令和2年2月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇7番(高橋こうすけ君) 自由民主党の高橋こうすけでございます。
 さきの改選により盛岡選挙区において当選させていただき、本日初めて県議会での一般質問の機会をいただきました。私にこの機会を与えてくださいました県民の皆様、そして先輩、同僚議員の皆様に心から感謝申し上げます。
 それでは、通告に従い質問してまいりますので、誠意ある御答弁をいただきますようお願いします。
 まず、人口減少問題についてお聞きします。
 本県の人口減少は、東京圏など県外への流出拡大が加速している影響や、若年女性の人口減少と出生率の低迷による出生数の減少、そして高齢化による死亡数の増加により1997年に減少に転じ、以降は減少数が拡大傾向にあります。
 人口減少対策には、次代を担う子供の数の確保が重要であると考えますが、本県の合計特殊出生率は低迷を続けています。これは、未婚率の上昇、晩婚化が進んでいることが大きな要因であると思いますが、その背景には、子育て世代の所得低下、非正規労働者の増加、子育てと仕事の両立困難などがあり、まさに子育て環境の確保が必要であります。
 私自身も、大学からUターンで盛岡に帰ってこようと決めて就職活動をしたときに本当に大変な思いをしました。当時は就職氷河期と言われ、地方での就職は情報も少なく、非常に苦労した経験があります。私たち若い世代からもしっかりと発信をしていかなければいけない、次の世代につなげていかなければいけない、そんな思いからこの場に立たせていただいています。
 この人口減少問題は、社会情勢の変化を的確に捉えながら効果的かつ継続的に取り組んでいかなければならず、地方から元気になっていかなければいけない、そういった大きな課題であります。
 そこで知事に伺います。本県の人口減少の課題に対して、これまでどのような取り組みをしてきているのでしょうか。また、どのような視点でふるさと振興総合戦略の見直しをして今後の取り組みを進めていくのかお示し願います。
 次に、東日本大震災津波や台風被害による被災地の支援についてお聞きします。
 東日本大震災津波の発災から間もなく9年を迎えます。三陸沿岸道路などの復興道路や災害公営住宅の整備にほぼめどがついてきたところではありますが、ここ数年、被災地における台風や豪雨被害などの二重の被災が起きています。
 政府は昨年12月、2021年3月末までとなっている復興庁の設置期限を10年間延長することなどを盛り込んだ「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針を閣議決定しました。被災自治体の首長の方々が数年前から復興・創生期間終了後、復興庁がどうなるのかを心配され、そしてその存続を要望してこられたと聞いています。復興予算を管理する特別会計や、被災自治体を支援する震災復興特別交付税も維持するとのことであります。
 ハード面での復旧、復興から、生活面や精神的な面での被災者支援の充実に取り組んでいく中で、大震災の記憶を風化させることなく教訓を伝え続け、被災者に寄り添った施策を継続していくことが重要です。この政府の決定を受けて、岩手県として風化対策を含め、今後どのように復興に取り組んでいかれるのかをお示しください。
 次に、二重被災についてお伺いします。
 東日本大震災津波により不通となっていたJR山田線は、平成31年3月23日に新たに三陸鉄道リアス線としてスタートを切ったところですが、令和元年10月の台風第19号による災害の影響により甚大な被害を受け、現在でも一部区間でバスの代行輸送が行われています。三陸復興国立公園のみちのく潮風トレイルは、令和元年6月に国内最長のロングトレイルとして全線開通し、ハイカーの数もふえてきたやさきに大きな被害を受けました。
 三陸鉄道リアス線の復旧については、地方負担を実質2.5%に抑え、事業者の負担は生じない特例支援を国がいち早く決定し、ことし3月20日には全線開通の予定と聞いています。
 みちのく潮風トレイルの復旧については、全国で唯一復興の文字がついた国立公園として特例の支援をお願いしているところではありますが、こういった復興途上の地域における台風や豪雨による二重、または、ある地域においては三重の被災に県はどのように取り組んでこられたのか、そして今後どのように取り組んでいかれるのかをお示しください。
 次に、防災体制についてお伺いします。
 自分のまちは自分たちで守るという崇高な精神をお持ちの消防団の皆様には心から敬意を表します。私が小学校2年生のときに自宅が火事で全焼してしまい、その際に消防団の方々に助けてもらったという経験があり、大変感謝しております。
 先日、消防団の方々と懇談する機会がありました。10年前までは台風が東日本や北日本を直撃することはほとんどありませんでしたが、最近では、気候変動の影響によって50年に1度クラスの台風や豪雨被害が毎年どこかを襲い、命にかかわるような想定外のことも多く、警報もよく出され、異次元の防災、減災の対応が求められるようになっているということでした。
