需要により、県としては、今後、これまで以上に県内経済を牽引することを期待しております。
 引き続き、市町村や関連機関等と連携して、その集積を促進いたしますとともに、技術力の向上や取引拡大、人材の育成、確保などを通じて重点的に支援してまいります。
〇岩渕誠委員 法人二税の県内の税収構造がどんどん変わってきていますから、ここはグリップをきかせて大きな支援を行っていただきたいと思います。
 税収の問題でもう一つ指摘をしておきます。これは当初予算額と決算額の乖離であります。昨年度の県税収入での乖離額は56億円余に上ります。昨年度、50億円の減収補填債を発行しておりますけれども、これが大きな要因だったと私は見ております。
 税収が、当然景気動向に左右されるというのは否めませんけれども、乖離額で見ますと、これほど下振れしたことは私の記憶にありません。20年ほど県予算を見ていますけれども、ほとんど記憶にありません。私は、これは政府の経済予測に引きずられたのではないかと考えております。
 政府は、2012年に始まった直近の景気拡大について、去年1月に戦後最長になったと見られると発表しただけではなく、新型コロナウイルス感染症危機が本格化することし2月まで緩やかな景気回復が続いているとしてきました。しかし、結局ことしの7月になって、政府は見解を変え、2018年10月が景気の山だった、翌月から景気後退に入ったと認定しています。
 これは、もう2019年の春ごろから民間エコノミストは、まさに、さっきも出ましたけれども、米中貿易摩擦の影響で国内でも輸出や生産に既に陰りが出てきていましたから、もうとっくに山を越えているのだという指摘があったわけであります。結果的に政府の判断が間違いであったということになります。エコノミストによっては、昨年の消費増税の環境整備のための強弁だったのではないかと指摘する声もあるわけですけれども、この予測は、地方の財政計画にも影響するわけであります。
 震災復興事業の縮小など本県独自の背景もありますが、税収乖離の原因と政府の経済判断についての問題をどのように認識しておられるのかお示しください。
〇白水総務部長 まず、当初予算編成時の税収見込みにおきましては、例年12月から1月中旬にかけまして、当該年度の最終予算額をベースに本県の税収の動向に加え、国の法人企業景気予測調査、地方財政計画等を参考にして算出しているところでございます。
 予算編成時の税収見込みについてですけれども、適切な積算に努めているところでありますが、大規模な自然災害、今般の新型コロナウイルス感染症拡大の影響など、想定外の経済状況の変化につきましては、当初予算編成時では見込むことが難しいことから、結果として、このような差が生じたものと認識しております。
〇岩渕誠委員 経済動向から言ったら、ある程度見えていたと私は思います。新型コロナウイルス感染症の問題は少し後、ことし、来年で出てくるわけですから、これはもうちょっとよく答弁を練ったほうがよかったと思います。
 こうした中で、新年度の予算編成は大変厳しい環境にあると認識しております。国の編成作業が1月おくれた上に、事項要求となったものが結構あります。それから、何といっても新型コロナウイルス感染症危機の中で税収の見通しが使えないということが要因になっていますけれども、税収は今年度、さらに新年度以降も、本県では落ち込みが避けられないと強く懸念しております。また、震災復興の進捗や消費増税の本格的な影響も出てくるということであります。
 今年度の税収見通しとあわせて、次年度以降について、現時点でどのような見通しをされているのか、お示しいただきたい。
〇白水総務部長 まず、今年度の県税収の見通しについてでございますが、直近の8月末におきまして、現年課税分の調定額が前年比12億9、000万円、率にして1.4%の減となっており、厳しい状況にあることから、引き続きその動向を注視していく必要があると考えております。
 令和3年度以降の税収見通しについてでございますが、新型コロナウイルス感染症により、個人県民税については、ことしの所得の減少が来年度の課税に影響すること、法人二税は、法人における収益減少の期間が長くなっていることなどから、より一層厳しい状況になるものと見込んでおります。
〇岩渕誠委員 IMF―国際通貨基金が直近の世界経済見通しを発表しておりまして、ことしの経済成長率は世界が4.4%、国内は5.2%のマイナス。来年度プラスに転じるというようなことですが、これはなかなかちょっと心もとない数字であると思っております。いずれ厳しいと思います。
 こういったとき、伝統的には、地方財政対策で言えば、地方財政計画の中で地方税財源の確保が図られてきて、国の責任で対策が行われてきたということになります。今回は新型コロナウイルス感染症対策で総額3兆円の地方創生臨時交付金が措置されていますけれども、実施計画の策定が必須であり、小規模な自治体からは、自由に使える財源としてさらに簡素化や工夫が必要との声が強く出ています。もっと言えば、色つき、ひもつきではないお金の確保を追加的、そして継続的に求めるという状況でございます。ただでさえ地方財政がひどいときですから、ぜひこれをやらないと、地方は予算が組めない状況であると強く懸念しております。
 この地方創生臨時交付金に対する評価と課題について、また、コロナ禍における今後の地方税財源の確保について、お考えをお示しください。
〇白水総務部長 地方創生臨時交付金についてでございますが、飲食店や小売店等の感染拡大の防止、観光需要の喚起、公共交通の運行支援など、感染拡大防止や社会経済活動の両立を図る取り組みに対して有効な財源となっております。
 一方で、感染症の影響の長期化が見込まれる中で十分な額が確保されていないこと、また、現時点で令和3年度の対応が示されていないことについては、課題と認識しております。
 このため、感染症対策につきましては、来年度もこの地方創生臨時交付金等を継続して必要な財源を確保するとともに、リーマンショック時に講じられたような地方財政計画における特例加算といったもののように、地方が地域の実情に応じた取り組みを実施できるよう、地方税財源の充実を全国知事会と連携して国に強く訴えてまいります。
〇岩渕誠委員 いずれ、ひもつきじゃない自由に使えるお金、しかもそれは臨時財政対策債ではないほうで確保しないといけないということは、共通認識だと思います。
 この財源対策とあわせて、今、これから地方財政の足かせになってくるのはプライマリーバランスの問題だと思っております。小泉純一郎内閣以来、プライマリーバランスの黒字化は国の大きな財政目標になっていまして、地方にも強要しているという構図が続いていると思います。
 最近になって、国と地方を合わせて2025年度の黒字化目標を2029年に先延ばしにしましたけれども、ここをもう一度考えないと、経済回復、個人家計の下支えはおくれ、結果的に財政破綻の危機をさらに呼び込むことになるという強い危機感を私は持っております。
 そもそもプライマリーバランスを財政目標にしている国は、主要諸国では日本だけでありまして、この悪化のところで財政収支の均衡が必要なのだというのは、さっきも申し上げましたけれども、消費増税の理由にされただけという指摘もあります。地方としても、国に物申す時期ではないかと思っております。
 私自身は、どちらかといえば財政規律重視の立場ではありますけれども、非常時でありますので財政出動は当然であり、当面の予算編成においては、財政収支の均衡に過度にこだわるべきではないと思っているのですが、達増知事に考えをお伺いします。
〇達増知事 プライマリーバランスについてでありますが、プライマリーバランスは、国、地方自治体とも持続、安定的な財政構造を構築していく上で、中長期的にバランスさせていくことが重要でありますが、委員御指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症対策が求められる今、未曾有の危機的事態であると言ってよく、感染拡大の防止と社会経済活動の両立に向け、必要な歳出は積極的に実行していく必要があります。
 県におきましても、令和3年度は税収減が見込まれる中、臨時財政対策債の増発も避けられない見込みであるなど厳しい財政状況に置かれるものと考えますが、ICTなどを有効に活用し、コスト削減を図りながら、東日本大震災津波からの復興や新型コロナウイルス感染症への対応など、必要な事業を着実に実施してまいります。
〇岩渕誠委員 プライマリーバランスの最大の問題として、私は、単年度の目標として捉えていると失敗すると思います。ある程度の期間を置いて均衡を目指す形をとらないと、大変なことになってくると思っております。これは指摘します。
 それから、地方財政全体の問題では、今後どんどん臨時財政対策債の割合がふえてくる。今回の地方税対策を見ても地方財源対策を見ても、臨時財政対策債を上げるということになっていますが、最終的に償還財源が大きな足かせになってくると思っています。臨時と言っていますが、制度化から既に20年たっていますから、きちんと臨時財政対策債ではなくて交付税でということをしないと、数年後には地方財政はさらなる硬直化を招くと、私は指摘したいと思います。この問題は次の機会でやります。
 議論が横道にそれましたけれども、今後の財政運営については、ぜひ、知事がおっしゃるように、積極的な出動をちゅうちょしないようお願いしたいと思いますし、さらなる働きかけをお願いしてまいりたいと思います。
 もちろん、県が売却可能な資産の処分、コストの低減も合わせてですけれども、出資法人のガバナンスを強めて、財源捻出の可能性もぜひ追求していただきたいと思います。この問題も次の機会にやります。
 ここからは、新型コロナウイルス感染症対策と危機管理についてお伺いします。
 県は、第1次の110億円余から始まり、これまで4度の補正で総額1、628億円余の新型コロナウイルス感染症対策の補正予算を編成しております。この予算を分解してみますと、融資に係るものが1、076億円余、補助に係るものが355億円余、給付に係るものが107億円余、そして学校でのリモート対応など情報システムの構築や県立病院事業会計負担金などで約90億円など、いわゆる市中経済や民生部門への財政出動が95%を占める内容となっています。
 この政策効果について、県としてどのように捉えているかお示しください。
〇達増知事 県では、新型コロナウイルス感染症対策として、感染防止対策に加え、県民の日常生活や地域経済を支える取り組みなど、これまで4次にわたって補正予算を編成してまいりました。
 まず、感染防止対策については、県内事業者や福祉施設等における新しい生活様式に対応した環境整備のほか、PCR検査の拡充を初めとする医療提供体制の強化など、さまざまな対策を講じてきたところであり、このような取り組みが、本県の特性である真面目な県民性等とも相まって、県内の感染者が低位に推移していることにつながっているものと考えております。
 また、県民の日常生活を支える取り組みとして、家計急変世帯や困窮学生に対する支援などを行ってきたほか、地域経済活動についても、売り上げが減少した事業者に対する融資や家賃補助に加え、観光需要の喚起に向けた宿泊助成の拡充などの取り組みを市町村や関係団体などの意見も踏まえながら進めてまいりました。
 このような中、日本銀行盛岡事務所が公表している岩手県金融経済概況によりますと、直近の県内経済は、厳しい状況から、持ち直しの動きが見られるなど、県の対策が事業者の社会経済活動の下支えにつながっているものと認識しております。
 一方、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化も見込まれ、飲食業、宿泊業を初め、県民の生活やなりわいは依然厳しい状況にありますことから、引き続き、徹底した感染防止対策を継続し、企業やさまざまな団体の要望にも応えながら経済社会活動の営みを促し、政策効果を高めてまいります。
〇岩渕誠委員 今、四つの分解をして、性格ごとに数字をお示ししましたけれども、融資が非常に大きな額を占めております。これは、同時に需要も多いということだと思います。ただ、このお金が、反転攻勢のための資金というよりも当座をしのぐことに融資資金が使われているケースが少なくないという声をよくお聞きします。
 国の雇用調整助成金の特例措置なども延長されたものの、年末あるいは年度末に向けてさらなる資金需要が懸念されておりますが、ここにどう対応するのでしょうか。
〇保副知事 県では現在、中小企業者の資金繰り支援を目的として二つの融資制度を設けております。一つは、新型コロナウイルス感染症対応資金というもので、国と連動いたしまして、3年間無利子で保証料を全額補給するというものでございます。もう一つは、新型コロナウイルス感染症対策資金というもので、これは県独自でございますが、保証料の一部を低利で補給するものでございまして、両資金合わせて、1者当たりの融資限度額を1億2、000万円としております。
 先般の令和2年度第4号補正予算によりまして、年末、年度末を見据え、これら二つの資金により今後の資金需要に対応したいということで、全体の融資枠をそれまでの1、000億円から倍の2、000億円に拡充したところでございます。
 また、金融機関に対しては、さまざまな事業者が円滑に資金を調達できるように、経済金融連絡会議などの場で柔軟な対応を要請しているところであります。
 これらの資金は、二つとも多くの企業に御利用いただいており、年末に向けてさらに資金需要が拡大することも予想されますので、今後、必要に応じて予算の補正等の対応を検討していきたいと考えております。
 あわせて、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫の資本性劣後ローン制度の活用も考えられるところであり、引き続き、金融機関と連携して事業者の資金繰りを支えていきたいと考えております。
〇岩渕誠委員 ぜひ、政策総動員でお願いしたいと思います。今、融資の話をしましたけれども、実は農業分野などでいうと、経営継続補助金は、今まで県から1、254件出されています。それから、高収益作物次期作支援交付金は、4億円ほどが申請予定ですが、残念ながら、これは国の事業が滞っていまして、ただの一円も今、岩手県におりてきていないということであります。県も要請したようですけれども、こういった問題にもしっかり対応していただきたいと思います。
 ここからは、新型コロナウイルス感染症対策に関し、国と地方の関係について少し議論させていただきたいと思います。
 差し当たって、今月、新型コロナ対応・民間臨時調査会が、新型コロナウイルス感染症対策の政府対応について報告書を出しました。保健福祉部長は、この報告についてどのような感想をお持ちでしょうか。
〇野原保健福祉部長 今月9日に各界の有識者で構成する新型コロナ対応・民間臨時調査会におきまして、日本の新型コロナウイルス感染症への対応を検証した報告書を取りまとめた旨、報道があったところでございます。
 報告書のポイントといたしまして、新型インフルエンザ等対策特別措置法の課題や3月の欧州からの水際対策などが上げられていると承知しておりますが、報告書の販売、公表が10月18日となっておりますことから具体の評価はこれからでございますが、対応の検証は重要であると考えております。
 県では、この対応の検証について、本県も参画しております全国知事会のワーキンググループによりまして報告書を取りまとめ、国に提出したところでございます。この中では、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく課題などについても国に提言しているところであり、引き続き、全国知事会等を通じまして、国に必要な対応を求めていく考えでございます。
〇岩渕誠委員 これは報道ベースですけれども、新型コロナ対応・民間臨時調査会の記者会見だけを見れば、場当たり的だったというような指摘をしているのですが、これには実は、教科書があったのだと思います。これは、もちろん新型インフルエンザ等対策特別措置法であるわけでありますが、その新型インフルエンザ等対策特別措置法のそもそものもとになったのは、私は手元に持っていますが、平成22年6月10日に出された、2009年に発生した新型インフルエンザへの対応検証を踏まえた対策総括会議の報告書だと思います。これは、いわゆるパンデミック2009報告書と言われるものですけれども、ここの中には、意思決定システムや事前準備、体制強化において地方の役割の強化、具体に言えば保健所の役割の強化も書き込まれております。PCR検査、地域の発熱外来、財政措置などについても提言されています。
 国の責任でやるという前提はあるのですけれども、県としては、こういったことを踏まえて初動体制を構築してきたのだと思いますが、法やこの報告書に基づいた体制構築をどこまで準備できたと考えているでしょうか。
〇野原保健福祉部長 新型インフルエンザ等対策特別措置法や報告書に基づいた体制の構築についてでございます。
 岩手県では、平成25年4月に施行されました新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づきまして、岩手県新型インフルエンザ等対策本部設置条例を同月に施行したほか、岩手県新型インフルエンザ等対策行動計画を同年12月に策定したところであります。
 また、報告書において指摘されております関係者間での事前準備や情報共有体制については、二次医療圏ごとの協議会や研修会の開催、また、医療機関に対する人工呼吸器、簡易陰圧装置等の設備整備の補助などによりまして、地域における医療体制の構築を図ってきたところであります。
 その結果、今回の新型コロナウイルス感染症の国内発生に際しましても、早期の段階において、岩手県新型コロナウイルス感染症対策本部の設置、岩手県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会の設置、また、各二次医療圏における帰国者・接触者外来の設置などの初動体制の構築ができたものと考えております。
〇岩渕誠委員 わかりました。この当初の報告書については、法的位置づけなどについて、報告書が出てから1月半後には、やはり問題があるということを岩手県として指摘しております。これは反映されました。ただ、新型インフルエンザ等対策特別措置法の立法過程では、この後半が、どうしても東日本大震災津波の復旧期と重なって、大変厳しかったと思いますが、できる範囲で努力したものと思います。
 ただ、やはりやってみて、今のお話とは違うかもしれませんが、不備な点もあったと私は率直に思っています。県としてはどのような課題を見出しているのかお示しください。
〇野原保健福祉部長 総括報告書における課題認識についてでございます。
 県では、委員御指摘のとおり、平成22年7月に新型インフルエンザ対策について、国に対し、法的根拠の整備、財政支援及び医療物資の確保対策について提言をしております。その後、平成24年の新型インフルエンザ等対策特別措置法の制定により、要望の一部が実現したところでございますが、今般の新型コロナウイルス感染症の発生によって、新たな課題が浮かび上がったと考えております。
 具体的には、新型インフルエンザ等対策特別措置法では、緊急事態措置を実施すべき期間と緊急事態措置を実施すべき区域を決定し、緊急事態宣言を発することとなっておりますが、その期間や区域を定める基準があらかじめ明示されていなかったことから、都道府県が休業の要請や解除を実施するに当たって周知期間を十分とることができなかったため、対応する事業者の準備が難しかったことがあります。
 また、国の対策本部において決定している基本的対処方針では、知事が休業の要請等を実施しようとする場合には、国への事前協議が必要とされており、法律上の規定を上回るような手続を求めているため、国と都道府県の間で運用上の疑義が生じたことなどについて、改善の余地があると考えております。
〇岩渕誠委員 わかりました。
 今触れていませんでしたが、次は感染症指定医療機関の実態についてもお伺いしたいと思います。これは2016年に総務省が実態を調査し、改善が必要だとして、翌年に厚生労働省に対して勧告をしました。岩手県はその調査の対象にはなりませんでしたが、それが放置されるなどという問題が明らかになっています。
 まさに現場の課題を置き去りにしてはいけないと思うのですが、これは、やっぱり備蓄とか医療体制の問題などがあったわけで、この感染症に対する危機感の低さが政策的優先順位を下げる結果になったのではないかと思います。国、地方、そして政治と行政が、それぞれの立場で見直しに向けた議論を進めるべきだと考えるのですが、県としての考えをお聞かせください。
〇菊池副知事 感染症対策の見直しについてでありますが、委員御指摘のとおり、平成29年に総務省による感染症対策に関する行政評価・監視の結果に基づく勧告がなされ、入国時の渡航歴等の確認の徹底と健康監視の適切な運用、感染症指定医療機関の診療体制の適切な整備などが課題とされました。
 今般の新型コロナウイルス感染症の国内発生につきましては、国の専門家会議におきまして、3月中旬からの国内での感染拡大のきっかけは、感染対策が十分に進んでいなかったところに、欧州等で感染した帰国者の流入によって流行が拡大したなどと分析されております。
 また、医療体制に関し、法に基づく感染症指定医療機関だけでは入院患者への対応が不十分であったため、急性期機能を担う医療機関を重点医療機関として指定したほか、無症状者や軽症者の宿泊療養施設を整備するなど、従来想定していなかった対応が必要となったところであります。
 これを踏まえ、全国知事会の新型コロナウイルス対策検証・戦略ワーキングチームにおいて、これまでの対策や課題を整理した上で、全国知事会として水際対策の強化や宿泊療養施設の法的位置づけなどについて、9月に国に対し緊急提言を行ったところであります。
 県としては、引き続き感染拡大防止に取り組むとともに、課題の洗い出しと今後必要な対策の検討に向け、国や全国知事会と連携して取り組んでまいります。
〇岩渕誠委員 この感染症指定医療機関についてですが、これは、新型コロナウイルス感染症対応でまさに肝となる医療機関でありますし、大変な御苦労をされているスタッフの皆様には、心から敬意と感謝を申し上げるところです。ただ、一方で、この感染症指定医療機関の歴史的背景と今日の医療資源の配置には乖離があるのも実態だと思います。
 我が国における感染症治療の歴史は、長らく隔離、静養が基本でありましたが、当然、現代の感染症は、質量とも十分に訓練された医療スタッフによる高度な治療が必要であることは言うまでもありません。
 ただ、一方で、本県の場合は、医療資源に乏しいこと、基本的には医療圏ごとに設置している中核病院で高度な医療行為がなされているという環境に置かれています。感染症のリスク管理が非常に難しいことを考えますと、ここに常態的に感染症患者を診る体制をつくることは、医療崩壊につながるおそれもあるという懸念もあります。
 しかし、感染症指定医療機関の配置のあり方を点検していかないと、適切な医療行為の実施ができるかどうかということ、あるいは医療スタッフの著しい疲弊につながることも容易に予想されます。
 この議論は、ある程度収束が見えた段階で行うものなのかもしれませんが、新型コロナウイルス感染症の後には必ず次の未知なるウイルスが猛威を振るう可能性があります。いわばネクストコロナは必ず来るということを想定して、現段階で次の体制に向けた論点整理を行う必要があると考えておりますが、県の見解をお示しください。
〇野原保健福祉部長 次の感染症に備えた医療体制についてでありますが、国の基準により、第一種感染症指定医療機関については、都道府県の区域ごとに1カ所2床、第二種感染症指定医療機関については、二次医療圏ごとに人口に応じて病床数が定められており、岩手県におきましては36床設置しております。
 この第二種感染症指定医療機関の機能については、現状、コレラや赤痢などの消化器感染症を想定したものとなっており、特に、今般の新型コロナウイルス感染症等の呼吸器感染症への対応については、十分な体制になっていないなどの課題がございます。
 また、新型コロナウイルス感染症の入院医療については、感染症指定医療機関にとどまらず、一般の急性期機能を担う医療機関を含めた重点医療機関を中心とした体制確保が求められておりますが、地域によっては、重症者を受け入れる医療機関は1カ所しかない場合も多い状況にございます。医療資源が少ない地域にとって、一般医療の確保と感染症拡大時における病床確保のバランスをどのようにとるのかについては、今後解決すべき課題と考えております。
 こうした医療機関の機能や感染拡大期に確保すべき病床数を含め、次の感染症を見据えた医療体制の検討に向け、国や全国知事会と連携しながら取り組んでまいります。
〇菅野ひろのり委員長 この際、岩渕誠委員の質疑の途中でありますが、世話人会の申し合わせにより、換気のために10分ほど休憩いたします。
 岩渕誠委員、御了承願います。
午前11時1分 休 憩
午前11時12分 再開
〇菅野ひろのり委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
〇岩渕誠委員 私からの質問の最後に、危機管理の観点で伺います。
 今回の新型コロナウイルス感染症対策は、国が疾病対策を基本として、その影響に伴う経済対策について注力してきたと思います。新しい危機管理対策という気配は、残念ながら私自身は感じることはできませんでした。
 危機管理、少なくとも災害級の捉え方をするのであれば、大きく構える。最初にどれだけの戦力を投入できるかというのが基本であり、これは戦力の逐次投入というやり方をとってはならないというのが鉄則であります。
 加えて言うならば、大きく構えるための備えというものが大切であり、事前準備、初動、ピーク時、回復期、復興期など、局面に応じたタイムラインでの対策を想定していろいろなことを講じておくことが必要と考えます。
 そこで伺いますが、今回の新型コロナウイルス感染症について、県として、危機管理の点からどのような課題を見つけておられるのかお示しください。
〇菊池副知事 新型コロナウイルス感染症は、病態が十分に解明されていない新しい感染症であり、これまでの検査、早期発見、治療などによる感染症対策に加え、世界的な感染拡大による物資不足への対応、一般医療を維持しながらの医療供給体制の構築、外出自粛等の影響からの社会経済活動の支援など、多岐にわたる課題に対応してきているところであります。
 現時点においても特効薬やワクチンがないことなどから長丁場となることも見据え、感染状況のフェーズに応じた状況の変化に対応し、例えば、患者搬送においては、原則、保健所が担っておりますが、感染が拡大した場合には、消防機関や、さらには交通事業者と連携した搬送手段の確保が必要となることや、商業、観光分野における感染対策など、さまざまな局面に応じた横断的な対応が求められると考えております。
