平成31年2月定例会 第16回岩手県議会定例会会議録

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〇24番(高橋孝眞君) 自由民主クラブの高橋孝眞でございます。
質問に先立ち、昨日の北海道の地震により被害に遭われました全ての皆様に心からお見舞いを申し上げます。
次期総合計画の最終案がまとまり、今議会に提案の運びとなりましたことにつきまして、県当局はもとより、関係各位の御努力に敬意を表したいと思います。
しかし、本県は、これまで経験したことのない人口減少問題に直面しており、特に、中山間地域におけるコミュニティー機能や主要産業である農業への影響、労働力不足に強い危機感を持っております。人口減少という危機が確実に進行する状況を踏まえて中山間地域を支えていくためには、総合計画に盛り込まれた事業を縦割りでこなしていくのではなく、部局横断で効果的に事業を調整して取り組む機能や、従前の制度、仕組みにとらわれない柔軟な取り組みも必要と考えるものであり、以下、そのような観点から順次質問をしてまいりますので、県当局におかれましても、ぜひ問題意識を共有し、御答弁をお願いする次第であります。
初めに、次期総合計画について、まず、現総合計画及び次期総合計画の目標について伺います。
現総合計画は、県民一人一人が希望を持つことのできる社会の実現を目指して取り組まれましたが、知事は、当初思い描いた目標にどの程度近づいたと考えているのか伺います。
次期総合計画は、県民一人一人がお互いに支え合いながら幸福を追求していくことができる地域社会の実現を目指すとしております。また、知事は演述の中で、岩手にかかわる全ての人たちを幸福にできる県にしなければならないとも述べております。
最近、ある雑誌で、会社経営者の方が、人間の究極の幸せは、愛されること、褒められること、役立つこと、必要にされることであり、愛されることを除く3項目は働くことでしか得られないという趣旨のことを述べており、傾聴に値する意見であると感じました。
これは一つの例ですが、幸福感は個人の主観的な思いであり、個々に違いがあるものではありますが、次期総合計画は、10年後には全ての県民が幸福を享受できることを目標としていると考えてよいのか知事に伺います。
現総合計画を審議した当時の総合計画審議会では構成員に農家の方が審議会委員として加わっておりましたが、次期総合計画を審議してきた現在の総合計画審議会委員には、本県の基幹産業である第1次産業、すなわち農業、林業、漁業をなりわいとする委員がおりません。本県は、県土の80%が中山間地域で、全国に誇る農業県でもあり、決して第1次産業を軽視しているわけではないと思うのですが、審議会委員選出の基本的な考え方について伺います。
次に、県民所得について伺います。
本県の1人当たりの県民所得は平成22年度に国民所得と比較して80.5%でありましたが、東日本大震災津波後、建設業などによる復興需要が県内経済に大きく貢献し、平成24年度以降90%に近い水準で推移しております。今後、復興工事も終盤を迎え、建設業による工事受注も減少するものと考えられますが、県内経済活動をどのように導き、県民所得のさらなる向上を図る考えか知事に伺います。
平成27年度岩手県市町村民経済計算によると、県民所得は、雇用者報酬、財産所得、企業所得の合計を人口で割った金額で、276万円となっています。市町村別で見ると、盛岡市が一番高く316万円、葛巻町が一番低く223万9、000円となっています。雇用者報酬だけを人口で割った場合は、県全体で高齢者割合が30.4%で173万2、000円、盛岡市が一番高く、高齢者割合25.1%で216万9、000円、高齢者割合が46.9%と一番高い西和賀町で131万8、000円、西和賀町と同様の人口である九戸村は、高齢者割合が38.8%と低いにもかかわらず104万9、000円。ちなみに葛巻町は、高齢者割合が42.5%で101万8、000円と一番低くなっています。
このことから、高齢者人口が多く生産年齢人口が少ないから所得が少ないとは一概に言えないと思いますし、別の要因から市町村ごとの所得の格差が大きいのではないかと考えます。これをどのように分析され、次期総合計画において、所得格差の解消の面から幸福度アップにつなげる考えか伺います。
県民所得という観点からは、生活困窮者に対するセーフティネットの整備も重要な取り組みであり、近年、注目されているフードバンクの利用状況について伺います。
また、冒頭に質問した次期総合計画の幸福目標に照らせば、むしろ利用者そのものを減らしていくことが究極の目標とも言えると思いますが、今後の生活困窮者に対する支援の方向性について伺います。
次に、人口減少対策について伺います。
岩手県の総人口は、平成30年10月1日時点で124万人となっています。岩手県人口ビジョンによりますと、さまざまな施策により、2040年に100万人程度の人口を確保することを目指すとしています。しかし、人口は地域一律に減少するものではなく、盛岡市、北上市などの都市部以外の市町村は急激に減少しているのではないでしょうか。また、同一の市町村内でも、中山間地域はさらに人口減少が厳しい状況と思います。都市部ではコンパクトシティーの考え方がありますが、中山間地域の集落においても集約という視点が今後必要になってくるのではないかという問題意識を持っていることを申し上げておきます。
さて、国レベルでは、総務省、国土交通省、農林水産省などの事業で、買い物機能の確保、デマンドバス、タクシー、伝統芸能、文化の伝承などの中山間地域の小集落を想定したソフト事業の類似メニューが用意されていますが、県としてこれらをどこまで有効に活用できているのでしょうか。中山間地域のコミュニティー施策を部局横断の視点でコントロールする機能が必要なのではないでしょうか。
そこで伺います。次期総合計画の活力ある小集落実現プロジェクトは、将来にわたり持続可能な活力ある地域コミュニティーの実現を目指すというまさに的を射たプロジェクトであり、内容的にも評価するものでありますが、このプロジェクトの効果を最大限発揮させるための事業メニューの調整はどのように行うことになるのかお伺いいたします。
また、プロジェクトにおいて、文化などの地域資源を生かした都市部など地域外との交流が活発に行われ、関係人口や移住者の拡大による担い手の確保などにより持続可能な地域コミュニティーの形成を目指すとしていることに関連して伺います。
北上市周辺に伝わる民俗芸能鬼剣舞が国連教育科学文化機関─ユネスコの無形文化遺産登録を目指すこととなり、今月1日に発足した全国民俗芸能「風流」保存・振興連合会に北上、奥州両市の四つの保存団体が加盟したところでありますが、これらの無形文化遺産登録に向けた県としての取り組みについて伺います。
中山間地域では、人口減少とともに少子高齢化の進行により、これまでの地域コミュニティーが果たしてきた共助機能の低下が懸念されます。消防団員も、若者不足と仕事の多様化で、毎年開催される消防操法の大会の参加に必要な人員を確保するのにも苦労しているなど、団員確保が厳しい地域もあります。
