平成31年2月定例会 第16回岩手県議会定例会会議録

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〇43番(伊藤勢至君) 改革岩手の伊藤勢至です。通告に従い順次質問いたします。
第1は、今年度策定中の今後10カ年にわたる次期総合計画についてであります。
大要の説明の際に、知事は、一言で言えば県民の幸福を追求する計画であると述べられました。これは岩手県のリーダーとしての究極の目標であり、私は至極当然のことと受けとめております。何となれば、この世に生を受けた者として、誰でも不幸を目指す人はいないと思うからであります。
去る1月27日発売のサンデー毎日に、47都道府県幸福度ランキングが掲載されました。本県は31位。東北では、山形県が10位、秋田県が28位、宮城県が36位、福島県が39位、青森県が46位でありました。
これは、一般財団法人日本総合研究所が主体となって調査し、1年置きに発表される都道府県ごとの幸福度の順位ということであります。調査が始まったきっかけは2011年の東日本大震災津波であり、それまで幸福度はGDP─国内総生産と結びつけて考えられることが一般的でありましたが、震災を機に、生活の質、心の豊かさに着眼点を移そうという話が起き、ランキングを決めるに当たっては、県民所得など経済面のみならず、人口増加率なども細かく見ているほか、健康、文化、仕事、生活、教育など多角的に精緻な分析が行われているということであります。しかし、幸福度のはかり方に明確なルールはないので、違った観点で幸せとは何かを考えてもいいはずとも言っています。
本県が策定中の次期総合計画には、県民目線での目標が隅々まで行き渡っており、立派な計画であると認め賛成をいたします。都道府県ランキングも一つの目標と捉え、県民の総力で前に向かいましょう。
ただ、10年にわたっての長期計画となりますので、3年に1度くらいは立ちどまり、振り返り、改めて行く先を見詰める余裕を持つことも必要と考えます。知事はどのようにお考えか伺います。
次に、巷間よく使われている議会と知事は車の両輪という言い回しについて、私見ではありますが、その根幹の理解がこのごろぶれているのではないかと思うところがあります。
二元代表制の根拠として、日本国憲法第92条及び第93条、地方自治法第89条、第138条の4及び第139条がありますが、1分の1たる知事と48分の48の議会、48分の1の議員それぞれの関係に関して、法律上の規定はありません。
本年は明治151年。岩手の地方自治は、これまで歴代の知事と県議会が連綿と切磋琢磨しつつ築き上げてきた成果であり、先人の皆様に、今を生きる一人として改めて敬意を表したいと思います。
これまでの県政史上、議会と議員の関係については、ルールの有無にかかわらず、議員の矜持によって明確に保たれてきたと思います。議員は、それぞれの地域の負託を背負ってこの場に臨んでいるわけですが、それを満たす潤沢な予算があるわけではありません。ならば、我々は互恵互助の精神で、しかし、県勢発展に欠かせないここ一番の際には、一枚岩にまとまる決断も必要であります。
知事は、我々県議会に、そしてそれを構成する県議会議員に何を期待し、何を望まれているのか、我々を支援していただいている県民の皆様に語りかけるつもりでの御答弁をお願いいたします。
次に、防災対策について伺います。
東日本大震災津波からもうすぐ丸8年を迎えます。また、26名のとうとい命を奪った平成28年台風第10号災害の発生から間もなく2年半がたとうとしております。改めて、犠牲になられた方々の御冥福をお祈りし、いまだ応急仮設住宅等で不自由な暮らしを余儀なくされている方々を初め、被害を受けられた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。
現在、学会やメディアでは、首都直下型地震、東海・東南海・南海地震津波が取り沙汰されております。しかも南海トラフに関連してのマスコミの報道等では、地震発生の5分後に30メートルの津波が沿岸に押し寄せるとしております。東日本大震災津波の4年前に発生した岩手・宮城内陸地震発生からの経過を考えるとき、かなりの確率で首都直下型、東海・東南海・南海地震津波が迫っていると予測するべきであります。そして、それはまさに日本国存亡の危機であり、国難であります。
我が東北は、これまでの歴史の中で5度、中央政権に征服されたときがあります。すなわち、坂上田村麻呂の蝦夷征伐、前九年・後三年の役、源頼朝の奥州攻め、豊臣秀吉の奥州仕置き、戊辰戦争であります。これは、東北大学経済学部卒業の平間久雄氏が、1999年7月14日に発行した東北の戦略の一節で述べていることです。
明治維新以降、東北の地は、白河以北一山百文とさげすまれてきました。そういう中で、そしらばそしれ、白河以北一山百文の蔑視を受けて立ったのは、南部盛岡藩の家老の家に生まれた平民宰相、原敬であり、仙台の新聞、河北新報でありました。原敬の号は一山、河北新報の河北は、まさに白河以北をあらわす。現代の東北人は、この心意気を忘れてはならないと、東北大学法学部卒業の中名生正昭氏が1995年5月30日に発行した歴史を見なおす東北からの視点という本の中の一節で述べておられます。
さて、首都直下型、南海トラフに関し、この国難とも言える大災害が発生したら、岩手県はどうしますか。これまでの歴史上の過去の恩讐を越えて、岩手県ができることを取りまとめておいて、一番先に手を上げることであります。
東日本大震災津波の際に、兵庫県消防局は、大槌町に50台の消防ポンプ自動車を派遣してくれましたし、東京都は、全国の自治体の中で一番目に50万トンの瓦れきの処理を引き受けてくれる表明をしてくれました。
まず、人命救助については、東北6県が所有する防災ヘリ8機の運用であります。首都圏を飛び越えて神奈川県まで行ってしまっては効率がよくないので、千葉県、埼玉県のどちらかと、発着場について東京都23区の中の北に位置する葛飾区、足立区、北区、板橋区、練馬区などとの連携をとっておくことです。