 そこでまず、地域防災力に関連し、本県の消防団の装備力の現状について伺います。
 現在、本県には約2万1、000人の消防団員の方がいます。水害の際には、水防団としても活動が求められます。一方、岩手県と面積がほぼ同じ四国4県には4万6、000人の消防団員がおります。消防団員の数だけ見ても大きな差があります。
 県土の約7割以上が山間部の岩手県において、消防団員の活動は極めて重要であります。以前、宮古市で山火事があった際、1週間自宅に帰ることができなかったと聞きました。消防団の方々に最大限のサポートをすべきであり、その意味において、消防団の装備面での充実も重要であると考えます。
 そこでお聞きします。消防庁からは消防団の装備に関する基準が示されていますが、これに照らし、本県の消防団の装備はどのような現状にあり、どのような課題認識をお持ちなのでしょうか。課題解消に向けた具体的な対応を含めてお示し願います。
 次に、消防団員減少に対する取り組みについてお伺いします。
 以前は、火消しとして活躍し、その心意気を受け継ぐ団員の方々が近所にもたくさんおりました。しかし現在は、高齢化、少子化に伴い、消防団員のなり手がいないという問題が顕著になってきています。県内では親子3代同時の消防団員家族という事例の紹介もありましたが、これは極めてまれなものであり、常備消防の機能が充実してきているとはいえ、本県においては、単独の高齢者世帯の増加などもあり、消防団による地域活動に頼らざるを得ない現状に変わりはありません。
 そこでお聞きします。消防団員の減少に対してどのように対策に取り組んでいるのかをお示しください。
 また、例えば、盛岡市は消防団員が約1、150人です。この人数で、常備消防の方とで本県の人口の4分の1の約30万人をサポートしています。今後は、単体市町村で地域を守っていく体制も難しくなると思われますが、こうした状況を踏まえ、連携や支援体制の確保をどのようにしていくのかお考えをお示しください。
 災害時における民間との連携についてお聞きします。
 首都直下型、南海トラフなどの巨大災害について、岩手県には関係ないということでは済まされないと考えています。首都が麻痺したら、流通などにも弊害が起きて東日本大震災津波と同じようなことも起こり得るものであり、その影響も想定しなければなりません。
 そこで、防災ボランティアについてお伺いいたします。
 東日本大震災津波やその後発生した災害でも、県内ではボランティアの方々が大きな役割を果たしてきました。学生も含め官民一体となったさらなる連携の強化のため、ボランティアのシミュレーションなどを日ごろから考えていかなければいけないと思いますが、いかがお考えでしょうか。
 また、民間企業との連携について、地元の企業などはそれぞれ何ができるのか、どういう対応をとるのか、役所だけでは対応できないことを認識し、これらの企業等からの協力など、官民一体となり、いざというときにこれまで以上にスムーズに連携ができるよう、県が中心となって対応する体制の確保が重要と考えますが、現状はどのような状況なのでしょうか。また、連携の一層の充実強化に向けてどのようなお考えなのでしょうか。
 次に、医師確保対策についてお聞きします。
 昨年2月に全国の医師遍在指標、医師多数区域、医師少数区域の状況が厚生労働省から発表され、医師の都道府県別の偏在指標では、本県が最下位の169.3であり、トップの東京都の329.0とはほぼ2倍の開きがあります。そして県内の九つの二次医療圏別では、盛岡医療圏を除く8医療圏が医師少数圏域であり、一番指標が小さい宮古医療圏の86.8と最も指標が大きい盛岡医療圏の267.6では約3倍の開きがあり、県内においても医師不足の地域格差が大きく、深刻な状況です。
 医療法の一部改正により、各県では医療計画の中に医師の確保に関する事項を定めた医師確保計画を策定することとされておりますが、こうした中、知事は去る1月31日に、医師不足で同様の課題を抱える青森県、福島県、新潟県など6県の知事が発起人となって地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会を結成し、医師不足に悩む各県が連携し、情報発信や国への政策提言などに取り組むと表明しました。
 そこで知事に伺います。共通の課題を持った各県知事が国への働きかけや政策提言をする意義をどのように考え、その効果をどのように期待しているのでしょうか。
 また、県では、医師不足対策に関しては、奨学金制度の充実や即戦力となる医師の招聘などに取り組んでこられたところですが、今後、重点的に取り組む県独自の施策をどのように考えているのでしょうか、お示しください。
 さらに、医師以外の医療従事者全般の確保対策についてお聞きします。
 岩手医科大学における歯科医師養成のほか、岩手県立大学や岩手医科大学などにおける看護師の養成など、医療従事者の養成施設としては一定程度整っている状況にあると思いますが、県内の医療機関における医師を除くこれら医療従事者全般の充足状況はどのような現状にあるのでしょうか。