安全・安心な地域づくり、防災力の強化からも、地域コミュニティーにおける防災体制の担い手の確保が課題と考えますが、どのように取り組む考えか伺います。
次に、労働力確保の取り組みについて伺います。
人口減少問題は、既に深刻な労働力不足を引き起こしています。高齢化が進む中山間地域では介護が身近な問題ですが、介護人材の現状と人材確保の見通しについて伺います。また、農業においても、労働力不足は深刻な状況です。次期総合計画における新規就農の具体の取り組みについて、目標水準とあわせて伺います。
また、私は、農業と福祉の連携も労働力不足解消に重要であると考えています。国の事業に、高齢者に人手不足や現役世代を支える分野等で就業機会を提供するシルバー人材センターがあります。次期総合計画の幸福関連指標として健康寿命が掲げられていることからも、高齢者の健康、生きがいづくりの場としての農業との連携もまた大切なことと思っています。
今回は、特に、政策推進プランにおいて、関係機関・団体との連携により農林水産分野における障がい者の就労を促進するとされていることから、県内の障がい者就労継続支援A型事業所、B型事業所との農福連携の現状と課題について伺います。
地域全体の労働力が細る中で、これまでと同様に各分野ごとの労働力確保対策を進めても、限られた人材資源の奪い合いになるのではないかという強い懸念があります。先般の出入国管理及び難民認定法改正による新たな在留資格制度により、介護や農業分野においても外国人労働者の雇用が可能になったものと認識しておりますが、新制度の概要について伺います。
さて、本県においても外国人労働者確保に積極的に取り組む上で、具体的な提案をしたいと思います。
北海道のほぼ真ん中に位置する東川町は人口8、200人の小規模自治体ですが、実は、かつて7、000人を割り込んでいた人口が25年間ほぼ上昇を続けているというまれな存在です。これまでもさまざまな先進的な取り組みを行ってきた東川町が、外国人の介護人材を育成するため、留学生への奨学金制度の新設を目指しているとの報道がありました。具体的には、町内にある福祉専門学校で学ぶ留学生を対象として、返済不要の給付型奨学金として1人につき年250万円を授業料や生活費として支給する。入学決定時、介護現場への従事を望む留学生を道内の介護施設へ割り振り、施設がある自治体が負担して奨学金を支給するというものです。県内でも介護系の専門学校が定員割れしている状況もあることから、参考となる取り組みではないかと思いますが、御所見をお伺いいたします。
また、農業分野で外国人を雇用する場合、施設園芸や畜産では通年での雇用が可能でありますが、土地利用型の稲作を初めとする農業、果樹、野菜栽培等は、収穫時などに労働力が集中します。したがって、通年で外国人に就農していただくためには、受け入れ機関を県内一本化し、農業経営体相互で農繁期間に融通し合えるような仕組みを取り入れてはどうかと考えますが、御所見を伺います。
次に、農業振興について伺います。
まず、農地の生産基盤整備についてでありますが、平成28年3月時点で、本県の水田30アール区画以上の整備済み面積は4万8、808ヘクタール、整備率が51.6%となっており、全国平均の64.7%、東北平均の66.1%に比べて低い状況になっております。
次期総合計画の政策推進プランを見ると、水田整備の目標として、4年間で1、200ヘクタールの整備を掲げています。土地区画整備事業は、土地所有者及び耕作者からの申請事業でもありますが、未整備面積は4万5、695ヘクタールもあり、30アール区画以上に水田整備をするにはかなりの年数がかかると考えます。このままでは、農業従事者の高齢化、担い手不足、農産物生産でのコスト削減も難しく、農地としての維持管理が不可能になるのではないかと危惧されます。また、スマート農業の推進に向けても、特にGPSを利用したトラクターの自動操舵、水田で遠隔操作できる水管理など、導入コストもかかるため、経営規模の拡大や作業性の効率化が重要と考えます。
これらの状況を踏まえ、今後、基盤整備をどのように推進していくのか伺います。
畑地かんがい施設整備について、平成28年3月時点で本県の畑地かんがい施設整備面積は2、192ヘクタール、整備率が3.9%で、東北はもとより全国で最も低く、全国平均の23.9%と比較し、大きく立ちおくれています。
このような状況にあることから、生産性向上のためには畑地かんがい施設整備も重要な取り組みであると思いますが、整備を進めるための具体的な目標水準と畑地かんがい施設整備率の向上に向けた取り組みについて伺います。
農作物を生産する農家にとって、生産した農作物を販売し、一定の収益を上げなければ持続可能な農業とは言えません。平場地帯では、いわて型野菜トップモデル産地創造事業を通してキャベツやタマネギ生産の団地化を進め、高収益野菜を組み入れた営農体系を目指しております。
一方、中山間地域では、急勾配、農地分散など特有の事情があり、平場のような大区画の基盤整備は難しいことから、どのような営農体系で収益を上げるよう誘導していこうとしているのか伺います。
東北農政局がまとめた東北6県2017年産米の10アール当たりの平均生産費は11万9、303円、60キログラム当たり1万3、431円、10アール当たりの収量は533キログラムであったと公表されています。10アール当たりの平均生産費は前年比1.1%増で、2014年産米以来3年ぶりに増加したとされておりますが、生産者の所得を向上させるためには、生産費を削減することが重要であります。サンプルのとり方にも影響が出ると思いますが、2017年産のひとめぼれ県平均収量は579キログラム、概算金は1万2、800円です。これでは東北6県の10アール当たりの平均生産費にも及ばず、再生産可能な米生産とは言えないのではないでしょうか。
そこで、生産費削減に向けてどのように支援していく考えか伺います。
現在、各県が競って米の品種開発に取り組んでおり、本県も銀河のしずく、金色の風をデビューさせ、一定の市場評価を得ているところであります。温暖化の影響と思われる異常気象により品質、収量が安定しないなどの課題がある中、他県では、高温でも品質が低下しない品種や、倒伏に強く、多収となる品種を目標に品種開発に取り組み、福井県のいちほまれ、新潟県の新之助などが市場デビューしています。
こうした中で、県として品種開発についてどのような基本方針で臨んでいるのか、市場から不足していると言われている業務用への対応も含め、今後の見通しについてどのような考えか伺います。
岩手県は全国有数の畜産県との評価でありましたが、平成19年の黒毛和種繁殖飼養戸数7、197戸から平成29年には4、218戸に減少と伺っております。同様に肉牛販売頭数も減少し、いわて牛などの東京市場上場頭数は、平成19年度の1万438頭から平成29年度には4、968頭と大幅に少なくなっております。この要因をどう捉え、畜産県岩手の名に恥じないよう今後どのように取り組む考えか伺います。
お隣の宮城県は、若柳牛を初め数件あった地域ブランドを仙台牛として一本化して東京食肉市場に上場し、買参人を初めとする市場関係者から高い評価を得ていると聞いています。