同時に、耐用年数は十分ありながらも児童生徒の減少により閉校となっている小中学校の校舎を見直すこと。同じく古民家、空き家を見直し、あらかじめ手入れをしておくこと。校舎の手入れは企業誘致のため、民家の手入れは社宅としての活用ということであれば大義名分は立ちます。その場合の必須のものは100%水洗トイレであること、凍結対策をしっかりやっておくことの2点にあります。
首都直下型地震、南海トラフ地震に関しての報道により、疎開─戦争で被害を少なくするため、都会人を地方に転出させること─を考えている企業も民間人もいると聞いております。永田町のしかるべき地位の人たちは、口づてで、出勤、退勤の際は地下鉄に乗らないことを申し合わせているとも聞きました。
災害はないほうがいいのですが、予測されるものについては備える必要があります。そして、それは一番手でなければ意味がありません。そのことにより、都会人の東北、岩手を見る目が違ってくるものと思います。県が策定中の総合計画とは別の目線で考えるべきと思いますが、いかがでしょうか。
次に、県北・沿岸振興に資する国道340号宮古-岩泉間の整備について伺います。
国道340号は、陸前高田市を起点とし、遠野市、宮古市を経由して八戸市に通じる総延長240キロメートル、県北沿岸を縦断する重要な役割を担う幹線道路であります。
県では、国道340号を岩手県東日本大震災津波復興計画において、復興支援道路と位置づけ整備を進めてきました。昨年11月29日、遠野-宮古間の立丸峠工区が完成し、花巻空港-宮古間が30分短縮されました。
12月25日には和井内工区が完成しましたが、押角トンネルから宮古市側4キロメートル、岩泉町側9キロメートルがいまだ工区設定されていません。一昨年は、旧新里地区で国道340号宮古岩泉間整備促進期成同盟会が開催され、1、000名参加、昨年は岩泉町で同じく1、000名参加のもと、大いに意気が上がったところであります。
この岩泉町の決起大会には、初めて田野畑村、普代村からも参加があったところであり、これは、岩泉-普代間に既にほぼ完成している当時の独立行政法人緑資源機構が施工したしもへいグリーンロードがあり、これに接続することにより、龍泉洞から普代村まで25分で結ばれることへの期待のあらわれであると思います。普代村の黒崎灯台、田野畑村の北山崎、鵜の巣断崖、浄土ヶ浜、釜石大観音、花巻市に戻る新しい観光ルートが創出することになります。そしてこれは、宮古、下閉伊の振興に大変重要なことと考えます。
そこで、押角トンネルの前後の区間についても道路改良の整備計画を立案し、幅員拡大等の整備を進め、大型観光バスが通れるようにするべきと考えますので、県北・沿岸振興本部長である千葉副知事に御所見を重ねてお伺いいたします。
次に、復興後の沿岸振興対策について伺います。
これは東日本大震災津波で被災した13市町村の共通の課題で、その基本は海にあると思っています。以下、宮古市、下閉伊郡に限っての提案となりますが、沿岸全体に当てはめてお聞きいただきたいと思います。
まず、人口減の問題であります。
宮古市は現在、人口5万3、000人と言われていますが、復興工事が完成すると、工事関係者が引き揚げ、限りなく5万人を切るとも言われております。自治体関係者が人口減を気にする一番の理由は、国からの交付税が、人口ベースの部分が多く、これは平成27年度の国勢調査の数値ですが─次の国勢調査は平成32年─5万6、000人の人口が5万人を切ると、それだけで5億円から6億円の交付税が減るとの試算もあります。
では、その減収となる部分を何でカバーするか。まず、三陸沿岸道路が完成し宮古-仙台間が2時間半で結ばれること。宮古-盛岡間が70分台で結ばれること。花巻空港-宮古間が2時間台で結ばれること。押角トンネル前後の工区が完成すれば、花巻空港-普代間が2時間半で結ばれること。室蘭-宮古間のフェリーが三陸沿岸道路開通とともに本格稼働すること。花巻空港と台湾の定期便に加え花巻-上海の定期便が就航したことなどを勘案し、地元の観光資源を見直し、磨きをかけ、観光客の誘致に取り組むべきと考えます。
平成の大合併が進んだ結果、県都盛岡市と宮古市は隣接しています。盛岡広域圏47万人の目が三陸沿岸に向かうような取り組みが必要になります。これまで盛岡広域圏の人たちは、特に夏場の海を秋田に求めていたようでありますが、それは単に時間距離によるものと思います。
そこで、第1として、宮古湾内の木材港の活用について伺います。
昨年9月4日、第14回県政調査会が特別委員会室で開かれ、ホクヨープライウッド株式会社、北上プライウッド株式会社代表取締役社長の井上篤博氏を講師にお招きし、国産材の利用促進についてと題した講演をいただきました。要約いたしますと、戦中、戦前に日本の木をほとんど破壊し尽くしてしまい、その後、植林をしようということで、1950年に山梨県で、天皇皇后両陛下に御臨席をいただいて第1回全国植樹祭がスタートし、地道に植樹を進めてきた。現在の日本では、樹齢50年、60年、70年の木が豊富に育ち森林大国になったという大変有意義な御講演でありました。今後は国産材で十分回していける、南洋材は入ることはないと推察したところであります。
宮古の木材港は、宮古港に入った貨物船が積んできた原木を工場に持ち込む前にストックするために使われていました。現在、南洋材は輸入されていないことを考えれば、この際、旧木材港を県民に開放してもいいのではないかと思います。このことにより盛岡広域圏の方々が所有しているボート、ヨット、クルーザーなどの太平洋のベース基地として有効活用できると考えます。リアスハーバー宮古と隣接する木材港の開放は、海活用の基本と考えますがいかがでしょうか。
第2として、本州再東端、北緯39度32分48秒、東経142度04分16秒のトドヶ崎灯台の観光活用について伺います。