 また、その現状において、課題をどのように捉え、確保に向けた今後の取り組みをどのようにしようとされているのでしょうか、お聞かせ願います。
 次に、公立、公的病院の再編統合についてお聞きします。
 昨年9月に厚生労働省から、診療実績などから再編統合の議論が必要な公立、公的病院のリストの発表があり、その後の県議会でもこの問題が取り上げられておりますが、改めてこの問題に対する県の考え方を確認します。
 岩手県の県立病院を中心とした医療供給体制は、東日本大震災津波の際も非常時の医療供給システムとして一定の機能を発揮したと、一般社団法人日本病院会からも岩手システムとして高く評価されました。人手、マンパワー、予算も足りない中、公立病院が集まり、いかに効率よく県民の命を守るかを話し合い、それぞれの病院が連携して頑張っておられます。
   〔副議長退席、議長着席〕
 そこで知事に伺います。四国4県分の広さを誇るこの岩手で、必死に県民の方々の医療のために頑張っている県立病院を初めとする公立、公的病院の地域事情の特性や違いをどのように認識し、県はどのように対応しようと考えているのかお伺いします。
 次に、岩手医科大学移転後の救急体制についてお聞きします。
 昨年9月に、周到な計画と準備に基づいて、岩手医科大学が盛岡市から矢巾町に移転しました。車で通院する方を中心に、立地上便利な場所への移転となったと思いますが、一方で、盛岡市の県立中央病院の救急利用者が増加し、2019年から2020年の年末年始では1日平均103人で、前年度に比べ2割もふえたということであります。これはある程度想定された動向と思いますが、人手が限られている医療現場の負担が増し、救急車の受け入れや高度医療の機能確保に支障が出始めているとのことであり、今後さらにこのような状況が続き負担がふえれば、県立中央病院が県立病院のセンター病院としての十分な機能を果たせなくなるのではないかと心配であります。
 そこでお聞きします。県はこの状況をどのように捉え、課題解決に向けてどのような方策をとっていくのでしょうか。
 次に、介護分野における人材確保についてお聞きします。
 介護分野における人材不足については、全国的な問題であり、これまでも介護職の処遇改善など、制度として手当てがされてきているところです。しかし、経済産業省の研究会の報告によれば、全国の介護施設の6割以上が人手不足の状態にあると言われ、また、2015年では4万人の不足であった介護職は、2035年には約79万人の不足に拡大するという指摘もあります。
 こうした中、国では、外国人の活用として、ことしの夏までにベトナムから1万人の介護人材について技能実習制度を通じて日本で働けるようにするという政府間の合意があり、人材確保において期待されているところであります。
 一方で、人手不足により労働条件が厳しさを増す介護の現場にあっては、働きやすい職場づくりや研修制度の確立を初め、処遇改善の面での取り組みが必要ではないでしょうか。離職率の低い施設などにおいては、さまざまな模範的な取り組みをしているところもあるのではないかと思います。
 そこでお伺いします。県内の介護職の充足状況はどのようになっているのでしょうか。外国人労働者の介護分野への就業状況とあわせてお示しください。
 また、介護職員の処遇改善面で模範的な取り組みを実施している事例の普及について、どのようにお考えなのかお示しください。
 次に、起業支援推進事業についてお聞きします。
 厚生労働省の雇用保険事業年報によると、本県は開業率が全国下位であり、2018年度の本県開業率は3.2%、全国で40番目となっております。地元の若者の県外流出を防ぐとともに、交流人口の定着も促し、地域を牽引する新たな力を育てるために、若者や女性などの起業を支援する拠点を2020年度に新たに設けるとのことであり、とてもいい取り組みと考えているところであります。このような新たな取り組みを促進するには、起業の際、立ち上げをやりやすいと思ってもらえるようなものにするなど、起業するためのハードルを下げることが必要と考えます。
 そこで伺います。立ち上げ当初の数年間は税制面や資金面などで支援するなど、さまざまな起業のための優遇策が必要と考えますが、どのような取り組みを考えているのでしょうか。
 また、この起業支援拠点はどの程度の規模で、具体的にどのような目標を掲げて展開していくのかお示しください。
 次に、ICT教育の推進についてお聞きします。
 今では当たり前のようにスマートフォンやパソコンなどを1人1台持っているというくらい、一般社会のデジタル化が大きく進む中、学校現場は取り残されている現状があり、学校現場のICT環境を充実させる必要があります。
 ICT教育には次のようなメリットがあり、次世代の教育現場の柱と言われています。
