令和2年2月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇9番(武田哲君) 自由民主党の武田哲です。
 初めての一般質問の機会を与えていただいた先輩、同僚議員の皆様に感謝申し上げ、通告に従い質問いたします。
 最初に、これまでの達増県政の農業政策について伺います。
 平成27年の農林業センサスによると、岩手県の農業就業人口は、平成22年に比べ約2万人、21.8%減少し7万357人になり、農業就業人口における60歳以上の割合は80.1%、5年間で4.7ポイントも上昇しています。しかし、その中で農業産出額は微増傾向にあります。農業産出額の上位を見ると、ブロイラー、米、豚、肉用牛、生乳などが主なものになり、これらが岩手の農業の牽引役となっています。農業産出額の上位にある、特にブロイラーを含めた畜産業の技術革新を伴う生産性の向上は目を見張るものがありますが、それでも県全体の農業産出額は大きく伸びていません。
 また、個々の農家に目を向けると、一層の高齢化に伴い、農家の生産意欲の減少は著しいものがあります。以前は、国のさまざまな農業施策に対して、各種農業団体とともに生産者はデモ行進を行いながら、声を上げ要望していました。いつの間にか決起大会だけになり、それはそれで新たな活動にさま変わりしたのかもしれません。知り合いのある農家は、スマート農業と同じで、決起大会に集まるだけでも大変だ。忙しじゃ。要望もスマートによ。と話しており、私は、その言葉が忘れられません。農業施策への要望に対する象徴的な発言だと思っています。
 大規模農家の生産現場の技術革新は著しく、各種メーカー、システム会社などによりさまざまな生産性の効率化を農家は求められるようになりました。一方、地道に農家それぞれの形での家族経営による営農があります。
 県は、新たな総合計画いわて県民計画(2019〜2028)の中で、新しい時代を切り拓くプロジェクトの一つに農林水産業高度化推進プロジェクトを掲げ、まさに農業の高度化推進の名のもとに、ICT、AIなど最先端技術を活用した生産現場のイノベーションによる飛躍的な生産性の向上をうたっています。効果も確実にあらわれています。しかし、私には何かしっくり来ない気がしているのも事実です。暮らしと営み、ゆったりと生きること、何か大切なものを忘れているように感じています。
 そこで知事に伺います。岩手の農業にこれまで何を求め、何を残そうとし取り組んできたのでしょうか。また、農業の現状と課題をどのように捉え、今後の農業振興に取り組んでいくのか伺います。
 次に、さきの質問にも関連しますが、家族農業支援について伺います。
 国連では、2019年から2028年までを家族農業の10年としました。2014年を国際家族農業年と定め、家族農業の役割と可能性を再評価いたしました。国連でいう家族農業とは、農業労働力の過半を家族労働力が占めているものを言います。
 家族農業は、人的つながり、きずなや連帯意識、相互扶助などを持つ社会集団によるものであり、資本的つながりによって結合した企業的農業に対置するものとして捉えられています。世界の農業経営の85%が2ヘクタール未満であり、日本でも80%が2ヘクタール未満の農家です。国連では、この家族農業をSDGsの主役に据え、取り組んでいます。
 日本国内に目を向けると、2016年に小農学会が立ち上げられ、農業の多様性、持続性について考えられています。学会の方との交流で、これまでの農業という言葉について考える機会がありました。例えば、田んぼで耕す人を見たら何と呼ぶか。昔は、お百姓さん、あるいは農民や農家の人と呼ばれていました。近年は、稲作生産者、第1次産業従事者やファーマーなどの呼び方もあります。農業者の呼び方も大きく変わりました。
 昭和初期の人たちの多くは、自分のことを百姓と呼び、日々の仕事を百姓仕事と呼んでいました。戦後からは、百姓仕事が農業に変わり、なりわいが職業に、そして、百姓のおじちゃんが農業生産者と呼ばれるようになりました。すなわち農業が産業の一つとなり、お金のにおいを基準に判断され、百姓が職業に変わってきました。
 考えてみれば、農業という言葉自体がさまざまなバイアスがかかった言葉なのかもしれません。しかし、確かに農業振興を図るためには、果てしないコスト競争と市場原理優先の流れに戸惑うことなく将来を見据えた施策が必要です。その中で農業の価値を真摯に、多面的に捉え、県では農業政策に取り組む必要があります。
 ただ単に市場のグローバル化に異を唱えているわけではありません。岩手で暮らすということ、ゆったりと暮らすこと、田畑を耕し日々をかみしめ暮らすこと、そういった人たちがいて、用水路掃除を初め、地域の農業、生産現場は支えられています。
 そこで知事に伺います。このような状況の中で、岩手の家族農業について、県として、その役割、価値をどのように評価し、その必要性や可能性をどのように捉えているのか伺います。
 また、家族農業に対する県の支援策がなかなか見えていないと感じていますが、県として、家族農業の現状や課題をどのように捉え、支援していく考えなのかお伺いいたします。
 次に、畜産振興について伺います。
 本年1月1日に日米貿易協定が発効しました。牛肉、豚肉などは、発効と同時にTPP11と同水準まで関税が削減され、TPP11、日EU・EPAに続く大型協定の発効となり、我が国の農業はかつてない自由化時代に入りました。