そもそもトドヶ崎の名前は、海獣のトドが群集するところ、または荒波が激しくとどろく音に由来しているということであります。
海上保安庁が管理している灯台は全国に3、181基あります。岩手県には74基あります。昨年4月、海上保安庁が、今後おおむね5年間を目途に第4次交通ビジョンを策定しましたが、その中に、灯台観光振興支援、地方公共団体等による灯台の観光資源としての活用等を支援し、海上安全思想の普及を図るとあります。何となくおかたい感じの海上保安庁が、自治体等による灯台の観光資源としての活用を積極的に促し、地域活性化にも一定の貢献を果たしていくとしているのであります。
また、海上保安庁では2018年、西洋式灯台の建設150年を記念して、全国の灯台から150基を選定して灯台カードを作成しました。灯台の現地に足を運んでスマートフォンのアプリで二次元コードを読み取ると、灯台カードのデータが入手できる仕組みを進めており、本県では普代村の黒崎灯台、大船渡市の碁石崎灯台の2カ所が対象ということです。
私がなぜ灯台にこだわるかといいますと、宮古市の観光を語るとき、浄土ヶ浜だけでは足りないのです。宮古市内にもう一カ所、特に内陸の皆さんに喜んでもらえる観光資源としては、本州再東端のトドヶ崎灯台が最適であるとずっと思っておりました。
平成8年、灯台のすぐ下にありました職員宿舎が解体されました。観光で訪れる人たち、特に女性がトイレを借用していたのですが、解体によりそれができなくなりました。その後、平成10年度に、県単独自然公園施設整備事業により4、700万円で水洗トイレをつくっていただきました。現在も使用しております。
宮古-盛岡横断道路が70分台に短縮され、重茂半島をぐるっと回る県道41号─おかげさまでこの3月16日、漁協から重茂トンネルを抜けて国道45号につながる道路が部分開通することとなりました─の短縮により、浄土ヶ浜-灯台のコースが組めることとなり、昼食の提供あるいは宿泊の可能性も高まります。ただ、姉吉漁港から灯台に向かう最初のアプローチの自然歩道が急峻で、せっかく訪ねてきた高齢者の人たちが灯台行きを諦めるというのは残念であります。
東日本大震災津波で脚光を浴びた姉吉の石碑─ここから下に家を建てるな─のあたりから、アプローチの道路を整備すべきと考えますが、いかがでしょうか。
次に、灯台とあわせて重茂半島での温泉掘削について提案いたします。
三陸沿岸の温泉としては、久慈市の新山根温泉べっぴんの湯と大船渡市の五葉温泉しゃくなげの湯っこが知られています。べっぴんの湯は24年前の平成7年に完成届が出ており、しゃくなげの湯っこは22年前の平成9年に完成届が出ておりますが、深さ、湧出量、費用などの諸元は非公開となっておりますので、ここでは触れないことにします。
久慈市も宮古市も大船渡市も、インテルサットからの地層写真によりますと似たような岩層であると思っておりました。重茂半島の音部から北の林野は、高度成長期の約40年前にその4分の2を東京の大手観光会社が所有、現在は太陽光発電をしています。その4分の1を沿岸の経済界のトップ企業が所有しています。これらは、いずれも将来の観光開発が成ったときの先行投資であったろうと思います。
東日本大震災津波以降、三陸沿岸の交通事情がかつてないほどの変化を遂げつつあります。この流れの中で新たな観光開発が可能となるものと思います。そこで、県が三陸観光創出の観点でリーダーシップをとり、土地所有者、宮古市、重茂漁協、三陸鉄道などと協議を始めたらどうかと思いますが、いかがでしょうか。
次に、浄土ヶ浜の立体駐車場設置について提案いたします。
県内でも有数の檀家数を誇ります宮古山常安寺の第7世住職、霊鏡和尚が、初めて浄土ヶ浜を訪れたとき、その美しさに打たれて、定めし浄土とはこのようなところであろうと言われたことから浄土ヶ浜との名になったと言い伝えられております。
浄土ヶ浜は、三陸宮古の観光の目玉でありますが、駐車場がないため、浄土ヶ浜入り口付近に車をとめて小1時間歩かなければ、中浄土ヶ浜、奥浄土ヶ浜に行けません。浄土ヶ浜の一番の絶景ポイントは奥浄土ヶ浜であります。
そこで、奥浄土ヶ浜のレストハウスの前、または中浄土ヶ浜の貸しボート置き場の奥に立体式の3階から5階建ての200台から300台のスペースの立体駐車場を整備し誘客を図るべきと思います。もちろん、国立公園ですから環境省の理解を得ることが第一となりますが、いかがでしょうか。
次に、水産業の振興について伺います。
東日本大震災津波以降、海水温に異常が起きているのではないですか。そして、それが地球温暖化の影響であるとするならば、イカ、サンマ、そして有力魚種のサケの不漁が続いていることが回復するのは相当時間がかかるのではないですか。
北上川に放流したサケの回帰率がよいので、北上川へ帰ってきた親魚の卵にシフトする考えもあるとのことですが、沿岸のふ化場は大体海から1キロメートルぐらいのところに位置しているのに対し、北上川では、盛岡市から宮城県石巻市まで200キロメートルあること、その1キロメートルと200キロメートルのサケの川の記憶の差というのはどう考えていますか。回帰率は大体決まっているので、分母をふやせば帰ってくるサケがふえるとの考えから、早期群の雌ザケを沖合で捕獲し、その卵の採取を行っているようですが、そのサケは、母なる川のにおいを探して、青森県、岩手県、宮城県沖を遊よくしており、その卵は成熟していないので、採取して受精させても結果はよくないと心配する声もあります。
新潟県村上市も日本海で有名なサケのまちでありますが、ここはずっと安定して遡上しています。これらをじっくりと検討していただいて対策を打っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
