平成30年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(達増拓也君) 本日、ここに第12回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
冒頭、今月6日に台湾東部で発生した地震によりとうとい命を落とされた方々の御冥福をお祈りいたします。また、被害を受けられた皆様に心からお見舞い申し上げます。
2011年3月11日、あの日から間もなく7年になろうとしています。東日本大震災津波で犠牲になられた方々に対し謹んで哀悼の意を表し、いまだ応急仮設住宅等で不自由な暮らしを余儀なくされている方々を初め、被害を受けられた皆様に衷心よりお見舞いを申し上げます。
また、平成28年台風第10号によりとうとい命を落とされた方々に対し謹んで哀悼の意を捧げ、被害を受けられた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
本年は、平成20年に発生した岩手・宮城内陸地震から10年、昭和23年のアイオン台風来襲から70年でもあります。これらの災害で犠牲になられた方々の御冥福をお祈りし、また、困難を乗り越えて復興を果たした先人たちの努力に倣い復興と防災に取り組み、強靭な県土づくりを進めてまいります。
私たち岩手県民は、東日本大震災津波の発災以降、復興計画を策定し、一丸となって復興に取り組んできました。
第1期復興実施計画における基盤復興の成果を土台とし、第2期においては、第1期を上回る予算規模で本格復興を進め、第3期は、被災者一人一人の復興をなし遂げるべく、よりよい復興、三陸復興・創造に全力で取り組んでいます。
土地の区画整理や高台への集団移転など復興まちづくり事業は約7割が完了し、災害公営住宅については約9割が完成、公立学校施設は約97%が完成し、医療機関の約9割、事業所の約8割が再開しました。
商店街や商業機能の再生も本格化し、昨年は、陸前高田市のアバッセたかたや大船渡市のキャッセン大船渡が開業しました。復興道路の整備はかつてない速さで進められており、来年度には、東北横断自動車道釜石秋田線の全線開通と三陸沿岸道路の仙台-釜石間の約9割の開通が見込まれています。
また、当初の復興計画には盛り込まれていなかった事業へと復興が進んでいる分野もあります。
昨年、釜石港で、大阪府から寄贈のガントリークレーンが供用を開始し、外貿コンテナ定期航路も開設されました。本年6月には、宮古-室蘭間のフェリー定期航路が開設され、2019年度には宮古港に大型外航クルーズ船が寄港します。
一方、先月末で7、758人の方々が応急仮設住宅等での生活を余儀なくされています。一日も早い恒久的な住宅への移行と、復興の長期化による心と体のケアや新たなコミュニティー形成への支援が必要です。
また、漁業や商店街の再生、中小企業における事業再開後の販路回復や人材確保が課題です。人口減や復興需要縮小の地域経済への影響も懸念されています。さらに、県や被災市町村において技術系を中心に職員の確保が課題です。
平成30年度も、第3期復興実施計画に基づき、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生を着実に推進してまいります。
また、将来にわたって持続可能な新しい三陸地域の創造を目指す三陸創造プロジェクトの取り組みとして、復興道路やフェリー航路などの新たな交通ネットワークを活用した産業振興や交流促進を図ります。これらの取り組みを進めるに当たっては、応援職員の派遣要請など、職員確保に引き続き努めます。
また、これまで培われたつながりやきずなを交流へと発展させ、多様な主体との連携や県民みんなの参画により復興を進めます。被災者一人一人に寄り添った支援を行いながら、ビルド・バック・ベター、三陸のよりよい復興の実現に全力で取り組んでまいります。
平成28年台風第10号は、本県において25名のとうとい命を奪い、1名の方が今なお行方不明となっており、また、被害総額は1、428億円に上り、甚大な被害をもたらしました。
県では、速やかな生活再建のため、国の制度の対象とならない被災世帯に対し、市町村と連携して県独自の支援金を支給し、なりわい再生のためサケ・マスふ化場の再開を支援し、県独自の交付金で商工観光事業者の再建も支援、さらに被災3市町に対する自由度の高い交付金を創設しました。昨年3月には、復興の象徴である龍泉洞が再開、10月には岩泉ヨーグルトの販売が再開と、復興の動きが進んでいます。
また、急峻な地形のため復旧まで2年程度を要するとされていた主要地方道釜石遠野線笛吹峠は、昨年12月に全面通行どめ規制が解除され、本格的な冬を迎える前に片側交互通行に移行しました。
一方、災害公営住宅の建設など被災世帯の住宅再建本格化に対し、引き続き市町村と緊密に連携し、被災者一人一人に寄り添いながら支援していくことが必要です。また、公共土木施設や情報通信基盤の早期復旧のため、財源や人員確保など施工体制の確保、被災企業の販路の維持、開拓等の課題に対応した取り組みを強化していきます。さらに、ハード、ソフト両面による新たな風水害防災対策、健康支援や心のケアなど被災者の生活支援、そして、なりわいの再生を進めてまいります。
昨年7月、本県で初めて全国知事会議が開催され、復興をなし遂げ、災害の教訓を次世代に継承し、あらゆる災害に負けないことを誓う岩手宣言が採択されました。
また、立教大学と岩手大学が昨年4月に共同で開設した陸前高田グローバルキャンパスでは、学びを通してつなぐ、つたえる、つくるをコンセプトにさまざまな事業が展開され、復興を多くの方々に伝え、国内外の新たなつながりを生み出す拠点となっています。
県においては、復興を進める地域の姿を発信し、風化を防ぎ、教訓を伝え、新しい三陸を創造する、広域的、総合的な防災復興行事の2019年開催に向け、今年度策定する基本計画に基づき、市町村、関係団体と一丸となってオール岩手で準備を進めます。
東日本大震災津波の被災県として、記憶と教訓の伝承、復興の発信については、日本国内のみならず、世界の防災力向上に貢献することができるよう努めてまいります。
平成19年、2007年の知事就任以来、岩手が直面する危機を希望に変えるべく、いっしょに育む希望郷いわてを基本目標とするいわて県民計画を策定し、取り組みを進めてまいりました。
国民所得に対する県民所得水準の乖離はおよそ9割まで縮小し、雇用環境は正社員の有効求人倍率が上昇しています。
人口の社会減は、知事就任当時6、000人台で推移していたものが3、000人台に縮小したものの、昨年実績では拡大に転じています。地域医療は人口10万人に対する病院勤務医師数は増加したものの、医師数全体では全国との乖離が拡大しています。
産業分野では、自動車や半導体関連産業を中心とした産業集積の促進に取り組んできました。東芝メモリ株式会社や株式会社デンソー岩手の新工場建設はこれまでの取り組みが実を結んだものであり、ものづくり産業の集積や高度化を一層進め、県内のものづくり企業全体の持続的発展につながるよう取り組んでまいります。
海外市場への展開と外国人観光客の誘客拡大もいわて県民計画の重要な施策であり、昨年にはいわて国際戦略ビジョンを策定し、農林水産物等のブランド化の推進、継続的、安定的な販路の確保、拡大、各市場のニーズに合わせたプロモーションの展開などに取り組んでいます。
平成23年、2011年に平泉の文化遺産が世界遺産に登録され、平成27年、2015年には橋野鉄鉱山が明治日本の産業革命遺産として本県二つ目の世界遺産に登録されるなど、本県の文化遺産は世界的に価値が認められ、観光資源としても重要な役割を担っています。
いわて花巻空港は、平成21年、2009年に新ターミナルビルをオープンし、さらに増改築を重ね、国際線の受け入れ機能の強化や国際チャーター便の運航拡大に取り組み、今年度、台湾からのチャーター便は過去最高の158便が運航される見込みとなっています。先月には、タイガーエア台湾との間で国際定期路線の実現の連携に関する覚書を締結し、本県初の国際定期便の就航に向けて大きく前進しました。
さらに、海外展開を継続的、安定的にするためネットワークの強化に取り組んでいます。特に、平成22年、2010年の上海国際博覧会出展を契機とした中国雲南省との友好交流は、経済、観光、農林業、青少年交流など多様な分野に広がり、本年4月には岩手県雲南事務所を設置します。
