平成31年2月定例会 第16回岩手県議会定例会会議録

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〇29番(小野共君) 改革岩手の小野共です。
今回の代表質問の機会を与えていただきました先輩議員及び同僚議員に感謝をいたします。
本会議での発言の機会は、私にとりましては、今任期では恐らく最後になります。本日は会派を代表しての立場だけでなく、議員個人としての思いも発言させていただきます。
まず、この3月11日で東日本大震災津波から8年がたちます。亡くなられた方々に改めてお悔やみを申し上げ、被災された方々、そして被災地の皆様にお見舞いを申し上げます。
新年度、この4月の段階で復興計画が終わっていない自治体が、沿岸12市町村でいまだ4市町あります。しかし、これら四つの自治体も、2020年度末には復興計画が終わる予定であり、同じく、国も2020年度をもって、10年間続いた復興期間を終了させる予定であります。
一方、新年度は県の総合計画の初年度であり、一部の被災自治体にとっても、その自治体がつくる総合計画の初年度となる年であります。この3月には、三陸鉄道が全線開通し、5月には元号が変更され、6月には三陸防災復興プロジェクト2019が始まり、9月には知事選挙、県議会議員選挙があり、9月、10月には釜石市でラグビーワールドカップ2019が行われるという、ことしは沿岸だけでなく岩手全体にとって、復興から新たな一歩を踏み出す重要な年になります。
先日、復興は終わらないと言った沿岸自治体のあるOB職員の方がいらっしゃいました。国の復興期間の終わる2020年度末とは、政治と行政を行う者にとって、何らかの体制や補助を終わらせるために必要なけじめにすぎず、被災された方々、大切な人を亡くされた方々にとっては、2020年度末は復興の終わりではなく、ただの通過点でしかないのだと。確かに、大槌町では、旧役場庁舎の解体が始まったのは、発災から7年と10カ月が過ぎてからのことでした。
さきの大戦を例にとれば、74年経過した今でも、広島県と長崎県の遺族の方々、そして全国の戦没者の遺族の方々は、毎年夏に涙を流し続け、朝鮮半島や中国とは、いまだにぎくしゃくした関係が続いております。被災地、被災者にとって、復興期間終了とされる2020年度末は、確かに終わりでも何でもないと思い知らされるのです。
それでは、行政は、今後、全県民、被災された方々に対し、どのように向き合っていくのかということなのだろうと思います。大きな被害を受けた自治体として、我が岩手は、世界の中でどのような役割を果たし続けていかなくてはいけないのかということだろうと思います。
さきの大戦以降、広島県と長崎県は、核兵器のない平和な世界をあの場所から叫び続けております。被災地、被災者は、あのときあったことを死ぬまで忘れません。言いかえれば、津波を経験した全ての方々が亡くなるまで、復興は終わらないのかもしれません。復興が終わらない被災地において、被災県の知事は、県民と被災者に今後どのように向き合っていくのか、そして、世界にどのようなメッセージを送り続けるのか、我々県民の未来への決意を語る岩手宣言のようなものも必要なのかもしれません。
広島県と長崎県が世界で大きな役割を果たすように、岩手県も、災害により亡くなる人がいない世界、これを訴えていく必要があるのかもしれません。知事の考えを聞かせてください。
本県の漁業施策について伺います。
近年の岩手県沿岸の漁業の水揚げの低迷は、しばしば異常と表現されております。昨年は、春から沿岸南部を中心にホタテの貝毒が発生し、やはり沿岸南部を中心にウニの不漁、夏のスルメイカも記録的不漁と言われた一昨年をさらに下回り、サンマ、アワビ、そして秋サケも不漁です。
本県の漁業施策には、必然性と計画性の視点がより必要なのだと思います。放流と水揚げの関係、生産と水揚げの関係の必然性を探り、漁家が得る所得を、より予測可能なものにしていく努力が必要になるのだろうと思います。
