令和2年2月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇31番(郷右近浩君) 希望いわての郷右近浩でございます。
 質問に先立ち、東日本大震災津波、平成28年台風第10号災害、そして、昨年10月の台風第19号により被害を受け、いまだ不自由な生活を余儀なくされている被災者の皆様に、心からお見舞いを申し上げます。
 それでは、代表質問の機会を与えていただきました先輩、同僚議員の皆様に心よりの感謝を申し上げ、会派を代表して質問させていただきます。
 初めに、新型コロナウイルス感染症についてお伺いします。
 中国本土で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症は、感染者と死者数が日々増加の一途をたどっており、日本国内においても重篤な患者の死亡が報告されるほか、緊急帰国者やクルーズ船以外にも各地で感染者が次々と確認されている状況であります。
 そして、感染対策も新たな局面に移り、渡航歴などに関係のない市中感染への対応強化が求められる事態となり、国においても、検査対象者の見直しなどの対策等に、緊急対策として総額153億円の予算が措置され、また、全国的なイベントなどの見直しも相次いでおります。
 本感染症が恐れられている理由は、新型であり簡易検査キットの普及や有効な治療薬がないということ、何より、その感染力の高さや無症状の感染者がどのように広めているかが未知数であるということにほかなりません。
 本県では、現在、感染者は確認されておりませんが、新型コロナウイルス感染症医療連絡会議を経て、帰国者・接触者外来を県内九つの二次保健医療圏ごとに設置し、帰国者・接触者相談センターを立ち上げたほか、2月10日開催の関係機関連絡会議では、医療、消防、警察、交通運輸などの関係者と情報共有を行い、18日には、備えを強めるべく、岩手県新型コロナウイルス感染症対策本部を設置したと伺っております。
 見えない感染症との戦いは初動対応が重要であり、県民の不安を解消することが必要であると考えます。人から人への感染拡大が懸念される中、いわて花巻空港などの水際対策とあわせ、県民の安全を守るため、関係機関と一層連携し、混乱することのない実効性のある取り組みを進める必要があると思いますが、現在までの取り組みとあわせ今後の対応をお伺いします。
 また、花巻―上海間の国際定期便が予定を前倒しして今月8日から運休したことは必要な措置であったと考えますが、近年、本県においても観光地や宿泊施設、小売店など外国人観光客によるインバウンド需要が拡大してきた中であり、中国からの観光客の減少がその経営に影響を与えるものと思われます。製造業など中国企業と直接、間接的に取引する会社もふえてきている中、中国の企業活動の停滞の影響が同様に懸念されるところであります。
 県では、今回の事態に関し経済的な影響をどのように捉え、対応をどのようにお考えか伺います。
 次に、いわて県民計画(2019〜2028)の推進について伺います。
 本年度は、新たな計画において掲げる東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてという基本目標のもと、東日本大震災津波や平成28年度の台風第10号災害からの復旧、復興とともに、新しい令和の時代にふさわしい全国的、国際的な取り組みを推し進めようとしていたところ、令和元年台風第19号により本県はまた大きな被害を受けることとなりました。
 令和2年度は、これらの大規模災害からの復旧、復興を着実に進めるとともに、いわて県民計画(2019〜2028)を強力に推進するための極めて重要な1年であり、必要とされるさまざまな事業を展開していくため、組織、職員体制の整備と財源の両面での対応が求められるものと考えます。
 そこで、まず、組織、職員体制についてお伺いします。
 さきの12月定例会で議決された政策企画部及びふるさと振興部の設置については、総合的な政策の立案、調整、評価機能の充実と全県にわたる地域振興施策の推進の強化を両立する組織再編としており、社会変革のスピードが著しい現代において、行政に求められる日々変化していくニーズに対応するために、組織を不断に見直し、新たな行政需要に対応するためのものと受けとめておりますが、令和2年度の組織、職員体制の整備に当たり、知事が特に意を用いた点についてお伺いします。
 次に、予算についてお伺いします。
 令和2年度当初予算は、知事みずから復興幸福希望予算と名づけ、県民の幸福度を向上させる諸施策や、ことし開催される東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を復興五輪として、世界中へ本県の復興の姿と教訓、感謝を発信していく予算を盛り込んだとされております。
