平成30年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(佐々木茂光君) 自由民主クラブの佐々木茂光でございます。
平成30年2月定例会の一般質問を行います。登壇の機会を与えていただきました先輩、同僚議員の皆様に心から感謝を申し上げます。
質問に先立ち、東日本大震災津波を初め、平成28年台風第10号の甚大な被害により犠牲になられた方々、いまだ帰るうちを見失い帰れないでいる行方不明の方々に、改めて哀悼の意をささげるとともに、被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
それでは、通告に従い順次質問をさせていただきます。知事並びに関係部局長の明快な答弁をお願いいたします。
初めに、東日本大震災津波からの復興についてお伺いいたします。
震災から8年目を迎え、被災地はいまだ復興途上にあります。被災地では、災害公営住宅の整備が進み、昨年12月末までに5、052戸が整備され、これに伴い319団地、約1万4、000戸あった応急仮設住宅は、本年1月末までに217団地、約1万戸にまで集約化が図られております。
また、応急仮設住宅には今なお約3、600世帯、7、700人余りの被災者が居住しており、その中には、本年度中の退去期限が迫った現在でも、いまだ持ち家の建設や災害公営住宅への転居を目指すかどうか、さまざまな事情により決めかねている被災者もいることも確かであります。
復興事業もピークを迎え、今後、事業の減少に伴い沿岸部の人口減少も拍車がかかることが懸念されております。今後は、町並み再生、活力のあるまちづくりを進めていくための復興という新たなステージへ移ってまいります。
平成30年度県予算において、震災復興と平成28年台風第10号災害からの復旧に最優先で取り組み、ふるさと振興を着実に推進することとしております。また、復興現場の被災者などをイメージして、知事は、県民の明日への一歩と共に進む予算と名づけて予算編成したとも報道されております。
改めて、知事は、復興途上にある被災地、被災者に対し、どのようなメッセージを届けるのかお伺いいたします。
高田松原津波復興祈念公園は、被災地を象徴する場所であり、陸前高田市にとっても、今後世界に向けて発信していく重要な施設であります。公園内には県が整備する伝承施設を初め震災遺構などを配し、県立公園として整備されることとされており、将来は、広島県の平和記念公園のように、全国の皆さんが岩手を訪れるきっかけになることを願っております。
また、公園の活用に向けては、世界からのインバウンドを迎え入れ、この方々を受け入れるためのガイドや通訳の養成などの環境を整えていくことが必要であります。昨年11月に仙台市で開催された世界防災フォーラムでは、国内外からの参加者が、東北の復興状況の視察を目的に、岩手県を初め、宮城県、福島県、青森県を訪れたと聞いております。
そこで伺いますが、知事は、この復興祈念公園、特に伝承施設や震災遺構について、どのようなことを世界に発信しようとしているのかお伺いいたします。
復興祈念公園には、被災したタピック45のほか、奇跡の一本松、気仙中学校など六つの遺構が存在いたします。
これまで県では、見守り遺構としての保存、活用を行うとしてきておりますが、私は、国内外からこの公園を訪れた方々が、単に遺構を眺め、津波到達点の標示を見上げるだけではなく、施設に入ったり、津波の高さに上がってまちを見渡したりすることにより、初めて津波の威力のすさまじさや防災の必要性が実感として伝わるものではないかと思います。
これら震災遺構については、国、県、市が参画した有識者委員会の意見などをもとに基本計画等に位置づけてきた経緯もあり、管理や活用の方法の検討についても、国、県、市が十分に協議を行って進めていく必要があるものと考えますが、県の御所見をお伺いいたします。
先ほども申し上げたとおり、沿岸部の人口減少に歯どめをかけ、新たな復興を進めていくためには、交流人口をふやすことが重要であり、この復興祈念公園は、観光にも結びつけて活用すべきであると考えます。
岩手県は、平泉と釜石の橋野鉄鉱山の二つの世界遺産を有し、また、沿岸部でのジオパークの推進、一戸の御所野遺跡でも、現在、世界遺産登録に向けて積極的に活動しているなど、岩手県の魅力は着実に高まりつつあり、今後、そこを周遊する観光客の増加が見込まれます。
県においては、交流人口の拡大に向け、被災地とこれら岩手の財産とも言える観光資源を活用した周遊ルートを設定し、観光振興を図っていくべきと考えますが、今後どのように取り組んでいかれるのかお伺いいたします。
次に、第1次産業の振興についてお伺いいたします。
農業においては米政策の見直し、水産業においては東日本大震災津波による水産関連施設の被害に加え、サケ、サンマなどの主要な水産物の不漁が続くなど厳しい状況にある中で、TPPなど世界における経済の枠組みにより厳しさは一層増しており、世界の中で日本の第1次産業が試されている状況にあると感じております。
岩手県の農業産出額は震災以降徐々に増加しておりますが、その背景には、これまで金色の風や銀河のしずくに代表される多様な新品種の開発が、計画的に行われてきたことが挙げられます。
また、平成20年から開始した岩手県版のGAPでは、いわて県民計画第3期アクションプランにも位置づけ、昨年9月には、県の第1号の確認登録証を交付するなどの取り組みが評価されております。
本県は、食料供給基地と言われてきたところでありますが、国内における産地間競争が激しくなる中、必ずしもその存在が見えにくくなっていることも確かではないでしょうか。
また、木材利用の拡大を通じて、森林、林業の活性化を図る観点から、県産材の利用促進は、地域の産業振興にもつながる重要な取り組みと考えます。
本県における農林水産業は、岩手のかえがたい産業として大切な財産であり、なりわいとしてどう回していくかが将来に向かって重要なことであり、そこに県民の暮らしが成り立っていくものと思います。
農林水産業を安定的に守っていくため県の方針を明確にすることが重要と考えますが、知事は、岩手の農林水産業をどのように進めようとしているのかお伺いいたします。
農業をめぐる環境変化の中でも、減反政策の見直しについては、これまでの国による生産調整の枠組みからの大きな変化であります。
第1次産業の6次化という言葉もありますが、例えば、秋田県の農家の例ですが、耕作放棄地を集めて米を生産し、おにぎりを売る店舗を大阪に持ち、昼よりも朝夕の通勤にあわせて販売を行うなど、独自の取り組みで消費の拡大を図る例がテレビで紹介されておりました。
このような生産から販売まで工夫を凝らしてうまくいく人もあろうかと思いますが、多くの農家にとっては、農協や県が明確に施策を打ち出すことを期待しているのではないでしょうか。