自然が相手でこれは難しいのはそのとおりであります。しかし、今までの漁業には、この視点が軽視され過ぎていたのではないかと思うのです。とれれば万歳、とれなければがっかりというような体質を変えていかなくてはいけない。生産と水揚げの関係をより明確にし、沿岸の漁業の水揚げを、より予測可能なものにしていかなくてはいけないと思うのです。大不漁の秋サケにしても、昨年の貝毒の発生にしても、何が原因でどうすれば防ぐことができるのか、手がかりさえつかめていないのが現状です。
2年後や4年後のある程度の収入がわからなければ、漁家の家庭は、子供たちを大学に行かせることもちゅうちょするかもしれません。漁業を営む家庭へ嫁に来る人も、結婚をちゅうちょするかもしれません。
岩手県漁業担い手育成ビジョンでは、1、000万円以上の収入の経営体の育成を目標にしております。確かに、収入が漁業への担い手を呼ぶ推進力になるのはそのとおりであります。しかし、収入がある程度低かったとしても、その収入が継続的なものであれば、やはりそれは漁業の魅力になるはずです。今の本県の漁業施策には、この視点が抜けている気がしてならないのです。知事の見解を聞かせてください。
昨年、岩手日報社は、1年かけて近年のサケの不漁の原因について特集を組み、さまざまな情報を提供してくれました。長年の人工ふ化の繰り返しと過密状態での稚魚の飼育により、生物としての稚魚の生きる力が弱くなり、結果として、稚魚が環境の変化についていけず、生き残れないから戻ってこないという趣旨のものでありました。確かに、海産親魚は未熟な雌のサケを海で捕獲し、川に持ってきて卵をとるというものです。生物学的に、産卵にベストな状態だとは言えないのだろうと思います。
質問いたします。日本のサケの不漁の原因は、世界的なサケ同士の競合と言われ、対策として、世界の研究者たちの主張は、強い稚魚をつくるというもので一致しているようです。少なくとも、岩手においては、4億尾の放流にこだわらず、自然ふ化を研究し、人工ふ化と併用していくことを考えるべきだと思うのですが、見解を聞かせてください。
次に、岩手の漁業の未来について県の考え方を伺います。
昨年12月、漁業権免許の仕組みを70年ぶりに改正する漁業法が成立しました。有効活用されていない漁場を民間に開放するというものです。しかし、ここで政府の言う有効活用の状況とは、果たしてどのようなものなのかがまだはっきりしておらず、具体的に、沿岸の海域のどのぐらいのスペースがあいていれば、有効活用されていないと判断されるのか、あるいは海域に対してどのぐらいの養殖の数量があれば、有効活用されていると判断されるのかなどが明確にされておりません。
水産業の復興特区を利用し、漁業権の民間への開放を先取りした宮城県においても、企業の参入はこの5年間で1社だけ。その事業者も、水揚げと収益は順調とは言えない状況だと聞いております。しかし、漁業権が法的に地元の漁協と組合員に優先されるものではなくなったということは、長期的には地域外の資本が地元に参入してくることを意味しております。少なくとも可能となります。あわせて、改正出入国管理及び難民認定法の施行で、政府は漁業分野での外国人の受け入れをこの5年間で9、000人と想定しており、岩手における今後の漁業、水産業の育成は、水揚げの低迷が加わり、混迷をきわめております。
質問いたします。漁業法や出入国管理及び難民認定法の改正を踏まえ、岩手の漁業者と漁業の未来をどのように描いているのか、知事の考えを聞かせてください。
続いて、国際リニアコライダー誘致について伺います。
文部科学省は、平成26年にILCに関する有識者会議を設置し、約4年間にわたり国内誘致の妥当性について議論し、その結果を踏まえ、日本学術会議に審議の依頼を行い、昨年12月に日本学術会議がその回答を行いました。
回答は、ILC国内誘致について、現時点では支持するに至らずというものでありました。そもそも日本学術会議は特別法に基づく機関で、その職務は、科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ることとされており、その具体的な役割の一つとして、今回の文部科学省からの審議依頼に対し回答したというものでした。日本学術会議の文部科学省への回答は、これまで御尽力されてきた関係者の皆様の望むものではありませんでしたが、国内への誘致の事業は確かに最終段階に入りました。