 国では、この協定が発効された場合、国内農林水産物の生産額が最大で約1、100億円減少し、TPP11と合わせると約2、000億円減少するとの試算結果を公表しました。この中で、牛乳乳製品の生産減少額は約250億円、TPP11と合わせると約280億円とされており、今後、加工原料価格が下落するのではないかと酪農家は不安を感じています。
 そこで、県として、いわゆる日米貿易協定やTPP11などの国際貿易協定の発効による本県酪農への影響と課題をどう捉え、どのように支援していくのか伺います。
 次に、牛の預託施設について伺います。
 私の地元の自治体が管理する牛の預託施設は、利用率が高く慢性的に預託希望に応え切れない状況にあるため、何年も前から周辺の乳用牛育成農家が規模拡大を自治体に要望しております。しかし、地元自治体の財政状況は思わしくありません。なかなか牛の預託施設の整備に取り組める状況になく、要望に対して難しいと答えることしかできないのが現状です。各自治体の財政状況により、真に必要とされている施策が実施されないようでは、課題解決の先送りにしかなりません。
 地元の若い乳用牛育成農家は、預託施設の運営に積極的に取り組み、施設で与える餌は地域で収穫する一番草だけを与え、大きな体づくりにこだわっているとともに、牛白血病や趾皮膚炎―PDDなどひづめの病気に細心の注意を払い管理しています。
 地域の預託施設に牛を預けることができなかった農家は、県内外の預託施設に子牛を預けるとか、地域の離農した畜産農家に改めて預託し、管理を行っています。預託を受けている離農農家からは、やっぱり年金だけでは暮らせね。助かるじゃ。と好評のようですが、地域の離農農家に預託をお願いする場合にも、離農農家の牛舎改修費用の負担が重いのが課題とされています。
 若い農業者からは、管理も含め地域の牛は自分たちで管理していきたい。目の届く範囲で管理できるからこそ、小さな課題から大きな課題までみんなで取り組めるよさがあると話していました。また、預託施設の県内の管理者の募集や人材育成の難しさについても話していました。
 このような状況を踏まえると、県内の畜産振興のため牛の預託施設の整備を推進する必要があると考えますが、県として具体的にどのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、災害時の障がい者対策について伺います。
 来月3月11日を迎えると東日本大震災津波の発災から9年になります。犠牲となられた5、143名の方々の御冥福をお祈りしますとともに、今なお行方不明となられている1、112名の方々が、一日でも早く御家族のもとに戻られるようお祈り申し上げます。
 県ではこれまで、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生、未来のための伝承・発信の四つの大きな施策を中心に、被災地の復旧、復興の事業を進めてきました。今回、障がい者の安全確保について伺います。
 ひとえに障がい者と言っても、その症状は多岐にわたり、その症状もさまざまです。被災当時の混乱の中で、津波から逃げた多くの障がい者の方々が、身体の状況にかかわらず、長時間避難所での不便な暮らしを余儀なくされました。
 避難した障がい者のうち、あるオストメイトの方から避難所での生活の状況を聞く機会がありました。その方は、装具も含め家ごと津波に流され、避難所では装具についてのにおいや偏見にさいなまれ、自分の体の状況をほかの方々になかなか話すことができなかったそうです。装具がいっぱいになると、その装具を外し、避難所周辺の湧き水で装具を洗い再装着していたため、感染症になることも心配される状況だったようです。
 このようなことから、公益社団法人日本オストミー協会岩手県支部では、独自に災害時に備え、それぞれが自助として自分の装具を備蓄するよう取り組んでいます。しかし、その備蓄状況は3割にも満たず、装具の備蓄の難しさを感じているそうです。公助の部分に目を向けると、県内自治体のオストメイト用装具の備蓄に取り組んでいるのはごくわずかな自治体しかないと話していました。
 平成28年の熊本地震の際、公益社団法人日本オストミー協会は、オストメイト用の災害対応トイレを被災地から要望され、十数台プッシュ型支援で被災地に送ったそうです。しかしながら、その災害対応トイレが、被災地のどこに届いたのかわからずじまいだったと嘆いていました。
 公益社団法人日本オストミー協会岩手県支部の代表から今回このことを伺う中で、最後に、我々は少し不便になっただけ、不幸ではないと話していたことが、今でも心に残っています。オストメイトの方々が、前向きに生きようとしていることがよくわかる発言だと思いました。
 県は、新たな総合計画に平成27年の国連サミットの採択に盛り込まれた持続可能な開発目標―SDGsを掲げ、その誰ひとりとして取り残さないというSDGsの理念を、新たな総合計画における幸福を守り育てようとする考え方と相通じるものと説明しています。
 この理念を踏まえると、東日本大震災津波のような大規模な沿岸部の震災、内陸部での地震災害や台風災害、豪雨災害、噴火など、その災害の規模も範囲も予測が難しい自然災害が発生した場合に、障がい者を決して取り残さない対応が必要だと考えます。そのために、災害時に障がい者を支援する体制を本県でもしっかり整備する必要があると考えますが、現状とその課題、支援体制整備に向けた現在の県の取り組みについて、知事に伺います。
 また、本県は、東日本大震災津波の被災地として、一層災害時の障がい者支援に積極的に取り組む必要があると考えますが、今後どのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 次に、難病対策について伺います。