私は、収益性の高い園芸品目へのチャレンジなど、将来に向けてやる気のある人に対してしっかりと支援をしていくことが、何よりも重要であると考えております。
県は、米政策見直し後の水田農業の振興に向けて、どのような施策を講じようとしているのかお伺いいたします。
本県の重要な水産資源魚種であるサケについては、震災以前の5カ年平均で2万6、741トンの漁獲量があったものの、平成28年度は8、745トンになり、サンマについても、震災前3年間の平均では5万2、240トンであったものが、平成28年度は2万1、872トンに落ち込んでいます。
〔議長退席、副議長着席〕
人間の力ではいかんともしがたい部分もあり、ここは歯を食いしばりしのぐしかないわけでありますが、こうした状況である以上、まずは今あるもの、現物を最大限に活用し、売り込んでいくことが求められております。
漁獲量の減少は漁業者の生活に直結する問題であると考えますが、不漁が漁業者を初めとする県内水産業に与える影響とその対策についてお伺いいたします。
本県の漁業就業者数は、平成20年には1万人を割り込み約9、900人となり、平成25年には約6、300人と、震災を経て約6割にまで減少している状況にあり、震災前から漁業の担い手は減少傾向であったものが、さらに顕著になり、今後の沿岸地域の振興に向けて、漁業の担い手や新規漁業就業者の確保及び育成がますます重要な課題となっております。
海は、人を育て、地域を育ててきたものであります。県では、漁業担い手育成ビジョンを策定するなど、地域漁業の担い手確保、育成に取り組んでいますが、これまでにどのような成果があらわれているのかお伺いいたします。
また、今後も漁業就業者の減少が予想されるため、引き続き新規就業者を確実に地域に定着させ、担い手として育成していく必要があると考えますが、私は、県の施策だけでどうにかなるものではなく、国からの支援はもとより、広く市町村や漁協とも連携を強化し、さまざまな取り組みを継続的に行っていく必要あると考えます。
そこで伺いますが、県では、今後、担い手の確保、育成に関し、どのような対策を推進していくのかお伺いいたします。
本県の農産物は、米を筆頭に肉用牛や乳用牛、リンゴ、ピーマンと全国有数の生産量を誇り、水産物においても、アワビやウニ、ホタテなど三陸の漁場を生かした高級食材も豊富で、海外からの評価も高いわけですが、海外に販路を求めているのは他県も同様のことと思います。
県は、県産食材の販路拡大に向けて、これまでオリンピックへの県食材の提供を初め、県産食材を使ったメニューを提供する岩手フェアを開催するなど、積極的な取り組みを進めてきているものと認識しております。
また、近年、海外では日本食への関心が高まっていることが聞こえております。この機会に県産食材の輸出のための規模拡大や品質の確保などを生産者に意識づけしていくことも、農業の将来のため、水産業の将来のためにも重要と思います。
県産食材の利用拡大を進めるためには海外への販路拡大が重要と考えますが、県の取り組み状況と今後の方針についてお伺いいたします。
次に、医療、福祉についてお伺いいたします。
沿岸部においては、在宅医療や在宅看護などを病院を核として進めていこうとしても、医師や看護師、介護職などの医療人材が不足しており、内陸との格差は明白であります。
例えば、看護師は、出産や育児で一定期間医療現場を離れたことに対する技術的な不安や、介護のために自宅を離れられないなどの環境の変化があるなどにより、ハローワークに求人を出しても、問い合わせはあるものの、実際に就業に結びつくことができる方は、少数にとどまっているのが現状と聞いております。
また、介護職についても、新規採用職員の在宅確保支援等の取り組みを行っていますが、人材不足を理由に、事業を廃止したり休止する事業者もあると聞いております。
沿岸部における看護師、介護職員等の医療人材の確保のための施策についてお伺いいたします。
県では、奨学金養成医師の養成を進めており、平成28年度からは、その配置が開始されております。配置数も、平成30年度は、現在33人と当初の2倍に当たる医師の配置が決定しております。
また、これに先立ち、平成18年度からは医師確保のための医師招聘を進めてきており、これまでに延べ138人の医師の招聘に至っているところであり、医師不足が叫ばれる中、着実に対策を進めてきているものと考えております。
しかし、特に医師の不足が生じている沿岸部について見ますと、奨学金養成医師については配置数が頭打ちとなっており、また、招聘医師では、平成29年度においては、残念ながら1人にとどまっているのが現状であります。
医師やその家族の生活環境や子供の教育環境、高度な医療技術の習得に対する医師の希望など、沿岸部への配置にはさまざまな課題があることは承知しておりますが、沿岸部に長く定着していただくことが重要であり、配置後のきめ細かいフォローなどが必要と考えます。
県として、沿岸部への配置目標に対する現状についての認識と、より一層の定着促進に向けた取り組みと今後の見通しについてお伺いいたします。
震災で被災した高田病院の落成式が先週の2月16日に行われ、私も出席してまいりました。本当に心待ちにしていた市民とともに、当局のこれまでの取り組みに感謝を申し上げます。
高田病院は、震災前に引き続き、訪問診療など地域医療を支える核として機能が発揮されることを期待するものであります。特に、私は、脳梗塞や心筋梗塞を原因とするリハビリについては、病院での一定期間の治療の後は、専門施設が内陸に限定されており、沿岸住民は、内陸部に整備されている施設への転院を余儀なくされている方も多いと聞いております。高田病院にしても、リハビリの専門施設ではないことから、気仙地域においては、今後もこのような状況が続くことが懸念されております。
私は、沿岸部で特に高齢化社会が進行している中、沿岸部の1年を通じて温暖な気候風土や豊かな自然環境を活用し、リハビリテーション機能の充実を図ることが効果的であるものと考えます。
今般の高田病院の再建を機に、陸前高田市に病院と連携した在宅復帰を可能とする回復期リハビリテーション機能を備えた施設を設置してはどうかと考えますが、県の認識と対応についてお伺いいたします。
地域包括ケアシステムの構築については、2025年を目途とした地域包括ケアシステムの構築に向けた対応として、各市町村が主体となって、介護保険法に基づく地域支援事業に取り組むことが求められております。
市町村においては、現在、実施体制の整備や具体的な事業の推進に向けた取り組みを着実に進めているものと認識しております。