宇宙の謎を解き明かす役割の一端を世界の多くの国々の中で、この日本が、そして、それをこの岩手で果たすことができれば、国民の一人として、県民の一人として、誇らしいものだと強く感じております。日本の世界戦略の一環としても、何としても誘致を実現させ、今後の世界の科学技術の発展の一翼を日本が担うべきと、議員の一人として強く思うものです。
質問いたします。さきの日本学術会議の回答で示された課題は、建設費用と研究者の確保でした。建設コストは、平成30年の有識者会議の報告書でも指摘されていたことでした。まず、県は、今回の回答をどのように捉えているのか聞かせてください。
2点目、政府は3月7日に向け、さきの日本学術会議の回答を受け、国内ILC誘致を判断する段階に移行しております。政府はどのような視点で誘致を判断し、そして、その政府の判断に、さきの日本学術会議の回答はどのような影響を与えるのか、県の認識を聞かせてください。
3点目、3月7日と目される現時点での政府の判断の見通しを聞かせてください。
高レベル放射性廃棄物最終処分場の本県へのかかわりについて伺います。
既に周知のとおり、平成14年以降、原子力発電環境整備機構─NUMOは、国内に存在する高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定のため、適地となる調査を受け入れる自治体を公募してきました。しかし、この公募方式は頓挫し、平成27年に、政府はそれまでの公募方式を取りやめ、国が前面に立ち、処分場選定に取り組むことにしました。一昨年、平成29年に公表された候補地の地図であります科学的特性マップは、処分場の適地が国土の7割の地域に及び、最適とされた地域のある自治体は、全国900の自治体に上るという不思議なものでありました。
この地図の公表以降、経済産業省とNUMOは、自治体向け、市民向けという対象者を変えた説明会を行い、平成29年11月には、盛岡市でも市民向けの説明会が開催されました。さらに昨年9月から、輸送面から立地に適しているとされる全国沿岸部を対象とし、その第一弾として、全国7カ所で説明会を行うと発表しました。その全国7カ所の中に、本県の釜石市が入っておりました。この第一弾の説明会で、東京から東側で説明会が開催されたのは釜石市だけということになります。
昨年10月の釜石市での説明会では、科学的特性マップの説明だけでなく、処分場選定の調査を受け入れた際の具体的な手続まで説明されました。しかも、この説明会の日は、釜石市では年に一度の釜石まつりの日であり、市民が参加しにくい日を国が選んだのではないかとの声が市民から上がり、説明会は紛糾し、説明会の体をなしていなかったということです。
平成28年12月定例会の一般質問で知事に伺っておりますが、改めて伺います。
ガラス固化体にされた高レベル放射性廃棄物が発する放射能が、もとのウラン鉱石が持つ放射能の状態にまで下がるのに、10万年かかると言われております。事は、本県の将来10万年を左右する問題です。判断は市町村単体の枠を超えており、県の役割は当然大きなものであります。騒ぎ立てる必要もありませんが、万全を期して情報を収集しておく必要があります。
岩手県の方針として、高レベル放射性廃棄物の最終処分場を受け入れる考えは一切ないことを聞かせてください。
現在の最終処分場の公募のやり方では、全国で手を挙げる自治体がないのは明らかです。全国沿岸部の説明会の7カ所に釜石市が入っておりました。釜石市民だけでなく、全県民が不安に思っていることであります。釜石市での説明会から既に4カ月たっております。現時点でつかんでいる情報を明らかにし、最終処分場を受け入れないための県の今後の対応を聞かせてください。
次に、ラグビーワールドカップ2019について伺います。