 いわて県民計画(2019〜2028)の推進に向けて、新年度当初予算に込めた知事の思いと、どのように施策の重点化を図り、実効性を高めるよう取り組んでいかれるのか、知事のお考えを伺います。
 また、本県の財政は、平成30年度決算において2年前倒しで公債費負担適正化計画を達成したほか、県債発行の抑制により10年連続でプライマリーバランスが黒字になるなど、健全化に向けた取り組みは着実に進んでおりますが、令和2年度当初予算においては、法人関係税や軽油取引税を初めとする税収が減少する中で、相次ぐ自然災害や高齢化に伴う社会保障関係費の増加などに対応するため財政調整基金を88億円取り崩しており、基金の枯渇が危惧されるところであります。
 必要な施策を継続的に実施していくためには、安定的で持続可能な財政基盤の構築が必要と考えますが、どのように取り組まれるのかお伺いいたします。
 次に、たび重なる災害を踏まえた強靱な県土づくりについてお伺いします。
 大震災や台風災害により県民の命が奪われたことはじくじたる思いであり、また、災害により、いまだに多くの県民が不自由な生活を余儀なくされております。
 県が政策の柱に掲げる県民の幸福度の向上は、日々の生活の安定の上に成立するものであり、社会基盤の安定、災害に強い県土づくりの計画的な推進が不可欠と考えます。そのためには、必要な公共事業は鋭意、計画的に行っていくべきと思いますが、東日本大震災津波からの復興によって防災のまちづくりが進む沿岸地域とあわせ、県全体の社会資本の整備について今後どのように進めていくお考えなのか伺います。
 また、国では、平成30年度から令和2年度までの3カ年を防災・減災、国土強靱化のための緊急対策を集中的に実行する期間と位置づけ、予算の増額を図り、インフラ整備を進めるとしております。
 県においても、昨年秋の予算編成方針で公共事業についてプラスシーリングを公表し、投資の促進を打ち出しておりましたが、具体的に令和2年度当初予算にはどのように反映されたのかお伺いします。
 次に、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略についてお伺いします。
 平成27年10月に作成された第1期岩手県ふるさと振興総合戦略は最終年度を迎え、現在、新たな戦略の策定に取り組まれているところでありますが、第1期で掲げた施策推進目標の達成は芳しいものではなく、特に意欲的とされた2020年に人口の社会減をゼロとすることについて、本県の社会減は、一時期4、000人を割るなど減少傾向にあったものの、2018年には5、000人台へとはね上がり、2019年でも4、370人と、ふるさと岩手の存続にとって危機的な状況が続いております。
 本戦略の目標は、国が定めたまち・ひと・しごと創生総合戦略に呼応したものでありますが、国の目標である東京一極集中の解消自体、2019年の人口移動報告において14万8、000人と3年連続で転入超過が拡大しており、実現には至っていない現状であります。
 次期戦略では新たな柱として岩手とつながるを掲げておりますが、地方移住の裾野拡大に向けた関係人口の創出により、実際に岩手をふるさととして選択し、暮らしていただく取り組みの見直し、強化とあわせ、社会減がとまらない最大の要因である東京一極集中の解消に関し、国への一層の働きかけが必要であると考えます。
 そこでお伺いしますが、次期岩手県ふるさと振興総合戦略に期する知事の思いと、ふるさと振興の具体的な取り組みの推進方策についてお聞かせください。
 また、本県の人口減少に歯どめをかけるためには、官民挙げてのさまざまな主体の協働が必要不可欠であり、特に市町村との連携が重要と考えます。広い県土を有する本県は、人口構成も産業構造もさまざまであり、各市町村が県に期待するものは、連携や補完あるいは支援など、さまざまな役割が考えられます。県においては、新たにふるさと振興部を設け、一層のふるさと振興に当たる体制を整えたところですが、市町村との連携強化について、知事のお考えをお聞かせください。
 あわせて、ふるさと振興のうちの分野横断戦略に位置づけられている新しい三陸創造戦略についてお伺いします。
 震災から間もなく9年となりますが、被災した沿岸地域にも、ようやく生活やなりわいを彩る新たな景色が見られるようになってまいりました。昨年は、残念ながら台風第19号で再び被災してしまいましたが、三陸鉄道リアス線の全線開通、三陸防災復興プロジェクト2019の開催、ラグビーワールドカップ2019日本大会の釜石開催などの大きな動きがあり、三陸地域は、国内にとどまらず世界中から注目を集めるものとなりました。
 また、新たな復興推進プランでは未来のための伝承、発信が盛り込まれており、昨年9月の開館以来、本年1月までに10万人を超える方々が訪れた東日本大震災津波伝承館をゲートウエーとした三陸地域全体をルートとする震災からの学びや教訓の伝承などの効果が期待されるところであります。