〇岩渕誠委員 先ほどお聞きいたしましたパンデミック2009の報告書の件でも、しっかりとした方向性はできていながらも、認識がなかなか追いつかなかった、徹底できなかったということだと思います。特に、法的位置づけなど、今まさに問題になっていることでありますから、これが事前に解決が図られていたらと思うと大変残念なところであります。
 一般に危機管理といっても、行政的には災害に対して重点が置かれていて、少なくとも疾病対策などは守備範囲としてなかなか認識されてきたとは言えない状況だったと思います。
 今回の問題では、こうした未知なるウイルスへの対応は、まさに生命、財産にかかわる行政が果たさなければならない基本の一つであるということが明らかになったのだと思います。
 ただ、一方で、危機管理に対しての組織論でいうと、現状では縦割り、個別的になっているのが実態でありまして、この辺に私は問題意識を持っているのですが、県としてはどのような問題意識を持って、今後どういう構想をお持ちなのかお示しいただきたいと思います。
〇菊池副知事 まず、県の現行組織と今後の対応についてでございますが、県では、危機事案が発生した際、事案に応じて対策本部を設置し、関係部局の緊密な連携のもとで情報の共有、分析を行いながら、総合的な対策方針を検討していくこととなっており、各分野においては、この方針に基づき、それぞれの専門性を発揮した施策を展開してきている状況にあります。
 一方、自然災害は総務部、感染症は保健福祉部など事案の性質により所掌する部局が異なっており、例えば、先般、令和2年7月豪雨における新型コロナウイルス感染症対策に配慮した災害対応など複合的な事案の発生が今後想定されますことから、個別事案に適切に対処するとともに、これまで以上に分野横断的な対応を適時的確に進め、次なる危機事案への備えをも滞りなく進めていくことができる体制の整備が重要になってくるものと認識しております。
〇岩渕誠委員 大変重要な答弁だったと思いますが、危機管理の問題は、縦割り以外にも当然あります。それは、今もちょっと答弁にありましたけれども、例えば災害だと、発災を境に役所の担当が大きく変わっていくということも問題だと思います。事前の防災については防災担当が、事後の復旧、復興については復興部門が、あるいは民生部門がということになると思いますが、そういうふうに局面によって担当が変わってくるのが常なのですけれども、これについても課題は多いと思います。この点について県としての認識を伺います。
〇白水総務部長 危機管理につきましては、各部局が役割分担をしながら担っており、例えば、防災につきましては、予防的対応として総務部や関係部局が市町村と連携し、消防団の支援や自主防災組織の育成、国土強靱化等を推進しております。
 また、大規模災害発生時には、初動対応を担う災害対策本部から復旧・復興推進本部に円滑に移行させるとともに、東日本大震災津波の際には、多岐にわたる事業全体の統括を担う専担の組織として復興局を設置し、切れ目ない対応を進めてきたところでございます。
 一方で、近年、頻発する大規模自然災害、それから今般の新型コロナウイルス感染症対策などに対しては、従来の体制では対応が不十分となる可能性があることから、県民生活、県民経済に大きな影響を及ぼす危機事案に対する備えや、応急対応、防災、減災から復旧、復興までを一連の流れとして施策を組み立て、よりよい復興に向けた体制の構築が必要と認識しております。
〇岩渕誠委員 こういう問題は世界各国で起きているわけでありまして、既にお手本のようなものがあります。代表的なものはアメリカの連邦緊急事態管理庁、いわゆるFEMAであります。これは、1979年にジミー・カーター政権のときに設置されたそうでありますが、まさに縦割りを廃して、一元的かつ発災前から復興まで一貫した権限を有しているとお聞きしております。具体的に言うと、事前準備、被害の軽減、救助救援、復興という危機管理の四つの役割で対応していて、一貫的な対応を可能としています。また、守備範囲はオールハザードということだそうでありまして、かなり幅広い対応が可能とのことであります。
 我が国でも日本版FEMAの創設が検討課題になったことがありました。あったのですが、安倍晋三政権下で2015年3月に、現段階で積極的な必要性は直ちに見出しがたいと結論づけて、先送りをしております。
 各省庁が連携する日本的な水平型の危機管理を今までやってきたと思うのですが、一方で、欧米型の垂直型の危機管理のあり方もあり、それぞれいい点があると思うのですが、やはりもう一度、実際の対応に当たる地方自治の現場での議論と見直しが必要と感じております。
 先ほど来、見直しについていろいろ示唆があるわけでありますけれども、県はこの10年余り、岩手・宮城内陸地震、東日本大震災津波、相次ぐ台風被害、そして新型コロナウイルス感染症と未曾有の事象に対応してきました。そして今、三陸では新たな災害想定も明らかになっています。今後、組織をどうするのか、県としてのお考えをお伺いします。
〇達増知事 危機管理上の課題に迅速、的確に対処し、県民の生命と暮らしを守っていくことは、県として何よりも優先すべき事項であり、甚大な被害をもたらした自然災害からの復旧、復興、そして、新型コロナウイルス感染症対策などに対して、県の総力を結集して取り組んでいるところであります。
 これまで、各種対策本部の迅速な設置や弾力的な組織体制の整備により、危機事案への対策を進めているところでありますが、気候変動や社会構造の変化などに伴い、危機管理上の課題が複雑化、多様化する中、委員御指摘のFEMA設置の考え方なども参考としながら、従来の体制にこだわることなく、体系的、横断的に対策に当たることが重要であると認識しております。
 このため、さまざまな危機事案に対する事前の備えから復旧、復興までの一連の対策を次の災害への備えにつなげていく災害マネジメントサイクルの取り組みを加速させることで、危機事案からのよりよい復興に向けた、あらゆる災害危機事案に負けない体制づくりが必要であると考えております。
〇岩渕誠委員 そういう考えのもとに、今後どうするかという話なのだと思います。今のお話だと、常設的な、恒常的な組織としてどうしていくかというような話になるのだと思いますが、今の県の考えでいきますと、現行の復興局をどう位置づけていくかということが課題の一つになると思います。局ですからね。部じゃないですから。
 今年度で震災の発災からちょうど10年になるわけです。被災した皆様、民間も行政も最大限の努力をしてたどり着いた10年だったと思いますが、これからの被災地の復興をさらに進めるには、社会的な環境や構造の変化に対応していかなければならないと思います。例えば、デジタル環境や新しい生活様式にどう対応していくのか、産業の支援のあり方も、こうしたものに対応する必要性が強まっていると思います。
 先ほどから指摘しております危機管理は、特に沿岸被災地においては恒常的な問題であります。現状の諸課題を踏まえ、そして、今の危機管理に対する考え方を踏まえ、復興局の進むべき方向性と危機管理のあり方について、新たな視点で恒常的なものに発展されることを考える時期に来ているのではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
〇達増知事 復興局の方向性と危機管理のあり方についてでありますが、県では、復興局を復興推進の司令塔として、いのちを守り海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造を目指し取り組みを進め、復興道路や災害公営住宅の整備、商業施設の再開など、復興の歩みは着実に進んでいるところであります。
 一方で、心のケアやコミュニティーの形成支援、事業者支援など、被災地の実情を踏まえた取り組みを継続するとともに、東日本大震災津波の事実や教訓を未来のために永続的に伝承、発信していく必要があります。
 危機管理上の課題が複雑化、多様化する中、復旧、復興で培った教訓、知見を危機管理対策全体に生かしていくことは、次の災害に備えるためにも極めて重要であると認識しており、この教訓を土台としながら、危機事案発生時における影響の最小化と早期回復を可能とする危機管理体制を強化するとともに、大規模災害により発生し得る事態を想定し、発災後の応急対応や復旧、復興に必要な体制をあらかじめ整備、構築することが重要と考えているところであります。
 これらの視点に立って、引き続き、復興を県の最重要課題と位置づけ、復興の着実な推進や震災の教訓を踏まえた危機管理対策の強化につながる新たな組織体制の整備について、12月定例会にお諮りできるよう検討してまいります。
〇岩渕誠委員 わかりました。そうすると、危機管理、事前防災から復興まで一貫して、そしてオールハザードでということだと思います。私は非常にいい考え方だと思います。
 阪神・淡路大震災を経験した兵庫県も、発災から10年の節目で危機管理と復興を一緒にする部署をつくって、これが今、都道府県の中では唯一、一貫で見るというような組織になっておりますので、ぜひ研究をして、よりよい組織の提案をしたいと思います。
 私からは以上とさせていただきます。
〇菅野ひろのり委員長 それでは、質問者席の消毒のため、しばらくお待ちください。
 次に、岩城元委員。
   〔岩城元委員質問者席に着く〕
〇岩城元委員 希望いわての岩城元です。
 私からは、県政の最重要課題である東日本大震災津波からの復興を中心に質問をいたします。
 県を初め、関係者の復興に対する懸命な御努力に対しまして、改めて感謝を申し上げますとともに、被災者、被災地の一日も早い復興に引き続き御尽力いただきますようお願い申し上げます。
 まず、復興事業、特にインフラ整備の進捗についてお伺いいたします。
 本年5月に公表された社会資本の復旧・復興ロードマップによると、令和元年度末時点の復興事業全体の完成箇所数は708カ所、完成未了箇所数は67カ所となっており、復興期間全体で進捗率は91.4%となっております。
 一方、9月に公表された主な取組の進捗状況・いわて復興インデックスによりますと、令和元年度以降の仕上げの部分について、6月末現在で復興推進プランの目標値に対する海岸保全施設の復旧、整備の進捗率は43.6%、復興支援道路の整備の進捗率は22.2%と依然として進捗が低い分野もあり、生活、なりわいを支える社会インフラの整備が急がれます。
 そこでお伺いしますが、防潮堤、復興支援道路について、県は現在の進捗率をどう認識されているのでしょうか。
〇大槻復興局長 防潮堤、復興支援道路の進捗についてでありますが、復興事業に着手した平成23年度からの進捗では、令和2年6月末現在で、防潮堤79%、復興支援道路が81.6%となっております。
 その後の話になりますが、本年7月以降も、釜石漁港海岸、それから両石漁港海岸等の防潮堤が―おおむね完成ということで概成という言葉を使わせていただきますが、機能面はもう完成しているけれども、細かいところがまだという状況でございますが―概成するなど、現在、工事を鋭意進めているところでございます。防潮堤とか復興支援道路の箇所につきましては、事業完了に向け着実に進んでいるものと認識しております。
 引き続き、工事の進捗状況を確認しながら、工程管理をしっかり行い、復興・創生期間内の完成を目指して進めてまいりたいと考えております。
〇岩城元委員 着実に進むよう努力をお願いいたします。
 三陸沿岸道路について、普代村から野田村にかけての区間でトンネル工事におくれが生じ、全線開通が令和3年内になると国土交通省東北地方整備局から発表がありました。三陸沿岸道路は、復興のシンボルでもあり、一日も早い完成が待たれます。国に対し早急な整備を求めるべきと考えますが、県の見解をお伺いします。
〇大槻復興局長 三陸沿岸道路の進捗についてでありますが、委員御指摘のとおり、普代村から野田村の一部区間につきましては、トンネル工事において、軟弱な地質により掘削に時間がかかってしまうということで、令和3年内の開通となることが、ことし6月に国から公表されたところでございます。
 この公表を受けましてすぐ、県では、7月に国に対し、復興道路等の一日も早い全線完成を要望したところでございます。
 特に、三陸沿岸の道路は、全線が自動車専用道路で結ばれるということもあり、今後、水産業等の物流、それから広域観光、救急医療、防災等の面で大きな効果を発揮するものと考えていることから、県としては、引き続き、市町村と連携しながら、一日も早い完成を国に働きかけてまいりたいと考えております。
〇岩城元委員 先日、私も田野畑村から陸前高田市まで乗ってまいりました。早く全線開通するようにお願い申し上げます。
 国道281号や国道340号といった復興支援道路は、道路改築により隘路の解消が図られてきましたが、山間部を通る道路もあり、いまだ携帯電話の不感地域が点在しております。
 県内の携帯電話不感地域は21市町村、164地区と伺っておりますが、山間部の多い本県では、携帯電話の不感地域の解消が大きな課題と認識しております。
 東日本大震災津波を受け、三陸沿岸道路が避難道路や緊急物資の輸送道路として整備され、まさに命の道として機能するわけですが、このアクセス道である復興支援道路において携帯電話が使用できないというのは、防災の観点から好ましいものではありません。
 復興支援道路の周辺で携帯電話の不感地域はどの程度あるのか、また、どのように不感地域を解消していくのか、考えをお伺いいたします。
〇佐々木ふるさと振興部長 復興支援道路周辺における携帯電話不感地域の解消は、住民や来訪者の安心、安全の確保の観点から重要な課題として認識しており、これまで、通信事業者に対し、その解消を要請してまいりました。
 現在、復興支援道路周辺では、5市町村から11カ所の不感地域解消の要望があると確認しております。
 こうした中、国においては、今年度に、これまで居住エリアを対象としていた補助事業を見直し、一定の交通量のある道路等の非居住エリアも補助対象としたところであります。
 このため、現在、市町村と連携し、補助事業の活用に向け整備の方法の検討を行っているところであり、通信事業者に対しても、さらに要望を行うなど、その解消に努めてまいります。
〇岩城元委員 ぜひそのように進めていただきたいと思います。
 次に、防災集団移転事業により、津波被害を受けた沿岸部の市町村では、安全な高台等への移転が実現し、移転元地については、市町村が買い取ることで住民の経済的負担の軽減がなされております。
 一方で、市町村が買い取った移転元地は活用が進まないという大きな問題を生み、8月末現在の市町村の買い取り面積327.7ヘクタールに対して、活用決定済みなのは199.3ヘクタール、率にして61%にとどまっております。
 いまだに128ヘクタールという広大な面積が未活用となっているわけですが、こうした移転元地や周辺の多くは災害危険区域に指定され、住宅の建築制限が課されるなど活用には高いハードルがあります。
 県として、この実態をどう認識し、どのようにかかわっていくのかお伺いいたします。市町村のまちづくりに参画し、未来像を提案することも県の役割と考えますが、いかがでしょうか。
〇大槻復興局長 委員御指摘のとおり、本年8月末現在で活用策が決まっているのは61%という状況でございまして、その主な活用方法は、道路、公園、多目的広場などのいわゆる公共施設用地のほか、例えば、漁具を置く漁業関連施設用地、それからトマトなどの大規模栽培施設という産業用地としても活用されております。
 県ではこれまで、移転元地の利活用が進むよう、市町村に対して他地域の活用事例を情報提供したり、国と連携して市町村を訪問して、復興交付金の活用について助言を行ってきたところでございます。
 国におきましても、沿岸被災地の土地活用に関する課題意識は持っており、令和3年度概算要求において、復興庁からは、土地活用のノウハウの提供や関連施設との連携などによる支援を行う、事業名で申し上げますと、ハンズオン型ワンストップ土地活用推進事業を要求しております。
 こういったこともあり、県としても、本事業の活用も図りながら、市町村が進めるまちづくりや土地利用の方向性に沿って移転元地の利活用が進められるよう、引き続き、きめ細かく一緒になって相談に対応してまいりたいと考えております。
〇岩城元委員 そのように進めていただきたいと思います。
 移転元地については、全て活用されるのが当然望ましいわけでございますが、一方、先ほど申し上げた課題により、現実的には、長期間にわたり市町村が管理せざるを得ない状況も想定されます。
 そこで課題になるのが維持管理経費であり、今後、数十年という単位で持たざるを得なくなった場合、維持費も相当なものとなります。公益社団法人日本都市計画学会が2018年にまとめた報告書でも、こうした費用負担が移転元地に関する問題の一つと指摘されております。
 復興の過程で持たざるを得なくなった移転元地の維持管理費については、国による財政措置も必要と考えますが、県としていかがお考えでしょうか。
〇大槻復興局長 移転元地の維持管理についてでございますが、利用予定がなく現状のままとなっている移転元地につきましては、周辺の衛生環境、それから住民の安全の観点、維持管理の観点からも、被災地域にとって重要な課題であると認識しております。
 今年度におきましては、例えば、元事業であります防災集団移転事業による基礎の撤去工事や盛り土による整地を行うことが可能でございますので、維持管理の負担軽減につながる市町村の取り組みを引き続き支援してまいりたいと考えております。
 また、土地に段差等がある移転元地については、最小限の整地等を行うことで将来における有効活用が図られるということもございます。県では、復興・創生期間後においても、引き続き、移転元地の集約や整地に係る費用に対して財政措置を講じるよう、国に対して要望を行っているところであり、市町村の意向を確認しながら、その利活用に向けた取り組みを支援してまいりたいと考えております。
〇岩城元委員 市町村と一緒になって、県も活用方法を考えていただければと思います。
 次に、なりわいの再生についてお伺いします。
 生活者の復興のためには、生活を支えるなりわいの復興が不可欠であります。なりわい再生の最大の柱となってきたのはグループ補助金であり、東日本大震災津波からの復興に際し制度がつくられたグループ補助金は、平成28年熊本地震や平成30年7月豪雨など、その後の災害でも企業再生のかなめとして採用されております。
 リーディングケースとして活用が始まった本県では、自己資金への対応としていわゆる高度化スキーム貸し付けを利用している企業が多く、5年の据え置き期間が終了し、現に資金の返済が始まっております。そして、このタイミングで新型コロナウイルス感染症の全国的な流行であります。
 平成28年台風第10号や令和元年台風第19号と立て続けに大災害に見舞われ、基幹産業である水産業は未曾有の不漁という非常に厳しい状況に置かれ、被災地からは、資金の返済が本当に厳しいという切実な声が聞こえております。
 県では、こうした被災地の現状をどう把握しているのでしょうか。グループ補助金を活用した企業にどのような影響が出ていると把握しているのか伺います。
 こうした企業に対し、返済条件の変更なども行われていると承知しておりますが、これまでの条件変更の件数と今後の課題について、あわせて伺います。
〇保副知事 県が毎月実施しております新型コロナウイルス感染症に伴う事業者の影響調査の最新の8月時点の集計において、感染症の拡大により既に経営に影響が出ていると回答した割合は全県で82.3%、沿岸部では81.6%となっておりまして、被災地においても非常に大きな影響が出ていると考えております。
 また、県では、グループ補助金を活用した事業者を巡回訪問し、経営状況などを聞き取りしておりますが、事業者からは、客足の鈍化、あるいはイベントや会議の中止による注文の減少など、売り上げの減少に関する声を多く伺っております。
 グループ補助金の自己資金相当分を無利子で融資しますいわゆる高度化スキーム貸し付けにつきましては、これまで全体で326件の利用があります。このうち、これまで返済繰り延べなどの条件変更を行ったのは79件であります。
 今後の課題でございますけれども、この繰り延べ等の条件変更は、令和元年度は年間で26件でしたが、令和2年度は8月末現在で27件と、この時点で前年度を上回る状況になっており、今後、十分注意が必要であります。
 全般的に運転資金等の借り入れ、あるいは経営計画等を見直さなければならないといったニーズが多いということでございますので、これが今後の大きな課題となるものと捉えております。
〇岩城元委員 影響も出ているということです。
 今回の新型コロナウイルス感染症の影響、そして、たび重なる災害で二重三重の被害を受けた企業は、みずからの努力ではいかんともしがたい状況に置かれております。行政としての支援が不可欠と考えますが、県の対応をお伺いします。
〇達増知事 東日本大震災津波や平成28年台風第10号、そして昨年の令和元年台風第19号と、この10年の間に発生した大規模自然災害により多くの事業者が被災しており、その中には二重三重の被害を受けた事業者が含まれています。
 県では、被災した事業者が早期に復旧、復興できるよう、災害が発生した都度、国の支援策を最大限に活用しながら、融資制度や補助制度を創設して復旧を後押しするとともに、商工指導団体等と連携して、復旧後の経営の安定化に向けた経営支援に努めてきたところです。
 新型コロナウイルス感染症は、被災事業者が復旧、復興に向けて取り組んでいる中、発生したものであり、多くの事業者がその影響を受けています。
 県では、感染症対策として、これまでに4度の補正予算を措置しており、その中では、既往の保証つき債務の借りかえにも対応する3年間無利子で保証料を全額補給する融資制度を創設しています。事業者は、災害時に借り入れた資金をこの資金に借りかえることにより、返済の繰り延べや金利負担軽減などの効果が得られるものであります。
 また、事業者は、感染症への対応という前例のない複雑な経営課題に直面しており、その解決に向けて、商工指導団体の相談体制の強化や専門家を派遣するための予算を措置し、支援しています。
 今後におきましても、国内の感染状況や事業者の状況を踏まえ、金融、経営の両面から必要な支援策を講じてまいります。
〇岩城元委員 事業者と一緒になってしっかりと下支えをしていただきたいと思います。
 次に、医療と福祉の連携について伺います。
 病院や薬局、福祉施設の間でカルテ等を共有する仕組み、いわゆる医療情報ネットワークにつきましては、医療圏ごとの取り組みとされ、復興財源を活用し、沿岸では全圏域でシステムが整備され運用が始まっております。住民への切れ目のない医療、介護サービスの提供にとって有効な取り組みであり、今後、万が一の災害に際しても役立つものと考えます。
 こうした取り組みを全圏域に広めていくべきと考えますが、県の考えをお伺いいたします。
〇菊池副知事 県では、二次医療圏域における医療と介護の情報連携システムの構築を推進しており、これまで、委員御指摘のとおり、被災地を中心とした5圏域においてシステムが整備されております。
 これらのシステムの構築に当たって、県は、地域における協議の場に参画し、先行事例の紹介などの助言を行うとともに、多額となる導入経費の補助を行うなど、技術的、財政的支援を行っているところでございます。
 一方、医療機関や介護事業所などの地域の医療機関においては、システム整備後の運営費を負担するという役割分担を通じ、県と地域が連携して取り組んでおります。
 県としては、委員御指摘のとおり、全ての圏域で医療介護情報連携システムが構築されることが望ましい姿と考えており、引き続き、役割分担と連携により、未導入の圏域でのシステム構築に向け地域の主体的な取り組みを支援してまいります。
〇岩城元委員 このシステムは、介護事業者、医者、薬局等でカルテを共有できるというメリットがありますので、ぜひ全圏域に広がるようによろしくお願いします。
 復興庁の令和3年度概算要求を見ますと6、331億円と令和2年度から半減しており、その大半は原子力災害への対応経費となっております。第2期復興・創生期間における国の復興予算は、岩手県分として1、000億円が財源フレームに組み込まれ、この財源フレームには、復興推進プランの遂行に必要な額が盛り込まれている旨、一般質問で答弁がございました。
 台風を初めとした大規模災害の発生や未知のウイルス感染拡大など、プランを遂行しているさなかにあっても、被災地や被災者を取り巻く環境は常に変化します。
 こうした社会環境の変化を捉え、一人一人の復興の実現に向けて、必要があれば復興予算の拡充も国に対し求めていくことが必要と考えますが、知事の見解をお伺いいたします。
〇達増知事 本年7月に国で決定した第2期復興・創生期間の復興財源フレームにおける事業規模については、本県及び市町村が必要と見込んでいるものとおおむね一致しているところであります。
 被災地では、東日本大震災津波や相次ぐ台風災害からの復興途上にある中で、今般の新型コロナウイルス感染症により大きな影響が生じています。
 そのため、復興大臣との会談、意見交換や令和3年度政府予算提言、要望等において、新型コロナウイルス感染症の影響を含め、被災地の実情を踏まえた特段の支援等について要望したところであります。
 引き続き、被災地の復興がなし遂げられるよう全力で取り組んでいくためにも、今後の政府予算編成に向けた要望の中で、復興に必要な取り組みの継続や予算の確保に加え、被災地の状況の変化を踏まえ、復興に真に必要な事業、制度の拡充についても国に働きかけてまいります。
〇岩城元委員 最後に、防災対策について伺います。
 本年9月11日に、内閣府は、日本海溝、千島海溝沿いの最大クラスの津波想定を公表しました。想定によりますと、宮古市では最大29.7メートルの津波が発生、市役所が最大2.1メートルの浸水と見込まれております。
 我々が震災から学んだことは、施設による守りが万全なものではなく、防潮堤に過信せず、まずは逃げるということの重要性であります。今後の防災においては、ソフトとハードが一体となった対策が求められると考えます。
 人間本位の防災のもと、二度と津波による犠牲を出さない決意が求められますが、県では、このシミュレーションをどう受けとめ、今後どのように市町村と共有し、そして対策を講じていくのかお伺いいたします。
〇達増知事 国が公表した日本海溝、千島海溝沿いの最大クラスの津波による浸水想定については、今後発生が見込まれる海溝型地震を想定したものであり、本県の防災対策の検討を進める上で重要な情報であると認識しております。
 この津波浸水想定の情報の共有については、国の公表に際して市町村と意見交換を重ねるなど丁寧に行ってきたところであり、今後も、現在県が進めている詳細な津波浸水想定の情報とあわせて、市町村担当者会議の場などを通じて共有してまいります。