また、国内では既に陸上でのサーモン養殖という分野が随分進展しているようであります。三井物産は、世界的な人口増加や生活水準の向上を背景に、良質の動物性たんぱく源である水産物の需要が年々増加し、再生産可能な養殖水産物に対するニーズがますます高まっている一方、海面での養殖の適地が限られている中で、今後も伸長する水産物需要を支えるためには、陸上養殖の産業化が必要と判断し、ベンチャー企業である株式会社FRDジャパンと連携しました。
今や陸上養殖の時代となってきました。本県でのサケの養殖についても、このような流れを先取りしていくべきと考えますが、いかがでしょうか。
最後に、岩手県と釜石市が共催するラグビーワールドカップ2019釜石開催について伺います。
いよいよ本年9月の開催が迫ってまいりました。ポスターにあるように、4年に一度じゃない。一生に一度だ。の世界大会であります。県も釜石市も応分の負担をし、平成31年度についてはRWCL─ラグビーワールドカップリミテッド─からの急な要請等に備えるための予備費を県が多く負担しております。
そういう中で多くの方たちから不満のように言われるのは、入場券を申し込んだがなかなか当たらないということであります。競技場に入っての観戦が一番なのはわかりますが、これはラグビーの世界のお祭りなのです。仮に競技場に入れなくても、ファンゾーンやパブリックビューイングでは、大型スクリーンを備えて、わいわいとビールでも飲みながらラグビーを楽しめるのですが、この点の宣伝が知れ渡っていないのではないかと心配しています。
このファンゾーンやパブリックビューイングを本番の前に何度か稼働させ、2015年の英国大会でジャパンが初めて南アフリカに勝った感動の試合のビデオでも流しながら、予行演習をしておくべきと考えます。まず釜石市に燃えてもらい、沿岸からも三陸鉄道を使って押しかければ内陸も火がつくと思います。釜石市長に聞きたいくらいですが、ここは文化スポーツ部長に伺います。
実は、私はこのラグビーワールドカップ2019釜石開催に別の意義を感じています。それは、これまでの歴史の中で、中央に対して5連敗と申してきましたが、それは甘んじて受けるとして、岩手の次の世代には、勝ち星をつけて引き継ぎたいと思ってきました。
100万人都市の3万5、000人収容のユアテックスタジアムを持つ仙台市に負けることなく、東北でただ1カ所選ばれました。これを成功させることで1勝5敗、ILC誘致を決めて2勝5敗、首都直下型地震の際の受け入れを示し、実行して3勝5敗、せめて我々世代の責任として、ここまで押し返して次の世代に引き継ぎたいと思っていますが、このことについて知事はどうお考えでしょうか。
以上で、壇上からの質問を終わります。答弁によりましては再質問をさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 伊藤勢至議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、次期総合計画についてでありますが、長期ビジョンは、県民みんなで目指す長期的な将来像と、その実現に向けて取り組む政策の基本方向を、10年間というわかりやすい時間軸の中で明らかにしているものであります。
また、政策推進プランは、重点的、優先的に取り組むべき政策やその具体的推進方策を明らかにするものであり、毎年度、いわて幸福関連指標の状況や社会経済情勢などを勘案して評価を行うことでマネジメントサイクルを確実に機能させ、計画の実効性を高めていくこととしております。
さらに、4年ごとの政策推進プラン等の策定に際しまして、社会経済情勢の変化や計画の進捗状況など、4年間の取り組みを適切に総括して、その先の取り組みの方向性を見定めて見直し等を行っていく考えでございます。
次に、県議会に対する期待でありますが、岩手県議会は、明治11年に県会議条例により設置されて以来、知事が官選であった時代から、住民に直接選挙で選ばれた議員で構成される機関として、岩手県の民主主義と地方自治の発展に大いに寄与してきました。
戦後におきましても、日本国憲法のもとで、岩手県議会は県内それぞれの地域が抱える問題の解決を図り、また、県全体が直面する課題に取り組み、県政の発展に大きな力を果たしてきたものと考えております。
知事が一人で県を見るのに対し、県議会議員は48人で県を見ていますので、議会は、知事が把握し切れない県の問題を把握し、知事とは別の角度から県の政策を提起することができるものと考えておりまして、今後においても、県民の福祉の増進に貢献する岩手県議会として県民の負託に応えられることを期待いたします。
次に、岩手の勝ち星についてでありますが、ラグビーワールドカップ2019釜石開催は、東日本大震災津波の被災地を代表して、世界中からいただいた支援への感謝を伝え、復興に力強く取り組む姿を世界に向けて発信する大きな役割を担っているとともに、国内外からのお客様にしっかりとおもてなしを行い、岩手と全国、そして世界との新たな強いきずなを生み出す絶好の機会であると考えております。
昨年8月の釜石鵜住居復興スタジアムのオープニングイベントには、日本ラグビーフットボール協会名誉会長の森元首相を初め、文部科学大臣、復興大臣、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣や多くの復興関係者、ラグビー関係者が会場にいらしており、このとき、日本ラグビーの中心が釜石にあり、そして、日本全体が釜石開催の成功を期待していると強く感じました。
ILCは、科学と技術を進歩させ人類の発展に大きく貢献するものであり、その実現に向け、全力で取り組みます。
また、東日本大震災津波の被災県として、議員御指摘の首都直下地震などの大規模災害が発生した場合には、被災者を率先して受け入れるなど、多くの方々を助けられる岩手でありたいと思います。
こうした取り組みに加え、幸福をキーワードとする新しいいわて県民計画に基づく取り組みを推進することにより、岩手の先人の恩に報い、思いに応える岩手をつくり上げ、次の世代に引き継いでいきたいと考えます。