食の分野では、米産地の確立に向け、DNA解読装置、次世代シーケンサーを用い、最先端の技術を駆使しながら約10年にわたって品種開発に取り組んできた結果、これまでの米の常識を打ち破る食味が特徴の金色の風や銀河のしずくをデビューさせました。
医療、福祉、教育の一体的支援のため、先月、県立療育センターと県立盛岡となん支援学校を開所、開校しました。岩手医科大学附属病院や関係機関と連携し、さまざまな障がいがある児童生徒一人一人に応じた総合的な支援体制を強化します。
平成28年、2016年の希望郷いわて国体、希望郷いわて大会は、県民の底力とさまざまなつながりの力を結集し、大成功をおさめました。そこから得られた自信、誇りは岩手の貴重なレガシーです。
2019年のラグビーワールドカップ釜石開催は、そのレガシーを生かしながら、スポーツの力をさらに復興につなげる絶好の機会です。既にフィジー対ウルグアイなど2試合の開催が決定しており、万全の体制で大会を迎えられるよう、組織体制を拡充してラグビーワールドカップ2019推進室を設置し、県民や関係団体とスクラムを組んで開催機運の醸成や受け入れ態勢の整備を進めます。
今、熱戦が繰り広げられている平昌オリンピック冬季競技大会には、スキージャンプの小林潤志郎選手と小林陵侑選手、スノーボードの岩渕麗楽選手、ノルディック複合の永井秀昭選手、来月開催される平昌パラリンピック冬季競技大会には、アルペンスキーの高橋幸平選手やクロスカントリーの阿部友里香選手など、本県ゆかりの選手が10人出場しており、県内も大いに盛り上がっています。
さらに、復興五輪を理念に掲げる東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、市町村や関係団体と連携し、ホストタウン登録や事前合宿誘致、聖火リレーの体制整備を進めます。また、県産食材の活用促進や選手村ビレッジプラザ建設における県産材利用を通じ、復興の姿や農林水産物の魅力を国内外に発信します。
平成27年、2015年度に岩手県ふるさと振興総合戦略を策定し、三つの柱を立て、ふるさと振興の取り組みを進めてきました。今年度は、その中間年です。
岩手で働くでは、やりがいがあり、安定して働くことができる雇用、労働環境の整備促進や、首都圏の移住相談窓口の拡充などによるU・Iターン対策の強化を図ってきました。
施策推進目標である人口の社会減ゼロについては、平成28年実績は3、708人と3年ぶりに縮小に転じたものの、昨年は再び拡大しています。引き続き、いわてで働こう推進協議会を核とした産学行政一体となった全県的な働き方改革推進運動や、昨年開催したいわてとワタシゴト展などの若者の県内就職、職場定着に向けた取り組み、県内企業の成長支援や産業人材の育成を進めてまいります。
岩手で育てるでは、昨年、県内3番目の“いきいき岩手”結婚サポートセンター─i-サポ奥州をオープンするなど、結婚支援や子育てしながら働きやすい労働環境の整備に取り組んできました。i-サポの会員数やいわて子育てにやさしい企業等の認証数は増加している一方、施策推進目標である出生率の向上については、平成28年の合計特殊出生率は1.45と全国値は上回るものの、おおむね横ばいの状況が続いています。引き続き、結婚支援の充実や出産環境の整備、地域や企業における子育て応援推進に取り組んでまいります。
岩手で暮らすでは、医療、福祉や文化、教育などの基盤強化を進めながら地域の魅力向上を目指し、特に若者、女性の活躍推進を強化してきました。
施策推進目標である国民所得に対する県民所得水準の乖離縮小については、目標値93.4以上に対し平成26年は94.7と向上しており、ふるさと振興総合戦略を踏まえ、さらに取り組みを強化しています。
若者の交流、ネットワークの構築を後押しするため、いわて若者文化祭やいわて若者会議を開催し、昨年はいわて若者カフェを開設しました。また、女性が持てる能力を一層発揮し活躍できる環境にするため、いわて女性の活躍促進連携会議に五つの部会を設置し、さらに、県独自のいわて女性活躍企業等認定制度やいわて働き方改革アワードを実施してきました。引き続き、若者の活躍に向けた取り組みの促進や、働く女性、働きたい女性への支援などに取り組んでまいります。
今から44年前の昭和49年、旧松尾村の県民の森において、昭和天皇と香淳皇后の御臨席のもと、自然と産業が調和する豊かな緑の創造をテーマに開催した全国植樹祭は、岩手において豊かな森林環境が今日まで引き継がれてきた土台となりました。この豊かな森林環境をさらに次の世代に引き継ぐために、県民理解の推進や林業の持続的で健全な発展を図り、また、東日本大震災津波からの復興の姿を発信し、さらにふるさと振興を一層進める上での原動力にもなるよう、4年後の2022年、本県で2回目となる全国植樹祭を招致します。今後、関係団体と連携し、準備を進めてまいります。
現在、全国的には東京圏の転入超過数が依然として約12万人に達する勢いであり、人口減少に歯どめをかけ、岩手への新しい人の流れを生み出すためには、国による東京一極集中の是正に向けた抜本的な対策が不可欠です。国に対し、東京一極集中の是正と、そのためにも地方重視の経済財政政策を実施するよう、全国知事会とも連携しながら引き続き強く訴え、地方側の政策と合わせ、国と地方が一体となった取り組みを進めてまいります。
ILC─国際リニアコライダーを、世界的に安定した地質などの好条件を有する北上山地に実現することは岩手の使命と言えるでしょう。ILCの実現を目指しながら、新産業の創出やグローバル人材の育成、多文化共生社会の推進など、世界に開かれた地方創生のあり方を発信していきたいと思います。世界の研究者の皆さんが日本政府の決定を期待しており、県としてもこれまで以上に関係機関や関係団体と一致団結しながらILC受け入れに万全を期し、国に対する積極的な働きかけを行ってまいります。
平成30年度当初予算は、第3期復興実施計画に基づく東日本大震災津波からの復興と平成28年台風第10号災害からの復旧、復興を最優先としながら、ふるさと振興総合戦略を強力に推進し、県民の明日への一歩と共に進む予算として編成しました。
他方、中期財政見通しでは、公債費が大幅に低減する一方で、社会保障関係費の増加などにより厳しい財政状況が続くことが見込まれています。あらゆる手法で歳入確保を図りながら、事業効果が高い施策への一層の選択と集中を進め、財政の健全化に努めてまいります。
東日本大震災津波や平成28年台風第10号災害からの復旧、復興、さまざまな行政需要や新しい行政ニーズに対応していくため、専門的知識を有する人材の確保に引き続き取り組みながら、一層の効率化や重点化を図り、柔軟かつ適切に対応できる体制を構築してまいります。
また、復興やふるさと振興の推進に当たっては、県民、企業、NPO、市町村など地域社会を構成するあらゆる主体がともに支え合い、連携、協働しながら、総力を結集して地域づくりを進めていくという地域経営の視点が不可欠です。県民の期待と信頼に応えられるよう職員の資質向上を図り、組織体制を整備しながら、県と多様な主体との連携、協働により、県民、行政が一体となって地域課題の解決に向けて取り組んでまいります。
今後も厳しい財政状況が見込まれ、職員体制も限られた中ではありますが、引き続き、予算と人的資源を最大限に生かし、必要な施策を着実に推進してまいります。
以下、平成30年度の具体的な施策の内容について申し上げます。
初めに、東日本大震災津波からの復興の取り組みであります。
まず、安全の確保として、数十年から百数十年に一度の頻度で起こり得る津波に対応するため、国による湾口防波堤の整備とあわせ、防潮堤や水門等の津波防災施設の早期完成に向けた整備を進めます。また、水門、陸閘の自動閉鎖システムの整備を推進し、管理体制の構築を図ります。
災害時における確実な緊急輸送や代替機能を確保し、水産業などの復興を支援するため、災害に強く信頼性の高い道路ネットワークの構築に向け、復興道路等の整備や緊急輸送道路における防災対策、橋梁の耐震化を進めます。
また、来年3月の三陸鉄道株式会社による久慈-盛間の一貫経営に向け、車両等の整備を支援し、沿岸市町村と連携しながら三陸鉄道リアス線の活性化に取り組みます。