 最大クラスの津波への対策については、これまでもソフトとハードを総動員した多重防御の考え方により住民の避難を軸とした取り組みを進めてきたところであり、県としては、市町村や関係機関と連携し、地域住民への津波防災意識の普及啓発や住民参加型の防災訓練などを行ってまいります。
〇岩城元委員 沿岸被災地は、このシミュレーションが公表され、新聞報道もあった中で、かなり不安な思いをしております。ぜひ早急に対策等を提示していただきたいと思います。
 以上で終わります。(拍手)
〇菅野ひろのり委員長 この際、昼食のため午後1時まで休憩いたします。
午前11時52分 休 憩
午後1時2分 再開
〇菅野ひろのり委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。臼澤勉委員。
   〔臼澤勉委員質問者席に着く〕(拍手)
〇臼澤勉委員 自由民主党の臼澤勉でございます。会派を代表いたしまして質問いたします。
 本日、決算審査を通じて議論を深めたいことは、今の県政は、知事のマネジメントが十分に機能しているのか、目標に向かって予算、組織、政策が連動して政策効果が発現しているかであります。
 まず初めに、財政運営について伺います。
 令和元年度は新しいいわて県民計画(2019~2028)の初年度、4年にわたる第1期アクションプランのスタートの年であり、スタートダッシュする予算と位置づけられております。令和元年度決算の評価と、危機の克服に向け、具体的な成果についてまずはお伺いします。
〇達増知事 昨年度は、東日本大震災津波からの復興に取り組む中で、令和元年台風第19号による災害に再び見舞われ、甚大な被害が生じましたが、三陸鉄道の再開を初め、復旧、復興に全力で取り組んできたところであります。
 また、三陸防災復興プロジェクト2019の開催や東日本大震災津波伝承館の開館により、復興に力強く取り組んでいる地域の姿、東日本大震災津波の記憶と教訓を広く発信することができたほか、ラグビーワールドカップ2019日本大会岩手・釜石開催では、大会を通じて復興支援への感謝と復興に向けて力強く歩む姿を国内外に発信することができたものと認識しております。
 このような災害対応や大型イベントの開催も含めて、県では、政策推進プランに基づき10の政策分野に基づく取り組みを推進してきたところであり、計画初年度におけるいわて幸福関連指標の達成状況は、概ね達成以上の割合が6割を超えているところです。
 今後は、これから実施する政策評価において、指標の達成状況に加え、社会経済情勢等を踏まえて課題を分析し、10の政策分野の取り組みに反映させることにより、いわて復興関連指標の向上を図り、県民一人一人の幸福度を高めていきたいと思います。
〇臼澤勉委員 本県の財政は安定的な財政運営に必要な財源の確保が厳しい状況が続いております。平成30年度決算では、実質公債費比率16.7%、全国45位、将来負担比率218.3%、全国37位、財政力指数0.36255、全国35位、歳入に占める地方税の割合23.1%、全国37位と、各種の指標において全国の下位にあるなど、他県と比較しても決して余裕のある財政状況にはありません。
 知事は、本県財政の中長期的な課題をどう捉えているのか。また、国との良好な関係をどう構築し、本県の財政面における危機的状況を克服するために、具体的にどのように取り組むお考えかお伺いいたします。
〇達増知事 本県は、実質的な一般財源総額が縮小傾向にある中で、公債費が引き続き高水準で推移することに加え、県立病院への繰出金が多額であるなどの構造的な要因もあり、厳しい財政環境にあると認識しております。
 このため、国に対し、税源の移譲など地方税財源を充実させ、地方交付税の持つ財源調整機能や財源保障機能を適切に発揮することで、地方が必要とする財源を十分に確保できるよう、全国知事会とも連携して訴えてまいります。
 また、県としても、県税徴収の強化や県有資産の有効活用など、あらゆる手法により財源を確保するとともに、ICTの利活用などによりコストを削減しつつ行政サービス機能の強化を図るなど、持続的な行財政運営に努めます。
〇臼澤勉委員 先ほどの本県財政指標を5段階評価したチャート図で私なりに通信簿をつくってみております。厳しい状況というよりは、極めて厳しい状況であります。ちょっと知事の認識より、私は厳し目に見ております。
 それでは、具体的に、財政誘導目標を策定し、どう財政の健全化を図ろうとしているのか。今まで以上にわかりやすい情報公開を徹底し、県民の意見を取り入れながら不断の見直しを図っていく必要があるのではないかと思いますが、知事の御所見をお伺いいたします。
〇達増知事 本県は、実質公債費比率や将来負担比率など、国の健全化判断比率の四つの指標を判断基準として財政運営を行っていますが、現時点では早期健全化基準に該当していません。
 毎年度、中期財政見通しを策定、公表しており、そこで見込まれた収支ギャップを踏まえて予算編成の段階でシーリングを設定するほか、徹底した歳出の見直しを図るとともに、地方創生推進交付金の活用や有利な県債の発行など、歳入面にも留意し、収支ギャップの縮減に努めてまいります。
 また、これまでも当初予算や決算の概要や中期財政見通しの公表など、財政の状況については情報公開をしてきたところであり、近年は、地方消費税率の引き上げ分の使途の明確化や地方公会計による財務状況の見える化などを進めており、引き続き、県民にわかりやすい情報提供に努めてまいります。
〇臼澤勉委員 次に、普通交付税についてお伺いします。
 今年度の臨時財政対策債を含めた実質的な普通交付税は2、366億円と10年ぶりに増加しております。これは、昨年5月に新潟県、鳥取県、徳島県の知事を発起人として、北海道、青森県、秋田県など11道県の知事の強い要望に応える形で創設された地域社会再生事業費が大きく寄与しているものであります。
 ちなみに、本県算定額は59億9、100万円であり、これが10年ぶりの増額の要因となっております。
 地方創生のための財源確保を、国に対し積極的に働きかけているこれらの知事の活動並びに10年ぶりの普通交付税の増額について知事はどう評価しているのかお伺いいたします。
〇達増知事 令和2年度の普通交付税の算定において、地方財政計画に地域社会再生事業費が創設され、地方税財源の充実が図られたところでありますが、これは、地方創生実現財政基盤強化知事連盟や全国知事会地方税財政常任委員会を初め、地方が一丸となって活動した結果であると認識しております。
〇臼澤勉委員 本県の厳しい財政状況からすれば、こういった新潟県、鳥取県、高知県の知事以上に財政基盤強化に向けた知事の積極的な取り組みは本当に重要になってきます。まず、そこに期待するものであります。
 次に、新型コロナウイルス感染症の財政への影響についてお伺いいたします。
 歳入に占める地方税の割合が23.1%、全国37位の本県にとって、中期財政見通しで示された法人事業税を初めとする県税等の収入8%の減少、金額といたしまして171億円の減は、極めて深刻な状況であります。
 新型コロナウイルス感染症の影響による本県財政への影響額をどの程度と推計し、財源確保対策を講じるお考えか伺います。特に、県立病院の赤字額はどの程度見込んでいるのか。その補填対策も含めて、回答をお願いいたします。
〇白水総務部長 まず、新型コロナウイルス感染症の財政への影響についてでございますが、岩手県中期財政見通しにおきましては、内閣府の推計等をもとに、令和3年度の県税等収入額は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、令和2年度と比べ171億円減の1、951億円と見込んでおります。
 先ごろ総務省が公表いたしました地方財政収支の仮試算でも地方税収の減少が見込まれており、地方交付税の増額等について、全国知事会とも連携し、国に強く訴えてまいります。
 県といたしましても、先ほど知事から答弁いたしましたようなあらゆる手法による歳入確保や、ICTを活用してのコスト削減などによる歳出の抑制に努めながら、持続可能な財政運営を行ってまいります。
 次に、県立病院の損益についてでございますが、令和2年度の県立病院等事業会計の経常損益は、現時点で25億1、600万円程度の赤字を見込んでおります。受診控えなどによる減収対策として、医療局では、特別減収対策企業債の発行により対応する予定と聞いております。
 県といたしましては、これまでの補正予算において、空床補償や設備整備支援などの措置を講じているところであり、引き続き状況を注視してまいりたいと考えております。
〇臼澤勉委員 本当によろしくお願いしたいと思いますが、次に、財源対策基金について伺います。
 さきに公表された中期財政見通しによると、昨年度末で財源対策基金残高は365億円で、来年度以降90億から98億円程度の収支ギャップが生じ、財源対策基金の取り崩しにより賄っていくと、令和4年度末の残高は217億円と見込まれるとのことであります。
 自治体が安定的に財政運営を行うための目安として、標準財政規模の1割程度を基金として確保する必要があると考えますが、令和元年度標準財政規模3、930億円で見れば、必要となる基金残高は393億円程度となります。
 知事は、この180億円近くの差額をどのように解消していくお考えか、今後の見通しを含め、回答をお願いいたします。
〇達増知事 中期財政見通しにおける財源対策基金残高は、一定の前提のもとで毎年度の歳入歳出を試算し、その結果生じる収支ギャップを財源対策基金の取り崩しのみで対応すると仮定して算出したものであります。
 財源対策基金は、それぞれの地方自治体が、災害への対応や公債費の償還など、将来の財政需要に備えて積み立てているものであり、安定的な財政運営を行うための目安は一概に申し上げられるものではありませんが、歳入確保の強化やコスト削減を図りつつ、歳出の重点化等の取り組みを徹底し、収支ギャップの縮減に努め、財政見通しで示した以上の残高の確保に努めてまいります。
〇臼澤勉委員 次に、地方消費税について伺います。
 昨年度決算では、本県の地方消費税の実収入額は約250億円であり、税収の約2割を占める基幹財源であります。このうち5%から10%への消費税率の引き上げ分は100億円余と試算され、教育負担の軽減や子育て支援、介護人材の確保等の重要な財源になっております。
 知事の地方消費税率の引き上げに対する所見をお伺いいたします。
〇達増知事 消費税率の引き上げ分については、その全額が年金、医療や教育負担の軽減、子育て層支援、介護人材確保など社会保障の充実と安定化に充当されたところであります。
 これら社会保障の充実のうち、教育負担の軽減など地方の歳出増を伴うものについて、その地方負担に対する財源として地方消費税率の引き上げ分が手当てされているものと認識しております。
 一方、消費税率の引き上げは、経済的に弱い立場にある方などに負担を強いることになり、特に、東日本大震災津波やたび重なる台風災害の被害を受けた地域において、暮らしの再建やなりわいの再生の妨げとなることが危惧されます。
 こうしたことから、県としては、経済的に弱い立場にある方々が困窮することがないよう、また、地域に根差した産業に十分配慮して地域経済の落ち込みや復興のおくれを招くことのないよう、北海道東北地方知事会などと連携し、十分な対策を講じるよう国に対応を求めてまいります。
〇臼澤勉委員 地方消費税は、税収の約2割を占める基幹財源であります。税収減による行政サービスの水準の低下を避けて、教育無償化や福祉の充実に対する財源確保に努めるといった形でお願いしたいと思います。
 次に、人事、組織体制のほうに移ってまいります。
 近年の知事部局の職員数を見ますと、今年度は4、409人と平成23年度の3、949人から確実に増加しております。岩手県の人口10万人当たりの職員数は351.7人、全国平均の約2倍であり、全国でも10番目に多い状況にあります。しかも、福祉関係を除く一般行政職員の占める割合は82%と、大分県と並び全国でも最も多い状況にあります。
 しかし、いわて幸福関連指標を全国比較で見ると、職員数が充実している割には、政策達成状況が極めて悪い状況です。組織的な課題があるのではないでしょうか。
 知事は、この状況をどのように捉え、どう改革しようとしているのかお伺いいたします。
〇達増知事 職員数と政策達成の状況についてでありますが、広大な面積を有する本県においては、人口や面積など地域の事情に応じた適正な数の職員を確保していく必要があると認識しております。
 総務省により、人口のほか、面積や農業産出額、建設事業費など行政需要に密接に関係するデータをもとに算定された定員モデルによれば、本県の職員数はモデルの数値を2.9%下回っており、全国28位と中位にあるところです。
 こうした中で、いわて県民計画(2019~2028)を着実に推進していくためには、政策立案及び政策実行機能の充実、強化が必要と認識しているほか、新採用職員の増加に伴い、若手職員の政策形成能力の向上が求められているところであります。
 このため、今年度、政策企画部及びふるさと振興部を設置するなど組織体制の整備を図ったほか、職員の計画的な育成に取り組んでいるところであり、今後もこうした取り組みを強化することにより、さまざまな県政課題に柔軟かつ適切に対応できる体制を構築してまいります。
〇臼澤勉委員 私は、組織的な課題について知事にお伺いいたしました。政策企画とか管理部門を組織立てたということで、そういった強化も大事だというのは十分理解しますけれども、私は、政策実行部門の機能強化のほうをさらに一層強めていかなければ、さまざまな目標に向かっての、さまざまな政策指標の達成とかが図られないのではないかと思うのですが、知事のお考えを再度お伺いいたします。
〇達増知事 先ほど答弁申し上げましたように、総務省の定員モデルによりますと、岩手県の職員数はマイナス2.9%と職員が不足していると評価されているわけでありまして、そういう中では、現場で対応していく職員の強化も大事だと思います。
〇臼澤勉委員 ちょっと先に進みます。次に、欠員数についてお伺いします。
 昨年度は81人、今年度9月時点で62人でありまして、いまだ必要数を満たしていない状況です。特に、現業組織である保健福祉部、農林水産部、県土整備部の欠員数は、全体の7割を占めております。7割です。現場を重視する組織と言う割には、一丸となってスタートダッシュを切る体制になっていないのではないでしょうか。
 早々に欠員を解消すべきと考えます。解消できない理由と組織体制に対する課題の認識について伺います。
〇白水総務部長 職員の欠員についてでございますが、新規採用職員の大幅な採用増、任期付職員や再任用職員の採用、応援職員の受け入れなどにより、ピーク時の平成27年4月の145名から一定程度の縮小が図られたところではございますが、震災復興やその他の新たな行政需要の拡大等により、欠員の解消までは至っていない状況でございます。
 また、欠員の約半数を占める技術系職種の職員についてでございますが、専門的な知識を必要とするそれぞれの行政分野において欠かせない人材であり、その確保は、いわて県民計画(2019~2028)の推進に向けた組織、人員体制の構築を図る上で重要な課題であると認識しております。
 今後におきましては、復興事業の進展等も見据えつつ、重要施策への人員の重点配置、職員の年齢構成の平準化等により一層配意するとともに、引き続き、多様な方策により、技術系職種も含めた人員の確保にしっかりと取り組んでまいります。
〇臼澤勉委員 一方で、近年、若手職員の退職や休職のお話を耳にすることが多くあります。30代以下の若手職員の自己都合による退職者数の状況は、10年前に比べて令和元年は29人と約5倍になっています。5年前と比べても2倍であり、急増しております。
 知事は、この退職理由を把握しているのでしょうか。なぜ働き方改革が進まないのか、働き方改革をどう主導するのかお伺いいたします。
〇達増知事 東日本大震災津波の発災以降、多くの職員の採用を進めてきており、その中で、若手職員の退職者が増加しているところであります。その理由については、転職によるもののほか、結婚に伴う配偶者の居住地への転居などの家庭事情等と聞いているところであります。
 職員が高いモチベーションを持って職場で活躍できるためには、ワーク・ライフ・バランスに配慮した職場環境の実現等に向け働き方改革を推進することが重要と考えており、本年6月に部局横断で検討を進める働き方改革推進会議を設置し、取り組みを進めているところであります。
 この推進会議においては、若手職員から意見や提案を聴取しながら取り組みを進めることとしていることから、働きやすい職場環境や職員のメンタルヘルスに関する職員アンケートを実施しているところであり、この結果を踏まえ、仕事と生活の調和を図り、職員が明るく生き生きと働くことができる職場環境を実現してまいります。
〇臼澤勉委員 私は今、退職の理由を把握しているかと聞いたのです。
 それでは、転職される理由をどう把握しておりますか。
〇白水総務部長 転職の状況についてでございますが、一つは、民間の企業に転出される方、もう一つは、市町村役場を中心に他の自治体へ転出される方等が多い状況にございます。
〇臼澤勉委員 ですから、なぜそういうふうに離れていくのかというようなところです。国家公務員の調査によりますと、数年以内に辞職したい割合が5.5%、30歳未満の男性職員だと7人に1人の割合というようなことで、少しそういった傾向が出てきているのは、岩手県に限らない話だと思います。
 ただ、その理由として、やっぱり自己成長ができる魅力的な仕事につきたいとかというプラス面の話もございますけれども、岩手県を魅力的な組織として高めていくというようなところで、ぜひ、そこら辺の把握に努めていただきたいと思います。
 次、長期病気休職者の現状について伺います。
 地方公務員健康状況等の現況によると、平成30年度の長期病気休職者数は140人、精神疾患による長期病気休職者は78人と、全国の都道府県の中でも極めて割合が高い状況にあると推察いたします。
 知事は、この現状をどう捉え、どう対策を講じるお考えかお伺いいたします。
〇達増知事 地方公務員健康状況等の現況については、自治体ごとに長期病気休職者の定義が異なっていることから、他県比較で必ずしも本県が上位にあるとは限りませんが、本県においても、継続療養者及び精神疾患による療養者は増加しており、特に、精神疾患について若年層の割合が高くなっていることから、その対策は重要であると認識しております。
 職員のメンタルヘルス対策については、これまで、心の病気の未然防止や重症化予防など体系的な取り組みを行ってきたところでありますが、これに加え、今年度は、新採用職員研修において、個別相談の実施や臨床心理士による講義を実施し、また、メンタルヘルスに関する職員アンケートなどを行っているところであり、若年層に向けた対策をより強化してまいります。
 いわて県民計画(2019~2028)の推進を初め、県の施策の推進に当たっては、職員が健康を保持し、意欲を持って働くことのできる環境整備が重要でありますことから、引き続き、職員個々の実情に応じて必要な対策をきめ細かく展開し、職員の健康維持、増進に取り組んでまいります。
〇臼澤勉委員 知事の認識がちょっと弱いなという感じがします。14日以上の療養総人数は、平成26年に対して令和元年は163人と、5割増です。精神疾患の実人員は、100人と倍増しているのですよ。今、県庁で何が起きているのか。そして、若年層の割合も高い中で、この状況をもし把握しているのであれば、知事として、なぜ職員を守らないのか。知事は担当部署にどんな指示をされているのか、改めてお伺いいたします。
〇達増知事 先ほどから答弁申し上げていますように、特に東日本大震災津波以降、採用者がふえる中、若手の職員数もふえている中で、一定の割合の継続療養者や、また精神疾患による療養者がいて、その数が増加していることは問題と考えております。
 県民との最前線で働く広域振興局の若手職員との対話を重ねたり、また、総務部とは、残業の問題を含め、ワーク・ライフ・バランスという観点から働き方についてさまざま検討しながら年度ごとの対策を講じているところであり、また、そういった対策の中でも、先ほど答弁したようなものについては、広く、知事の予算査定のように、県の幹部会議に準ずるような形の中で検討、決定しているものであります。
〇臼澤勉委員 若手職員の退職増と長期病気休職者の増加。これは組織運営上、非常に危険なサインと捉えるべきだと私は思います。これは、知事の仕事として最優先で取り組むべき課題であります。県民の幸福を高める前に、まず職員の幸福を高めるべきでありまして、これができなければ県民の幸福は高まらない。まさに、結果的には、被害をこうむるのは県民であると私は思っています。まさに隗より始めよであります。理由を分析し、次期採用計画や組織改革に取り組むべきと考えますが、改めて知事の所見をお伺いいたします。
〇達増知事 これは先ほど述べたとおりなのでありますが、やはり今年度は、新採用職員研修における個別相談の実施や臨床心理士による講義の実施、そしてメンタルヘルスに関する職員アンケートなどの新しい施策も講じているところでありまして、若年層に向けた対策は、より強化していかなければならないと考えております。
 職員個々の実情に応じて、必要な対策をきめ細かく展開し、職員の健康維持、増進に取り組んでまいります。
〇臼澤勉委員 私は、県庁組織は本当に格好いい組織であってほしいと思っていますし、きらきらいつも輝いていてほしいと思っています。
 それで、ちょっと聞き方を変えますけれども、県職員の力を妨げているものは何だと知事は思いますか。あるいは、志を高く真面目に働いている職員のこの情熱を奪っているもの、これは何だと知事は考えますか。
〇達増知事 前段の前提について、今この場で初めて伺ったところでありますけれども、先ほど答弁もいたしましたが、例えば、東日本大震災津波からの復興に重ねて、平成28年台風第10号災害、令和元年台風第19号災害があったところ、県の総力を挙げて対応する中、若手職員にも大いに活躍してもらいました。三陸防災復興プロジェクト2019という、これは今まで岩手県がやったことがないような、かつ東日本大震災津波からの復興という中で、日本のどこでもやったことのないようなことを岩手県において曲がりなりに成功させたところでも、若手職員が大いに活躍しておりました。そして、ラグビーワールドカップ日本大会岩手・釜石開催であります。
 そういったところで、岩手県の若手職員の活躍が、夕方のテレビのニュースでも取り上げられる回数も多くなってきているのではないかと思います。ぜひ、そういう県職員の活躍というものを県民にも見てもらいながら、県民とともに、お互いに幸福を守り育てていきたいと思います。
〇臼澤勉委員 私は、頑張れる人は頑張ればいい、頑張ってほしい。でも、一方で、頑張れないでいる方々がいるという、そこの原因を問い、根本的な原因を知事は知るべきだと思います。改革に向け行動しなければ組織が崩壊していくので、やっぱり声なき声を聞いていただきたいと思います。
 アンケートをやっているのは承知しておりますが、本当の声を、上司に対してなかなか書けない人もいたりしますので、ぜひ本音の声を拾い上げる工夫をお願いしたいと思います。これは、指摘にとどめます。
 そして、平成30年度に子ども、子育てに関する財務事務の執行、管理について包括外部監査が行われましたが、昨年度、措置計画を策定して是正措置を講じたと伺っております。包括外部監査の結果をどのように捉え、どのように対応したかお伺いします。
〇白水総務部長 平成30年度の包括外部監査の結果、適正性の確保などの指摘が21件、事務処理の効率化などの意見が58件あり、これら指摘、意見については、関係室、課が連携し対応しているところでございます。
 この包括外部監査でいただいた意見等は重要な内容であると認識しておりまして、例えば、いわて県民計画(2019~2028)を部局横断的に推進するため、10の政策分野ごとに政策推進クロス・ファンクショナル・チームを設置し、機動的、戦略的な施策の展開を図っているところでございます。
 今後におきましても、多様化、複雑化する行政需要に対応するため、広い視野と高い専門性を持つ職員の育成や適時適切な組織体制の見直し等を行い、県民の信頼に応える、より質の高い行政サービスの提供が図られるよう引き続き取り組んでまいります。
〇臼澤勉委員 次に移ります。第2期岩手県ふるさと振興総合戦略について伺います。
 第1期岩手県ふるさと振興総合戦略におけるKPI達成状況は、概ね達成以上が80%である一方、施策推進目標は全て未達成でありました。KPI達成度と施策推進目標は連動するはずであります。にもかかわらず、本計画ではKPIの達成率と推進目標が連動しておりません。これは、施策推進目標のためのプロジェクトの位置づけやKPIの設定の仕方が不適切なためであります。
 本計画はKPIの達成により、確実に施策推進目標が達成されるのでしょうか、お伺いいたします。
〇八重樫政策企画部長 委員御指摘のとおり、施策推進目標は未達成となっておりますが、これは、若年層を中心とした東京圏への転入超過数の拡大や、県民所得よりも国民所得の上昇幅のほうが大きいことなどが背景にあると考えています。
 施策推進目標の達成に向けては、社会減対策や自然減対策に加え、暮らしの基盤整備などについて、県を含むあらゆる主体が総合的に取り組みを進めていくことが求められています。
 第2期岩手県ふるさと振興総合戦略においては、これまでの施策推進目標に加え、岩手とつながるにおいて、関係人口及び交流人口に関連する指標の向上を設定したところであり、総合戦略に掲げるさまざまな施策を一つ一つ着実に実施することにより、KPIを達成し、ひいては施策推進目標の実現につなげていく考えであります。
〇臼澤勉委員 私が危惧することは、成果につながらない無駄な数値化―数値化メタボに陥って、生産性や現場の士気が低下していないかということであります。例えば、英語を話せるようになるという目標に対して、TOEICのスコアで計測しても意味がないのです。会話力の試験ではないからであります。ゴールから逆算して設定すべきであります。間違った数値化が蔓延しているのは、はっきり言って経営側の責任であります。これは指摘にとどめます。
 それで、いわて幸福関連指標について、知事が就任された平成19年から令和元年までの13年間、この時間軸をずっと見てまいりました。全国との比較で見ると、改善が見られない、むしろ悪化しております。具体的には、10万人当たり自殺者数44位から46位、合計特殊出生率22位から37位、正社員の有効求人倍率41位、開業率40位、モバイル端末の人口普及率45位から45位、待機児童数26位から28位、総実労働時間47位から47位と全国最下位のままであります。これは13年間の軸での成果です。