先月21日に買参人を初めとする市場関係者、料理長の皆さん、生産者等の関係者が一堂に会していわて牛の集いが開催されました。特にことしは生産者の参加が少なかったところでありますが、懇談の際、市場関係者から、岩手県も前沢牛、きたかみ牛を初め8件の地域ブランドをいわて牛に統一して上場しないと、地域ブランドでの上場頭数が少な過ぎ、枝肉価格が伸びないとのお話でした。生産者としては少しでも高く販売することが重要です。この声に県としてどう応えていくか考えを伺います。
ブランド力強化には、全国和牛能力共進会で上位入賞することも重要であります。ゲノム解析技術などを活用し、産肉能力にすぐれた全国トップレベルの黒毛和種の種雄牛の造成を図っていますが、共進会の出品条件は、肥育牛で24カ月未満、審査基準には脂肪交雑や歩どまり基準値のほか、前回の全国和牛能力共進会宮城大会から牛肉のおいしさの指標も加えられております。
そこで、2022年、鹿児島県で開催される全国和牛能力共進会の肉牛の部における上位入賞に向けた取り組み方針とロードマップについて伺います。
平成27年度いわて中山間賞を受賞した奥州市江刺区の梁川ひつじ飼育者の会から始まり、地域おこしとして、少しずつではありますが、綿羊の飼育者、また、飼育を検討している方々が増加しております。
そのような中、昨年8月に綿羊飼養者のネットワークを構築し、関連産業に携わる事業者との連携を促進することにより、綿羊を活用した地域振興を図ることを目的として、飼養者、羊毛活用の皆さん、羊肉流通関係者及び関係機関、団体を構成員として岩手めん羊研究会が設置されました。綿羊の飼育は、省力的な農地管理、荒廃農地対策、鳥獣被害の防止に有効であるほか、国産ラム肉は、首都圏はもとより県内レストランでも人気が高まっているところであり、県産羊毛を活用した商品開発に向けた取り組みも始まっています。県としてこれらの取り組みをどう評価しているのか、今後どのように活動を支え、普及拡大していく考えなのかお伺いいたします。
また、綿羊の繁殖方法は主に自然交配でありますが、近親交配を防止しながら綿羊の増頭を図るためには雄羊の確保が重要となってきます。しかしながら、北海道などの主産地では雄羊の確保が難しい状況と聞いております。県として、雄羊の確保、近親交配の防止対策についてどのように捉えているかあわせてお伺いいたします。
昨年秋に岐阜県の養豚場で発生した豚コレラは、その後の発生拡大により、愛知県、長野県、滋賀県、大阪府を加えた5府県に広がり、当該5府県で殺処分された豚が合計4万7、300頭に達するなど、甚大な被害が広がっています。豚コレラウイルスは豚、イノシシが感染する病気であり、強い伝染力と高い致死率が特徴です。感染豚は、唾液、涙、ふん尿中にウイルスを排出し、感染豚や汚染物品等との接触等により感染が拡大します。治療法はなく、発生した場合の家畜業界への影響は甚大であることから、家畜伝染病予防法の中で家畜伝染病に指定されています。
養豚が盛んな地域を抱える本県としても感染防止に万全を期すべきと考えますが、どのような方針で対応しているのか伺います。
東日本大震災津波、福島第一原発からの放射能被害から8年が経過しようとしております。放射性物質に汚染された牧草、稲わら、堆肥、原木シイタケのほだ木の農林業系副産物の発生量は合計5万8、666トン、現在までの処理量は合計3万4、504トン、保管量は2万4、162トンとなっています。焼却により年々減少しておりますが、まだまだ時間がかかるとのことです。特に、ほだ木の処理が進まないと原木シイタケ産地の早期再生は難しいのではないかと思われますが、どのように考えているのか所見を伺います。
また、原木シイタケは、生産者が20年から30年のサイクルで地域のナラ林を伐採し、植菌した上、ほだ木から収穫しますが、原木の指標値を超える地域では、シイタケ栽培に利用できずにナラの木も太くなって大切なナラ林が荒れてしまうと思うのですが、対策をどのように考えているのかあわせてお伺いいたします。
質問は以上ですが、冒頭申し上げましたように、今後、次期総合計画を進めていくに当たっては、部局横断での取り組みが不可欠であると思っています。公益法人指導監督業務については、従前、関係各室課と総務部法務学事課による分散管理体制で対応してきたところですが、平成29年度行政監査において組織体制が必ずしも十分とは認められないと指摘されたところであり、私も一元的に対応すべきと主張してきたところであります。
来年度は総務部に新設される行政経営推進課による集中管理体制へ移行するということであり、調整機能とは別のアプローチではありますが、部局横断の一つの処方箋として評価するものであり、今後も常に組織体制を柔軟に見直しながら、次期総合計画完全達成に向けて取り組んでいただくことをお願いして、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋孝眞議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、現総合計画、次期総合計画の目標についてでありますが、現行のいわて県民計画では、いっしょに育む希望郷いわての基本目標のもと、実現していきたい岩手の未来として、仕事、暮らし、学び・こころの三つの分野の将来像を示し、その実現に向けた取り組みを進めてきたところであります。
こうした取り組みは、仕事について、自動車や半導体関連産業を中心とした産業集積が進展するとともに、いわて花巻空港において、台北、上海国際定期便が開設されたこと、また、金色の風や銀河のしずくに代表される農林水産物のブランド化が図られたこと、暮らしについては、人口10万人当たりの病院勤務医師数の増加や保育所整備、保育人材の確保、子供の貧困対策などの取り組みが進んでいること、学び・こころについては、平泉と橋野鉄鉱山の世界遺産登録の実現や、文化芸術、スポーツの分野において、本県の才能豊かな人材が国内外で活躍していることなど、目指す姿の実現につながる多くの成果を上げてきたところであります。
また、平成28年の希望郷いわて国体、希望郷いわて大会は、県民の底力とさまざまなつながりの力を結集して大成功をおさめたところであり、いっしょに育むという観点からも、現計画の基本目標にかなりの程度近づくことができ、お互いに幸福を守り育てることを基本目標とする、新しいいわて県民計画につながる土台を築いたものと考えております。
次に、次期総合計画の目標についてでありますが、幸福の捉え方や重視する視点は一人一人異なるものでありますことから、いわて県民計画最終案では、「幸福に関する指標」研究会から示された幸福の実感に関する12の領域をもとに、10の政策分野を設定したところであります。
この10の政策分野をもとに、県民が、どの程度幸福を実感しているかといった主観的幸福感を県民意識調査で毎年把握しながら取り組みを推進することで、政策分野ごとに設定した、いわて幸福関連指標の向上を図り、ひいては、県民の幸福度を高めていくものであります。