ことし9月20日の東京スタジアムでの開幕戦、日本代表とロシア戦まで、きょうでちょうど7カ月となりました。まず、これまでの県議会議員の皆様の御協力と御尽力に、釜石市を代表して感謝を申し上げたいと思います。特に平成24年には、議会に復興スクラム議員連盟をつくっていただき、議員の皆様にさまざまな御尽力をいただきました。本当にありがとうございました。そして、知事を初めとする職員の皆様にも心から感謝をいたします。県の共同立候補なしには、岩手・釜石会場の開催地決定はあり得ませんでした。その後のさまざまな困難の中での県の御尽力に心から感謝をいたします。そして、国を初めラグビー関係者の皆様、県民の皆様、全国から応援をいただいた全ての皆様に感謝をいたします。
先月1月10日に、ラグビーワールドカップ2019組織委員会から、連携部長の福島弦さんを招き講演をいただきました。大会全体の成功には、岩手の成功が欠かせないとおっしゃっておりました。4年に一度じゃない。一生に一度だ。という今回のラグビーワールドカップのキャッチフレーズを考えたのも、福島弦さんでありました。
福島さんがこのフレーズを考えたとき、釜石市在住の福島さんの大学の先輩から反対の意見があったそうであります。被災地では、震災以降、生きる、死ぬという言葉に敏感になっている。大会の運営側が、人の一生を左右するようなフレーズを使うのはやめてくれないかと。福島さんは悩んだそうであります。そこで、被災地で今何が起こっているのかを確かめるために、初めて福島さんが岩手に入り、それが昨年8月の釜石鵜住居復興スタジアムのこけら落としにつながります。
今回の大会は、今を生きる人たちだけでなく、先人の方々、さまざまな人々の思いが詰まった、本当に大切な大会であります。大会全体の成功には岩手の成功が欠かせないと、組織委員会は考えているそうです。東北で唯一、岩手・釜石が開催地に選ばれた理由は、まさにここにあるのだと思います。
今回のラグビーワールドカップ岩手大会は、被災地岩手にとってどんな意味を持つのか、大会にかける知事の思いを聞かせてください。
組織委員会が昨年1月にチケットの販売を開始し、1年たったことし1月の段階で、全48試合、180万枚の販売予定分に対し120万枚が売れたという状況で、マスコミ報道によると、非常に好評ということであります。過去最高のラグビーワールドカップと言われた前回のイングランド大会と今回の日本大会のチケットの売り上げを比べると、大会8カ月前という同じ条件で、今回の日本大会のほうが売れているという状況であります。
釜石鵜住居復興スタジアムにおいても同じ状況で、9月25日のフィジー対ウルグアイ戦は既に完売、10月13日のナミビア対カナダ戦についても、5万5、000円のプレミアムチケットが残っているだけという状況です。
一方、2月6日に釜石市議会で全員協議会が開かれ、初めて大会の運営費についての説明がありました。釜石開催の費用は、観客の交通輸送費のほか、警備や救護体制の整備などで10億3、800万円かかるという説明でした。県議会だけでなく釜石市議会においても、今まで大会にかかる費用について議論があったのは釜石鵜住居復興スタジアムの建設費だけで、運営費についての説明及び具体的な数字が出たのは、県と釜石市を通じて今回が初めてのことでありました。
さらに、昨年10月の釜石市議会の全員協議会で、釜石鵜住居復興スタジアムの仮設のスタンドの整備にさらに約10億円かかり、釜石鵜住居復興スタジアムの建設費が、当初の39億円から49億円に増額されることの説明がありました。ラグビーワールドカップ終了後は、釜石市に建設費及び運営費で合計60億円を超える費用をかけたスタジアムが残されることになります。年間の維持費は4、000万円から5、000万円とも言われておりますが、正確な費用はいまだ算定されておりません。
そもそも釜石鵜住居復興スタジアムは釜石市の所有であり、ラグビーワールドカップの開催地に手を挙げたのも釜石市の主導で始めたものです。釜石市も、ラグビーワールドカップ開催にはそれなりの覚悟と気概を持って当たっているはずであり、大会終了後のスタジアムの利活用についても、自力ででも何とかするのだという覚悟が必要です。その覚悟と気概がなければ、そもそもこの大会を成功裏に終わらせることはできません。それにしても、県のスタンスをお伺いしたいのです。