 知事が就任した当時と比較して指標値は改善されているものもございますが、全国的に改善傾向にある中で相対的な改善が見られません。ボトルネックは何なのでしょうか。これまでの予算と政策は効果的だったのか、知事の評価をお伺いいたします。
〇達増知事 いわて幸福関連指標について、平成19年にさかのぼって比較しますと、多くの指標値は改善しており、前計画の取り組みによる政策効果があったものと考えますが、一方で、委員御指摘のとおり、自殺者数や総実労働時間など、指標値は改善していますが、全国と比較した場合に低位にとどまっている指標もあります。
 新しいいわて県民計画(2019~2028)のいわて幸福関連指標の目標値については、より県民が幸福度を実感できるよう、全国や東北の上位を目指すなどといった目標値を設定したところであります。
 今後実施する政策評価において、それぞれの指標の達成状況に加え、社会経済情勢等を踏まえ、丁寧に課題を分析し、10の政策分野の取り組みに反映することにより、いわて幸福関連指標の向上を図り、県民一人一人の幸福度を高めてまいります。
〇臼澤勉委員 次に、社会減対策についてお伺いいたしますが、知事が平成23年9月定例会の知事演述において、本県人口の社会減に歯どめがかかるなど一定の成果を得ることができたと述べられておりました。2000年から2013年は、本県にとって第3人口移動期であり、県の社会増減平均はマイナス4、482人の減、有効求人倍率の差の平均は0.146の減であり、決して平成23年9月時点で社会減に歯どめがかかったと断定できる状況にはありません。
 当時、社会減に歯どめがかかったと言い切った根拠と、有効に寄与したと考えている施策があればお伺いいたします。
〇達増知事 2000年代は、日本全体でいざなぎ景気を超える景気上昇局面と言われ、東京一極集中型の経済成長が続き、地方の社会減が拡大した時期であり、本県の社会減は、平成12年、西暦2000年に2、110人だったものが、平成19年、2007年には6、709人にまで拡大するなど深刻な状況でありました。
 このような中、県では、前県民計画の政策推進目標に人口の社会減を減らすことを掲げ、国際競争力の高いものづくり産業の振興や雇用環境の改善に向けた働く場の確保などを進めたところであります。
 また、リーマンショック後の国による緊急経済対策で地方の経済が相対的によくなったことも相まって、東京圏の転入超過数が大きく減じ、本県の社会減も平成20年、2008年の6、601人から平成22年、2010年には4、140人と3年連続で減少幅が縮小したことから、当時、社会減に歯どめがかかったと申し上げたものであります。
〇臼澤勉委員 知事、社会減4、140人ですよ。それで、3年連続で減少幅が縮小されたと今お話がありましたけれども、歯どめがかかったと言い切るのは、私は不正確ではないかと思います。例えば歯どめの兆しが見える程度かな、あるいはそういう傾向にあるとか、そういったレベルではないかと思っております。歯どめがかかったと歯どめの兆しが見えるでは、政策判断のミスリードが起きるのではないかと私は思っておりました。
 現実に、2年後に、またこの社会減も増加傾向に動いてまいりますけれども、表現を改める考えというか、その辺の御認識をお伺いいたします。
〇達増知事 1年間に6、000人以上、7、000人近くの人口流出があった。それもまた、1990年代は、ひところ三百二十何人ですか、人口流出が300人そこそこだったこともあったわけですけれども、2000年代に入って、毎年の流出が1、000人、2、000人、3、000人、4、000人、5、000人とほぼ毎年1、000人ずつふえて6、000人、7、000人という水準になったところから、4、000人にまで3年連続で減少幅が縮小したので、社会減に歯どめがかかったという表現は、直さなくてもいいのではないかと思います。
〇臼澤勉委員 今の水準の、今も4、370人程度の社会減がありますけれども、知事は就任当初から、県民所得の低迷が有効求人倍率の低さにもつながるし、人口流出にもつながるとお話しされております。生活便益の格差と県民所得の格差、就業機会の格差をいかに縮小させるかが人口減少問題を考える重要なポイントでありますが、なぜ今、社会減に歯どめがかからないのか。
 岩手県の人口流出がとまらない理由、大きな要因を重回帰分析等によりどう捉えているのか。また、これらの課題を解決するために、本県独自に取り組む効果的な対策は何かお伺いいたします。
〇達増知事 本県の社会減は雇用情勢と関係が深く、有効求人倍率や給与などの全国との差が影響を与えているものと認識しております。
 これまでの東京圏を中心とした景気拡大の中で、東京一極集中が加速化し、特に若年層を中心に県外への転出超過が続いていることから、奨学金返還支援制度を活用した大学生等の県内定着の促進、県内企業の雇用の質の向上を図る働き方改革の推進、地元志向の高まりが見られる若者の県内就業の促進などの取り組みに加え、安心して子供を産み育てられる環境づくりなど、岩手県での暮らしやすさにつながる地域の基盤の強化などに取り組んできたところであります。
 こうした中、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、東京一極集中の是正や地方の暮らしやすさが広く認識される契機となっていることに加え、テレワークなど多様な働き方が加速化しています。
 このため、就業促進情報誌いわてダ・ヴィンチの活用なども含め、岩手県のよさを広くPRするとともに、オンラインを活用した移住相談会や多様な働き方を実践する県内企業の紹介などにより、本県への移住、定住を推進してまいります。
〇臼澤勉委員 私は、社会減対策については課題の分離が必要だと思っております。自分の課題と他人の課題を分ける。つまり自分がやるべき課題と国がやるべき課題を分離しない限り、私は、岩手県の社会減対策は進まないと思っております。国の東京一極集中の是正が進まないから社会減が解消されないということを言いわけにしては、私は、本県の社会減ゼロの目標はクリアできないと思います。やっぱり自分の課題に最善を尽くすことが大事で、他人がどうなるか、あるいは国の動きがどうなるか、それはまた別の話で、やっぱりまず自分ができることに取り組むべきであります。
 そして、この社会減対策の本質は、岩手県として、県民に対して提供する価値は何なのか、どんな価値を提供できるのかを首都圏の皆さんや県民に発信していくことが必要だと思いますが、知事の御認識をお伺いいたします。
〇達増知事 1990年代当時は、岩手県の有効求人倍率が全国平均よりも高く、東京都など都会よりも高かったわけでありまして、東京都を初め都会と岩手県の雇用環境の相対的な関係は人口の社会増減にかなり影響していますので、いわてで働こう推進協議会の場などを利用し、岩手県の産業界と学校関係、そして、行政関係などさまざま関係する代表の皆さんに集まってもらいながら、現状をきちんと見ていただきながら、それぞれ、企業ももうちょっと頑張って採用をふやさなければならないなとか、給与ももうちょっと頑張らなければならないなとか。また、企業のほうでも、給与についてはことしはちょっと厳しいけれども、職場の環境、働く条件、環境面ではいろいろ改善することができるとか。その結果、改善されているようなところを、就職しようと考えている若者や家族、学校など関係者にそういう企業情報がまたきちんと伝わっていくようなことを丁寧にやっていくことが、この社会増減対策の肝の部分かと思います。
 そういう中で、岩手県の魅力ということをおっしゃいましたけれども、これは、先ほどいわてダ・ヴィンチに言及しましたが、そういうところでも発信していますように、豊かな自然、食べ物がおいしい、そして歴史や文化、そこに、ことしであれば、やはり新型コロナウイルス感染症の感染リスクの低さのようなものも含めてアピールしていくことが、御質問に答えることになるかと思います。
〇臼澤勉委員 ほかの自治体との違いというか、やっぱり岩手県ならではといったところをもっと出していくしかないのではないかと思います。
 そこで、合計特殊出生率についてですが、令和元年1.35と3年連続で縮小し、目標値の1.51と乖離幅が大きくなっております。全国順位でも、知事就任当時は22位と中位でありましたが、今回は下から10番目と年々順位を下げております。
 この現状を知事としてどう受けとめているのか。あわせて、これまでも安心して産み育てることができるような施策を展開してきましたが、施策が効果的に機能していない要因をどう分析しているのかお伺いします。
〇達増知事 我が国の合計特殊出生率はここ10年程度、年によって増減がありますが、その低下は労働供給の減少、地域、社会の担い手の減少など社会経済に大きな影響を及ぼすことから、国では深刻な状況と受けとめています。
 本県では、市町村等さまざまな主体と連携し、結婚、出産、子育て支援などの取り組みを進めてきたところでありますが、本県の合計特殊出生率は全国と同様に低下傾向にあります。その要因としては、経済的な不安定さ、出会いの機会の減少など、さまざまな要因が複雑に絡み合っていると認識しております。
 本県の特徴として、20代女性の有配偶率は全国上位にあるものの、30歳以上の有配偶出生率は全国下位となっていますことから、男女の仕事と子育て両立の難しさや、家事、育児の負担が依然として女性に偏っていることなどが影響していると考えられます。
 第2期岩手県ふるさと振興総合戦略に取り組む中で、少子化につながるさまざまな生きにくさを生きやすさに転換し、県民の結婚したい、子供を産みたい、育てたいという希望に応えてまいります。
〇臼澤勉委員 ちょっと聞き漏れたのかもしれませんが、国の認識を今お話しされました。県の認識は、どのように知事が受けとめているのかを再度お伺いいたしますし、2年連続でたしか低下していると思います。知事就任時から大幅に順位を下げている要因をどのように捉えているのかお伺いします。
〇達増知事 やはり深刻な状況と受けとめているところであり、そして、その要因については、経済的な不安定さ、出会いの機会の減少など、さまざまな要因が複雑に絡み合っていると認識しております。
 本県の特徴として、よく、岩手県は20代女性の有配偶率が高い、そこは実際、全国上位なのですが、30歳以上の有配偶出生率が全国下位であり、ここがやはり問題であると思っております。その背景には、要因としては、男女の仕事と子育て両立の難しさや、家事、育児の負担が依然として女性に偏っていることなどが影響していると考えられますので、そうした問題を解決していくよう進めていきたいと思います。
〇臼澤勉委員 具体的な対策は何でしょうか。
〇達増知事 具体的な対策については部局別審査のときに聞いていただければ、それぞれの担当部局長から、今までやってきたこと、特に、去年の決算の中身に関して、今探して読み上げることをここでやるのも何だと思うのですが、基本的には、30歳以上の有配偶出生率が全国下位であるところから脱却していこうということにつきましては、まずは職場における仕事と子育て両立のための改革。そして、家事、育児の負担が依然として女性に偏っているということについては、家庭における男性が家事、育児を率先してやっていくための施策。そしてまた、公共の施設等、県ももうすぐ内丸の敷地内に託児所を設けますが、そういった仕事と子育ての両立のための公的な支援といったことが柱になっていくと考えます。
〇臼澤勉委員 なぜ私が聞いたかというと、やはり岩手県人口ビジョンで目指している20年後の2040年に、100万人を確保するという大目標があるわけです。それに向けて、この実現性はどのようにお感じになっているでしょうか。
〇達増知事 何度も申し上げますけれども、1990年代は、岩手県からの年間の人口流出が300人と、ほぼゼロになったこともあるわけでありますし、社会減が2024年にゼロとなりますと、出生率の向上と合わせて2040年には約100万人の人口を確保できるということで、やはりそういうビジョンを持って取り組んでいくべきと考えております。
〇臼澤勉委員 次に、教育について伺います。
 さきに一般社団法人地域活性化センターの理事長の講演を拝聴いたしました。これからの地方創生において、教育が最も重要であるというお話でありました。
 そこで、まず、教育分野の決算を知事はどう総括されているのかお伺いいたします。
〇達増知事 令和元年度は岩手県の未来を切り開いていくための原動力となる将来を担う子供の教育の充実と、さまざまな分野で活躍する人材を育てていくことが重要との考えのもと、教育委員会においては、岩手県の子供たちが知、徳、体のバランスのとれた生きる力を身につけられるよう、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善、自他の命と他者の人権を尊重し、大切にする教育の推進、運動やスポーツに親しむことのできる環境づくりなどに取り組んだものと捉えております。
 また、いわての復興教育の推進、産業界等との連携による各学校におけるキャリア教育の充実などにより、地域を支える人材の育成に対する岩手県の教育への期待に応えてきたものと考えております。
〇臼澤勉委員 現在高校再編が検討されております。県内市町村から再編に対する要望も出ております。各地の計画策定に向けた説明会での反応はどのような内容であったのか。特に盛岡南高校と不来方高校の再編については、盛岡市議会において、盛岡市の進路選択の幅が狭くなることから、近隣の中学校において影響が大きい。また、多くの市民、関係者の意見を受けとめ判断し計画を策定するよう要望していきたいと答弁がありましたが、このような反応も含めて、今回の盛岡ブロックにおける統合案に関する知事の御所見をお伺いいたします。
〇達増知事 県立高等学校再編計画の後期計画策定に向けた地域検討会議等においては、生徒の希望する進路の実現と地域や地域産業を担う人づくりという基本的な考え方や小規模校の維持等について、多くの方々から支持をいただいたと聞いております。一方、具体的な統合を示している地域の方々からは、統合に賛成する意見のほか、現行のまま存続を求める意見もあったと聞いています。
 盛岡南高校と不来方高校の統合については、盛岡市教育委員会から、両校の歴史を受け継いだ発展的な統合によって魅力ある学校となるようにとの意向が示され、あわせて、具体的な統合の手順を早期に示すなど、子供たちの進路選択に不安がないように配慮を求める等の要望書が、県教育長に提出されたとの報告を受けています。
 教育委員会においては、会議等でいただいた意見や要望等も十分に考慮した上で、生徒にとってよりよい教育環境を整備するという視点を重視しながら、後期計画策定に向けた検討を進めてほしいと考えています。
〇臼澤勉委員 ちなみに、県では1学年4から6学級が望ましい学校規模と伺っておりますが、適正規模に関して、国の基準や県の基準はあるのでしょうか。学校の適正規模に係る基準を国が示していないのであれば、県独自で示す必要性があるのかどうか、知事の御所見をお伺いします。
〇達増知事 国の基準である公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律において、全校で240人を下回らないこと等とする規定とされていましたが、平成23年の改正により削除されたところであります。
 本県においては、学校規模に関して規則等による明確な基準は定めておらず、平成28年に県教育委員会が策定した新たな県立高等学校再編計画では、原則、1学年4から6学級程度の学校規模が望ましいとしているところでありますが、後期計画案においては、これにこだわらず、ふるさと振興総合戦略等も踏まえ、1学年1学級の小規模校を維持するとともに、県政課題への対応や産業人材の育成のため、1学年7学級規模の学校も確保するなど、柔軟な対応を図っているものと認識しております。
〇臼澤勉委員 そこで、盛岡地区については私立の高校が集中していて、盛岡地区の一極集中が課題であるならば、公立と私立で高等学校教育をどのように分担するのか。生徒の進学の選択を可能とする多様性をどう保障するかは、避けて通れない重要なポイントだと私は捉えております。
 高等学校教育をどの程度民間に委ねるか、どの程度公で担うかというのは、各県の判断になると思いますが、私立学校に通う生徒の割合を全国水準まで高める考えがあるのかどうか。それから、私立高校の設置者との調整、議論を進めないまま、言葉は悪いですけれども、ゆがんだ高校再編の道を選ぶのか、何よりも子供たちの学習機会を保障する道、生徒ファーストの道と、知事はどちらの道をとるのでしょうか。
 盛岡市が設置する高校との議論も避けられないと考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
〇達増知事 県内私立高校においては、それぞれ独自の建学の精神や教育理念に基づき、スポーツ、文化などさまざまな分野で活躍する人材の育成等に取り組み、本県公教育の重要な役割を担っています。
 このような中、生徒数が減少することへの対応は、公立高校、私立高校それぞれに共通した課題であり、中学生の多様な進学の選択肢を確保するため、一般社団法人岩手県私学協会会長、県教育委員会及び県ふるさと振興部の担当する課長等で構成される岩手県公私立高等学校連絡会議において議論を深めるなど、公私それぞれのよさが岩手県の教育界の中で生かされるよう検討してまいります。
〇臼澤勉委員 私立に通う生徒の割合を全国水準まで高める考えがあるのかどうかということであります。本県の高等教育の重心の位置を8対2から全国水準の7対3に持っていくのか、公立から私立に多少重心を移動させるのか。その辺がポイントかと思い、お考えを聞きたかったわけであります。
 現在も定員を上回っているような私立高校もあるようですが、この辺はどう調整を図っていくのかお伺いします。
〇達増知事 県では、それぞれの私立学校が収容定員を変更するときは、学校教育法に基づき、申請に対する認可の権限はありますが、申請がない場合、個々の学校や各地区、県内全体の定員を調整する権限はございません。
 県が公立、私立の生徒数の割合を調整することはできませんが、岩手県公私立高等学校連絡会議において、現在の公立、私立各高校の情報共有や意見交換から議論をさらに深めてまいります。
 私立高校の収容定員は、周辺の高等学校入学見込み者数の状況や学校の教員数、施設整備の整備状況等を勘案して適正に設定されているものであり、定員の超過による教育条件の低下を招かないよう、設置者に対し、その遵守をこれまでも継続して指導してまいりました。
 大幅に定員を超過している学校の設置者に対しては、定員超過の解消について文書による指導を行うとともに、教育環境の確認等を行うこととしています。
〇臼澤勉委員 今回の統合案の本質は、盛岡市内の高校への生徒の集中を緩和することであります。盛岡南高校を統合したところで一極集中の緩和にはならないのではないかと、私は見ているわけでございます。
 後期計画案においては、その基本的な考え方、生徒の希望する進路の実現、地域産業を担う人づくりとあるわけでございますが、一人一人の多様性を認め、育てる環境づくりを進めることと矛盾しないのではないかと思っております。改めて知事の御所見をお伺いいたします。
〇達増知事 統合案への認識についてでありますが、これまで各ブロックにおいて開催された会議等では、沿岸部や中山間地域等の小規模校の存続とともに、盛岡市内の高校への生徒の集中緩和を求める意見が多数あったと承知しており、全県的な視点から高校再編を検討していく必要があるものと認識しております。
 県教育委員会においては、盛岡南高校、不来方高校ともに、盛岡市周辺以外からの入学者が多い状況にあり、統合により盛岡市内の高校の定員が減少することにより、生徒の集中抑制に一定の効果が見込まれると同時に、規模の大きさを生かした多様な学びの機会の提供が期待されること等から、盛岡ブロックにおける今回の統合案を示したものと承知しております。
 計画の策定に当たっては、生徒にとってよりよい環境を整備するという視点を重視し、県内各地域の高校の活性化や魅力づくりにつながるよう進めてもらいたいと考えます。
〇臼澤勉委員 この盛岡南高校、不来方高校の周辺の環境は大きく変わってきております。現在、矢巾町では市街化区域が拡大し、33ヘクタール、人口の1割がふえる予定であります。それから、先日、地価調査の宅地の上昇率ポイントの発表がありました。県内の上昇率ベスト10の中で、8ポイントがこの盛岡南高校、不来方高校から半径4キロ圏内にあるのです。宅地の取引が活発に行われているというこの現状を、ぜひ、この生徒ファーストの視点で、よりよい環境は何かを熟慮していただき、統合時期の見直しも含めて慎重に御検討いただきたいと思います。
 最後に、不登校生徒についてお伺いします。
 岩手県の公立と私立を合わせた高等学校の1、000人当たりの不登校生徒数を見ますと、平成27年度を境に増加基調にあります。しかも、平成28年と平成29年は、全国平均を上回って増加しています。高校再編に合わせ、今を生きる子供たちの学びの場の環境を整えてほしいと思います。
 知事の不登校生徒に対する教育の機会均等の確保に向けた覚悟をお伺いいたします。
〇達増知事 本県における公立と私立を合わせた高等学校1、000人当たりの不登校生徒数は、ここ数年間、増加傾向にあると承知しております。
 そのような状況の中、不登校生徒の教育機会確保については、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等と連携しながら、各校において、別室指導等、個に応じた支援を行い、生徒及び保護者に丁寧に寄り添った教育活動の推進に努めていると承知しております。
 今後も、県教育委員会を中心に、関係機関との連携を図り、魅力ある学校づくりを進め、県内の高校の不登校生徒の減少に向けた取り組み及び教育機会確保に努めてほしいと考えております。
〇臼澤勉委員 知事の国会での最後の質問は、教育関係であったと私は聞いております。教育基本法の中で、教育を受ける権利、学ぶ権利はかけがえのない権利であります。本県から文部科学省の副大臣も誕生しております。学びたくても学校に行けない生徒については、県教育委員会や関係機関が連携して、環境の整備を導いてほしいですし、不登校特例校の設置についても御検討いただきたいと思います。
 次に、観光業への新型コロナウイルス感染症の影響についてお伺いいたします。
 令和元年の観光宿泊客数、観光消費額の実績について伺います。あわせて、県内の宿泊客は昨年に比べ何割減少し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響はどの程度だと把握しているのか、今後の見通しも含めお伺いいたします。
〇保副知事 本県の令和元年における延べ宿泊者数は627万6、000人泊、観光消費額は1、754億5、900万円となっております。
 また、ことし令和2年1月から7月まででありますが、県内の延べ宿泊者数は203万7、000人泊で、前年の令和元年同期と比較いたしまして43.0%の減少となっております。この減少のほとんどが、新型コロナウイルス感染症が国内に拡大いたしました3月以降のものであることから、これらはほぼ新型コロナウイルス感染症の影響によるものと捉えております。
 さらに、詳細に月別に前年同期と比較いたしますと、5月が76.8%の減少最低となりましたが、7月には39.8%の減少と回復してきております。また、9月の連休には、県内の旅館、ホテルにおいては満室になったところも結構多いということも聞いておりまして、観光需要は回復基調にあるのではないかと推察しており、さらに今後も回復が進んでいくことを期待しております。
〇臼澤勉委員 それでは、7月から始まったGo To トラベルによる県内宿泊客数について、教育旅行を含めどのような状況か伺います。あわせて、Go To トラベルによる一定の効果が見られたと観光事業者からも伺っておりますが、県の御認識をお伺いします。
〇達増知事 Go To トラベルによる県内宿泊者数等についてでありますが、観光庁では利用者数や利用額を都道府県別に整理していないことから、県として、それらを把握することは困難であります。
 県内のGo To トラベルに登録している幾つかの宿泊施設への聞き取りでは、9月の宿泊者のうち7割程度がGo To トラベルを利用しており、教育旅行については、旅行会社によれば、8月以降に実施した学校のほとんどがGo To トラベルを利用していると聞いています。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、4月16日には緊急事態宣言が全国に発せられ、宿泊事業者の経営が深刻な状況となる中、まずは、県と市町村が協調して宿泊助成制度を設け、地域内の需要喚起を図りました。
 その後、5月の緊急事態宣言の解除を受けて、宿泊施設の感染症対策を促しながら、県内での宿泊需要を喚起するための地元割クーポンを措置したところであります。
 これら県、市町村の施策に加え、7月から国のGo To トラベルが動き出し、宿泊者数の回復につながってきていると認識しております。
〇臼澤勉委員 今、知事からも7月からGo To トラベルが動いて回復につながったという御認識がありましたけれども、8月21日の知事の記者会見を私は本当に偶然、生でモニターで聞かせていただいておりまして、知事のあの失敗発言に驚いた一人であります。本当に驚きました。Go To トラベルを失敗と発言、判断したエビデンスは何かお伺いします。
〇達増知事 8月21日の記者会見において、記者から、Go To トラベルの始まってからの知事の受けとめを教えてください。この政策は結構失敗だと言われていますけれどもという質問を受け、7月中に始めてしまったのは、やはりちょっと早過ぎた、準備もできていなかったし、早過ぎたということで、失敗と言っていいのだと思いますと答えたものであります。
 Go To トラベルは、新型コロナウイルス感染症収束後のV字回復のために企画されたものと理解していますが、最終的な効果は、新型コロナウイルス感染症の終息という事態の後にどのように発展をするかを見ないとわからないものであり、成功、失敗を判断できる状態にない中では、成功か失敗かという問いに意味はないと考えます。
 そもそも成功、失敗は、個別事業についてではなく、感染拡大させず、かつ、経済的、社会的に困窮する人を出さないようにすることについて問われるべきであり、そのためにさまざまな事業を組み合わせ、状況に応じ、個別の事業を改善していくことが求められると考えます。
〇臼澤勉委員 私はエビデンスについてお伺いしたのです。エビデンス。ウィキペディアでは、エビデンスは、証拠、裏づけ、科学的根拠とあります。失敗と判断した科学的根拠をお伺いします。
〇達増知事 スタートを前倒しすることで、キャンセル料の問題など、さまざまな混乱もあったことから、失敗と言う人がいるのであれば、そこについて失敗という言葉を使うこともできるかもしれないという趣旨で発言したものであります。