 難病に指定される対象疾病は以前に比べ大きく拡充されました。その拡充は、難病患者からは非常に歓迎されておりますが、医療現場の難病患者に対する対応の状況について、さまざまな要望を聞いています。
 ある難病患者は、セカンドオピニオンで他の病院で診療を受けたとき、病名の告知などについて変わりはなかったが、医療費助成の制度説明について大きな対応の差が見られたと話していました。最初の病院で告知を受けたときは病名に驚くばかりだったが、次の病院では、それに加え、医療費助成についても詳しく説明があり、安心感に包まれ、その対応の差に驚いたとのことでありました。
 難病患者にとって、良質で適切な医療の確保はもとより、療養生活の向上を目的に整備された法律や制度を知ることも大切です。その患者の方は、自分以外にも同じように感じている方がいるのではないかと話していました。
 難病対策には、医療費助成だけではなく、患者、家族への支援の制度もあると思います。このように、難病患者が医療費助成やさまざまな支援制度を理解し、初めてその制度を活用することができると思いますが、難病対策のそれぞれの施策の浸透状況と課題をどう認識し、県として、今後どのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 次に、家庭内暴力についてお伺いいたします。児童虐待と配偶者による暴力の2点について、分けて伺います。
 まず、児童虐待についてお伺いいたします。
 県内で起こった児童虐待の件数は、平成26年度は844件、うち児童相談所に寄せられた件数は390件でした。平成30年度に至っては、児童虐待の件数は倍以上の1、983件となり、児童相談所で取り扱った件数は3倍以上の1、178件となっています。市町村の取り扱い件数も、平成26年度の454件から平成30年度は805件と倍近くに伸びています。国でも平成2年から統計をとり始めましたが、減ることはなく、ふえ続けています。
 県内でも、この間、幼い子供の命が失われるという痛ましい事案も発生し、報道でも大きく取り上げられました。この県議会の議場でも児童虐待の防止に向けた取り組みについて多くの議論がなされたと思います。
 児童虐待のうち、国の統計の中では、面前でのDVなど心理的虐待が最も多く、身体的虐待、ネグレクト、性的虐待の順に発生が見られます。また、児童虐待の相談経路としては、警察が最も多く、次に、近隣知人、学校、家族の順となっています。県内でも虐待が社会問題化し通報が増加しております。児童虐待の社会的背景をどのように捉え、対策をどのように打つのか、地道な活動、対応が求められています。
 地元自治体の議会で保育園の待機児童の調査に取り組んだことがありました。さまざまな課題が提示されましたが、保育園の経営者、保育士から、今の親世代の育児について多くの報告がありました。例えば、しつけと虐待が紙一重であること。洋服もおしめも前日に親御さんに渡した状態のままで、当たり前のように翌日子供を預けに来ること。夫婦で夏場、海水浴に行くと明らかにわかるのに、堂々と子供を休日に預けに来ることなど多くの報告が寄せられ、驚きました。このような状況を考えると、保育園や幼稚園から小学校に入学するとき、必要な連絡、連携、相談体制を講じることも大切であると考えています。
 虐待は連鎖し、虐待を受けた子は、親になったとき、当たり前に自分の子供に手を上げるとも言われています。私も、滝沢市内でこれまで発生してきた児童虐待の件数が一向に減らないことから、何が原因で、どんな対策が必要なのか問いかけてきました。子育てに無関心な人は、どんなに育児や児童虐待に関するフォーラムを開催しても来ません。子供に無関心な人たちに働きかけを行うなど、児童虐待の潜在数の予測も含め、児童虐待の防止に向け取り組んでいく必要があると考えます。
 よく、地域で子供を育てましょう、子供を見守りましょうと言われますが、現在は、民生委員、児童委員のなり手もいません。このように、地域の子供を育む力も落ちてきている中で、児童虐待の防止に向けて取り組んでいかなければなりません。
 さらに、児童相談所の職員体制と職員1人当たりの相談件数の変化もにらみながら対応が求められます。核家族化など社会情勢の変化などという言葉で一くくりにしてはなりません。その変化に対応できる社会情勢の構築が求められています。
 そこで、児童虐待は対応が難しい課題ではありますが、本県の現状とその課題、そして、今後の防止に向けた取り組みについて伺います。
 また、児童虐待をなくすためには、小中学校のPTA活動の中でも積極的に取り組み、さまざまなアプローチをしていく必要があると考えますが、県教育委員会としてどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 そして、配偶者暴力について伺います。
 いわゆる配偶者暴力防止法は、平成16年に成立し、平成20年、平成26年に改正がなされ、配偶者暴力は社会問題として大きく取り上げられてきました。しかし、近年、法改正の効果が見られるようになってきたとも言われますが、全国の警察に寄せられる相談件数は増加し続け、平成30年で年間7万7、482件に上りました。
 少人数の配偶者が被害に遭っているのではなく、多くの方が被害を受けています。夫が妻に暴力を振るうのはある程度仕方がないといった社会通念や、男女間の経済的な格差など、個人の問題として片づけられないように社会構造の変革も必要だと国は言っていますが、男女が社会の中で対等なパートナーとしてさまざまな分野で活躍する必要があります。
