平成30年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇47番(工藤大輔君) 創成いわての工藤大輔でございます。
質問に入るに先立ち、今月6日、台湾東部で発生した地震により犠牲になられた方々に御冥福をお祈り申し上げます。また、被害を受けられた皆様に心からお見舞いを申し上げます。台湾からは、東日本大震災津波において多大な御支援をいただきました。一昨年に続く地震災害から一日も早い復旧がなされることを祈念いたします。
それでは、会派を代表し、知事演述並びに平成30年度当初予算案について知事に質問をいたします。
初めに、東日本大震災津波からの復興についてお伺いします。
東日本大震災津波から7年を迎えようとしています。改めて御遺族の皆様に哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に対しお見舞いを申し上げます。
言葉も出ないほど瓦れきと化した沿岸被災地の姿は、多くの支援と復興事業により、壊滅的な被害を受けた地域でも、交通インフラの整備や病院、学校、警察署などの社会インフラの整備が進み、産業の再生や住宅の再建、新しく商業施設もオープンするなど、失われた町並みが生まれ変わろうとしています。
現在、東日本大震災津波復興計画の最終期間に当たる第3期復興実施計画が進められております。平成30年度は、当初予定していた復興事業の総仕上げに当たりますが、商売を再開する見通しが立たない事業主や売り上げの減少等の課題が今なお残されております。先般、国では、被災企業の二重ローン対策を3年間延長する改正法が成立しました。被災地の実情に合った支援は復興を確かなものにする手段であり、復興のステージに合ったきめ細かな施策の継続を求めるものであります。
また、復興まちづくり事業や災害公営住宅の整備が進む中、いまだ応急仮設住宅等に7、700人余の方々が生活されているほか、恒久的な住宅へ移行した後の被災者のケアも課題となっております。
新たな課題に対応し復興の質を高めていくために、どのような分野を重点課題と捉え、予算編成を行ったのかお伺いします。
震災1カ月後の閣議において、復旧段階から、単なる復旧ではない、未来志向の創造的復興を目指していくことが重要であるとの方針が示され、復興構想会議や経済界からも創造的復興の重要性が説かれました。創造的復興とは、将来の経済社会構造を見据え、地域産業の高度化や構造の変化を導き、災害に強い地域への転換や、人口減少、高齢化の中にあってもビルド・バック・ベター─よりよく再建するという精神のもとに、地域に即した復興事業が展開され、沿岸被災地が持続可能な地域に変貌を遂げることであり、何より復興の担い手となる若者が地域に希望を描けるかが重要な視点であります。
知事は、創造的な復興の進捗をどのように捉えているでしょうか、お伺いします。
復興計画も後半となり、将来の三陸の創造に向け、新たな価値を生み出す三陸創造プロジェクトの意義が極めて重要となっていると考えます。本プロジェクトでは、三陸地域における海や地質などの資源や、潜在的な可能性を生かした国際的な研究プロジェクトの実現を通じ、三陸から世界をリードする国際研究拠点形成を目指しております。中でも、海洋再生エネルギーの活用は世界的には飛躍的に導入が進められているところであり、日本においても、三陸から積極的に導入を図り、復興から地方創生につながる新しい地域振興を目指していくべきと考えます。
県では、これまで、釜石地域において、国の実証フィールドの指定を受け研究開発を推進し、洋野地区では洋上ウィンドファームの実現に向け取り組んでおります。それぞれの地域の現在の取り組み状況はどのようになっているのでしょうか。また、今後の対応についての知事の所見をお伺いします。
次に、岩手県ふるさと振興総合戦略についてお伺いします。
岩手県人口移動報告年報によると、本県の人口は2017年10月時点で125万5、000人であり、65歳以上の人口が初めて減少に転じると見込まれる2020年には、ゼロ歳から14歳まで、15歳から64歳までの各年齢区分の減少幅も拡大しているため、県の人口減少のスピードは再来年から一層早まると推測されます。
県では、岩手県ふるさと振興総合戦略に基づき、岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすの施策推進目標を数値で掲げ、人口減少に対する対策を切れ目なく複合的に組み合わせながら施策を展開しています。事業の評価においては、直接、人口減少対策と関係性が薄い事業が重要業績評価指標─KPIの対象となっているものも見受けられ、個々の事業の達成度がわかっても、施策推進目標の達成にどの程度効果があったのか判断しがたく感じます。