市町村における面整備事業の進捗にあわせ宅地供給を2020年度までに完了し、また、早期の住宅整備に向けた住民等によるまちづくり活動を支援します。
安全で安心なまちづくりに向け、釜石警察署の整備など被災した警察施設の復旧を進めます。また、被災地支援隊による一人一人に寄り添った活動を継続し、治安情勢の変化や地域の実情に即した適切な治安対策を進めます。
放射線の影響による各種課題の解決のため、農林業系副産物の処理加速化に向けた技術的支援や、農林産物の生産環境の回復、測定結果に基づく食品の安全性や空間線量率の状況に関する情報発信に引き続き取り組みます。あわせて、原発事故による損害が十分賠償されるよう、市町村等と連携し、東京電力ホールディングス株式会社に対する交渉を継続して行います。
また、災害に強いまちづくりを進めるため、防災拠点への再生可能エネルギー設備導入や、被災住宅の再建時における太陽光発電設備導入支援などにより、自立・分散型エネルギー供給体制の構築を図ります。
復興を象徴し、失われた命への追悼、鎮魂、津波被害と教訓を確実に次世代に伝承するため、ラグビーワールドカップ2019釜石開催までの開館を目指し、陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園内に、国が整備する追悼・祈念施設とあわせ、震災津波伝承施設(仮称)の整備を進めます。
さらに、平成28年台風第10号災害を踏まえ、洪水災害に対する安全度の向上を図ります。浸水被害が発生した河川の改修、河道内の堆積土砂の掘削や立ち木の伐採などを、関係市町村と連携しながら、緊急性や事業効果を踏まえ集中的に実施します。また、水位周知河川や洪水浸水想定区域の指定、ホットラインやタイムラインの運用、水位監視カメラの設置などのソフト対策を進め、警戒、避難体制の充実、強化を図ります。
次に、暮らしの再建として、一日も早く安定した生活を取り戻すことができるよう、県と市町村が一体となって、内陸部も含め、2019年度の完了を目指し、安全で良質な災害公営住宅の整備を進めます。また、生活再建住宅支援事業等の補助制度により、持ち家再建、確保の支援を引き続き進めます。
恒久的な住宅への移行が速やかに図られるよう、いわて内陸避難者支援センターにおける支援や、被災者相談支援センターにおける生活設計相談への対応を強化します。さらに、再建先でのコミュニティー形成が円滑に進むよう、コーディネーターによる支援対象地域の内陸部への拡充や、被災者の心の復興に取り組む民間団体等への支援を実施します。
県立高田病院が来月開院予定となり、被災した県立病院は全て再建されます。一人一人が安心して心豊かに暮らせる生活環境を実現するため、引き続き、地域の医療機関や社会福祉施設の再建、地域包括ケアシステムの構築を支援します。
また、応急仮設住宅での生活の長期化や、災害公営住宅への転居による生活環境の変化を踏まえ、岩手県こころのケアセンターにおける相談対応や生活支援相談員による見守り活動など、きめ細かな心と体のケアに取り組みます。
岩手の復興、発展を担う子供たちを育成するためいわての復興教育を進め、また、安全で安心な教育環境の確保、充実を図ります。
被災した児童生徒等が経済的理由により進学を断念することがないよう、いわての学び希望基金奨学金の拡充や通学費の負担軽減などにより修学を支援します。さらに、多様化する被災児童の心のケアや相談に対応するため、いわてこどもケアセンターによる中長期的なサポートや、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置を継続します。
次に、なりわいの再生として、地域に根差した水産業の再生を図るため、担い手の確保、育成、高度衛生品質管理体制の構築による水産物の高付加価値化や、漁港施設の耐震、耐津波の強化対策に取り組みます。
原木シイタケの産地再生を図るため、引き続き出荷制限解除に向けた取り組みを進めながら、意欲的な生産者の規模拡大に対する支援や新規参入者の確保に取り組みます。
また、首都圏でのフェア開催に加え、中京圏におけるプロモーション活動の展開などにより、安全・安心で品質にすぐれる県産食材の魅力を発信します。
被災地域の経済を支える中小企業の本格的な再生、復興に向け、本設事業所への移転や販路拡大による収益性の回復を支援します。特に、市町村のまちづくり計画の進捗に伴い商店街や商業施設の整備が本格化していることから、仮設店舗から本設への円滑な移行の促進と持続的発展に向け、専門家の派遣などを通じた支援を行います。さらに、にぎわいのあるまちづくりに向け、被災地における起業や新事業の展開など、新たなチャレンジを促進してまいります。
また、事業再開後の経営安定を図るため、商工団体と連携し、経営、金融両面からのフォローアップ支援を継続します。さらに、新商品の開発や新分野への進出など企業の意欲的な取り組みに対し、国や金融機関と連携したいわて希望応援ファンドにより支援してまいります。
三陸地域の観光振興を図るため、三陸DMOセンターと連携し、観光人材の育成や地域資源を生かした高付加価値旅行商品の開発を促進し、観光地域づくりを推進します。
また、国内外からの観光客の誘客拡大につなげるため、本年6月に開催される東北絆まつり2018盛岡への支援に加え、三陸地域への誘客促進に向けた三陸復興・絆観光キャンペーンに取り組みます。さらに、三陸ジオパークと自然公園の一体的な活用による交流人口の拡大を図るため、国内外からの来訪者の受け入れ態勢の強化に取り組みます。また、観光交流やにぎわいの再生に資するため、高田地区海岸の砂浜再生に取り組んでまいります。
これらの取り組みに当たっては、東北電力株式会社と連携し、県内企業等を対象とした割安な価格での電力供給と、復興とふるさと振興関連施策への財政支援を一体的に行ういわて復興パワーの仕組みを十分に活用いたします。
次に、いわて県民計画に基づく取り組みについて申し上げます。
まず第1には、産業創造県いわての実現であります。
自動車関連については、世界的なコンパクト車の生産拠点を目指し、基盤技術を持つ企業の集積拡大、地場企業の競争力強化を支援します。また、製造、技術部門に加え物流などの関連部門や本社機能も視野に入れた関連企業の誘致促進、半導体関連産業の新設、増設事案の円滑な推進に取り組みます。
さらに、ものづくり産業における国際競争力の向上に向け、IoTなどの第4次産業革命技術の導入を促進し、また、異業種間連携を支援し、岩手発の新製品、新サービス、新産業の創出につなげてまいります。
産業人材の確保、育成、定着のため、関係機関が連携し、高校生、大学生を対象としたインターンシップの実施やU・Iターンの促進、奨学金の返還支援などに取り組みます。また、先端技術を身近な生活や生産に生かすメイカームーブメントを推進します。
科学技術によるイノベーションを創出するため、地域資源を活用した新たな価値の創造や次代の科学技術を担う人材育成に取り組みます。また、釜石市沖の海洋再生可能エネルギー実証フィールドの利活用促進や海洋エネルギー関連産業の創出、洋野町沖合の洋上ウインドファームの事業化を推進します。
商品開発や販路拡大の取り組みへの支援を通じ、地場産業の振興を図ります。特に、生産量日本一を誇る漆の生産拡大や関連産業の振興を図るため、全県的な推進体制の強化や国内外への漆文化の発信に取り組みます。
日仏友好160周年を記念して、本年7月から来年2月にかけ、パリを中心に大規模な日本文化紹介行事ジャポニスム2018が開催されます。これまでの欧州との交流をさらに促進するため各種企画に参加し、コルマール国際旅行博覧会やミラノ国際博覧会への出展実績を生かした県産品の販路拡大や、岩手の多様な文化を生かした人的、文化的交流の拡大に向け、岩手の魅力を丸ごと世界に発信してまいります。
第2には、食と緑の創造県いわての実現であります。
地域の農林水産業の中核となる担い手を育成するため、経営の高度化や生産の効率化、生産基盤の整備による経営体質の強化を図ります。特に次代を担う人材を養成するため、昨年開講したいわて林業アカデミーに続き、漁業の基礎知識やICT等の先端技術を駆使した高度な経営手法の習得を支援する機関となる(仮称)いわて水産アカデミーの開設準備を進めます。
