平成29年12月定例会 第11回岩手県議会定例会会議録

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〇31番(高橋元君) 改革岩手の高橋元であります。
質問に入る前に、東日本大震災津波発災から7年目の年末を迎え、今なお、応急仮設住宅、みなし仮設住宅に住まわれている4、120戸、8、724人の皆様に、改めてお見舞いを申し上げますとともに、来年は、マイホーム、マイルームで新年を迎えられますことを願ってやみません。関係機関の一層の御努力をお願いいたします。
何点か重複しておりますが、通告に従い順次質問いたします。
産業、職業としての農業推進について何点か伺います。
新しい環太平洋連携協定─TPP11は、先月の11月11日に、米国を除く11カ国閣僚で新協定に合意しました。新協定の影響は、米国離脱により、農産品の輸入貿易量が多くはないように思えますが、国内や本県農業にどう影響が出るのか、現時点での想定される影響を伺います。また、日EU・EPAも大枠合意に至っておりますが、農業分野での影響をどう分析しているのか、あわせて伺います。
県農林水産物、食品の輸出は、平成26年度で25億9、000万円となっています。本年3月にいわて国際戦略ビジョンが策定されておりますが、新たなTPPの大筋合意やEPAの大枠合意などの動きがある中、知事の海外視察による昨今の国際情勢の分析を踏まえ、県として農林水産物の輸出拡大に向けた攻めの取り組みが必要と考えますが、今後どのように取り組んでいこうとしているのか伺います。
次に、米の生産調整の見直しについてであります。
平成29年産米は、夏場の天候不順により一部不作となり、民間在庫減も相まって価格上昇となっています。一方、長期的な国内の米消費減少の中、米政策が明年大きな転機を迎えます。40年以上続いた国の生産調整が、平成30年産米から見直されるからであります。需要に応じた生産を継続するべく、全国的な取り組みが行われており、本県でも、県及び農業関係諸団体による岩手県農業再生協議会において、品目別の推進や担い手育成と農地集積について5年計画の水田農業の推進方針を策定、また、各地域の地域農業再生協議会においても、県の協議会同様、5年計画が策定されています。各県競ってブランド米を開発しての消費者取り込み激化や作付拡大など、生産調整と反する取り組みも見受けられ、実効性があるのか大きな不安の中にあり、需要に応じた生産の実効性について、県の見通しと対応策を伺います。
バブル当時に理工系学生の製造業離れが問題となりました。若者が製造業を嫌うのは、危険、きつい、汚い、あるいは給料が安いといった過酷な状況にあるからと、一般認識が形成されたことによるとされております。
農業の現状はどうか。農業においては、これまで話題になりませんでしたが、若者の農業離れや担い手不足、新規農業参入者の低迷などの根本原因は、まさに理工系学生の製造業離れに類似しているのではないかと思ったところであります。炎天下での畦畔草刈り、極寒作業、力仕事、作物の日々管理や薬剤散布、早朝収穫など、畜産では日々の家畜飼養、搾乳、家畜出産、哺育対応やふん尿処理など製造業以上の3K─きつい、汚い、危険が存在しております。この3Kを改善しない限り、若者の農業離れや新規参入等の問題解決とならず、岩手の農業の将来はお先真っ暗であります。
産業、職業としての農業を魅力あるものにするためには、3K農業を克服し、魅力ある農業産業をつくらなければなりません。加えて、ベテラン農業者、篤農家の知識、経験等の作業を比較、解析をし、作業の合理性や必然性を数値化すること、いわゆる暗黙知であった農業技術を形式知にすることが必要であります。
今、国内外において農業のたくみのわざを可視化するAI─アグリ・インフォマティクス、つまり、農業情報科学─システムを初めとするスマート農業技術が実用化され始め、農業産業は産業革命の大きな波が押し寄せてきております。
例を挙げますと、ハウス内で自走しながらイチゴの熟度を判断し、切り落としてパック詰めする作業ロボット。同様に、一房ずつ熟度を確認し実ったブドウを切り落とし、さらには、伸び過ぎた枝の剪定作業を同時に行う収穫ロボット。衛星活用による圃場の栽培管理、農業機械の自動運転、ドローンを使っての生育管理や肥料、農薬散布作業、畜産ふん尿の機械処理、自動給餌、AI栽培園芸など、多分野で同時に進行しております。
スマート農業は、高齢化による離農や耕作地の規模拡大への対応、農作業や生産地域、経験というたくみのわざをほとんど必要とせず、新規参入者の促進を図ることができます。
本県農業は、就業人口減少と急速な高齢化が進み、省力化や軽労化など早急な対応が求められており、県政課題の重要かつ最優先の課題であります。世襲制農業からの脱却と職業選択肢の一つとしての農業を目指すため、県として、農業における3Kの改善やたくみのわざの伝承に向け、県、農業者、研究者、農機具メーカーなどが一体となり、県の主導のもとで組織的にスマート農業推進に取り組んでいく必要があると思いますが、どのように進めようとしているのか伺います。
ものづくり産業の振興について、喫緊の課題対応を伺います。
今年度、デンソー岩手の大型増設、また、東芝メモリの北上工場建設の決定など、本県の産業振興政策の柱である自動車、半導体産業の集積促進に関し、さらに大きな成果を得たところであり、県や関係市町を初め、その実現に関与してきた方々に対し改めて敬意を表します。
新聞報道によれば、デンソー岩手では新たに400人、東芝メモリに関しては、従業員は300人程度からスタートし、段階的に1、000人まで拡大する方針であり、早ければ、2022年にも第2棟増設の検討に着手するとのことであります。このため、大型の新工場建設や増設に対応するための周辺環境の整備を早急に進め、その実現に万全を期していくことが求められております。特に、人口減少の進展は深刻な状況にあることから、新規学卒者の県内就業の促進などを含め、産業人材への育成、確保が大きな課題であると考えます。県においては、これらの動きを受け、今後の対応をどのように進めようとしているのか伺います。
周辺環境整備について、自治体の動きとして、北上市においては、今年度、産業間連携や起業等による新事業の創出、地域の持続的な発展と産業振興を図るため、北上オフィスプラザ内に北上市産業支援センターを開設したところであり、県としても、こうした自治体の取り組みと連携する支援が必要と考えますが、あわせて所感をお示し願います。