 そこで、配偶者からの暴力を防止し、被害者保護をするための取り組みを進めていく必要があると考えますが、本県の配偶者暴力の現状と課題、これまでの防止に向けた取り組みの効果について伺います。
 また、配偶者暴力の防止に向けどのように取り組んでいくのか伺います。
 最後に、事業承継について伺います。
 中小企業庁では、事業承継に関するさまざまなサポート体制の充実に取り組んできています。この事業承継を見ていると、農林水産業の後継者問題の取り組みと同じような課題があると思います。中小企業者は、さまざまな技術力、経営ノウハウ、人間関係など積み上げてきた企業力があります。地域コミュニティーの核でもある商店街、中心市街地の魅力向上や、県内被災地を初めとする地域活性化の取り組みがさらに必要であると考えています。
 県内の事業者は、人口減少社会における将来に対する不安を口にしています。県内の金融機関でも事業承継に取り組んでいますが、その難しさを切実に訴えています。
 経営を譲りたい経営者は、小さいながら地域の方々に支えられ、励まされ経営してきましたし、そのため、地域に対する愛情もあります。しかし、高校卒業生も減少していくこれからの時代、どうしたらいいのかわからない。現在でも労働力確保は難しいのに、将来さらに労働力の確保が難しくなることが見込まれる。このことをおいそれと話せないと話していました。
 県内各地域の経済力、特に未来に向けた抜本的な対策をどのように進めていくのかお伺いいたします。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 武田哲議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、農業政策についてですが、本県の農業は、厳しい自然と共生しながら、地域の立地条件や資源などを生かし、先人の英知と努力によって特色のある産地を形成し、受け継がれ、発展してきました。また、農村という生産と生活の場を通じて、多彩な文化や人間性が育まれ、豊かな地域社会が築かれてきたと認識しております。
 こうした本県の先人が積み上げてきた農業、農村の持つ多面的な機能や価値を今の世代がしっかりと受け継ぎ、新しい時代の岩手の農業を主体的に発展させていくことが重要であり、農業者の収益力を高め、多くの若者らが農業で働きたい、岩手に根をおろし暮らしていきたいと思うことのできる農業、農村をつくっていきたいと考えております。
 このため、いわて県民計画(2019〜2028)に基づき、地域農業の核となる経営体の育成、生産性、市場性の高い産地づくり、魅力あふれる農村づくりを進めるとともに、最先端技術を最大限に活用した生産現場のイノベーションの可能性を開くなど、農業者の一人一人が意欲を持って生き生きと働き、暮らすことのできる農業、農村の実現に向け、積極的に取り組んでまいります。
 次に、家族農業支援についてでありますが、本県の農業経営は、経営体の約97%が家族経営体であり、家族経営体は、本県の農業生産に重要な役割を担うとともに、国土の保全、水源の涵養、景観の形成、地域文化の伝承など、農業、農村の多面的機能の維持に大きく寄与しています。また、国連においても、2019年から2028年を家族農業の10年としています。
 多くの家族経営体に支えられている本県の農業が、従事者の減少や高齢化が進む中にあって、地域経済、社会を支える持続的な産業として発展していくためには、地域農業の核となる経営体を中心として、新規就農者や小規模、兼業農家など多くの経営体が生産活動に携わりながら、ともに豊かさを実感できる農業、農村を築いていくことが重要であります。
 このため、いわて県民計画(2019〜2028)に基づき、地域農業を牽引する経営体を育成するほか、多くの小規模、家族経営を中心とする集落営農組織等の経営規模の拡大や生産活動の効率化を進めるとともに、活力ある農山漁村づくりに向け、小規模、家族経営などの地域を支える多様な生産者による地域の農業、農村を維持する取り組みを推進することとしており、県としては、今後とも本県の農業、農村を支える家族経営体の取り組みを支援してまいります。
 次に、災害時の障がい者支援についてでありますが、東日本大震災津波の際には、避難所にストーマ装具等の日常生活用具がないことや、バリアフリー化されていないことから避難所での生活に支障を来した方がおられたと承知しております。また、障がい者団体からも、備蓄の実施や、障がい者等に配慮した福祉避難所への速やかな誘導について要望されているところであり、災害時において、障がいのある方が安全に避難し、避難所等で安心して生活できるよう、平常時からの備えや障がいの特性に応じた適切な支援が必要であると認識しております。
 県では、こうした教訓や要望を踏まえ、市町村避難所運営マニュアルのモデルを作成し、備蓄や避難所における生活環境の確保などについて市町村に働きかけてきたところでありますが、令和2年1月末時点で、日常生活用具の備蓄を行っている市町村は4市町にとどまっている状況であります。
 県といたしましては、関係団体と災害時協定を締結し、有事の際には障がい者のニーズに沿った用具が届くよう支援を行っていますが、毎年度、開催している研修会等を通じて、引き続き市町村に対し適切な備蓄を働きかけてまいります。