また、農林水産業における女性の活躍促進を図るため、女性の感性を生かした新ビジネスモデルの創出や、多様な交流機会の提供によるネットワークづくりを推進します。
米政策が見直される平成30年産以降、水田を最大限に活用し、体質の強い水田農業を確立することが不可欠です。主食用米等の需要に応じた生産を推進しながら、新たに高収益な土地利用型野菜を水田へ導入するため、必要な機械、施設の整備を支援し、野菜産地の創造に取り組みます。
また、消費者から信頼される食料・木材供給基地の確立に向け、超省力で高品質生産を実現するスマート農林水産業や、農業者みずからの経営改善にもつながる農畜産物のGAPの取り組みを支援します。
食を起点とした地域経済の活性化を図るため、生産者と商工業者の連携による発信力のある商品開発に対する支援や、健康の維持、増進に着目した機能性成分の活用による県産農林水産物の高付加価値化を推進します。
また、国際定期便の就航実現と連動したプロモーション活動の展開や、本県畜産振興の中核拠点である株式会社岩手畜産流通センターに対する国際的な衛生管理基準に対応した食肉処理施設整備の支援など、戦略的な海外市場の販路開拓に取り組みます。
さらに、すぐれた農林水産物を育む活力ある農山漁村の創造に向け、地域資源を活用した農山漁村ビジネスの振興や交流人口の拡大を図ってまいります。
第3には、共に生きるいわての実現であります。
誰もが社会の中でつながり、支え合うソーシャルインクルージョンの観点に立ち取り組みを推進してまいります。
医療を担う人材の確保、定着のため、奨学金による医師の養成と適切な配置調整による偏在の解消、看護職員の県内定着や復職支援に取り組みます。また、地域医療構想を踏まえ医療機関の機能分化と連携体制の構築を進め、岩手医科大学附属病院における高度救命救急医療等拠点の整備を支援するなど、質の高い医療サービスの提供に取り組みます。
今年度に策定する次期岩手県保健医療計画に基づき、周産期母子医療センターの機能強化による総合的な周産期医療体制の充実や、ドクターヘリの安全かつ円滑な運航による救急医療体制の確保、DMAT等の災害医療人材の育成による災害時医療提供体制の強化を行います。
さらに、全国高位の生活習慣病による死亡率を改善するため、働き盛り世代を対象に、生活活動量の増加や食生活の改善など健康増進の取り組みを新たに展開し、また、岩手県脳卒中予防県民会議を中心に、県民一体となって健康寿命の延伸に向けた取り組みを進めます。
国民健康保険の財政運営が市町村から県に移行されることに伴い保険税負担が増加する市町村に対して激変緩和措置を講じるなど、制度の円滑な実施を図ります。
安心して子供を産み育てられる環境の整備に向け、結婚、妊娠、出産、子育ての各段階を切れ目なく支援します。結婚サポートセンターを中心とした結婚支援や、妊娠、出産を望む方々の願いに応える特定不妊治療費助成の実施、保育人材の確保や就労形態の多様化に対応した各種保育サービスの充実に取り組みます。
子供たちが生まれ育った環境に左右されることなく将来に希望を持てるよう、教育、生活支援などによる子供の貧困対策に資するため子どもの生活実態調査を実施し、また、子供の支援に取り組む団体のネットワーク化を進めます。
障がい児が、乳幼児期から青年期まで一貫した支援を受けることができるよう関係機関の連携による地域療育ネットワーク機能の充実を支援し、さらに、障がい特性に応じた支援が行えるよう、老朽化したみたけ学園、みたけの園の改築整備を進めます。
高齢者が地域で安心して暮らすことができるよう介護サービス提供体制の充実を図り、また、障がいのある方が安心して生活できるよう、グループホーム等の住まいの確保や農福連携の取り組みなどによる就労の場の拡大を図ります。
自殺死亡率の低下に向け、相談支援体制の整備や人材養成、普及啓発を総合的に推進し、官民一体となって自殺対策に取り組みます。
第4には、安心して、心豊かに暮らせるいわての実現であります。
東日本大震災津波や平成28年台風第10号災害を経験した私たちの責務として、同じ悲しみを繰り返さないという決意のもと、大規模自然災害が発生しても、致命的な被害を負わない強さと速やかに回復するしなやかさを持った安全・安心な地域社会の構築に向け、岩手県国土強靭化地域計画に基づく施策を進め、岩手の強靭化を推進します。
自助、共助、公助それぞれの災害対応能力の向上を目指し、関係機関、地域が連携、協力して地域防災力の強化を図ります。
安全で安心な県民生活を実現するため、県民、事業者、行政の連携による犯罪防止や犯罪が起きにくい環境づくりに取り組みます。また、悪質巧妙化する特殊詐欺への抵抗力の向上や、少年を加害者にも被害者にもさせない地域社会の構築、子供や高齢者を初めとした交通弱者を守る交通事故防止対策に取り組みます。さらに、消費者被害を未然に防止するため、市町村の消費生活相談体制に対する支援や消費者教育など、消費者行政の充実に引き続き取り組みます。
多様な主体の連携、協働により地域課題の解決に取り組むため、担い手の中心となるNPO等の人材育成や運営基盤の強化に取り組みます。また、地域コミュニティーの再生、活性化に向け、元気なコミュニティ特選団体の認定、紹介や地域おこし協力隊のネットワーク構築を行います。さらに、本県への移住希望者をふやすため、全県的な推進体制により、東日本大震災津波を契機につながりを持った若者や本県出身者などに対するきめ細かな移住、定住施策を展開します。
男女がともに尊重し合い、個性と能力を発揮できる地域社会の形成に向け、男女共同参画の意識啓発や女性に対する暴力の根絶、性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援体制の維持強化に向けた取り組みを進めます。
第5には、人材・文化芸術の宝庫いわての実現であります。
岩手の未来を担う人材の育成に向け、岩手県総合教育会議を活用し、教育委員会との連携を深め、地域における教育の課題やあるべき姿を共有しながら教育を振興します。
私立学校の安定的な教育環境の確保を図り、特色ある教育活動を引き続き支援し、また、私立高校等の生徒が安心して修学できるよう、新たに就学支援金の国の交付額を超えた授業料の負担軽減を行います。
さらに、児童生徒の学ぶ環境の充実のため、老朽化した学校施設の改築や県立釜石祥雲支援学校の移転、新たな特別支援学校の整備を行います。
国際的視野で世界と岩手をつなぎ、地域における国際化に貢献する人材の育成のため、学校教育における外国語教育の充実や、コミュニケーション能力の向上を図るイーハトーブ・グローカル・キャンプを開催します。
若者の地元定着に向け、高等教育機関や市町村、関係団体と連携し、地域における大学の振興に関する国の新たな動きにも対応しながら、地(知)の拠点大学による地方創生推進事業─COCプラスの取り組みを進めます。また、沿岸地域における産学行政の連携を推進し、水産業を中心とした高度専門人材を育成し産業基盤を強化するため、その拠点となる岩手大学釜石キャンパスの整備を支援します。
県民の心を豊かにする、岩手の魅力を生かした文化芸術の振興を進めます。本県最大の文化芸術イベントである岩手芸術祭を一層充実させ、全県的な盛り上げを図ります。
また、沼田真佑さんと若竹千佐子さんが連続して芥川賞を受賞するなど、近年、本県の才能豊かな人材が全国を舞台に活躍しています。本県ゆかりの作家による講演会の開催など、県民の文化芸術活動の活性化に取り組みます。
本年は明治元年から起算して150年の節目の年でもあります。本県には、日本の近代化に尽力した先人たちや世界遺産の橋野鉄鉱山、日本の20世紀遺産20選に選ばれた小岩井農場など明治と関係の深い資産が数多くあることから、これらの価値を発信します。また、一戸町の御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録、平泉の文化遺産の拡張登録に取り組みます。
さらに、いわてマンガプロジェクトにより、漫画を通じて国内外へ本県の魅力を発信します。
(仮称)岩手県スポーツ推進計画を策定し、スポーツ振興施策を総合的かつ計画的に推進します。希望郷いわて国体、希望郷いわて大会で高められた本県選手の競技力の維持、向上を図り、オリンピックやパラリンピックなど世界のひのき舞台で活躍するトップアスリートの育成に取り組みます。