訪日外国人の観光振興について伺います。
観光庁の宿泊旅行統計によると、平成28年の本県の外国人宿泊者数は13万2、030人で、前年比24.2%増とのことであります。外国からの観光客はバスを利用する団体客が主流でありますが、最近、東北でも個人旅行者が増加傾向にあるとのことであります。関東や関西では、観光地を周遊する移動手段として鉄道網やバス交通が利用されておりますが、本県を初めとする東北の観光地を周遊できる公共交通は限られ、時間や費用の制約が大きなネックとなっております。そこで注目されているのが観光の足としてレンタカーの活用であり、近年、増加傾向にあります。しかし、外国人が初めてとなる地を自動車で運転するとなれば目的地までたどり着けるのか、安全に走行できるのか、給油やトイレ、食事の場所を見つけることができるのかなど、さまざまな問題が内在しております。
東北地区レンタカー協会連合会は、多言語対応のドライブ支援アプリを搭載したタブレット貸し出しを始めたとのことであり、東北各地の観光情報や目的地までのルート設定ができ、なじみの薄い交通標識や運転ルール、セルフ式の給油方法などの紹介もあるとのことであります。
本県観光地周遊で二次交通の充実が課題だけに、レンタカー利用者が増加すれば、訪日外国人の大幅な増加やリピーター増加に期待が持てます。宮城県登米市や栗原市では、レンタカー利用者を対象にキャッシュバック事業を進めているとのことであり、本県でも県内市町村におけるレンタカー利用促進の取り組み支援を検討すべきと思いますが、そのような考えはないのか伺います。
また、岩手の自然や観光地を楽しんでもらうため、交通事故防止に向けて、訪日外国人の運転する車であることを県内を走行中のドライバーが認識できるマグネット式訪日外国人用の車外マークの開発普及に取り組むべきと考えますが、あわせて所感をお示し願います。
また、外国人特有の交通事故危険箇所におけるピンポイント事故防止対策として、カラー舗装、ピクトグラムを活用した標識や、多言語注意看板の設置などに計画的に取り組むべきと考えますがどうでしょうか、伺います。
あわせて、交通規制の状況をわかりやすいものとするため、規制標識への外国語表記にも取り組むべきと考えますがいかがでしょうか、伺います。
本県の大きな観光の目玉として、県内各地の泉質で多種多様な温泉宿があります。訪日外国人にも岩手の温泉を満喫してもらいたいが、裸で入浴する習慣のない外国人であり、また、入れ墨のある外国人も少なくないことから、おもてなし上からも、温泉旅館や公衆温泉に湯あみ着を備える必要性を感じます。湯あみ着の普及には、温泉施設を初め、温泉施設を利用する方々の理解も必要となってきますが、昨年、保健福祉部で乳がんの手術痕や傷跡をカバーするために、湯あみ着を着る人への理解を呼びかける啓発ポスターを作成、配布したとのことであり、こうした取り組みとも連携しながら湯あみ着の普及を図るべきと考えますが、県の考えを伺います。
国道107号錦秋湖付近の整備促進について伺います。
平成27年3月29日に、一般国道107号西和賀町杉名畑地区において大規模な土砂崩落災害があり、約8カ月間にわたり通行どめとなって生活や物流等に大打撃を受けました。県当局並びに工事業者の努力により工期を前倒ししての開通となりましたが、錦秋湖に面した川尻から当楽間は急カーブが連続し、大型車両同士のすれ違いが厳しい狭隘なトンネルがあり、落石や雪崩の危険箇所も多く、安全な通行が確保されていない、特に高齢者、女性ドライバーにとって極めて危険な区間であります。
以前、冬期間に、同区間を通行中のトラックが路面凍結で滑り、ダム湖側に転落した事故等があり、その後、事故防止へ少しずつ急カーブ解消や道路の拡幅、橋梁のかけかえ整備が行われてきましたが、さきの土砂崩落事故が発生しております。地形的に西和賀町大石地区への入り口付近から土砂崩落のあった杉名畑地区間は、安全な走行の確保には錦秋湖側への拡幅は地形的に厳しく、トンネル整備が最善と考えられ、人命にかかわることから早期の整備が望まれます。また、川尻から当楽間における狭隘なトンネルの改良も望まれていますが、どのように検討されているのか、国への働きかけはどうなっているのか伺います。
〔副議長退席、議長着席〕
県立高校による遠隔授業の推進について伺います。
遠隔授業の試行の成果についてでありますが、広大な県土を有する本県において、中学校卒業者の減少に伴い、特に中山間地の県立高校は小規模化が進むことが見込まれ、一人一人に対してはきめ細かな指導ができるメリットがある一方、教員定数の面から、各教科、科目において専門知識を有する教員の確保ができず、生徒の多岐にわたる進路希望に応じた教育課程が編成できないというデメリットがあります。
こうしたデメリットを克服する手段として、文部科学省は、多様な学習を支援する高等学校の推進事業を平成27年度に予算措置をし、ICTを活用した遠隔授業が全国各地で試行導入され、本県においても平成28年度に同事業を導入し、県立西和賀高校と県立岩泉高校間や教育センターと両校間で遠隔授業を試行してきましたが、平成28年度、平成29年度の2カ年研究のうち、1年目の成果と課題を伺います。
あわせて、先進地視察を踏まえて2年目の取り組みが充実してきているものと思いますが、現状において課題解決が図られているのか伺います。
次に、新年度からの遠隔授業の見通しについてでありますが、文部科学省の担当者の話では、多様な学習を支援する高等学校の推進事業は今年度終了するとのことでしたが、2カ年の遠隔授業の試行を踏まえ、県教育委員会として平成30年度はどのように取り組んでいかれるのか、その考えを伺います。
縄文遺跡群の世界遺産登録について伺います。
本年の縄文遺跡群の世界遺産登録国内推薦見送りは、大いに期待しておりましたので残念であります。登録に向けた関係者各位に敬意を表しますとともに、引き続き、登録の環境整備への取り組みをお願いいたします。
さて、縄文文化遺跡は全国各地で発掘されており、東北や関東など多いと言われていますが、その中で、北海道・北東北の縄文遺跡群は、特別史跡三内丸山遺跡や特別史跡大湯環状列石を含む特別史跡、史跡で構成され、定住の始まりから社会の成熟した様子や生業の生活跡の実態を示す遺跡、精神文化の発展や充実を示す遺跡などで文化的に高い求心力を持ち、縄文文化を牽引してきた中核的な地域であり、縄文文化を代表する地域として世界遺産登録を目指し取り組んできております。