 幾度となく大きな災害に見舞われてきた三陸地域ですが、3月20日の全線復旧を目指す三陸鉄道のように、さまざまな支援を受け、そのたびに立ち上がってまいりました。台風災害からの一日も早い復旧が期待されるところでありますが、大きく盛り上がったこの1年の成果を一過性のものとせず、震災から10年、さらにその先に向けた三陸復興の取り組みが必要であります。
 令和元年台風第19号災害からの復旧、復興の状況とあわせ、知事のお考えをお示し願います。
 同じく、北いわて産業・社会革新戦略についてお伺いします。
 2021年の世界文化遺産登録を目指す北海道・北東北の縄文遺跡群について、ユネスコに推薦書が提出され、喜びに湧くところであります。しかし、県北振興については、これまで県政の優先課題として取り組みが進められてきているものの、なかなか成果が見えてこないように感じられます。
 昨年10月に、働くなら県北、育てるなら県北、暮らすなら県北をスローガンとした産学官連携、異業種交流の場として北いわて未来づくりネットワークが発足し、県においても本年1月に知事が、現地、県北振興会議で関係者と膝を交えるなどの取り組みが行われたと伺っております。アパレル、漆、食産業や再生可能エネルギーなど、さまざまなポテンシャルはあるものの、実験的、モデル的な側面が否めなく、県が提唱するプラチナ社会の実現についても、依然、手法を模索し続けているように感じられます。
 北いわて産業・社会革新戦略を次期戦略の一つと位置づけるのであれば、より実効性のある施策を行う必要があると思いますが、知事のお考えをお伺いします。
 同じく戦略の一つである国際研究・交流拠点地域形成戦略、ILCの推進についてお伺いします。
 先月30日に日本学術会議から2020年以降の大型研究計画のあり方に関する指針であるマスタープラン2020が公表されました。本県はもとより、ILC誘致にかかわる全ての関係者の注目を集めるところでしたが、学術的意義を有する大型研究計画に位置づけられたものの、より優先度の高い重点大型研究計画には盛り込まれず、失望の声も上がっております。
 しかし、このことに関しては、建設費用が約8、000億円にも及ぶとされ、費用対効果の評価が影響したのではないかという声もありますが、他方、さまざまな課題はあるものの、国内の学術コミュニティーでILCの建設意義を深く理解してくれた結果という識者の評価も示されており、今後は、文部科学省が大型プロジェクトの推進方向を検討する、いわゆるロードマップへの申請とその審議へと移るとの報道もあったところです。
 この手続は科学政策を検討する一つの手法であり、ILCがその対象となっているのはもちろんですが、ISS―国際宇宙ステーション計画のように、ロードマップとかかわりなく、必要と判断され実行されているプロジェクトもあるものと認識しております。
 ILCは、学術的な評価が行われ、まさに実現に向け次のステップに進んだところであり、文部科学省においては、今後、科学的意義はもとより、経済波及効果、地方創生、教育面など広くその意義を踏まえ、既存の予算の枠組みにとらわれない国としての政策的な判断をとっていただけるものと期待しているところでございます。
 本日、文部科学省が、アメリカでの国際会議においてILCに係る政府見解を表明するとの新聞報道もありましたが、県民の宿願とも言えるILCは、本県の学術水準を引き上げるのみならず、ふるさと振興や人材育成など未来への財産としても大きな意味を持つプロジェクトであります。今回の公表を受けてのお考えと、今後のILC実現に向けた知事の思いをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、地域医療体制についてお伺いします。
 厚生労働省が昨年9月に公立、公的病院の再編統合に係るリストを唐突に公表し、地域偏在を抱える全国の首長から大きな反響が起こったことから、総務省でも地域医療確保に関する国と地方の協議の場を設けるなど、地域の実情に応じた対応が強く求められている状況にあります。
 県では、公表された県内10病院について、本年3月末までに病床削減や機能転換の方向性を定めるとした対応方針を示し、これが県医療審議会医療計画部会で了承され、以降、各地域で調整会議が行われていると承知しております。
 しかし、調整を続ける中にあって、奥州市立総合水沢病院では、4月までに14名のうちの4名の医師が退職し、これまで休止中であった診療科とあわせ麻酔科も不在となることから、救急対応も難しい体制となります。必ずしも再編統合リスト掲載の影響だけではないにしても、地域の救急体制を守るため、早急に方向性を定めていかなくてはならないものと考えます。