 まず一つ目は、子供の学びへの興味、関心を引き、主体的に学ぶ力を育み、学習内容の理解を深めることであります。そして二つ目は、一人一人がPC端末を活用することで、一斉授業と異なり、それぞれの理解度や関心に応じ、誰ひとり取り残すことのない個別最適化された学びが実現できることであります。
 しかし、課題として、昨年6月に学校教育の情報化の推進に関する法律が成立し、学校教育の情報化が法律で義務づけられ、ICT活用促進を本格化しており、さらに予算面でも、年間1、805億円、標準的な1校当たり400万円から600万円程度の地方財政措置がされていますが、各自治体の整備は進んでいない状況にあるのではないでしょうか。
 そこでまず、学校でのICT環境整備の現状について伺います。
 現在、学校でのICT環境の整備状況は、全国平均では児童生徒5.4人にパソコン1台であり、国の整備計画では―本来は1人1台とのことですが―3人に1台を目指すとされています。本県でも国の整備計画を踏まえ、ICT環境の整備を加速するべきと考えます。
 また、パソコンの利用促進には通信ネットワークなどの利用環境との一体的な整備も必要であり、国の整備計画では全ての教室にWi−Fi環境を整えるとありますが、県立学校を含め、本県の学校現場における現在のパソコンの整備やWi−Fi環境整備はどの程度進んでいるのでしょうか。また、これらの整備状況は、市町村によって差が生じているなど課題はないのでしょうか。
 次に、ICT教育の整備にかかわる自治体の予算措置について伺います。
 ICT教育の整備に向け、国では地方財政措置を推進しており、標準的な1校当たりの財政措置額は、小学校で622万円、中学校で595万円、高等学校では434万円であります。しかしながら、実際の整備状況は進んでおらず、自治体間で大きなばらつきがあります。
 近年、ICT導入においてのコストは非常に安くなってきており、国が求めるスペックの日本製パソコンでは1台約5万円程度と、これまでよりもハードルが下がってきているため、導入しやすい状況となってきていると言えます。学校でのICT教育の環境整備を加速するため、国の地方財政措置を踏まえ、本県でもおくれをとることなく、十分な予算措置を推進しながら対応すべきと考えますが、現状はどうなのでしょうか。
 次に、ICT教育について伺います。
 ICT環境の整備を進めるとともに、その環境整備は、授業などで十分活用される実効性のあるものにする必要があります。来年度からは教科書にQRコードが掲載されるなどICT活用が前提となっていると聞いていますが、本県における授業でのICT活用の現状はどのようになっているのでしょうか。
 また、以前から私は自由民主党の青年局でこの取り組みに参加しており、ICT教育の推進は地方ほど必要なものと考えています。今後の取り組みを岩手県として先進的にどんどん進めていくべきと思いますが、今後の活用推進に向けた具体的な取り組みをどのように考えているのでしょうか。
 また、実効性のあるICT活用の推進のためには、ICT教育への教員の方々の対応力の向上が必須であります。教員の方々の中には、多忙な中、ICT教育への不安を持つ方も多いのではないかと考えますが、このような教員の方々への支援など、ICT教育への対応力の向上に向けどのような取り組みをしているのでしょうか。また、今後、その充実に向けた取り組みをどのように考えているのでしょうか、お示し願います。
 私は、岩手県民として、そこに住む人たちが自信を持ち、誇りを持ち、感動するストーリーを残しながらこの岩手をつくっていく、その姿勢が必要であると考えています。それによって岩手県民が豊かになっていく。さまざまな問題がありますが、世界的に見れば、私たちは豊かで平和な生活ができています。長い歴史や文化を誇り、その伝統が続いています。すばらしい自然も残っています。先人の方々が残してくれたこの岩手をすばらしい形で将来世代にもつなぎ、残していくのは私たちの責任だと考えています。
 このような機会を与えていただいたこと、そして、皆様に支えていただいていることを改めて感謝申し上げ、私の質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋こうすけ議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、人口減少対策についてでありますが、現行の岩手県ふるさと振興総合戦略に掲げた岩手で働く、育てる、暮らすの3本の柱に基づき、自動車、半導体関連産業の集積による雇用の創出、子育て負担の軽減や仕事と育児の両立支援、医療、福祉や文化、教育など豊かなふるさとを支える基盤の強化などに取り組み、各分野において一定の成果があらわれてきています。
 一方で、人口の推移を見ますと、自然増減については、日本全体の傾向と同様に減少傾向が続くとともに、社会増減については、令和元年にマイナス4、370人と3年ぶりに縮小したものの、依然としてその減少数は大きい状況にあります。