大会終了後の年間の維持費とスタジアムの利活用について、維持費は年間どのくらいかかると試算し、また、利活用については県はどのように考え、どのような活用方法が望ましいと考えているのか、現時点での認識を聞かせてください。
釜石市のスタジアムはラグビーワールドカップ終了後も残るものであり、大きなレガシーであります。スタジアムのように目に見えるレガシーもあれば、人とのつながりや岩手の思い出などもやはりレガシーと呼ぶのだろうと思います。県では、ラグビーワールドカップ開催により、未来に残す岩手のレガシーをどう考えているのか。大会が終わってから探すのではなく、開催7カ月前の今のうちから戦略的に定め、的を絞っておくことがレガシーを残すことにつながるのだと思います。
県の考えるラグビーワールドカップによるレガシーとはどのようなもので、どういった残し方をすべきだと考えているのか聞かせてください。
この4月から、県では新たな総合計画が始まります。東日本大震災津波から8年間、復興計画をたどってきた沿岸地域が、この4月から、県央、県南、県北と同様に、総合計画をスタートさせます。ふるさと岩手は、今を生きる我々だけのものではなく、我々の子、孫の世代、そして無念な思いを抱えながら亡くなった人たちを含め、誇るべき多くの先人たち全てのものであります。我々はさきの東日本大震災津波で一千年に一度を経験し、過去は未来につながっていることを考えさせられました。政治と行政が県民と真摯に向き合い、丁寧に施策を実行し、先人から受け継いだ大切なふるさとを次の世代に渡す、これこそが、今を生きる我々の役目であるのだと思います。行政の仕事というものは、恐らく、これ以上のものでも、これ以下のものでもないのだと思います。丁寧に一生懸命生きること、これこそが、無念に亡くなった方々に対して今を生きる我々ができること、やるべきことなのだと思います。幸福はその先に必ずあるものだと信じます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 小野共議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、東日本大震災津波からの復興についてでありますが、県では、これまで、岩手県東日本大震災津波復興計画を策定し、被災者一人一人に寄り添った支援を行いながら、一日も早い復興を目指して取り組んでまいりました。社会資本の整備等を初めとして、復興事業は着実に進捗しているものと認識しております。
一方、国の復興・創生期間終了後も、被災者の心のケアやコミュニティー形成支援など、被災地の実態を踏まえた事業の継続が必要と考えております。このため、いわて県民計画最終案におきましても、復興を県政の最重要課題として位置づけ、個人の尊厳を基本価値とし、誰ひとりとして取り残さないという理念のもと、引き続き、地域のコミュニティーや人と人、地域と地域のつながりを重視しながら、被災者一人一人の復興がなし遂げられるよう、必要な取り組みは最後まで実施していくこととしております。
また、自然災害からの復旧、復興に当たっては、単なる原状復旧にとどまることなく、一人一人が生き生きと暮らしていくことができる地域社会づくりを進めることが重要であり、このような考え方のもと、ビルド・バック・ベター、三陸のよりよい復興に取り組む姿、そして、防災、減災の最先端地域としての三陸の姿を国内外に発信していきたいと考えております。
御提言のありました未来への決意を語る宣言につきましては、これまで、平成23年4月のがんばろう!岩手宣言におきまして、県民が一丸となって復興に取り組んでいくことを誓い、その5年後の平成28年4月の新がんばろう!岩手宣言におきまして、発災から時を重ね、記憶の風化が言われる中で、改めて誓いを確認し、復興に携わる全ての方々に連携を呼びかけたところでありまして、復興事業の進捗状況や被災市町村の動向なども踏まえながら、引き続き必要な発信を行ってまいります。