しかし、沿岸部における医療、介護人材の不足は内陸の比ではなく、訪問医療に携わる医療機関からは、訪問診療もままならないとの声が聞こえてきており、例えば、システムの構築に必要となる医療機関を結ぶネットワークシステムについては、県の導入経費への支援もあり、県内五つの保健医療圏において順次整備が進んでおります。このシステムを真に効果的に運用することができているのか疑問があるわけであります。
そこで伺いますが、沿岸部における地域包括ケアシステムの推進に当たっての課題をどのように認識し、今後支援をしていくのかお伺いいたします。
国民健康保険制度については、国民健康保険制度改革により、平成30年度から都道府県が財政運営の責任主体となることが決まっており、財政運営の主体が市町村から県に移行し、納付金方式の導入等の財政運営の仕組みが変わることとされております。
保険料については、財政運営の仕組みの変更に伴い、さきに県から市町村別の標準保険料率の試算も公表され、一部市町村においては、保険料が急激に増加することが見込まれた経緯があり、私は、これまでも機会を捉えて、試算どおりの年額を一律導入することは混乱を招くことから、市町村、特に被災地への配慮が必要であると述べてまいりました。
1月下旬、国の財源を活用した激変緩和措置がなされるとの報道があり、以前の試算のような大幅な変化は生じなくなったものと聞いておりますが、しかし、その期間は平成35年度までの6年間とされており、実際には増加する市町村も数多くあると聞いております。この期間における激変緩和措置の具体的な内容についてお伺いいたします。また、被災市町村に対する財政措置について、県としても要望していると聞いておりますが、どう反映されているのかお伺いいたします。
次に、沿岸部の交通ネットワークの整備についてお伺いいたします。
世界遺産や沿岸部でのジオパークの推進、高田松原津波復興祈念公園など、岩手県の魅力は着実にふえつつあります。また、今後、ILCの岩手県への誘致について国の判断が示されることとされており、学術研究を目的とする研究者などを岩手に呼び込み、これら岩手の魅力をネットワークで結びつけ、復興祈念公園に至る道路を初め、県内全域を周遊することができるようにしていくことが重要であります。また、気仙地区には大船渡港での大型客船の入港や工業団地が造成されており、道路整備は沿岸部の産業振興においても重要であり、このためには内陸と沿岸を結ぶ道路ネットワークの整備が必要と考えます。
現在、沿岸部を縦断する三陸沿岸道路に加え、内陸から宮古市、釜石市に至る横断道路は復興道路として大きな事業が進んでおり、移動時間の短縮による産業や観光への好影響が期待されております。私は従来から、道路整備はBバイCに合わせた検討に基づいて行われることが原則ではありますが、重要な産業施設を津波によって流された被災地においてはその考えは当てはまらないものとこれまで申し上げてきたところであります。このような岩手の魅力を十分に伝え、復興の先を見据えた県政を進めていくためには、さらに沿岸北部や気仙地区と内陸を結ぶルートにおける道路整備が必要と考えます。
知事は、復興の現場を思い、あすへの一歩を進めるとのお考えと存じますが、外国人や県外から訪れた人々が県内を周遊できるような内陸と沿岸を結ぶ道路ネットワークの整備の必要性についてお考えをお伺いいたします。
釜石道の滝観洞インターから国道340号に至る県道釜石住田線の一部区間は、道幅が狭く、カーブが多く大型車のすれ違いのできない、通行に支障のあるところであります。また、台風などの大雨があれば冠水して道路は寸断され、冬場はのり面からの湧水により路面凍結するなど、集落の孤立、緊急車両を含めた通行どめ、まさに不便きわまりない箇所であります。県道釜石住田線につきましては、過去にも、地域住民の皆さんが整備促進を求める署名とともに、県に要望書を提出した路線でもあります。滝観洞インターからアクセス道を整備することにより、地域住民の通院、通学、経済、そして、住田町にとっては大きな力になるものであります。
起点であるインターの出口と終点である国道340号が整備済みであり、今後、釜石道や三陸沿岸道路が開通していけば、交通量も確実に増加してまいります。災害のたびに補修を繰り返すのではなく、未整備区間も抜本的に整備することが必要と思いますが、今後の整備の予定、可能性についてお伺いいたします。
北上山地へのILCの誘致については知事も演述しております。岩手県の使命と述べており、誘致が実現すれば、県内への産業振興や雇用創出、学術、教育、生活環境などのさまざまな分野に波及効果が生まれると期待されております。気仙地区においても、大船渡市、陸前高田市、住田町の3市町議会の全議員による気仙地区議会国際リニアコライダー誘致推進議員連盟や陸前高田市ILC誘致促進協議会など、誘致実現を目指す団体立ち上げの動きが加速しているほか、講演会や研修会、幅広い世代に向けた意識醸成の機会が設けられるなど、機運が高まってきております。
現在のところ、政府はまだ誘致の意思を表明していない状況ですが、文部科学省は平成30年度に向け2億6、000万円の予算要求を行っており、県におきましても、本議会において平成30年度予算でプロジェクト研究調査事業として1億400万円余りを提案しており、着々とその準備が進められているものと認識しております。現在の国の動きと北上山地への誘致決定に係る見通し、並びに誘致に向けた今後の取り組みについてお伺いいたします。
また、誘致にあわせ、新笹ノ田トンネルなど輸送ルートの整備を早急に進め、ILC建設の準備を地元として着実に整えておくべきと考えますが、県の考えをお伺いいたします。
来年3月には、JR山田線の宮古-釜石間が三陸鉄道に移管され、沿岸部の鉄路は、震災からの復旧を経て、久慈から大船渡までリアス線として一本化されることになります。一方、JR大船渡線については、震災に伴い、平成27年にBRTでの復旧が決定し、現在に至っているところでございます。昨年11月には、被災した鉄路への補助に関し、鉄道軌道整備法の改正案が自民、公明両党の国土交通部会での合意に達し、本年の通常国会において、黒字鉄道会社への国、自治体による補助が可能となる法案が提出される見込みとなっております。JR大船渡線が対象となるか否かは別にして、気仙地区の将来の課題として、鉄路による復旧の可能性についてお伺いいたします。
以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木茂光議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、東日本大震災津波の被災者へのメッセージについてでありますが、発災以降、東日本大震災津波からの復興に向けた基本方針に掲げる一人一人の幸福追求権を保障すること、犠牲者のふるさとへの思いを継承することという原則のもと、県民一丸となって復興に取り組んでまいりました。平成30年度におきましては、沿岸における災害公営住宅がほぼ完成する見込みであり、市町村による土地区画整理事業などの復興まちづくりの進展とあわせて恒久的な住宅への移行が進みますことから、再建先でのコミュニティー形成を支援しますとともに、いまだ応急仮設住宅での生活が続く方々に対しての心と体のケアに取り組んでまいります。