10のプロジェクトごとの達成状況を見ると、達成とおおむね達成が80%以上と高く評価されたプロジェクトが目立つ割に、人口減少対策を目指した施策推進目標である人口の社会増減ゼロについては、逆に社会減が拡大しました。この結果をどう評価しているのでしょうか。
施策推進目標とKPIの評価は連動していることが業績評価指標としてわかりやすいと思いますが、KPIをどのように生かし、次なる施策に結びつけていくのかお伺いします。
また、平成27年度から始まった岩手県ふるさと振興総合戦略も来年度から取り組みの後半期間に入りますが、国に対して拡大する東京一極集中の是正を強く求めるとともに、県においては、市町村や民間事業者とともに働き方改革を初めとした取り組みのスピードを速め、試行錯誤しながらも積極的な事業推進を期待します。
複雑に課題が絡み合う人口減少という難題にどのように立ち向かうのか、知事の考えと重点的に取り組むべき施策についてお伺いします。
次に、ILCの実現についてお伺いします。
ILC─国際リニアコライダーは、資源の少ない我が国が科学で世界に貢献し得るプロジェクトであり、世界の研究者の期待も大きく、国として必ず誘致すべき事業と考えます。本県にとっても、産業や教育面だけでなく、国際化など多くの効果をもたらす重要なプロジェクトであることから、県議会を初め県内の各界各層が気持ちを一つに、その実現に向け努力していく必要があります。
これまで、県においては、県民の理解増進や受け入れ環境の整備、加速器関連産業の振興を進めておりますが、政府の判断が迫る中、ことしは重要な年として、これまで以上に国の決定を促す行動が求められます。
県議会においては、昨年、岩手県議会欧州視察団を結成し、欧州原子核研究機構─CERN、ドイツ電子シンクロトロン研究所─DESY、CERN周辺の2自治体を訪問しましたが、私もその団長として11名の議員とともに調査をしてまいりました。その結果を、実現までのプロセスと実現後の視点で八つの提言にまとめ、本年1月に知事へ視察団全員で提言をしたところであります。
ILC実現に向け、本提言をどのように受けとめ、今後どのように行動していくのか、知事にお伺いします。
次に、国際戦略ビジョンに関し数点お伺いします。
平成29年の訪日外客数は過去最高の2、869万人となり、格安航空会社─LCCの増便を背景に大きな伸びを見せています。一方、東北への外国人観光客数は全国に比較し低い伸びにとどまっており、東北の各空港と海外を結ぶ国際定期便就航が限定的であることが課題と言えます。
〔副議長退席、議長着席〕
本県では、台湾からの観光客が全体の半数を占め、平成29年の台湾からの外国人延べ宿泊者数は初めて10万人を突破するなど、積極的にプロモーションを続けている成果があらわれています。
先月、知事は、タイガーエア台湾の張会長と定期便実現に向けた覚書を締結し、今後の連携が確認されたところであります。いわて花巻空港初となる台湾との国際定期便化の実現に向けた課題と今後の取り組みをお示し願います。
現在、東北の空港で国際定期便が就航しているのは仙台空港と青森空港のみであり、路線も6路線と限定的であります。東北に定期便のない香港や諸外国からのチャーター便の運航は、三陸観光や東北全体の観光振興を後押しすることにつながることから、台湾定期便化の取り組みとともに台湾以外からのチャーター便の誘致への取り組みを加速させるべきと考えますが、どのように進めていくのでしょうか。本県への宿泊数が増加傾向にある香港、タイ、中国へのプロモーションの取り組みも含めてお伺いします。
知事は、先月22日の定例記者会見で、観光地の受け入れ態勢の強化とともに台湾の情報も広げたいと述べられています。四季を通じた岩手の魅力を情報発信するとともに、フリーWi-Fiや多言語表記、通訳案内などの受け入れ態勢を整えながら、観光メニューを外国人目線でつくり上げていくことも必要となります。岩手ならではの温かな県民のおもてなしの心が海外の方々にも伝わり、リピーターの増加や新たな相互交流に結びつくことを期待するものであります。
ラグビーワールドカップ2019や東京2020オリンピック、パラリンピックを控え、国際大会の開催や、事前キャンプで岩手を訪れる関係者や観光客の増加が見込まれます。両大会にも通じた外国人観光客の受け入れ準備をどのように進め、それ以後の受け入れにどう生かしていくのかお伺いします。