平成21年1月5日、北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群が世界遺産暫定リストに記載され、推薦準備作業を進めて平成25年7月に推薦書素案を文化庁に提出し、国内推薦を待つ状況にあります。この間、文化庁からは、登録に向けた整備、すなわち登録基準の6項目、真実性、完全性、保護管理体制要件を満たす取り組みをしているものの、本年も国内推薦が見送りとなりましたが、何が満たされていないのか、その事由を伺います。
次に、登録に向けた戦略の練り直しについて伺います。
本県の平泉の文化遺産登録への取り組みで、顕著な普遍的な価値の証明や遺産構成が問題となって見送られた経緯があり、北海道・北東北の縄文遺跡群の登録でも同様の指摘が考えられるところであります。
先ごろ文部科学省の担当者の話を伺いましたが、国内各地にある縄文文化遺跡と北海道・北東北の縄文文化遺跡の対比において、その優位性や特筆すべき内容がまだ曖昧であるとのことであり、顕著な普遍的な価値の証明ができていないのかなと感じたところであります。
顕著な普遍的価値の証明は今後どう進めるのか。場合によっては、構成17史跡のうち、特別史跡の二つを優先登録してそれ以外の史跡を拡張登録するなど、本県の経験を生かし戦略を練り直すべきと思うところでありますが、所感を伺います。
自殺、がん対策と県民の健康生活促進について伺います。
自殺対策は自殺対策基本法に基づき、平成19年6月に初めて自殺総合対策大綱が策定され、平成24年に全体的な見直しが行われ、平成28年から自殺対策基本法改正の趣旨や自殺実態を踏まえて見直しが進められ、本年7月に、自殺総合対策大綱~誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して~が閣議決定されました。
この見直しされた大綱では、地域レベルの実践的な取り組みのさらなる推進、若者の自殺対策、勤務時間による自殺対策のさらなる推進、平成38年までに自殺死亡率を平成27年比30%以上減少、実数では18.5%を13.0%以下にさせることを掲げ、推進体制では自治体に自殺対策計画の策定が義務づけられました。
本年5月上旬、基本法改正後の地域自殺対策に求められるものをテーマにした第1回地方議員向け自殺対策研修会に出席してまいりました。
研修会の中で、1自殺は平均すると四つの要因が複合的に連鎖して起きている。2それぞれの要因に対しては、既にさまざまな対策が行われている。3自殺を防止するには、各分野の相談所で相談事項にとどまらず、内在するほかの三つの要因を聞き出し、それぞれの相談所に導くことが大事。4自殺未遂者について、継続して定期的な相談や見守りが必要。5自治体ごとに自殺者の特徴があり、それに合わせた取り組みが必要など、全国の自治体の現状を警察発表や国勢調査等のデータをもとにまとめ、各都道府県で市区町村長を対象としたトップセミナーを開催し、市区町村計画の策定に活用していく計画を聞いてまいりました。
本県では、本年5月29日に盛岡市内において、厚生労働省、県、NPO法人自殺対策支援センターライフリンクの3団体主催の岩手県自殺対策トップセミナーが開催され、県内自治体首長あるいは副市町村長等、並びに福祉関係者が出席されたと聞いております。自治体の長が先頭に立って取り組まないとよい計画はできませんが、このトップセミナーの評価をどう捉えているのか。また、県計画の見直し、市町村計画の策定についてどのようなスケジュールで進めていくのか、市町村の計画策定に対して、県はどのように支援していくのかを伺います。
これまでの本県がん対策の評価と課題等についてでありますが、国において、平成19年4月にがん対策基本法が施行され、10年が経過いたしました。基本法に基づき策定されたがん対策推進基本計画は、第1期、第2期と策定され、本年10月に、6年の第3期計画が策定となったところであります。
この10年間の計画推進で、がん診療連携拠点病院の整備、緩和ケア提供体制の強化及び地域がん登録の充実が図られ、小児がん、がん教育及びがん患者の就労を含めた社会的問題等に取り組まれ、死亡率の低下や5年相対生存率が向上するなど一定の成果が上がってはきているが、平成27年度までに、75歳未満のがんの年齢調整死亡率20%減を掲げた目標には到達せず、その原因として、喫煙率やがん検診受診率の計画目標未達成が挙げられています。がんにかかる国民を減らすことが重要とされ、そのため、予防施策を一層充実させていくことが必要であり、早期発見、早期治療につながるがん検診受診率を向上させていくこととしており、新たな課題として、がん種、世代ごとのがん対応、就労等の患者それぞれの状況に応じたがん治療がなされていない、がん罹患をきっかけとした医療や支援がなされていない、希少がん、難治性がん、小児がん等への対応が必要など、2期10年間のがん対策を総括しております。
本県として、これまでの10年間のがん対策推進について、計画目標をもとにどのように評価、総括しているのか。また、がん対策の課題について伺います。
次に、本県がん対策の推進計画の見直しについてでありますが、国の第3期がん対策基本計画では、がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指すことを目標とするとされています。そして、都道府県においては、国の基本計画を基本としながら、平成30年度からの新たな医療計画等との調和を図ることが望ましく、がん患者に対するがん医療の提供の状況を踏まえ、地域の特性に応じた自主的な施策を盛り込みつつ、なるべく早期に都道府県がん対策推進計画の見直しをすることが望ましいとされております。
また、見直しの際には、がん対策の問題を抽出し、その解決に向けた目標を設定、必要な施策を検討し実施、施策の進捗状況を把握し、評価等を実施しながら、必要時に計画を変更するよう努めるとされております。さらに、がん検診のみならず、普及啓発や地域における患者支援等の市町村の取り組みについても、計画に盛り込むことが望ましいとしております。
国の新たながん対策基本計画を受け、県が現在見直しを行っている次期がん対策推進計画では、どのような視点で取り組んでいくのか伺います。
県立胆沢病院の産婦人科再開について伺います。