また、これらの10の政策分野の取り組みを進めるに当たっては、持続可能な開発目標SDGSにおける誰ひとりとして取り残さないという理念も踏まえ、社会的包摂の観点に立ち、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてを目指してまいります。
次に、県民所得の向上についてでありますが、いわて県民計画最終案では、復興需要の減少を見据えながら、国際競争力の高いものづくり産業、地域の特性や資源を最大限に生かした農林水産業や観光産業など、いわゆる域外市場産業について、地元調達や付加価値を高めながら強化するとともに、商業やサービス業を通じて地域内経済循環を拡大していく総合的な産業政策を展開することで、産業全体の底上げを図ってまいります。
また、ものづくり産業等の集積を生かした産業の高度化や生活環境の充実を図る北上川バレープロジェクト、復興の取り組みにより進展したまちづくりや交通ネットワークを地域産業の振興に生かす三陸防災復興ゾーンプロジェクト、北いわての豊かな地域資源を高度に活用し、産業の創出と社会の革新を一体的に推進する北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクトに取り組み、それぞれのゾーンの発展の姿を実現することで、本県の経済成長にもつながるものと考えます。
これらの取り組みを推進することにより、仕事・収入分野のいわて幸福関連指標として設定した全国を100とした1人当たり県民所得の水準等を注視しつつ、県民所得の向上を図ってまいります。
その他のお尋ねにつきましては企画理事及び関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔政策地域部長白水伸英君登壇〕
〇政策地域部長(白水伸英君) まず、総合計画審議会委員選出の基本的な考え方についてでございますが、総合計画審議会は、県政の総合的な計画の策定及び推進に関する重要事項を調査、審議するため、岩手県総合計画審議会条例に基づき設置されているものでございます。
委員の選定に当たりましては、市町村長や大学等の学識経験者のほか、現行のいわて県民計画の仕事、暮らし、学び・こころの三つの分野に関連する企業や団体、これに公募の委員を加えまして、地域バランスや年齢構成、男女比率も勘案し20名を選定しているところでございます。
このうち、農林水産業関係の委員につきましては、農林水産業の6次産業化や農商工連携の促進等の活動を行い、国の6次産業化に係る委員を務めたこともある民間の委員を選定しておるところでございます。
また、次期総合計画の諮問にあわせまして、広範にわたる諮問事項を効率的に審議するために設置いたしました四つの部会のうちの岩手の仕事部会においては、審議会委員に加えて、農業生産者として地域の農業振興に取り組んでおられる方にも有識者委員として参加いただき、さまざまな御意見を頂戴しながら、御審議をいただいたところでございます。
次に、県民の所得格差についてでございますが、高齢化率の高い市町村は、総人口に占める雇用者数の割合が低くなると考えられ、一般的には、雇用者報酬を総人口で割った金額が、高齢化率の低い市町村よりも低くなる傾向にあると分析しております。
一方で、議員御指摘のとおり、一般的な傾向と異なる市町村も存在するところでございまして、これは、有力な製造業の立地や観光施設あるいは温泉施設の有無など産業構造の違いや、高齢者の就業割合がほかに比べて高いなど、さまざまな要因が影響しているものと考えております。
このため、いわて県民計画最終案における仕事・収入の分野におきましては、ものづくり産業の一層の集積に加え、中小企業の振興や地域資源を生かした産業の魅力向上、観光産業の総合産業化、農林水産業の持続的な発展など、産業の成長を促し、地域経済を支える取り組みを盛り込むとともに、一人一人の能力を発揮できる雇用の確保を進めることで、希望する仕事につき、安心して働くことができる環境づくりを進めることとしております。
このような取り組みを進めることによりまして、県民所得の向上を図り、ひいては、県民一人一人の幸福度を高めることにつなげていきたいと考えております。
次に、活力ある小集落実現プロジェクトについてでございますが、このプロジェクトは、人口減少と少子高齢化が急速に進行する中、第4次産業革命技術や遊休資産を生かした住民の生活サービスの提供や、人材、収入の確保、都市部との交流の促進など、地域の課題解決に向けた住民が主体となった取り組みの促進を通じまして、将来にわたり持続可能な活力ある地域コミュニティーの実現を目指すものでございます。
地域コミュニティーを取り巻く課題といたしましては、住民の健康管理や子育て、高齢者の見守り、買い物や通院等の移動手段の確保など、住民サービスの維持、確保に関する課題、住民が主体となった活動を展開していくための地域運営組織の育成や都市部との交流、農林水産物の6次産業化、さらには、起業や事業承継、空き家の活用による若者の定着促進など、地域コミュニティーを支える仕組みづくりや活性化に向けた課題など、多岐にわたるところでございまして、部局横断的かつ総合的な取り組みが必要と認識しております。
こうしたことから、プロジェクトの推進に当たりましては、市町村、大学、NPO、企業など多様な主体で構成する研究会を設置いたしまして、先端技術の導入などによる先進事例の調査を行いながら、モデル地域における具体的な課題を解決するための方策を検討することとしております。
さらに、部局横断的な検討を組み合わせ、地域コミュニティーのさまざまな課題を解決していくための国等の各種支援制度を効果的に活用して、取り組んでまいりたいと考えております。
〔保健福祉部長八重樫幸治君登壇〕
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) まず、生活困窮者対策についてでありますが、県内においては、生活困窮者に対する支援として、事業者や個人、企業等から提供を受けた食料品により、緊急対応が必要な世帯に食料支援を行ういわゆるフードバンクは、県内全ての生活困窮者自立相談支援機関において実施されており、平成28年度の利用件数は延べ1、138件、平成29年度の利用件数は延べ1、027件となっています。
生活困窮者への支援を着実に進めるためには、困窮状態にある方を早期に把握し、確実に相談支援につなげる取り組みが必要であることから、生活困窮者自立相談支援事業により、ワンストップの相談支援や就労、家計改善、子供の学習等を支援する事業を一体的に実施するとともに、自立相談支援機関を中核として、フードバンクも含め、地域における多様な関係機関等の連携体制を強化し、生活困窮者への包括的な支援の充実に努めてまいります。
次に、介護人材の確保についてでありますが、昨年12月の県内の有効求人倍率は、全産業の1.46倍に対して、介護職では2.76倍となっています。また、介護労働安定センターの平成29年度介護労働実態調査によれば、県内の約7割の事業所が、職員の不足感があると回答しており、介護人材の不足が顕著な状況にあります。