次に、産業振興についてお伺いします。
近年におけるICT技術の進展は目覚ましく、第4次産業革命は、AI、IoT、ビッグデータ、ロボット等の活用により産業構造を大きく変え、直面する社会における課題を解決すると言われています。国は、未来投資戦略2017を閣議決定し、我が国が持つ強みを生かし、国内外で成長が見込まれる五つの分野を中心に政策資源を集中させ、未来投資を行おうとしています。
県では、新・科学技術による地域イノベーション指針を策定し、本県に集積する産業基盤を生かせる次世代自動車分野やロボット分野、健康長寿分野などの七つの重点技術分野を設定し、イノベーションの創出に向けた取り組みを始めています。今後、これらの科学技術分野にかかわる人材の育成や確保は技術革新を進める上で重要なファクターとなります。個々に求められる能力やスキルが大きく変わろうとする中、特にIT人材は2020年には約37万人不足すると予想されております。岩手県立大学ソフトウェア情報学部の強化を含め、第4次産業革命を見据えた人材育成をどのように進めていくのかお伺いします。
また、第4次産業革命のベースとなる新たな情報通信技術は、行政における業務の高度化や効率化、生産性の高い第1次産業の推進など、本県が抱える課題解決に重要な役割を果たしていくと考えますが、今後、県としてどのように利活用していくのかお伺いします。
次に、農林水産業の振興に関してお伺いします。
国は、昨年12月、TPP11が発効された場合、GDPが実質7兆8、000億円、率にして1.5%の増加、日EU・EPAにおいてもGDPが実質5兆2、000億円、率にして1%増加すると見込んでおります。国内農林水産物についてはTPP11の場合は生産額が約900億円から1、500億円減少し、日EU・EPAの場合は生産額が約600億円から1、100億円減少するとの試算結果を公表しました。
県では、先週、国の試算方法に基づいてTPP11と日EU・EPAの農林水産物に与える影響額を公表しましたが、知事は、農林水産物に与える影響をどう受けとめたのでしょうか。
国は、総合的なTPP等関連政策大綱をまとめ、国際競争力のある成長産業へと転換させるための体質強化対策を講じようとしておりますが、本県の農林水産業の課題を踏まえ、どのように対策を講じようとしているのかお伺いします。
次に、高収益作物への転換についてお伺いします。
平成30年産米から国による米の生産数量目標の配分が廃止されるなどの米政策の見直しや、近年、我が国における米の需要が毎年8万トン減少している中、水田のフル活用という観点から、収益性の高い野菜などの園芸作物の導入によって農家所得の向上を図っていくことが重要と考えます。
新年度予算案には、野菜販売額1億円の産地形成を目指す新規事業として、いわて型野菜トップモデル産地創造事業が盛り込まれています。この事業は、最終的な補助率が4分の3と、これまでにない大胆な事業となっており、本県において取り組みの弱かった野菜産地の形成を積極的に推し進めたいという強い意気込みを感じたところであります。
農家所得の確実な向上に向けて、野菜栽培への転換を進めるに当たり、中山間地域を含めた園芸作物の振興に具体的にどのように取り組んでいくのかお伺いします。
次に、漁業の担い手確保対策についてお伺いします。
本県の漁業就業者は、平成10年の1万2、000人から平成25年には6、000人と、この15年間で半減しました。また、60歳以上の就業者が全体の半数を超えているため、平成30年には5、000人を下回ると見込まれております。新規漁業就業者は、平成27年度において、漁家子弟28人に対し、漁家子弟以外の就業者が31人となり、近年の傾向を見ると、漁業未経験者であってもやりがいを感じ、就業や研修に向かう人材がふえています。
私は昨年の予算特別委員会で、漁船漁業や養殖といった漁法にとどまらず、漁業の経営を視野に入れた学びの機関をつくることの提案を行いました。知事はさきの知事演述において、(仮称)いわて水産アカデミーの開設準備を進めると述べられましたが、漁業の担い手確保に向けどのような養成機関の設置を行おうとしているのかお伺いします。
次に、三陸ブランドの創造についてお伺いします。
栄養分に富んだ親潮と南方から流れてくる黒潮がぶつかる三陸は、世界三大漁場に数えられる希少な漁場でもあります。三陸産の海産物は高い付加価値を生むポテンシャルを有しており、産地間競争に打ち勝つためにも三陸のブランド力を高める必要があります。東日本大震災以降、海産物をブランド化させ、国内の市場評価を高めるとともに、三陸を世界トップの水産ブランドに押し上げようとする若手の取り組みも見られます。