 これを踏まえ、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略においては、持続可能な開発目標SDGsやソサエティー5.0の実現などの新たな視点を盛り込むとともに、現行の3本の柱に新たに4本目の柱として岩手とつながるを加え、地方移住の裾野拡大等に向け、関係人口や交流人口の拡大を進めることとしています。
 こうした施策を積極的に展開することにより、若い世代や子供、高齢者まで、あらゆる世代が生きがいを持ち、豊かに暮らす岩手を目指していきたいと考えております。
 次に、復興・創生期間後の復興の取り組みについてでありますが、昨年12月に閣議決定された「復興・創生期間後」における東日本大震災からの復興の基本方針においては、復興庁の設置期間の10年間延長のほか、復興・創生期間後5年以降も、心のケアなどの被災者支援や被災した子供に対する支援等について適切に対応することが記載されるなど、これまで本県が国に働きかけたものが、おおむね盛り込まれたものと考えております。
 被災地においては、このほか、住宅再建支援やまちづくり後における事業者支援など中長期的な課題もあり、復興の取り組みとして一律に期限を適用することなく、引き続き被災地の状況や地元自治体の意見等を十分に踏まえながら、必要な事業及び制度を実施するよう、その財源の確保も含め国に働きかけてまいります。
 また、復興への理解や継続的な支援、参画を促進していくため、東日本大震災津波伝承館での取り組みや復興フォーラムの開催などを通じ、復興の状況や復興支援に対する感謝の気持ちを国内外に伝えていくとともに、沿岸市町村や各地の伝承施設等と連携した東日本大震災津波の事実や教訓の発信に取り組んでまいります。
 今後においても、個人の尊厳を基本価値とし、誰ひとりとして取り残さないという理念のもと、被災者一人一人の復興をなし遂げられるよう、必要な取り組みは最後まで実施してまいります。
 次に、災害からの復旧、復興についてでありますが、東日本大震災津波からの復興に取り組む中で、平成28年台風第10号災害や令和元年台風第19号災害に見舞われました。これら災害からの復旧、復興に当たっては、被災地が二重、三重に被害を受けた地域であることを踏まえ、被災者一人一人に寄り添い、誰ひとり取り残さないとの考えのもと、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生に全力で取り組んでまいりました。
 具体的には、被災者の暮らしの再建に向け、被災者生活再建支援法による支援の対象とならない半壊世帯や床上浸水世帯に対する県単独の補助制度を創設するとともに、なりわいの再生として、県単独の交付金制度を創設し被災事業者への支援を行っているほか、被災市町村に対し人材確保支援や必要な財政支援を行っています。
 また、復興の象徴である三陸鉄道に対しては、3月20日の全線運行再開に向け、災害復旧事業や代行バス運行への補助を行っているほか、みちのく潮風トレイルについては、国や市町村と連携し、応急対応を進めるとともに早期に復旧工事に着手してまいります。
 東日本大震災津波と相次ぐ台風により重ねて被害を受けた地域も、必要な復旧、復興事業を通じて、未来に希望を持ち、幸福度を高めていくことができるよう全力で取り組んでまいります。
 次に、医師確保対策についてでありますが、県では、これまでも医師の確保に努めてきたところでありますが、全国的な医師の不足と地域偏在を根本的に解消するためには、国を挙げて実効性のある施策に取り組む必要があります。
 このため、地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会を設立したところであり、同様の課題に直面する県が、それぞれの取り組みを共有し、統一的な動きとして地方の切実な声を訴えることにより、一層強力に国に働きかけることができると考えています。今月6日には、自由民主党の議員連盟からの求めに応じて、地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会の発起人を代表して、本県の事例も紹介しながら地方の声を訴えたところであります。
 今後も、関係団体とも連携しながら、国に働きかけを行い、都道府県を越えた医師の派遣調整や医学部定員増の恒久化といった実効性のある偏在対策の実現を目指していく考えであります。
 また、県では、奨学金による医師養成と即戦力医師の招聘を医師確保対策の重要な柱としており、医師数の増加を図るとともに、特に医師の少ない沿岸、県北地域への奨学金養成医師の配置を推進し、地域偏在の解消に取り組むこととしています。
 さらに、産科医及び小児科医の確保に向けて、産科等を選択した地域枠養成医師に対し、岩手医科大学の総合周産期母子医療センターでの義務履行を可能とする新たな特例措置を開始するほか、医療局奨学金に産婦人科医養成のための特別貸付枠を設けることとしたところであり、このような施策を現在策定中の医師確保計画に位置づけ、医師の確保と偏在対策を推進していく考えであります。