 大都市圏に比較して医療資源が乏しく、公立、公的病院への比重が大きい本県は、その担う役割が多岐にわたることから、今後は一層、官民あわせた各地域の医療資源を丁寧に拾い上げ、地域ごとの医療体制を構築していく必要があると考えますが、3月の方針決定に向けた知事のお考えを伺います。
 また、県内において産業集積を進める中、県南地域において、さらなる高次医療の必要性を現在の医療圏や体制だけにとらわれることなく柔軟に考える必要もあると考えますが、これから10年の岩手の医療提供体制に関する知事のお考えを伺います。
 先般、医療資源の根幹とも言える医師の不足について、新たな医師偏在指数の公表を受け、達増知事の提唱のもと地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会が、1月31日に発足したとのことであります。
 これは、本県が率先して行ってきた地域医療を守るための適正受診の取り組みや医師確保対策をしてなお解消されない現状を受けて、地方が連携して声を上げることによって国に対して実効性のある取り組みを行うことを働きかけることを目的に設立し、早速、今月6日には、国会内で開かれた議員連盟に達増知事みずから会の設立趣旨を説明し、今後の情報発信や国への政策提言に取り込むことを表明されたとのことです。
 このことは、これまで達増知事が提唱してきた地域医療基本法の趣旨を、医師不足や偏在など同様の課題を持つ県の知事が一緒になり国に対して働きかける形をつくり上げたものと理解するとともに、今後の展開に期待するものでありますが、この取り組みに関する知事の決意と今後の具体的な取り組みについてお聞かせ願います。
 次に、子育て支援について伺います。
 本定例会に報告されているいわて子どもプラン(2020〜2024)中間案では、合計特殊出生率が低い水準にとどまっていることや未婚化、晩婚化の進行、養育者の育児不安の増加、児童虐待相談の増加など、県内の子供と家庭をめぐる困難な状況が明らかにされております。
 県では、現行のプランにおいて、若者が家庭や子育てに希望を持てる環境の整備、子育て家庭への支援、子供の健全育成の支援の三つを施策の基本方向とし、さまざまな子育て支援に取り組んできておりますが、子供と家庭をめぐる現状に関し、知事の御認識を伺います。
 また、4月からは子ども子育て支援課を室に格上げし、体制の充実を図るとしておりますが、具体的にどのような施策を講じ、この困難な状況に対応していかれるのかお伺いします。
 最後に、地球温暖化対策についてお伺いします。
 昨今の相次ぐ台風災害などの異常気象については、地球温暖化の影響が大きいと指摘されており、県の基幹産業である水産業において漁獲が振るわない一因も、温暖化による海面温度上昇が起因しているという分析もあるところであります。
 地球規模の大きな課題ではあるものの、早急な対応が必要とされるところであり、現在、全国の自治体単位でも、排出削減の目標を宣言し取り組みを始める動きが出てきており、本県においても、昨年11月の記者会見で、知事みずから温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロを目指すことを表明されたと伺っておりますし、今月18日に結成された北岩手循環共生圏を構成する県北9市町村も、昨年12月に、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指すことを宣言しております。
 知事は、地方の自治体が国を超える目標を設定する意義を強調され、昨年12月にスペインで開催された国連気候変動枠組条約第25回締結国会議、いわゆるCOP25に挑む日本政府を後押ししたいという意向も示されていたとのことですが、肝心の会議では、COP21で採択されたパリ協定6条に関して、各国の足並みがそろうことなく、残念ながら来年度に見送りとなりました。
 こうした大人たちの対応に業を煮やした若者の発言が世界中の同世代の共感を呼び、かつてない大きなうねりとなりましたが、肝心の成果を出せない会議については、大きな失望を持たざるを得ませんでした。また、日本政府についても化石賞の受賞が話題になった程度で、国全体としての方針に理解を得られなかったことは当然であると思います。
 とはいうものの、まずは隗より始めよのことわざにあるとおり、県民一人一人が取り組みを進めることは大変意義があることであり、県として率先し大きな目標を掲げ、着実に実行に移していく姿勢は、いわて県民計画(2019〜2028)で掲げる、一人ひとりが恵まれた自然環境を守り、自然の豊かさとともに暮らすことに結びつくものと考えます。
 翻って、本県の状況に目を向けますと、再生可能エネルギーの導入促進や森林吸収源対策は順調に進んでいるものの、温室効果ガス排出量自体としては、ほぼ横ばいないし若干下がっている程度と認識しております。