水産業に関し、昨年は主要魚種の漁獲量の低下に見舞われましたが、サケ資源の回復に力を入れ、(仮称)いわて水産アカデミーの2019年度の設立準備を進めてまいります。
商工関係では、昨年、陸前高田市のアバッセたかたや大船渡市のキャッセン大船渡が開業するなど、にぎわいのあるまちづくりが進んでおり、起業や新事業の展開などの促進、事業再開後の経営安定に向けた支援を行います。さらに、ラグビーワールドカップ2019の開催など国内外からの注目が集まる機会を生かし、震災の記憶の風化防止や教訓伝承のためにも、東日本大震災津波を伝承する施設の整備を進めてまいります。また、本年6月には、東北六魂祭を引き継いで行われる東北絆まつりが盛岡市で開催されるところであり、県もこの開催を支援しながら、その効果が沿岸地域に波及し、交流の拡大につながるよう誘客促進に取り組みます。被災者の方々もそれぞれの復興を一歩一歩進めていただきたく、県はその一歩一歩とともにあります。
次に、高田松原津波復興祈念公園の世界への発信についてでありますが、高田松原津波復興祈念公園は、本県、さらには被災地全体のかなめとなる祈念公園として、この地のみならず、東日本大震災津波で犠牲になった全ての命に対する追悼と鎮魂の場となるものであります。
この公園におきましては、公園内の伝承施設なども活用しながら、三陸沿岸地域で先人が培ってきた津波防災文化とともに今回の震災の実情と教訓を後世に伝承し、さらに高田松原の再生を通じて自然と人々とのかかわりの新たな姿を具現化し、我が国の復興のありようを国内外に明確に示すこととしております。
次に、農林水産業の振興についてでありますが、近年、人口減少や少子高齢化、経済のグローバル化など、社会経済環境が大きく変化する中、担い手の減少や高齢化の進行などさまざまな課題が生じていますが、本県の農林水産業は、地域経済を支える基幹産業であり、将来にわたり持続的に発展していくことが重要であります。
このため、県では、復興計画に基づく漁業と流通、加工業の一体的な再生や、県民計画に基づく、地域の核となる経営体の確保、育成、地域特性を生かした生産性、市場性の高い産地づくり、高付加価値化などを柱として、農林漁業者の収益アップと農山漁村の活性化に向けた取り組みを進めてまいりました。
今後におきましてもこうした取り組みをさらに進めるとともに、平成30年度においては、国の米政策の見直しに対応した水田等での高収益野菜の作付拡大、東京2020オリンピック、パラリンピック競技大会の関連施設における県産材の利用を契機とした需要拡大、漁業の中核となる担い手を育成する(仮称)いわて水産アカデミーの開講準備など、将来を見据えた取り組みを幅広く展開し、地域の特色や強みを生かした収益性の高い本県農林水産業の実現に向けて力強く取り組んでまいります。
次に、内陸と沿岸との道路ネットワークについてでありますが、復興道路はかつてないスピードで整備が進められており、平成30年度には東北横断自動車道釜石秋田線全線と、県内の三陸沿岸道路釜石以南の区間が開通する予定です。県では、復興道路を補完し、内陸と沿岸を結ぶ道路として、国道281号、国道343号、国道397号等を復興支援道路として位置づけ、整備を進めています。整備が進む復興道路や復興支援道路は、フェリー航路の開設等新たな交流基盤を生み、広域観光ルートの形成や物流の活性化等、多くの効果をもたらしています。まずは復興道路等の2020年度までの完成に力を注いでまいりますが、内陸と沿岸を結ぶ道路の新たな整備箇所についても、復興道路等のネットワーク完成後における交通需要の変化を見きわめながら必要性を検討してまいります。
その他のお尋ねにつきましては企画理事及び関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔企画理事大平尚君登壇〕
〇企画理事(大平尚君) ILC実現に向けた県の取り組みについてでありますが、国においては、平成26年度にILCに関する有識者会議を設置し、これまで、研究の意義や技術、人材、マネジメントの観点から検討を行い、一定の取りまとめを行ってきたところです。一方、世界の研究者組織が昨年11月にILCを20キロメートルとする計画を承認したことから、有識者会議では、二つの作業部会を1月に再開し、その検証作業を始めており、近々その取りまとめが行われるものと見込まれています。その後、日本学術会議において審議される見込みであることから、文部科学省の事務的な検討は大きな区切りを迎えることとなります。また、ヨーロッパにおける2020年からの素粒子物理学の5カ年計画の策定作業がことしの秋ごろから行われますが、ILC計画が世界の協力のもと実現されるためには、この計画への反映が不可欠と考えられます。このようなことから、超党派の国会議員連盟では、去る1月にヨーロッパを訪問され、フランスやドイツの国会議員や政府等との意見交換を行うなど、積極的に対応いただいているところです。
県としても、本年が極めて重要な局面と認識しており、東北ILC準備室と連携し、国内外への情報発信、研究所や研究者等の受け入れ環境の整備、地域の新たな産業としての加速器関連産業の振興などの取り組みを進めていますが、今後、これまで以上に東北及び関係者が一体となってこうした取り組みを加速させるほか、国に対して強く実現を働きかけていきます。
〔県土整備部長中野穣治君登壇〕
〇県土整備部長(中野穣治君) 高田松原地区の震災遺構についてでありますが、平成28年9月に国、県及び陸前高田市で取りまとめた高田松原津波復興祈念公園全体の基本設計において、遺構の周囲に安全確保のための立入防止柵を設置する、いわゆる見守り遺構として活用することとしているところです。
高田松原地区における国営の追悼祈念施設、道の駅、津波復興祈念公園、震災津波伝承施設等の整備に当たっては、国土交通省の東北国営公園事務所と三陸国道事務所、県の県土整備部と復興局及び陸前高田市の5者による調整の場が設けられております。震災遺構の管理や活用の方法につきましては、遺構の所有者であります陸前高田市の考えも尊重しつつ、引き続き真摯に協議を進めてまいりますとともに、関係機関との調整にも努めてまいります。
次に、県道釜石住田線についてでありますが、同路線は、東北横断道釜石秋田線の滝観洞インターチェンジから国道340号を結ぶとともに、地域の皆様の通勤、通学や日常の暮らしを支える大切な路線と考えております。これまで、幅員狭小や線形不良等を解消する道路改良、また、落石対策やのり面保護等の防災対策に取り組んできており、今後も引き続き必要な箇所において防災対策を順次実施するとともに、冬季の除雪を含め、適切な管理と安全性、信頼性の確保に努めてまいります。