厚生労働省調査によれば、平成28年10月時点において、産婦人科と産科を掲げていた全国の病院が前年比21施設減の1、332施設となり、昭和47年以降、過去最少を更新したとのことであります。このような状況の中で、胆江医療圏内の周産期医療体制についても、県立胆沢病院が平成19年8月に、産婦人科医3人の医師確保が難しいとして産婦人科を休止して以降、北上市など近隣の医療機関においてその役割を担ってきていますが、奥州市内の出産を取り扱っていた民間産婦人科医も、一昨年をもって産科を休診したことから、異常分娩など緊急時に圏外まで遠距離移動を強いられている状況にあり、胆江医療圏域の住民は大変大きなリスクと不安を抱えている状況にあります。
医療圏には10万人が生活しており、将来、ILC誘致ともなれば、若者の増加や海外研究者家族の移住ということも予測される中、県立胆沢病院の産婦人科再開が必要であると考えます。そのためには、県全体における産婦人科医の確保対策の推進や岩手県周産期医療体制整備計画の見直しなどが不可欠と考えますが、県はどのように取り組んでいくのか伺います。
県立胆沢病院における休止中の産婦人科の再開に向け、医療局としても産婦人科医の確保に取り組む必要があると考えますが、県立病院における産婦人科の現状と、産婦人科医の確保など体制の充実に向けた取り組み状況について伺います。
以上、登壇しての質問とさせていただきます。答弁内容によりましては再質問を行います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋元議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、TPP11、日EU・EPAの影響についてでありますが、TPP11の大筋合意において、農産物の関税撤廃、削減に係る項目は、米国を含めた従来のTPPを踏襲していますが、米国の離脱による国内への影響について、国から詳細な説明がないことから、現時点において本県への影響を推しはかることは難しいと考えます。
また、日EU・EPAについては、国が11月2日に公表した影響分析によりますと、牛乳、乳製品や豚肉などは当面輸入の急増は見込みがたいが、長期的には国内産価格の下落が懸念されるとしています。
県ではこれまで、国に対し、県単独のほか、全国知事会、北海道東北地方知事会と連携して、TPP11や日EU・EPAによる農林水産業への影響を十分に分析し、丁寧な説明を行うよう要望してきたところであり、引き続き、生産額への影響など詳細な分析を行い、国の責任において万全の対策を講じるよう求めていくとともに、国の動向を注視しながら必要な対応を検討してまいります。
次に、農林水産物の輸出拡大についてでありますが、県ではこれまで、関係団体、企業とで構成するいわて農林水産物輸出促進協議会を主体とし、海外の流通関係者との結びつきを深めながら、輸出拡大に向けた取り組みを進めてまいりました。
この結果、平成28年における県産農林水産物の輸出額は約21億8、000万円となり、水産物は不漁により減少したものの、米や牛肉は、アジアや北米地域を中心に順調に伸びています。
さらなる輸出拡大に向けては、安全・安心で品質やおいしさにすぐれた県産農林水産物を積極的にPRし、現地の流通関係者や消費者から高い信頼と評価をかち取っていくことが重要であります。
このため、今後においては、昨年度策定したいわて国際戦略ビジョンに基づいて、経済成長が著しく、日本食レストランが増加しているアジアや北米地域等をターゲットに、海外でのPRレセプションやフェア、商談会を通じ、県産農林水産物のブランド力の向上と新たな販路の開拓、拡大を進めてまいります。
次に、産科医の確保対策と周産期医療体制整備計画の見直しについてでありますが、産科医等の確保に向け、県ではこれまで、関係大学への派遣要請や即戦力医師の招聘、奨学金制度による医師の養成に取り組んでまいりましたが、今年度は新たに産科医療施設の開設、維持等への支援を開始しましたほか、現在、産科等を専攻した奨学金養成医師の地域周産期母子医療センター等への配置に関する特例的な取り扱いについて、検討を進めているところであります。
県では、産科医等の限られた医療資源のもとで効率的かつ質の高い医療を提供するため、周産期医療体制整備計画に基づいて平成20年度に県内四つの周産期医療圏を設定して、胆江地区については、県南圏域の中で、医療機関の機能分担と連携のもと、分娩リスクに応じた適切な医療提供体制の整備を図ってまいりました。
この整備計画については、国から、医療計画との一体化により両計画の整合性を図るとの方針が示されましたことから、県では、この方針を踏まえて、現在、岩手県周産期医療協議会等関係者の御意見をいただきながら、次期医療計画の策定を進めているところです。
県としましては、これまでの産科医等の医療人材を確保する取り組みに加えて、次期医療計画の中で、周産期における救急搬送体制の強化や助産師の確保対策等についての新たな取り組みを検討するなど、周産期医療体制のさらなる充実に努めていく考えであります。
その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁をさせますので、御了承をお願いします。
〔農林水産部長紺野由夫君登壇〕
〇農林水産部長(紺野由夫君) まず、米の生産調整の見直しについてでありますが、現時点におきまして、県内全ての地域農業再生協議会が、それぞれの地域の実情に応じて今後5カ年の水田農業の推進方針を作成したところであります。今後、この方針に基づき、各地域において、生産者の皆さんの深い理解と協力のもとで、需要に応じた米生産にしっかりと取り組んでいただけるものと考えております。
また、報道によりますと、東京都及び大阪府を除く45道府県全てで、これまでの生産数量目標にかわる生産目安を設定することとしており、全国で需要に応じた米生産を行う体制づくりが進められているところであります。
県としましては、国全体で米の需給の安定が図られることが重要と考えており、これまで、国に対して実効性のある推進体制を確立するよう要望してきたところであり、引き続き必要な対応を国に求めてまいります。
次に、スマート農業の推進についてでありますが、県では、担い手不足や収益性向上に対応するため、超省力化のほか、飛躍的な生産性向上、軽労働化などの実現に向け、ロボット技術やICT等を活用した新たな農業であるスマート農業を推進しております。
この取り組みを加速させるため、本年8月、県が主体となり、いわてスマート農業推進研究会を設立したところであります。11月末現在で約450人が会員登録し、作目分野や技術分野に応じた8部会を設置したところであります。