このため、県では、参入の促進、労働環境・処遇の改善及び専門性の向上の三つの視点から、介護の仕事のイメージアップに向けた情報発信、介護人材キャリア支援員による求人、求職のマッチング支援、労働環境の整備、改善を促進するセミナーの開催、介護職員初任者研修の受講料の補助などの人材確保対策を総合的に進めてきたところであります。
来年度においては、これまでの取り組みに加え、新たに介護職員等合同入職式開催への補助や外国人介護人材に関する理解促進を図るセミナーの開催などに要する経費を当初予算案に盛り込んだところであり、こうした取り組みにより、新卒者のみならず、元気な高齢者や外国人の方々など多様な人材の参入を促すとともに、就職した方々の職場への定着を図ることで、今後必要とされる介護人材の確保に努めてまいります。
次に、農福連携についてでありますが、今年度、県が実施した障がい者就労継続支援事業所に対する実態調査によると、農産物を生産している、施設外就労として農作業を受託していると回答した事業所は、雇用契約による就労を行うA型で45カ所中25カ所、福祉的就労を行うB型で157カ所中69カ所であり、県内事業所の約半数が農福連携に取り組んでいる状況にあります。
また、農福連携を進める上での課題として、事業所職員に農業に関するノウハウがない、農業者の障がいに対する理解促進が必要であるなどの回答が寄せられたところであり、就労の場としての農業の意識を高めることが必要であると考えています。
県では、事業所職員向けの農業セミナーや農業者向けの障がい者理解に係る研修会の開催、事業所と農業者との作業受託に係るマッチング支援などを行う農福連携総合支援事業を今年度から実施しており、来年度においては、就労継続支援事業所に対するアドバイザー派遣に農業普及員を活用するなど、事業所の農業への意識を高めることで、農福連携の取り組みを一層推進してまいります。
次に、介護分野における外国人労働者の確保等についてでありますが、本県では、岩手県社会福祉協議会が行う介護福祉士修学資金貸付制度において、国籍を問わず貸し付けの対象とし、一定年数県内の介護事業所で就労した場合は返還を免除していることから、外国人介護人材の確保にも活用され、これまで外国人に対して3件の貸付実績があります。
議員御紹介の北海道東川町の取り組みは、従前から町立の日本語学校を設置するなど外国人留学生誘致を推進してきた町の特色を生かし、介護福祉士資格の取得に加え、日本語能力が十分でない留学生に対する日本語学習についても支援する点に特徴があるものと承知しています。
県としては、県内の介護事業者においても外国人介護人材受け入れへの関心が高まっていることを踏まえ、来年度当初予算案に、外国人介護人材に関する理解促進を図るセミナーの開催経費を盛り込んだところです。
今後とも、全国の先進事例について情報収集するとともに、市町村や介護事業者、介護福祉士養成施設協会など関係団体の意見も伺いながら、外国人介護人材の確保に向けて必要な取り組みを検討してまいります。
〔文化スポーツ部長菊池哲君登壇〕
〇文化スポーツ部長(菊池哲君) 鬼剣舞のユネスコ無形文化遺産への登録についてでありますが、民俗芸能は、地域の生活や風習、信仰などと結びつきながら育まれ、受け継がれてきた貴重な財産であるとともに、演ずる人たち、鑑賞する人たち、そして、それぞれの地域コミュニティーの重要なよりどころであり、地域活性化を牽引する役割をも担っていることなどから、民俗芸能団体や市町村と連携し、保存、継承に取り組んできているところでございます。
そうした中にあって、今般、ユネスコの無形文化遺産登録を目指し設立された全国民俗芸能「風流」保存・振興連合会に、本県からは、北上市、奥州市の四つの鬼剣舞の団体と盛岡市の永井の大念仏剣舞が加盟したところでありまして、同連合会には、県も特別会員として参画し、今後、早期に登録が実現されるよう、同連合会での取り組みなどを通じ支援していく考えでございます。
〔企画理事兼総務部長佐藤博君登壇〕
〇企画理事兼総務部長(佐藤博君) 地域コミュニティーにおける防災体制についてでありますが、地域における共助の中心的な役割を担う消防団や自主防災組織の担い手の確保が喫緊の課題と捉えているところです。
まず、消防団員数を見ると、平成30年4月1日現在2万1、755名であり、条例定数充足率は84.6%と前年度と比較して0.4%のマイナスとなっています。
このため、県では、消防協会、市町村及び関係機関と連携し、消防団員の加入促進に向けて、特定の活動のみに参加する機能別団員や特定の活動、役割のみを担う機能別分団の導入を促しているところです。
また、若者や女性の加入促進に向けた広報活動として、団員募集ポスター、パンフレットの配布、大学祭等でのPRなどに取り組んでいます。
消防団の理解、協力や支援に向けては、いわて消防団応援の店や消防団協力事業所の登録などを実施しているところであり、今後、こうした取り組みを強化していくこととしています。
自主防災組織の充実に向けては、地域防災サポーターの派遣やリーダー研修会の開催など、これまでの取り組みに加え、来年度から、市町村と連携し、50名程度の防災士の資格取得を目指す養成研修を実施することとしており、これにより自主防災組織の中核を担う人材を育成していくこととしています。
今後におきましても、消防協会、市町村及び関係機関と連携を図りながら、共助を支える防災体制の担い手の確保に取り組んでまいります。
〔農林水産部長上田幹也君登壇〕
〇農林水産部長(上田幹也君) まず、農業分野の労働力確保についてでありますが、本県農業を持続的に発展させていくためには、農業に意欲を持って取り組み、地域をリードする若い新規就農者を確保、育成することが重要であります。
このため、担い手の世代交代や新規就農者の定着率などを勘案いたしまして、本県の新規就農者を年間260人確保していくことが必要と考えており、政策推進プラン案の具体的推進方策指標に設定しているものでございます。
県では、この新規就農者の確保に向けまして、県内外における就農相談会や、農業大学校生を対象とした農業法人等による会社説明会の開催、農業研修の受け入れ先のあっせんや短期農業体験の実施などに、引き続き取り組むこととしております。
また、就農後の経営の安定化に向けましては、農業次世代人材投資事業による年間最大150万円の給付、経営の発展に必要な機械、施設整備への支援、農業大学校における経営発展段階に応じた体系的な研修の実施などに、引き続き取り組むこととしております。
今後とも、新規就農者が早期に経営を確立し、地域の担い手として定着できるよう、関係機関、団体との連携を密にし、積極的に支援してまいります。
次に、農業分野における外国人労働者の確保策についてでありますが、農業就業人口の減少が進行する中、本県の農業生産を維持、拡大していくためには、農業経営を支える雇用人材を、外国人を含め安定的に確保していくことが重要であります。
現在、国においては、これまでの外国人技能実習制度に加えまして、一定の専門性や技能を有し、即戦力となる外国人材の就労を目的とした新たな在留資格に係る制度の創設が進められております。