また、昨年10月に設立したいわてスポーツコミッションを中心に、本県の多様なスポーツ資源を生かし、スポーツイベントの誘致に取り組みます。さらに、国内最高水準の県営スポーツクライミング施設を生かし、国内初の複合種目の全国大会として、本年6月に開催されるスポーツクライミング第1回コンバインドジャパンカップ2018が成功するよう取り組みます。
第6には、環境王国いわての実現であります。
低炭素社会の実現に向け、温暖化防止いわて県民会議を中核とした温室効果ガス排出削減に対する全県的な取り組みを推進します。
また、再生可能エネルギーによる電力自給率の倍増を目指し、一戸町の高森高原風力発電所の本格稼働や盛岡市の簗川発電所の建設、再生可能エネルギー関連産業への参入に向けた取り組みを進めます。さらに、災害時のエネルギー確保策や熱需要への対応として期待される水素の利活用構想の策定を進めます。
自然公園を核とした環境資源の魅力発信、利活用による環境保全意識の高揚とあわせた地域振興の促進を図りながら、人とさまざまな動植物が共存する持続可能な社会に向けた取り組みを進めてまいります。
第7には、いわてを支える基盤の実現であります。
平成28年台風第10号や昨年の台風第21号など、本県は近年、頻繁に集中豪雨災害に襲われており、県民の生活を守るためには治水対策、土砂災害対策が不可欠です。整備効果が早期に発現されるよう、河川や砂防堰堤等のハード整備を進め、あわせて住民の円滑かつ迅速な避難を促すソフト施策を推進します。
また、物流の効率化や地域間交流の促進、観光客の利便性向上に資する道路の整備や港湾の利活用を推進します。
公共交通の活性化に向けた施策を総合的に企画、推進するため、本年4月、交通政策室を設置し、効率的で利便性の高い持続可能な公共交通ネットワークの再構築やいわて花巻空港の国内路線の維持、拡充、国際定期便の早期実現に向けた受け入れ態勢の強化に取り組みます。
県民サービスの向上や業務効率化、地域課題の解決に向け、IoTやAIなど新たな技術革新の動向も踏まえ、(仮称)ICT利活用推進計画を策定し、県全体としてICT利活用を推進します。
社会資本の老朽化への対応は全国共通の課題です。岩手県公共施設等総合管理計画に基づく個別施設計画の策定を進め、計画的に予防保全型の維持管理に取り組みます。また、空き家を有効活用した公民連携によるリノベーションまちづくりを促進します。
さらに、建設業の担い手を育成するため、けんせつ小町ネットワークの充実、強化などにより、女性も若者も働きやすい職場環境の整備を進めます。
いわて県民計画の7つの政策に加え、各広域振興圏において地域の創意が発揮された取り組みを進めます。特に県北圏域においては、多彩な食や伝統の漆、基幹産業であるアパレルの振興や、御所野遺跡などの地域資源を活用した体験交流型観光を推進し、若者の定着や交流人口の拡大につなげてまいります。
本県では、東日本大震災津波からの復興に当たり、被災者一人一人の幸福追求権の保障を基本方針としてまいりました。県政全般におきましても、県民一人一人の幸福を追求する権利を保障するということが重要であると考えます。
昨年7月の全国知事会議岩手宣言では、復興の興(おこす)の字を幸福の幸(さいわい)とした復幸という言葉で、一人一人の住民が幸福を実感できる真の復幸をなし遂げると宣言されました。
この復幸という言葉は、そもそも復興の現場で生まれたものであります。平成23年、2011年に大槌北小学校の校庭にオープンした仮設商店街、福幸きらり商店街や、全国青年市長会により設置された陸前高田市復幸応援センターが、フッコウのコウに幸(さいわい)の字を用いた実例です。
このようなことも踏まえ、県では、有識者で構成する岩手の幸福に関する指標研究会を設置し、経済的要素に加え、岩手の風土や文化、暮らし、また、地域や人のつながりにも着目した施策の展開に向けて、幸福に関する指標の検討を進めてまいりました。
昨年11月、岩手県総合計画審議会に対して、次の10年の岩手県政の道しるべとなる次期総合計画の基本的方向について諮問を行いました。今後、幸福指標研究会最終報告書も参考に、計画策定に向けた議論を本格化させてまいります。
岩手の先人、宮沢賢治は、世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ないという言葉を残しました。こうした言葉が生まれる岩手の地であれば、幸福をキーワードに、人や社会のあり方を深く考え、県民の、県民による、県民のための計画として、必ずや誇れる総合計画をつくり上げることができると信じます。
ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解とさらなる御協力を心からお願い申し上げまして、私の所信表明といたします。
ありがとうございました。(拍手)
日程第6 教育委員会教育長の演述
〇議長(佐々木順一君) 次に、日程第6、教育委員会教育長の演述であります。高橋教育長。
〔教育長高橋嘉行君登壇〕
〇教育長(高橋嘉行君) 第12回県議会定例会が開会されるに当たり、平成30年度の教育行政推進の基本的な考え方と施策の大要について申し上げます。
東日本大震災津波の発災から間もなく7年を迎えようとしています。
被災した校舎の復旧は、建築工事に着手した陸前高田市の1校を除き全て完了するなど、復旧、復興に向けた取り組みが着実に進んできております。一方では、依然として応急仮設住宅での生活を余儀なくされているなど、さまざまな困難や制約を受けている子供たちもおります。
教育委員会としては、引き続き、心のサポート体制の充実や被災した遺児、孤児の就学支援の拡充など、児童生徒一人一人に寄り添った支援に取り組むとともに、全国知事会議における岩手宣言にも盛り込まれた、災害の教訓を次世代へ継承する取り組みも充実させるため、いわての復興教育プログラムの改訂に着手するなど、学びの場の復興と、その先を見据えた教育の充実に取り組んでまいります。
また、人を育む教育は社会形成の礎であるという認識のもと、総合教育会議の場などを通じて、知事と教育委員会との一層の連携を深めながら、いわて県民計画やふるさと振興総合戦略等の諸計画に基づき、岩手の子供たちの確かな学力、豊かな心、健やかな体を備え調和のとれた人間形成に向け、現下の課題に対応しつつ、中長期的な展望も見据えながら学校教育の充実などに取り組んでまいります。
平成30年度においては、次期総合計画の策定にあわせ、平成31年度からの10年間を計画期間とする、仮称ではありますが、岩手県教育振興計画を策定することとしております。
その策定に当たっては、岩手が持つ多様な豊かさやつながりなどにも着目し、岩手だからこそできる教育、やるべき教育という視点なども取り入れながら取り組んでまいります。
また、学校教育の充実を図るため、学校における働き方改革に重点的に取り組むとともに、2020年度からの新しい学習指導要領の段階的な導入に向けた対応や、新たな高等学校再編計画の推進、学校教育における文化芸術、スポーツの振興など、児童生徒一人一人に向き合い寄り添う教育の推進と切れ目のない学びの保障などに取り組んでまいります。
以下、教育施策の重点事項について申し述べます。
まず、東日本大震災津波からの教育の復興について申し上げます。
第1に、きめ細かな学校教育の実践と教育環境の整備、充実についてであります。
本県独自の教育活動であるいわての復興教育につきましては、復興教育プログラムに基づく教育活動の推進などを通じて、復興、発展を支える人材の育成に取り組んでまいりましたが、記憶の風化への懸念の声や、新しい学習指導要領への対応などのさまざまな動きや変化も踏まえ、復興教育プログラムと副読本の改訂に着手するとともに、沿岸部と内陸の学校との交流への支援なども行いながら、震災の経験や教訓を県内外に発信し、後世に語り継ぐ活動などを一層推進してまいります。
また、学校相互の連携や、学校と家庭、地域との連携による児童生徒の発達段階に応じた防災教育を推進し、防災、減災に関する知識、技能や、多様な自然災害の発生時に主体的に行動する態度の育成にも取り組んでまいります。