各部会では、草刈りロボットなどによる3Kの改善や施設園芸における自動環境制御などについて、農業者や研究者、企業等が一体となって、本県に適したスマート農業技術を研究開発し、早期の普及を図ることとしております。
また、これまで対面指導でなければ伝承が困難とされておりましたリンゴの剪定技術について、タブレット端末を活用した学習支援システムを県と民間企業とが共同開発したところであり、今後、新規参入者やパート作業員などの技術習得ツールとして活用を進めていくこととしております。こうした取り組みにより農業の労働環境を改善し、誰もが働きやすい農業の実現を目指してまいります。
〔商工労働観光部長菊池哲君登壇〕
〇商工労働観光部長(菊池哲君) まず、ものづくり産業の振興についてでありますが、デンソー岩手や東芝メモリの新工場建設等により、本県地域産業の牽引役である自動車、半導体関連産業を初め県内ものづくり産業の一層の集積や高度化が加速されるものと認識しているところであります。
こうした状況を踏まえ、産業人材の確保、育成につきましては、産業界と行政とが一体となって組織しております地域ものづくりネットワークを中心とした、小中学生から高校生、さらに大学生まで、各段階に応じたキャリア教育や就職支援などによるものづくり人材の育成や、いわてで働こう推進協議会の取り組みを初めとした新規学卒者の県内定着の促進及びUIターンによる人材の確保、いわて産業人材奨学金返還支援制度の活用による高度ものづくり人材の確保、定着などに取り組んできているところでありまして、今後におきましてもこのような取り組みを一層推進し、誘致企業のみならず県内ものづくり企業全体の持続的発展につながるよう努力してまいります。
次に、今後の支援についてでありますが、今般の北上市における産業支援センターの開設は、地域産業振興の第一の主体である地元自治体が、誘致企業を含めた地域企業にしっかりと寄り添いながら産業基盤の確立を図り、持続的な産業活動の展開を支援していく地元の現場ならではの取り組みとして高く評価されるものと認識しております。
県といたしましては、こうした地元自治体の取り組みと連動し、適時的確に厚みのある支援策を講ずることとしておりまして、例えば企業誘致においては、地元自治体と連携して誘致活動を展開するとともに企業の立地促進のための各種支援策を講じているほか、地域産業の技術高度化や生産性向上のための設備投資への支援やカイゼン等ソフト面への支援、さらには、産業人材の育成や確保に向けた支援など各般にわたる取り組みを進めているところでありまして、今後においても、地元自治体及び産業界等と連携し、地域産業の持続的発展に向けて取り組んでまいります。
次に、訪日外国人のレンタカー利用促進についてでありますが、県では、東北各県と連携し、海外のインターネット旅行予約サイト等にレンタカーの特設ページを掲載するとともに、アジア地域のブロガー等を招請し、レンタカーを利用した東北観光の魅力を発信するなど、レンタカーによる観光のPRを展開しておりまして、これと連動し、東北地区レンタカー協会連合会においてもタブレットを活用したモデル事業を実施しているものと承知しております。
また、本県におけるレンタカー利用促進の取り組みの事例としては、県南から沿岸への宿泊者や、いわて花巻空港の利用者を対象としたレンタカー料金のキャッシュバックなどによる利用促進キャンペーンを実施するなど、レンタカーによる県内周遊の促進に取り組んできたところであり、今後におきましても、東北各県や県内市町村と連携しながら、レンタカーの利用による県内観光の促進に努めてまいります。
また、訪日外国人用の車外マークについてでありますが、外国人のレンタカー利用の増加に伴い事故件数も増加傾向にあり、事故防止対策が課題の一つであると認識しております。
このため、県では、東北各県と連携し、日本の交通ルール等を記載したドライブ冊子を作成し、レンタカー会社や現地旅行会社に配布するなど、訪日外国人が東北のドライブ周遊を安心して楽しむための取り組みを実施しているところであります。
訪日外国人向けの車外マークにつきましては、沖縄県、北海道、東京都のレンタカー協会等が作成しているところでもありまして、県内のレンタカー事業者、観光関係者等と相談してまいりたいと考えております。
次に、入浴満喫対策についてでありますが、観光庁の調査では、温泉は、外国人観光客の次に来たときにやってみたいこととして、日本食やショッピングなどに続き第4位となっているものでありまして、インバウンド拡大を図る上で有力な観光コンテンツであると認識しているところであります。
また、観光庁においては、入浴施設向けに、外国人旅行者の入浴に関する対応事例として入浴着等を着用する方法を例示するなど、湯あみ着は外国人の温泉の利用拡大を図る上で有効な手段の一つであると認識しております。湯あみ着の普及については、入浴・宿泊施設や県民の理解も重要であることから、民間団体の活動や保健医療分野での取り組みとも連携し、外国人観光客の県内での温泉利用の拡大につなげていきたいと考えております。
〔県土整備部長中野穣治君登壇〕
〇県土整備部長(中野穣治君) まず、訪日外国人の交通事故対策についてでありますが、県では、外国人にもわかりやすい道路の案内となるよう、ピクトグラムの活用や高速道路のナンバリングを用いた標識の設置に取り組んでいるほか、世界遺産である平泉や橋野鉄鉱山周辺においては、案内標識の英語表記の統一化や連続した経路案内にも努めているところです。
議員御指摘のピンポイント事故対策につきましては、現在、国において、外国人観光客のレンタカー利用の多い全国の五つの空港周辺をモデル地区として選定して、効果の検証実験を開始していると聞いております。県としては、この実験結果も参考にしながら、導入の可能性を検討してまいります。
今後、県内の訪日外国人の事故の発生状況や、その特性の把握にも努めながら、国や市町村など他の道路管理者や交通管理者とも連携し、必要な対策を検討し、訪日外国人の事故対策にも配慮してまいります。
次に、国道107号錦秋湖周辺の整備についてでありますが、議員御指摘の川尻から当楽間は、急カーブや幅員の狭い橋梁等があり、特に冬期間の円滑な交通の支障となっていたことから、これまで、大荒沢地区や大石地区などにおいて、線形の改良や道路の拡幅、橋梁のかけかえ等の整備を行ってきたところです。また、杉名畑地区の災害復旧工事につきましては、当初完成見込みを約9カ月前倒しし、昨年12月に2車線での供用を開始したところです。