知的財産に係る意匠や商標の登録、活用、地域の農産物をブランド化して保護する地理的表示─GIの積極的な取得のほか、市町村や漁業者が行う食材の普及やイベントを個々の取り組みで終わらせずに、全体をコーディネートしながら面的なブランディングを行い、世界の市場を意識した取り組みを進めることが、三陸そのものの価値を向上させることにつながると考えます。海産物の三陸ブランドの創造にどのように取り組むのかお伺いします。
次に、縄文遺跡群の世界遺産登録についてお伺いします。
平成21年にユネスコの世界遺産暫定リストに登録された一戸町の御所野遺跡を初めとする北海道・北東北の縄文遺跡群は、昨年7月に開かれた文化審議会において国内推薦を得ることができず、残念な結果となりました。その後、カシオペア連邦議会議員協議会における要望活動や、一戸町が二戸市で開催した縄文フォーラムなど、世界遺産登録に向けた活動が活発になっております。
世界遺産に登録される条件とは、世界に冠たる人類全体の価値があるかどうか、その保存体制が整っているかであり、北海道・北東北の縄文遺跡群が、日本列島の多様性に富む生態系を巧みに利用しながら定住し、協調的な社会が1万年以上にもわたって続き発展した、人類史上稀有な先史文化であるという普遍的な価値をいかにわかりやすく説明できるかが重要なポイントとなります。
昨年9月定例会の一般質問において、我が会派の工藤誠議員の質問に対し、高橋教育長は、推薦書素案について、文化審議会からもこれまでにない評価がなされたものと実感しているとの答弁をされました。世界遺産登録への第一歩となる国内推薦を得るため、推薦書素案を来月提出することとなりますが、登録実現に向けた知事の思いをお伺いします。
最後に、県北振興についてお伺いします。
県北・沿岸振興本部が設置され12年が経過しました。私は当時、県土の均衡ある発展という歴代の先輩県議が何度も口にしてきた大きな課題に、副知事を先頭とするこの組織が庁内に風穴をあけ、冷たい北風の地域に県南部のような南風が吹くようになると期待したことを覚えています。
県では、近年、苦戦する企業誘致に新たな誘導策を講じるほか、漆や食、アパレル産業など地場産業をてこ入れし、特色ある産業基盤の強化を図ろうとしています。取り組みの成果が見える分野もありますが、地域からは、他の圏域より人口減少率が高く推移している現状を打開する抜本的な施策や、産業の新機軸を求める声が多く聞こえてきます。県土の均衡ある発展は県北の住民の心の底からの願いでもあります。
県では、新たに平成31年度から今後10年間を計画期間とする次期総合計画を策定中でありますが、これまで以上に大きく変化する経済社会構造を見据え、県北の課題をどのように捉え振興を図ろうとしているのでしょうか。危機を希望に変える知事の、県北の10年後の未来像をお示し願います。
以上で質問といたしますが、次期総合計画の策定においては、人口減少という縮小社会の中であっても、広い県土を有する本県の各地域において、県民が安心して幸せに暮らすことのできる社会を構築できるかの施策を明確に盛り込まなければなりません。少子化に歯どめがかからない現状において未来を見通すことは大変難しいと思いますが、積極的な計画となるよう取り組んでいただきたいと思います。
我々創成いわては、県議会の各会派と一体となって、国内外の諸情勢を見きわめながら、着眼大局、着手小局を旨に、議会の場で提言を行いながら県勢発展に努めていくことをお誓いし、会派を代表しての質問といたします。
御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 工藤大輔議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、東日本大震災津波からの復興の重点課題についてでありますが、平成30年度予算は、東日本大震災津波からの復興と平成28年台風第10号災害からの復旧、復興に最優先で取り組む予算として編成いたしました。
具体的には、第3期復興実施計画に掲げる三つの原則に基づいて、安全の確保については、海岸保全施設等の復旧整備や、交通ネットワークの構築など復興まちづくりの基盤整備ができるだけ早期に完成するよう取り組みます。
暮らしの再建については、災害公営住宅の早期整備を進めるとともに、新たなコミュニティー形成や生活環境の変化に伴う心と体のケアなど、恒久住宅への移行に伴う課題に対し、被災者一人一人に寄り添った支援を進めます。