この制度では、農業者による外国人材の直接雇用のほか、派遣事業者による農業者への派遣の形態が示されております。受け入れ機関の一本化などで労働力を農繁期に融通する仕組みは、有効な手法と考えております。一方、現時点で、外国人材の雇用条件など制度の具体的な内容は示されておりません。
したがいまして、県といたしましては、国の説明会への出席など、新たな制度に関する情報収集に加えまして、農業団体と労働力確保に係る意見交換などを行っており、引き続き、外国人材の受け入れを含め、農業経営を支える雇用人材の確保に努めてまいります。
次に、農地の生産基盤整備についてでありますが、本県農業の持続的な発展を図っていくためには、生産性、収益性の高い農業の実現に向けて、生産基盤の整備を着実に進めていくことが重要であり、県では、これまで、平地地域における大区画化や中山間地域におけるきめ細かな基盤整備を推進してまいりました。
農業生産基盤の整備は、生産コストの低減、高収益作物の導入といった農業競争力の強化はもとより、農業経営の安定による後継者の確保にも効果を発揮するなど、地域農業に欠かすことのできない事業であることから、引き続き、計画の推進に向け、必要な予算の確保に努めてまいります。
また、地域においては、水田の大区画化などの圃場整備を契機といたしまして、経営規模を拡大し、自動操舵装置つきトラクターを導入するなど、スマート農業に取り組む事例も見られるところであり、引き続き、いわてスマート農業推進研究会が中心となって進められる農作業の省力化等につながる技術の開発、普及の取り組みとも連携しながら、スマート農業の技術の効果がより発揮されるよう、必要な基盤整備に取り組んでまいります。
次に、畑地かんがい施設整備についてでありますが、畑作農業の振興を図るためには、畑地かんがい施設の整備が重要であることから、県では、これまで、県北や県南地域の畑作地帯を中心に、水源となるダムなどの基幹的農業水利施設の整備を推進し、事業は全て完了したところであります。
現在、この基幹的農業水利施設に接続するパイプラインや、圃場におけるスプリンクラーを初めとした給水施設の設置など、約800ヘクタールの畑を対象として畑地かんがい施設の整備を推進しており、今年度末までに約770ヘクタールが完了する見込みで、2019年度以降の事業量は約30ヘクタールとなるものであります。
また、今後5年間で新規に取り組む面積は約300ヘクタールと見込んでおり、当面、これらを対象といたしまして、畑地かんがい施設の整備に取り組むこととしております。
このため、県では、引き続き必要な予算の確保に努めつつ、継続地区の早期完了を目指すとともに、新規に取り組む地区につきましては、畑地かんがい効果の情報提供等を行いながら、地域の合意形成を促進し、着工に向けた事業計画の策定に取り組んでまいります。
次に、中山間地域における持続可能な営農体系についてでありますが、本県の中山間地域は、急勾配、農地分散など不利な生産条件のもとで、小規模、兼業農家など、多くの農家が生産活動に携わっている状況にあります。こうした多様な農家が参画した農業生産などを通じて、農業者の所得向上を実現していくことが重要であります。
このため、県では、集落営農組織におけるパイプハウスでのトマト等の作付や、耕作放棄地等への醸造用ブドウの新・改植、栽培棚の整備、また、加工品の製造販売等の取り組みを支援してまいりました。
今後におきましては、引き続き、地域の立地条件を生かした高収益作物の生産拡大や、多彩な資源を活用した6次産業化の取り組みを促進するとともに、園芸の施設栽培において、ICTの活用により、通年での栽培が可能となり単収を飛躍的に向上させる環境制御装置の導入を進めてまいります。
次に、米の生産費についてであります。
稲作農家の経営安定に向けましては生産コストの低減が重要でありますことから、平成30年2月に策定いたしました、いわての美味しいお米生産・販売戦略に基づき、県内9地域で稲作生産コスト低減地域行動計画を作成し、生産コストの低減に取り組んでいるところであります。
具体的には、農地利用集積による経営規模の拡大や直播栽培等の導入による労働費の低減、鶏ふんの活用等による資材費の低減などを進めております。
今後とも、市町村や農協等と連携し、一層の生産コストの低減に取り組んでまいります。
次に、米の品種開発についてでありますが、県では、生産者や実需者のニーズに対応し、拡大する業務仕向けの引き合いにも対応した良食味で多収な品種を目標に開発に取り組んでいるところであります。
平成30年度は、品質や収量等を評価するため、高温登熟耐性にすぐれた3系統について、県内5カ所で現地試験を行ったところであります。来年度は、現地試験の結果、有望と認められる1系統について、年次の違いによる品質や収量等を確認するため、引き続き県内数カ所で現地試験を行うこととしております。今後、これらの現地試験の結果を踏まえ、おおむね2020年度までを目途に品種登録の可否について検討することとしております。
次に、肉牛販売頭数の減少についてでありますが、本県の肥育牛の飼育頭数は、過去の大規模経営体の廃業や子牛価格の高騰で肥育素牛の確保が困難になることなどによりまして、この10年で約1万頭減少いたしました。その一方で、全国肉用牛枝肉共励会において最多11回の日本一を受賞するなど、本県の肉用牛は高い評価を得ております。これまで積み上げてきた評価を強みとして、出荷頭数をさらにふやし、生産者の一層の所得向上を図ることが重要と考えております。
このため、県では、牛舎等の整備や肥育素牛の導入、乳牛等への和牛受精卵移植による肥育素牛の生産拡大などの支援のほか、肥育経営の安定化に向けた牛マルキンの活用などを行っておりまして、肥育牛の飼育頭数はここ数年増加傾向にございます。
今後、こうした取り組みに加えまして、肥育農家に肥育素牛を安定供給するための拠点施設、いわゆるキャトルセンターを整備するなど、生産者、関係団体と一丸となって本県の肉用牛生産の拡大と生産者の所得向上に取り組んでまいります。
次に、肉用牛の地域ブランドについてでありますが、前沢牛を初めとする地域のブランド牛は、産地の生産者や団体が主体となって長年ブランドとして育んできたものでございまして、しかしながら一方で、肥育農家の減少等により、その出荷頭数は減少しているところであります。
県産和牛のブランド価値を高めるためには、市場関係者の声に応えられるよう、一定以上の出荷頭数を継続して確保することが重要でございます。このため、現在、農業関係団体と連携しながら、統一ブランドのいわて牛として出荷頭数を確保できるよう、各産地の関係機関と協議を進めているところであります。
今後も、関係機関、団体が一丸となりまして、いわて牛の品質の高さを強くアピールしながら、県産肉用牛の有利販売につながるようブランド力を高めてまいります。
次に、全国和牛能力共進会に向けての取り組み方針についてでありますが、前回の全国和牛能力共進会宮城大会では目標とする順位を獲得できなかったことから、県、関係団体で組織する出品対策委員会において、全共出品者等の意見や全国和牛能力共進会宮城大会における上位入賞県のベンチマークなどを踏まえ、昨年7月に第12回全国和牛能力共進会総合戦略を策定したところであります。