 また、福祉専門職が、福祉避難所の利用など個々の避難者が必要とする支援や調整を行う災害派遣福祉チームを避難所に派遣する体制を整備しており、災害時に障がい者等に配慮した避難環境が確保され、障がいのある方が安心して避難し、一人一人の特性に応じた支援が行われるよう、市町村と連携して取り組んでまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔農林水産部長上田幹也君登壇〕
〇農林水産部長(上田幹也君) まず、国際貿易協定の発効を踏まえた酪農振興の取り組みについてでありますが、県では、国が公表した影響試算を踏まえ、国の算出方法に即して、日米貿易協定とTPP11を合わせました本県農林水産物への影響を試算したところ、牛乳、乳製品では生産額が約1億5、000万円から約2億9、000万円減少するとの結果となったところであります。
 本県の酪農は、飼養頭数、戸数において全国トップクラスの地位にあるものの、経営規模が小さく、生産コストも高いことから、経営体質の強化に向けて、規模の拡大や生産性の向上が必要であります。
 このため、県では、規模拡大を志向する生産者の牛舎等の整備に加えまして、産乳能力の高い乳牛の導入の支援を行うほか、飼料生産作業を受託するコントラクター等の育成や、酪農家の負担軽減を担う育成牛の預託施設や公共牧場の機能強化に取り組んでおります。また、県や農協等から成るサポートチームを県内10地域に組織し、乳量、乳質の向上や繁殖成績の改善などの取り組みを支援しております。
 こうした取り組みにより1戸当たりの飼養頭数や1頭当たりの乳量も確実に増加しており、今後とも経営規模の拡大や生産性向上の取り組みを推進し、本県の酪農生産基盤の強化に取り組んでまいります。
 次に、牛の預託施設についてでありますが、現在、乳用牛の預託施設は県内に9カ所設置されておりますが、酪農家からの預託の需要に十分対応できていない状況にありますことから、酪農経営の規模拡大や一層の生産性向上を図るためにはさらなる施設整備を進めることが必要であります。
 このため、県では、酪農関係者等を対象とした研修会等におきまして、生産コスト低減に向け大きな役割を果たす預託施設の機能強化の重要性を説明するとともに、施設の管理者となる市町村、農協等に対しまして、施設整備に向けた事業計画の策定などを支援しております。
 こうした取り組みにより、新たに八幡平市において乳用牛400頭規模の施設整備が進められており、令和2年度末からは預託施設が10カ所となり、県全体で約4、600頭の受け入れが可能となる見込みであります。
 県としては、引き続き、地元の意向を伺いながら、国の畜産公共事業や畜産クラスター事業等を活用して施設整備を支援するなど、預託施設の受け入れ頭数の拡大に取り組んでまいります。
   〔保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇保健福祉部長(野原勝君) まず、難病対策についてでありますが、平成27年の難病の患者に対する医療等に関する法律施行により、医療費助成の対象疾病の拡大など難病施策の充実が図られたところであり、県としても、入院施設の紹介、あっせんなどを行う難病診療連携コーディネーターの増員や、難病相談支援センターにおける各種相談支援などにより迅速な診断と的確な医療につなげ、安心して療養生活を送っていただくための取り組みを行っています。
 こうした取り組みについては、これまで、県ホームページへの掲載や県政広報、医療関係者の研修会などを活用し理解促進に努めているところでありますが、特に、難病の診断や治療を行う医療機関の理解は重要であることから、平成28年度以降、難病支援サービスガイドを作成し、改訂を行いながら医療機関等に配布しているところであり、施策の浸透が図られてきているものと考えています。
 一方で、医療費助成の対象疾病が大幅に拡大し、支援内容も多様化していることや、症例の少ない難病もあることから、対応機会の少ない医療機関などにあっては、必ずしも患者や家族に対する支援制度等の情報提供が十分に行われていないケースも想定されるところです。
 今後、議員御指摘の趣旨も踏まえ、難病患者が安心して療養生活を送るために必要な情報提供のあり方などについて継続的に検討を行うとともに、医療機関等から適切な支援情報の提供が行われるよう、難病支援サービスガイドの見直しやその周知、活用の徹底に努め、難病患者や家族の意見も伺いながらその不安に答えてまいります。
 次に、児童虐待についてでありますが、県では、岩手県要保護児童対策地域協議会等で議論して策定した児童虐待防止アクションプランに基づき、虐待発生の予防、早期発見、相談機能と対応の充実、再発防止に取り組んでいるところです。
 虐待発生の予防については、オレンジリボンキャンペーンなどによる県民の啓発や、民生委員、児童委員等を対象としたスキルアップ研修による地域における見守り活動等の支援などに取り組んできたところでありますが、議員からも御指摘があったとおり、本県の児童虐待相談対応件数は年々増加しているところであります。
 児童虐待相談対応件数の増加には、家庭養育機能の脆弱化や、子育ての孤立化などにより養育者の育児不安が増加していることが背景にあり、不安や悩みを相談できずに家庭の中で子育てを抱え込むことがないよう、妊娠期から子育て期まで家庭を支える地域づくりを進めていくことが必要と認識しています。
 県では、いわて県民計画(2019〜2028)政策推進プランにおいて、産後鬱の予防や子育て不安の解消につながる産後ケア事業を令和4年度までに全市町村で実施することを目指しており、市町村に、妊産婦等が抱える妊娠や出産、子育てに関する悩み等の相談支援を行う産前産後ケアの実施を働きかけているところであります。