残る未改良区間の整備につきましては、復興道路等のネットワーク完成後における道路需要の変化も見きわめながら、どのような整備や改良が可能か検討してまいります。
次に、ILCに関連する輸送ルートの整備についてでありますが、まず、ILC関連施設の建設に伴う資材の運搬につきましては、運搬する部品の大きさや形に応じて、運搬するルート上に幅員や高さ、また橋梁の重量制限などで支障となる箇所がある場合には、これを解消するために必要な整備を検討していくことになります。
ルート上にある笹ノ田峠に新たなトンネルを整備することにつきましては、安定的な事業予算の確保が課題となりますとともに、事業の効果や投資の効率性を確認することが必要であり、今後の検討に当たりましては、ILCの実現に向けた進展、特に中央キャンパスや施設の立地場所や規模、これら施設へのアクセスルートなどの条件が一定程度具体化することが前提になるものと考えております。
なお、ILC建設に対する準備に関しましては、昨年7月の国の有識者会議におきまして、広域交通基盤等についてはILCサイトの立地する自治体及び周辺自治体等による支援が不可欠とされたところであり、輸送ルートとなる道路の整備につきましては、今後の立地の議論の進展とあわせまして、国と地方が協議して対応していくことになると考えております。
〔商工労働観光部長菊池哲君登壇〕
〇商工労働観光部長(菊池哲君) 世界遺産を含めた周遊ルートを活用した観光振興についてでありますが、交流人口の拡大を図るためには、沿岸と内陸の観光資源の組み合わせなどにより、県内を広域周遊し、長期滞在する観光を促進することが重要と認識しております。
このため、これまでも、世界遺産を初め、内陸と沿岸の観光地をつなぐバスツアーの運行支援や、世界遺産と震災学習を組み合わせた企業、教育旅行の誘致などに取り組むなど、県内をより広くめぐり、より長く滞在する旅行商品の造成を促進してきたところであります。
今後におきましては、東北絆まつりの盛岡開催となる本年から東京2020オリンピック、パラリンピックまでを誘客拡大の大きな好機と捉え、広域振興局の体制強化のもと、三陸DMOセンターとも連携し、新たな交通ネットワークを活用した、市町村や関係団体が行う魅力ある観光地域づくりの一層の支援を行うことにより交流人口の拡大につなげていく考えであります。
〔農林水産部長紺野由夫君登壇〕
〇農林水産部長(紺野由夫君) まず、米政策見直し後の水田農業の振興についてでありますが、米政策が見直される平成30年度以降、農家所得を確保するためには、主食用米と転作作物の最適な組み合わせにより、体質の強い水田農業を確立することが重要と考えております。
このため、関係機関、団体や県で構成する岩手県農業再生協議会において、流通業者や担い手農家などの意見も踏まえ、昨年5月に今後5カ年の水田農業の推進方針を策定したところであります。これを受け、市町村や農協等で構成する地域農業再生協議会では、それぞれの立地条件を生かした推進方針を策定するとともに、現在、岩手県農業再生協議会が示した生産目安をもとに、具体的な生産計画を作成しているところであります。
今後は、この生産計画に基づき、消費者、実需者に支持されるブランド米、業務用米など用途別の需要に応じた米生産を進めるとともに、国の助成制度を活用しながら、飼料用米や大豆等への転換や、地域特性を生かした野菜、花卉等の高収益作物の生産拡大を促進し、農業者の所得向上に取り組んでまいります。
次に、サケ、サンマ等の不漁についてでありますが、平成29年度のサケ、サンマの漁獲量は、前年に比べ減少、漁獲金額は、単価高により、サケが前年度並み、サンマが前年対比9割となっており、収入減少分は漁獲共済制度で補填しているところであります。
県では、漁獲量の増加に向け、サケについては、計画的な種卵確保、健康な種苗の育成、適期放流などに、サンマについては、漁海況情報等の迅速な提供、国の資源量調査への協力、資源管理の徹底に取り組んでいるところであります。
また、これらの主要魚種を加工原料とする水産加工業者も地元魚市場以外からの原料調達を余儀なくされております。県では、原料魚種の転換についての事業者への助言、国の補助制度の活用などを支援しているほか、漁獲が好調なサバ、イワシのまき網漁船を地元魚市場に誘致し、加工原料の安定的な確保に努めているところであります。また、復興シーフードショーIWATEなどのコンクールや商談会を開催するとともに、漁獲から流通、加工までの高度衛生品質管理などに引き続き取り組み、地域の水産物を生かした品質の高い加工品の製造と販路の拡大を積極的に推進してまいります。
次に、漁業の担い手確保、育成対策の成果についてでありますが、県では、漁業担い手の確保、育成の取り組みを進めるため、岩手県漁業担い手育成ビジョンを策定し、施策の展開方向として、地域漁業を担う多様な担い手の育成と漁業就業希望者の受け入れ態勢の整備を位置づけているところであります。
担い手育成の取り組みとしては、漁業経営力向上研修や若者、女性の活躍促進に向けた漁村ビジネス創出のための起業家研修などを実施しております。また、受け入れ態勢整備の取り組みとしては、漁業担い手対策の推進母体となる市町村就業者育成協議会を8市町村で設立したほか、漁業就業フェアへの参加、新規漁業就業者への現場での技術習得研修などを実施しているところであります。
こうした取り組みにより、中核的漁業経営体数は、平成28年度の目標数390経営体に対し419経営体、新規漁業就業者数は、目標数50人に対し57人となっており、また、漁家子弟以外の新規漁業就業者の参入割合は、震災前の約3割から5割へと増加しているところであります。
次に、今後の漁業の担い手対策についてでありますが、県では、先ほど申し上げた担い手対策に加え、広く漁業の基礎知識などを体系的に習得してもらうため、漁業就業希望者を育成する(仮称)いわて水産アカデミーを設置することとしたものであります。このアカデミーは、漁業の基礎的な知識や技術の習得を初め、ICT等の先端技術を駆使した高度な経営手法の習得を支援し、将来の本県漁業を牽引していく人材を養成する機関として、平成31年4月の開講に向けて準備を進めていくこととしております。今後、県、市町村及び漁業関係団体が連携してアカデミーを核とした取り組みを積極的に進め、漁業担い手育成ビジョンの実現に向けて、本県漁業の担い手確保、育成対策を推進してまいります。