今年度は、この戦略に基づき、出品候補牛を生産する繁殖雌牛の受胎率向上に向け、これを指導する県や関係団体の職員を対象に飼養管理技術の研修会を開催いたしましたほか、高能力な出品候補牛の生産に向けて、約750頭の繁殖雌牛の毛根を採取し、ゲノム解析を行っているところであります。
来年度以降は、出品候補牛の生産に向け、新たに、牛肉のおいしさの指標とされるオレイン酸含量の高い遺伝能力を持つ優秀な種雄牛と選抜された優良な繁殖雌牛との計画交配を行うとともに、誕生した候補牛はゲノム解析技術を活用して選抜し、高い技術、経験を有する肥育農家のもとで飼養管理していくこととしております。
今後におきましても、生産者や関係団体と緊密に連携しながら、いわて牛の評価向上、上位入賞に向けて計画的に取り組みを進めてまいります。
次に、綿羊を活用した地域の振興についてでありますが、綿羊の導入は、転作田の管理と荒廃農地の再生だけでなく、ラム肉の生産、販売や羊毛の商品開発、グリーンツーリズムとの連携など、中山間地域の活性化につながるものと評価しております。
このため、県では、本年度から国の地方創生推進交付金を活用し、いわてのめん羊里山活性化事業を実施しており、昨年8月に岩手めん羊研究会を設立したほか、飼養管理技術研修会の開催や普及冊子の作成、ラム肉の商談会や羊毛商品の開発などの取り組みを進めております。
また、綿羊の飼養拡大のためには、近親交配の予防が重要であります。先進的に綿羊を導入してきたJA江刺では、県内民間牧場との個体交換のあっせんを行っているところであります。
今後は、岩手めん羊研究会の活動を中心に、新たに、県内外におけるレストランフェアの実施や綿羊と触れ合うツーリズム活動の支援に取り組むとともに、血統管理に関する研修会の開催などにより綿羊を活用した中山間地域の活性化を図り、その普及につなげてまいります。
次に、豚コレラへの対応についてでありますが、昨年9月、岐阜県の農場で国内では26年ぶりとなる豚コレラが発生し、現在、1府4県の31農場で発生が確認され、また、岐阜県、愛知県では野生イノシシについても163頭で感染が確認されております。
県では、今回の発生を受け、発生状況等を県内全134農場及び関係者に速やかに情報提供し、注意喚起を促すとともに、最初の発生が確認された昨年9月、及び複数県に発生が拡大したことを受け、今月15日に養豚関係団体等を対象に豚疾病防疫連絡会議を開催し、本病の侵入防止対策を徹底したところであります。
また、平時より県内全ての農場を対象に年1回巡回指導を行っており、飼育衛生管理状況の確認等を行うとともに、抗体検査を実施し清浄化を確認しているところでありますが、今回の発生を受け、さらに侵入防止に万全を期すため、本年1月に大規模農場等を対象に緊急立入調査を実施し、異常がないことを確認したところであります。
今後も、生産者や関係団体等と連携を図りながら、侵入防止に全力を挙げて取り組んでまいります。
次に、放射性物質に汚染されたシイタケほだ木の処理等についてでありますが、指標値を超過したほだ木につきましては、シイタケほだ場の隣接地等に一時保管され、適正に管理されており、放射能の影響はないものの、産地再生に向けては早期の処理が必要と認識しております。
ほだ木処理の進捗状況でありますが、平成31年1月末現在で46%、昨年同期と比較して14ポイントの上昇となっており、着実に処理が進んでおります。引き続き関係市町村等の課題等を把握し、必要な助言等を行っていくなど、県といたしましても、早期に処理が進むよう積極的に支援してまいります。
次に、指標値を超過した原木林への対応についてでありますが、将来にわたって生産者が安心して利用できる原木を確保していくためにも、こうした原木林を伐採し、その再生を進めていく必要があると認識しております。
このため、県では、平成26年度から国庫補助事業を活用し、県南部において指標値を超過した原木林の伐採、更新を進めており、これまでに約380ヘクタールで伐採、更新を行ったところであります。引き続き、生産者が安心して利用できる原木を確保するため、原木林の伐採、更新を支援し、その再生を進めてまいります。
〔商工労働観光部長戸舘弘幸君登壇〕
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 外国人労働者の新たな在留資格制度の概要についてでありますが、出入国管理及び難民認定法の改正によりまして新たに設けられた在留資格として、特定技能1号と特定技能2号がございます。
まず、特定技能1号は、介護、農業を含む14の特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を有する業務に従事する外国人に向けた在留資格でありまして、在留期間は、通算で上限5年までとされております。
なお、この特定技能1号の在留資格要件のうち、技能水準及び日本語能力水準については試験等で確認されるものですが、既存制度でもあります外国人技能実習制度により3年間の技能実習を修了した外国人は、これらの試験等が免除されることとなっております。
次に、特定技能2号は、建設と造船、舶用工業の二つの特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人に向けた在留資格でありまして、これにつきましては在留期間の上限は設けられておらず、技能水準については試験等で確認することとされているものでございます。
〇24番(高橋孝眞君) 答弁、まずはありがとうございました。
知事にお伺いしますが、現在の計画につきましては、希望郷いわての実現に向かってかなり近づいた、土台を築いた、こういうことであります。あと1カ月あるわけでありますけれども、現計画を完遂した。知事は完遂という言葉が好きなようでありますけれども、完遂をしたと考えてよろしいのかどうか。
それから、次期総合計画でありますけれども、私は、幸福度を高めるということは全ての県民が幸福になることですかと質問したところでありまして、幸福度数と全ての県民ということとはまた違うように私は思うわけでありますけれども、まずこの点から知事にお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 完遂ということで、私どもがかつて本格復興完遂年と言ったときは、県の復興計画の本格復興期間における復興事業をきちんとやるという意味で使っていたわけでありますけれども、そういう意味では、現行いわて県民計画に掲げられた事業については、それぞれ事務の執行がなされて─それぞれの事務についての評価は行政評価ということで議会にもお示ししているとおりでありますけれども─そういう意味では完遂されたと言っていいと思います。