 知事は、令和2年度に策定予定の次期岩手県環境基本計画に、本目標について当該計画期間を超えた目標として掲げ、排出削減を進めるとしておりますが、県として行う意義、見通しについて改めてお聞かせください。
 また、この高い目標に向けては、市町村を含む公的部門だけではなく、民生部門への働きかけが不可欠でありますが、どのような取り組みにて加速化させていくのかお示し願います。
 以上質問してまいりましたが、知事には、県民ひとしく幸福が実感できる岩手の未来をつくり上げるべく邁進していただきますよう御期待申し上げ、会派を代表しての質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 郷右近浩議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新型コロナウイルス感染症についてでありますが、県では、ホームページ等を通じて、県民に感染予防策等を情報提供し、冷静な対応を呼びかけてきました。
 また、帰国者・接触者外来や帰国者・接触者相談センターを設置し、感染症指定医療機関、保健所等から成る医療連絡会議を開催し、疑い事例の相談に対応でき、検査、治療に円滑につながり、感染拡大を防止する体制を整えてきました。
 また、消防、警察、医療、各種インフラ、金融、報道等、県民の安全・安心に密接に関連する各分野の団体による関係機関連絡会議の開催により、社会経済への影響の抑制に向け連携していくことを確認しました。
 議員御指摘のとおり、日本国内においても、先週後半以来、感染経路を特定できない可能性のある症例が相次いでおり、今月16日に開催された国の専門家会議においても、患者が増加する局面を想定した対策が必要とされました。
 県としては、このような状況を踏まえて、今週18日、岩手県新型コロナウイルス感染症対策本部を設置しました。今後、国内感染期も想定し、医療体制や相談体制の拡充、県民への情報提供のあり方などについて、岩手県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会等で議論し、体制の早急な整備を図ってまいります。
 次に、新型コロナウイルス感染症による本県経済への影響についてでありますが、県では、中国における活動拠点として大連経済事務所や雲南事務所を設置するなどして、中国との経済交流の促進や観光誘客を図ってきたところであり、新型コロナウイルス感染症の拡大が、本県の観光業や製造業に与える影響について注視し、県内企業等の状況把握に努めています。
 国においては、2月13日に新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策を取りまとめたところであり、本県においても、経営相談窓口を設置するとともに、中小企業に対する資金繰り支援の準備を進めています。
 引き続き、県内企業等への影響を注視し、国、関係機関とも連携しながら、県内経済への影響が最小限にとどまるよう対応してまいります。
 次に、令和2年度の組織、職員体制についてでありますが、いわて県民計画(2019〜2028)を着実に進めていくため、さきの12月県議会定例会で議決をいただき、新たに政策企画部とふるさと振興部を設置して、社会経済情勢の変化を踏まえた機動的な政策の企画、立案や、持続的に発展するゾーンの創造など、地域振興施策を一層推進する体制を整備します。また、県政課題に適切に対応し、県民一人一人の幸福度を高めていくため、子ども子育て支援室と観光・プロモーション室を設置し、安心して妊娠、出産、子育てができる環境づくりや、文化、スポーツ、農林水産業などとの連携を深め、総合産業としての観光産業の振興に取り組むこととしております。
 こうした組織の見直しや体制の強化により、いわて県民計画における各政策の実効性を高め、基本目標に掲げる、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてを実現してまいります。
 次に、予算についてでありますが、令和2年度当初予算は、東日本大震災津波などの災害からの復旧、復興を力強く進めるとともに、県民の幸福度の向上を図るいわて県民計画(2019〜2028)を軌道に乗せ、県民が希望を持てるような予算として編成しました。
 具体的には、まず、いわて県民計画(2019〜2028)のもと、10の政策分野に基づく施策を着実に推進し、ILCや三つのゾーンなどのプロジェクトを展開してまいります。さらに、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会への県民の参画を図る事業や、ソサエティー5.0の実現に向け、科学技術の活用を図る事業などに取り組みます。