その他のお尋ねにつきましては副知事、企画理事及び関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔副知事千葉茂樹君登壇〕
〇副知事(千葉茂樹君) 国道340号宮古-岩泉間の整備についてでございますが、国道340号は、沿線地域の安全・安心な生活を支えますとともに、かつてないスピードで整備が進んでおります三陸沿岸道路を補完し、内陸と沿岸を結ぶ横軸の復興道路と一体となって機能を発揮いたします重要な幹線道路の一つであると認識しておりまして、県では、復興支援道路に位置づけ、交通の隘路の解消を図っているところでございます。
特に、宮古-岩泉間につきましては、JR岩泉線廃止に伴う代替路線であることから重点的な整備を行っておりまして、昨年12月に宮古市和井内工区が完成いたしましたほか、宮古市と岩泉町をつなぐ押角峠工区は、2020年の供用に向けて整備を進めているところでございます。
一方、押角峠工区の前後区間は依然として道路が狭く、急カーブが多いことから、道路規格の連続性の確保や物資輸送、救急搬送などの面からも、押角峠工区と同様の規格で整備していくことが必要であると考えております。
これまで、押角峠工区の前後区間につきましては、ルートや構造、優先区間の検討を進めてきたところでございますが、まずは、早期の事業効果が見込まれます押角峠工区が接続いたします宮古市側約2キロメートルの区間につきまして、2020年度の新規事業化に向けて、来年度は具体的な調査設計や公共事業評価の手続を進めることとしておりまして、切れ目のない事業の展開に取り組んでまいります。
なお、今議会定例会に提案しております平成31年度当初予算案の編成に当たりましては、県北・沿岸圏域の地域資源を活用した産業振興や広域観光を通じた交流人口の拡大など、地域振興を図る取り組みを推進することを指示したところでございまして、今、申し上げました整備方針につきましても、これらを踏まえたものということでございます。
押角峠工区の前後区間の整備は、議員御提言のような広域的な観光ルートの形成につながりますことから、県北・沿岸地域の観光資源を生かした交流人口の拡大などが図られますよう、本路線の整備についてもしっかりと進め、引き続き、県政の重要課題でございます県北・沿岸振興に総力を挙げて取り組んでまいります。
〔企画理事兼総務部長佐藤博君登壇〕
〇企画理事兼総務部長(佐藤博君) 防災対策についてでありますが、まず、防災ヘリの運用については、首都直下地震が発生した場合、消防庁では、大規模な被害が想定される埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県に対して出動する道府県を割り当てた出動計画を定めているところです。
具体的には、本県の防災ヘリの航空小隊と地上消防部隊で構成する緊急消防援助隊岩手県大隊は、秋田県及び富山県等とともに、埼玉県を応援するために出動する計画となっております。
防災ヘリの航空機用救助活動拠点としては、埼玉県内に16カ所、東京都内33カ所が指定され、駐機や給油等を行うこととされております。
本県の防災ヘリを含む緊急消防援助隊は、毎年、図上訓練で初動体制を確認しているほか、さまざまな災害を想定した救助等の実働訓練を実施しており、昨年9月の北海道胆振東部地震の際は、迅速な対応により、発災当日の早朝に防災ヘリが出動するとともに、地上消防部隊が宮古港からのフェリーにより直ちに現地に向かい、被災地の支援活動につなげたところです。
首都直下地震など他県で災害が発生した際には、迅速な支援ができるよう万全の体制で備えをしてまいります。
次に、被災者の受け入れに向けては、中央防災会議が平成25年12月に示した被害想定では、首都直下地震における建物の全壊、焼失数は、東京都区部の約29万9、000棟を含む全体で約61万棟とされており、被災者の数は膨大な規模になるとされております。このため、国では、平成27年3月に閣議決定された首都直下地震緊急対策推進基本計画において、被災者の受け入れについて、空き家、空室の提供、民間住宅の借り上げ、ホテル、旅館の活用、応急仮設住宅の早期提供等の体制を整備しておくことにより、膨大な被災者の応急住宅需要に対応することとされておりますが、その具体的な対応については示されていないところです。このことから、議員御提案の廃校舎や古民家の利用も一つの手法として考えられるところであり、機会を捉えて国にも意見してまいりたいと考えております。
また、災害の有無とは関係なく、豊かな自然を有する岩手に移り住んで、安心して暮らしていけることへの理解を深めることが重要と考えており、さまざま岩手のよさをアピールしていきたいと考えております。
〔県土整備部長八重樫弘明君登壇〕
〇県土整備部長(八重樫弘明君) 宮古港の木材港の活用についてでありますが、宮古港の木材港は、藤原埠頭の南側のリアスハーバー宮古に隣接し、面積4.9ヘクタールの水域に南洋材などの原木を浮かべて保管するための施設であります。
近年、宮古港での原木の輸入実績は水に浮かない北洋材が主体となっており、これらは全て藤原埠頭に直接陸揚げされているため、平成23年以降、当該木材港では原木の保管は行われていない状況です。
宮古港は、昨年の宮古-室蘭フェリー航路の開設や、本年4月の10万トンを超える大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの寄港など、港湾を取り巻く環境が大きく変化しておりますことから、平成31年度当初予算案においては、長期的視野に立った宮古港の総合的な活用のあり方を検討するための調査費を計上しているところです。その中で、当該木材港についても、地元宮古市や港湾利用者など各方面からの意見を伺い、地域振興の観点も踏まえながら、利活用のあり方を検討していきたいと考えております。