再質問の内容については記憶に頼って話させていただきますけれども、全ての県民が幸福になるのかという質問でありました。新しい総合計画はお互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現を目指すわけでありますけれども、お互いの幸福を守り育てるために10の政策分野ごとの施策やプロジェクトなどが定められておりまして、その施策の一つ一つを見ていただきますと、この中に自分の幸福に関係する施策がない県民というのはなかなか想定できないところでありまして、さまざま悩み事があって困っている県民ほど、この計画の中にそれを解決し、幸福度を高めていくための施策が盛り込まれているわけでありますので、これらの施策を遂行していくことでお互いの幸福を守り育てる希望郷いわてが実現するというふうになっております。
〇24番(高橋孝眞君) 全ての県民が幸福になるのだと。私は、そういう計画を次期総合計画でつくっていく、計画をしていくのだというふうに地域でお話をしておりますけれども、それであればまた別な言い方をしなければいけないのかというふうに感じたところであります。ただ、知事は演述の中で岩手にかかわる全ての人たちを幸福にできる県というふうにお話ししておりまして、私は、そういう意味では─感覚の問題ではありますけれども─全員が幸福になれるように計画をつくっていく、そのことが大事なのではないかと思います。
先ほど具体的な回答はありませんでしたけれども、生活困窮者をなくすのかふやすのか、極端に言うとそういうことになるのですけれども、やっぱりなくすような仕組みというものを考えていく。生活困窮者に寄り添っていくということもそのとおりかもしれませんが、困窮者をなくす政策を考えていくというのが私は大事なのではないかと思います。
全国和牛能力共進会の関係で、ゲノム解析のお話があり、まずは上位入賞をと、こういうことでの回答ですけれども、私自身は、何回も言いますけれども、改良増殖計画そのものを基準として、基本としてゲノム解析をしてもどうしようもないのではないか、太刀打ちできないのではないかと思います。そういう意味合いでは、その方針そのものを変えながら、目標値をきっちり持って、そして種雄牛をつくっていく、素牛をつくっていく。その中で、ゲノム解析だけでおいしさがはかれる牛といいますか、はかって牛をつくっていくというのはまた別だと私は思いまして、やっぱりその牛の能力を高めていかなければいけないと思います。
そういう意味では、肥育開始をいつからにするかとか、肥育、飼養管理をステージごとにどうするか、そういうことまでいかないと私は上位入賞はできないのではないかと思うわけでありまして、これらを開催日程までの逆計算しながら─ゲノム解析したからいいのだということではなく─取り組んでいただきたいと思います。
それから、豚コレラの感染防止でありますけれども、イノシシにも感染というふうに考えられるわけでありまして、今、ワクチン接種等の話もあるわけですが、国はしないということですから、私はそれでいいのだと思います。野生のイノシシにワクチン接種をするなんていうことはあり得ないわけでありまして、行動範囲が10キロメートルというような話もありますけれども、この対策を─遠いからいいのだということではなく─今のうちから駆除するなり、地域でイノシシが見つかった場合は情報提供してもらうとか、そういうことをしていかないとなかなか……。遠いからいいのだという感覚でいることは余りにも危険なのではないかと思いますので、そのこともお話しさせていただきたいと思います。
人材確保の関係は、どの部署でも必要なわけでありまして、高齢者の割合が増加するということは、生産年齢人口が減るということであります。介護も製造業も工業も農業も、みんな新規就業者を集めます、こういう話をしても、現実的ではないと思います。そういう部分を調整できるような仕組みを考えていかなければいけないのではないかと思うところでありまして、これは回答は要りませんけれども、いずれそういうことを考えていただきたいと思います。
基盤整備事業も、特に中山間地、山間地は100年以上も先ほど言ったようにかかるわけです。100年以上もかかる中山間地でありますから、ここに農地を集約するとかどうのこうのという話をしても、なかなか担い手を確保できないと思います。そういう意味合いでは、そこで生活できるような仕組みというものを考えていかないと、消滅可能性都市ではないのですけれども、農地なり土地利用というものをきっちりと考えないと集落が崩壊してしまうのではないかと思っています。
先ほど3省にまたがる事業についてはいろいろ横の連携をとってというようなお話でありましたけれども、国が縦割りだから県も縦割りでいいということではないのではないかと感じるわけでありまして、そういう意味合いでの組織というものをもう一度考えていく必要があるのではないかと思います。そうしないと、今回の総合計画、何ぼすばらしい計画をつくっても、絵に描いた餅ではないかと感じるところであります。
そういうことを申し上げまして、知事にお伺いしたいと思います。
知事の次期総合計画にかける思いといいますか、全ての人たちが幸福を実感できる県とすることでありますが、知事自身が先頭に立って、県職員はもとより、あらゆる団体、市町村、関係機関を巻き込み、10カ年計画、まずは、当初4年間のアクションプランを完遂するという強い決意といいますか、意気込みをお示し願いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) まず、議員がおっしゃる全ての県民を幸福にする、あるいは全ての県民が幸福になるという言葉についてでありますけれども、幸福であるか幸福でないかという二つに一つの考え方はいわて県民計画最終案はとっていないわけでありまして、いわて幸福関連指標という言葉があるように、今の幸福度よりも高くなる、今の幸福度よりも低くなるというような、つまり、幸福かどうかという言葉の使い方をしますと、今、幸福だと言って、では、それ以上の幸福はないのか。もし、それ以上幸福になり得るなら今は幸福と言えるのかみたいなことが起こるのだと思うのですけれども、計画は幸福を守り育てるという言葉を使っていて、今、県民誰でも守るべき幸福というのはそれなりに持っているのではないか。幸福というものをまず守る、そして育てるということのための計画でありまして、幸福ではない人が幸福になるというような発想ではないところは計画の読み方としては気をつけていただきたいと思います。
私自身の個人の思いとしては、知事演述でも申し上げたように、洞口留伊さんや、洞口さんが代表するような被災地の皆さんを幸せにしたいと思っていますし、全ての岩手県民を幸せにしたいとも思っております。そして岩手にかかわる全ての人を幸せにしたいとも思っておりまして、せっかくすばらしい岩手に生まれ育ち、岩手の人たちからさまざまなことを教えていただき、育ててもらって、今、岩手県知事にしていただいているわけでありますから、その恩に報い、自分の人生の意味というものを自分なりに納得できるものにするためにも、全ての岩手県民と岩手にかかわる全ての人を幸せにするために、新しい総合計画が力強く推進されていくよう全力を尽くしたいと思います。
〇議長(佐々木順一君) 次に、佐藤ケイ子さん。
〔7番佐藤ケイ子君登壇〕(拍手)

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