被災した児童生徒の心のサポートにつきましては、さまざまな支援ニーズに対応していくため、引き続きスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを配置し、きめ細かな対応に取り組んでまいります。
児童生徒の安全で安心な教育環境の確保につきましては、高田高校のグラウンド整備や、市町村立学校施設の復旧、整備の完了に向けた支援などに引き続き取り組んでまいります。
また、いわての学び希望基金の活用による遺児、孤児への奨学金の給付については、支給額の増額や支給対象校種を大学院までに拡充するとともに、被害を受けた低所得世帯の高校生等に対し、これまでの教科書購入費等に加え、新たに高等学校及び大学等への進学に要する費用を一時金として給付するなど、被災児童生徒に対する支援の充実に取り組んでまいります。
さらに、心のサポートや学習支援等にきめ細かに対応するため、市町村の意向を踏まえた加配教職員の配置を進めるほか、被災地における学習環境を確保するため、放課後や週末における学習支援などを行う居場所づくりにも引き続き取り組んでまいります。
第2に、文化芸術環境の整備や伝統文化等の保存と継承についてでありますが、復興道路などの整備に伴う埋蔵文化財調査に引き続き取り組むとともに、その成果の公開や、被災地の文化財、美術品などの修復、適切な保存、管理の支援に取り組んでまいります。また、被災児童生徒の文化芸術活動の大会参加などへの支援にも取り組んでまいります。
第3に、社会教育、生涯学習環境の整備についてでありますが、引き続き、被災市町村の公民館、図書館、博物館などの社会教育施設の復旧、再開を支援するとともに、地域住民による子供の学習支援を通じた学習環境の充実、学びを通じた地域コミュニティーの再生などにも取り組んでまいります。
第4に、スポーツ・レクリエーション環境の整備についてでありますが、高田松原野外活動センターの移転復旧整備を進めるとともに、被災児童生徒の大会参加への支援や、自校のグラウンド等での活動が十分に行えない学校に対する練習場所への移動支援などにも継続して取り組んでまいります。
次に、いわて県民計画第3期アクションプランの着実な推進について申し上げます。
第1に、学校教育の充実についてであります。岩手の子供たちが、人口減少の進行やグローバル化、高度情報化の進展など変容する社会を生き抜き、未来を切り開いていく力を身につけていくためには、学校教育において社会的に自立していく基礎をしっかりと培うとともに、一人一人の適性や興味、関心、進路希望等に応じて、その能力を最大限に伸ばしていくことが重要であります。
平成30年度はいわて県民計画の最終年度となりますが、今後におきましても、県民計画における、人づくりは長期的な視点で取り組む必要があるという考えを踏まえ、教育施策に関する諸計画との連携や整合性を図りながら一体的な教育の振興に取り組むとともに、教育振興計画や個別の教育施策に関する諸計画の策定等にも取り組んでまいります。
新たな県立高等学校再編計画については、前期計画を着実に推進するとともに、後期計画の具体化に向け、それぞれの地域の御意見等もお聞きし、教育の質の保証と学ぶ機会の保障という観点や本県を取り巻く社会情勢の変化等も踏まえながら、多面的な検討を進めてまいります。
次に、児童生徒の学力向上につきましては、児童生徒一人一人に確かな学力をしっかり身につけてもらうため、市町村教育委員会と連携しながら、主体的、対話的で深い学びの視点からの授業改善を進め、わかる授業の推進と家庭学習の充実などに取り組んでまいります。
また、新たな学習指導要領の完全実施に向け、学校の実態や特色を踏まえた教育課程の編成など、教育活動の充実に取り組んでまいります。
英語教育につきましては、小学校からの外国語教育を推進するとともに、イングリッシュキャンプの実施や県内中学2年生を対象に新たに導入する英語能力判定テストも活用しながら、聞く、読む、話す、書くの4技能の育成に努めてまいります。あわせて、これらの取り組みなどにより、グローバルな視点を持ち岩手と世界をつなぐ人材の育成にも取り組んでまいります。
2021年度の大学入学試験から新たに導入される大学入学共通テストの実施に向け、本県の高校生が円滑に対応できるようにするため、外部人材の活用も図りながら教員の指導力向上や生徒の受験対策の充実などにも取り組むほか、日本新聞協会等が主催し本県で開催されるNIE全国大会の機会も通じながら、新聞を活用した情報活用能力の育成などにも取り組んでまいります。
少人数学級の推進につきましては、これまで小学校1年生から4年生までと中学校の全学年を対象に、段階的に35人学級の導入を進めてきたところですが、平成30年度におきましては、平成31年度からの小学校6年生までの拡大も視野に入れながら、新たに小学校5年生に少人数指導との選択制による35人学級を導入することといたします。
次に、キャリア教育につきましては、いわてキャリア教育指針に基づき、児童生徒に社会人、職業人として自立するための基礎的素養、主体的に人生計画を立てて進路を選択、決定できる意欲や能力の育成を図ってまいります。
また、産業界等とも十分に連携しながら、生徒や保護者、教員の地元企業等に対する理解と関心を高めていくこととあわせ、地域の歴史や伝統文化にかかわる学習などを通して、岩手の子供たちが本県にルーツを持つことに誇りを持ち、将来にわたって本県とのつながりを持ってもらえるような意識の醸成にも取り組んでまいります。
次に、豊かな心を育む教育の推進についてでありますが、引き続き児童生徒一人一人が自他の命と他者の人権を尊重し大切にする教育を推進するとともに、考え、議論する道徳科の授業をかなめとする道徳教育の充実、ボランティアなどの体験活動や文化芸術体験活動、読書活動の充実などにより、豊かな心を育む教育を推進してまいります。
また、いじめや学校不適応の未然防止、早期発見、適切な対応を図るため、引き続き各学校における組織的な取り組みを強化してまいります。
情報モラル教育については、学校ごとに中核となる教員を養成し、指導の工夫、改善などに努めながら児童生徒への指導の充実に取り組んでまいります。
次に、健やかな体を育む教育の推進についてでありますが、希望郷いわて元気・体力アップ60運動をキャッチフレーズに、幼稚園や小学校等と家庭、地域が連携し、幼児、児童、生徒の運動習慣の定着を図るための環境づくりを引き続き進めてまいります。
また、岩手の子供たちの東京オリンピック、パラリンピックへの興味関心を高めていくため、オリンピアン、パラリンピアンを学校へ派遣するなどの取り組みも行ってまいります。
運動部活動の適正化については、国が策定する運動部活動のガイドラインを踏まえ本県版のガイドラインを策定し、その取り組みを推進するとともに、スポーツ医・科学による指導の充実や地域人材を活用した部活動指導員の配置を進めることなどにより、運動部活動における効果的かつ計画的な体制の構築に取り組んでまいります。
次に、特別支援教育についてでありますが、就学前からの支援を充実させるため、特別支援学校の教職員が地域の幼稚園や保育所を継続的に訪問し、指導方法に関する相談や支援に取り組んでまいります。また、個別の指導計画等に基づく支援や特別支援学校の子供たちの交流籍を活用した小中学校の児童生徒との交流、共同学習の実施などを通じて、インクルーシブ教育の一層の充実に努めてまいります。
さらに、特別支援学校技能認定制度の定着や企業との連携協議会の開催、就労サポーター制度の活用促進などにより、特別支援学校における就職支援の充実にも取り組んでまいります。
次に、家庭、地域との協働による学校経営の推進についてでありますが、その実現のためには、学校と家庭、地域との相互理解や情報共有が大事でありますので、全ての学校で策定する学校経営計画等の評価、公表などを通じて、学校経営に学校関係者の意見等を反映させるとともに、家庭、地域と協働した放課後子供教室の運営等に努めてまいります。
次に、学校施設の整備についてでありますが、教育環境の充実、向上を図るため、全ての県立学校施設の適切な維持修繕、保全に努めていくほか、久慈高校や福岡工業高校の耐震改築、種市高校の潜水作業実習船種市丸の代船建造などに取り組んでまいります。
また、特別支援学校の狭隘化などの改善につきましては、釜石祥雲支援学校の移転新築整備に着手するほか、新たな特別支援学校の設置に向け、盛岡となん支援学校の旧校舎の改修や前沢明峰支援学校の特別教室棟の増築などに取り組んでまいります。