なりわいの再生については、地域に根差した水産業の再生や被災地域の経済を支える中小企業の本格的な再生、復興、さらにはにぎわいのあるまちづくりに向けて取り組みを進めます。
今後も、復興計画に掲げる、いのちを守り、海と大地と共に生きる、ふるさと岩手・三陸の創造に向けて全力で取り組んでまいります。
次に、創造的な復興の進捗についてでありますが、県では、長期的な視点に立ち、多くの人々を引きつけ、多様な人材が育まれ、将来にわたって持続可能な新しい三陸地域の創造を目指して三陸創造プロジェクトの取り組みを推進しています。
こうした中で、三陸沿岸道路や東北横断自動車道釜石秋田線などの新たな交通ネットワークの整備が進んでいることにより、物流等の企業立地の促進が図られたほか、釜石港でのガントリークレーンの供用開始や宮古-室蘭間を結ぶ定期フェリー航路の開設など、当初の復興計画には盛り込まれていなかった事業も進んでいます。
今後とも、地元の底力とさまざまなつながりの力を合わせて、若者や女性が地域に希望を持てるような、よりよい復興、三陸復興・創造に全力で取り組みます。
次に、東日本大震災津波からの復興計画における三陸創造プロジェクトについてでありますが、本県では、復興に当たり、長期的な視点から世界に誇れる三陸地域の創造を目指し、三陸の貴重な資源である海洋再生エネルギーに着目して、これまでその利活用の検討を進めています。
釜石地域では、NEDO事業を活用し、ポテンシャルの高い波力を利用した新しい発電システムの開発に取り組んでいます。また、地域の企業等で構成する研究会を設立し、発電機器等の実証試験に必要な中間ブイの試作品の製作まで進めています。
洋野地域では、平成23年に現地の風況調査に着手し、その後、サケへの影響調査や事業化のプロセスを整理するための適地抽出調査を行い、現在、地元関係者等で構成される協議会により、着床式洋上風力発電の事業化の検討を進めています。
今後、釜石地域では、新たな研究プロジェクトや発電事業の導入、さらに海中作業で必要となる潜水事業者の養成の場として活用の幅を広げ、国の実証フィールドとしての地位の確立を目指します。
また、洋野地域では、調査の段階から事業化の段階に進んでいますことから、漁業者や事業者との調整を行ってまいります。
海洋再生エネルギーは、地域のエネルギー確保、関連産業の振興など、その効果は大きく、引き続き、県として、その利活用に積極的に取り組んでまいります。
次に、岩手県ふるさと振興総合戦略における施策推進目標の評価とKPIの活用についてでありますが、人口減少問題を解決するためには、生きにくさを生きやすさに転換することが必要であり、ふるさと振興総合戦略に掲げる、岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすの三つの柱に基づく10のプロジェクトの取り組みを着実に実施することによりKPIを達成し、人口減少に関連する要素一つ一つを改善することが重要と考えております。
その取り組み状況を見ますと、総合戦略のKPIの達成状況はおおむね順調でありますが、施策推進目標のうち、社会減ゼロや出生率の向上については、現時点では各種取り組みの効果が直ちには発現していない状況にあります。
特に社会減ゼロについては、平成28年の実績は3、708人と3年ぶりに縮小に転じましたが、平成29年の実績は4、543人と再び拡大に転じ、年齢別には15歳から24歳までの転出超過数が全体の約85%を占め、若者層の転出が顕著となっております。
こうした状況を踏まえ、総合戦略の後半となる来年度以降、個別の取り組みのKPIとあわせ、施策推進目標の達成状況等を的確に分析しながら、より効果の高い取り組みを重点化するなど、本県の人口減少に歯どめをかけ、岩手への新しい人の流れを生み出すためのふるさと振興に強力に取り組んでまいります。
次に、人口減少問題への考えについてでありますが、人口減少問題に立ち向かっていくためには、地域の特性を踏まえながら、地域課題の解決に必要な施策を県と市町村が一体となって推進すると同時に、政府が国家プロジェクトとして総力を挙げて取り組んでいくことが不可欠であります。
ふるさと振興総合戦略の後半に入る来年度におきましては、県として、岩手で働くの柱に関連しては、第4次産業革命技術等を活用したものづくり革新の取り組みや、若者の県内就業の促進、産業界等と連携したいわて働き方改革推進運動の展開等を通じた長時間労働の是正などを進めます。