次に、海外への販路拡大への支援についてでありますが、これまで県では、関係団体、企業とで構成するいわて農林水産物輸出促進協議会を主体とし、海外の流通関係者との結びつきを深めながら販路拡大に取り組んできたところであります。この結果、県産農林水産物は現地の流通関係者から高い評価をいただき、平成28年度の輸出額は、米がアメリカで前年比379%、リンゴがタイで前年比130%、牛肉が香港で前年比199%まで着実に増加しているところであります。
今後、他県との差別化を図り、競争に勝ち抜いていくためには、安全・安心で、品質やおいしさにすぐれた県産農林水産物の生産、流通体制を強化し、現地の流通関係者や消費者から高い信頼と評価をかち取っていくことが重要であります。
このため、県では、GAPや高度衛生品質管理などの普及、定着を図るとともに、食品HACCPに対応した食肉処理施設の整備を支援するなど、輸出にも対応した安全・安心な生産、流通体制を構築し、県産農林水産物の輸出拡大を図ってまいります。
〔保健福祉部長八重樫幸治君登壇〕
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) まず、医療や在宅看護に従事する医療人材の充足状況についてでありますが、看護職員については、修学資金貸付制度に被災者枠を設けるとともに、県立宮古高等看護学院の入学定員を増員するなど、沿岸地域の新規就業者確保対策に優先的に取り組んできたほか、県ナースセンターにおいても、沿岸部を含む各地区のハローワークと連携しながら再就業の相談や復職支援などを行っています。
また、介護職員については、沿岸地域に4人の介護人材キャリア支援員を配置して、求人、求職のマッチング支援などを行っているほか、仮設住宅団地に設置されている被災地サポート拠点の職員を対象に、介護の資格の取得を支援し、将来的な介護分野への就業を促進する事業などを行っています。
こうした取り組みにより、引き続き沿岸部における看護師、介護職員などの医療人材確保と偏在の解消を進めてまいります。
次に、沿岸部での医師の定着促進についてでありますが、県では、毎年度10名を目標に県内の公立病院等への即戦力医師の招聘を進めてきたところであり、これまでに、沿岸地域に44人の医師を確保したところであります。
招聘医師の定着促進に向けては、県立病院にシニアドクター制度を創設し、定年後も正規職員と変わらない条件で勤務を継続できるようにしたほか、招聘医師の要望等を勤務環境等の改善につなげるフォローアップ面談を実施しております。
また、奨学金養成医師については、平成28年度以降、順次配置数を拡大しており、平成30年度は沿岸地域へ5名の配置を予定しているものの、さらに配置者がふえるよう配置未定者等との調整を進めています。
さらには、平成31年度以降に臨床研修を開始する養成医師から、所定の義務年限期間中に少なくとも2年間、沿岸、県北地域の基幹病院等での勤務を必須としたところです。
県においては、引き続き、医師招聘の取り組みとあわせて、養成医師の計画的な配置により沿岸地域の医師の確保、定着を図っていく考えであります。
次に、リハビリに特化した施設についてでありますが、今後、限られた医療資源のもとで、高齢化の進展等に伴う医療需要の変化に対応するため、急性期から回復期、慢性期、在宅医療に至るまで、切れ目のない良質な医療提供体制の構築に取り組むに当たっては、リハビリテーションを初めとする回復期機能の病床の整備等を図ることが重要と認識しています。
中でも沿岸部では、発災以前から盛岡医療圏等の内陸部と比べ、回復期リハビリテーションに係る病床や人材等が不足する傾向にあるものと理解しています。このことから、県では、二次保健医療圏ごとに設置した地域医療構想調整会議における議論を踏まえ、医療機関が、回復期リハビリテーションを初めとする地域で不足する病床機能への転換に取り組む場合に、地域医療介護総合確保基金を活用した財政支援を行うなど、沿岸部を初め、全県における回復期リハビリテーション機能の充実に努めていくこととしています。
次に、沿岸部の地域包括ケアの取り組みへの支援についてでありますが、沿岸被災地では、災害公営住宅への転居に伴う生活環境の変化などをきっかけとして、高齢者の孤立化や生活不活発病の発生などが懸念されています。
また、人口動態や医療、介護資源に地域差がある本県では、特に沿岸部において、訪問看護師やリハビリテーション専門職など、地域包括ケアに携わる人材の確保が大きな課題になっていると認識しています。
このため県では、市町村等が行う高齢者の見守りや健康づくり、介護予防など地域包括ケアに資する取り組みに対し、引き続き支援していくとともに、平成30年度においては、新たにリハビリテーション専門職向けに、介護予防にかかわる多職種連携の取り組みに資する研修機会を設けるなど、関係団体と連携して、各種研修内容の見直しを行いながら地域包括ケアに携わる人材の養成と資質の向上を図り、地域の実情に応じた地域包括ケアの取り組みが推進されるよう市町村を支援していきます。
次に、国民健康保険料についてでありますが、新制度が始まる平成30年度においては、円滑な移行を図るため、制度施行当初に市町村の保険税が急激に増加することがないよう最大限配慮する必要があることから、国の特例調整交付金等を活用して、平成28年度の保険税と同程度の水準となるよう激変緩和措置を講じることとしたところであります。
平成31年度以降は、一定の引き上げ率を設定して激変緩和措置を徐々に解消していくこととし、具体の引き上げ率については、当該年度の納付金、標準保険料率の算定結果、激変緩和に活用できる財源等を踏まえて、市町村との協議により毎年度決定することとしています。
また、激変緩和の実施期間については、財政安定化基金の激変緩和用の活用期間である2023年度までの6年間を基本としていますが、県と市町村との協議により、2024年度以降も実施することが可能であることから、期間の延長の有無については、3年ごとの国民健康保険運営方針の見直しの中で検討していきます。
被災市町村に対する財政措置については、県においても、これまで国に対して要望してきたところでありますが、平成30年度における激変緩和の財源として、国の特例調整交付金等が約3億9、000万円交付されるほか、納付金算定に用いる市町村ごとの係数について、災害による一部負担金減免の影響を除いた値とするなど、被災市町村に対する配慮がなされたところであります。
〔政策地域部長藤田康幸君登壇〕
〇政策地域部長(藤田康幸君) JR大船渡線の鉄路での復旧についてでごさいますが、JR大船渡線は、宮城県気仙沼市を含む沿線自治体の合意のもとで、平成25年3月にBRTによる仮復旧での運行が開始されまして、その後、平成27年12月に国土交通省主催の大船渡線沿線自治体首長会議におきまして、沿線自治体が、BRTによる本格復旧についてJR東日本と合意したところでございます。
その上で、現在、JR東日本では、まちづくりの進捗に合わせまして、沿線自治体と協議しながら、利用者のニーズに合わせた新駅の整備や運行ルートの見直しを行うなど、利便性の向上に努めているところでございます。