〇臼澤勉委員 先ほども知事から、成功か失敗かというのは、まず、やっぱり大事なのは感染拡大が出ているのかどうか、あるいはそういった経済的困窮者が出ているのか。まさに、私はそのとおりだと思っておりました。それで、岩手県でGo To トラベル利用者で感染者は発生しておりますか。クラスターは発生したか、この事実だけお伺いします。
〇野原保健福祉部長 委員御指摘のGo To トラベルに起因するクラスターについては、私どもが探知しているところではございません。
〇臼澤勉委員 感染者は今も出ていませんし、あの発言の8月時点でも出ていないのですよ。それで、新型コロナウイルス感染症収束後にV字回復するための事業ということで知事もお話しされているし、国会でもそういったことでスタートできたのですが、知事は、8月の記者会見時点で収束の時期をいつと見ておりましたか。御認識をお伺いします。
〇達増知事 当時も今も、知事として新型コロナウイルス感染症がいつ収束するかは申し上げられる状況にはありません。
〇臼澤勉委員 まさにそのとおりであります。ただ、結局、あの8月時点で、県内の宿泊業者を含め観光事業者はすごく深刻な状況にあるというのは、先ほど知事もお話しされたとおりであります。私はそれで、なぜそういう県内の状況を把握しているにもかかわらず、あのような発言になったのかと、本当に驚いたのです。
 トラベル開始から1カ月たった時期に、知事の受けとめを教えてほしいという前置きがあり、質問がなされたわけであります。それで、その翌週、8月28日の記者会見で、Go To トラベルはという主語は言っていませんよというお話をされましたが、この主語は何でしょうか。
〇達増知事 先ほども申し上げましたとおり、スタートを前倒しすることでキャンセル料の問題などさまざま混乱もあったことから、失敗と言う人がいるのであれば、そこについて失敗という言葉を使うこともできるかもしれないという趣旨で発言しましたので、私として失敗だという趣旨で発言したものではありません。
〇臼澤勉委員 私は国語の議論とかここではしませんが、公式の記者会見の場でいわゆる御飯論法ですね、こういったものはやっぱり控えるべきだと思います。記者の皆様も限られた時間で誠実に聞いて、知事の答弁をお聞きしたいということでのあのような場であります。
 先日も武田哲議員の一般質問において、スタートを前倒しすることでさまざま混乱もありキャンセル料も発生したから失敗だという答弁もありましたが、私は、だからここがそもそも違うのだと、知事が言うべき発言ではないと思うのです。私は、知事は評論家ではないと思っております。観光事業者を含め、今、経済が極めて厳しい状況で、どうやってバランスをとっていくのかという極めて高度な政治判断であり、行政の知事としての判断が求められる難しい状況だと私も認識しております。ですから、今も言ったとおり、成功か失敗かということが、感染拡大させずに、経済的、社会的に困窮する人が出たときだというのであれば、それは定量的に、具体的に、科学的根拠を踏まえながら知事として発言すべきだと私は思っております。
 さまざまな立場の県民の方々がおります。ですから、そういった方々に対しても、すごくネガティブな情報が発せられたのが非常に残念で、戸惑っている観光事業者の人たちが多かったのです。他県からも、岩手県大丈夫ですかというようなお話があったとも聞いております。そういった主観的、短期的、そして部分的、しかもネガティブなメッセージを発信したこの事実は消せませんけれども、知事のマネジメントとしていかがなものかと思っております。
 時間もないので、岩手に泊まるなら地元割クーポンについてお伺いしますが、9月まで実施された分の実績、効果について伺います。そして、現時点での成果をどう評価しているのか、宿泊事業者からはどう評価されているのかお伺いします。
〇保副知事 9月まで実施いたしました1泊当たり2、000円の宿泊助成の分ですが、これまでに16万2、000枚を発行いたしました。これは、旅行、宿泊業者等の皆さんから県のほうに返ってくるわけですが、10月1日までに利用実績として報告が来ておりますのは約4万1、500枚であり、今後もふえていくものと思っております。
 それから、先ほどの観光庁宿泊旅行統計の月別のデータに基づきますと、岩手県の6月の延べ宿泊者数の水準は前年同月比で43.6%でありましたが、地元割クーポンの利用が始まった7月は60.2%に回復しており、クーポンの効果があったものと考えております。
 また、事業者からの評価についても団体等を通じるなどして聞いておりますが、多くの声として、宿泊需要の喚起に効果があったと聞いているところでございます。
〇臼澤勉委員 いずれ危機的な状況においては、私は、スピード、そしてボリューム感であり、その対策の質が非常に重要になってくると思います。東日本大震災津波、そして復興を含め、さまざまな危機に対応している知事でございますから、ぜひ、そこら辺の対応にスピード感を持って取り組んでいただきたい。
 そして最後に、ぜひ、予算、組織、政策が効果的に連動するように、知事のマネジメントを期待して、総括質疑を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
〇菅野ひろのり委員長 この際、世話人会の申し合わせにより10分間ほど休憩いたします。
午後2時20分 休 憩
午後2時37分 再開
〇菅野ひろのり委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
 次に、佐々木朋和委員。
   〔佐々木朋和委員質問者席に着く〕(拍手)
〇佐々木朋和委員 いわて新政会の佐々木朋和です。
 会派を代表して、令和元年度決算について総括質疑をさせていただきます。
 冒頭、達増知事を初め県職員の皆様方には、新型コロナウイルス感染症への対応を行いながら、いわて県民計画(2019~2028)の推進に取り組んでおられることに心から敬意を表させていただきます。そのいわて県民計画(2019~2028)の推進を中心に、これまでと重複する部分がありますけれども、私なりの視点で質問をさせていただきます。
 まず、令和元年度は、いわて県民計画(2019~2028)10年間の、また政策推進プラン4年間のスタートを切る年でありました。主要施策の成果に関する説明書、いわて県民計画(2019~2028)実施状況報告書によれば、いわて幸福関連指標69の達成状況は、達成A42%、概ね達成B19%、やや遅れC1%、遅れD38%となり、平成30年度の目指す姿指標の達成状況に比べると、B以上の達成率が低下し、遅れDの割合が多くなっています。しかし、指標そのものが置きかわっており、かつ、今後政府が政策へ反映していくという生活満足度に着目した指標を先駆的に採用したため、ある程度の試行錯誤は織り込み済みと思われます。
 一方、政府が全国的に取り組めば、その生活満足度、岩手県でいう幸福度について県同士で国民に比較されます。県には、幸福度指標を取り入れた先駆者として、より効果的にいわて幸福関連指標、具体的推進方策指標と結びつく具体的な施策を模索し、変更を恐れず数値の改善に努めていただきたいと思います。
 そこで質問をさせていただきます。県は、いわて県民計画(2019~2028)政策推進プラン4年間の初年度である令和元年度の事業進捗をどのように評価しているのか。幸福関連指標と具体的推進方策、各事業のつながりをどのように評価し、令和3年度予算に生かしていく所存か伺います。
 また、政府が発表した新たな生活満足度を示す主な統計について、政策推進プランのいわて幸福関連指標として、あるいは参考指標として取り入れていく所存なのか伺います。
〇達増知事 令和元年度の事業の進捗状況については、県の取り組みである具体的推進方策指標の概ね達成以上の割合が78%となっており、10の政策分野別に見ると、安全や自然環境の分野で達成度が高くなっている一方、教育や歴史・文化の分野で達成度が低くなっているところであります。
 令和3年度予算編成に向けては、今後実施する政策評価において、いわて幸福関連指標や具体的推進方策指標の達成状況に加え、社会経済情勢や政策項目を構成する事業の取り組み状況なども踏まえて、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現に向け、県が取り組むべき課題を総合的に分析することとしており、その結果を政策分野の取り組みに適切に反映させていきたいと考えます。
 また、政府が発表した満足度・生活の質を表す指標一覧を見ると、健康寿命や完全失業率など、いわて幸福関連指標と共通の指標もあり、国が生活満足度に着目した政策立案や評価を行うことは、本県が先駆的に取り組んでいる幸福度に着目した施策の展開と同様の取り組みであると認識しており、今後、国においてこれらの指標をどのように活用していくのか、動向を注視し、その活用方法について検討していきたいと考えます。
〇佐々木朋和委員 では、その指標のうち、家族・子育ての分野について伺っていきたいと思います。
 家族・子育てに関する幸福関連指標の状況は、Aが4、Bが1、Dが2となっておりますが、合計特殊出生率が令和1年度目標1.51に対して1.35、達成度Dとなり、全国平均1.36よりも0.01ポイント低く、全国順位も令和1年度全国37位、東北4位に後退しています。県は、平成27年度より岩手県ふるさと振興総合戦略を策定し、その柱の一つである岩手で育てるのKPIとしても、合計特殊出生率を掲げ取り組んできました。
 県は、合計特殊出生率について、平成30年度にも悪化した件について、今後の推移を注視すると評価を保留しましたが、2年連続合計特殊出生率が低下し、0.01ポイントとはいえ全国平均を下回る状況となり、東北6県の中でも下位となった状況をどのように評価しているのかお示しください。
〇菊池副知事 まず、我が国の合計特殊出生率の推移を見ると、ここ10年ほど、年によって増減はありますが、その低下は、労働供給の減少、地域、社会の担い手の減少など社会経済に大きな影響を及ぼすことから、深刻な状況であると国は受けとめているところでございます。
 こうした中にあって、本県の合計特殊出生率は、全国と同様に低下傾向にあり、その要因としては、経済的な不安定さ、出会いの機会の減少など、さまざまな要因が複雑に絡み合っているものと認識しております。特に、20代女性の有配偶率は全国上位にあるものの、30歳以上の有配偶出生率は全国下位となっておりますことから、仕事と子育ての両立や働き方改革、女性活躍支援等を展開し、社会全体で子供を産み育てやすい環境づくりを強化していくことが重要であると受けとめております。
〇佐々木朋和委員 今、全国的に低下傾向にあるということをお話しいただきましたけれども、やはり問題なのは、その中でも、全国の中で順位が下がっていっているということであります。地方創生の根本を言うと、東京一極集中で、東京都は出生率が低い、だから地方に人を還流させましょうという流れでありまして、岩手県で合計特殊出生率が低いということは、その前提を危うくするものだと大きな危機感を持って取り組んでいただきたいと思っております。
 その中で、家族・子育ての分野は岩手県ふるさと振興総合戦略の柱である岩手で育てるとリンクしており、人口減少対策は県政の最重要課題の一つと認識しています。
 県はこれまで、ふるさと振興の観点から自然減対策に就労、出会い、結婚、妊娠、出産、子育てまで、ライフステージに応じた切れ目のない施策と子育てと仕事の両立支援を柱に取り組んできました。政策資源を1点投下するのではなく、切れ目なく配した格好です。しかし、それぞれの項目に対応する県民意識調査の結果を見ると、安心・安全な子育て環境整備の満足度が2.958の29位、仕事と生活を両立できる環境の満足度は2.815の41位となっており、数値自体も満足、やや満足に及ばない、どちらでもないの3を下回る結果です。これは、各場面に切れ目なく施策を行っているが、一つ一つの各施策が、生きにくさを生きやすさに変えるまでに至っていない。改善は見られるものの、小幅で各施策のさらなる充実が求められているということではないでしょうか。
 例えば、いわて結婚応援の店については、令和元年度単年度の協賛店舗数計画70のところ11、子育て応援の店も、計画91のところ36、どちらもD評価となっています。現状、いわて結婚応援の店は、金融機関、大手レンタカーの支店、ブライダル事業者がそのほとんどであり、いわて子育て応援の店も、金融機関、スーパー、コンビニなど大手系列店が多く、地域のお店やさまざまな職種、サービスまで広がっている状況ではありません。それもそのはず、事業費は令和元年度決算ベースで、いわて結婚応援の店は119万9、000円、いわて子育て応援の店は、子育てにやさしい企業認証事業を含めても271万5、000円。優遇サービスや授乳室、ベビーベッドの整備に補助がつくわけではなく、全て事業者負担です。
 県として、結婚や子育て世帯に対する地域ぐるみで応援する機運を醸成し、社会の中のカップルや子育て世帯にとって必要なサービスの提供が得られる環境を整備していくためには、財源をつけ、事業者、店側の負担のみによるのではなく、例えば、金融機関や不動産事業者と協調したさらなるマイカーローンや学資ローン、引っ越し、新居支援を行ったり、新婚、子育て世帯が使える地域通貨、ポイント事業を行うなど、利用者側の視点からの事業の再構築も必要ではないでしょうか。そうでなければ、ほかの事業を充実させるための集中と選択が必要であると思います。
 また、県民意識調査の重要度、ニーズ度もともに高いとは言えず、子育て世帯や県民全体の中で自然減対策の重要性が共有されていない、県民に自然減対策に力を入れているのだということが伝わっていないという課題も挙げられます。県民へのメッセージのためにも、看板施策が必要ではないでしょうか。
 1人お子さんがいる世帯にもう一人という希望があれば産んでいただこう。3人目を産んでいただこうという多子世帯支援は、合計特殊出生率を上げるという意味で政策として王道と考えられますが、本県では支援策が薄いように感じます。
 岩手県子育て応援パスポート事業が令和2年度9月からスタートしており、974万7、000円の予算をかけ、お子さんが3人以上いる世帯の県営施設の利用料金を減免しますが、ニーズはどれほどあるでしょうか。映画館、動物園、遊園地、観光地など民間施設も含めた利用も検討するべきだと思います。
 また、さきに述べたように、民間事業者が自己負担で優遇措置を行うのに対して、各県営施設の営業努力によらず、減免分を予算化するのもいかがなものかと感じます。
 福井県では、第1期ふくい創生・人口減少対策戦略において、3人っ子応援プロジェクトのKPIとして、子育て世帯の第3子の割合30%を掲げ、3人目以降の子供の保育料を完全無償化するなどの政策の展開により、出生率向上の成果を得ました。幼保無償化が国の施策で進んだ第2期では、県独自に幼児教育、保育無償化を拡大し、2人目からの保育料や子育て支援サービス等を無料化する子だくさんふくいプロジェクトを新たに開始するなど、多子世帯支援を強化しています。
 現代社会においては、経済的、環境的弱者だけではなく、金銭的に家族的に恵まれている世帯であっても、2人目、3人目を育てていくためには物心両面の支援が必要だと感じます。
 以上、指摘させていただいたように、合計特殊出生率を上げ、自然減に歯どめをかけていくためには、子育て支援にかける全体の予算をふやし、効果が薄いと感じた事業は思い切って事業を打ち切り、政策資源の選択と集中を図り、看板政策を掲げ、県民全体の機運の醸成も図るべしと思いますが、県はどのようにして各子育て支援施策の満足度を上げ、合計特殊出生率の上昇につなげていくのか。
 予算要求がマイナスシーリングの中にあっては、各部局からの積み上げでは、分野を超えてダイナミックな予算の移動や事業化はなしにくいと考えます。知事のリーダーシップによる積極的な事業化を期待しますが、県のこれまでの子育て支援策の総括と今後の施策の展開方向をお示しください。
〇達増知事 県では、市町村などさまざまな主体と連携し、結婚、出産、子育て支援などの取り組みを進めてきたところであり、令和2年県民意識調査の安心な子育て環境整備の満足度が、平成30年、平成31年調査と比較して上昇しており、一定の成果を上げているところです。
 一方、合計特殊出生率は全国と同様に低下傾向にあり、県では、少子化対策、子育て支援は、将来に関する問題であると同時に、今、目の前にある重要な課題であるとの認識のもと、本年7月、いわて子どもプラン(2020~2024)を策定したところであります。
 このプランには、仕事と子育てを両立するための働き方改革や女性活躍支援を新たに盛り込んだところであり、関係部局が一体となり、企業の理解を得ながら、社会全体で子供を産み育てやすい環境づくりに向けて全力で取り組んでまいります。
〇佐々木朋和委員 合計特殊出生率以外の数値についても、待機児童、あるいは、先ほどから知事もお話になっております共働き世帯の男性の家事時間割合などはAとなっているわけでありますが、一方で、参考指標を見ると、女性の家事時間そのものは減っていないところであります。
 こういった分野において、今までは余り注目されていなかった分野において、どこの部署が引き受けてこういったKPIの改善に向けて取り組んでいくのか、大変重要な課題だと思います。ぜひとも知事には、リーダーシップをとって、各部局にまたがるような課題についても解決に向けて取り組んでいただきたいと思います。
 次の質問に移らせていただきます。ウィズコロナ対応も含めた働き方改革などの、施策の展開の方向性について伺いたいと思います。
 昨年1年間の総実労働時間は1、812.0時間で評価はBとなっておりますが、47都道府県中最下位となっております。具体的な推進方策指標の状況の年次有給休暇取得率も年49.5%、Dとなっております。
 本県の働き方改革は進んではいますが、全国に比してその歩みの遅い状況にあると認識しております。
 令和元年度岩手県の若年者雇用動向調査結果によれば、岩手県出身者の地元志向は強く、就職に当たって重視しているのは、労働条件、働きやすい職場環境という結果が出ており、労働時間、休日、休暇の条件の改善が、子育て支援、仕事と家庭の両立などの自然減対策だけではなく、高校生の地元就職率の改善など社会減対策としても重要であることがうかがえます。
 県は、いわてで働こう推進協議会において、いわて働き方改革推進運動の展開、いわて働き方改革アワード受賞企業の優良事例の普及啓発等、働き方改革に取り組んできましたが、令和元年度と令和2年度の取り組み表を見比べても、事業内容は全く同じでございます。
 いわて働き方改革推進運動の展開については、参加企業は令和元年度実績値319、評価はCとなっています。参加ハードルを下げるべく参加には宣言のみでよいとしておりますが、参加企業は少なく、具体的な取り組みの実施なくして働き方改革の機運が醸成されるのかという点についても疑問が残ります。
 また、他県では、登録のスタートに自社の働き方に関するアンケートを行っているところもありますが、企業にとっても自社を知るよい機会となり、県にとっても政策立案の基礎となるデータが得られて有用と思われます。
 優良事例の普及についても、県のポータルサイトでは現在12件ほどしか紹介されておりません。いわて働き方改革等推進事業費補助事業についても、令和元年度は9事業者の申請があり、その中で採択は6事業者で、319社の運動参加社を考えると、申請数も寂しく、各社が参加するメリットとしては採択案件数も狭き門と感じます。
 これまで、岩手県の働き方改革は、入り口戦略に加え、その取り組みについても企業負担とならないよう、その取り組み内容は企業に任せた上で、優良な取り組みを表彰することにより推奨してきました。
 しかし、企業にも人材確保の観点から、働き方改革の潜在的ニーズが高まっています。総実労働時間や年次有給休暇の取得率の改善という明確な目標もでき、これまでの優良事例の蓄積によって有効な取り組みが明らかになってきたのであれば、いわて働き方改革アワードに長時間労働削減部門を加えるだけではなく、補助事業の用途を明確にした上で枠を拡充するなど、次なるリストアップに移るべきだと考えます。
 また、来年度、総務省はテレワークやICT利活用に関する予算概算要求について256億8、000万円を要求しています。これら予算を活用して、新型コロナウイルス感染症対策にとどまらず、いかにして生産性向上と働き方改革につなげていくのか、議論を加速させなければなりません。
 そのような状況下で、本年度1回目のいわてで働こう推進協議会が書面での協議となったことは残念でありますが、県のこれまでの働き方改革の施策推進の総括と、テレワークやICTを活用したウィズコロナ対応も含めた生産性の向上、働き方改革の施策展開の方向性をどのように考えているのか伺います。
〇保副知事 いわて働き方改革推進運動は、県民一人一人が能力を発揮でき、ライフスタイルに応じた新しい働き方ができる環境の実現を目指し、平成28年度からいわて働き方改革アワード、平成29年度からいわて働き方改革推進運動の参加宣言などを実施し、普及啓発に努めてきたところであります。
 参加宣言を行った企業は本年9月末で428社と伸びてきており、前年度を上回るペースで増加していることから、県内企業の働き方改革の取り組みの機運が高まってきているものと考えております。
 このような形で進めるとともに、働き方改革を進める上で最も大きな効果が期待されるIoTやAIの導入による企業の生産性向上を支援するために、これは従来からやっているものでございますが、中小企業総合的成長支援事業あるいはいわてものづくりイノベーション推進事業などに取り組むとともに、令和2年度第4号補正予算でテレワークの導入を支援するテレワーク導入推進事業費補助も創設したところでございます。
 これまでも柔軟な働き方と生産性向上等を両輪として働き方改革を推進してきましたが、コロナ禍を契機として、新しい生活様式に対応した働き方をつくっていくこともまた、この改革の重要な取り組みであります。今後の企業の人材確保にも不可欠という認識もしておりますし、こうした幅広い視点から、引き続き、この改革運動を推進してまいりたいと考えております。
〇佐々木朋和委員 KPIを掲げて施策を推進しているわけですから、私は、ぜひそこに焦点を当てた取り組みをしていただきたいと思います。
 先ほど述べたように、自然減、社会減両方にかかわることでございますので、いわてで働こう推進協議会の取り組みをもっと全県に広めながら、目標を精度高く持ってやっていただきたい、もう一段ステップアップしていただきたいといった思いでありますので、御検討をよろしくお願いしたいと思います。
 次に、新型コロナウイルス感染症に関連して、事業者への越冬支援策、本業支援策について伺いたいと思います。
 午前中の岩渕誠委員の質問の中で、事業者の資金繰りについて積み増しも検討していくという答弁があったことは大変よかったと思いますが、今定例会の本会議における一般質問においても、資金繰り支援については国のスキームであり、上限額を上げることは難しい旨の答弁がありました。
 また、午前中の答弁で、二つの貸付金を合わせると上限が1億2、000万円だという答弁もありましたが、上限額が上がったとしても、1億2、000万円という上限があったとしても、そこまでまだ借りていなかったとしても、これから越冬時期に向けて、追加融資に当たり、岩手県信用保証協会の審査が通るのかというような問題もあります。
 また、融資制度は、今回、間口を広げて月の売り上げが20%減となる事業者から活用ができるということになっておりますが、これが金利の有利な借りかえ対策に回っていないか、また50%以上売り上げが落ち込んでいるなど本当に困っている事業者に届いているのか、県はしっかりと状況を把握すべきだと思います。その上で、電気代の支払い猶予や雇用調整助成金の特例が延長にならなかった場合など、補填されない通常分の3分の1に対する県補助でありますとか、電気料金に対する県の補助、さらにはGo To キャンペーンを補完するような景気刺激策など、越冬のための支援策を打ち出すべきと思います。
 加えて、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた業態変更や経営計画の作成等、本格的な本業支援も必要になってくると思います。
 県としての越冬支援策、また本業支援策の取り組みを伺いたいと思います。
〇保副知事 今、御提案として、電気料金の問題や雇用調整助成金のお話がありましたが、雇用調整助成金の特例措置の延長は本年12月末までとなっております。まずは足元でこの周知を図っていくということですが、必要に応じて、国に対し特例措置のさらなる延長を働きかけていきたいと考えております。
 電気料金については、直接これを支援するのは現段階ではなかなか難しいという印象もありますが、午前中も御答弁申し上げましたとおり、二つの融資制度をこれでよしとすることなく、ニーズがあれば、その状況を踏まえて今後も検討していきたいと考えております。
 そのようなことで、丁寧に個々の事業者の方々のニーズをできるだけ拾っていくような姿勢で取り組みたいと考えております。
 それから、コロナ禍を克服していくための本格的な本業支援というお話もありましたが、業態転換やオンライン販売などの新しい生活様式に対応したビジネスモデルの構築、生産性の向上を図っていく取り組みといったことを進める事業者の経営革新計画や事業再生計画の策定、実行を支援していくことが、本業支援の柱と考えております。
 これまで、令和2年度第3号補正予算で商工指導団体の相談対応の業務を行うスタッフの増員や専門家派遣等に要する経費を措置して体制強化を図ったところであり、一層力を入れて取り組みたいと考えております。
〇佐々木朋和委員 ぜひ、県には貸付金の使われている額だけではなくて、答弁いただいたように、事業それぞれの事情にも配慮した施策の展開をお願いしたいと思います。
 観光事業者は、今答弁にありましたさまざまな支援、そして今回のGo To トラベルによって持ち直してきているというような話もあるわけでありますけれども、あくまでこれはGo To トラベルや市民割、県民割を使ったおかげで、1万円の宿泊を2、000円、3、000円で泊まれるというお得感から来るものであって、このキャンペーンが終わった後、近隣のマイクロツーリズムにこれほどの需要があるかどうかというのは全く見えないところです。ですので、事業者にとってキャンペーン後の展望も開けなければ事業継続をしていこうという意思決定は、私は冬前にできないのではないかと思っています。
 新しいビジネスモデルを模索する観光事業者の道しるべとなるようなマイクロツーリズムから国内観光、インバウンド需要の喚起、そして復活。県においては、ウィズコロナ時代の量の観光から質の観光への転換を目指した新たな観光戦略を作成すべきと思いますが、所見を伺います。