 今年度から保健師等による妊婦訪問に係る経費を補助し、産前産後ケアのきっかけづくりを支援する事業を開始しているところであり、引き続き、県民の啓発や見守り活動の充実も図りながら、子育て家庭を支える地域づくりの一層の推進に取り組んでまいります。
   〔環境生活部長大友宏司君登壇〕
〇環境生活部長(大友宏司君) まず、配偶者暴力の現状と課題等についてでありますが、県福祉総合センターなど、県内12カ所に設置している配偶者暴力相談支援センターにおけるDV相談件数は、平成27年の2、378件をピークに減少傾向にあるものの、依然として年間1、800件前後で推移しております。
 各センターに寄せられた相談は、配偶者からの身体的暴力のほか、子供の養育や離婚問題、経済問題あるいは精神的暴力など内容が多岐にわたっているほか、それらが複合化しているケースも多くなっており、相談者の事情に応じたきめ細かな対応が求められているところです。
 配偶者からの暴力―DVは、家庭内で行われているため潜在化しやすく、しかも加害者に罪の意識が薄いという傾向にあることから、周囲も気づかないうちに暴力がエスカレートし、被害が深刻化しやすいという特性があるとされております。
 このため、県では、いわて配偶者暴力防止対策推進計画を策定し、関係機関と連携しながら、DVが重大な人権侵害であるということの普及啓発を図るとともに、DV被害者の保護と自立支援のための施策を進めてきたところです。その結果、平成30年度に実施した意識調査では、DVそのものに対する認知度は平成27年度の調査から5ポイント増加し9割近くになるなど、DVについての県民理解が一定程度進んでおり、DVに対する理解の土壌が培われてきたものと考えております。
 次に、DVの防止に向けた今後の取り組みについてでありますが、県では、11月の児童虐待防止月間運動と連動して女性に対する暴力をなくす運動を展開し、コンビニエンスストアにDV防止リーフレットを配架するなど、配偶者暴力相談支援センターや制度の周知に努めてきたほか、将来のDV被害者、加害者をつくらないよう、若年層を対象としたデートDV出前講座の開催などを行ってきたところです。
 来年度は、これらの取り組みを継続して実施するとともに、一般県民を対象に盛岡市で実施してきたいわてDV防止基礎セミナーを県内他地域でも開催する予定としております。
 また、DV被害者の安全確保の観点から、来年度からDV関連事務を環境生活部から保健福祉部に移管し、これまで以上に迅速に相談、保護、自立支援のワンストップ対応を進めることができるようにしたところです。
 今後も、暴力のない家庭、社会の実現を目指し、暴力の防止に向けた教育、啓発の促進、相談、保護体制の充実、被害者の自立支援に、民間支援団体を含め、関係機関と協力、連携しながら取り組んでまいります。
   〔商工労働観光部長戸舘弘幸君登壇〕
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 事業承継についてでありますが、県内中小企業経営者の高齢化が進む中、岩手県商工会連合会が平成30年度に会員企業約1、500社を対象として実施した調査では、事業者のおよそ半数が事業承継の意向を示しているものの、そのうちの約1割は後継者が不在であり、約6割は後継者や候補者がいても具体的な準備を進めていないという結果となっています。これらの方々に事業承継に向けた準備の必要性を認識してもらうことや、早い段階からの後継者教育、各種支援制度の周知などが課題と捉えているところであります。
 このことから、県、商工指導団体、金融機関などにより構成する岩手県事業承継ネットワークにおきまして、後継者の有無や事業者の準備状況を対面で調査する事業承継診断を実施し、事業承継に向けた準備の必要性について気づきを促すとともに、支援ニーズの掘り起こしを行っています。また、事業者や関係機関からの相談には、コーディネーターや専門家を派遣し、対応しているところであります。さらに、後継者不在の事業者に対しては、盛岡商工会議所に開設されている岩手県事業引継ぎ支援センターが、第三者への事業承継に係る相談対応やマッチング支援などを行っています。
 さらに今後の取り組みについて申し上げますと、県では、岩手県事業承継ネットワークを通じて、事業承継に向けた準備を促す取り組みや、個別の事業者の状況に応じコーディネーターや専門家を派遣するなど支援しておりますが、事業承継に当たりまして、借入金の経営者保証をボトルネックと感じる後継者が見られるところであります。
 国においては、令和2年4月から事業承継時に経営者保証を不要とするための信用保証制度である事業承継特別保証制度を創設することとしているところでありまして、これを受けて、県では、国の事業承継特別保証制度を活用した場合に、事業承継時の経営者保証を不要とするいわて事業承継促進資金を創設して金融面から支援することとし、来年度当初予算案に盛り込んでいるところであります。
 今後、これら各種の支援策について周知を図るとともに、事業承継ネットワークを通じて、個々の事業者の状況に応じ、きめ細かに支援してまいります。
   〔教育長佐藤博君登壇〕
〇教育長(佐藤博君) PTAの児童虐待防止に向けた取り組みについてでありますが、県立生涯学習推進センターでは、子育てに関する相談窓口、すこやかダイヤル、すこやかメール相談を開設しており、令和元年度においては1月末現在546件の相談が寄せられ、そのうち、虐待や育児不安に関する相談は53件となっております。