 このような施策、事業の推進により、いわて県民計画(2019〜2028)の実効性を高め、東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現を目指してまいります。
 次に、安定的で持続可能な財政基盤の構築については、中長期的な視点に立った財政運営が重要であると考えており、毎年度、その時々の社会情勢や財政需要等を反映させた中期財政見通しを作成し、これを踏まえた財政運営を行ってまいります。あわせて、産業振興等を通じた税源涵養や国費の活用等の歳入確保の強化、事業効果や効率性等を踏まえた歳出の重点化等、歳入歳出両面から不断の取り組みを進め、限られた財源の効果的な活用を図るとともに、国に対し、偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築や、地方交付税を初めとする地方一般財源総額の確保を求めていくことで、安定的で持続可能な財政基盤の構築に取り組んでまいります。
 次に、社会資本の整備についてでありますが、社会資本の整備や適切な維持管理は、県民の安全・安心な暮らしを守り、地域の産業振興を支えるために不可欠なものであります。このため、いわて県民計画(2019〜2028)において、自然災害から県民の暮らしを守るための防災、減災対策の推進や、災害に強い道路ネットワークの構築、日常生活を支える安全・安心な道づくり、都市間や主要な観光地を結ぶ道路の整備、港湾、空港の機能拡充等に加え、老朽化が進む施設の計画的な修繕に取り組むこととしています。
 また、これらの社会資本の整備に当たっては、国費の確保が重要でありますことから、公共事業予算の安定的、持続的な確保に向け、さまざまな機会を捉えて国に強く働きかけていくとともに、いわて建設業振興中期プラン2019にも掲げている、必要な事業量の計画的な確保に努めながら取り組みを推進してまいります。
 次に、令和2年度の公共事業費についてでありますが、予算編成方針におけるプラスシーリングも踏まえ、通常分として区分している公共事業費については、国の防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策も活用するなど、535億円余を当初予算案に計上しています。これは、令和元年度当初予算と比較すると37億円余、7.6%の増となっており、必要な予算を確保して河川改修や河道掘削、道路整備など安全・安心を支え、地域の産業や観光振興の基盤となる社会資本の整備に着実に取り組んでまいります。
 次に、ふるさと振興総合戦略についてでありますが、現行の県及び各市町村の総合戦略に基づく施策の推進によって、県全体及び各市町村のさまざまな分野で一定の成果があらわれている一方、人口の自然増減については、日本全体の傾向と同様に減少傾向が続くとともに、社会増減については、令和元年にマイナス4、370人と3年ぶりに縮小したものの、依然としてその減少数は大きい状況にあります。これを踏まえ、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略では、岩手で働く、育てる、暮らすに、岩手とつながるを加えた4本の柱に基づき、岩手の魅力を高め、岩手への新しい人の流れを生み出す施策を推進してまいります。
 具体的には、ものづくり産業や農林水産業の振興による産業全体の底上げ、結婚支援や子育てに優しい環境づくり、医療、福祉など豊かなふるさとを支える基盤の強化等を進めます。また、国に対し、地方を重視した経済財政政策の実施や、東京一極集中の是正に向けた対策の一層の推進について、引き続き強く訴えてまいります。
 次に、市町村との連携強化についてでありますが、人口減少対策の着実な推進のため、現在策定を進めている第2期岩手県ふるさと振興総合戦略に加え、市町村が策定中の次期総合戦略のもと、県と市町村が連携、協働して取り組むことが重要と認識しております。このため、来年度からふるさと振興部を設置し、いわて県民計画(2019〜2028)に掲げる北上川バレー、三陸、北いわての三つのゾーンプロジェクトに取り組むに当たり、市町村との連携、協働を一層進め、持続的な地域社会を築いていくための地域振興施策を強力に推進します。
 また、市町村が単独では困難な課題解決や地域特性を踏まえた施策の推進に向け、西和賀町、岩泉町、普代村に職員を駐在させるなど、地域の実情に応じたきめ細かな支援にも取り組んでまいります。
 次に、三陸振興についてでありますが、まず、令和元年台風第19号災害からの復旧、復興については、9月及び12月補正予算において必要な予算を措置し、生活再建や商工業、農林水産業の再開に向けた支援、道路、河川等の災害復旧に全力で取り組んでいるところです。また、一部区間において運休を余儀なくされている三陸鉄道についても、3月20日の全線運行再開に向け、三陸鉄道、県及び沿線市町村が一丸となって取り組んでいます。