当該区間の直近10年間の人身の交通事故発生件数は年間1キロメートル当たり0.17件であり、県管理国道平均の0.44件に対して低くなっておりますが、今後も、冬期の初期除雪の推進やきめ細やかな凍結抑制剤の散布を徹底するとともに、シェッド等の老朽化対策や防災対策等を進め、路線としての安全性や信頼性の確保に努めてまいります。
なお、トンネルによる抜本的な改良につきましては、大規模な事業になることが見込まれることから、今後、交通量の推移や公共事業予算の動向等を見きわめながら、慎重に検討していく必要があると考えております。
また、必要な道路整備を確実に実施していくためには、道路事業予算の安定的、持続的な確保が必要であります。これまでも国に要望しているところでありますが、引き続き、あらゆる機会を捉えて国に要望してまいります。
〔保健福祉部長八重樫幸治君登壇〕
〇保健福祉部長(八重樫幸治君) まず、自殺対策の取り組み推進についてでありますが、自殺対策基本法により市町村に自殺対策計画の策定が義務づけられ、平成30年度までの策定が求められていることから、県では市町村の計画策定の取り組みを支援しているところであります。
5月に開催したトップセミナーでは、市町村長や副市町村長等に参加いただき、リーダーシップに基づく自殺対策の取り組みの重要性について意識づけを図ったところでありますが、11月に調査したところ、28市町村が自殺対策単独の計画策定を予定し、半数の市町村が既に庁内連携組織を立ち上げており、セミナー開催の一定の効果があったと考えております。
県としては、次期岩手県自殺対策アクションプランを平成30年度中に策定する予定ですが、同時期に市町村が計画を策定することから、県のプランを早い時期に示せるよう今年度から先行して取りかかり、市町村計画の指針としたいと考えております。
また、精神保健福祉センターが中心となって、国と連携した情報提供、市町村に対する担当者研修や専門的、技術的な支援等を行うとともに、保健所が、圏域ごとのアクションプランを策定する過程で市町村との調整や助言、指導を行い、市町村の計画策定を支援していく予定としております。
次に、これまでのがん対策の評価と課題等についてでありますが、県のがん対策推進計画に掲げたがん年齢調整死亡率の20%減少という全体目標の達成は、国と同様に困難な状況でありますが、計画期間中、がん予防やがん検診の推進、がん専門医療従事者の育成等に重点的に取り組んできたことにより、個別目標に掲げた肺がん等の検診受診率、がん専門看護師数、全ての保健医療圏におけるがん診療連携拠点病院の整備などの主要な目標については、目標値を達成しているところであります。
また、近年は、がん患者の就労支援やがん教育など新たな課題への取り組みにより、従来の医療従事者に加えて、労働、教育関係機関等の多様な関係者と連携した総合的ながん対策の推進が図られてきたものと認識しています。
課題としては、計画に掲げている全体目標の達成が困難な状況にあることから、引き続き、がん予防と早期発見の取り組みを推進するとともに、小児から高齢者までのライフステージに応じた対応や治療と仕事の両立支援など、患者の療養生活を支える体制の整備などに取り組んでまいります。
次に、がん対策推進計画の見直しについてでありますが、県では、今年度、国の基本計画を踏まえ、がん対策推進協議会や患者会等関係者からの御意見をいただきながら次期がん対策推進計画の見直しを行っており、現時点で中間案を取りまとめたところであります。
中間案においては、国の計画では今回盛り込まれなかった75歳未満年齢調整死亡率の減少を引き続き数値目標に掲げるとともに、重点的に取り組むべき課題として、がんの予防と早期発見、がん医療の充実、がんと診断されたときからの緩和ケアの推進等の項目を掲げています。
また、課題解決に向けた施策としては、がん医療従事者の育成、確保や治療と仕事の両立支援、がん教育の推進等に加えて、新たな取り組みとして、多職種によるチーム医療の推進や若年成人世代、高齢者のがん対策、県民の参画や取り組みの促進などを盛り込んだところであります。
今後、パブリックコメントやがん対策協議会等の場でさらに県民の皆様からの御意見をいただきながら、本年度中の策定に向けて取り組んでまいります。
〔医療局長大槻英毅君登壇〕
〇医療局長(大槻英毅君) 県立病院における産婦人科の現状と産婦人科医の確保など体制の充実に向けた取り組み状況についてでありますが、県立病院では、県の周産期医療体制整備計画に従い、県内四つの周産期医療圏のセンターとなっている病院に合計30人の産婦人科医を配置し、リスクの高い出産や、24時間365日の出産に対応できる体制を構築しているところでございます。
産婦人科の医師につきましては、直ちに常勤医師を増員し配置することはなかなか困難な状況ではございますが、関係大学への医師派遣要請や即戦力医師の招聘等を引き続き粘り強く続けてまいりたいと考えているところでございます。
また、産婦人科医の確保に加え、県立病院がそのネットワークを生かし、地元開業医や医師会と周産期母子医療センターとの連携強化をこれまで以上に図ることや、小児医療遠隔支援システムなどICTの活用、助産師外来や院内助産システムの充実などにより、地域の方々が不安を感じずに安心して出産や子育てができるよう、地域周産期医療の充実に努めてまいります。
〔教育長高橋嘉行君登壇〕
〇教育長(高橋嘉行君) 遠隔授業の試行の成果等についてでありますが、昨年度においては、理科と地理歴史の課外授業や家庭科の研究授業などでの遠隔授業の試行を行い、その試行を通じて、直接かかわった教員からは、限定的な専門教員の配置に対する補完性や教員相互の資質向上に一定の効果を期待できるというような意見や、生徒側からは、より多くの生徒と同時双方向で意見交換をすることなどによって学習内容の理解が深まったというような好意的な反応を得ることができました。
一方では、遠隔授業システムの一層の有効性を高めるための教員の操作技術の向上や、同時双方向性を生かした対話的な授業の充実などを課題として把握することができたところであります。
2年目となる本年度においては、これらの課題や先進事例等を踏まえた試行の実施に加え、教育課程における導入の試行にも取り組んでいるところであり、これまでの実践を通して操作技術や対話的な授業の手法も向上してきていると実感いたしております。