次に、漁業収入についてでありますが、漁業は自然環境や資源動向に左右され、生産量や生産額の変動が大きいことから、安定した漁業収入を確保することが重要であると認識しております。このため、県では、つくり育てる漁業を推進し、サケ、アワビ等の栽培漁業や、ワカメ、ホタテ等の養殖業の振興に積極的に取り組んできたところでありまして、現在、つくり育てる漁業による漁業生産額は、本県沿岸漁業生産額の約7割を占めるまでに至っております。
栽培漁業につきましては、東日本大震災津波により減少したサケ資源の回復に向け、ふ化場間での種卵の移出入調整や定置網で漁獲したサケを利用するなど、稚魚放流数の確保に取り組んでおります。
養殖業については、生産量の維持、増大と収入の向上を図るため、意欲と能力のある漁業者の経営規模の拡大や作業の機械化、共同作業体制の構築によるコストの低減、直接販売や加工品開発などの6次産業化の取り組みを進めてきたところであります。
県では、今後とも、サケの回帰率の向上に向け、北上川水系のサケを活用した高水温などの環境変動に強い稚魚の生産技術の開発を進めますほか、新たに、サケ・マス類の海面養殖の事業化に向けた先進地調査や市場動向調査を実施するなど、安定的な漁業収入の確保に積極的に取り組んでまいります。
次に、岩手の漁業者と漁業の未来についてでありますが、近年は、水産資源量の低迷や漁業担い手の減少などにより我が国の漁業生産力の低下が進んでおり、また─失礼いたしました。岩手の漁業者と漁業の未来について答弁する前に、サケの不漁について答弁させていただきたいと思います。
本県漁業の主要魚種であるサケは、震災後、ふ化場の被災による稚魚放流数の減少、海水温の上昇等の環境変動などによって漁獲量が減少しており、早急に資源の回復を図る必要があります。
サケ資源の造成方法には、河川遡上による自然ふ化とサケふ化場における人工ふ化放流があり、自然ふ化は、生物の遺伝的多様性の確保には有効と言われています。
一方、現在、サケの河川への遡上数については、震災前の約3割にとどまるなど大幅に減少しておりますが、その状況のもとで自然ふ化を拡大した場合、人工ふ化放流に使用するサケの数をさらに減少させることとなります。加えて、自然ふ化は、人工ふ化放流に比べ、卵から稚魚に成長するまでの生残率─生き残る率が約7分の1と大きく劣るため、結果として海へ下る稚魚を大幅に減少させ、さらなる資源の減少を招くことが懸念されます。
このため、サケ資源が十分に回復するまでは、ふ化場において適正な飼育密度や与える餌の量等の飼育管理を徹底し、計画的に4億尾水準の健康な稚魚を生産し、放流していくことによりサケ資源の早期回復を図ることが重要と考えており、自然ふ化と人工ふ化放流との併用は、今後に向けた課題と考えております。
そして、岩手の漁業者と漁業の未来についてでありますが、近年は、水産資源量の低迷や漁業担い手の減少などにより我が国の漁業生産力の低下が進んでおり、また、漁業を初め、国内の多くの産業分野において人材の確保が困難な状況にあることなどを背景に、漁業法、出入国管理及び難民認定法等の改正が行われたものと承知しております。
本県では、これまで、漁協や漁業者が水産資源、漁場の管理、利用の調整や新規漁業就業者の受け入れに中心的な役割を果たしてきており、漁業法、出入国管理及び難民認定法等の改正後におきましても、引き続き、漁協や漁業者の主体的な取り組みを基本として漁業が発展していくことが重要と考えています。
いわて県民計画最終案におきましては、ICTの導入推進やいわて水産アカデミーの開講などによる意欲と能力のある経営体の育成、養殖作業の省力化、協業化の促進や環境変動に適応したサケ増殖技術の研究などによる収益力の高い産地づくり、地域の水産物を活用した6次産業化や、産地と消費者の交流の促進などによる付加価値向上と販路拡大などを取り組み方向として掲げたところであり、今後とも、本県の漁業が、漁業者の一人一人が生き生きと働ける活力ある産業として発展するよう取り組んでまいります。