〔環境生活部長大友宏司君登壇〕
〇環境生活部長(大友宏司君) トドヶ崎灯台へのアプローチ道路についてでありますが、姉吉漁港からトドヶ崎灯台に向かう自然歩道は切り立った地形であるため、歩道入口から最高地点の標高110メートルまでを約550メートルの距離で接続しており、急勾配区間が生じております。
議員から御提案のありました姉吉漁港の石碑からアプローチする道路を新設する場合には、現地が三陸復興国立公園の第1種及び第2種特別地域であり、魚つき保安林、土砂流出防備保安林にも指定されていることから、工作物の新築や木竹の伐採、土地の形状変更などの行為が厳しく制限され、また、急峻な区間への擁壁等の設置や沢越えの橋梁整備が必要と見込まれるなど、整備には多額の経費や期間を要することが想定されるところであります。
トドヶ崎灯台までの現在の自然歩道は、本年6月に、青森県八戸市から福島県相馬市までの全線が開通となるみちのく潮風トレイルに組み込まれることとなっており、将来的に利用者の増加が期待されるルートでありますことから、今後、来訪者の状況を踏まえつつ、環境省や宮古市など関係機関とも相談の上、議員から御提案のありましたアプローチ道路も含め、トドヶ崎灯台周辺エリアの環境整備について研究していきたいと考えております。
〔商工労働観光部長戸舘弘幸君登壇〕
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) まず、重茂半島地内での温泉掘削についてでありますが、沿岸の交通ネットワークの整備が進んでいる中、立ち寄りや滞在が期待される観光コンテンツの開発は、三陸でのより広い周遊と、より長い滞在を促進する広域周遊観光に寄与するものと認識しております。そのため、県と沿岸市町村が連携して設置した三陸DMOセンターにおいて、市町村、市町村DMO、観光関係団体や事業者と連携の上、地域が主体となって行う観光コンテンツの開発や観光地づくりを支援しているところであります。
昨年4月には、同センターのサテライトを宮古市内に開設し、地域の方々と一体となった観光コンテンツ開発の取り組みの強化を図っており、市や地元のDMOである宮古観光文化交流協会などの考えを十分にお聞きした上で、周遊滞在型の観光に寄与する方策を考えてまいります。
次に、浄土ヶ浜の立体駐車場設置についてでありますが、浄土ヶ浜は、三陸において大きな集客力がある重要な観光地と認識しておりまして、県としても、浄土ヶ浜へ向かう定期観光バスの運行やバスツアーの造成を支援するなど、誘客に努めているところであります。
また、浄土ヶ浜には、第1駐車場から第3駐車場まで、計、約350台収容の駐車場があり、各駐車場とマリンハウスや奥浄土ヶ浜などとの間を周遊する環境に優しい電気自動車による無料のシャトルバスが、春から秋にかけての土日、祝日や繁忙期には毎日、宮古市により運行されており、平成29年度には約2万7、000人の来訪者が利用しているところであります。
議員御指摘のとおり、浄土ヶ浜は三陸復興国立公園内にあり、開発に当たっては環境省との調整が必要になることに加え、宮古市の条例であります宮古市風致地区内における建築等の規制に関する条例によりまして、浄土ヶ浜地区内での建築に当たっては、高さ制限などの技術基準等に適合する必要があるなどの規制がありますことから、慎重な対応が必要と認識しております。
〔農林水産部長上田幹也君登壇〕
〇農林水産部長(上田幹也君) まず、サケ漁獲量の回復に向けた対策についてでありますが、本県漁業の主要魚種であるサケは、震災後、ふ化場の被災による稚魚放流数の減少、海水温の上昇等の環境変動によりまして漁獲量が減少しており、早急に資源の回復を図る必要がございます。このため、県では、引き続き、計画している4億尾水準の稚魚を放流していくとともに、高水温でも回帰する北上川水系のサケの遺伝子情報等を活用した種苗生産技術の開発に取り組むほか、新たに、生残率が高いとされる遊泳力の高い稚魚の生産に向け、効果的な飼育環境や生産技術の研究を進めることとしております。
今後とも、あらゆる取り組みを推進し、サケ資源の回復に全力を挙げて取り組んでまいります。
次に、サケの養殖でありますが、陸上養殖は、人為的に飼育環境を管理することが可能であるため、気象等の影響を受けず、安定した生産や品質の向上が期待されておりまして、新たな養殖漁業の形態として注目をされていると承知しております。
一方、陸上養殖は、施設整備等の初期費用や電気代等の維持管理費が高額となること、水質の維持管理が難しいこと、魚病発生時の感染リスクが高いことなどの課題があるとも聞いております。近年、株式会社FRDジャパンを初め、幾つかの民間企業におきまして、サーモン類の陸上養殖による生産が開始されたと承知をしております。
県では、今後、これら企業の生産や経営の状況について情報を収集していきますほか、現在、岩手大学が陸上養殖システムの開発に取り組んでおりますことから、県の試験研究機関を中心といたしまして、その状況等について情報共有を行っていく考えであります。
〔文化スポーツ部長菊池哲君登壇〕
〇文化スポーツ部長(菊池哲君) ラグビーワールドカップ2019釜石開催に係るファンゾーンやパブリックビューイングの試行についてでございますが、まず、ファンゾーンは、組織委員会の承認を受け、開催都市に設置する大会公認のイベントスペースであり、釜石においては、釜石市民ホールTETTOに大会期間を通じ開設する方向で調整を進めており、パブリックビューイングを初めとする大会関連イベントや復興関連情報などの発信、飲食を含む観光物産関連ブースの設置などについて、釜石市と検討を進めているところでございます。
ファンゾーンの運営については、これまで、スタジアムオープニングイベントや開幕1年前イベントなどにおいて各種テストを重ねてきておりまして、本年6月に予定している100日前イベントを皮切りにさまざまなイベントを展開し、大会本番に向けての一層の機運醸成や、さまざまな情報発信などに努めていきたいと考えております。