 児童虐待の防止には、子供の発達特性等の理解を深めるとともに、親だけが悩みを抱え込むことなく、周囲が支え合う環境、いわゆる地域全体で家庭教育を支える環境づくりが重要であり、議員御指摘のとおり、PTA活動を通した取り組みは、児童虐待防止の効果が期待される有効な手だての一つと考えます。
 このことから、岩手県PTA連合会や市町村PTA連合会では、怒りのコントロールのためのアンガーマネジメントや発達障がいなどをテーマに取り上げた研修が行われているほか、つながりやきずなづくりを目指した、親子や地域住民がともに参加し合う多様な体験活動が展開されているところであり、さらなる充実が期待されます。
 県教育委員会といたしましては、岩手県PTA連合会等と連携を図り、SNS等を活用した家庭教育情報の発信や相談体制の充実、地域の子育てを支える関係者の資質向上、ネットワークづくりなど、これまでの取り組みをより一層進めるとともに、学校PTA独自の多様な学習活動や交流機会を促すため、講師の紹介や派遣等の支援に取り組んでまいります。
〇9番(武田哲君) 農業政策の中で私が最も危惧しているのは、集落営農や法人化で、そういったものに取り組まれ、最近元気はあるのですが、しかし、古くから取り組んでいる法人あるいは集落営農組織では後継者難があったりします。そういった農業政策に対しては国もさまざまな支援もしていますし、県も独自の支援をしていると思います。しかし、一方、用水路整備とか、質問でも話したとおり、いろいろな農家の人たちがいて我々の農業生産の現場というのは支えられていると思います。そうした意味で、農業政策も大事ですけれども、私は、農村政策、そういったところに視点を置いた、きめ細やかな取り組みが必要ではないかと思っています。よく飛行機で日本を見たとき、山裾の奥の奥まで田んぼがあったりします。それだけ農業者というのは、生活できる場、そして耕作ができる場を求めて農業をしてきました。そういった先人の思いというのは、やはり地域の人たちの連帯とか連携といったものがあって初めて成り立ってきたと思っています。
 そういった意味でも、これからも規模拡大とか、普及員の人たちも数字を持って農家の人のところを訪れて、そしてどんな効果があったかなどを検証するかと思いますが、実際のところ、農林業センサスは昭和60年から販売農家を切り捨てるような、センサスの中では出てこない数字があります。そういった意味で、実際の数字というのはしっかり捉えられていないと思っているのです。だからこそ農村政策が必要ではないかと感じています。その点についてお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 先ほども、地域農業の核となる経営体の育成、生産性、市場性の高い産地づくりと並んで魅力あふれる農業、農村づくりを進めると申し上げたところでありまして、農業、農村づくりの中には、グリーンツーリズム的な方向性でありますとか、また、岩手県でも棚田振興に力を入れていきたいと考えておりますし、そのような生活の場、また、ともに暮らす場、そして、交流や関係人口の増大にもつながるような場、そういった方向性でもさまざま取り組んでいきたいと思います。
〇9番(武田哲君) 農家個々、それぞれいろいろな生活があります。そして、家族で一緒に暮らしている人、それから、子供はまちに出る、そしてその子供の孫は東京に出るとか、実際、家族と言いながら生活実態は別々だったりしています。そうした状況の中で地域の農業というのは支えられているし、お年寄りがいるところが限界集落であるとか、本当にこれからの農村部を支えていく政策をしっかりつくっていかないと、本当に岩手の農業は廃れていくのではないかと思っています。その点を今後ともしっかり計画し、推し進めていただきたいと思っております。
 次に、オストメイトの政策についてですけれども、要は、障がい者の方々が、当時、避難所にいたときにどんな状況だったのか、そういったところをこれまでしっかり捉えてきたのでしょうか。オストメイトだけではなくて、酸素吸入器が必要な人とか、さまざま状態があったと思います。震災を経験した岩手県だからこそ、全国に先駆けた障がい者の支援策というものをしっかりつくっていかなければならないと思っています。命をしっかり最後の最後までつないでいけるように。
 そして、オストメイトだけではありません、いろいろな障がい者の方々がいると思います。同じように、津波が発災したときに、目の不自由な人をアパートへ助けに行こうとして戻って津波に遭われ、そして流された方もいます。自分の命も大事だけれども、他人の命もしっかり助けようとして行動された方もいました。
 いろいろな人たちが、いろいろな思いで今回の津波という大きな災害を経験したんだと思います。そのときに、本当に地域で、障がい者だけではありません、高齢者の方々もいると思います。人と人とがどうやって助け合って、そして、さまざまな災害を乗り切るか。そして、避難した上で、その人たちに必要なケアというものにどうやって取り組んでいくかということを、震災を経験した岩手県がしっかり計画しなければならないと思っています。
 今回のオストメイトのことでも、備蓄しているのが県内でたった4市町しかないというのは、本当に恥ずかしいことだと思っています。しっかりとした政策をこれからつくっていかなければならないと思いますが、これまでの現状をどのように捉えてきたのか、そして、目標とするところはどこなのか、どこに目標を掲げてやっていくのか、その点をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 市町村避難所運営マニュアルのモデルを県が作成するという形で、それぞれの市町村でどのような避難所での準備が必要なのか、また、いざ災害が起きたときの対応が必要なのかということを県から市町村に伝えられるような形にはなっているわけです。