次に、今後の見通しについてでありますが、この2年間の試行により、遠隔授業は課外授業や教員研修に有効であることなどを確認できてきておりますので、来年度においても、西和賀高校と岩泉高校との間で、試行により導入した機材やこれまで培ったノウハウを活用しながら、計画的に教育課程内での授業や課外授業、教員研修での活用をさらに進めていきたいと考えております。
また、通年を通じた遠隔授業の効果的な実施についても、実証的調査研究を引き続き行いながら、評価方法の向上など、そのノウハウの蓄積を図っていきたいと考えております。
小規模校同士が連携し、相互の教育資源を活用する遠隔授業は、小規模校における教育の質を保証する上で有効な一方策であるとの手応えを感じてきておりますので、今後、他校への普及も視野に、実用化に向けた取り組みを一層推進してまいります。
次に、縄文遺跡群の世界遺産登録についてでありますが、本年7月の文化審議会における審議においては、御案内のとおり、国内推薦を得ることができませんでしたが、審議会からは、北海道・北東北の縄文遺跡群の顕著な普遍的価値を一層わかりやすく説明すべきであるということや、北海道・北東北地域文化圏の優位性、特異性、代表性をより明確に示すこと等についての指摘を受けたところであります。しかしながら、一方では、縄文遺跡群の持つ普遍的価値について、これまで主張してきた日本文化の基層という考え方を廃して、地域文化圏という単位で価値を改めて主張したことに対しては、これまで以上に肯定的な評価をいただいたところであります。
次に、登録に向けた戦略の練り直しについてでありますが、構成資産のあり方については、議員御指摘のように、世界文化遺産としての普遍的価値を証明するための最も基本的かつ重要な事項でありますが、北海道・北東北3県の関係自治体で構成する縄文遺跡群世界遺産登録推進本部においては、文化庁からの指摘や助言等を受け、慎重な議論を重ねた上で、一昨年度に北海道及び青森県に所在する二つの遺跡を、当面、構成資産から除外し、現在の17遺跡で挑戦するという判断に至った経緯がございます。
7月の文化審議会における審議においては、現在の17遺跡を絞り込むべきという議論はなく、むしろ、この資産構成をもって地域文化圏としての完全性を明確に証明すべきという御指摘をいただいておりますので、先月開催した登録推進本部会議においては、17遺跡全体の一体的な登録推進を目指して、文化庁及び専門家との連携や関係自治体間での一層の連携を強化し、積極的に取り組むことを確認したところであります。
また、審議会開催後に行われた文化庁担当官によるそれぞれの遺跡の視察においては、世界遺産登録を目指すためのこれまでにない具体的なアドバイスが得られ、新しい光が見えてきたとの実感も得ております。
いずれ、顕著な普遍的価値の証明については、文化審議会世界文化遺産部会からの指摘事項を踏まえ、専門家委員会での十分な検討を行いながら、推薦書素案のブラッシュアップを図りつつ、関係道県が一体となって、来年3月に提出する素案の中でしっかり記述していきたいと考えております。
〔警察本部長友井昌宏君登壇〕
〇警察本部長(友井昌宏君) 規制標識への外国語表記についてでありますが、規制標識の様式は、道路標識、区画線及び道路標示に関する命令に定められており、この命令は本年4月に一部改正され、一時停止、徐行及び前方優先道路の規制標識について英語を併記した様式が追加をされました。この改正が7月1日から施行されたことに伴い、同規制標識の新設や更新時における整備を進めているところであります。本県では、10月末現在、英語を併記した一時規制標識は7カ所に設置しております。
今後の設置計画といたしましては、平成29年度末までに、英語を併記した一時停止規制標識を239カ所に設置する予定であります。
〇31番(高橋元君) 御答弁ありがとうございました。
いろいろ予算等もありますし、さまざまにやらなければならないこともたくさんあるということの理解で、おおむね了としたいと思いますが、その中で3点ほどお伺いしたいと思っております。
まず1点目は、スマート農業推進についてでありますが、このスマート農業推進についての知事の所感を伺いたいと思います。
私は先ほど農業産業における3Kという現状、そして、農業就業人口の減少により、耕作地の受け皿として、認定農業者や農業法人への集中化を招き、頑張る農業者の疲労こんぱいの実情も紹介いたしました。これらを解決するには、どうしても農作業のAI機械化、システム管理が必要ということになります。しかも、今すぐ導入しなければ、数年先には岩手の農業は壊滅するのではないか、私はそういう危機感を持っております。
70歳前後の団塊世代、あるいは戦前、戦中に生まれた方々は、今使用している農業機械が動くうちは働けるけれども、壊れたら離農すると、このような意見を持っている方が大多数いらっしゃるわけであります。残された農地、引き受け手が限られている現状から、耕作放棄地が急速に右肩上がりとなりかねない、このように思っているわけであります。限られた予算ですからなかなか難しいと思いますけれども、私は、県の中で、例えば農業研究センターを含めたいろいろな施設で、それぞれ分担し、予算を確保しながら、新しい農業、機械化農業も含めて取り組む必要があるのではないかと、こんな思いをしております。
また、この農作業の3Kというのはなかなか解決されないという実情があるわけでありますが、知事も田植えとか稲刈りをしたり、コンバイン、田植え機に乗ったり、畜産のところにも足を運んでおりますけれども、この3K農業の実情をどのように捉えておられるのか。そして、岩手の農業の未来のために県の主導─先ほども答弁がありましたけれども、もう少し大きな予算を組んでこれを強力に進めるべきではないかと思いますが、これに対する知事の所感あるいは意気込みをお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) スマート農業の推進ということについてでありますが、農業従事者の平均年齢が70歳に近づいていて、また、こうした高齢の方々が中山間地域など、条件不利地の農地を懸命に守られているという実情は十分認識しているところでございます。こうした中、本県農業の持続的な発展を次世代につなげていく上で、飛躍的な技術革新により、軽労働化や収益性の向上などが期待できるスマート農業が果たす役割は大変大きいものと考えております。このため、本年8月のいわてスマート農業推進研究会設立総会においては、誰もが取り組みやすい農業を目指して、いわてスマート農業チャレンジ宣言を行ったところであります。