県といたしましては、こうしたJR東日本と沿線自治体との合意の経緯や、被災地で既にBRTを前提としたまちづくりが進められている状況を勘案いたしますと、鉄路による復旧は難しいものと考えております。
〇23番(佐々木茂光君) 答弁をいただきましてありがとうございます。本当は1点か2点かと思っていたのですけれども、まず最初に、知事の、どこに向かって発信しているのかわからないようなメッセージを私は酌み取ったのでございますが、もう少しわかりやすくというか、本当に声をかけていただきたいという思いで今、知事に質問をしているのです。
これまでも、例えば、もう8年に入っていくということは、少なくとも八つ年をとっていくわけですね。若い人たちは、そこそこ次に向かっていろいろなステージに向かってはいますけれども、やっぱり年齢を重ねた方々は、どんどん体も小さくなっていきます。この復興のおくれがそういうところにも出てくるわけでありますけれども、これは、いろいろこれまでも知事のほうからもあるように、一概に計画どおり進めることができないで来ているものもあると。それが、復興がどんどん長くなっていく一つの現実のことだと思うのですね。
ですから、そういったところを踏まえながら、しっかりと知事には、まだまだ被災の途上、復興の途上にいる方が多くいるわけでございますので、この予算だての中にも、これまでも復興にかかわる予算づけをしながらここまで来ているわけでありますので、そういったところを込めて、知事から被災地、被災者に向けて本当に声をかけていただきたいと改めて思うところであります。
今でもそうなのですけれども、知事はどのようにそこを思っているかということもちょっと聞く中で、被災県、そしてまた被災地、被災者という言葉がいろいろな場面場面で今出てきているわけですが、知事は、こういった言葉がいつまで呼ばれていくのかな、ここになったらもう呼ばれることはないだろうとか、そういったところをどの辺に目を置いているのかお尋ねしたいと思います。
それから、次は道路にかかわる問題でございますが、先ほど御答弁をいただきました。確かに基軸となる復興道路、それから大型の沿岸道路、横断道路と、大きいところは当初の計画のとおり今進められております。もっと具体の話をしますと、先ほどお話しした釜石住田線は、滝観洞インターが、まだ釜石道路の整備もままならないうちに、まちを含めてあそこにインターとして位置づけられたわけでありまして、釜石住田線が延びていくと、利用数がかなりふえてくると思います。
私が言っているのは、あの路線の起終点は既に整備されているわけです。きょうお話ししたところは、まさに部長も御存じかと思うのですが、とにかく冬になると路面が凍結し、そして、夏場の豪雨時には常に冠水をする。当然、集落の孤立、救急車等の救急搬送というか、緊急車両も現地まで来るのはなかなか大変な状況の中にあると。
私が言っているのは、要はそこの部分だけ改良していただければ、今までの孤立、緊急車両、生活車両、全てもろもろが解決されるのではないか。当然大雨が降ると、同じ場所がたび重なる災害で、そのたび同じような補修をして護岸工事をするわけなのですが、一向に改善されるところがないと。
それをいつまでもそのままにしておくのはいかがなものかと思うこともそうですし、特に、緊急車両の場合、なぜかあそこは、通称おどすと地元の方は言うのですね。何でおどすという名前でみんな呼んでいるのかなと思うと、これは直接聞いたわけではないのですが、もしや命を落とすような、そういう場所として皆さんがそう呼んでいるのではないかと。これは地元の人に確かめたわけではないですけれども、昔からそういう場所だと捉えています。
滝観洞インターに釜石道路が出ることによって、国道340号まで含め、まちのほうからもスムーズに入れることによって、地域にとっても相当大きな効果があるものと思いますので、そこはもう少し踏み込んだ形でお考えいただければと思います。
それからもう一つは、先ほどもお話ししたとおり、笹ノ田トンネルの件です。現状で、大型車両というかトラックの輸送の方法が変わってきています。その手段が変わっているのか、トラックもロングという、長い輸送車両になってきております。そういった意味で大船渡港にスムーズに行くための路網の整備、道路の整備が必要になろうかと思っております。
たまたまILCが来るということで─来るということは本決まりではない中でも、その見通しが大なり小なりもう来ているのですね。そういったところに先んじて手を打つぐらいの意気込みでないと、本当に遠のいてしまうのではないかと思うのですが、笹ノ田トンネルについて、部長に聞くよりも、知事がどのようにその路線を捉えているのかを含めて、お話をいただければと思います。
それと、最後になりますけれども、震災遺構のあり方。これは、部長からもお話があったように、これから、敷地、用地を含めて地元とも御相談しながら進めていきますということですが、基本的には県立公園なのですね。そうしますと、最終的な管理者たるものは、県に置かれるべきではないか、そのように思うところでございます。その辺の考え方もお示しができましたらば、お願いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 被災者の方々へのメッセージということでは、先ほど、いよいよ住宅の再建を果たすというような方々、それにもかかわらず、まだ応急仮設住宅等に引き続き住まなければならない方々、また、昨年、主要魚種の漁獲量の低下に見舞われた中で、それでも水産業をやっていこうという方々、そして、アバッセたかたやキャッセン大船渡ができて、いよいよこれからだという商工関係の方々、また、ラグビーワールドカップ2019など共通して迎える大きな行事や、陸前高田市の皆さんとともに東日本大震災津波を伝承する施設の整備を進めていく。また、東北六魂祭を引き継ぎながら、オール岩手として、沿岸と一つになって改めて復興を進めていくのだというようなことを述べさせていただいたところであります。
議員がお尋ねになった、8年目に入る中で、お年寄りの方々も体も小さくなってくる。そうした方々に対しては、人生の中で、本来であれば、御家族やお友達、お知り合いの方々などに囲まれ、好きなことをしながら平和な気持ちで人生の最後を充実して過ごしていかなければならないときに、未曾有の大災害に襲われ、住む場所を移したり、応急仮設住宅等での生活を余儀なくされたり、不自由な生活をされてきたことについては、本当に県知事として申しわけなく思います。
そうした方々のことは決して忘れることはありませんでしたし、それは、岩手県民もそうだと思います。また、全国、さらには海外の方から、今もそういった方々に対して支援の手は差し伸べられるところでありますので、どうか、そうしたことを少しでも心の慰めにしていただきたいと思います。