次に、ILCの誘致についてでありますが、昨年12月19日、日本学術会議は、国際リニアコライダー計画の見直し案に関する所見との回答を文部科学省に対し行いました。同回答においては、1、ILCの学術的意義は極めて重要であり、そのことについて世界のコンセンサスが得られていること、2、世界トップクラスの高度の研究人材が育成され世界に輩出されていく拠点として発展する意義は大きいこと、国際共同研究に日本が貢献する必要性が高いこと、3、今後の素粒子物理学の進む方向性に示唆を与える可能性があることなどを評価している点が重要と受けとめております。また、日本学術会議の回答で示された学術界全体の理解や支持が必要なこと、建設経費やその国際分担、人材確保等の課題については、今後、学会等の活動を通じて理解を広げながら、国際協議、建設準備期間内のさらなる検討を行うことにより解決されていくものと考えております。
建設候補地である本県といたしましては、ILCの実現に向けて、それらの課題が早期に解決が図られるよう、研究者組織等関係機関と綿密に連携して、できる限りの協力を行ってまいります。
次に、政府によるILC誘致判断の視点についてでありますが、先ほど申し上げました日本学術会議の回答は、現状から判断して支持するには至らないとしておりますが、現在、国際研究組織から求められているものは日本政府がILC計画に関心があるという意思表示であり、この意思表示を認めていないわけではないと考えているところであります。
ILCの意思表示に当たって、政府は、関係省庁の意見を聴取し、さまざまな行政分野におけるILC計画の考え方をまとめるものと聞いておりまして、学術的意義に加え、国際的な動向も念頭に置きながら、イノベーション創出、外交、地方創生など、総合的な観点で判断されるものと考えております。
次に、政府判断の見通しでありますが、国際研究者組織が求める3月7日の期限に向けて、政府内においては現在、検討を進めていると聞いておりまして、それらを踏まえ、日本政府がILC計画に関心があるとの意思表示を行うものと期待しているところです。
県といたしましては、その後押しとなるよう、国民的な理解増進の活動を進めるとともに、東北ILC推進協議会や超党派国会議員連盟、自由民主党ILC誘致実現連絡協議会等関係者と引き続き密接に連携し、全力で取り組んでまいります。
次に、高レベル放射性廃棄物最終処分場の本県へのかかわりについてでありますが、平成29年7月に公表された科学的特性マップは、地域の科学的特性を一定の要件、基準に従って客観的に整理したものであり、高レベル放射性廃棄物最終処分場の候補地選定のための調査や、処分場の受け入れの判断を求めるものではないとされています。
国では、科学的特性マップの公表を契機として、最終処分に対する国民の関心や理解が深まるよう対話型全国説明会を実施していますが、科学的特性マップでは、好ましい適性が確認できる可能性が相対的に高い地域が全ての都道府県に存在し、岩手県が候補地になっているものではないと考えております。また、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律においては、候補地選定の調査に当たり、事前に地元自治体の意見を聞き、十分に尊重しなければならないと規定されており、国は、地元自治体が反対の場合には手続を進めないとしています。
岩手県では、これまでさまざまな機会を通じて高レベル放射性廃棄物最終処分場の受け入れについて明確に拒否してきておりまして、今後もこの姿勢は変わらないものであります。
次に、釜石市が説明会の会場となった理由についてでありますが、国は、人口や交通の便などの地域バランスを考慮しつつ、開催都市の住民だけではなく周辺の住民の参加も念頭に、できるだけ多くの方が参加しやすい都市での開催を検討したいとしており、開催場所の確保や周知、広報の準備などを終えたところから対話型全国説明会が順次開催されているところであります。また、説明会を共催する原子力発電環境整備機構、いわゆるNUMOからは、地域バランスや人の集まりやすさに加え、沿岸広域振興局の本局があることも考慮の上、釜石市を選定したとの説明を受けています。