新時代の魅力ある岩手県農業を実現するため、農業者、行政、研究者、関係機関が一丸となった取り組みを強力に推進してまいりたいと思います。
〇31番(高橋元君) いずれにしろ、限られた予算でありますが、ぜひ予算措置ということも今後検討いただければと思います。
次に、国道107号錦秋湖付近のトンネル化についてですが、錦秋湖は、北上川支流の和賀川をせきとめ、洪水調整、発電、かんがい用としてつくられた多目的ダムが昭和39年に完成したことにより誕生した、県内最大の人造湖であります。ダムの湖底にはかつて集落があり、JR横黒線、国道107号が、秋田県と当県を結ぶ交通路でもありました。ダム建設により、錦秋湖の北側に国道107号が、南側にはJR北上線が移設され、JR北上線と並行して東北横断道釜石秋田線が建設されております。
西和賀町は県内有数の豪雪地帯、北上市はJR東北本線沿線で一番雪の多い地域で知られておりますが、奥羽山脈を横断する国道107号、西和賀町から錦秋湖、和賀川を伝って秋田から西和賀、北上地方へ雪や風がもたらせることによって、このような豪雪ということになっております。
年に数度、秋田道が猛吹雪でストップすることがあり、国道107号だけが唯一の交通手段となって自動車が集中することがあります。しかし、国道は湖面から20メートル前後上にあり、ダム湖、下から吹き上げてくる猛吹雪は太陽光や視界を断ち、見通しがきかなくなり、視野が真っ白になるホワイトアウトと呼ばれる状態になります。しばらくの間、交通全面遮断、あるいは現地では交通事故の可能性が高まります。一番の難所をトンネル化しなければならない、このように強く思うところであります。
一昨年、野田村で、東日本大震災津波追悼式に盛岡市から野田村へ向かう際、東北自動車道が通行どめとなり、国道455号経由で移動の際、岩洞湖付近で猛吹雪によるホワイトアウト現象が起き、極端な減速走行やトラック同士の正面衝突事故に巻き込まれ、議会や県関係者のバス、知事公用車も大変な思いをいたしました。こうした現象が国道107号錦秋湖付近でも毎年数回発生しておりますし、その都度、衝突事故やダムへの転落事故という生命の危険を感じて通行しております。
知事も体験されたホワイトアウトをどのように肌で感じられたのか、また、錦秋湖北側高台を走行する国道107号、知事の思う走行危険度について所感を伺います。
〇知事(達増拓也君) 議員御指摘のとおり、野田村で、県と野田村による合同追悼式が行われた平成27年3月11日は、吹雪で視界が悪く、国道455号で通行車両の衝突事故現場を目撃したこともあり、私も身をもって冬期の安全な交通確保の重要性を改めて認識したところであります。
国道107号が通過する西和賀町は豪雪地帯であり、冬期間の安全な交通確保が非常に重要であるため、除雪等の徹底とともに老朽化対策等を進め、安全性や信頼性の確保に努めていくことが必要と考えます。
〇31番(高橋元君) 知事も体験されたので、その状況はわかるということでございます。先ほどは多額な予算が必要だという部長答弁がありました。西和賀町からの県要望の回答にも反映区分にCとありまして、これは、いつ、どういう形で実現するのかなと、毎年毎年、私も県議会議員になりましてから、そんな思いをして、この整備について期待をしながらも一つ残念であると、このようにも思っているところであります。
先ほどほかの路線よりも事故率が少ないという話もありましたけれども、全く前が見えないと進めないわけですから、事故はそんなに多くはないと思いますし、また、危険な地域ということもあれば、時間がかかっても安全走行しなければならないということで、ふだんよりも20分、30分も多く、日によってはもう2時間、3時間をかけて西和賀町から北上市に来たと、そういうこともあるわけでございます。ぜひそのことも含めて、今後、県としてもこれを検討していただければと、このように思っております。これは今後の取り組みについて期待を申し上げたいと思います。
それから3点目でありますが、県立高校における遠隔授業についてであります。先ほど教育長の答弁の中で、さまざまな県の試行結果によりましてある程度の効果は認められるけれども、現時点では、担当する教員の負担もかなり大きいということだと思いました。
文部科学省に、平成30年度以降に新たな3年間の遠隔授業に関する取り組みについての予算措置要望がされているようでありまして、新年度の予算で決定されるのかどうかまだ未確定でありますけれども、いずれ、それらを見ますと、かなりステップアップを始めているというふうにも私は感じました。
それから、文部科学省の担当者のお話では、教育課程のおよそ半分ぐらいの単位もしっかりとこの遠隔授業で取得できると話をしていました。残りの半分は何なんだとお尋ねしたら、保健体育とか、そういう実技を伴うところの単位は遠隔授業ではできないと、こういう話でした。本来の座学のほうでは単位がとれるという方向で文部科学省は進んでおりますので、私はぜひもう少し、現状として今やっている遠隔授業の円滑化に向けた取り組みはよしとしても、次に向けてステップアップを研究していただければありがたいと思っているんですけれども、その辺について教育長の所感をお伺いいたします。
〇教育長(高橋嘉行君) 文部科学省が来年度予算の概算要求に盛り込んでおります遠隔授業の新規事業につきましては、遠隔教育について新たなテーマで研究調査を行い、全国に普及させる取り組みを推進する事業であるというように承知いたしております。
本県では、この2年間の試行によりまして一定の成果が得られるとともに、取り組むべき課題も徐々に明らかになってきておりますので、今後の実用化に向けて、まずは実際の運用を行いながら課題解決を図っていくことが重要と考えております。
今般の試行は、両校に加えて、総合教育センターにコントロールタワーとしての役割を担わせながら取り組んできておりますけれども、総合教育センターのかかわりなど来年度以降のあり方につきましては、議員御提言の趣旨等も含めまして、別途、研究させていただきたいと考えております。
〇議長(佐々木順一君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後5時53分 散 会

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