〇保副知事 新たな戦略が必要ではないかということについてでありますが、県では、平成31年3月にみちのく岩手観光立県第3期基本計画を策定しており、この計画に定める観光で稼ぐ地域づくりの推進、質の高い旅行商品の開発・売込みなどの四つの基本施策は、量の観光から質の観光へと、まさに今、委員からお話があったとおりの内容を目指して掲げているものでございます。
 現在、新型コロナウイルス感染症により大きな影響を受けておりますが、この考え方自体は、これからも変わることなく、しっかり堅持し、これを基本的な観光戦略として観光立県の実現を図っていきたいと考えております。
 新型コロナウイルス感染症への対応については、県庁内の横断的組織であります岩手県観光産業振興本部において、まずは、県内の誘客から東北近隣エリアに拡大し、次に国内、そしてインバウンド誘客を見据えるという段階的な取り組みを進めるいわば戦術プランのようなものを今策定中であり、これを早急につくった上で、今後、市町村や観光事業者等と共有しながら推進してまいりたいと考えております。
〇佐々木朋和委員 検討いただいているということですが、やはり各事業者にとっても、今後、資金繰りをやっていくに当たり経営計画が必要でありますので、県にはぜひしっかりとそれを後押しするような計画を期待したいと思います。
 東北DCに向けた取り組み、インバウンドに向けた取り組み等について、具体的な提案もありましたが、時間がありませんので、最後の項目のILCについて伺いたいと思います。
 本年3月、ILC計画について、文部科学省の学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップへの採択を求めた申請書を、高エネルギー加速器研究機構―KEKが取り下げたことを県はどの時点で報告を受けていたのか。公表しなかった理由と、取り下げについてどのように評価するのかを伺います。
〇高橋ILC推進局長 ロードマップについてでありますが、まず、KEKから申請を取り下げていたとの説明が県にあったのは9月8日であり、KEKでは、文部科学省によるロードマップ案のパブリックコメントの開始にあわせて公表するに際し、関係者にお伝えしたとのことでした。
 申請の取り下げの理由は、申請書の提出後、新たに国際協力体制など推進の枠組みを再構築し、ILC計画を一層強力に進める方向で検討が進められることとなり、申請の重要なポイントである国際協力による計画推進体制が、申請内容から一新されることが見込まれる状況になったためとのこと。また、ロードマップの審査過程は非公開が原則だったため、公表を控えていたとの説明でした。
 次に、このことの評価についてでありますが、既に8月にはILC国際推進チームが設立され建設準備段階に向けて活動を開始するなどしており、県としては、今後の国際協力の進展に支障はないものと受けとめています。
 また、9月11日、記者会見でこの件に対する受けとめを質問された萩生田光一文部科学大臣は、申請の取り下げは事実であるが、国際協力体制の推進など申請内容を見直す必要が生じたためと伺っており、文部科学省としては、米欧の政府機関との意見交換を行いつつ、国際研究者コミュニティーによる議論を注視していくと発言しており、ILC実現に向けた取り組みが後退したものではないと改めて認識しており、もとより国内関係者の協力体制に影響はないものと受けとめているところであります。
〇佐々木朋和委員 ロードマップになっていれば、国内決定について大きな前進だったわけでありますが、問題は、次の国内誘致決定のタイミングであります。1年半後の2022年、ILCプレラボ、準備研究所の設置時点で国の何らかの決定があるのではないかという話もありますが、誘致に向けての今後の流れ、そして次の国内誘致決定のタイミングについて、その判断要素とどのように認識をしているのか伺いたいと思います。
〇高橋ILC推進局長 ILCの実現については、まず、ことし8月に発足したILC国際推進チームが、ILCプレラボ、準備研究所の設立に向けて1年から1年半程度活動し、準備研究所が最終的な設計など4年程度の建設準備を進めていくこと、続いて、この間の政府間合意のもと、条約または協定に基づくILC国際研究所が設立され、10年程度の建設期間に入ることを見込んだ段階的なプロセスがKEKから示されています。
 今後、まずは、世界の研究所間でILC準備研究所が設立されることが大きな節目になります。準備研究所の制度設計や各国政府への情報提供等を行いますILC国際推進チームの活動が円滑に進み、各国の十分前向きな理解が得られ、令和4年度ごろとされる準備研究所の設立を期待しています。
〇佐々木朋和委員 再質問しますが、ILCプレラボ、準備研究所の前に政府決定があるのですか。あと、そのILCプレラボ、準備研究所の設置場所は、報道によると、岩手県内というよりも、KEKのホストも視野にという報道もありましたが、その点についてはどうでしょうか。
〇高橋ILC推進局長 まず、政府間合意については、現在、ILCプレラボ、準備研究所の設立に向けての間は、世界の研究所間の合意で進めることが前提となっておりますが、いずれ、それについても、それぞれ関係国の理解があって進むものと考えておりますし、ILC国際研究所設立に向けての条約、協定の締結に関しての政府間合意は、この後、ILC準備研究所ができてから、準備が進む間で行われるものと見ております。
〇佐々木朋和委員 ILCプレラボ、準備研究所の設置場所についてはKEKのホストという報道もありましたが、岩手県内になるのですか、それとも違うのですか。
〇高橋ILC推進局長 場所については、全く決定がありません。言及されておりません。
〇佐々木朋和委員 いずれ、今の話でありますと、ILCプレラボ、準備研究所、あとILC国際研究所のところと2回、やはり国の判断のプロセスもあるのかなとも感じたところでありますが、やはり県民の不安は、ILCによる地域振興ビジョンの推進、いわて県民計画(2019~2028)のILCプロジェクトへの影響です。岩手県の状況を見れば、人口減少は進み、地域振興は待ったなしを迎えています。ILCによる地域振興ビジョンには、ILC誘致の国の決定にかかわらず、国際化や情報インフラの整備、人材育成、また、開発部門を含んだ産業の集積等、進めるべき事業が多くあります。その取り組みこそが私は最大の誘致活動だと思いますが、ILCによる地域振興ビジョンへの影響を知事にお伺いして、終わりたいと思います。
〇達増知事 ILCによる地域振興ビジョンは、いわて県民計画(2019~2028)に掲げたILCプロジェクトの推進方向を示す戦略として策定したものであり、国際研究都市の形成支援やイノベーションの創出など五つの政策体系により県の取り組みを進めてまいります。
 ILCのモデルとなるCERNは、1954年に設立後、研究技術開発の進展に伴い民間企業等との連携を拡大し、1988年には、開発技術の企業移転などを目的としたILO(Industrial Liaison Officer)を設立しています。
 近年、各国ではCERNと連携した起業支援を目的にインキュベーションセンターが設立されており、加速器だけではなく、ITや医療などさまざまな分野で創業が進むなど、多くのイノベーションが創出されています。
 ILCによる地域振興ビジョンでは、こうしたイノベーション創出の環境づくり進めるため、まず、加速器関連産業の振興を掲げ、平成27年に設立した産学官で構成するいわて加速器関連産業研究会の会員拡大、セミナーを通じた技術指導等を展開しています。
 また、専門知識を有するコーディネーターによる市場開拓やマッチングなどの企業支援を強化し、次世代放射光施設関連の受注などに成果も出ているところです。
 ILCの実現に向けては、建設候補地における準備の進展や中長期的な視点での取り組みが政府の誘致決断の後押しになるものと考えており、知事を本部長とするILC推進本部のもと、全庁挙げてILCプロジェクトの推進に取り組んでいます。
 岩手県ふるさと振興総合戦略や岩手県多文化共生推進プラン等、各行政分野の取り組みを連動させ、多様な財源の活用も積極的に図ってまいります。
〇佐々木朋和委員 ありがとうございました。(拍手)
〇菅野ひろのり委員長 質問者席の消毒のため、しばらくお待ちください。
 次に、飯澤匡委員。
   〔飯澤匡委員質問者席に着く〕(拍手)
〇飯澤匡委員 いわて県民クラブの飯澤匡でございます。どうぞよろしくお願いします。
 今決算審議は令和元年度の決算審議ということで、私は、今回の審議はしっかりやるべきだという思いを持っていますが、やはり社会構造や社会が紛れもなく新型コロナウイルス感染症によって大きく変革し、今まで、人口減少なども徐々に進んでいくのだろうというのが、一気に取りかじいっぱいになってしまいました。この社会の変革により、県の施策にも大きな影響が出ると思っています。そういうことを含みながら質問させていただきます。
 まず、知事に、短い言葉でよろしいのですが、私の言った新型コロナウイルス感染症の影響を受けた今後の社会の時代認識、今後の時代認識、特に、人口減少やこれからの岩手県の人材育成について、今思っていることで結構ですので、メッセージとしてお伝えください。
〇達増知事 今、表に見えてきていることとして、感染リスクが、やはり都会は高く、人口密度の低い、これはイコール自然が豊かで、そして第1次産業が盛んなところについては感染リスクが低い。人間が命を大事にし、また、本当に大切なものを求めていこうとするときに、やはり地方が、生活の場としても、働く場としても、学びの場としてもいいのではないかということが見えてきているのだと思います。
 また、命がかかるような危機管理ということで、改めて人や社会の本質、人は何のために生きるのか、社会は何のためにあるのか。そういったところに深い洞察が行われてきており、そういう中で、岩手県がもともと持っている歴史、文化や地域資源の中に、人間や社会にとって本質的に大事なものがあり、岩手県にはそういうものがさまざまあるということも見えてきていると思います。特に、若い人たち、子供たちには、そういう岩手県のよさを改めて見詰め直す、地元での観光や飲食をまず活発化させていこうという取り組みは、地元を改めて見詰め直す機会にもなりますので、改めてそういうふうに地元を見詰め直してほしいと思います。
〇飯澤匡委員 では、その上で、昨年度の政策評価を含めてお伺いしたいと思います。
 まず最初に、具体的に示しながら質問しますが、各委員から御指摘もありましたように、達成度が非常に低いものに対する改善策が求められています。特に、私たちの会派では、人口減少対策、それから人材の育成。そういう意味で先ほど聞いたのですが、その点については将来的に絶対必須の課題だと思っております。その点から拾い出してみますと、“いきいき岩手”結婚サポートセンター―i-サポの成婚者数は、目標値110人に対して56人、それから、自分の住む地域が好きだと思っている高校生では、年度目標値52%に対して実績値は43%となっており、将来に対して余り期待が持てない状況になっています。
 特に、我が会派ではi-サポに対して、この実現を図ったという意味からも、これは大変ゆゆしき、憂慮すべき事態だと思っています。この数値が非常によくないということに対して、下がっている要因、上がっていかない要因はどう分析しておりますでしょうか。
〇菊池副知事 まず、いわゆるi-サポの成果についてでありますが、平成27年10月の開設以来、拠点の増設や出張サービス、お出かけi-サポを順次拡大するとともに、相談員を増員するなど、利便性の向上を図りながら運営してきたところでありますが、会員数が伸び悩んでいることやマッチング件数が減少してきたことにより、目標の成婚者数に達しなかったと受けとめております。
 このため、今年度は、i-サポと岩手県理容生活衛生同業組合及び岩手県美容業生活衛生同業組合との間で締結した連携協定に基づく取り組みによる会員の獲得や、人工知能機能なども活用した新たなマッチングシステムの導入によるマッチング率の向上を図ろうとしております。
 また、i-サポ設置による結婚支援のほか、県内市町村では、出会いイベントの開催やi-サポへの入会金助成、新婚家庭の住宅費用や引っ越し費用を支援する結婚新生活支援事業を実施するなど結婚支援の取り組みが広まってきた結果、令和元年の人口動態統計では婚姻件数が4、489件となり、前年と比べて50組増加し、機運の醸成が図られてきているものと受けとめております。
 県としましては、引き続き、市町村、関係団体等の取り組みと連携を図りながら、県民の結婚したいという希望をかなえるため、総合的な結婚支援に取り組んでいく考えであります。
〇飯澤匡委員 平成30年度は目標値に対して78.8%、令和元年度は50.9%なのですね。全体的には底上げになっていると言うけれども、県事業として指標に上げている以上、何らかの成果を求めていかなければならない。結果が出ていないということは、やることをやっていないということだと思うのです。特に市町村に対しては、どのような働きかけをしてきたのか、具体的に示してください。
〇菊池副知事 i-サポ関係での市町村との連携の状況ですが、まさにi-サポ運営の前提が、市町村と協働した取り組み、普及啓発や会員の獲得、マッチング拡大などを進めているところでございますので、引き続き、そういった取り組みを進めていきたいと思っております。
〇飯澤匡委員 語尾だけ強くて具体性がなかったのですが、これはまた部局別審査でしっかり議論させていただきたいと思います。
 政策評価の今後のあり方ですが、このたび10の政策ということで新しい長期計画が進んでいきました。ただし、先ほど臼澤勉委員がお話しされた指標メタボという言葉は、私は本当に言い得て妙だと思うのですが、例えば、仕事・収入についても、確かに関連している指標はあるけれども、その濃淡は非常にばらつきがあります。こういう評価を全体的に捉えていて、果たしてそれで了とできるのかどうかという点については、私は極めて疑問を抱いています。来年度の政策評価をどのようにしてやっていくのか、今までの評価システムとあわせてどういう評価をするのか、是正するならどのようなことを考えているのかお示し願います。
〇達増知事 いわて県民計画(2019~2028)は、地域社会を構成する多様な主体が、岩手県の将来像を共有し、それぞれの主体がみずから取り組みを進めていくためのビジョンであり、計画の着実な推進に向けて、県の取り組み状況等を確認し、新たな課題への対応や必要な見直しなどを行っていくことが重要であります。
 計画の初年度の政策評価の実施に当たっては、今後行う政策形成支援評価において、前計画では政策項目ごとに評価を行っていましたが、今回は、政策項目の評価に加え、その上位にある10の政策分野についても新たに総合的な評価を行うこととしております。
 また、これまで行っていた指標の達成状況や社会経済情勢、県以外の主体の取り組み状況に加えて、新たに、県民の幸福に係る実感を反映させるほか、10の政策分野ごとに、関係部局で構成する政策推進クロス・ファンクショナル・チームにおいて、政策分野の評価や政策立案の検討を行うなどの改善を行っております。
 今後も、政策評価に基づくマネジメントサイクルを機能させ、政策推進プランの実効性を高めていけるよう、引き続き、政策評価の不断の見直しを行ってまいります。
〇飯澤匡委員 12月にはその作業を始める、我々にも示されるということで、それはじっくり見てみたいと思いますが、今、具体的に示しました仕事・収入の件も含めて、私は、この政策のいわて幸福関連指標については、先ほど前任者の質問の中でA評価、B評価、これらが非常に多くを占めたので一定程度の成果が上がってきたと知事は申されました。私は、i-サポの評価がDだったり、それから、結婚、家庭、子育てに関しても、両親学級への父親の参加割合とか、これはまさにダルビッシュのハードスライダーと中学生の投げる直球とでは、内容が余りにも違い過ぎる。これを総体的にまぜて評価して、それを一定程度A評価がいいということでいいということにはならないのではないかと思います。その点については、もう一度、どのような評価の形にしようとしているのか、どういう評価の基準にするのかお答え願います。
〇八重樫政策企画部長 いわて幸福関連指標は、幸福に関連する領域の客観的指標として設定しているものであります。今後行うこととしております総合的評価において、県民の実感―幸福感と言いかえてもいいと思いますが―とにギャップがあるものについては、より詳細に課題の検討を行うこととしておりまして、県民の実感をより重視した評価を行うことで、政策推進プランの評価を適切に行い、PDCAサイクルの中で政策評価が県の予算編成や政策決定につながっていけるように、評価を行っていきたいと考えております。
〇飯澤匡委員 わかりました。そこで、来年度の予算編成にかかわるわけですが、新型コロナウイルス感染症に対する考え方、今後の社会は、リーマンショックを超えたと言われておりますけれども、私はそれ以上のものを感じています。特に経済対策について、この長期計画においては、仕事・収入というSDGsの考えに沿った中で、まさに生活に寄り添う形で政策の柱立てがされています。私は、国の交付金のあり方についても、今後、それと呼応した形で、経済対策、それから、もちろん地域医療とか、こういうものは政策の中で特出しにしてやる必要があるのではないかと思いますが、その評価を求めたいと思います。
〇達増知事 政策体系についてでありますが、県では、新型コロナウイルス感染症対策として、県民一人一人の命と健康を守ることを最優先に、感染拡大防止に加え、生活となりわい、学びを支えるための対策を講じてきたところであります。
 こうした対策は、被災者一人一人に寄り添いながら復興を進めてきた経験に基づき、基本目標に、お互いに幸福を守り育てることを掲げるいわて県民計画(2019~2028)と軌を一にするもので、新型コロナウイルス感染症対策に向き合うことが、いわて県民計画(2019~2028)の目標に真っすぐ向かっていくことになると考えております。
 このため、県民の暮らしや仕事を起点とする10の政策分野の体系に基づき、アクションプランに掲げる取り組みについて、新たな事業の追加や事業のブラッシュアップを進めていきたいと思います。
 また、いわて県民計画(2019~2028)では、社会経済環境の変化に応じ、戦略的、弾力的に取り組む11のプロジェクトを盛り込んでおり、今般の感染拡大で広く認識された東京一極集中の課題や地方の暮らしやすさなどを踏まえながら、11のプロジェクトを機動的に展開することにより、いわて県民計画(2019~2028)の基本目標により向かっていきたいと思います。
〇飯澤匡委員 私が言っているのは、機動性、スピードなのですよ。2020年1月から8月、休廃業・解散企業動向調査、これは株式会社東京商工リサーチが調べたものですが、コロナ禍が長引いた場合に廃業を検討する可能性があると回答した中小企業は8.8%。そのうち44%が、検討時期を1年以内としているわけです。これはもう待ったなしなのですよ。ですから、スピード感を持った対策を、国の交付金事業に対応するだけではなくて、新たな視点で政策体系を起こしておかなければならないと思うのですが、その点について、もう一度答弁をお願いします。
〇達増知事 それぞれのそう考えている事業者に対して、本当は今やっている仕事を続けたいけれども、新型コロナウイルス感染症でお客さんが少ないからもう無理だという思いであるのであれば、何とか感染対策をしっかりやりながら、お客さんをふやす、そして、それまでの間の資金をつないでいく工夫を調整していくことだと思います。また、この機会に業態転換するという場合については、県でも、観光であれば、ワーケーションでありますとか、普通の観光客相手からリモートやテレビ会議をふやしていく企業相手のビジネスのほうに誘導していくようなことをやっていければと思っております。
 また、何をやっていいのかわからないけれども、とにかく今やっていることは廃業せざるを得ないというようなところに対しましては、スマート農業でありますとか、漁業の新しい養殖でありますとか、1次産業関係でもさまざま新しいビジネスのモデルがございますし、また、自動車や半導体関係の主な企業のサポートをするような仕事もたくさんあります。また、そういったものは、いわて県民計画(2019~2028)の中に基本的に書かれているものであり、そういったものをまさにスピード感を持って、今すぐにでも対応していきたいと思います。
〇飯澤匡委員 議論が必要なところなので、これは後ほど、また知事とやりたいと思います。
 次の質問に移ります。市町村との連携について、最初に、県への市町村の要望会についてお伺いします。
 県に対しての要望における今の体制は、現在の広域振興局体制がスタートしたのと同時に、広域振興局長が要望書を受理する形、そして、平成26年から、知事が直接広域振興局長から要望に係る報告を受ける形をとってきて、知事は、このやり方が、県執行部として正式に市町村の状況を踏まえた県としての責任ある意思決定に役立つと考えているという答弁がありました。
 大体もう10年以上経過しているわけですから、市町村からの評価をどのように把握していますか。
〇達増知事 市町村要望についてでありますが、市町村長との面会につきましては、県政懇談会や現地調査などの機会にあわせて、秘書課において調整して行っているところであります。
 市町村長との協議については、東日本大震災津波からの復興やふるさと振興をなし遂げ、新型コロナウイルス感染症対策など直面する課題に的確に対応するため、県と市町村の連携が特に重要であり、本県においては、戦略的な産業振興や質の高い行政サービスを提供するため、四つの広域振興圏を設置し、各圏域に知事の権限を委任した広域振興局長を置いて、日常的に地域の実情を把握し、県政に反映させることとしております。
 市町村要望については、広域振興局長が市町村からの要望を組織として受け、全庁的に市町村の課題等を共有し、具体的な施策につなげているところであり、また、市長会、町村会、市町村の議会議長会からの要望において、市町村長等と直接、意見交換を行っているほか、知事と市町村長との意見交換の開催を初め、重要な案件については、市町村長から直接お話を伺っております。
 今後とも、引き続き、さまざまな機会を捉え、市町村長との意思疎通を図りながら、市町村との連携を重視し県政を推進してまいります。
〇飯澤匡委員 首長との政策懇談会は次の質問でやりますので、切り離して考えてください。今の体制になって、市町村からの評価はどのように把握しているかという質問です。
〇達増知事 それにつきましては、例えば国道4号の事業の推進や、市町村の事業に県が補助する葛巻町の中心市街地の再開発など、それぞれ県と市町村とで力を合わせて行っている個別の事業について、市町村においても一定の評価をし、さらに県と連携しながら進めていくというところにあると考えております。
〇飯澤匡委員 ちょっと答えになっていないので、質問をもう一つ。10年になりますけれども、この間、県として工夫改良した点があれば示してください。
〇達増知事 要は、結果として市町村の仲がよくなり、岩手県全体がよくなればいいということだと思うのです。そうなるために、今、何についてともに取り組んでいかなければならないのか、また、市町村のどの課題について、特に県が支援していかなければならないのかということを、より的確に把握しながら進めていくようにしていると言っていいと思います。
〇飯澤匡委員 45度そらして答えているのですが、質問を続けますね。今定例会本会議でのハクセル美穂子議員の一般質問への答弁で、正式に、正規にという単語が出てきていますが、その真意はどこにあるのでしょうか。正規でない要望とはどういうことを指すのでしょうか。
〇達増知事 基本的に、正式なものについてのみ答弁しなければならないと思いますが、先ほど述べましたように、市町村要望については、広域振興局長が市町村からの要望を組織として受け、全庁的に市町村の課題等を共有し、具体的な施策につなげているところです。
〇飯澤匡委員 私の認識を申し上げます。私は、達増知事になる前から議員をやらせていただいていますが、その前後の比較はまた別の場にするとしても、この間、全く改良の跡が見られません。したがって、現在、一関市などを例にとりますと、逆に市のほうが気を使って、要望場所をおのおの変えて工夫してみたりというようなことが見られます。また、要望会でも、私はオブザーバーとして参加して、常々申し上げているのですが、いわゆる広域振興局の下請的な答弁、説明が年々目立ってきています。一番きわめつきが、本庁に確認いたしましたところ、このような回答でございますということでその場をおさめるのですよ。これでは、地域に寄り添う広域振興局が何のためにあるのかということを私は言いたい。
 このことが全く改良されないで現在に至っていて、今また、知事の答弁でさらに明らかになりましたが、それでいいという形です。全く改良されていないのです。この点について全く認識が違うので、そこの認識がないということに対する大きな驚きを私は持ちました。この点について、どのような認識ですか。どのようなことを把握していますか。
〇佐々木ふるさと振興部長 広域振興局におきましては、その個局において完結性を高め、その地域の事業者あるいは関係する方々とより利便性を高めるといった考え方により、これまでは、例えば知事の委任事務というものがありますが、広域振興局体制となる前の平成17年度と比較すると、令和2年度においては84事務、これはおおむね法律によるものであります。ですので、この中に条項が入っておりますので、この約10倍から20倍ぐらいの処理すべきものが広域振興局に移管され、地域とともに行政経営を行うことになっております。
 市町村要望に対する回答につきましては、本庁ともども県としての統一した意思を回答するという形で、そういう表現も使われているものと承知しております。
〇飯澤匡委員 それでは、部長はそれでよしとしますか。今の私の考え方、私の把握の仕方で、それでいいという考え方ですか。
〇佐々木ふるさと振興部長 現状、こういった形でさまざまな市町村の声を聞くということで、知事も機会を捉えてお会いしております。我々も市町村長等とさまざまお会いし、また意見を交換する機会もあります。いろいろな形で市町村と連携するための情報収集をしながら対応するということで、今がベストかどうかというよりも、今のやり方の改善すべきところは改善する。そういったことにより、進化させていくような考え方で対応していくべきものと考えております。
〇飯澤匡委員 改善しないから私も取り上げているわけです。4広域振興局体制になって、これは何回も言っていますが、県南広域振興局が先発で行って、その目的が、産業振興のいわゆる戦略基地だとなっているわけですが、その目的すら、最近非常におぼろげになっていると思います。このようなことを含めて、これはしっかりやってもらわないと困ります。これはやってください。