 次に、公立、公的病院に対する認識と今後の対応についてでありますが、本県においては、山間地が多いことや都市部への交通アクセスが十分でなかったことに加え、民間医療機関が不足している地域が多いという状況もあり、県立病院などの公立、公的医療機関が、救急医療や僻地医療といった採算性の面から民間では提供が困難な医療を担い、地域医療において重要な役割を果たしてきました。
 こうした医療機関が再検証の対象とされたことは、公表された医療機関が機械的に再編統合されるという住民の不安を招きかねず、地域の個別事情も反映されていないものと考えています。
 一方で、本県では、再検証の対象とされた医療機関の大半において、既に病床機能の転換や見直しが進められており、その方向性について、各地域の地域医療構想調整会議において合意を得ている段階であります。
 今後も調整会議において、民間病院も含む個々の医療機関の機能や診療実績も確認しながら、地域の実情に即した協議を行うとともに、全国でも有数の県立病院ネットワークを生かして、医療機関や介護施設等との役割分担と連携を進めることで、効率的で質の高い医療提供体制の構築に取り組んでまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔総務部長八重樫幸治君登壇〕
〇総務部長(八重樫幸治君) まず、地域防災力についてでありますが、消防庁が実施した平成31年4月1日現在の県内消防団の装備品状況調査では、トランシーバー、油圧切断機、AED―自動体外式除細動器などの救助用資機材の装備率が十分でない状況であることから、国では、全国的に配備が進んでいない資機材等の整備を促進するため、平成30年度から消防団設備整備費補助金制度を設け市町村の支援を行っているところであります。
 一方で、現場の消防団からは、消防団の救助用資機材も必要であるが、活動服や防火衣、防寒衣等基本的な装備がまだ十分ではないといった声もあるなど、市町村によっては、基本的な装備品も含め整備が十分でないと認識しています。
 そのため県においては、令和2年度当初予算案に市町村に対する新たな補助事業の予算を計上したところであり、国の補助制度を補完しながら、消防団活動に必要な装備品等の整備と機能強化が進むよう市町村の取り組みを支援してまいります。
 次に、消防団員確保に対する取り組みについてでありますが、地域における防災体制を維持し、地域住民の安全・安心を確保するため、消防団の果たす役割はますます大きくなっています。このため県では、いわて消防団応援の店登録事業の推進や機能別消防団員制度の導入促進、女性消防団員活躍PR事業の推進など、消防団員の確保や女性の加入促進などに取り組んできたところであります。
 県としては、引き続きこれらの取り組みを推進するほか、先ほど申し上げたとおり、令和2年度当初予算案において新たな補助事業を創設し、団員確保対策や活動のスキルアップを図るためのソフト事業も補助対象とするなど、市町村が行う団員確保の取り組みを支援していきたいと考えています。
 また、大規模な災害が発生した場合には、隣接する常備消防が応援する相互応援協定が県内12消防本部で締結されていることや、近隣市町村の消防団が互いに協力するなどの支援実績もあることから、こうした取り組みを紹介しながら、今後も市町村間の連携や支援体制の確保が図られるよう、県としてもさまざまな機会を通じて働きかけを行ってまいります。
 次に、民間企業との連携についてでありますが、災害時に迅速な対応を行うためには、被害状況の情報収集、医療救護、緊急輸送、食料や燃料の確保を初め、さまざまな分野の団体、企業との連携が重要であると認識しており、県では、関係する団体や企業との間で、本年2月1日現在、171団体と175の相互応援協定を締結しています。
 この協定に基づき、昨年10月の台風第19号災害においては、ブルーシート等の物資の調達や県が備蓄していた毛布の避難所への輸送について、協定を締結している団体等の御協力をいただいたところであります。
 また、県が実施している総合防災訓練においても、協定先と連携してドローンによる被害状況調査、応急救護所開設、被災者の広域避難及び重要施設への燃料確保等の実動訓練を実施しています。
 今後においても、平時における訓練や研修等を通じて、関係する企業等との連携をさらに進め、災害発生時における対応力の向上を図っていきます。
   〔保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇保健福祉部長(野原勝君) まず、防災ボランティアについてでありますが、災害時においては、ボランティアが避難所運営や被災家屋の片づけなど被災者支援のさまざまな場面で重要な役割を果たしており、各地域で円滑に活動が実施されるためには、県、市町村それぞれにおいて、発災時にボランティアの受け入れに当たる行政、社会福祉協議会、NPO等の役割分担を明確にする連携体制を平常時から構築しておくことが重要と考えています。