岩手で育てるの柱に関連しては、“いきいき岩手”結婚サポートセンターによる結婚支援や分娩取り扱い診療所の整備、地域の潜在助産師等を活用した地域で妊産婦を支える体制の構築などを進めます。
岩手で暮らすの柱に関連しては、女性活躍推進員による女性活躍に関する理解促進やものづくり産業人材の育成など、ふるさとの未来を担う人づくりなどを進めます。
また、東京圏の転入超過数が依然として約12万人となっている現状から、社会減ゼロの目標達成に向けては、地方の取り組みに加えて、国による東京一極集中是正に向けた抜本的な対策が不可欠と考えており、国に対して、地方重視の経済財政政策を実施するよう、引き続き強く求めてまいります。
次に、岩手県議会欧州視察団からいただいたILC実現への提言についてでありますが、いただきました8項目の御提言は、CERNなどの研究者や周辺自治体の生の声を踏まえたものであり、自治体としての受け入れ環境や情報発信のあり方から国への検討を促すものなど多岐にわたる重要な視点からのものであり、県としても、いただいた御提言を十分に踏まえながら取り組みを進めてまいります。
具体的には、平成30年度におきましては、受け入れ環境の整備に向けて、教育、医療などの分野では現場の声を反映した具体的な対応策や地域のワンストップサービス等の検討を深めますほか、ILCに関連するデメリットも含めた情報をわかりやすく解説したQ&A冊子の配布も行います。さらに、東北ILC準備室とも連携して、規制緩和や特区の導入検討も行うなど、ILCを受け入れる万全の体制を整えてまいります。
こうした取り組みは、政府のILC実現に向けた決断への後押しともなるものであり、機会を捉えて国への要望活動を強化して、ILCの実現に向けて全力で取り組んでまいります。
次に、いわて花巻空港への台湾定期便の見通しについてでありますが、いわて花巻空港においては、昨年9月からタイガーエア台湾によるチャーター便が連続して運航されており、本年3月末以降も定期チャーター便として週2便で継続されることが決定するなど、本県初の国際定期便に向けて着実に前進しています。
定期便化に向けた課題としては、需要の拡大が最も重要であると認識しております。そのため、インバウンドの拡大については、人気のある春の桜や秋の紅葉の時期に加えて、年間を通じた誘客を図るため航空会社や旅行会社との連携による効果的なプロモーションに取り組むとともに、アウトバウンドについては、パスポート取得支援、テレビCMによるPR、旅行商品の造成促進などに取り組んでまいります。
このような取り組みによって、まずは今春からの定期チャーター便の利用促進、さらには早期の定期便化の実現につなげてまいりたいと考えております。
次に、台湾以外への取り組みについてでありますが、国際チャーター便のさらなる増加に向けては、台湾以外の国、地域からの誘致も重要であり、本年度は台湾のほか香港やタイでもトップセールスを実施して、その結果、昨年10月に震災後初となる香港チャーター便が実現しましたほか、本年4月には3年連続となるタイチャーター便の運航が予定されています。
今後におきましても、香港やタイ、中国などの有望な市場については、各市場の訪日旅行へのニーズや特性を踏まえた戦略的なプロモーションを展開し誘客の拡大を図るとともに、特に訪日客が最多で伸びも大きい中国については、航空会社や旅行会社に対して、いわて花巻空港が東北の中心にあり、東北周遊に適した立地にあることをアピールするなど、チャーター便の誘致、運航拡大に取り組んでまいります。
次に、国際大会と外国人観光客の受け入れ態勢の強化についてでありますが、ラグビーワールドカップ2019の釜石開催、東京2020オリンピック、パラリンピックの開催の好機を生かし、外国人観光客の誘客拡大を図るためには、情報発信とともに受け入れ態勢の強化が重要です。このため、観光、宿泊施設等におけるハード面での機能強化やソフト面での外国語対応への支援に加えまして、両大会開催によって増加が期待される欧米などからの個人旅行客向けの鉄道、高速バスの周遊パスや、レンタカーの利用促進などによる二次交通の利便性の向上にも取り組んでいるところであります。
また、観戦目的の外国人旅行者は旅行期間が長い傾向にありますことから、市町村や関係団体等と連携し、県内周遊、滞在型の旅行プログラムの造成促進にも取り組んでまいります。さらに、モノ消費からコト消費への旅行スタイルの変化も踏まえて、岩手ならではの体験メニューの充実やプロモーション強化により、リピーターをふやして海外における岩手ファンを広げ、両大会開催後の一層の誘客拡大につなげてまいります。