 それからもう一つ、私は、知事が同席する効果というのは、直接的、間接的に大きいと思います。一つは、要望側も論点をしっかりまとめること。それから、広域振興局長も、事前に調査を綿密に行って、そして、知事から答えられた場合はしっかり応えなければいけないということですから、これは人事の効果を上げるという面でも非常に効果があると思うのですが、この点についての所見をお願いします。
〇達増知事 過去、一々私が各市町村長から市町村要望を直接伺っていた時期があったのですが、夏の前に、県として翌年度予算の作業にまだ入らない段階で、知事がそうした予算要望的な内容について何かその場で回答を求められるような状況において、マスコミもいますので、どうしても踏み込んだ答えができず、比較的県における検討の初期の段階、ざっくばらんに言うと、各課における検討内容ぐらいの回答をいたしました。本当は、最終的には知事査定においてさまざま戦略的、総合的な判断の中で市町村が要望していることに対してどう対応するかを、翌年2月に最終的に決めるような形で行うのがベストというか、よりよい予算や事業の決定ができるのに、本当にまだ夏の早い段階で、そういう市町村長と知事の直接的なやりとりをマスコミの前でやるのはいかがなものかと思いながらやっておりました。
〇飯澤匡委員 市町村長が思っているのは、県と問題を共有して何とか前に進めたいということだと思うのです。県がなかなか大変だったら、これは国に直轄でやれるようなものもあるかとちょっと考えるじゃないですか。県との協議の中でね。私は同じような質問を平成28年にもしたのですが、私が見ていて、どうも知事は紋切り型に断るものが多いなと言ったのです。断られることを市町村はそんなに恐れていないですよ。政策協議することに関して、私は意義があると思います。
 知事は、今の答弁を見ても自分が主体じゃないですか。市町村がどういう思いを持って自分たちの自治体経営をするかという思いに寄り添って考えたら、そういう答えにはならないのではないかと思うのですが、いかがですか。
〇達増知事 過去、終わった後、県に戻って局長級、部長級と話をしたときに、担当課ではこういう考え方かもしれないが、大所高所から考えると、そろそろそれをもう変えてもいい時期かもしれないなどということを聞かされたこともあり、やはり、まず市町村の要望を、市町村からのそのままの形で早い段階で受けた後、県庁内でさまざま検討して、そして、最終的には県の予算の形で答えが出ていくようなやり方がいいのではないかと思いました。
〇飯澤匡委員 前段で聞きましたが、このコロナ禍にあって、もう市町村の悩みは相当深いですよ。だからこそ政策協議の場というのは、あえて知事がやらなければならないのではないかと思うわけです。
 質問は次に移りますが、知事が市町村長と、答えは現場にあるとしながら、なかなか要望にも立ち会わないという状況です。ただ、先ほど答弁がありましたように、要望等は適時適切にやっているという話ですが、昨年度と今年度の県内首長との面会状況はどうなっていますか、お示し願います。
〇達増知事 県政懇談会や現地調査などで各市町村を訪れる機会に合わせ、秘書課において調整して個別に面会した回数は、昨年度は11回、延べ19市町村長、今年度はこれまでに6回、6市町村長となっています。
〇飯澤匡委員 とんでもなく足りないのではないですか。先ほど申し上げましたように、コロナ禍でイベントも大幅に減少して、知事がいろいろ考えたり行動する、今までできなかったことをやるには、私は絶好の機会だと思うのです。こういう機会こそ首長との面談回数をふやして、2時間なり3時間なり、新型コロナウイルス感染症の危険性もないわけだから、普通というか、通常に考えたらそういうものに充てるのが私は知事としてあるべき姿だと思うのですが、なぜやらなかったのですか。
〇達増知事 一つの考え方として承りたいと思います。
〇飯澤匡委員 私も一応有権者の負託を受けて御提言を申し上げているので、そういう切って捨てたようなお話だと、非常にがっかりして、情けないですよ。しっかり受けとめてください。
 首長方の今の要望会等の、そしてまた知事との面談回数についても、しっかりその思いを何らかの形でアンケートをとったりして、私はやるべきだと思いますよ。今後、市町村行政と関係は密にすると言いつつも、肝心の選挙で選ばれた自治体の長とのお話し合いが少ないのでは、全然話にならないじゃないですか。
 知事は選挙戦で、市町村と連携して国を動かすと言っております。これは全く実態に合わないと思うのですが、これからどうやってやるのですか。
〇達増知事 例えば一関市との連携について言えば、まずは、今は一関遊水地を順調に進めていくということで、まさに一緒に国を動かそうということでやっているわけですし、ILCも、まさに一緒に国を動かそうということで、さまざまな動きの中でも足並みをそろえてやるように調整しております。
 一関市は、病院について、県立病院と、自前の病院とがあって複雑なところもあるのですが、そこもうまく調整しながら、特に、この新型コロナウイルス感染症対策についても、うまく調整しながら、地域外来・検査センターについても進めることができています。そういったことを住民のために、県民のために、きちんと住民の福祉の増進という結果を出していくよう頑張っていきたいと思います。
〇飯澤匡委員 頑張っていきたいという気持ちは、私は受けとめました。ただし、やっていることを言うよりも、これからやらなければならないことについて、やっぱりこの場で話していただきたいと思います。
 Go To トラベルキャンペーンについて、知事は失敗ではないと先ほど言いましたが、失敗という言葉はもう全国を駆けめぐりました。それをメディアに対して否定しましたか。その点についてちょっと確認させてください。
〇達増知事 翌週の記者会見で、私はGo To トラベルは失敗とは言っていないと明言しておりまして、記者会見の記録にも載っていると思うのです。私は、Go To トラベルが失敗とは言っていないというのは記者会見で明言しておりますので、ぜひこれを私も拡散させたいと思っていますが、議員の皆さんにもぜひ、それが真実でありますから、拡散していただきたいという希望を述べさせていただきます。
〇飯澤匡委員 いいですか、知事。あなたのツイッターで、岩手県、Go To トラベルは失敗と報じたのは共同通信社と一部地方紙ぐらいでしたが、結構拡散したのは、かかる明言を求める世論ゆえかもと、これはみずから認めているのではないですか。違いますか。
〇達増知事 今申し上げたとおり、私はGo To トラベルが失敗だったとは言っていないし、また、であればこそ全国紙は報道しなかったわけです。岩手県知事が失敗したと言ったことを。某通信社と地方紙―地方紙というのは通信社から記事をもらったりしているわけですけれども―だけが書いていたわけです。それが一定の拡散をしてしまった背景を分析すると、さまざま、Go To トラベルに最初の段階から問題を感じている人たちが日本の中に結構いて、そういう人たちが拡散してしまったのだなと。だから、私は翌週の記者会見で、私はGo To トラベルが失敗とは言っていないということを明言したところであります。
 また、岩手県においても、Go To トラベルについてさまざま問題点が指摘されていることは、私もいろいろ耳にしており、ここ数日も、ニュースの時間、情報番組の時間にテレビをつければ、Go To トラベルの問題点が指摘されたりしてはいるわけですが、この間、一貫して私はそれを批判とか、そういうことはしておりません。むしろ県職員に対しては、県や市町村が力を合わせて、観光業者とも力を合わせて、さまざま課題がある部分は我々が補い、感染対策をし、感染者が出ないようにしながら、そして全体として成功して、観光関係者の所得が上がっていく、困窮する人が出ないようにしようと言っているところでありまして、それが岩手県の姿勢です。
〇飯澤匡委員 それでは、最後の質問です。科学研究予算については、内閣府で別枠で検討している旨を聞いておりますが、岩手県ではその点を把握していますか。
〇佐々木ふるさと振興部長 委員の質問につきましては、政府、大学研究支援でファンド創設といった情報かと思いますが、一部報道では、文部科学省、内閣府で10兆円の基金を目指すといった報道がございます。これは科学技術関係経費、研究開発について10兆円の基金を積んで、その運用の3、000億円から4、000億円を研究開発資金に充てようといった動きでございます。
 この背景には、科学技術イノベーション創出の活性化に関する法律が平成31年1月に施行されておりますが、この改正のときに、研究開発資金の柔軟な執行と対応化ということから、個別の法改正によらず、資金配分機関に基金を造成できるスキームを構築するということで、この法律によって基金が研究開発の財源として用意されるというようなことがあり、今回、政府予算案に向けて、現在、文部科学省と内閣府が、まだ金額は示さない事項要求という形で検討を進めていると承知しております。
〇飯澤匡委員 終わります。ありがとうございました。(拍手)
〇菅野ひろのり委員長 この際、世話人会の申し合わせにより10分間ほど休憩いたします。
午後3時57分 休 憩
午後4時13分 再開
〇菅野ひろのり委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
次に、高田一郎委員。
   〔高田一郎委員質問者席に着く〕(拍手)
〇高田一郎委員 日本共産党の高田一郎でございます。
 まず、子供の貧困対策について質問いたします。
 昨年、県は大規模な子どもの生活実態調査を行い、ことしの7月に岩手県子どもの幸せ応援計画(2020~2024)を策定いたしました。これまでの子供の貧困対策をどう総括されているのか、また、今後取り組む基本姿勢について、まず示してください。
〇達増知事 岩手県子どもの幸せ応援計画(2020~2024)についてでありますが、岩手県子どもの幸せ応援計画(2020~2024)の策定に当たり実施した岩手県子どもの生活実態調査では、特に母子家庭において厳しい生活実態が浮き彫りとなったほか、公的支援施策の周知や活用が十分でないこと、子供の居場所に対するニーズが高いことなどが明らかとなりました。
 本年7月に策定した計画におきましては、これらに対応するため、子供の授業の理解度や就学に関する支援などの教育の支援、子供の居場所づくりなどの生活の安定に資するための支援、ひとり親家庭の保護者の就労支援などの保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労の支援、ひとり親家庭等に対する経済的支援、被災児童等に対する支援の五つを重点施策に掲げ、具体的な推進方策を盛り込んだところであります。
 この計画に基づいて、子供たちが自分の将来に希望を持ち、幸せを感じることができる岩手の実現に向けた施策を展開してまいります。
〇高田一郎委員 岩手県子どもの生活実態調査では、修学旅行に行けなかった児童は、中央値の2分の1未満及び就学援助世帯で36人、給食費などを払えなかった児童は650人、同時に、朝食を毎日食べる児童は83%程度であります。
 知事は、この現実をどう受けとめているのでしょうか。給食費を払えない、遠足に行けない、そして朝食を食べられない。この現実を解決する三つのゼロにしっかりと取り組むべきと考えますが、知事の見解を伺います。
〇達増知事 給食費や修学旅行等の課題については、全ての子供に不利益が生じることがないよう、きめ細かに対応すべきことが基本でありますことから、学校と家庭、地域、関係機関が連携し、支援が必要な子供を早期に把握して、適切な支援につなげることが重要と考えております。
 岩手県子どもの幸せ応援計画(2020~2024)の推進に当たっては、持続可能な開発目標―SDGsの理念であります誰ひとりとして取り残さないの視点を盛り込んだところであり、この視点に立って、子供の学校生活等に係る相談体制の充実や支援につなげる体制の強化、経済的な支援、食育などの取り組みを推進してまいります。
〇高田一郎委員 三つのゼロに取り組む具体的な答弁はなかったのですが、例えば遠足、修学旅行に行けないなんていうのは、義務教育の場で絶対あってはならないと思うのです。やっぱりそういう決意でしっかり取り組んでいただきたいと思います。
 学力の問題では、学校の授業がわからない児童は、中央値の2分の1未満が24.6%にもなっております。わからない理由が、授業が難しいというのが57.9%であり、勉強する気になれないが38%でありました。授業がわからないまま学校に通わなければならない。こんなつらいことはないと、私は思います。
 岩手県子どもの幸せ応援計画(2020~2024)では、教育支援は重点支援の1番目になっていますが、残念ながら、具体的な取り組みが見えてきません。今後の具体的な取り組みについて、県の考えを示してください。
〇達増知事 岩手県子どもの生活実態調査において、収入が中央値の2分の1未満の世帯の子供では、授業の理解度が低い傾向が見られたわけであります。
 その理由としては、授業の内容が難しい、苦手、嫌いな教科が多いと回答した割合が高くなっており、また、授業の理解度が低い子供では、家で落ちついて学習することができると感じている割合が低いことも明らかとなっています。
 これらの課題に対応するため、岩手県子どもの幸せ応援計画(2020~2024)では、学校において、確かな学力を育成するためのきめ細かな指導を推進するとともに、家で落ちついて学習することが難しいと感じている子供に対しては、市町村や民間と連携し、学習を支援する場を充実することにより、子供が家庭環境に左右されることなく学力を身につけることができるよう支援していくこととしております。
〇高田一郎委員 何か余り具体的じゃなかったのですが、例えば、生活困窮者、低所得者に対しては、生活困窮者自立支援法で学習支援という事業があるのです。しかし、これは、調べてみますと、残念ながら県内では16市町村の実施にとどまっているのです。これは任意事業になっているからだと思いますが、やはり県も具体的な支援として、この学習支援を全県に広げていく、そういう具体的な取り組みが必要かと思いますが、この点についていかがですか。
〇菊池副知事 御指摘のような取り組みがいろいろと用意されておりますので、市町村や民間と連携して、さまざまな展開について、いろいろな情報提供をしたり、技術的な支援などをしながら進めていきたいと考えております。
〇高田一郎委員 生活困窮者自立支援事業を請け負っている市町村社会福祉協議会などに行きますと、こういう事業をぜひやりたいのだと。でも、任意事業で市町村から何らの支援がないのだという話を聞きます。やはり県もしっかり支援して、16市町村にとどまらないで、少なくとも全県で取り組むことができるような支援をお願いしたいと思います。
 もう一つは、子供の居場所の問題であります。先ほど知事は、居場所のニーズが非常に高いというお話をされました。本当にそのとおりであります。
 今、母子家庭の就労環境は、例えば土日勤務が35.9%、不定期を含めると79%になっています。日曜出勤というのは不定期を含めると6割近くになっています。そのために、子供は毎日1人で過ごさなければならないという状況であります。
 この点についても、岩手県子どもの幸せ応援計画(2020~2024)において、例えば子ども食堂については、全市町村に広げるという程度なのですが、これでいいのでしょうか。私は余りにも不十分だと思いますが、この点についても県の考えをお聞かせいただきたいと思います。
〇菊池副知事 県では、子ども食堂を含む子供の居場所の全市町村への拡大を岩手県子どもの幸せ応援計画(2020~2024)にも位置づけ、子どもの居場所ネットワークいわてにコーディネーターを配置し、開設、運営に関する支援を行っていることに加え、県単独補助による立ち上げ等の支援を行っているところでございます。
 こうした支援の結果、児童の多い市部を中心に取り組みが進んでおり、令和2年8月末現在では、20市町村、49カ所まで取り組みが拡大してきているところでございます。
 県としては、引き続きこれらの支援施策を実施するとともに、市町村等関係機関と連携し、広く県民の理解と参画を促しながら全市町村への取り組みを拡大していきたいと考えております。
〇高田一郎委員 子ども食堂については、今お話があったように20市町村にとどまっております。滋賀県では、子供たちが歩いて通えるところに子ども食堂300カ所設置を目標に、現在132カ所になっているのですね。やはり岩手県も、せめて各中学校区に1カ所くらいという構えで取り組んでいく必要があるのではないかと思います。
 先日、社会福祉法人一関社会福祉協議会に行ったときに、フードバンクに取り組まれておりまして、たくさんの人が来ていると言うのです。その来ている人のお話を聞くと、私たちも何か手伝いたいのだと。子ども食堂に協力したいのだけれどもという声が、たくさん寄せられている。
 県の子どもの居場所づくり推進事業補助金は、全国でもすぐれた施策、事業だと私は思っています。しかし、それがなかなか形になっていない。これが岩手県の子供の居場所問題の課題だと私は思っております。せめて中学校まで広げる、各中学校区に一つ設置する、この構えで県も取り組んでいただきたいと思います。これが一つであります
 もう一つは、私は沖縄県の教育に学ぶべきだと思っております。沖縄県では、全市町村に全体で118人の子どもの貧困対策支援員を配置して、子供が抱える課題を把握しながら、学校などと連携してさまざまな問題を解決しております。そして、156カ所に子供の居場所を設置して、食事支援だけではなくて、学習や生活指導を行いながら、日中や夜間に子供が安心して過ごせる場所を提供する活動をしております。大変すぐれた対応だと思います。
 私は、こうした沖縄県の経験、教訓に学んで岩手県でも対応していくべきだと思いますが、この点についても伺います。
〇菊池副知事 まず、子ども食堂のさらなる拡大についてでありますが、岩手県子どもの生活実態調査では、住んでいる学区内での子ども食堂の実施に対するニーズが高いことが明らかとなっております。
 子ども食堂などの子供の居場所は、さまざまな事情を抱える子供が安心して過ごせる場所であるとともに、家で落ちついて学習することが難しいと感じている子供に対する学習支援の場としても有効な取り組みと考えており、より身近な地域において子供の居場所を確保することが望ましいと考えております。
 このため県としては、関係機関と連携し、先ほど答弁いたしました県補助制度の一層の周知や開設可能な施設の情報提供など、積極的な広報活動に努め、未実施の市町村において取り組みが行われるよう支援していきたいと考えております。
 次に、子供の貧困対策に関する沖縄県の例についてでありますが、まず、委員御紹介の取り組みにつきましては、内閣府が、沖縄県特有の子供を取り巻く厳しい状況を踏まえて、内閣府沖縄振興局により実施されているものと承知しております。
 本県では、市町村ごとに設置している子供の安全確保と人権擁護を総合的にコーディネートする要保護児童対策地域協議会において、民生児童委員など地域の支援者が、支援の必要な子供たちの状況を共有し、学校や関係機関等と連携して適切な支援につなげているところでございます。
 今後におきましても、本年度策定した岩手県子どもの幸せ応援計画(2020~2024)に基づき、教育の支援や生活の安定に資するための支援など、子供の貧困対策のための施策を推進してまいる考えでございます。
〇高田一郎委員 私は、子供の居場所あるいは子ども食堂について、せめて中学校区単位でということを申し上げたのですが、未実施の自治体があるということで大変残念でありました。ぜひ、沖縄県の経験などに学んで、その充実のために取り組んでいただきたいと思います。
 この問題は知事に伺いたいのですが、やはり今、子供たちが抱えている課題を考えていきますと、子供の貧困対策は県政の大きな課題の一つだと思います。これを進める特別の部署を新設し、あるいは子供の貧困対策本部を設置して、知事が本部長になって取り組むくらいの体制、構えが私は必要だと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
〇達増知事 子供の貧困対策の推進に当たっては、支援が必要な子供たちを早期に把握し、適切な支援につなげるための教育と福祉の連携強化や保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労支援などに取り組んでいく必要があると考えております。
 本県では、福祉、教育、労働、女性活躍など、関係部局で構成する子どもの貧困対策連絡調整会議を設置しており、まずは、この会議を庁内における子供の貧困対策の推進組織として、部局横断的に取り組みを進めていきたいと思います。
〇高田一郎委員 次に、高過ぎる国保税についてお伺いいたします。
 今、中小企業の労働者が加入している協会けんぽについて、例えば盛岡市では、年収400万円の片働き世帯では、子供2人の4人家族の場合、協会けんぽの場合は20万円ですが、同じ所得でありながら盛岡市の国保は40万円になっています。2倍の開きがある。これが実態だと思います。
 知事は、この国保の実態をどのように受けとめているのでしょうか。
〇達増知事 国民健康保険は、構造的に被保険者の年齢構成が高く医療費水準が高いことに加え、年金生活者や無所得世帯の割合が高く所得水準が低いことが、保険税負担が被用者保険よりも重くなっている原因であると認識しております。
 現在の国保制度においては、国の財政支援の拡充により財政基盤の強化が図られ、保険税負担の伸びの抑制が図られているものの、こうした構造的な課題の解決に対応したものとなっているとは言えないと考えております。
 このため、全国知事会を通じて、国に対し、国庫負担率の引き上げなど、さまざまな財政措置の方策を講じ、構造的な課題を解決し、医療保険制度間の公平性を確保するとともに、今後の医療費の増嵩に耐え得る財政基盤の安定化を図るよう要望してきたところであります。
 県といたしましても、政府予算提言、要望において、同様に要望を行っているところであり、今後も、他の都道府県と連携しながら、財政措置の拡充について、さまざまな機会を通じて国に働きかけていきたいと思います。
〇高田一郎委員 知事がお話しするように、構造的な問題があります。そういう中で、各市町村は高過ぎる国保税を改善するために、子供の均等割減免とか、一般会計から繰り入れをして幾らかでも国保を引き下げる努力をしています。こういう市町村の取り組みについて、県はどのような評価をしているでしょうか。
〇達増知事 これまで、国による段階的な公費負担の拡充による国保財政の基盤強化により、県内市町村の法定外繰り入れは、平成27年度の12市町村から令和元年度には8市町村に、金額では6億8、000万円から1億7、000万円に減少しており、財政の健全化が進んでいるところであります。
 昨年度に法定外繰り入れを行った市町村の中には、子供の国保税均等割の免除を目的としたケースが含まれており、子育て支援施策の観点から市町村独自の判断で繰り入れが行われたものと認識していますが、県としては、岩手県国民健康保険運営方針において、決算補填を目的とした法定外繰り入れは解消に努める必要があるとしているところであります。
 本来、子供の均等割軽減措置等は、個々の市町村が財源負担を行いながら導入するものではなく、また、各自治体の財政力の差などによらず、全国どこの地域においても同等な水準で子育て世代の負担解消が行われるべきであり、全国知事会を通して、子供に係る均等割保険料軽減措置を導入するよう国に要望を行っているところであります。
〇高田一郎委員 国保税は高過ぎて構造的な問題がある、だから国に対してその改善を求めているということであります。当然だと思います。しかし、第2期岩手県国民健康保険運営方針素案が今議論されておりますが、ここでは、今、知事がおっしゃるように、段階的な赤字削減及び決算補填を目的とした一般会計の繰り入れの解消に努める、保険料は将来統一を目指していくというこの素案では、今の国保の構造的な問題は解決しない。むしろ、国保がどんどん上がってしまうことにつながってしまうと考えますが、県はどのような考えを持っているのでしょうか。
〇菊池副知事 保険税水準を統一することで、過渡的に医療費水準が低い市町村の納付金がふえることになりますが、人口減少等により市町村国保が小規模化する中にあって、統一により給付金や保険税率の安定化の懸念を払拭することは、国保財政を安定的に運用していくため重要なことであると認識しております。
 このため、市町村と合意の上で、保険税水準の統一に向けた議論を進めることとしたものでありまして、統一により医療費水準の低い市町村の納付金増加などの影響について、第2期岩手県国民健康保険運営方針の中で検証、協議を行うこととしております。
〇高田一郎委員 国が5月にガイドラインを示しました。その中には、市町村ごとの医療費水準や医療提供体制に差があることを留意しつつ、将来的に保険料の水準の統一を目指すと述べております。今々やりなさいということではなくて、将来的な課題として取り決めなさいと。
 国保の構造的な問題を解決しないまま、岩手県が今議論している第2期岩手県国民健康保険運営方針素案を先に進めてしまうと、さらに矛盾が拡大するのではないかと思います。今は、そういうことをやめて、国保の引き下げに、そして協会けんぽと比べても2倍の開きがあるこの格差を是正していく。ここに全力を挙げることが県の役割ではないかと私は思いますが、この点についてはいかがですか。
〇菊池副知事 先ほど知事から御答弁したとおり、国民健康保険制度は、構造的に、被保険者の年齢構成が高く医療費水準が高いことに加え、年金生活者や無所得世帯の割合が高く所得水準の低いことが、保険税負担が被用者保険よりも重くなっている原因であると認識しております。
 今般の国保制度改革においては、国の財政支援の拡充により財政基盤の強化が図られ、保険税負担の伸びの抑制が図られているものの、必ずしもこうした構造的な課題の解決に結びついていないとも受けとめております。
 県としては、国民健康保険制度には国民皆保険を支える重要な役割があることから、国の財政責任のもと、安定的な財政基盤を確立することが不可欠であると考えており、将来にわたって持続可能な制度となるよう、他の都道府県と連携しながら、国に対し、さらなる財政措置を求めていく考えであります。
〇高田一郎委員 岩手県の場合は、お話がありましたように、第2期岩手県国民健康保険運営方針期間の中で影響及び課題を協議するということでありますので、慎重な対応をお願いしたいと思います。
 次に、障がい者の就労継続支援事業についてお聞きします。
 障がい者の就労継続支援事業所では、コロナ禍によって厳しい経営を強いられていますが、県はどうこの実態を把握されているでしょうか。また、売り上げ減少の影響があった事業所に対して、新型コロナウイルス感染症対策となる生産活動活性化支援事業というものがありますが、この事業の県内での実績についても示してください。