また、釜石市以外の市町村に対しましては、中心市街地などでのパブリックビューイング及びそれと連動した観光物産フェアの開催など、地域活性化等にもつながる取り組みが大会前から継続的に実施されるよう働きかけているところでありまして、より多くの県民が大会を心から楽しみ、さまざまな形で大会にかかわっていただけるよう取り組んでまいりたいと考えております。
このたびの議員の御提案は大変ありがたく、我々の取り組みの励みになるものであります。また、釜石市を初め各市町村にもしっかりと伝え、取り組みを進めていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
〇43番(伊藤勢至君) 知事初め副知事、どうも答弁をありがとうございました。各部長もありがとうございました。
再質問をいたします。まず、灯台についてでありますが、昨日の夕方のテレビで、箱根芦ノ湖の三つの神社が、縁結びの神様として非常に多くの若い女性が訪問している、そういう状況でございましたが、実は灯台でもそれに近いような取り組みをしているようであります。
全国各地の灯台をロマンスの聖地として新たな観光資源にしようと、日本ロマンチスト協会と日本財団が恋する灯台プロジェクトを展開、灯台を2人の未来を見詰める場所と定義して、ロマンスの聖地を図ろうとするものです。現在、全国40の灯台が恋する灯台に認定されており、本県では碁石埼灯台が認定済みということでありますが、これは大いに参考になることだと思います。若い方々のいろんな意味での出会いの場といいますか、そういうことをつくり出していくのも我々の、先を行く大人の大事な役目だと思っていますので、どうぞひとつ情報収集をしながら、岩手県の海をアピールする意味でも、灯台の活用に邁進をいただきたいと思います。
それから次に、サケの問題についてでありますが、私は平成7年の初当選でありました。そして平成8年、過去最高の7万3、000トンの水揚げがあったわけであります。ああ、これは非常にいいことだなと思っておりましたが、平成9年、平成10年と、連続してがたがたと漁獲量が減ってきました。5万トン、4万トン、3万トン。今、2万トンちょっとぐらいまで落ちている状況にあります。
そういう中で、いろんな地元の声を聞いたり、私は、本会議あるいは特別委員会等で、人工養殖のあり方というものについても、いろいろ質疑を繰り返してきたところであります。特に、一旦、自然界に戻したほうがいいのではないか、そういうことに主論を置いてやりとりをしてきたつもりでありますが、そういう中で、平成10年か平成11年ごろ、議会が休みのときであったと思いますが、議員会館のほうに県の飯岡さんという方が私を尋ねてこられまして、サケの人工養殖について御講義を1対1で頂戴したところであります。
どういうお話だったかは忘れましたが、私が自然界に帰すべきだということに対しての説得に来たのでしょうか。お帰りになった後で聞いたら、この方が岩手県のサケ養殖の大権威であるということを聞いてびっくりしたところでありました。だからと言って、私は人工養殖を、それがいいとはいまだに思っておりませんで、やはり一旦は大自然に帰すべきではないかと思っております。
今から10年くらい前に、秋田県では、秋田音頭で歌われております八森ハタハタ、あるいは男鹿で男鹿ブリコのハタハタが全くとれなくなりまして、秋田県では4年間禁漁にいたしました。禁漁にした結果、5年後には量がふえて、帰ってきたという事例があります。魚が違い海も違いますけれども、一旦そういうことに目線を置いていかないと、長期低落傾向には歯どめがかからないのではないかと思っております。
そういう中で、飯岡さんは、岩手県を退官して、ペルーに招かれてサケの養殖の指導をされたようであります。そして何年後かにその方の談話といいますか随想といいますか、朝日新聞でしたか読売新聞でしたか忘れましたが、6段抜きぐらいの記事が載っておりました。自分の人工養殖にかかわってきた部分をいろいろ説明しながら、最後に、やはり魚というものは自然界に帰すべきだと。つまり、天然界に帰すべきだというくだりが載っておりました。その記事を、私はとって持っておったのでありますが、東日本大震災津波で我が事務所も70センチメートルの水をかぶりまして、全部、新聞の切り抜き記事は流されてしまいました。議会の図書室に十五、六年前の記事だけれども探してみてくれと言ったのですが、見つけられなかったということです。
岩手県の権威であった飯岡さんが、自分の職を離れた時点で、やはり天然界に帰すべきだということをおっしゃっているというのは、職を離れればまた違うものだなと思って、その記事を今も探しているのですが。そういうわけで、一旦は、やはり人工という部分から離して天然界に戻すという大決断があってもいいのではないか、そんなことを思っております。
それとあわせて陸上の養殖についてでありますが、余りにも有名なのは近大マグロ、近畿大学がマグロを養殖して、今はもう流通に乗っているわけです。あるいは和歌山、大阪、名古屋、九州、いろいろな大学がそういうことに取り組んでいる中で、岩手大学も、東日本大震災津波後、水産を応援しようという観点から、学部にはまだなっていないかもしれませんが、釜石市にそういう勉強をするスペースを立ち上げていただいた。
しかし、そのテーマが、ちょっと時世の流れといいますか時流に乗っていないのではないか。つまり、今までのサケの人工養殖というのは、それはそれでやりながら、今100%ふ化場が稼働しているとは言えませんので、残っているスペースで新しい、海水を使わない陸上での海の魚の養殖というものにスタンスを変えていくというか、そういうものも両方で勉強しておく。