次に、第4次産業革命を見据えた人材育成についてでありますが、県では、平成27年3月に、新・科学技術による地域イノベーション指針を策定して、次世代自動車や加速器関連分野など、重点的に推進すべき七つの技術分野を設定した上で、人材の育成、確保、研究開発基盤の強化、資金支援、産学官連携の四つの戦略に基づき施策を展開しています。
人材育成では、例えば、次世代自動車に不可欠な組み込みソフトウエアについて、学生から企業まで、コンテストを通じた技術者の養成を初め、市場の拡大が続くゲーム分野での技術者の研修など、本県の特徴を生かした取り組みを進めています。
また、岩手県立大学ソフトウェア情報学部においては、本指針を踏まえて、平成29年度からスタートした第3期中期計画に基づいて産業界のニーズに対応した人材育成のための新コースの設置や、学部と研究科博士前期課程の一貫教育などの検討を進めています。
第4次産業革命は、働き方や産業の構造も変え得る大きな動きであり、岩手県内においても、農林水産業、商工業、建設業、医療、福祉、環境、文化スポーツなど幅広い分野でさまざまな動きが見られますので、県では、部局横断のクロスファンクショナルチームを設置しまして、長期的な視点で岩手の科学技術や産業の方向性について検討を始めており、広い分野で将来を支え牽引する人材の育成、確保についても対応を進めてまいります。
次に、本県の課題解決への第4次産業革命技術の活用についてでありますが、IoTやAI等は産業振興や行政の効率化などに大きく資するものであり、また、人口減少社会における労働力不足を補う上でも、極めて重要なものと認識しております。県では、これまでも、ICTを活用した医療情報連携や、GIS情報やロボット等を活用した農業分野での生産性の向上等の取り組みを進めてまいりました。
県といたしましては、次期総合計画の策定と歩調を合わせながら、ICT等の利活用に関する計画も策定して、医療、介護、健康、教育、農林水産業など、各政策分野におけるさまざまな地域課題の解決に向けて、本県の地域特性を踏まえたICT等の利活用を一層推進してまいります。
次に、TPP11及び日EU・EPAが本県農林水産業に及ぼす影響についてでありますが、県では、国の経済効果分析をもとに本県農林水産物への影響を試算し、TPP11では、生産額が約22億円から36億円減少、日EU・EPAでは、生産額が約15億円から30億円減少するとの結果を公表いたしました。国は、試算に当たって価格の低下により生産額は減少するものの、国内対策によって生産量が維持されることを前提としていますので、実際の本県への影響額はより大きくなることも考えられます。
一方、農林水産業を取り巻く情勢は、担い手の減少や高齢化の進行などさまざまな課題が生じていますが、本県の農林水産業は地域経済を支える基幹産業であり、将来にわたり持続的に発展していくことが重要であります。このため、県では、平成30年度当初予算案及び追加提案を予定している補正予算案において、畜産の経営規模拡大や木材生産の効率化、水田の大区画化など、TPP等をも見据えた農林水産業の体質強化対策に取り組むこととしています。こうした取り組みを通じて、生産者の皆さんが意欲と希望を持って生産活動に携わることができる強い農林水産業をつくり上げてまいります。
次に、高収益作物への転換についてでありますが、米政策が見直される平成30年度以降におきましても、農家所得を確保するためには、水田を野菜作付にも活用して体質の強い農業を確立することが重要であります。このため、主食用米等について需要に応じた生産を推進するとともに、水田等への高収益野菜の作付拡大によって新たな野菜販売額1億円産地の形成を目指すいわて型野菜トップモデル産地創造事業を当初予算案に盛り込んだところです。
この事業では、農業法人や大規模経営体等を対象として、タマネギやキャベツなど加工、業務用野菜の生産に必要な高性能機械の導入やパイプハウスの団地的整備に加え、ICTの活用により単収を飛躍的に向上させる環境制御装置の導入などを進めていきます。
また、事業に取り組む経営体に対して、県、市町村、農業団体等で構成する集中支援チームが一体となってきめ細かな栽培、経営管理の指導を行うこととしておりまして、こうしたハード、ソフト両面の積極的な取り組みによって、本県のトップモデルとなる新たな野菜産地を力強く創造してまいります。