 その基盤には東日本大震災津波の経験があり、記憶をたどるだけでも、さまざまな障がいの態様に応じた困難ということがいろいろ報告されていた、それらを踏まえて、経験のある市町村では、そうした経験をもとに市町村それぞれの避難所マニュアル、また実際の運用がなされると考えます。そうでないところについては、県からマニュアルのモデルあるいは他の市町村のマニュアルの紹介などを通じながら、東日本大震災津波の経験がきちんと生かされるようにしてまいりたいと思います。
〇保健福祉部長(野原勝君) 障がい者の方々の避難時における備蓄等の目標でございます。今、知事から申し上げましたとおり、障がいのある方々は、さまざまな特性を持っております。それらの特性に応じた支援が必要だと考えています。オストメイトの方はそういったようなものが必要ですし、例えば情報提供に支援が必要な方々、視覚障がい者の方々、聴覚障がい者の方々の支援のための用具、そのほかにも、例えば一見してわからない障がいの方、内部障がいの方々、また、発達障がいのような精神障がいを持った方々、こういったそれぞれの特性に応じた支援が必要だと考えています。
 したがいまして、ありとあらゆる障がい者の方々の生活用具といったことの具体的な部分については、個々の目標を掲げてはいないところでございますが、市町村では、今、要支援者の名簿作成と個別の計画策定を進めています。
 そうした災害があったときに支援が必要な方々の個々の特性に応じた支援の計画を作成し、そのために何が必要なのかということ、避難所における備えが必要なものであれば、私ども協定を結んでおりますので、市町村と連携して、きめ細かな支援に当たってまいりたいと考えております。
〇9番(武田哲君) 災害時にどういった対応ができるか、どういった対応を必要としているか、それは県が率先して各市町村にもっときめ細やかに、こういった障がい者にはこういった方法が考えられるとか、こういった対策が必要だとか、しっかり届けていかなければならないと思います。
 今回のオストメイトのことでも、災害時の備蓄をしているのは沿岸部では大槌町だけです。そうした中で、本当にどういった対応が必要だったのかということを振り返りながら検証しなければなりません。間もなく発災から9年になります。少し遅いようにも感じます。本当に安心して暮らせる環境というのはどういうものなのか、安全性の確保についてもっとしっかりと取り組んでいかなければならないのではないかと思っております。
 次に、事業承継です。実際、地元の商工会でも、商工会を脱退する人たちの93%が、大体後継者がいなくて商工会をやめるのです。要は、事業はまだまだ継続できるけれども、後継者がいないということで商工会を脱退する方が多くいると伺っています。そういったところにも目を向けながら、ましてや、事業承継税制とか、いろいろなものが国でも用意されていますけれども、それについての認知度もかなり低い状態です。
 そうした中で、県内で広く事業を行っている商工業者の方々は、やはりさまざまな技術力もあります。技術の継承が途絶えるのはすごくもったいないことです。何となくこの間の決算特別委員会での答弁などを聞いていて、本当にやる気があるんだろうかと感じているところもありました。これから岩手県内各地域の活力を取り戻すためには、新しい事業者を連れてくるだけではなくて、もともとある事業者をしっかりと育てて、その人たちに大きな輪をつくり、そして大きなうねりをつくっていただく、そういう取り組みも必要だと思っています。
 県内で事業展開している企業の方々に、しっかりと向き合ってつき合っていかなければならないのではないかと思っています。そういった意味でも、いろいろな地域でいろいろなうねりが出るようにしていくためには、やはり事業を継承していただくこと、そして、その地域力、そして経営者の経営力をしっかり担保していかなければならないと思っておりますが、今後の事業承継に対する取り組みについてどうやっていくのか、目標などどうやって決めていくのか、その点をお伺いして、最後にしたいと思います。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 議員御指摘のとおり、地域にはさまざまな宝とも言うべき事業もございますし、製造業などでは、ほかにないような技術力を持った企業もいらっしゃいます。そういった事業が後継者がいないということで途絶えてしまうのは、大変もったいないことだと思っております。
 まずもって、この事業承継には相当の、これは数年ではとどまらないぐらいの期間を準備してしっかり臨んでいく必要があると思いますので、まずは、事業者の方々に、その事業承継に向けた準備の必要性についてしっかりと気づいていただくということを進めていきたいと思っておりますし、そのために、先ほど御答弁申し上げました岩手県事業承継ネットワークにおきまして、さまざまな支援、そして事業承継診断を行っておりますので、これらの組織を通じまして気づきを促してまいりたいと考えております。
〇議長(関根敏伸君) 次に、岩城元君。
   〔6番岩城元君登壇〕(拍手)

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