〇菊池副知事 障がい者の就労継続支援事業所についてでございますが、岩手県社会福祉協議会が実施した本年8月における新型コロナウイルス感染症の影響調査によると、回答があった75事業所のうち6割弱が、前年同月比で商品販売や役務、請負業務の売り上げ等が減少となっており、受注の減少やイベントの中止による販売機会の減少等に影響が出ているものと認識しております。
 生産活動の再起に向けて必要な費用を助成する生産活動活性化支援事業については、国への報告期限であった7月中旬時点で、本事業の助成要件である生産活動収入の前年同月比50%以上減少などに該当するかの見きわめが困難だったことから、事業の活用を要望した事業所は4事業所にとどまっている状況にございます。
〇高田一郎委員 県内に就労継続支援事業所は約二百二、三十あって、そのうち活用されたのはわずか4事業所です。これは、ほとんどの就労継続支援事業所に新型コロナウイルス感染症対策の支援が行き届いていないということであり、これが実態であります。今、就労継続支援事業所は、報酬見直しにより大変な経営危機に来ております。今、新型コロナウイルス感染症で利用者がどんどん減っているという状況のもと、さらなる支援を県が行うべきではないかと思いますが、県の考え方を示してください。
〇菊池副知事 就労継続支援事業所への支援についてでありますが、県内の事業所からは、販売機会の拡大や受託作業の情報提供などのほか、生産活動活性化支援事業について、感染拡大の影響を踏まえた中長期的な事業継続や、生産活動収入の増加に向け創意工夫し努力している事業者を対象とするなど、拡充を求める要望が出されているところであります。
 県としては、今後、より一層、官公需の促進や農福連携によるマッチング支援などに取り組み、請負業務の確保や販路の拡大に向け支援を行っていくとともに、就労継続支援事業所の状況把握に努め、国に対して、生産活動活性化支援事業の継続実施や助成要件の緩和などを求めていく考えであります。
〇高田一郎委員 終わります。(拍手)
〇菅野ひろのり委員長 質問者席の消毒のため、しばらくお待ちください。
 次に、小西和子委員。
   〔小西和子委員質問者席に着く〕(拍手)
〇小西和子委員 社民党の小西和子でございます。
 2019年度は、いわて県民計画(2019~2028)の初年度でした。県民の幸福度の向上をうたった計画です。先ごろ発表された民間の調査によれば、幸福度ランキングで46位から24位に、SDGsへの取り組みの評価が高いランキングでは3位に、愛着度ランキングでは36位から4位に、いずれも岩手県は急上昇と評価されています。このことについて、知事はどのように受けとめているのか伺います。
〇達増知事 委員御紹介の都道府県別ランキングについては、ブランド総合研究所が全国を対象に行ったアンケート調査結果であり、研究所の分析によると、幸福度については、本県が前年からの伸びが最も大きく、その一因として、新型コロナウイルス感染症の感染者数が少ないことが挙げられています。
 また、愛着度については、感染者ゼロを長く維持していたことが全国的に注目されたこと、真面目、素直、人柄がよいなどの長所をメディアで指摘され、県民が長所を再認識したことなどが要因として挙げられています。
 これらの要因の背景には、県民や岩手県に出入りされる方々が、三つの密を避け、マスクの着用や丁寧な手洗いを励行するなど、基本的な感染対策を行ってくださっていることや、飲食店等の事業者が感染防止対策の徹底に努めておられることなどにより感染者数が少ないという状況があり、これがまた県民の意識に反映されているものと考えております。改めて、県民の皆さん、また岩手県に出入りされる皆さんの感染対策の努力に感謝を申し上げたいと思います。
〇小西和子委員 次に、岩手県民の幸福度向上のための県の組織体制等について伺います。
 岩手県は、震災前、約10年間にわたって、人件費の抑制のため、知事部局の職員数は2003年度の5、013人から1、064人縮減して、2011年度には3、949人まで減らしました。日常業務だけでも厳しい働き方になっていました。そこに東日本大震災津波が襲いかかってきましたから、県職員は身を粉にして働いても、人員不足で激務が続きました。欠員数が100人以上の年が続いたこともあり、県職員の過労が問題視されました。
 2020年2月の欠員数は64人となりましたが、県民の幸福度を向上させるためにも人員不足は依然として大きな課題です。この間の職員数の確保策といわて県民計画(2019~2028)実現のために、2019年度はどのような人員確保策を講じてきたのか知事に伺います。
〇達増知事 県では、東日本大震災津波の発災以降、復興やふるさと振興などの県政課題に対応するため、新規採用職員を大幅にふやすとともに、応援職員を受け入れるなど人員確保に取り組んだところであります。
 令和元年度においても、通常の採用に加え、特別募集の実施、任期付職員の採用などの必要な人員確保策に取り組んだ結果、令和2年度当初の現員数は4、409人となったところであります。これにより令和元年度当初81人であった欠員は35人減少して令和2年度当初で46人となり、ピーク時である平成27年4月当初の145人から比較して、一定程度の縮小が図られたところであります。
 今後におきましても、いわて県民計画(2019~2028)の実現に向けて必要な職員体制の確保、充実に努めていく必要がありますことから、引き続き人員確保の取り組みを継続してまいります。
〇小西和子委員 資格や免許を有する者を対象とした選考採用の実施、民間等経験者のための採用枠の設定、インターンシップや大学訪問等を通じた採用試験受験者の確保策の強化などにより取り組みを進めることで、専門職種の人材を確保するとのことでありましたが、いかがでしょうか。また、専門職種における正規職員の育児休業代替職員配置を見据えて採用計画を検討するとのことでありましたが、いかがでしょうか。
〇白水総務部長 医師、獣医師の通年募集や有資格者を対象とした選考採用などの取り組みによりまして、令和2年4月には専門職種68名を採用したところでございますが、保健師や栄養士などで採用予定数を充足した一方、獣医師、薬剤師などの職種につきましては採用予定数を満たしておらず、他の地方公共団体や民間企業等との競合により人員確保が困難な状況となっております。
 こうした状況に対応するため、受験者確保の取り組みを一層強化していくなど、多様な方策により、引き続き専門職種の人員確保に努めてまいります。
 また、専門職種のうち総合土木職や獣医師など採用予定数を確保することが困難な職種は、民間等経験者採用も含め早急な欠員解消に取り組んでいくこととし、おおむね採用予定数の充足が見込まれる専門職種につきまして、正規職員の育児休業代替職員配置を進めていきたいと考えております。
 令和3年度に向けた採用計画におきましては、ある程度採用数の確保が見込まれる心理、農学、栄養士などについて、育児休業代替職員の配置も見据えて採用予定数をふやしたところであり、今後、他の専門職種においても、人員の確保状況や職員の育児休業の取得状況等を見ながら配置拡大に努めてまいります。
〇小西和子委員 超過勤務の上限規制に対応した職場環境整備については、業務の見直しや超過勤務の事前命令、事後確認の確実な実施などについて周知徹底を図るほか、超過勤務が多い所属に対するヒアリングをよりきめ細かに行い、弾力的な義務分担の見直しなどの推進を図ることとしておりましたが、いかがでしょうか。
〇白水総務部長 超過勤務の縮減は、職員の健康保持や仕事と生活の両立の観点から重要であり、今年度におきましても、所属長に対し、業務の見直しや弾力的な業務推進体制の確保などについて周知徹底を図っておりますほか、超過勤務が多い所属に対するヒアリングをきめ細かに行い、適切なマネジメントに取り組んでいるところでございます。
 また、新型コロナウイルス感染症対応業務が増加している状況を受け、業務継続計画に基づき業務の優先度を精査し、全庁挙げた業務支援体制を構築することにより、業務量の平準化にも努めているところでございます。
 今後におきましても、必要な人員の確保を含め、超過勤務の一層の縮減に取り組み、職員が意欲を持って業務に当たることができる職場環境の整備に努めてまいります。
〇小西和子委員 会計年度任用職員制度によりフルタイムの臨時的任用職員からパートタイムにかわったことで、正規職員の業務量がふえています。どのようにして県職員の幸福度向上を図るのか、知事に伺います。
〇達増知事 会計年度任用職員制度の導入に当たっては、育児休業者の代替など業務上必要な場合にフルタイムとしているほか、新型コロナウイルス感染症対策として保健師や看護師を任用するなど、新たに生じた業務への対応も行っています。
 また、公務の運営は任期の定めのない常勤職員を中心として行うという原則から、先ほど答弁したような人員確保策を講じ、職員の増員を進めるとともに、業務や事務分担の見直しなどを行い、職員の超過勤務の一層の縮減に取り組んでおります。
 こうした取り組みを通じ、必要な人員の確保や職員の業務負担の解消を図るとともに、働き方改革の取り組みも推進することにより、職員が明るく、生き生きと働くことができる職場環境づくりを進め、県職員の意欲と満足度の向上を図ってまいります。
〇小西和子委員 マンパワーなくして幸福度の向上はあり得ませんので、どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、子供の幸福度向上について伺います。
 厚生労働省の緊急調査では、1月から4月に児童相談所が虐待として対応した件数は6万6、789件に上り、2019年度同期比で12%増加しています。外出自粛による家庭内のストレスが子供に向かっているケースも報告されており、親などからの体罰禁止が明記された改正児童虐待防止法が4月から施行になったことを踏まえ、児童相談所の体制強化も含めて実効ある取り組みが急がれます。
 虐待について2019年度の速報値は1、427件でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響が色濃くあらわれた1月から8月までに児童相談所が対応した件数を伺います。また、児童相談所だけではなく、各市町村や警察で対応した件数を含め、全体の対応件数を伺います。
〇菊池副知事 児童虐待の状況についてでありますが、本年1月から8月までの児童相談所における児童虐待対応件数は、速報値で980件となっております。
 また、同様に、市町村において虐待相談を受け付けた件数は、速報値で712件、警察において対応した件数は510件となっております。
 警察で対応した件数の大部分は児童相談所の対応件数と重複することから、児童相談所と市町村で対応した件数の合計で比較いたしますと、平成30年度から令和元年度の増加率は12.1%であるのに対し、本年は昨年同期比で7.5%の増となっております。
〇小西和子委員 新型コロナウイルス感染症の感染拡大がもたらした子供たちへのストレスははかり知れません。岩手県として、心のケアを含めた子供たちの実態をどのように把握しようと考えているのか、具体的にお示しください。
〇菊池副知事 子供の実態把握についてでありますが、委員御指摘のとおり、外出自粛等に伴う家庭内のストレス増加などにより子供たちへの影響が心配されるため、本年4月には、国の子どもの見守り強化アクションプランにおいて、児童相談所や広域振興局の職員も参画している各市町村の要保護児童対策地域協議会が中心となって、支援対象となっている子供たちを見守る体制を強化することが示されました。
 このプランでは、地域のさまざまな機関や団体が連携し、電話や訪問により、支援対象となっている子供の状況を把握し、同協議会に情報を集約して対応することが求められており、本県においても、プランに基づき、各市町村が主体となって子供たちの状況把握を進めてきているところでございます。
 加えて、現在、支援対象となっていない子供たちについても、保育所や学校などにおいて、ふだんとは違った様子が見られるなどの情報を把握することにより、支援を必要とする子供たちの早期発見と早期対応に努めていることから、県といたしましても、同協議会への参画や関係機関との連携を通じて子供たちの現状を把握し、必要な支援につなげていく考えでございます。
〇小西和子委員 実効ある取り組みを強化するためにも、国連子どもの権利条約をベースに、子供の意見表明権や参加する権利を明記した岩手県子供の権利条例を今度こそ制定し、取り組みを推進すべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 国連児童基金―ユニセフの先進国及び新興国38カ国に住む子どもの幸福度調査によると、日本の子供は、生活満足度の低さ、自殺率の高さから、精神的な幸福度が37位と最低レベルでした。偏差値偏重による受験競争の過熱や学校のいじめ、家庭内の不和などを理由に幸福を感じていない実態があると言われています。
 岩手県では、不登校児童生徒及び特別支援学級や学校に在籍している子供たちがふえています。特に、公立小学校の不登校児童の人数が10年前の倍にふえています。不登校児童生徒の増加の要因をどのように分析しているのでしょうか。
 学校現場では、特別な支援を必要とする子供たちへの対応を行うための特別支援員やカウンセラーの配置を望んでいます。特に、小学校へのカウンセラーの全校配置は喫緊の課題です。
 不登校の児童や生徒をなくし、子供たちが精神的な幸福を感じられるような取り組みについて、知事の見解を伺います。
〇達増知事 国連子どもの権利条約に係る取り組みについてでありますが、子どもの権利条約は、子供の人権の尊重、保護の促進を目指し、子供の権利があらゆる場で実現されることを求めたものであり、子供に自由な意見の表明を保障するなど、子供の生きる権利や育つ権利が定められているものと認識しております。
 本県では、県民が安心して子供を産み育てることができる環境の整備を図り、一人一人の子供を健やかに育むことができる社会の実現に寄与することを目的として、いわての子どもを健やかに育む条例を平成27年4月から施行しているところであります。
 この条例は、本県を取り巻くさまざまな状況、課題等を総合的に勘案し、子供と子育てを支援することを目的として制定したものであり、基本理念として、子供の支援に当たっては、子どもの権利を尊重し、その最善の利益を考慮することを盛り込んでいます。
 また、この条例に基づいて本年7月に策定したいわて子どもプラン(2020~2024)では、児童虐待の防止、保護を要する子供の養育環境や生きる力を育むための教育環境の整備など、子供の健やかな成長を支援する取り組みを総合的に盛り込んでいるところであり、この計画に基づいて、子供の権利を守り向上させる施策を着実に推進していく考えであります。
 不登校児童生徒についてでありますが、小学校の不登校児童は、近年、全国的にも増加しており、その要因は、本人や家庭に起因するもの、学校に起因するもの、また、社会問題との関連によるもの等、一人一人多様な要因が存在しているものと承知しております。
 教育は、子供たちの人間関係づくりに大きく寄与する分野であり、本県では、小中学校、義務教育学校において、児童生徒の主体的な取り組みの中で居場所づくりを目指した魅力ある学校づくりに、そして、県立高校においては、地域と連携した学習活動の充実を図った高校の魅力化促進事業等に取り組み、児童生徒の自己有用感を育む中で、不登校の未然防止に取り組んでいると承知しております。
 スクールカウンセラーについては、県内全ての学校へ派遣できる体制を整備し、不登校児童生徒をふやさないための教育相談体制の充実にも努めていると承知しております。
 今後も、教育委員会を中心に、学校が魅力ある場所となるような取り組みの推進と子供たちが心身ともに健康で、学校に行くことが楽しいと思える環境づくりの推進が図られるよう努めるべきと考えます。
〇小西和子委員 平成26年12月定例会で知事は、国連子どもの権利条約の趣旨を踏まえて、子供の権利を尊重することを基本とした条例制定を予定していると答弁しています。マスコミも大々的に報道しましたが、でき上がった条例は、国連子どもの権利条約をベースにしたものではありませんでした。
 国連子どもの権利委員会からは、日本政府に対して、競争的な学校環境が就学年齢層の子供のいじめ、精神疾患、不登校、中途退学及び自殺を助長している可能性があるとの勧告も出されています。
 中学校の不登校生徒もふえ続け、1、000人を超えています。さらに、その何倍にも当たる児童、生徒が、別室登校や保健室登校を行っています。そのような子供のいる学校は、およそ7割にも上ります。19歳以下の自殺者は、10年間で60人を数えます。国連子どもの権利委員会は、新型コロナウイルス感染症に関する声明も出しております。
 今こそ子供の幸福度の向上のため、岩手県子供の権利条例を制定すべきと考えますが、もう一度、知事にお伺いいたします。
〇達増知事 先ほど、いわて子どもプラン(2020~2024)に基づきながら、子供の健やかな成長を支援する取り組みを総合的に進めていくということを述べたところでございますが、本県の子どもを健やかに育む条例では、子どもの権利条約が定めている個々の子供の権利については個別に規定しておりませんが、その基本理念の部分で、条約が求める子供の権利を尊重し、その最善の利益を考慮することを掲げております。
 子供の権利の尊重や権利擁護については、その重要性を十分に認識しつつ、県の最上位の法規である条例に定めることに鑑み、子供の権利のみならず、子供をめぐるあらゆる課題について、県の基本的な考え方を示すため現在の条例を策定したところであります。
〇小西和子委員 国連子どもの権利条約をベースにした条例が一連に示されておりますが、それに岩手県の条例はカウントされておりません。もう少し前向きに、意見表明権とか参加する権利を含めた条例に変えていくよう考えていただきたいと思います。
 次に、ジェンダー平等実現のための取り組みについて伺います。
 ジェンダー平等は日本の優先課題です。岩手県は、社会全体の約7割が、男性のほうが優遇されていると回答する調査結果があります。ジェンダー平等の一つの指標として、学校における男女混合名簿の使用率が挙げられ、2022年度までに全ての学校で100%使用を目標に掲げています。
 ジェンダー平等実現のための取り組み状況に対する知事の見解を伺います。
〇達増知事 県では、いわて男女共同参画プランの基本目標に、男女がお互いに尊重し合い、共に参画する社会の実現を掲げ、女性の活躍支援、男女共同参画社会の実現に向けた基盤の整備、女性に対する暴力の根絶などを施策の柱に位置づけ、取り組みを進めてまいりました。
 女性の活躍支援については、いわてで働こう推進協議会を核として、仕事と生活の両立に向けた環境整備につながる働き方改革の取り組みを推進しているほか、官民一体となって設置した、いわて女性の活躍促進連携会議の活動を通じ、女性が活躍できる環境の整備などに取り組んでいます。
 男女共同参画社会の実現に向けた環境づくりについては、男女共同参画センターを中心に、フェスティバルの開催などを通じた意識啓発や学習機会の提供を行っているほか、国や市町村、関係団体と連携して、女性に対する暴力防止に向けた運動や相談体制の整備、職場でのセクシュアルハラスメント対策に取り組んでいるところであります。
 このような取り組みにより、いわて女性活躍企業等認定制度の認定企業数が伸び、女性の採用や登用に意欲を持つ企業が増加してきたほか、公立学校における男女混合名簿の使用率が高等学校においては100%となるなど、その成果があらわれてきているところであります。
 現在、令和3年度を初年度とする次期いわて男女共同参画プランの策定を進めているところでありますが、引き続き、性別にかかわりなく、その個性と能力を発揮できる男女共同参画社会の実現に向け取り組んでまいります。
〇小西和子委員 SDGs目標1の貧困をなくそうと、SDGs目標5のジェンダー平等を実現しようは、同時進行で解決しなければならない課題です。岩手県子どもの生活実態調査の結果、特にひとり親家庭において、就労状況が不安定であるため収入が低い家庭が多く、子供の将来の進路にも影響を与える可能性があるなど、厳しい生活実態が浮き彫りになりました。さらには、ひとり親家庭などが公的サービスを有効活用していないことが明らかになりました。このコロナ禍で、雇用形態の変更や減収があり、精神面への影響も深刻です。
 県は、コロナ禍の影響が深刻なひとり親家庭の現在の実態を調査する予定はあるのか伺います。
〇菊池副知事 ひとり親家庭の実態把握についてでありますが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、学校の臨時休業、事業所等の休業等により保護者の就労環境が変化し、一時的に就労収入が減少することなどが想定されているところです。
 各広域振興局保健福祉環境センターでは、8月の児童扶養手当の現況確認にあわせて、母子父子自立支援員等が市町村に出向き出張相談会を行ったところであり、この相談会では、全体で41件の相談がありましたが、そのうち新型コロナウイルス感染症の拡大による影響に関する相談は、転職に伴う資格取得や修学資金の貸し付けに関する相談の2件であったと聞いております。
 また、各市町村や関係団体からは、新型コロナウイルス感染症に関連して、ひとり親家庭からは、残業時間が減少した、収入が減少したので転職を考えているなどの声が寄せられているところでありますが、現時点では、相談件数が急増している状況にはないと聞いています。
 こうしたことから、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う影響が懸念されるひとり親家庭の状況について、当面は、さまざまな機会を捉えて実態の把握に努め、必要な取り組みにつなげていく考えでございます。
〇小西和子委員 もりおか女性センターでは、今、ひとり親家庭の子供の親の声を公開しておりますので、ぜひ読んでみてください。
 課題であるひとり親家庭の相談支援で気になるのは、相談できる人がいないという家庭がかなりの割合を占めていることです。県は、この課題をどう解決していくのか、道筋をお示しください。
〇菊池副知事 岩手県ひとり親家庭の相談支援についてでありますが、子どもの生活実態調査では、ひとり親家庭において、公的支援施策の周知が十分に行き届いていないこと、公的相談窓口が十分に活用されていないことなどが明らかとなったところでございます。
 このため、令和2年度から実施するひとり親家庭等総合相談支援事業におきまして、全県レベルの関係団体ネットワークを構築の上、ひとり親家庭が抱える課題の共有と支援のためのガイドラインを策定するとともに、ひとり親家庭等応援サポートセンターを設置し、ひとり親家庭等の支援策をまとめたガイドブックの作成、困難事例に対する直接的な支援、地域で相談に対応する民生、児童委員の対応力を高める研修や専門的な助言、ひとり親家庭を対象とした家計管理講習会の開催などに取り組んでいるところでございます。
 また、9圏域ごとに、ひとり親家庭等の支援に取り組む市町村や社会福祉協議会、ハローワーク、特定非営利活動法人などで構成するネットワークを構築し、訪問相談や継続的な見守りなどを行う仕組みと専門機関が連携する体制を整備していきます。
 県としては、こうしたひとり親家庭等を包括的に支援する体制を順次構築し、きめ細かく支援できる体制を整備していく考えでございます。
〇小西和子委員 ひとり親家庭で保護者が新型コロナウイルス感染症に感染した場合、子供の面倒を見てくれる人がいない家庭が、もりおか女性センターの調査によると15%あります。現状では、児童相談所の一時保護で対応するとのことですが、陸前高田市のように、子供を預かる施設、居場所をどの自治体でも整備できたらよいと考えますが、いかがでしょうか。
〇菊池副知事 子供を預かる居場所の整備についてでありますが、県では、新型コロナウイルス感染症に感染して保護者が入院することなどにより、子供の養育者が不在となった場合に備え、感染防止に配慮した専用の施設を用意して、児童相談所が一時保護できる体制を敷いているところでございます。
 具体的な対応としては、保健所からの連絡を受け、児童相談所の職員が子供を迎えに行って施設へ移送し、施設では、保健師や児童指導員などの専門職員が交代で24時間体制を組み、保護者が退院するまでの間、子供たちの生活や学習の支援、健康観察などを行うこととしております。
 委員御指摘の陸前高田市の取組みは、市が運営している震災ボランティア等が滞在するための簡易宿泊施設を活用し、ほかに養育できる親類等のいない子供などを対象とした一時預かり事業を行っているものと聞いております。
 住民に身近な市町村におきまして、それぞれの実態に即し、工夫してこうした取り組みを進めることは、地域住民の安心と利便性の向上にもつながることから、各市町村に対し陸前高田市の取り組みを情報提供したところであり、今後も市町村の意向に応じ、必要な助言等を行っていく考えでございます。
〇小西和子委員 では、知事に伺います。新型コロナウイルス感染症と共生しながら、ぜひ県民の幸福度の向上のための県政を実現していただきたいのですが、知事の決意を伺って、終わります。
〇達増知事 新型コロナウイルス感染症対策は、被災者一人一人に寄り添いながら復興を進めてきた経験に基づいて、お互いに幸福を守り育てることを基本目標に掲げるいわて県民計画(2019~2028)と軌を一にするものであり、新型コロナウイルス感染症対策に向き合うことが、いわて県民計画(2019~2028)の目標に真っすぐ向かっていくことになると考えます。
 今後におきましても、新型コロナウイルス感染症の対策をしっかり行いながら、幸福の実感に関連する10の政策分野の取り組みを着実に推進することにより、県民一人一人の幸福度を高め、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてを実現してまいります。
〇小西和子委員 終わります。ありがとうございました。(拍手)
〇菅野ひろのり委員長 お諮りいたします。時間も午後5時を過ぎましたので、続く総括質疑は明日行うこととしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇菅野ひろのり委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 明日以降は、毎日午前10時から開会いたしますので、よろしくお願いいたします。
 本日はこれをもって散会いたします。
午後5時11分 散 会

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