 県では、官民協働による連携組織として、平成26年に、岩手県社会福祉協議会やNPO、市町村、岩手県立大学などで構成する連絡会議を設置するとともに、こうした取り組みが市町村にも拡大するよう、研修会において具体的な事例を紹介するなど支援を行ってきたところであります。
 現在、この連携体制が構築されているのは3市町にとどまっておりまして、県としては、来年度から、市町村への訪問等による個別支援を行い、取り組みの拡大を図ってまいります。
 次に、医師以外の医療従事者の確保対策についてでありますが、医療従事者には多様な職種があり、各医療機関において、さまざまな資格を有する専門職が配置されていますが、県内では、法令上の配置基準を満たしている状況にあります。
 県では、これらのうち特に歯科医師、薬剤師及び看護職員の確保対策を岩手県保健医療計画で定め、取り組みを進めているところでありますが、歯科医師は充足する状況にあり、必要な歯科医療の確保が図られてきていると考えています。
 薬剤師及び看護職員については増加基調にあり、今後も県内定着が拡大していくものと考えていますが、質の高い医療を提供する上で、地域や施設によっては十分に確保できていないケースもあり、今後の高齢化の進展や医療の高度化等にも対応するため、より一層の人材確保が必要と認識しています。
 このため県では、引き続き関係団体等と連携を図りながら、必要な人材の確保、育成に努めていくほか、看護職員については、働き方改革への対応による需要の増加が見込まれることから、今後とも、いわて看護職員確保定着アクションプランに掲げるさまざまな施策を総合的に進めていく考えであります。
 次に、岩手医科大学移転後の救急体制についてでありますが、岩手医科大学移転後の救急医療への対応としては、圏域内において、盛岡市立病院で救急医療を行う医師を1名から2名に増員しており、また、県立中央病院では、現在、救急室の拡張工事を実施しているなど、各医療機関において体制強化が図られています。
 一方、議員御指摘のとおり、県立中央病院における年末年始の救急利用者数は大きく増加が見られましたが、同病院からは、1月全体では前年同月比で2%の微増にとどまり、今月に入ってからも徐々に落ちついてきていると伺っておりまして、患者の動向は安定しつつあることから、当面、センター病院としての機能に大きな影響はないものと認識しています。
 この救急患者数については、月々変動が見られるところであり、そうした状況や課題等については、盛岡保健医療圏で定期的に開催している盛岡地区二次救急医療対策委員会等の場において共有し、医療機関間の適切な役割分担等について協議いただいているところです。
 県としては、県民への適正受診の普及啓発により、地域医療は地元住民がみずから守っていくことについて、一層県民の理解が広がるよう関係機関と連携した取り組みを進めていくとともに、今後も引き続き、受療動向を注視しながら、救急医療を初めとする適切な医療提供体制の確保に取り組んでまいります。
 次に、介護人材の確保についてでありますが、各施設の職員配置については経営上の判断によるところが大きく、配置基準を充足した上で円滑な施設運営を行う観点からの充足状況については、定量的に示すことは困難であります。
 現段階においては、職員配置基準の充足に支障を来す事例は確認されていないものの、公益財団法人介護労働安定センターの平成30年度介護労働実態調査によれば、県内の約7割の事業所が、職員の不足感があると回答している状況です。
 外国人介護人材については、昨年12月末時点の調査によれば、4施設で経済連携協定―EPAに基づく介護福祉士候補生14名、18施設で外国人技能実習生29名など、24施設で48名が勤務しているとの回答があったところです。
 また、県内でも、外国人介護人材の受け入れや介護ロボット、ICTの導入、処遇改善加算を活用した給与改善、キャリアパスの構築など介護職員の処遇改善に資する好事例が展開されています。
 県においても、各種研修会やセミナーなどを開催し、こうした好事例の普及に努めているところであり、今後とも、関係団体等と連携しつつ、好事例の横展開を図るなど、介護職員の労働環境や処遇の改善を通じて人材確保を推進してまいります。
   〔商工労働観光部長戸舘弘幸君登壇〕
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 起業支援推進事業についてでありますが、県内の中小企業、小規模企業者数が減少している中で、地域経済の活性化や若者の地元定着、雇用の創出に結びつけるため、若者や女性を初めとする起業家の育成は重要と考えています。
 県ではこれまでも、岩手県地域課題解決型起業支援金やいわて希望ファンド地域活性化支援事業、沿岸地区を対象としたさんりくなりわい創出支援事業によりまして、起業に必要な経費を助成するとともに、いわて起業家育成資金により、設備、運転資金の融資を行うなど支援してきたところでありまして、引き続き、起業の促進に向けて資金面を初めとした支援を行ってまいります。