一方、この7年間、そして8年目に入る復興の取り組みの中で、岩手県民は、全国、そして海外の人たちとも力を合わせて、今までやったことがないような事業をなし遂げてきました。先ごろの県立高田病院の再建も、その一つであります。
そういったことは、応急仮設住宅等で7年間苦しんでこられた方々の苦しみというものがあって、成功になっているわけでありまして、そういう方々の苦労があってこそ、私たちはこういう復興をなし遂げているのだと。その御苦労は報われていますし、また、孫子の代や、さらにその先の、陸前高田市であれば陸前高田市民、そして岩手県民にしっかりその成果は引き継がれていくものでありまして、その孫子の代、100年先の人たちも、この間苦労されたお年寄りのことを100年たっても忘れない、検証していく、そういうような伝承をしっかりしていきたいと思います。
それから、被災県、被災者、被災地という言葉がいつまで使われるかについてですけれども、ドラマあまちゃんの中で、夏ばっぱは、震災があった年に、既にもう被災地と言われていていいのかというようなことを言っていましたが、そういう気持ちの人は、現実にも少なからずいらっしゃったと思います。
一方で、この後10年、20年たったとしても、あれだけの被害があった、あれだけの被災があった被災地である、そして、自分は被災者だった、自分の親や祖父、祖母が被災者だったという言葉は、10年、20年先も恐らく使われるのだと思います。
そういう中で、私は、この被災者イコール復興者とか被災地イコール復興地という形で、もう被災という言葉を使いたくない人たちの気持ちにも応えようとし、また、この被災ということを忘れないでほしいという人たちにも応えようとしてきたところであります。要は、一人一人の、その人と、その場と、そしてその取り巻く環境の中で、そういう人たちと、そういう地域と適切に接していこうという思いを持って復興とその先に臨んでいくことが大事であって、その中で被災という言葉を使うか使わないかということは、そのとき、そのときの判断になると考えます。
そして、笹ノ田トンネルにつきましては、これは部長が答弁したとおりでございまして、まずは、復興道路等の復興計画に定めている道路の完成に注力し、そして、その復興道路等のネットワークにおける交通需要の変化等を見きわめながら、この必要性を検討していくというところでございます。
〇県土整備部長(中野穣治君) まず、県道釜石住田線の中埣地区、通称おどし地区ということでございます。こちらの地区につきましては、平成28年台風第10号災害においても被害を受け、護岸が被災したわけでありますが、これにつきましては、質的な改良も含めて復旧工事は完了しているところでございます。
また、このおどし地区近辺では、のり面の防災対策も今計画して進めているところであります。こういったことによって、まず、地域の方々の生活路線としての機能は、冬季の除雪も含めて、日常の管理も含めて、地域の皆様の生活道としての機能はしっかりと確保していきたいと考えてございます。
それから、議員御指摘のとおり、復興道路のネットワークが完成することによって、この路線にどういう通過交通の負荷がかかってくるかということは、これも見きわめていかなければいけないと思ってございます。そういったものを見きわめながら、また、そういった抜本的なバイパスについては、そういう通過交通でどれぐらいの負荷がかかってくるかを見きわめながら、今後必要な検討を行っていくことになろうかと考えてございます。
それから、高田松原地区の震災遺構の管理についてでございますが、御案内のとおり、このエリアには、陸前高田市所有の六つの─所有者は陸前高田市でございます─震災遺構がございます。それから、そのエリアを県が公園管理者として管理をすることになりますので、今後の管理のあり方、役割分担につきましては、県と市との間でこれから協議を進めてまいりたいと思ってございます。
〇副議長(五日市王君) この際、暫時休憩いたします。
午後3時29分 休 憩
出席議員(46名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 臼 澤   勉 君
3  番 千 葉 絢 子 君
4  番 ハクセル美穂子 君
5  番 菅野 ひろのり 君
6  番 柳 村   一 君
7  番 阿 部 盛 重 君
8  番 佐 藤 ケイ子 君
9  番 佐々木 宣 和 君
10  番 川 村 伸 浩 君
11  番 田 村 勝 則 君
12  番 工 藤   誠 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 吉 田 敬 子 君
15  番 佐々木   努 君
16  番 千 葉   進 君
17  番 佐々木 朋 和 君
18  番 名須川   晋 君
19  番 軽 石 義 則 君
20  番 神 崎 浩 之 君
21  番 城内 よしひこ 君
22  番 福 井 せいじ 君
23  番 佐々木 茂 光 君
24  番 高 橋 孝 眞 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 小 西 和 子 君
27  番 工 藤 勝 博 君
28  番 高 橋 但 馬 君
29  番 小 野   共 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 高 橋   元 君
32  番 関 根 敏 伸 君
33  番 岩 崎 友 一 君
34  番 中 平   均 君
35  番 五日市   王 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 小野寺   好 君
40  番 飯 澤   匡 君
41  番 佐々木 順 一 君
42  番 田 村   誠 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 工 藤 勝 子 君
45  番 柳 村 岩 見 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 大 輔 君
48  番 樋 下 正 信 君
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時53分再開
〇副議長(五日市王君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
日程第1、一般質問を継続いたします。軽石義則君。
〔19番軽石義則君登壇〕(拍手)

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