第2に、社会教育の充実と生涯を通じた学びの環境づくりについて申し上げます。
教育振興運動につきましては、半世紀にわたる本県独自の実践活動として、子供、家庭、学校、地域、行政の5者の連携により、全県共通課題や地域ごとの教育諸課題の解決に取り組んできたところでありますが、少子高齢化の進行や社会システムの変容等により、その取り組みには温度差が出てきております。人口減少対策やふるさと振興に鋭意取り組んでいる現在、教育の側面から地域活動を進める教育振興運動には新たな可能性が期待されていると思いますので、いわて型コミュニティ・スクールとのかかわり等を含めたこれまでの取り組みを検証し、運動の再構築等も視野に、今後のあり方を検討するとともに、市町村等との連携のもとに、生涯学習推進センターにおける研修機会の充実や地域における活動の支援などに取り組んでまいります。
また、県立図書館や美術館、博物館等の社会教育施設における県民利用の拡大にも引き続き取り組んでまいります。
第3に、文化芸術の振興について申し上げます。
縄文遺跡群の世界遺産登録につきましては、登録推進本部として本年度末に国内推薦書案を文化庁に提出し、6度目の挑戦をすることとなりますが、昨年度において普遍的価値の再構築を行ったことにより新たな光も見えてきておりますので、関係道県等と十分に連携しながら、その実現に向けて鋭意取り組んでまいります。
柳之御所遺跡については、これまでの遺跡の研究や発掘調査においてさまざまな研究成果や注目すべき新たな遺構が発見されてきておりますので、世界遺産平泉の価値の一層の向上のため、引き続きその調査や史跡公園の整備に努めてまいります。
また、県内の各地域に残されている貴重な建造物や美術工芸品等の有形文化財の保護や、民俗芸能等の地域に伝わる無形文化財の保護、伝承のための調査、指定に取り組むとともに、指定文化財の適切な保存、管理のため、所有者に対する指導、助言や修理等の支援にも取り組んでまいります。
本年度においても、不来方高校音楽部が全日本合唱コンクール全国大会で文部科学大臣賞を受賞する快挙をなし遂げたほか、全国高等学校総合文化祭郷土芸能部門における北上翔南高校鬼剣舞部の文化庁長官賞の受賞、全国高校文芸コンクール文芸部誌部門、小説部門、短歌部門の3部門で、盛岡第二高校、盛岡第三高校の生徒の最優秀賞受賞など、本県の子供たちが個性と創造性にあふれる文化芸術活動でのすばらしい活躍を見せてくれました。
引き続き、本県の文化振興の基盤となる学校教育における文化芸術活動の充実を図るため、指導の充実や総合文化祭の開催への支援、全国大会への参加の支援などに取り組んでまいります。
第4に、豊かなスポーツライフの振興について申し上げます。
昨年のえひめ国体においても本県の高校生が活躍し、山岳、自転車、カヌー、ホッケー、ゴルフの5種目で全国の頂点に輝き、希望郷いわて国体の6種目に迫るすばらしい活躍を見せてくれました。また、高校野球や全国高校駅伝大会、やまなし国体冬季大会における上位入賞など、生徒たちの活躍は、子供たちや県民に大きな喜びや感動を与えてくれました。
来年のラグビーワールドカップや東京オリンピック、パラリンピックの開催は、希望郷いわて国体、いわて大会のレガシーを継承し、子供たちのスポーツへの関心を高め、スポーツに親しむ機会をふやしていく絶好の機会でもあります。
学校体育や運動部活動を通じて、子供たちの発達段階に合わせ、する、みる、支える、知るといった運動、スポーツとの多様なかかわり方の浸透に努めていくとともに、関係団体等との連携のもとに、すぐれた指導者の育成、配置や、アスレティックトレーナー等による運動部活動へのスポーツ医・科学の活用なども促進しながら、中学生、高校生の競技力向上に向けた支援にも取り組んでまいります。
最後に、業務推進の基本姿勢について申し上げます。
教職員は子供たちの人格形成に大きくかかわる存在であり、子供たちはその姿を目にしながら成長していきます。日々情熱を持ちながら教育に当たっている教職員が、心身ともに健康で、意欲を持って子供たちに向き合っていくことは極めて重要です。
教職員の働き方改革については、児童生徒の適切な学校生活を確保する観点を前提としつつ、全ての県立学校にタイムカードの導入を行って客観的な勤務時間の把握に取り組むとともに、市町村教育委員会と連携しながら、公立学校を対象に教員の業務支援を行う非常勤職員の配置、地域人材を活用した部活動指導員の配置、教職員の健康確保策の充実などに取り組むほか、時間外勤務の削減目標を含めた本県版の教員の働き方改革プラン(仮称)を策定し、学校における主体的な働き方改革を推進してまいります。
現在、教育委員会においては、教員の一層の資質向上を実現するため、大学等と連携しながら、改正教育公務員特例法を踏まえた、教員等の資質の向上に関する指標の策定に取り組んでおりますが、新年度からは、この指標に基づき、教員の養成から採用、キャリア段階に応じた育成など、一貫した教員の資質向上にも計画的に取り組んでまいります。また、全ての教職員に対して教育に携わる職業人としての倫理観、使命感の一層の醸成に努めながら、県民の皆様からの信頼と期待に応えてまいります。
以上、教育行政の推進に当たっての基本的な考え方と施策の大要について申し上げました。
ここで、先月、移転開校した盛岡となん支援学校の落成式におけるアトラクションで児童生徒が行った呼びかけから、その一節を紹介いたします。
ある生徒は、こう強く呼びかけました。僕たちの先輩がつくったけやきの歌があります。春をうたい夏を輝きどこまでものびていきたい秋をゆたかに冬をのりこえどこまでものぼっていきたい。このけやきの歌のように僕たちは成長してきました。また、別の生徒は、先生がいて、友達がいて、普通に過ごしている日常が楽しく、毎日幸せでした。うれしいこと、悲しいこと、怒ることがある中で、そんな中にある幸せだからこそ最高の幸せになるのだと思います。このように呼びかけました。
式典に参加して、さまざまな困難の中、力強く生きていこうとする子供たちの姿や、教育への情熱、子供たちへの愛情にあふれる教師たちの姿に心を打たれ、改めて、岩手の教育界を挙げて子供たちや県民の皆様の信頼に応えていく責任に思いを新たにいたしました。
本格的な人口減少社会の到来や情報化社会の進展など、教育をめぐる環境は大きく変容してきていますが、こうした中において自分の夢や希望に向かって力強く進んでいこうとしている岩手の子供たちは、岩手の未来、希望であり岩手の宝です。岩手のそれぞれの地域地域、日本の未来を担う子供たちを健やかに育てることは県民の願いであり、教育にはそれを実現していく使命があります。
ここに改めて教育の持つ力と可能性に思いをいたし、岩手の子供たちが、急速に変容するこれからの時代をしっかり生き抜いていく力を身につけていくことができるように、今後、より一層、学校、家庭、地域、行政が一体となって岩手の教育の復興と発展に向けて全力で取り組んでまいりますので、議員の皆様並びに県民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。
以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
日程第7 議案第1号平成30年度岩手県一般会計予算から日程第74 報告第2号道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分の報告についてまで
〇議長(佐々木順一君) 次に、日程第7、議案第1号から日程第74、報告第2号までを一括議題といたします。
提出者の説明を求めます。佐藤総務部長。
〔総務部長佐藤博君登壇〕
〇総務部長(佐藤博君) 本日提案いたしました各案件について説明申し上げます。
議案第1号は、平成30年度岩手県一般会計予算であります。この平成30年度当初予算は、東日本大震災津波からの復興と平成28年台風第10号災害からの復旧、復興に最優先で取り組むとともに、ふるさと振興を着実に推進し、県民の明日への一歩と共に進んでいく予算として編成したものであります。