 こうした取り組みに加えまして、民間の起業家グループや関係機関と連携して、専任の相談員が常駐し、相談対応や個別指導などを行う起業支援拠点を盛岡市に開設することとし、来年度当初予算案に起業支援推進事業費を盛り込んだところであります。
 この支援拠点は、関係機関から一、二名が常駐する体制で、起業を志す方が気軽に訪れることができ、相談、支援、指導などに対応できるスペースを有する規模で設置し、構想段階から起業後まで継続的にきめ細かく支援いたしますとともに、県内外で活躍する起業家を講師とする個別指導などの支援プログラムを提供していく予定としております。
 いわて県民計画(2019〜2028)のいわて幸福関連指標として、開業率を現状の3.2%から2022年までに3.5%へ引き上げる目標としておりまして、起業支援拠点の取り組みなどによりまして、すぐれた起業家を育成し、開業率の向上を図ってまいります。
   〔教育長佐藤博君登壇〕
〇教育長(佐藤博君) まず、学校におけるICT環境整備の現状についてでありますが、文部科学省の平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査によりますと、小学校から高等学校、特別支援学校までを含めた全学校種における教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は、全国平均の5.4人に対し、本県は4.8人となっているものの、普通教室の無線LAN整備率は、全国平均の41.0%に対し、本県は26.8%にとどまっているところです。
 また、市町村別では、小中学校における教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数や普通教室の無線LAN整備率などにおいて差が生じていることから、ICT機器等の整備がおくれている市町村への働きかけや支援等が必要であると認識しています。
 次に、ICT教育の整備に係る自治体の予算措置についてでありますが、令和2年度当初予算案には、ICT機器等を活用した授業改善に向けて、県立高校等20校に先行的に大型提示装置等を整備する事業や、大学等と連携して実施する実証研究事業等を新たに盛り込んだところです。
 加えて、GIGAスクール構想の実現に向けた国の令和元年度補正予算が新たに措置されたこと等を踏まえ、令和元年度2月補正予算案には、県立学校に無線LAN環境を整備する事業を盛り込んだところです。
 また、本県学校教育全体のICT環境の整備には、市町村教育委員会での取り組みも重要となることから、今般の国補正予算等を活用したICT機器等の整備が小中学校においても積極的に進められるよう、引き続き、市町村教育委員会と連携を図りながら取り組んでまいります。
 次に、ICTの活用状況についてでありますが、授業において、コンピューターや学習用ソフトウエア、さらに大型提示装置などのICTを活用することは、児童生徒が学習内容への興味、関心を高めるとともに、一人一人の理解、習熟の程度に応じた学習課題などに取り組むことができ、授業改善につながるものと認識しています。
 今年度実施した国の調査結果によりますと、教員が大型提示装置などのICTを活用した授業を1クラス当たり週1回以上行った割合は、全国の小中学校ともに80.8%に対し、本県は、小学校78.7%、中学校60.4%となっています。
 ICTを活用した具体的な授業での活用事例としては、小学校理科において、花のつくりや花粉について、その場で撮影した画像の拡大写真を大型提示装置で観察することにより学びを深めていることや、中学校英語においては、生徒同士でスピーチの様子をタブレットで録画撮影し、お互いに指摘し合って、みずからの課題をつかみ、改善し、英語力の向上につなげている例があります。
 今後も、児童生徒及び教員の日常的なICT活用が求められることから、授業におけるICT活用研修の充実に取り組み、児童生徒の主体的、対話的で深い学びに向けた授業改善を推進してまいります。
 次に、教員の対応力向上策についてでありますが、文部科学省の平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査によりますと、本県教員のICT活用指導力の状況は、できる、もしくはややできると回答した教員の割合は70.1%で、全国平均の69.7%とほぼ同水準となっています。
 ICT機器を活用した授業改善を推進していくためには、教員のICT活用指導力の向上が重要であり、これまでも総合教育センターにおいて教員の情報教育研修等を行ってきたところです。
 令和2年度においては、大学等と連携した実証研究等に取り組む計画としており、授業での効果的な活用事例の普及や教員研修の充実など、この研究成果等も踏まえながら、ICT活用指導力の向上に向けた取り組みをさらに推進してまいります。
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時37分 散 会

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