 引き続き市町村と十分連携し、被災者が一日も早く安心して暮らせる環境を取り戻せるよう、切れ目なく対応してまいります。
 三陸振興の取り組みについては、本年度実施した三陸防災復興プロジェクト2019の目指す姿や成果を新しい三陸創造戦略において継承していくこととしており、国内外への防災力向上への貢献に向け、東日本大震災津波伝承館と海外津波博物館との連携による国際会議の開催など、教訓の伝承や復興の姿の発信に取り組みます。また、復興の象徴である三陸鉄道を活用した誘客促進や三陸ジオパーク活動の一層の推進、三陸の豊かな食を生かした施策など、多様な魅力を発信することにより交流人口の拡大を図り、持続的な三陸地域の振興につなげてまいります。
 次に、県北振興についてでありますが、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略における北いわて産業・社会革新戦略では、あらゆる世代が生き生きと暮らし、持続的に発展する先進的な地域の創造を目指し、施策を推進することとしています。
 具体的には、あらゆる世代が活躍する地域産業の展開に向け、食産業やアパレル産業などの業容の拡大や、先端技術を活用した北いわて型スマート農業技術の導入を促進していきます。また、岩手県農業研究センター県北農業研究所を拠点とした人材育成機能の強化や、北いわて地域におけるものづくり産業を担う人材育成の強化を図ります。さらに、北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録実現に向けてフォーラム開催やPR活動を行います。加えて、北いわて9市町村と横浜市が締結した再生可能エネルギーの活用を通じた連携協定に基づく事業展開を支援してまいります。
 次に、ILCの推進についてでありますが、昨年3月の政府による関心表明以降、国内外の活動がより具体的になっており、ILC実現に向け着実に進展している状況と認識しています。
 この関心表明の中で、国内においては、正式な学術プロセスでの議論が必要とされたことを踏まえ、ILCは、日本学術会議のマスタープラン2020において議論され、学術大型研究計画に選定されたところであります。このプロセスにより、ILCの学術的な意義が確認され、国内の科学コミュニティーの理解も深まったものと認識しております。また、漫画家の弘兼憲史さんや映画監督の押井守さんが、ILCの重要性を訴え応援を呼びかけるなど、全国的な理解増進の動きも広がっています。
 ILCは、我が国が標榜する科学技術立国のシンボルともなるアジア初の大型国際研究機関であり、新産業の創出やグローバル人材の育成、多文化共生社会の実現などにも資することから、今後、外交や地方創生など総合的な観点から検討されていくものと考えます。
 こうしたことから、県としては、超党派の国会議員連盟や研究機関、推進団体等との連携を一層密にして国内外の動向に臨機に対応しつつ、国に対しては、東日本大震災津波からの創造的復興や世界に開かれた地方創生などさまざまな意義を訴えながら、あらゆる方策を講じてILCの実現に向け取り組んでまいります。
 次に、公立、公的医療機関の再検証への対応についてでありますが、本県では、これまでも、各圏域の地域医療構想調整会議において、将来の人口や医療資源の状況などを踏まえながら、各医療機関が担う機能などについて丁寧に議論を進めてきました。国により公表された本県の医療機関の大半においては、こうした議論などに基づいて病床機能の転換や病床数の見直しが実施されていることから、直ちに病床機能の大幅な見直しが求められるものではないと考えております。このような県の考え方については、昨年11月に開催した岩手県医療審議会で説明し合意を得たところであり、現在、各地域において、これを踏まえた協議が進められています。
 今後も、調整会議において、民間病院も含む個々の医療機関の機能や診療実績も確認しながら協議を行い、効率的で質の高い医療提供体制の構築に取り組んでまいります。
 次に、将来の地域医療体制についてでありますが、岩手県保健医療計画においては、一般の医療需要や脳卒中など、発症初期において速やかに受療する必要がある疾病については、県内九つの二次保健医療圏の中で完結できる体制整備を行っています。一方、限られた医療資源の中、二次医療圏を超えた医療圏を設定する必要もあり、周産期医療については県内四つの医療圏を設定し、分娩リスクに応じた適切な医療提供体制の構築を図っているところであります。
 医療提供体制については、医療技術の進展や医療人材確保の状況のほか、人口構造の変化や交通網の整備なども考慮し、医療審議会等の議論を踏まえ検討していく必要があります。