特に、この岩手を背負って立つ若い方々に新しいテーマを与えていく、それは我々大人の責任ではないかと思っているのですが、農林水産部長、その辺も幅広く考えて、行く先を見て県としてのアドバイスがあってもいいのではないか、このように思いますが、改めてお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 灯台の観光活用についてでありますけれども、お話のありました恋する灯台プロジェクトでありますが、本県では、大船渡市の碁石埼灯台が認定されておりまして、ロマンスの聖地にふさわしい灯台が、恋する灯台として認定されているということであります。灯台を訪れる老若男女をふやして海への関心を高めることにつながるものでありますし、灯台の活用による誘客が期待されるものと存じます。
例えばトドヶ崎灯台などは映画のモデルになった灯台でもありまして、この恋する灯台にまさにふさわしい灯台ではないかと思います。三陸DMOセンターや地域の関係者とも連携いたしまして、恋する灯台への認定の働きかけについて検討していきたいと考えます。
また、県内各地の灯台につきましても、その魅力を生かして、トレッキングなどの体験型コンテンツと組み合わせて、ストーリー性のある旅行ルートを構築してPRするなどの、灯台を活用した誘客を進めてまいりたいと思います。
〇農林水産部長(上田幹也君) まず、お尋ねのありました、恐らく自然ふ化によるサケ稚魚の放流、海へ帰ることを進めてはいかがかということでございます。
河川遡上による自然ふ化でございますが、この場合には、生物の遺伝的な多様性の確保には非常に有効だと言われております。ただ、一方で、本県におきましては、河川に遡上するサケが東日本大震災津波後大幅に減少しておりまして、こういった状況のもとで自然ふ化の部分を拡大しようとしますと、人工ふ化放流に使用するサケの数を減少させる結果となります。
加えて、自然ふ化の場合には、人工ふ化養殖と比べますと、卵から稚魚に育つまで生きるかどうか、生残率と申しますけれども、これが著しく劣ります。データでは7分の1程度と言われております。このため、結果として海へ下る稚魚を大幅に減少させて、さらなる資源の減少を招くことが懸念されるものでございます。
このため、サケ資源が十分に回復するまでの間は、やはりふ化場において適正な飼養管理を行いまして、結果的に6億尾(後刻「4億尾」と訂正)水準の健康な稚魚を放流していくことによって、サケ資源の早期の回復を図ることが重要だと考えております。
河川での自然放流、自然ふ化あるいは人工ふ化との併用につきましては、今後に向けた課題と考えております。
ただいまの放流数を訂正させていただきたいのですが、4億尾の放流でございました。大変恐縮でございます。
陸上養殖の関係でのお尋ねもございました。先ほど答弁の中でも触れさせていただきましたが、岩手大学では、人工養殖のシステム開発に着手しておりまして、県としても、こういったお取り組みについては注目しているところでございます。ぜひとも、私どもの試験研究員もおりますので、意見交換をさせていただいて、情報共有もさせていただきたいと考えております。そういった上で、今後の方向性についてはしっかりと詰めてまいりたいと存じます。
〇43番(伊藤勢至君) 今、上田部長から、定置網の卵を獲得して養殖の部分に使っていくというお話がありました。沖合の定置網というのは、壇上からの質問でも申し上げましたが、母なる川を探して遊よくをしている期間であって、例えば、人間で言いますと5カ月か6カ月ぐらいのお子さんを抱いている状況にあると思うべきだと言う先輩がおりました。つまり、まだ成熟していない沖合の卵をとって、そこに受精をさせても成果はよくないということを言う方がおりまして、そのとおりだろうと私は思ったところであります。
また、人工放流をやっていない川としては、北海道の札幌市の豊平川あるいは標津町の中標津川、ここは、ウライの件はありますけれども、自然遡上をずっとやっている川なのですよ。そして、恐らく回帰率もそんなに落ちていない、そういう状況にあると思います。したがって、そういうところも調査、研究をしながら、三陸と北海道は違うのかもしれませんが、やはり太平洋側のサケという部分で幅広く研究をしていただいて、どうぞ、ひとつ沿岸の有力魚種のサケの、また7万3、000トンとは言いませんが、せめて5万トンあたりを目標にして、安定した回帰率を達成できますように御努力をお願いしたいと思いますが、重ねて言上いただいて、終わります。
〇農林水産部長(上田幹也君) まず、定置網で獲得いたしました親魚─親のサケでございますが、そこから卵を採取いたしまして人工受精をする、いわゆる海産親魚というやり方でございます。
議員がおっしゃるとおり、そういった場合の卵は、やはり未成熟なところがございます。そのために、その未成熟な卵を成熟させた上で受精させる、こういった手順を踏むわけでございますが、水産技術センターで実はこの研究をしておりまして、その結果によりますと、河川の河口で採取した卵の場合と海産親魚の卵の場合とで、それほど大きな違いはないという結果が出ているということでございます。回帰率に関しての変動は大きくはないということでございます。
それから、人工放流をしていない河川が北海道に多いというのは承知しております。本県の場合にも、もし河川遡上のサケが、ある程度のまとまった数が上がるのであれば、そういった状況で自然放流についても十分検討する余地があるかと思います。ただ、今は東日本大震災津波前の3分の1くらいしかサケが川に上がってこないという状況でございます。そういったことで、限られたサケ稚魚をどう生かしていくかが喫緊の課題でもございます。
ただ、北海道のやり方あるいは成果については、ぜひ研究をさせていただいて、勉強して、今後に役立ててまいりたいと存じます。
〇議長(佐々木順一君) 次に、千葉伝君。
〔46番千葉伝君登壇〕

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