説明会は昨年10月から始まり、これまでに釜石市を含む全国の沿岸部など25市で開催されたと承知しております。県としては、国やNUMOの動向を注視しつつ、今後も高レベル放射性廃棄物の最終処分場を受け入れる考えはないという姿勢で臨み、どのような対応が効果的か引き続き検討してまいります。
次に、ラグビーワールドカップ2019にかける思いについてでありますが、本大会は、東日本大震災津波の被災地を代表して、世界中からいただいた支援への感謝を伝え、復興に力強く取り組む姿を世界に向けて発信するという大きな役割を担っているとともに、国内外からのお客様にしっかりとおもてなしを行い、岩手と全国、そして世界との新たな強いきずなを生み出す絶好の機会であると認識しております。
そのような思いを背景に、一生に一度の機会として、釜石市を初め、県内各市町村、関係機関、団体等で構成するラグビーワールドカップ2019釜石開催実行委員会を中心に機運醸成や受け入れ態勢整備などを進めており、スタジアムオープニングイベントや1年前イベントは、それ自体好評を博し、復興の力にもなるものでありましたが、その際の試合運営などを通じて、釜石市と共同で各種課題を抽出して対応を図っております。
今後におきましては、7月に予定している日本代表対フィジー代表戦において、大会本番同様の施設、態勢のもと最終テストを行って、その検証も踏まえ、9月からの釜石開催を万全の態勢で迎えるよう取り組んでまいります。
次に、大会終了後のスタジアムの利活用についてでありますが、アジア初のラグビーワールドカップが岩手・釜石で開催されることは極めて画期的であり、非常に名誉なことであります。また、会場となる釜石鵜住居復興スタジアムは、多くの人々に感動を与えた昨年8月のスタジアムオープニングイベントでの洞口留伊さんによるキックオフ宣言において、離れ離れになってしまった友達とまた会える大切な場所と語られたことも考えますと、改めて非常に意義深い場所であると認識しております。
御質問のスタジアムの維持管理費については、釜石市の試算では年間約5、000万円になる見込みと聞いているところでありますが、このスタジアムが、大会後においても、釜石市民のみならず子供からお年寄りまでの全ての県民にとって、ラグビーなどのスポーツを初め、教育、文化、観光などさまざまな分野での積極的な活用が図られ、国内のみならず世界とつながる場所となることが望ましいと考えております。そして、このスタジアムが次々と新しいレガシーを生み出す特別な場所となるよう、今後の活用については、釜石市を初めとする関係団体と密接に連携し、検討していきたいと考えております。
次に、釜石開催によるレガシーについてでありますが、世界三大スポーツイベントの一つと称され、世界的に注目される本大会が東日本大震災津波の被災地である本県で開催されることは非常に意義深いことであり、大会開催を契機として生まれる新たなつながり、県民、殊にも未来を担う子供たちが手にする感動と記憶、そして本大会により県民が得る自信と誇りは大会の大きなレガシーであり、県民の新しい力になるものと認識しております。そして、この力が東日本大震災津波からの復興を後押しし、復興後の地域を支えるものと考えております。また、長年にわたってラグビーが地域の誇りであり、身近なものである本県にとって、本大会が新たな希望の光となることを願っております。
こうしたことから、大会後におきましては、ラグビーを初め、さまざまな分野での記念イベントの開催など、各種の取り組みが活発に展開されることが望ましいと考えており、釜石市を初め、県内各市町村及び関係団体等と密接に連携し、検討していきたいと考えております。
〇議長(佐々木順一君) 次に、岩崎友一君。
〔33番岩崎友一君登壇〕(拍手)

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