 産業集積が進む県南地域においては、雇用の増加による人口構造や生活環境、医療需要の変化に対応し、医療機関の役割分担と、機能連携や医療の高度化などに取り組んでまいります。
 次に、医師確保についてでありますが、医師の不足や地域間の偏在を根本的に解消し、住民がその居住する地域で必要なときに適切な医療を受けられる体制を構築するためには、国全体で地域医療を守る仕組みが必要です。国を挙げて実効性のある施策に取り組むことについて国への政策提言や情報発信を行うため、本県から、新潟そして青森、福島、長野、静岡の各県に提案を行い、6県の知事が発起人となって、地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会を設立いたしました。各県では、これまでも医師の確保に努めてきたところでありますが、同様の課題に直面する県が、これまでそれぞれに行ってきた取り組みを共有して統一的な動きとし、強力にアピールすることによって国を動かし、医師の不足と地域偏在の解消につなげていくという考えであります。
 今後、各都道府県で今年度中に策定する医師確保計画も踏まえながら具体的な提言をまとめ、6月に開催する地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会で決議し、国に働きかけを行います。また、8月に本県で開催される全国の病院事業管理者会議でも提言内容について説明するなど、機運醸成や関係者への理解促進も図ってまいります。
 次に、子供と家庭をめぐる現状についてでありますが、合計特殊出生率が低い水準となっているなど課題が多い状況であり、さまざまな生きにくさを生きやすさに転換し、県民の結婚したい、子供を産みたい、育てたいという希望に応える取り組みを進めていくことが必要であると考えております。令和2年度においては、当初予算案に結婚サポートセンターの機能の拡充、妊産婦の移動等に係る支援、現物給付による子供の医療費助成の対象拡大などの経費を盛り込んだところであり、新たないわて子どもプランを策定するとともに、子ども子育て支援に関する組織体制を強化し、安心して子供を産み育てられる環境づくりを強力に進めてまいります。
 次に、温室効果ガス排出量の実質ゼロ目標についてでありますが、近年、世界各地で発生している異常気象は気候変動が一因と指摘されており、地球温暖化対策の重要性が一層高まっています。地球温暖化は、生活や産業、生物の多様性に深刻な影響を与えるものであり、国内のみならず、世界の全ての国が協力していかなければ解決できない問題です。
 世界では、気候変動に対する強い危機感を背景に、昨年9月の国連気候行動サミット2019において、世界の65カ国が、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを表明しています。パリ協定では、自治体や企業など、政府とは異なる組織の行動の重要性が指摘されており、地方自治体が温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロを目標として掲げることは、パリ協定の目標達成に地域から貢献する観点から重要であると考えます。
 次期岩手県環境基本計画の策定に当たっては、温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロを視野に入れながら、令和3年度からの計画期間の10年間で取り組むべき省エネルギー対策の一層の推進や再生可能エネルギーの導入促進など、具体的な取り組みを検討してまいります。
 次に、高い目標に向けた取り組みについてでありますが、県及び市町村などの公的部門は、みずからが多くのエネルギーを消費する事業者でもあり、エネルギー消費量の削減や再エネ、省エネ設備の導入などの取り組みを率先して進めることが求められますが、温室効果ガス排出量の大部分は、県民生活や社会経済活動に直接起因するため、地球温暖化対策を進めていく上では、県民、事業者の自主的な行動を促進することが重要であります。そのため、2030年度を目標とする次期岩手県地球温暖化対策実行計画の策定に当たっては、温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロを見据え、積極的な目標と実効性ある施策を検討するとともに、全県的な団体、機関で構成する温暖化防止いわて県民会議を中心に、住宅の省エネルギー化の普及啓発や事業所における省エネルギー設備の導入、エコドライブの推進など具体的な行動に取り組む県民運動を展開し、県民総参加による地球温暖化対策を推進してまいります。
〇議長(関根敏伸君) 次に、岩崎友一君。
   〔45番岩崎友一君登壇〕(拍手)

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