次に、漁業の担い手確保対策についてでありますが、県では、漁業担い手の確保、育成の取り組みを進めるため策定した岩手県漁業担い手育成ビジョンに基づいて、漁業担い手対策の推進母体となる市町村就業者育成協議会を設立してまいりました。また、熟練漁業者による現場での実務研修を実施してまいりましたが、漁業の基礎知識などを総合的に習得する必要がありますことから、今般、新規漁業就業者の育成機関として、(仮称)いわて水産アカデミーを設置することとしたものであります。このアカデミーは、漁業の基本的な知識や技術の習得にとどまらず、ICT等の先端技術を駆使した高度な経営手法の習得を支援し、将来の岩手の漁業の中核を担う人材を養成する機関として、2019年4月の開講に向けて準備を進めていくこととしております。
今後、アカデミーを核とした取り組みを積極的に進めて、このビジョンの基本理念でありますひとが創る地域漁業、ひとを創る地域漁業の実現に向けて、漁業の担い手確保、育成対策を力強く推進してまいります。
次に、三陸ブランドの創造についてでありますが、三陸ブランドを確立するためには、さまざまな地域資源の発掘と磨き上げ、個別の商品の高品質化、高付加価値化を進め、個々のブランド価値を高めながら、その集合体としての三陸のイメージを確立することが重要です。県では、これまで、安全・安心で高品質な海産物の魅力をPRするため、飲食店等でのフェア開催、シェフ等を対象とした商談会や産地見学会を実施し、その結果、生産者と飲食店等との取引が拡大するなど、海産物に対する流通関係者の高い評価が着実に定着してきています。
今後は、海産物の評価、知名度をこれまで以上に高めるため、首都圏の飲食店等との関係をより一層緊密にしながら、さらなる販路の開拓、拡大に取り組んでまいります。
また、復興道路などの交通ネットワークを生かして新鮮な海産物をいち早く消費地に届けることにより、消費者や流通関係者の評価向上に取り組み、三陸を舞台とした広域的、総合的な防災復興行事やラグビーワールドカップ2019等に向けて特産品の開発を進めるなど、三陸地域全体の魅力を国内外に発信し、海産物のさらなるブランド化を力強く推進してまいります。
次に、北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録についてでありますが、同遺跡群は、採集、狩猟、漁労を基盤として、1万年以上の長期間にわたり定住が発展、成熟した普遍的な高い価値を有する文化遺産であります。
昨年7月の文化審議会では、地域文化圏という視点で普遍的価値を再構築したことなどについて今までにない一定の評価をいただいたところでありますが、4道県においては、現在、文化審議会から示された課題等を踏まえて、資産全体の価値と各構成資産との関係性をより明確に表現するなど、推薦書素案のブラッシュアップに鋭意取り組んでおります。
今回、国内推薦獲得への6度目の挑戦となりますが、御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群は世界に誇れる遺産でありますので、世界文化遺産としての登録の実現に向けて、関係自治体や関係者の皆様と今まで以上に強く連携しながら、全力で取り組んでまいります。
次に、県北振興についてでありますが、これまで、県北・沿岸の発展なくして岩手の発展はあり得ないという基本的な考え方のもと、県北・沿岸振興本部を中心として、所得格差の解消などの課題に全庁を挙げて取り組んできたところであります。県北圏域の1人当たりの市町村民所得は、復興需要もあり他の圏域との格差が縮小し、有効求人倍率も高まっていますが、一方で、県平均を上回る人口減少が続いており、人口減少問題への的確な対応が今後ますます重要になると認識しております。
こうしたことから、これまで取り組んできた若者、女性の活躍支援や、漆やアパレルなどの地域資源を活用した産業振興、広域観光の振興を一層推進し、若者等に魅力ある地域産業を育成していくことに加えまして、三陸沿岸道路などの新たな交通ネットワークの進展を見据えた八戸圏域等との広域連携や外国人観光客の誘客拡大、県北圏域で導入が広がる再生可能エネルギーなど、社会経済構造の変化に対応した取り組みを強化していく必要があると考えております。
こうした認識のもと、次期総合計画においては、関係市町村や企業、団体等の意向を十分に伺いながら、引き続き、県北振興を県政の重要課題に位置づけて県北の10年後の未来像を描いてまいります。
〇議長(佐々木順一君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後4時46分 散 会

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