最終年度であるいわて県民計画及び岩手県ふるさと振興総合戦略に掲げる取り組みを着実に推進するため、産業振興や出産、子育て支援、働き方改革や若者、女性の活躍支援などの取り組みを推進するとともに、ラグビーワールドカップ2019や東京2020オリンピック、パラリンピックを通じた交流人口の拡大の取り組みも推進してまいります。
以下、予算の概要について説明申し上げます。
第1条は、歳入歳出予算の総額をそれぞれ9、533億4、800万円余とするものであります。これを前年度当初予算と比較しますと2.7%の減となっております。
次に、歳入の主なものについて説明申し上げます。
第1款県税につきましては1、326億1、200万円を計上しておりますが、これは、個人所得の伸びによる個人県民税の伸びが見込まれる一方、税率改正の影響の平年度化により法人事業税の減収が見込まれることなどにより、前年度と比較して1億2、000万円余の減となっております。
第5款地方交付税につきましては、国の地方財政対策の内容等を踏まえ2、903億4、400万円余を計上しており、前年度と比較して53億3、700万円余の減となっております。
第9款国庫支出金につきましては1、693億2、300万円余を計上しておりますが、東日本大震災津波の復旧、復興事業の進捗に伴い、中小企業等復旧・復興支援事業などの災害復旧事業が減少することなどにより、前年度と比較して34億9、100万円余の減となっております。
第12款繰入金につきましては507億4、000万円余を計上しておりますが、国庫支出金の減と同様、東日本大震災津波からの復旧、復興事業の進捗に伴い、東日本大震災復興交付金や地域医療再生等臨時特例基金などからの繰り入れが減少することなどにより、前年度と比較して139億4、000万円余の減となっております。
第14款諸収入につきましては1、503億6、000万円余を計上しており、前年度と比較して72億6、400万円余の減となっております。
第15款県債につきましては754億5、300万円余を計上しており、前年度と比較して12億3、900万円の増となっております。
次に、歳出の主なものについて説明申し上げます。
第2款総務費につきましては308億2、500万円余を計上しておりますが、その主なものは、震災津波伝承施設整備事業費2億8、700万円余、国際リニアコライダーの実現に向けたプロジェクト研究調査事業費1億400万円余、三陸鉄道運営支援事業費21億1、900万円余、ラグビーワールドカップ2019開催準備費1億9、800万円余等であります。
第3款民生費につきましては949億8、300万円余を計上しておりますが、その主なものは、国民健康保険特別会計繰出金72億7、900万円余、児童福祉施設等整備費補助6億6、300万円余、地域子ども・子育て支援事業交付金14億6、700万円余、被災者住宅再建支援事業費補助9億6、100万円余等であります。
第4款衛生費につきましては273億9、700万円余を計上しておりますが、その主なものは、被災地こころのケア対策事業費5億4、500万円余、再生可能エネルギー利用発電設備導入促進資金貸付金16億5、000万円、産業廃棄物処理施設整備事業促進費11億4、400万円余等であります。
第6款農林水産業費につきましては655億4、300万円余を計上しておりますが、その主なものは、いわて型野菜トップモデル産地創造事業費5億2、800万円余、食肉処理施設整備事業費25億7、800万円、いわての森林づくり推進事業費14億7、000万円余、さけ、ます増殖費5億6、000万円余等であります。
第7款商工費につきましては1、302億1、700万円余を計上しておりますが、その主なものは、中小企業東日本大震災復興資金貸付金857億2、700万円余、特定区域産業活性化奨励事業費補助3億3、000万円余、いわてインバウンド新時代戦略事業費5億2、900万円余等であります。
第8款土木費につきましては1、640億2、000万円余を計上しておりますが、その主なものは、地域連携道路整備事業費343億4、600万円余、河川激甚災害対策特別緊急事業費56億2、600万円、港湾高潮対策事業費48億2、000万円、災害公営住宅整備事業費48億6、300万円余等であります。
第10款教育費につきましては1、509億5、600万円余を計上しておりますが、その主なものは、児童生徒健全育成推進費3億7、700万円余、校舎建設事業費22億9、900万円余、公立大学法人岩手県立大学運営費交付金36億1、600万円余、私立学校運営費補助40億3、600万円余等であります。
第11款災害復旧費につきましては657億9、000万円余を計上しておりますが、その主なものは、漁港災害復旧事業費111億5、200万円余、中小企業等復旧・復興支援事業費70億7、800万円余、河川等災害復旧事業費331億8、100万円余、港湾災害復旧事業費16億1、600万円余等であります。
第12款公債費につきましては1、098億3、700万円余を計上しております。
第13款諸支出金につきましては799億7、800万円余を計上しておりますが、その主なものは、公営企業負担金218億6、200万円余、地方消費税清算金210億7、500万円余、地方消費税交付金243億8、900万円余等であります。
第2条債務負担行為は、税務総合オンラインシステム改修業務ほか60件について、債務を負担しようとするものであります。
第3条地方債は、県庁舎管理ほか69件について、限度額、起債の方法、利率及び償還の方法を定めようとするものであります。
第4条一時借入金及び第5条歳出予算の流用は、それぞれ所要の措置を講じようとするものであります。
議案第2号から議案第12号までは、平成30年度岩手県母子父子寡婦福祉資金特別会計予算ほか10件の特別会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画に基づき、その所要額を計上したものであります。
議案第13号から議案第15号までは、平成30年度岩手県立病院等事業会計予算ほか2件の公営企業会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画に基づき、収益的収支及び資本的収支の所要額を計上したものであります。
議案第16号から議案第20号までの5件は、建設事業等に要する経費の一部を受益市町村に負担させることに関し、それぞれ議決を求めようとするものであります。
議案第21号から議案第58号までの38件は条例議案でありますが、これらは、フェリーターミナル条例など2条例を新たに制定するとともに、指定居宅介護支援等の事業の運営に関する基準等を定める条例を廃止するほか、個人情報保護条例など35条例の一部をそれぞれ改正しようとするものであります。
議案第59号及び議案第60号の2件は、権利の放棄に関し議決を求めようとするものであります。
議案第61号及び議案第62号の2件は、岩手県立療育センター及び宮古港フェリーターミナルの指定管理者を指定することに関し議決を求めようとするものであります。
議案第63号は、包括外部監査契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
議案第64号は、地方独立行政法人岩手県工業技術センターが徴収する料金の上限の変更の認可に関し議決を求めようとするものであります。
議案第65号及び議案第66号の2件は、公立大学法人岩手県立大学及び地方独立行政法人岩手県工業技術センターの定款の一部の変更に関し議決を求めようとするものであります。
報告第1号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分につきまして、報告第2号は、道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分につきまして、それぞれ報告するものであります。
以上でありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださいますようお願い申し上げます。
〇議長(佐々木順一君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後2時44分 散 会

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